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Masaru IKEDA

Masaru IKEDA

1973年大阪生まれ。インターネット黎明期から、シンクタンクの依頼を受けて、シリコンバレーやアジアでIT企業の調査を開始。各種システム構築、ニッポン放送のラジオ・ネット連動番組の技術アドバイザー、VCのデューデリジェンスに従事。SI、コンサルティング会社などを設立。Startup Digest(東京版)キュレータ。

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執筆記事

データでオフィス不動産営業を支援するestie、プレシリーズAでGCPやUTECから2.5億円を調達——ゼンリングループとも連携

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オフィス賃貸に特化した不動産データプラットフォーム「estie(エスティ)」「estie pro(エスティ・プロ」を開発・運営する estie は14日、プレシリーズ A ラウンドで約2.5億円を調達したと発表した。このラウンドは、グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)と東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)が共同でリードした。なお、今回の出資は、GCP と UTEC にとって電…

estie のメンバー。中央が代表取締役の平井瑛氏。
Image credit: estie

オフィス賃貸に特化した不動産データプラットフォーム「estie(エスティ)」「estie pro(エスティ・プロ」を開発・運営する estie は14日、プレシリーズ A ラウンドで約2.5億円を調達したと発表した。このラウンドは、グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)と東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)が共同でリードした。なお、今回の出資は、GCP と UTEC にとって電子契約で完結した初案件となる(DocuSign を利用)。

これは、同社にとって2019年3月に実施したシードラウンド(東大新聞オンラインによる)に続くものだ。シードラウンドには UTEC が単独投資家として参加しており、この際の調達金額は明らかになっていないが STARTUP DB による登記簿情報からの推計では1.5億円。UTEC は今回を含め通算で2回目の出資となる。

estie は三菱地所、住友不動産、NTT ドコモ、ヤフーなどの出身者が集まって2018年12月に設立された不動産テックスタートアップ。同月、オフィス向け賃貸不動産に特化して不動産仲介会社とテナントをマッチングする estie をβローンチした(昨年9月に正式ローンチ)。また、昨年9月には、不動産オーナーや不動産仲介会社向けに、オフィス賃貸不動産の各種データを提供するプラットフォーム estie pro をローンチしている。

「estie pro」
Image credit: estie

estie pro ではこれまで公知の情報(自治体や関係団体から公表された情報)を収集・分析し情報を提供してきたが、今回大幅にバージョンアップし、一般公表されていないデータソースも含め、不動産デベロッパー、管理会社、仲介会社などからデータパイプラインを50以上追加し、物件基礎情報・募集床情報・推定成約資料・テナント情報の提供を開始。今後は、時系列成約水準・将来供給といったデータの提供も予定している。

昨年のサービス開始以来、いろんなところとの連携が進んできた。その一つの結果として、今回、ゼンリングループとの連携を発表するに至った。ゼンリンでは担当者が街を巡って、どのビルのどのフロアにどのようなテナントが入っているかの情報を集めている。

ゼンリンの持つデータと estie pro を連携することで、オーナーや不動産仲介会社にとっては競合となるビルのテナント情報、彼らがどのくらいの賃料で借りているかがわかる。都心だけで20万件のテナント情報から、営業先のアタックリストを作成できる。(代表取締役の平井瑛氏)

「estie pro」
Image credit: estie

オフィスビルのオーナーや不動産仲介会社の営業担当者にとっては、競合物件に入居するテナントを〝引き剥がし〟同等かそれ以上の立地条件で、築浅・割安な賃料・建物設備の充実などで自社物件への乗り換えを促すのが業務の一つ。従来ならば靴底を減らしながら行っていた営業活動を、estie pro を使えばインサイドセールスで完結できるようになる。ポスト新型コロナウイルス時代の不動産営業活動を標榜させてくれる趣だ。

不動産データを分析するスタートアップとしては、以前 BRIDGE でも紹介した「スマサテ」を運営するターミナルが存在するが、こちらは住居用の賃貸不動産の情報に特化している。平井氏によれば、住居用に比べ、オフィス用賃貸不動産はデータが収集しにくいこと、インフラになるような大規模なデータプラットフォームが無いこと、取扱一件あたりの規模が大きいことなどから、事業成長の可能性を感じているという。事実、サービス開始以来、estie は MoM ベースで40%のユーザ成長を記録しているそうだ。

estie では今回調達した資金を使って、データや機械学習アルゴリズムを使ったエンジニアリングをリードする人材採用を強化する見込み

アメリカのこの分野を見てみると、業界最大手の CoStar(NASDAQ:CSGP)をはじめ数多くのスタートアップが存在するが、日本において競合は皆無と言える。

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AIで記憶定着を支援するeラーニングシステム「Monoxer(モノグサ)」、サービス開始から約2年で導入先2,500教室を突破

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AI を活用し記憶を定着させる e ラーニングシステム「Monoxer(モノグサ)」を開発・提供するモノグサは13日、サービス開始から2年2ヶ月を経て、導入先が2,500教室を突破したことを明らかにした。また、学習回数は合計で1億回を超えたとしている。これまでの業績成長について、同社はインフォグラフィックを公開した。 リクルートや Google 出身のビジネスデベロッパやエンジニアらにより設立され…

Image credit: Monoxer

AI を活用し記憶を定着させる e ラーニングシステム「Monoxer(モノグサ)」を開発・提供するモノグサは13日、サービス開始から2年2ヶ月を経て、導入先が2,500教室を突破したことを明らかにした。また、学習回数は合計で1億回を超えたとしている。これまでの業績成長について、同社はインフォグラフィックを公開した。

リクルートや Google 出身のビジネスデベロッパやエンジニアらにより設立されたモノグサは、塾や予備校を通じた B2B2C モデルで2018年5月からモバイルアプリ「Monoxer」を提供。Monoxer は、AI を活用したアダプティブラーニングにより、知識習得や記憶定着を可能とするプラットフォームだ。覚えるべきこと(回答例)をデータインポートすると、その答を導き出すための問題を Monoxer が自動生成してくれる。暗記ペンを使った重点項目の反復演習をデジタル化したようなイメージだ。

Image credit: Monoxer

モノグサの代表取締役 CEO 竹内孝太朗氏や CFO 細川慧介氏によれば、新規の顧客開拓は投資家らからの紹介に加え、学習管理 SNS 「Studyplus for School」の導入先でモノグサが併用導入されるケースなどが功を奏しているという。「Studyplus」を運営するスタディプラスとは、EdTech DX をテーマとした勉強会を塾や予備校の担当者向けに定期開催しており、これもまた有力な顧客流入経路となっている。また、新型コロナウイルスで休校や休講を余儀なくされた塾や予備校が増えたことも、Monoxer の導入先を増やす上で追い風となった。

5月以降、塾や予備校も新常態になった。Zoom などを使った映像での学習機会の提供は増える一方で、運営者側ではそれで生徒に定着したかどうかを把握しにくい。彼らは理解と定着は別のものとして捉えていて、定着を図る部分で Monoxer を活用してもらっている。(竹内氏)

また、塾や予備校にとっては、自社のユニーク性を追求する上で、他社と同じ学習素材を使うことは避けたい。Monoxer では定着すべき学習内容はインポートする形をとるため、同じ Monoxer を使いながらも、学習内容はそれぞれの塾や予備校独自のものとなる。こうしてアプリがホワイトラベル的に機能する点も B2B2C で受け入れられやすい理由の一つで、異なる塾や予備校の担当者同士で Monoxer を紹介してくれることも営業開拓の一助となっているようだ。

モノグサは2018年12月、シードラウンドで約1億円を調達している。

(クリックして拡大)
Image credit: Monoxer
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オープンイノベーションプラットフォーム「eiicon」が「AUBA(アウバ)」にリブランド、コンサルティングやハンズオン支援を強化

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<13日13時更新> 訂正線部を削除、赤字部を追加。 パーソルイノベーションのカンパニーである eiicon company は10日、オンラインで記者会見を開き、同社が運営するオープンイノベーションプラットフォーム「eiicon(エイコン)」を「AUBA(アウバ)」にリブランドしたと発表した。また、「eiicon lab」として運営されてきたオンラインメディアも「TOMORUBA(トモルバ)」に…

リブランドを発表する eiicon company カンパニー長の中村亜由子氏

<13日13時更新> 訂正線部を削除、赤字部を追加。

パーソルイノベーションのカンパニーである eiicon company は10日、オンラインで記者会見を開き、同社が運営するオープンイノベーションプラットフォーム「eiicon(エイコン)」を「AUBA(アウバ)」にリブランドしたと発表した。また、「eiicon lab」として運営されてきたオンラインメディアも「TOMORUBA(トモルバ)」にリブランドする。カンパニー名に変更はない。

AUBA は2017年2月、インテリジェンス(当時。2017年7月にパーソルキャリアに商号変更し、現在はパーソルイノベーションが統括)の新規事業 eiicon としてスタート。これまでの3年4ヶ月間で、大企業とスタートアップなど15,000社以上が登録している。登録している企業同士が相互に連絡を取り合うのに必要なコンタクトチケットを販売するなどしてマネタイズしており、創業5年未満・資本金100万円未満スタートアップは無料安価で利用できる

eiicon company では今後、コンサルティングサービスを強化し、オープンイノベーションを通じた事業化を念頭においたインキュベーション支援、エンタープライズ支援部隊によるハンズオンサービスを強化するとしている。リブランドに合わせ AUBA のプラットフォーム上にみらいリレーションズのデータ解析エンジン「Synapse」を導入し、企業同士のオープンイノベーションの自動マッチング機能を実装する。

また記者会見では、Japan Innovation Network(JIN)の代表理事である西口尚宏氏が、eiicon company の外部顧問に就任したことも明らかになった。JIN は同組織の「IMSAP オープン・イノベーションプログラム」や、西口氏の持つアドバイスやイノベーション・マネジメントに関するノウハウを AUBA ユーザに提供するとしている。

<関連記事>

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エンタープライズ向けWebシステムを画面上でガイドするテックタッチ、シリーズAラウンドで5億円を調達——DNX V、アーキタイプVなどから

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企業内の Web システムに画面上で操作ガイダンスを簡単に追加できるサービス「テックタッチ」を開発するテックタッチは10日、シリーズ A ラウンドで5億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、DNX Ventures、アーキタイプベンチャーズ、DBJ キャピタルなどで、それ以外の投資家は明らかになっていない。 同社は2019年9月にシードラウンドで1億2,000万円を調達している。DN…

テックタッチのチーム。後列左端が創業者で CEO の井無田仲氏。
Image credit: TechTouch

企業内の Web システムに画面上で操作ガイダンスを簡単に追加できるサービス「テックタッチ」を開発するテックタッチは10日、シリーズ A ラウンドで5億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、DNX Ventures、アーキタイプベンチャーズ、DBJ キャピタルなどで、それ以外の投資家は明らかになっていない。

同社は2019年9月にシードラウンドで1億2,000万円を調達している。DNX Ventures とアーキタイプベンチャーズは今回、前回のシードラウンドに続く参加だ。なお、テックタッチは今後、数億円をデット調達する見込み。

テックタッチは、Web ブラウザ側にはプラグイン、サーバ側には js を導入することで既存の Web システムに説明ガイダンスをオーバレイできるサービス。サーバ側にコードを入れて完結する(ブラウザ側にプラグインを入れない)運用も可能で、Internet Explorer、FireFox、Google Chrome に対応する。日本のエンタープライズユーザを意識して、クラウド運用のみならず、オンプレミス環境にもサービスを提供できるのが特徴だ。

TechTouch
Image credit: TechTouch

テックタッチは、投資銀行やユナイテッドでアプリ事業などに携わった井無田仲氏らにより2018年に設立。昨年2月のクローズドリリース、5月にオープンリリース。昨年11月、損保大手のあいおいニッセイ同和が正式導入したのを皮切りに、大企業数十社の従業員累計9万人弱がサービスを利用している。導入企業は、鹿島建設、三井不動産、セガ エンタテインメント、損保ジャパン、トランスコスモス、富士通、ブックオフ、ベルシステム24、三菱 UFJ フィナンシャル・グループ、代々木ゼミナール、WOWOW など。

テックタッチによれば、企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する上で、新システムを導入した際の定着化、ユーザである従業員のオンボーディングなどに効果を発揮しているという。同社は将来、自動化等の高度活用支援も実施するとしており、一部 RPA 的な機能が追加される可能性も伺える。

テックタッチのベンチマークとして見れるイスラエル発の Walkme は、欧米を中心に Fortune500 の30%、1,000社以上が導入しており、2018年9月のシリーズ F ラウンドでユニコーン入りを果たしている。WalkMe は昨年日本法人を設立し、日本市場での営業攻勢を活発化している。

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【IPOスタートアップの資本政策解剖】マネーフォワード編〜第2回「Smartround Academia」から

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前回のビザスクに続き、今回、資本政策を解剖するのはマネーフォワード(東証:3994)だ。2012年5月に創業し、2017年9月に東証マザーズに上場。当時、今ほどメジャーではなかった SaaS スタートアップの IPO としては先駆け的存在である。今回、マネーフォワードの資本政策を披露してくれるのは、同社を IPO へと導いた当時の CFO 金坂直哉氏である。 金坂氏は東京大学経済学部を卒業後、ゴー…


前回のビザスクに続き、今回、資本政策を解剖するのはマネーフォワード(東証:3994)だ。2012年5月に創業し、2017年9月に東証マザーズに上場。当時、今ほどメジャーではなかった SaaS スタートアップの IPO としては先駆け的存在である。今回、マネーフォワードの資本政策を披露してくれるのは、同社を IPO へと導いた当時の CFO 金坂直哉氏である。

金坂氏は東京大学経済学部を卒業後、ゴールドマン・サックスの東京オフィスとサンフランシスコを経て、2014年にマネーフォワードに参画。同社が個人向けの家計簿アプリから、事業者向けの会計サービスへと進化を始めた直後のことだ。昨年までマネーフォワードの CFO を務めていた金坂氏だが、IPO 経験を生かし昨年設立された成長企業向けのフィナンシャルアドバイザリーを提供するマネーフォワードシンカの代表に就任。7月1日付けで、金坂氏が再びマネーフォワードの CFO に復帰就任したことが発表されている

なお、マネフォワードシンカは新型コロナウイルス感染拡大を受けて、今年3月に VC とスタートアップのオンライン面談マッチングを支援する活動を実施したほか(すでに終了)、5月には投資家向けに保有する未上場スタートアップ株式の売却先を紹介する株式売却アドバイザリーサービスを開始している。

今回の聞き手も、スマートラウンド COO 冨田阿里氏が務めた。

<これまでのマネーフォワード関連記事(一部)>

<上場前(2012年5月〜2017年9月)>

マネーフォワードは2017年9月に上場を果たしたが、上場前段階で44億円、上場後も市場以外で143億円を調達するなど、事業成長に成長資金を常に調達し続けている。最初の資金調達となったのは、創業から7ヶ月後の2012年12月。代表取締役の辻庸介氏の古巣マネックス証券のベンチャー投資部門からだった(当時のマネックス・ビジネス・インキュベーション、現在のマネックスベンチャーズ)。マネーフォワードにとって初めての外部資金調達(2,000万円)だったが、同社ではこれをシリーズ A ラウンドと位置付けている。

シリーズ B〜C ラウンド位までは VC 調達が多いが、シリーズ C〜D ラウンドあたりからは地方銀行や事業会社からの調達が増えている。マネーフォワードは、B 向けの販売チャネルとして地方銀行や会計事務所などとの協業を行っており、事業ステージの進捗とともにベンチャー資金よりは事業パートナーからの資金注入が増えていることがわかる。ちなみに金坂氏がマネーフォワードに参画したのも、同社が シリーズ C を始める2014年のことである。

スタートアップ経営者にとって資金調達のリードを掴むことは重要ミッションの一つであり、この日の視聴者からは金坂氏に対し、自社に合った VC や投資家にたどり着く方法、投資家とのリレーションに対して質問が多くなされた。質問の順序は前後するが、金坂氏の説明を要約すると概ね次の通りだ。

  • アーリーステージにおいて特に重要なのは資本政策。後戻りできず、投資家とのやりとりで飲んだ条件や契約が、結果的に上場で足を引っ張ることが起こりうるのがエクイティファイナンスの怖さだ。バリューエションも、ダイリューションも、上げ過ぎても下げ過ぎても良くない。多面的な角度から考えることでリスクを下げるべきだと思う。
  • 投資家との契約にあたっては自社にあったアドバイザーと相談し、二社以上の投資家と話すことで、投資家との契約における交渉力を維持すべきだと思う。
  • エクイティファイナンスにかけた時間は、2014年の時で半年(シリーズ C)、2015年の時で4ヶ月(シリーズ D1)、その次は数ヶ月くらい(シリーズ D2)。回数を経るにつれ、普段からリレーションが取れているため、短くできるようになっていった。
  • 投資家とは常にコミュニケーションし、「次にファイナンスするときは声をかけてください」と言ってもらえる関係性を確立しておく。あるラウンドのファイナンスが終わった瞬間から、投資家には次のラウンドに参加してもらう可能性があるという位置づけ。
  • 地方銀行から資金を調達できた背景には、ビジネス面でのアライアンスが進んでいることが大きく影響している。アプリを作るとか、クラウドサービスを進めるとか、そういった協業関係が無いと、地方銀行からの資金調達は難しいのではないか。
  • バリュエーションが100億円を超えてくると VC からの調達は難しくなってくることも事実。投資家に対しては、バリュエーションや投資リターン以外のメリットを見せる必要が出てくる。レイターステージで事業パートナーからの調達が増えるのには、そういう理由もあるだろう。
  • ストックオプションは、基本的に年に1回の形で運用していた。全株式の中で、上場時の何%を割り当てるかは投資家らとの契約の中で決めていた。例えば、ストックオプションで付与できる割合を全株式の15〜20%程度に設定しておき、創業から上場までを4年と見るなら、1年あたり4〜5%程度は付与できる、というようなイメージ。誰にどのように付与するかについては、社員が100人程度の規模までは評価制度が確立されていなかったので、CEO や CFO が相談して決めていた。
  • どの投資家から、バリュエーションをいくらにして、どれだけ調達するかについては、まずは自分たちのビジョンを明確にし、それに必要な資金を算出する。そして、どの程度のバーンレートをカバーして、その金額で何年持たせられるかを計算する。マネーフォワードの場合は、比較的厚めにファイナンスしてきた。ストレッチしたバリュエーションでファイナンスができたのは幸運だった。そして、投資家には、事業上の関係やフィーリングも含め、一緒の船に乗ってやっていける人や企業を相手に選ぶべきだ。
  • 投資家に伝えていくストーリー(業績見通しの計画)については、事業のステージによって違ってくる。2014年くらいまでは(シリーズ C あたり)売上はまだ1億円に届かない位の業績だったので、今後どういうプロダクトをローンチしていくのかを話していた。2015年(売上4億4,000万円)、2016年(売上15億4,000万円)くらいになると、トラックレコードで将来成長を見せられた。売上がまだ無いときは SAM(実際に提供可能な市場規模)や TAM(獲得可能な最大市場規模)で、売上が出てきたら実績の延長線で話せるようになる。
  • 資金調達は CEO 中心でも CFO 中心でもできるが、どんな体制で臨むかはその会社次第。資金調達に表面的なスキルよりも、むしろ、投資家との信頼関係を築いたり、最後までやり切れる人だと見てもらえたりすることが大事。投資家も経営者を2〜3年見ていればそのあたりが分かってくるので、安心して投資ができるようになる。投資家に対しては、真摯かつ愚直に事業に取り組んでいる姿を見せ続けるというのが王道。ファイナンスが必要になってから、ある日投資家に出会い、「いきなり投資を決めてください」と申し出る選択肢は勧めない。

<上場(2017年9月)>

スタートアップ経営者にとって、自社の業績が上場基準を満たしたとして、いつ上場するかというのは熟慮すべき課題。最近では、ファンドの大型化によって、資金需要だけで考えれば VC からの調達でも充足することができるだろう。しかし、「金は天下の回りもの」であるゆえ、経済のある部分がスタックすると資金調達を含め経済全体がスタックする危険を指摘する CFO は多い。

マネーフォワードでは、シリーズ E ラウンドを迎えた2016年前後から経営陣の間で上場に向けた話が出始め、「上場を最速で目指そう」という意見の一致から2017年夏にターゲットを定めた。マネーフォワードの初期投資家の代表者でもあり、辻氏の心の師でもある松本大氏が言う「上場はタイミングが難しいがゆえ、できるときにするのがいい」という以前からの進言も参考にしたそう。

タイミングは重要であるが、タイミングは簡単にずらせるものでもない。したがって、シンプルに考えた結果、最速を目指した。すべての会社に当てはまらないかもしれないが、マネーフォワードの場合、IPO できるときに IPO して次の成長に備えるということで、そういうタイミングになった。(中略)

海外ではかなり大きくなるまでは IPO しないという傾向がある。これは IPO しないというよりも、大きくならないと IPO できないからという感じ。日本の場合はマザーズという新興市場があるので、IPO できるタイミングで IPO というのもありだし、大きくしてから IPO するというどちらも選択肢としてありだと思う。(金坂氏)

<上場後(2017年9月〜)>

マネーフォワードが2020年4月に公開した第1四半期の決算説明会資料によると、同社の株主のうち機関投資家比率は過半数を超え、海外機関投資家が36%、国内機関投資家が16%を占める。昨年、日経が発表した売上高100億円以下の上場企業「NEXT1000」を対象にした調査では、2018年度に海外投資家を増やした会社1位はマネーフォワードだった(89社)。別の日経記事によれば、これら海外からの公募増資は、主に M&A 資金などに充てるためのものだ。

実際のところ、クラビス(2017年11月)、ナレッジラボ(2018年7月)、ワクフリ(2018年8月)、スマートキャンプ(2019年11月)と、マネーフォワードはスタートアップ買収にも積極的だ。マネーフォワードの海外投資家からの資金調達は、日本の SaaS や会計系サービスなどへの強い期待の現れと見ることもできる。また、買収はしていないが、Chatwork(東証:4448)や BASE(東証:4477)といった上場を果たしたスタートアップに対する投資家でもあった。

そういったこともあり、マネーフォワードはこれまで海外投資家への IR 活動を積極的に行ってきた経緯がある。IPO 以降、通算で三度にわたる海外からの資金調達を行っており、1度目は IPO と同じタイミングで、旧臨報方式(アメリカを除くアジアやヨーロッパなどの世界にオファリングをする)により30億円、2度目と3度目は海外公募増資(Global Offering)により、それぞれ66億円(2018年12月)と47億円(2020年1月)を調達している。1度目の調達時に旧臨報方式を選んだのは投資家からの需要が大きかったこためで、英文でのドキュメンテーション作成も必要とされなかった。

金坂氏によれば、M&A する場合と、マイナー出資する場合では、投資先スタートアップの選定基準が全く異なってくる。マネーフォワードの M&A 戦略はプロダクトを増やす M&A とユーザを増やす M&A に大別されるが、これまではプロダクトを増やす方に終始してきたそうで、今後はユーザを増やす M&A 案件も手掛けていきたいという。また、M&A では買収先のスタートアップの経営者をマネーフォワードグループの経営陣に迎えることを前提とするため、会社間や人の間のカルチャーフィットが重要となる。資本提携や出資の場合はこの限りではなく、投資先のスタートアップの経営者が IPO までやり切れるかどうかを見極めるそうだ。

また、上場後は、いかに株主に長く会社を愛してもらうか、もっと言えば、株を持ち続けてもらうかというのはテーマだ。安定株主をどうやって確保するかという視聴者からの問いには、金坂氏は次のように応えた。

安定株主という概念は信じていない。どんな株主にも、売りたい時に売る権利があるからだ。ただし、投資家とはコミュニケーションを密にとって、長期にわたって株式を保有してもらえるよう努力はしている。投資家とは立場が違うので、株式を売り出すタイミングについては交渉はできても無理は言えない。普段からしっかりした IR を心がけ、マネーフォワードの場合は大口の株式売却があっても、株価に影響を与えずに、それをいい投資家にまた買ってもらえている。

<その他>

  • 株主が多いと株主とのコミュニケーションが大変になる、と懸念する経営者もいる。マネーフォワードの場合、ミドルステージ以降は、事業パートナーに株主になってもらったものが多い。そのため、彼らに対しては投資家への説明以前に事業における説明があり、月1回ペースでの KPI 報告会、その後、社長や担当者も交え飲み会という形で運営していた。株主=事業パートナーに毎月会っているので、次のファイナンスの情報も伝えやすい。複数の株主が同時に同じ場所に集まれ、効率的に意見を交換できる点でもよかった。
  • 新型コロナウイルスの影響で資金調達が難しくなるのも事実だろうが、工夫をする方法はある。まず、資金が足りないからと言って新規投資家に連絡を取る前に既存投資家と密にコミュニケーションをとるべきだ。新規投資家と既存投資家では、そのスタートアップに対して持っている情報量が違うし、既存投資家がサポートできないのに新規投資家がサポートするのは難しい。既存投資家の支援を獲得し、それから新規投資家を呼んでくるべき。営業上ムダなコストはとことん削ること。

マネーフォワードシンカのクライアント企業

金坂氏が代表を務めるマネーフォワードシンカでは、スタートアップが IPO などイグジットを目指す上でのフィナンシャルアドバイザリー事業を行っている。昨年9月の創立から、スタッフメンバーは総勢10名体制にまで成長。マネーフォワードの上場を通じて得られた知見や経験をもとに、2021年までにスタートアップ100社の支援を目指しているそうだ。

また本セッション終盤には、先月のエルピクセルの元取締役横領事件にも触れられた。CEO は CFO に全幅の信頼を置くものだが、悲しいことにこういう事案が時々世の中を賑わせてしまう。今回の事件では、銀行口座の通帳コピーが細工されるという単純なトリックで経営陣が騙されてしまったわけだが、マネーフォワードを使えば、口座情報はリアルタイムで金融機関からアグリゲートされるため、その情報をオンラインで経営陣が共有すれば、同じような問題は生じない、とのことだった。

スマートラウンドは、起業家の資本政策づくりを支援する SaaS「smartround(スマートラウンド)」のユーザが去る6月16日で1,000社を超えたと発表した。smartround のローンチは昨年6月22日なので、1日平均約2.8社のペースでユーザが増えたことになる。また先頃、これまでの「資本政策 smartround」「経営管理 smartround」「会社紹介 smartround」「ライブラリ smartround」に加え、新たに「株主総会 smartround」をリリースした。株主総会 smartround の機能の一部は、先月ケップルがローンチした「株主総会クラウド」と競合する可能性がある。

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インタラクティブ動画サービス「TIG(ティグ)」開発のパロニム、タイのテレコム最大手AISの親会社から資金調達

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この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから。 インタラクティブ動画サービス「TIG(ティグ)」を開発・提供するパロニムは6日、タイのテレコム最大手 AIS(バンコク証取:ADVANC)の親会社である Intouch Holdings(バンコク証取:INTUCH)から資金調達したことを明らかにした。調達額は非開示。 パロニムは昨年からシリーズ B ラウンドでの調達を…

昨年12月、「ROCK THAILAND」に登壇したパロニム代表取締役の小林道生氏
Image credit: Masaru Ikeda

この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから。

インタラクティブ動画サービス「TIG(ティグ)」を開発・提供するパロニムは6日、タイのテレコム最大手 AIS(バンコク証取:ADVANC)の親会社である Intouch Holdings(バンコク証取:INTUCH)から資金調達したことを明らかにした。調達額は非開示。

パロニムは昨年からシリーズ B ラウンドでの調達を続けており、これまでに日本郵政キャピタルと NTT ドコモ・ベンチャーズから約2.3億円を調達したことを明らかにしている。同社は今回の Intouch Holdings からの調達でシリーズ B ラウンドをクローズする。創業来の累積調達金額は約6.9億円。

2016年に設立されたパロニムは、動画に触れることで必要な情報にアクセスできるインタラクティブ動画サービス「TIG(ティグ)」を開発・提供している。ユースケースはインテリア(動画を再生中、興味のある家具にタッチすると購買サイトへジャンプ)、ファッション(動画を再生中に、興味のある洋服にタッチすると購買サイトにジャンプ)、レシピ(動画を再生中に食材にタッチすると、そのページへジャンプ)、旅行(動画を再生中に旅のスポットにタッチすると、そのページへジャンプ)などがある。

「ROCK THAILAND」で TIG の事業開発タイムラインを説明する小林氏
Image credit: Masaru Ikeda

コンテンツ提供元・開発元には、動画中のオブジェクトに紐付けができるトラッキング編集ツール、多くのユーザがどの位置をタッチしているかがわかるヒートマップツールが提供される。ブランチ動画、マガジン、サイネージ、コマース、ラーニング、ライブの6つの異なるバーティカルに適したラインアップを用意。そのインタラクティブ性から、EC 取引に至るコンバージョン率は、Instagram と比べ2倍以上、YouTube と比べ3倍以上に上るという。

パロニムは昨年12月、在タイ日本大使館とタイ財閥最大手の CP グループが開催した越境オープンイノベーションイベント「ROCK THAILAND」の第2期に登壇、代表取締役の小林道生氏が事業提携、シリーズ B 調達、販売パートナーの獲得を模索していた。今回はその努力が実を結んだ格好だ。パロニムでは今後、Intouch Holdings との共同記者会見を予定しており、両社での具体的な事業展開についてはその際に明らかになるとみられる。

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連続起業家の成瀬勇輝氏ら、オンラインで禅や瞑想ができるアプリ「InTrip」を公開——座禅指導者の伊藤東凌和尚も全面協力

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連続起業家の成瀬勇輝氏らが率いるスタートアップ on the trip は7日、オンラインで禅やメディテーションの実践を支援するモバイルアプリ「InTrip(イントリップ)」をローンチした。iOS でダウンロードできる。料金は、1回、4回、使い放題の月額課金から選べ、それぞれ、1,000円、3,000円、980円/月で利用できる。 on the trip は創業した2017年から、寺社や美術館に対…

オンライン座禅会に臨む伊藤東凌和尚
Image credit: on the trip

連続起業家の成瀬勇輝氏らが率いるスタートアップ on the trip は7日、オンラインで禅やメディテーションの実践を支援するモバイルアプリ「InTrip(イントリップ)」をローンチした。iOS でダウンロードできる。料金は、1回、4回、使い放題の月額課金から選べ、それぞれ、1,000円、3,000円、980円/月で利用できる。

on the trip は創業した2017年から、寺社や美術館に対して入館料収入のアップセルと多元化を提供する多言語オーディオトラベルガイドアプリ「ON THE TRIP」を提供してきた。新型コロナ感染拡大に伴う緊急事態宣言以降、ON THE TRIP も少なからず影響を受けたが、成瀬氏らは寺社や仏教関係者との付き合いが多かったこともあり、InTrip の公開を思いついたという。

「InTrip」
Image credit: on the trip

ON THE TRIP では旅に出ての体験向上を提供してきたが、「新常態」で自由に旅に出られなくなった今、自分の中の内なる旅=InTrip に目を転じた。世界中のビジネスリーダーが ZEN をするようになってきている。合理主義の反動から、今最も求められるようになっているのが多様主義。禅を通じて多様主義がオープンになり(身近になり)、ワンネス(一体的)になっていく。(成瀬氏)

InTrip のコンテンツ開発には、座禅指導者で京都・建仁寺両足院の副住職である伊藤東凌氏が全面協力している。アプリを使い始めてから最初の1週間で自分が変わり始めることを体現してもらうことを重視し、東凌和尚が両足院で指導してきた座禅のプログラムをオンライン体験できるよう注力したという。

on the trip のチーム。左から2人目が代表の成瀬氏。(奈良市・大安寺にて)
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on the trip では今後、禅プログラムの改善やコンテンツ拡充に注力しつつ、座禅のみならず、サウンドメディテーション(瞑想音楽)やヨガと組み合わせたプログラムもリリースを予定。加えて、毎週土曜日の朝にはユーザと両足院を繋いでのオンライン座禅も提供する。世界中に潜在的ユーザが存在するため、アプリはグローバルのアプリストアに日英両語で公開しており、今後、北米や欧州でのマーケティングも積極化したいとしている。

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「Web MaaS」は回遊経済の真骨頂となるか?——アクアビットスパイラルズ、非接触技術「スマプレ」で大津の自動運転バス実証実験に参加へ

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QR コードや NFC 技術を使って、ユーザのスマートフォンを特定の URL と紐づけるサービス「スマートプレート」を開発するアクアビットスパイラルズが、滋賀県大津市で実施される自動運転バスの実証実験に参加することが明らかになった。実験の日程は7月12日から9月27日までで、JR 大津駅前→びわ湖大津プリンスホテル→JR 大津駅前の周回コース(1周回の所要時間32分間)のシャトルバスで運用される。…

Image credit: Aquabit Spirals

QR コードや NFC 技術を使って、ユーザのスマートフォンを特定の URL と紐づけるサービス「スマートプレート」を開発するアクアビットスパイラルズが、滋賀県大津市で実施される自動運転バスの実証実験に参加することが明らかになった。実験の日程は7月12日から9月27日までで、JR 大津駅前→びわ湖大津プリンスホテル→JR 大津駅前の周回コース(1周回の所要時間32分間)のシャトルバスで運用される。朝9時のびわ湖大津プリンスホテル発から夜19時32分のびわ湖大津プリンスホテル着まで1日10便運行の予定。

これは、経済産業省や国土交通省が全国で展開する新モビリティの社会実装プロジェクト「スマートモビリティチャレンジ」に採択された、大津市や京阪バスが展開するレベル3の自動運転バスを使った実証実験に参加するもの。乗客の乗降車に際して必要となるバスの OD 情報(origin-destination 情報)の取得を日本ユニシス、乗車認証と料金徴収や MaaS 連携の機能をアクアビットスパイラルズが提供する。

小誌では今年4月、アクアビットスパイラルズの非接触技術による決済プラットフォーム「PayChoiice」を取り上げた。これまでの非接触決済は店舗側に何かしらのデバイスを必要としたが、NFC チップを貼り付けておくだけで非接触決済できる環境を提供可能。先ごろ、Apple が WWDC で披露した「App Clips」も同様の機能を持っていることから、この種の仕組みは世界的にも注目を集めていることがわかる(PayChoiice は Web アプリだが、App Clips はミニアプリのダウンロードが必要になる)。

大津での実験にアクアビットスパイラルズが持ち込むコンセプトは、この PayChoiice を決済から MaaS(Mobility as a Service)へとエンハンスしたものと言えるだろう。都市部の交通機関であれば、鉄道の改札やバスの乗降口に FeliCa 決済のリーダ・ライターが備わっており、キャッシュレスでの乗降車が実用化しているが、少し郊外や地方へ足を伸ばすと切符や整理券+現金決済を余儀なくされるケースが多い。地方でキャッシュレス対応が進まない理由の一つは、リーダ・ライターをはじめとする設備の導入や運用コストだ。

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今回アクアビットスパイラルズが実験で導入している仕組み「スマプレチケット」では、ユーザはスマートフォンを運賃箱や車内各所に貼られたステッカー(NFC チップと QR コードが貼ってある)にかざすだけで良い。スマートフォン画面上で人数を入力すれば、ApplePay や GooglePay やクレジットカードで決済が完了する。降車時には、運賃箱や車内各所でスマートフォンを再びかざすと画面上に券面が表示されるので、それを運転士に提示することで一連の操作は終了となる。

この実証実験では自動運転やキャッシュレス決済を導入していることにスポットが当たりがちだが、プロジェクトを担当する京阪バス ICT 推進部の大久保園明氏は、「緑ナンバーを取得しており乗客から料金もいただくので、実験とはいえ営業運転で黒字にすることを念頭に置いている。採算性の問題から地方の交通網が削減されている中で、新たな需要を掘り起こし低コストでの運用を実現し、それを鉄道事業やバス事業に採用していくためのノウハウを蓄積することが狙い」と語った。

今回の実験では定額運賃での運用だが、日本ユニシスのスマートタウン戦略本部の担当者は「OD 情報を取得しているため、将来的には区間変動運賃はもとより、ダイナミックプライシングなどにも応用できる。乗客の行動変容が生まれてきている中で、定期券を使って会社と自宅を往復するだけではなく、それ以外の柔軟な運賃体系にも対応でき、しかも、IC カードよりも簡単に対応できる点は大きい」とアクアビットスパイラルズの仕組みを評価した。

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アクアビットスパイラルズ代表取締役 CEO の萩原智啓氏は、「スマートプレートを活用した Web MaaS によって、回遊経済が創出できる」と主張する。

商店街などのスタンプラリーがまさにそれ。回遊経済ということになるが、それと同じことがスマプレ(スマートプレート)でできる。その起点が交通なら MaaS になるんじゃないか、というのが我々の考えだ。

どの乗客がどこから乗ってきて、どこで降りたかを捕捉できるので、それをもとに乗客を商業施設などに誘導するクーポンを配布したりすることも可能になるだろう。

今回の実証実験を推進する大津市と京阪バスでは、今回で3度目となる実証実験の過去回の参加者の中からキャッシュレス決済の実現要望が多かったため、大幅なシステム改修や導入コストを必要としないアクアビットスパイラルズの仕組みに白羽の矢が立ったという。新型コロナウイルスの影響から非接触での商取引行為が推進される中で、現金の授受はもとより切符・改札・運賃箱・券売機さえ必要としない点でもこの仕組みへの期待は大きい。

<参考文献>

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出張シェフサービス「シェアダイン」運営、プレシリーズAで約2.2億円を資金調達——Coral Capital、マネックスV、日本生命などから

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出張シェフを見つけられるマッチングプラットフォーム「シェアダイン」を提供するシェアダインは5日、プレシリーズ A ラウンドで約2.2億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、Coral Capital、マネックスベンチャーズ、三井住友海上キャピタル、日本生命保険、iSGS インベストメントワークス、フューチャーベンチャーキャピタル(東証:8462)、キャシー松井氏(ゴールドマン…

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出張シェフを見つけられるマッチングプラットフォーム「シェアダイン」を提供するシェアダインは5日、プレシリーズ A ラウンドで約2.2億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、Coral Capital、マネックスベンチャーズ、三井住友海上キャピタル、日本生命保険、iSGS インベストメントワークス、フューチャーベンチャーキャピタル(東証:8462)、キャシー松井氏(ゴールドマン・サックス証券副会長) 、河合聡一郎氏(ReBoost 代表取締役)および名前非開示のエンジェル投資家複数。

このラウンドは同社にとって、2018年5月に実施したシードラウンドに続くもの。今回ラウンドに参加したフューチャーベンチャーキャピタルは、前回シードラウンドに続くフォローオン。また、デットファイナンスを含めると、シェアダインの創業期からの累積調達金額は3億円前後に達したとみられる。

シェアダインは2017年5月、共に主婦であり母親でもある飯田陽狩氏と井出有希氏により共同創業。2018年5月から、ユーザが入力した場所と食の嗜好から料理家をマッチング、料理家がユーザ宅を出張訪問し料理を作り置きしてくれるサービスを展開している。2019年3月には定額サブスクリプションサービス、2019年10月から法人向け福利厚生サービス「シェアダインウエルネス」を開始した。

これまでに栄養士や調理師など資格を持つシェフなど700名が登録し、首都圏・東海・関西を中心に2020年7月時点で累計10万食以上を提供。サービスを使うユーザの約8割が女性で、普段は自分で料理しているものの、範疇外のレシピを学びたい、たまには料理の準備から解放されたい、といったニーズをうまく捉えているようだ。ユーザの嗜好はレシピに記録されるため、当該ユーザが次回、別の料理家を依頼する場合にもその情報が共有され、ユーザ体験を向上させる工夫が施されている。

今回のラウンドに参加した投資家の皆さん。中央左が共同代表の飯田陽狩氏、中央右が共同代表の井出有希氏。
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シェアダインに登録している料理家は、子育てが終わった主婦から、普段は飲食店で料理を本業とする人までさまざま。離乳食、幼児食、病院食、アレルギー対応、妊活対応、生活習慣病予防食など、専門的な要望に応えられるスキルを持った料理家も登録している。料理家の提示する単価によっては、週に二度ほどの稼働で月額40万円以上の収入が見込めるので、シェアダイン一本で生計を成り立たせている料理家もいるそうだ。

井出氏によれば、シェアダインは緊急事態宣言が発令された4月に一週間ほどサービスを停止したとのことだが、テレワークの増加に伴い、企業の在宅勤務支援の一環でシェアダインウエルネスの利用も増えているという。また以前から、休みの飲食店の厨房を借りて、人気の出張シェフが調理した料理をテイクアウト販売するポップアップストアを展開しているが、同社では新型コロナウイルスの影響も鑑み、こういった新しい試みも今後増やしていきたいと語った。

シェアダインではこれまでに料理家の獲得に注力し、オーダーする側のユーザの獲得がオーガニックの流入に頼ってきたが、今回調達する資金を使って、Web マーケティング担当者を新規採用し、マーケティング活動に注力数。投資家の一社である日本生命保険とは、全国にある保険相談窓口「ライフプラザ」でのセミナー開催を通じたシェアダインの認知度向上のほか、生活習慣病予防の食事メニュー作成、同社の持つ病院と連携した実証実験などを模索するとしている。

この分野には全国各所で類似したサービスが存在するものの、専業シェフに限らず、料理家が副業的にも C2C でサービスを提供できるようにした点がシェアダインの特徴と言えるだろう。ドミナントプレーヤーはまだ見出せないが、Green Dining を提供するグラアティアは一昨年、セロワンブースターなどから2,000万円のシード資金を調達している

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廣澤太紀氏率いるTHE SEED、若手起業家らとこれからの10年のスタートアップシーンを考えるカンファレンスを開催へ

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先週、BRIDGE は誕生の日(当時はイベント運営のオーガナイザーであり、Startup Dating の名前だった)から十年を迎えた。福岡がスタートアップハブとして頭角を現すきっかけとなった明星和楽も、第1回の開始からまもなく十年だ。ドッグイヤーと言われて久しいものの、「新たなムーヴメントを作るには、やっぱり十年を要するかも」というのが最近の筆者の口癖だが、十年経つと十歳年をとるわけで、そこには…

The Seed Capital の廣澤太紀氏と、New Innovations 代表取締役 CEO の中尾渓人氏。
二人は THE FUTURE に登壇予定。

先週、BRIDGE は誕生の日(当時はイベント運営のオーガナイザーであり、Startup Dating の名前だった)から十年を迎えた。福岡がスタートアップハブとして頭角を現すきっかけとなった明星和楽も、第1回の開始からまもなく十年だ。ドッグイヤーと言われて久しいものの、「新たなムーヴメントを作るには、やっぱり十年を要するかも」というのが最近の筆者の口癖だが、十年経つと十歳年をとるわけで、そこには世代間ギャップも生じてくるし、世代交代も必要になるだろう。

2年前弱冠26歳にして、シードスタートアップ向け VC「The Seed Capital(ザ シード キャピタル)」を設立した廣澤太紀氏もまた、スタートアップシーンに、こういった世代間ギャップの是正や世代交代の必要性を感じている。一度イグジットを果たした起業家やシリアルアントレプレナーの世代の厚みが増してきている分、廣澤氏らと世代を同じくする若手起業家にとってはハードルが上がっているという。シニア層に遠慮してか、廣澤氏の世代からはっきりとした言葉で、そのような指摘を受けることは今までになかった。

シリアルアントレプレナーの人たちがチャレンジをする事例が増えている。彼らは経験もあるので、資金調達や事業規模などのサイズ感も大きい。クロステック系のスタートアップは既存ビジネスの DX なので、ビジネス経験のあるシニアの人たちの方が有利。

そうした結果、若手が起業の名乗りを上げるのが難しくなってきているのを感じる。若い起業家が最初の調達で1,000万円や2,000万円集めた程度では目立たなくなってしまった。若手起業家にメンターをしてくれていたシニアの起業家は自分の事業に忙しくなり、メンターを探すのも以前に比べ難しくなってきている。(廣澤氏)

最近ブームのオープンイノベーションも、スタートアップが成長の活路を見出す手法としては有用なものの、伸るか反るかでホッケースティック的な成長に賭ける起業家にとっては、対極にある選択肢かもしれない。オープンイノベーションも典型的なパターンは国内で需要と供給がグルグル回る形であるから、このモデルでは、例えば、日本から世界を目指し、外需に応えるスタートアップを生み出すという大きな夢は描きにくい。

New Innovations 代表取締役 CEO の中尾渓人氏(右)は大阪出身。事前注文型のカフェロボット「root C」を開発しており、先月、THE SEED を含む投資家から1.7億円の調達を発表した。

一方で、東京かそれ以外か、というギャップも存在する。新型コロナによる社会変化が常態化すれば、地方の起業家は一度も上京せずに東京のベンチャーキャピタルから資金調達するのが当たり前になるかもしれない。地方の起業家が高いコストを払って慣れない地へと集まるのは、投資家はもとより、苦楽を共にする他の起業家などスタートアップのコミュニティ機能を求めてのことだ。新型コロナが収束しても、スタートアップシーンの醸成に必要な基本機能は、東京以外の場所にも定着してほしい。

THE SEED ではシニアの若手のギャップ、東京とそれ以外の地域のギャップに焦点を当て、これからのスタートアップシーンの10年を若手起業家らと共に考えるカンファレンス「THE FUTURE」を今月22日に開く。初回はバージョンゼロと位置づけ、三密防止の観点から全てのコンテンツをオンラインで配信する予定。将来起業を志す地方の若い世代にとっても、東京に足を運ばずして同世代から有用な言葉を聞ける良い機会となるだろう。

今から十年ほど前の TechCrunch 40 か TechCrunch 50 のメインステージのピッチで、かなり高齢の起業家がひどいフランス語訛りの英語でプレゼンしているのを見て衝撃を受けたことがある。当時の日本では、起業家と言えば、だいたいスタイルが決まっていて、そこから大きくかけ離れた存在だったからだ。何歳になってもスタートアップできるんだと確信させられた。男であれ女であれ、LGBTQ であれ、何歳であれ、このダイバーシティこそがスタートアップシーンの極みなのだろうと。

おそらく THE FUTURE が目指すのも、決してベテランやイグジットしたシニアの起業家の再挑戦を否定するものではない。そういう人もいていいが、一方で、経験未熟な若手起業家にだって、もっとチャンスがあっていいではないか、という心の叫びである。日本のスタートアップシーンにも、本当のダイバーシティがもたらされることを願ってやまない。

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