Onlabが第28期デモデイを開催、撮影だけでAIが工事写真台帳を作成する「Cheez」が最優秀賞を獲得

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Image credit: Masaru Ikeda

Open Network Lab は16日、Seed Accelerator Program 第28期のスタートアップを披露するデモデイを開催した。

採択された5チームがデモデイでピッチし、デモデイの最後には、主要メンターやデモデイに参加した聴衆らによる審査投票の結果によりチームを表彰した。

審査員は次の方々。

  • 林郁氏(デジタルガレージ代表取締役 兼 社長執行役員グループ CEO)
  • 村上敦浩氏(カカクコム 代表取締役社長執行役員)
  • 中島淳一氏(デジタルガレージ 執行役員 グローバル投資インキュベーション・セグメント担当)
  • 片山理沙氏(CSO, Digital Garage US /デジタルガレージ 執行役員 コーポレートトランスフォーメーション担当)
  • 髙松祐三氏(カカクコム 執行役員 インキュベーション事業本部長)

【Best Team Award】Cheez by verbal and dialogue

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建設業界には、工事写真の撮影と管理が法令で義務付けられている。建設現場では、工事の進捗状況を記録するために多数の写真を撮影し、写真台帳としてまとめる必要がある。しかし、従来のこの業務は非常に手間がかかり、90時間以上の時間を要する大変な作業となっていた。

このような課題を解決すべく、verbal and dialogue は独自の AI 技術を使った工事写真自動整理ソリューション「Cheez」を開発した。Cheez を使えば、撮影した写真を入力するだけで、自動で写真台帳を生成できる。

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実際に川崎重工業の大型案件で実証実験を行ったところ、作業時間を93%も削減できたそうだ。また、年間の人件費では2,880万円相当のコスト削減に成功した。同社の AI ソリューションは、他社製品と比べて事前準備が不要で、一瞬で作業完了できるというメリットがある。

収益モデルとしては、工事案件ごとの課金に加え、法令で義務付けられた5年間の写真保管料も設定。年間71万件以上の案件が見込める市場で、元請け企業から下請け企業までを広くターゲットに据えている。今後は国内だけでなく、海外市場の獲得も視野に入れており、6年後の IPO を見据える。

【Audience Award】SENSUS by 8ILLION(ビリオン)

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認知症は深刻な社会問題となっており、日本国内だけでも700万人以上の患者がいると推定されている。特に注目されているのが、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)だ。MCI の段階からから適切な予防と治療を行えば、認知症への進行を遅らせることが可能だが、MCI の症状は非常にわずかなため、自覚症状がなく検査を受けない人が多数いることが課題だ。

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そこで、8ILLION は MCI 早期スクリーニングシステム「SENSUS」を開発した。SENSUS では、脈拍から特徴的な信号を検出することで MCI を見つける。従来の脳波検査などに比べ、わずか15秒で簡単に検査できるのが大きな利点だ(URL はまだ無いため、リンクはありません)。

SENSUS の現在の精度は75%だが、1年以内に90%の達成を目指している。高齢化が一層進む中で、認知症対策への需要が高まると見込まれる。製薬会社をはじめ、各国政府や企業からのニーズが存在する。MCI のスクリーニングを通じて発見された未治療の患者に新薬を処方できるため、製薬会社に大きなメリットをもたらす可能性がある。

Qlay by Qlay Technologies

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Qlay Technologies は、以前の消費財メーカー向け口コミ分析からピボットしたようだ。同社が提供する「Qlay」スタートアップ向けグローバルエンジニア採用管理プラットフォームとなった。優秀なエンジニアを確保するための高額な人件費と、海外人材採用の複雑さに直面していた経験を元に、これを解決するソリューションを考えた。

新生 Qlay では、AI を活用して海外エンジニアの募集から採用、給与・コンプライアンス管理までの一連のプロセスを一元化・簡素化しており、従来は、ソーシング、評価・審査、契約雇用、給与・福利厚生など雇用管理に別々のプラットフォームを使う必要があった手続きを、Qlay 一つで完結できるようにした。

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国を問わずに優秀な人材を確保できるため、同社自らも Qlay を使ったところ、エンジニアがハイパフォーマンスなチームに生まれ変わった。 AI やオープンソースの進化でテック企業が増加する一方、VC 投資は減少し、スタートアップはコストを抑える必要が求められている。スタートアップからはじめ、将来は大手案件にも進出する計画だ。

MetaRest by MentaRest

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昨今のメンタル不調による社会的損失は11兆円を超え、大きな課題となっている。特に企業では従業員のメンタル問題に直面し、未然の予防策を求めている。しかし、従来のメンタルヘルスケアには課題があった。

MentaRest は、こうした課題を解決すべくメタバース空間で匿名でカウンセリングができる「MentaRest」を開発した。メタバース空間であるため、リアルより自己開示が140%高まることが研究でも示されているという。

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MentaRest は PC やスマートフォンから気軽にアクセスでき、特別な機材は不要だ。無自覚な健康な人も利用できるのが特徴的で、東急不動産など多くの企業に導入されている。専門家によるカウンセリングを低価格で提供できるのも強みだ。将来的には、AI キャラクタを実装し、24時間対応でのカウンセリングサービス提供を計画している。

キリフダ by synschismo

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synschismo は、ブロックチェーン技術を活用した NFT マーケティングプラットフォーム「キリフダ 」を開発、企業のブランド体験をオンチェーン化することで、ユーザとの新たな関係構築を実現する。

同社の狙いは、従来の複数のプラットフォームに囚われず、ユーザの行動実態を的確に捉えることだ。Spotify や SNS などの既存サービスでは、ユーザ活動の実体が分断されてしまうが、ブロックチェーン上の NFT なら、サービスを横断した一人一人のエンゲージメント度を体系的に把握できる。

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キリフダでは、具体的には、企業が synschismo のクラウドサービスで NFT を発行し、自社のブランド NFT をユーザに配布する。ユーザは公式 LINE から NFT を受け取ることができ、秘密鍵の管理は不要だ。受け取った NFT がユーザのさまざまな行動データとなり、企業はそれらをデータ解析してマーケティングに活用できる。

実際に音楽番組のリスナーに NFT を配布したケースでは、リスナーの30%が NFT を取得し、自主的なコミュニティも生まれた。synschismo の最終目標は「世界中のあらゆる愛をオンチェーン化すること」だ。同社では単なるマーケティングツールにとどまらず、ユーザ主導の Web3プラットフォームを実現したいとしている。


デジタルガレージ オープンネットワークラボ推進部共同部長の宇佐美克明氏によれば、今回の第28期の修了を受け、Open Network Lab は通算で155組のスタートアップを輩出したことになる。また、前回第27期までの輩出スタートアップの、次期資金調達達成率は60.4%、イグジット率は12.9%に達しているとのことだ。

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