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ウェルビーイング領域に大きな期待ーー住友生命「SUMISEI INNOVATION FUND」

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 企業の共創活動をリレー的に繋ぐコーナー、前回ご紹介した三井不動産「31 Ventures」に続きお届けするのは、住友生命のCVCファンド「SUMISEI INNOVATION FUND」です。 住友生命では、オープンイノベーションかつスタートアップ企業とのシナジーによる保険事業の新しい価値創造を目指し…

写真:住友生命保険相互会社 執行役員 兼 新規ビジネス企画部長/SUMISEI INNOVATION FUND事業共創責任者の藤本宏樹氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

企業の共創活動をリレー的に繋ぐコーナー、前回ご紹介した三井不動産「31 Ventures」に続きお届けするのは、住友生命のCVCファンド「SUMISEI INNOVATION FUND」です。

住友生命では、オープンイノベーションかつスタートアップ企業とのシナジーによる保険事業の新しい価値創造を目指し、2020年11月20日にSBIインベストメントと80億円規模のCVCファンドを共同設立しました。今後5年間で4〜50社への出資を計画中です。(太字の質問は MUGENLABO Magazine編集部、回答は住友生命保険 SUMISEI INNOVATION FUND事業共創責任者の藤本 宏樹さん)

SUMISEI INNOVATION FUND設立の経緯を教えてください

住友生命:今回、改めてのCVCファンド設立です。経緯としては「スミセイ中期経営計画2019」が立ち上がったころにまで遡るのですが、この中期経営計画では、オープンイノベーションの推進・フィンテックへの戦略的活用を掲げておりまして、2018年11月頃には既に、2社のスタートアップ企業様への出資を実施しています。

また、国内外計5つのファンドに対し50億円以上のLP出資を実行しておりまして、その後の「スミセイ中期経営計画2022」では、オープンイノベーションを推進させるだけでなく、新たな価値創造の加速も掲げることになりました。これら計画実行にあたり、投資と事業共創がセットになった、効率的かつ効果的な枠組みのCVCファンドが最適であると判断がなされ、今回「SUMISEI INNOVATION FUND」設立へと至ったというわけです。

事業投資ではなく、CVCが最適と判断した理由は

住友生命:オープンイノベーションの議論をする中で、スタートアップ企業様と事業部門の「時間軸」の違いがやはり課題になっていました。将来的に共創の可能性があっても、事業部門単体では現業の課題解決で手一杯だったり、優先度から先送りになることがしばしばあったんです。特にスタートアップ企業様にとっては「次年度以降」というのは「はるか遠い先」であって、そのズレから協業が進まないこともありました。だからこそ、別組織としてCVCファンドという形を取ることで、まず出資してスタートアップ企業様を支援しながら一緒に先の事業を創っていく、この仕組みを設計できることの重要度は高いと感じていました。

「スミセイ中期経営計画2022」全体像

2019年度の中期経営計画ではフィンテック分野に注力ということでしたが、2022年度へ向けて何か変化はありますか

住友生命:主な投資領域としては、弊社Vitalityを中心とした健康増進活動に結びつく、ウェルネス関連企業を視野に入れています。例えば「体・心・社会的健康」を目指すウェルビーイング領域、様々な疾病管理の領域、スマートエイジング領域において、事業共創を通じた同領域のエコシステム構築や新しい価値創造の可能性があると大きく期待しています。加えて、DX(デジタルトランスフォーメーション)化が進む世の中の流れの大局を捉え、将来的な新事業創造につながるような保険市場へのR&D投資も視野に入れています。

現在、具体的に取り組んでいる共創のケーススタディがあれば教えてください

住友生命:ヘルスケア領域のスタートアップ企業様との共創では、疾病管理のプログラムについて自治体の協力を得て実証実験の準備を実際に進めるなど、現在進行形で動きがあるものがあります。また、非対面での新たな顧客体験と接点づくりを目指したインシュアランスモビリティーの実証実験を多くのスタートアップ企業様と共に行わせていただいています。その他、KDDI ∞ Laboで出会ったスタートアップ企業様と様々な領域での実証実験も協議中です。

ファンドはSBIインベストメントとの共同設立ということですが、実際の投資判断までの役割分担などはどのようなプロセスになっていますか

住友生命:まず、やはりスタートアップ企業様の事業内容を深く理解させていただくのはもちろんのことですが、その際、弊社の関係事業部門の担当者も一緒に相互のニーズが合致し得る事業共創プランとなり得るかのディスカッションを実施します。また、その上で、SBIインベストメントの財務デューデリジェンスの中で投資可否を検討していただき、シナジーが見込め、かつ将来有望と判断された先に投資実行という流れとなります。

ありがとうございました。

ということで住友生命保険の投資事業「SUMISEI INNOVATION FUND」についてお届けしました。次回はテレビ東京さんの取り組みにバトンをお渡ししてお送りします。

GoogleやFacebookも注目するアフリカテック投資

ニュースサマリ:Google invests R2.2-billion into Western Cape 重要なポイント:2020年後半、アフリカのテック系スタートアップ(主にはフィンテック)に対してアメリカからの注目が高まってきている。アフリカのスタートアップ向けファンドやアフリカのスタートアップと投資家のマッチングサービスを始め、アメリカからアフリカへの投資に関する話題が立て続けに報じられて…

Image Credit : NG_Hub

ニュースサマリ:Google invests R2.2-billion into Western Cape

重要なポイント:2020年後半、アフリカのテック系スタートアップ(主にはフィンテック)に対してアメリカからの注目が高まってきている。アフリカのスタートアップ向けファンドやアフリカのスタートアップと投資家のマッチングサービスを始め、アメリカからアフリカへの投資に関する話題が立て続けに報じられている。

Rally Cap Ventures

  • 米国を拠点とするベンチャーファンドであるRally Cap Venturesはアフリカとラテンアメリカのプレシード及びシードステージのスタートアップへの投資を目的として9月に創設された。ファンドの資金は主に、Plaid、Stripe、Paypal、Facebookなどに所属しアフリカのTech領域に関心をもつシリコンバレーのエンジェル投資家から調達している(Stripeは10月にナイジェリアのフィンテック企業Paystackを買収した)。
  • Rally Capでは既にアフリカとラテンアメリカでの投資のために約100万ドルを調達。 2万5,000ドルから最大25万ドルをチケットサイズとして見込んでいる。彼らはすでにMono(ナイジェリア)とPngmeという2つのスタートアップへの出資を行った。
  • Rally Capの投資の焦点は、B2Bフィンテックのスタートアップと彼らをターゲットにしたファンドにある。これらが時間の経過とともにより多くの市場に進出する可能性が高いと考えているからだ。

Bezos Expeditions

  • アフリカの7カ国で国境を越えたP2P決済サービスを提供するChipper Cashは11月、アーリーステージのスタートアップに投資するアメリカ拠点のVC、Ribbit Capital主導のシリーズBラウンドで3,000万ドルを調達した。
  • このシリーズBラウンドにはAmazonの創設者Jeff Bezos氏の個人的なVCファンドBezos Expeditionsも参加した。Bezos ExpeditionsはこれまでBusiness InsiderやStack Overflow、Twitterなどに出資している。アフリカのテック企業への出資は今回が初。

Deal Room

  • NYを拠点にするAI Media Groupはアフリカで初となるAIに焦点を当てた無料の投資マッチングサービスDeal Roomを11月にローンチした。AIに関連した事業を行うアフリカのスタートアップとそこに関心を持つ投資家やVCを繋ぐことを目的としている。
  • Deal Roomローンチ時点ではCirrus AI、Cape AI Ventures、Knife Capital、E4E Africa、Britegaze & Intelligent Impactの6つの投資パートナーが参加。今後数カ月のうちに投資パートナーはさらに追加される予定だ。

Google

  • Googleは11月に、特定の企業ではなく南アフリカの首都ケープタウンと西ケープ州に対して22億ランド(1億5,000万ドル弱)の投資を行うことを発表した。資金は南アフリカ全土で高速インターネット接続を提供するための、西ケープ州の光ファイバー海底ケーブル網の構築にあてられる。同地域では雇用の創出やさまざまな地元産業の成長にも繋がるとして広く注目が集まっている。

背景:ナイジェリア最大の経済都市ラゴスには2020年1月にGoogleがGoogle Developers Spaceを開設。2018年に既にアフリカ初のフラッグシップコミュニティスペース「NG_Hub」をラゴスにオープンしているFacebookは、2021年後半の稼働開始を目標に同市にオフィスを作る計画を今年9月に発表した。

Googleは南アフリカだけではなく、アフリカ全土に手頃な価格で高速のインターネットアクセスを可能にするという目標を掲げたProject Taara の開始を先月に発表。Facebookも2Africa projectを始動し、4年以内にアフリカ16カ国でのインターネットサービス提供を目指して、海底インターネットケーブル敷設を現地通信会社と実施する予定。

執筆:椛澤かおり/編集:岩切絹代

アートをARで拡張したら社会はどう変わるーー「augART」で共創するTCMとKDDI Vol.2

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 課題とチャンスのコーナーでは毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディーをお届けします。 前半では、文化芸術体験をxR技術で拡張するThe Chain MuseumとKDDIの取り組み「augART」について、スタートアップサイドの話題をご紹介しました。 後半では、KDDIとして長…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディーをお届けします。

前半では、文化芸術体験をxR技術で拡張するThe Chain MuseumとKDDIの取り組み「augART」について、スタートアップサイドの話題をご紹介しました。

後半では、KDDIとして長年au Design projectに携わり、本プロジェクトでスタートアップと共に共創に取り組んだ5G・xRサービス戦略部エキスパート、砂原哲さんに話を伺います。文化芸術をデジタル化するとはどういうことなのか、社会実装のビジョンについて語っていただきました。(文中の質問者はMUGENLABO Magazine編集部、回答は砂原哲さん、文中敬称略)

はじまりはINFOBARを生み出した「au Design project」

AR×現代アートで目指す、新しい体験づくり

なぜ、文化芸術のデジタル化という文脈でThe Chain Museumさんと共創に至ったのか、きっかけはどのようなものでしたか

砂原:私は2002年にKDDIで「au Design project」を立ち上げて以来、デザイナーやアーティストとお付き合いさせていただく機会が多かったんです。デザイン会社として著名なPARTYの伊藤直樹さんもそうした一人で、彼が今回プロジェクトに参加したThe Chain Museumの遠山さんと一緒に「ArtSticker」という取り組みを始められたと耳にし、それからずっとウォッチしていたんです。

アート世界とテック・デジタルの架け橋ですね

砂原:デザインやアートは狭い世界なのでそうした昔からの色々な繋がりももちろんありますが、それ以上にアートとxRあるいは5Gという特性を考えると、KDDIとしてご一緒させていただくことでアートの世界に新しい風を吹かせることができるのではないかと思ってお声がけさせていただいたというのが大まかな経緯ですね。

xRと文化芸術の組み合わせ的にはどういった先行事例があるのでしょうか

砂原:現代アートの文脈でxRを用いたデジタル体験を提供している取り組みは、実際そこまで多くない印象です。先駆者を挙げるとすればロンドンに本拠地を置くAcute Artという会社があります。有名どころでいえばKAWSなどのアーティストと組んで、作品をARで表現することに取り組んでいますね。あとは、ARアート作品のEC販売にも乗り出していて、例えばAR作品を2週間の期間限定で800円程度で販売するなど、ARと文化芸術の商業利用の分かりやすい動きなのではないかと思っています。

augARTでも、今回、彫刻家・名和晃平さんとコラボレーションし、名和さんにゆかりのある場所の中で、auの5Gが繋がる特定のエリアではAR作品が出現したり、LiDARスキャナなど最新のAR技術を用いることでAR作品の質や精度を高めたりと。現代アート作品をAR化するという流れでは、グローバルレベルでも進んだ活動を展開していると思います。

プロジェクトでは「アートをデジタル化する」ことをどのように捉えているのでしょう

砂原:KDDIとしては5Gの流れやxRの技術を利用して、現代アートの文脈で新しい事業を展開できないかという目論見があります。一方で、KDDIは「au Design project」が立ち上がるきっかけにもなったINFOBAR(インフォバー)に始まり、携帯電話の世界においてプロダクトデザインによる価値表現に力を入れてきた歴史がありました。

しかし、5G時代になり優れたプロダクトデザインがもたらす喜びから、5Gを最大限に活用した豊かなデジタル体験がもたらす喜びにシフトすることにしました。

そして、au Design projectで培った経験・精神を受け継ぎ、文化財や現代アート、メディアアートなど文化芸術体験を拡張するクリエイティブプラットフォーマーの役割を目指す、というのが大きな視点です。

5GやxRを活用したアートのデジタル化というのは、具体的にどのような体験になるのでしょうか

砂原:5Gは、屋外、モバイル環境下でのリッチなxR体験を実現可能にするところに大きな魅力を感じていました。そして単に屋外の現実空間にデジタル情報を重ねるというのでなく、場所性を意識したxR体験を構築することが重要です。その町やその場所の歴史的なコンテキストだったりとか、記憶に沿った作品作りをしないと感動するレベルのxR体験には至らないのでないかと思います。

確かに街とデジタルデータの融合は見る人の記憶に刺激を与えそうです

砂原:5GとxRの技術が確立していく流れの中、現代アートをxR化するということ自体は至極当然の流れだと思います。逆に言えば現代アートと、5GやxR技術を結び付けることで、新しい現代アートの体験が生まれることは必然なのではないかと思ってます。

AR×現代アートで目指す、新しい体験づくり

目の前のオブジェクトや人物がリアルタイムに名和晃平の代表シリーズPixCellへと変貌する「PixCell_AR」

今後、現代アート市場がデジタル化されることでアートビジネスにはどのような変化が起こると思いますか

砂原:私たちとしても、まだまだ始まったばかりのプロジェクトですし、かつグローバルなアートマーケットにおいてAR作品の売買が積極的に行われているような状況ではありません。また、今までの現代アートの流れを踏襲するのであれば、当然真贋証明の問題なども解決しなければいけないと感じています。

また、そうした問題が解決したとしても、xR作品のようなものを買いたいと思う人がどれだけいるのか、あるいは買いたいと思うようなアート作品が生まれるのかは別問題で未知数でもありますよね。

商業化はひとつの目標ではありますが、KDDIとしてはxRのアート作品を売買することにフォーカスするというよりは、どちらかというと現代アートにxRを用いた新しい体験をもたらしてマネタイズしていくことの方が大切かなと思っています。今回の名和晃平さんとの取り組みは全て無償で提供させていただいていますが、ゆくゆくはそうした新しいアート体験に対してなんらかの対価を頂けるようになるが理想的な形だと思います。

TikTokやInstagramのようにセミプロがクリエイティブな世界に足を踏み入れることも多くなってきました。こういったインターネットならではとも言える、クリエイティブの民主化のような流れをどう見られてますか

砂原:鑑賞者がクリエイターになっていく、という流れはもちろん今まさに起こっている流れだと思います。ただ、現時点では、まず現代アートとxRが出会った時、どれだけ質の高い体験を実現できるのか、その可能性を探り、示すことが大事だと感じています。まずは提供者として体験価値の向上に重きを置くべきなのだと思います。

その上でクリエイティブ志向のある方はそうした体験から刺激を受けて、新しい作品を作り始めるとか、そういうマーケットの広がり方が理想なのだと思います。現代アートと5GやxRのような先端テクノロジーを融合させた世界でチャレンジしている人は、まだまだ人材としても少ないので、教育プログラムやアワード開催などを通して人材を育てることにもゆくゆくは力を入れられたらと思っています。

最後に、The Chain Museumさんとの取り組みをKDDIが共創し、作り上げることで社会がどのように変化していくことが理想的でしょうか

砂原:(コロナ禍が突発的に発生する前)元々は現代アートの体験を先端技術でアップデートしていきたいというところから始まったのがこのプロジェクト、共創の取り組みです。ただ世界情勢がコロナ中心に動くようになったことで、例えば美術館に関しても数十万人を動員するような企画展が難しくなったりと、美術界にもデジタル化がより一層求められることが浮き彫りとなりました。

事前予約や作品のEC販売ももちろんデジタル化という文脈では進めるべき道のりの一環です。しかし、私たちとしてはこの機会に全くこれまでと違うアート体験を実現できるチャンスであるとも思っていますし、そこから美術界における新たなマネタイズ手法も生まれてくると期待しています。

そのためにも、まずはきちんと持続可能な事業の形を追い求めなければいけないと感じています。サステイナブルなアートの新しい体験の成功事例を生み出し、結果的にマーケットが盛り上がってみなさんがついてきてくれる状態が最高の結果なのではないかなと信じています。(了)

ナイジェリアのチャレンジャーバンクKuda、SBI Investmentら出資

ピックアップ:After raising $1.6m pre-seed last year, Nigerian digital bank, Kuda bags a $10m seed investment ニュースサマリ:モバイルベースのチャレンジャーバンクをナイジェリアで展開するKudaは、2019年9月にナイジェリアのスタートアップのプレシードラウンドでは最高額といわれた160万ドルの資金調達…

Image Credit : Kuda

ピックアップ:After raising $1.6m pre-seed last year, Nigerian digital bank, Kuda bags a $10m seed investment

ニュースサマリ:モバイルベースのチャレンジャーバンクをナイジェリアで展開するKudaは、2019年9月にナイジェリアのスタートアップのプレシードラウンドでは最高額といわれた160万ドルの資金調達に続き、先月11月にシードラウンドで1,000万ドルの資金調達を実施した。これはシードラウンドでの調達額としてアフリカ最大といわれている。

このラウンドはベルリンを拠点とするVCのTarget Globalが主導し、Entrée CapitalSBI Investmentが参加、AuxmoneyのRaffael Johnen、HolviのJohan Lorenzen、Stashの創設者であるBrandon KriegとEd Robinsonや、Nubank、Revolut、Chimeなど、ブラジル、英国、米国などのモバイルチャレンジャーバンクにも投資しているOliver Jung氏・Lish Jung氏といった著名なエンジェル投資家らも参加した。

詳細な情報:Kudaは現在、個人消費者と中小企業の両方で30万人を超える顧客がプラットフォームを使用しており、毎月5億ドル以上のトランザクションを処理している。Kudaのデジタルバンクの特徴は、モバイルファースト、ゼロに近い低額な手数料、顧客目線でのサービス(需要がありながらレガシーな銀行が行ってこなかった類のサービス)や充実したオプションサービスなどにある。

  • Kudaはフルスタックのデジタルオンラインバンクで、全ての取引がKudaのプラットフォーム上で完結できるが、同国内での事情などを考慮し、西アフリカの3つの銀行、Guaranty Trust Bank(GTB)、Access Bank、ZenithBankと戦略的パートナーシップを結び、ユーザーはデビットカードを使用しこれらの銀行を介して現金の引き出しもできる。
  • これまではナイジェリア国内のみでサービス展開をしてきたKudaだが、今後はアフリカ全土や世界中に住むアフリカ人がどこにいても利用できる銀行にしていきたいと考えている
  • 2016年にBabs Ogundeyi氏とMustapha Musty氏によって創立されたKudaはKudimoneyという融資プラットフォームを提供していたが2019年6月にナイジェリア中央銀行から銀行免許を取得し、デジタルバンクへと事業を移行した。

執筆:椛澤かおり/編集:岩切絹代

混迷極めるベトナム配車サービス市場、オープンプラットフォーム戦略で攻めるBe Group

ピックアップ:Vietnamese ride-hailing startup Be Group’s alternative approach to success 重要なポイント:新興国を中心に盛り上がりを見せる配車サービス市場はGrabやGojekの成功を受け、同様のビジネスモデルを目指し復数のサービスが市場を奪い合う構図となっている。中でも特に市場のプレイヤーが多いベトナムで後発の…

Image Credit : Be Group

ピックアップ:Vietnamese ride-hailing startup Be Group’s alternative approach to success

重要なポイント:新興国を中心に盛り上がりを見せる配車サービス市場はGrabやGojekの成功を受け、同様のビジネスモデルを目指し復数のサービスが市場を奪い合う構図となっている。中でも特に市場のプレイヤーが多いベトナムで後発の参入となるBe Groupは、多くのサービスのようなSuper App化戦略は取らず、オープンプラットフォーム型のサービスでMaaSプロバイダーに特化することで差別化を図ろうとしている。

詳細な情報:ベトナムの都市部の人口は増加している一方、交通渋滞や公共交通機関の欠如といった問題があるためバイクの配車サービスの需要は高い。その一方でここ数年で参入するプレイヤーも多く、GrabやGojekなど既に他の国で成功を収めているサービスも参入しているため、状況は非常に混沌としている。

  • 2018年にサービスを開始したベトナムのBe Groupは同国のライドハイリングサービス業界の中では後発だが、アプリのダウンロード数はすでに900万を超え、2019年上半期にはベトナムの市場シェアの16%を占めるGrabに次いで国内第2位の配車サービス会社となった。
  • Be Groupは同社のサービスを「オープンプラットフォーム」と位置付け、MaaSプロバイダーを目指す。特に競争の激しいフードデリバリー事業への参入は避ける、Super Appは目指さないなど、他社とは異なるアプローチで市場での差別化を図る。
  • Be Groupのアプリ上では配車サービスのBeBikeとBeCar、BeTaxi、配送サービスのBeDeliveryを提供している。Be Group自体が独自のサービスを提供するのではなく、アプリを介してパートナーシップを結んでいる復数の企業のサービスが利用出来る。
  • 例えばBeTaxiを利用する場合、パートナーシップを結ぶシンガポールの運送会社、ComfortDelGroのベトナム部門であるVinataxiの予約であったり、提携している現地タクシー会社向けの配車管理プラットフォームを通じてベトナムタクシーアライアンスに加盟しているタクシーを手配できる。
  • サービスの品質を担保するため、Be Groupではドライバーのための強力なサポートシステムを構築しトレーニングプログラムを提供する。ドライバー同士の競争も激しい中、ドライバー側も収入面でプラスに繋がるメリットを感じられるトレーニングを実施することで、サポート面でも一定の評価を得ている
  • 新型コロナウィルスの流行が広まり始めた際には、食料品配達(料理の配達ではなく、生鮮食品など食材の配達)の需要の増加を察知し、迅速にBeShoppingというサービスを開始した。同社によればこちらも好評で現在毎月200%から300%の成長を続けているという。

背景:ベトナムのライドハイリング市場は2014年にGrabがサービスを開始し2015年頃から普及し始めた。その後は2018年から2019年にかけてGo-JekGoViet)、AberFastGoVATO,、MyGoなどが続々とサービスを開始した。現在Grabが利用者数トップで市場シェアの約70%を占める。

執筆:椛澤かおり/編集:岩切絹代

組織づくりで得た「何があっても人を信じるな」の真意ーータイミー小川嶺氏・スタートアップの組織論

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本稿はベンチャーキャピタル、サイバーエージェント・キャピタルが運営するサイトに掲載された記事からの転載 創業2年で100名以上の組織を作り、20億円を超える出資を集めて成長中のスタートアップ、それがタイミーだ。彼らが提唱する「ワークシェア」の概念は、今、まさに変わろうとしている働き方のトレンドを掴み、大手コンビニや飲食チェーンなどを中心に全国へ拡大しつつある。(BRIDGE編集部注:本稿はタイミー…

タイミー代表取締役の小川嶺氏

本稿はベンチャーキャピタル、サイバーエージェント・キャピタルが運営するサイト掲載された記事からの転載

創業2年で100名以上の組織を作り、20億円を超える出資を集めて成長中のスタートアップ、それがタイミーだ。彼らが提唱する「ワークシェア」の概念は、今、まさに変わろうとしている働き方のトレンドを掴み、大手コンビニや飲食チェーンなどを中心に全国へ拡大しつつある。(BRIDGE編集部注:本稿はタイミー代表取締役の小川嶺氏にスタートアップにおけるカルチャー作りについて聞いたインタビュー記事の転載になります。質問はサイバーエージェント・キャピタル編集部、回答は小川氏、です)

最初は失敗したタイミーのカルチャーづくり

現在の体制規模は?

小川:現在(※2020年5月時点)はアルバイトなども含めると140名ほどの規模になりました。特に今年は新卒採用も実施して新しく20数名が参加してくれています。

一気に拡大すると課題も出てくると思いますが

小川:マネージャー層が優秀なので、一任しています。結局、何かしら一人で自立できる人しかスタートアップという場所にはこないと思うんです。もちろん更に大規模な組織になれば困ったことも出てくるのかもしれませんが。

自律的な組織づくりに必要なカルチャーですが、いつ頃から着手しましたか

小川:渋谷に移転したぐらいの時ですね。サービス開始してから1年後ぐらいです。成長している多くの企業を拝見していると、やはりミッション・ビジョン・バリューがはっきりしてて、会社に入った人たちは同じような共通言語を使うし、こういうものはやはりよいなと。それで20人ぐらいの規模の時に一回作ったんです。ただ、全然しっくりこなくって。それで一旦やめて、50人ぐらいの規模になった時、もう一度作り直したという感じですね。

タイミー、3つのValue

■High Standard : 当たり前の目線を高く
若さや勢いはそのままに、常にハイクオリティな仕事を。全員が即戦力でコアメンバー、業界トップを維持するために学び成長し続ける

■Super Flat : 年齢/役職関係なく
最高の結果を出す人は、年齢や役職など気にしない。誰に対しても率直、謙虚であるべき。

■Yatteiki : 走りながら考える!
業界の先駆者である私たちにとっては、全てがやってみなければわからないことばかり。当たり前のことも泥臭くやりながら、常にチャレンジし続けよう。

最初の挑戦はなぜ失敗した

小川:(最初に作った時は)経営陣ももちろん参加はしていたんですが、知り合いのクリエイティブをやっている方に依頼して作ってもらったものを叩く、という方法でした。特に社員全員をヒアリングして、そこから導き出したんですがそれがよくなかった。

今回は役員などは除いて、実績出してる人を3人ぐらいピックアップして、どうして彼らは実力を出せたんだ、なぜ彼らに仕事を任せられるのか、そういう分析を事細かくしてみたんです。最初の方法は全員に聞いてしまった。でもそうじゃないんです。みんなが認める結果を出してる人を選んで、その共通点を見つけだしてミッション・ビジョン・バリューを導き出す。あまり誰もやってない方法なんですが、すごくいい方法だと思ってますよ(笑)タイミーに入った人が自分はどういう人になればいいのか、そういうイメージしやすいロールモデルを作る。経営陣が作るとそこが乖離する可能性があるんです。あくまで社員の視点で作ることが大切だと思ってます。

カルチャーは作ってからが勝負という声もよく聞きます

小川:月次の報告会などで各エリアのマネージャーが成果を発表する時間があるんですが、冒頭の挨拶で自分が必ず伝えるようにしたりしてますね。あと、やっぱりMVPを決めて表彰するんですが、みんなそれを目指して頑張るのでわかりやすいですね。取れなかったりすると、やっぱり悔しそうな顔をするんですよね。次は自分が取るぞ、と。

あとツールとかももちろん活用しています。同じパーカー着たりとか。ただ、そういうのは組織文化を作るため云々ではなく、社員の自主性に任せておくべきかなと。

人を信じるな、自分を信じろ

小川さんはいわゆる「学生起業家」です。組織づくりで迷うこともあるのでは

小川:解けない問題ってないじゃないですか。考えることを否定しているから解けないわけで、ずっと考え続ければ必ず答えに辿り着くと思ってます。私、将棋好きなんです。詰将棋とかホント最高でずっと考えてられる(笑)

周囲にも優れた経営者たちがいます。助言を求めたりは

小川:他人の(特に同年代の)経営者を鵜呑みにする、というのはやはりしないです。彼らのアドバイスを聞かないというのともちょっと違ってて、自分が目指す経営者像はやはり孫(正義)さんだったり、藤田(晋)さんだったり、南場(智子)さんだったりするんです。例えばあした会議の仕組みとかはめちゃくちゃ参考になりますし。あと、藤田さんからの言葉で「何があっても人を信じるな、自分を信じろ」っていうのがあるんです。

確かに会社には自分よりも経験のある歳上の方がいるので、どうしようかなと思った時、やっぱりあっちを信じたり、となる自分もいるんです。そこを全部こう、自分が全ての責任を負うんだっていう覚悟で自分で決めろ、と。

自分たちのスタイルを作る

小川:それにタイミーって平均年齢で20代の若い会社なんですね。だから基本的になんでも自分たちで作っていくんだという意識があるんです。もちろんティール組織だったり色々な組織論を検討したりはしました。でも結局、そのどれかにハマるんじゃなく、必ず問題は発生しますからそこから導き出す方が正しいと思うんです。

2019年上場を最初に決意ーースペースマーケットが乗り越えた5つの壁

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本稿はベンチャーキャピタル、サイバーエージェント・キャピタルが運営するサイトに掲載された記事からの転載 2019年の終わり、国内シェア経済を牽引するスペースマーケットが東証マザーズに上場した。重松大輔氏は、スタートアップしたその時から2020年までの上場を決意してこの事業に臨んだという。前職での上場経験を元に彼は何を選択し、何をやらなかったのか。その意思決定のプロセスに6つの質問で迫る。 Q1:シ…

スペースマーケット代表取締役、重松大輔氏

本稿はベンチャーキャピタル、サイバーエージェント・キャピタルが運営するサイト掲載された記事からの転載

2019年の終わり、国内シェア経済を牽引するスペースマーケットが東証マザーズに上場した。重松大輔氏は、スタートアップしたその時から2020年までの上場を決意してこの事業に臨んだという。前職での上場経験を元に彼は何を選択し、何をやらなかったのか。その意思決定のプロセスに6つの質問で迫る。


Q1:シェア経済の中、なぜ「スペース市場」を選んだのか

エンジニアじゃない僕がやる上で、営業ハードルがあるものが自分に向いているだろうなと。まず不動産オーナーを説得して登録してもらうのにはそこそこ営業ハードルがあるんじゃないかと考えたんです(重松氏)。

重松:やっぱりこう、リアルが好きなんですよね。前職がイベントなどの写真をネットで販売する、リアルとバーチャルの掛け合わせみたいなビジネスだったので、そういうのをやりたいなと。あと、マーケットがデカいところで勝負したかったので、不動産市場は非常に大きいですよね。さらにここ、5年〜10年でやってくる大きな技術トレンドを考えた時、アメリカをみたらやはりAirbnbなどが急成長してましたから、この不動産のシェアリングは確実にやってくるし、不可逆な流れになる。

多くが同じようなことを考える中、ここで勝てると信じた理由は?

重松:参入障壁の考え方ですね。エンジニアじゃない僕がやる上で、営業ハードルがあるものが自分に向いているだろうなと。プラットフォームって「ニワトリ・タマゴ」じゃないですか。まず不動産オーナーを説得して登録してもらうのにはそこそこ営業ハードルがあるんじゃないかと考えたんです。

ーー重松氏にもう一つ、スペースマーケット以外に残った最後のアイデアを聞いてみたところ、意外にも、幼稚園や保育園のオンライン化サービスを考えていたのだそうだ。

重松:子どもたちの個人情報ってこれから取得がどんどん厳しくなるだろうなと考えていたんです。当時は幼稚園とか保育園って連絡帳がまだ紙のままだったり、保育代も茶封筒でやりとりしていたり。これは絶対オンライン化できるだろうと考えてました。ここをサービス化できれば、蓄積される子どもたちのデータは大きいだろうし、サブスクリプションのようなモデルも積み上げが効きます。あと、前職でやはり子どもたちの写真を扱ってましたから、想像以上に営業ハードルが高いんですよね。なので、ここは行けるんじゃないかなと。

Q2:創業期に「やらなかった」こと

気をつけていたのがやっぱりカルチャーで、初期の10人ぐらいの時におおよそ決まってくるんですよね。特に最初って誰でもいいから手伝って欲しいという意識ってあると思うんです。でもこれは絶対やめようと(重松氏)。

重松:本当に最初の最初は共同創業者を探すところがあって、私は完全にエンジニアのバックグラウンドはありませんから、ゴリゴリとプロダクトを作った経験のある人を探すっていうのが最初にやったことですね。(執行役員CINOの)鈴木(真一郎)がそうなんですが、まさに妻(※)が昔に投資をした先という縁があって。彼じゃないとプロダクトが成立していなかったのでそれは非常に大きかったですね。再現性は難しいですが(笑)

※重松氏の妻、佐藤真希子さんは現在、iSGSのマネージング・ディレクターで、当時はサイバーエージェント・ベンチャーズで投資を手掛けていた人物

重松:準備期間が2カ月ぐらいあったんですが、私は企画書を作ってひたすらスペースを集めて回ってました。

創業に近い経験で2度目のスタートアップ、出だしでイメージしていたものは

重松:資金調達するところまでを描いて立ち上げていましたね。どうすれば一番良い条件で資金調達できるかイメージして、まずプロダクト出して話題にし、その後、ピッチコンテストで優勝する、みたいな。あと、上場については絶対にオリンピック(2020年)までにやると、創業した当時からずっと考えてました。

逆にやらなかった、やらないと決めたことは

重松:前職(フォトクリエイト)での経験はやはりめちゃくちゃ活きてて、特に組織ですね。私は15番目ぐらいに入ったんですけど、その後、50人、120人と増えていくわけです。それぞれのフェーズっていうのがあって、必要とされる人たちもちょっとずつ変わっていくじゃないですか。

最初はなんでもやるゼネラリスト、資金調達などが進んできたら特定のプロフェッショナルや、他の組織で経験を積んだ人たちが入ってきて。こういった状況を経験済みだったことは大きかったです。それで、気をつけていたのがやっぱりカルチャーで、初期の10人ぐらいの時におおよそ決まってくるんですよね。特に最初って誰でもいいから手伝って欲しいという意識ってあると思うんです。でもこれは絶対やめようと。

だから採用についても、いきなり入社、ではなく、社会人インターンじゃないですが、興味ある方に手伝ってもらって、お見合い期間っていうんですかね。3カ月とか半年ぐらい手伝ってもらってから、資金調達のタイミングなどにお声がけする。これは結果的にやっぱりよかったですね。

Q3:投資家をどう選ぶ

チマチマ駆け引きしたりせず、プロダクトをデッカくして、沢山の方に喜んでもらうものを作るっていうのが大前提ですよね(重松氏)。

重松:特にシードとかアーリーステージの時はやはり人ですね。しっかりサポートしてくれるかどうか。当然、バリュエーションの考え方もあるのですが、トラックレコードじゃないですけど、箔が付くというのでしょうか、こういったブランド価値もあると思っています。

投資家との付き合い方、特に距離感はどう考えてましたか

重松:彼らももちろん(いつかは株を売却しなければならない)そういう生き物なので。ただ、まずはその果実を大きくしなければ話にならないじゃないですか。チマチマ駆け引きしたりせず、プロダクトをデッカくして、沢山の方に喜んでもらうものを作るっていうのが大前提ですよね。

まあ、最後はこう、気持ちよく出て行っていただけるようにする(笑。彼らも別に気前のいい人たちじゃないわけで、しっかりとリターンで商売してるわけですから。期限もありますし、それをちゃんと意識してお付き合いする必要があるわけです。起業家、経営者としてはちゃんと結果でお返しするというのも筋じゃないですかね。

Q4:撤退基準

撤退するっていう頭はなかったですね(笑。まあ、キャッシュが尽きて、投資が付かなかったら辞めざるをえないわけです。今だから言えますが、シリーズBラウンドは結構苦労したんですよ(重松氏)。

ちょっと話を変えて間違いなくイケると思ったタイミングっていつでしたか

重松:まず最初にいけるなと思ったのはサービス開始して半年後のハロウィン。大学生とかがレンタルスペースを借りてくれるようになったんですよ。それまでは正直、あまり鳴かず飛ばずだったんですけど、そこからですね。ふわっと上がるようになって。

ちなみに最初の立ち上げ時期、ビジネス用途で考えてたんですよ。Airbnbのビジネス版。だから最初に入ったスペースも例えば映画館とか野球場のように見栄えするものが多くて。あと、小さい個人宅はリーチがそもそも難しいですよね。そこからは角度が変わるようなことはないにしても、着実に積み上がっていって、さらにそこからサービス開始後3年目ぐらいですかね。いろいろな機能を実装したんです。インスタントに物件を予約できるボタンやポイントのようなサービスですね。その辺が整備されると劇的に伸びていきました。

ちなみに撤退基準って決めてましたか?

重松:撤退するっていう頭はなかったですね(笑。まあ、キャッシュが尽きて、投資が付かなかったら辞めざるをえないわけです。今だから言えますが、シリーズBラウンドは結構苦労したんですよ。当時は経理部長すらいなくて、私が回ってたんですね。もちろん数字も伸びてるんですが、月次で1000万円が1200万円になるとかちょっとインパクトが足りない。最終的にはなんとか出資してもらうことができましたが、なかなか思い出したくない時期ですね(苦笑。

Q5:重要指標はどうメンテナンスする

さらに成長するとレンタルスペースの運用代行の事業者(企業)のような方々が増えてきてその方々の満足度はどうなんだ、というようにまた見るべき数字に変化が出てくる。こういった数字をそうですね、四半期だったり半年で自然と見直してきました(重松氏)。

上場時の開示資料から、KPIはGMV(流通総額)とスペース数とされてました。これは最初から決まってましたか

重松:もちろんそれ以外の細かい指標もあるんですが、大きな数字は最初から変わってないですね。ただ、初期の頃ってすごく稼働しているスペースもあれば、そうでないものもあってそういう傾向というのかな、それが見えてきたのはやはりシリーズBラウンドあたりかな。

チームで数字を追いかけるモチベーションや仕組み

重松:Slackなどで毎日数字のデータが配信されてくるんですけど、それをチームでしっかり評価したりとか、毎月の社員会で進捗を発表したり。上場後は重要なデータは開示できないですけど、未上場であればタイムリーに共有したり、一時期は大きな画面で表示したりしてましたね。ベタですが、可視化はやはり大切です。チームでの数字の追いかけ方ですが、ニワトリ・タマゴのロジックでいくと、やっぱりニワトリ(※スペース)を連れてこないとビジネスとして成り立たないですよね。ただ、何が稼働するかなんてわからないから、とにかく集めてこようよ、というのが初期。

で、徐々に成長してくると、こういうスペースが稼働するよね、実はこのスペースはあまり入らなかったねという「稼働率」が見えてきたんです。さらに成長すると運用代行の企業のような方々が増えてきてその方々の満足度はどうなんだ、というようにまた見るべき数字に変化が出てくる。こういった数字をそうですね、四半期だったり半年で自然と見直してきました。

Q6:上場直前期に起こること

これまで自由にやってきたのに、勤怠管理しなきゃいけないとか、こう、大人の会社になるっていうんでしょうか。これ嫌な人もいるわけです。上場前にも関わらず、やっぱりどうしても合わない人が出てきてしまったり。仕組みが変わってしまいますからね(重松氏)。

上場直前期に特に留意して実行したことは

重松:上場後を見据えてのアクションとして、事業会社に多く入ってもらったことですね。あと、上場後って色々大きく踏み込んだマーケティングなどはやりづらいんですね。そこで2億円ほどを投じて初めてのテレビCMを打ったりしました。今までなかなかやってこなかったようなことを実験も含めてテストしてみた感じですね。あとは社内規定を揃えたり、ガバナンスなど、上場企業として必要な対応などは当然やりました。ただ、これまで自由にやってきたのに、勤怠管理しなきゃいけないとか、こう、大人の会社になるっていうんでしょうか。これ嫌な人もいるわけです。上場前にも関わらず、やっぱりどうしても合わない人が出てきてしまったり。仕組みが変わってしまいますからね。

実はオプションを理解していない人も一定数いるんです。もちろん説明はしますよ。けど、ここが難しいところなんです。行使できる時期も言い切れませんし、あと、オプションでしばりすぎると、それありきみたいになっちゃうのも嫌でしたから。なので、途中から(オプションについては)コミュニケーションは変えましたね。それよりも目の前の事業に向き合って、自分を成長させることができれば、結果的にそういうインセンティブも手に入るし、ホストやゲスト、社会にも還元させることができるよ、と。

 

労働が拡張する世界ーースタートアップが必要だったワケ/Telexistence 富岡仁氏 Vol.2

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 前回のインタビューではハードウェア・スタートアップの大きな壁となる実証実験をどのようにクリアし、創業からわずか3年というスピードで遠隔操作ロボットという新たな技術を試用運転にまで進めることができたのか、その逆転の発想についてお伺いしました。後半ではそのようなスタートアップがどのようにして生まれたのか、…

テレイグジスタンス代表取締役CEO、富岡仁氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

前回のインタビューではハードウェア・スタートアップの大きな壁となる実証実験をどのようにクリアし、創業からわずか3年というスピードで遠隔操作ロボットという新たな技術を試用運転にまで進めることができたのか、その逆転の発想についてお伺いしました。後半ではそのようなスタートアップがどのようにして生まれたのか、富岡仁さんの創業ストーリーについて伺います。(文中の質問者はMUGENLABO Magazine編集部、回答はTelexistence代表取締役CEOの富岡仁氏、文中敬称略)


はなぜスタートアップ企業になったのか

創業の前は三菱商事ですよね

富岡:長期売電契約が紐付いている太陽光や風力などの発電所に投資したり売却する仕事をしていました。大学がコーポレートファイナンス関連の専攻だったので、三菱商事に入社した当初は財務部に配属されました。総合商社を選んだのは、新卒時点で何か一つの事業セグメントを決めることができなかったので、色々な事業を総合商社で幅広に探索できればという感じでそこまで深い意味はなかったです。

その後、ファンド運営で投資も手掛けられる

富岡:(三菱商事在籍中)スタンフォードへの社費留学から戻ってきた時ですね。グロースファンドの組成と運用を2年半ほどやりました。おおよそ300億円ぐらいの資金を日本のLP投資家から集めて米国のスタートアップへグロース投資をしてました。今はもう名前がSnapに変わってしまいましたが、当時のSnapchatだったりUberなどが出資先でした。そういうのを数件やって、もういいかなと。ファンド投資といっても所詮はサラリーマンとして関わっていて、いくら資金を集めて投資をしても個人としてのリターンは変わらない。元Andreessen Horowitzのファンドパートナーとその彼のチームと一緒に仕事をしましたがそれを実感しました。

そこからスタートアップするわけですが何がどうなってテレイグジスタンス(遠隔存在)に

富岡:三菱商事には結果的に12年ほど在籍しました。事業開発や投資など三菱商事でやれることは全部やったからそろそろいいかなと。じゃあこの会社で経験できないことは何かと考えた時に、スケーリングを体験したいと思いました。スケーリングの議論は、最も基本的な話で言うなら、サイズが変化した時にその系がどう反応するか、という話です。その観点で言えば、企業のサイズが倍になると、組織として何が複雑化するか?企業の売上が短期間で2倍3倍になると何が起こるか?物理学でいう「超線形スケール化」という現象、もしくは非線型的挙動みたいなものをビジネスの世界で見てみたい、経験してみたいと思いました。

当たり前ですが、大企業は急成長をするような事業というよりは、あくまで実証済みの技術とビジネスモデルをベースにキャッシュフローが読みやすい案件に取り組む機会が多いので、非線形でスケーリングしそうな事業に挑戦することに決めました。未実証な革新的技術を核にしたアーリーステージのビジネスですね。

で、テーマを探していた時に出会ったのがVRだったんです。

創業時の様子

三菱商事を辞めてTelexistenceをすぐに創業した、ということじゃないんですね

富岡:我々のスタートアップ・ストーリーですが、実は非常に独自のストーリーです(笑。

三次元の空間伝送という意味でVRには大きな可能性を感じたので、どうやってこの技術を事業化するかを模索していた時、Supership元代表の森岡(康一)さんと意気投合して、一緒にVRの新規事業をやろうよということになりました。VRはスタートアップとしてやるにはアーリーすぎて日本の資本市場ではミスマッチがあるし、かといって大企業は先も話をしたようにこういうリードタイムが長すぎるものは嫌う。Supershipはそういう意味で「中間点」でした。KDDIという大企業の資本も活用しつつ、創業数年という組織なので機敏にも動ける。これはいいぞ、と。それで転職しました。

結果的には半年ほどでVRの新規事業をやりながら現在のTelexistenceを創業することになるんですが。

そこで遠隔存在の技術に出会った

富岡:当時、私にはVRともう一つ、新しい領域の技術やビジネスモデルをソーシングしてくるというミッションも担っていました。東大名誉教授の舘先生やテレイグジスタンス技術との出会いもその流れでした。

当時、まだ副社長だった髙橋(誠・KDDI代表取締役社長)さんを東大や慶應の研究室にお連れして、技術をプレゼンし、KOIF(KDDI Open Innovation Fund)の投資会議にかけて自分は投資担当として全ての過程に参加していました。で、これはいいものだから進めようとなるわけなんですが、ある時点から、これ革新的な技術はあるけど経営や資金調達など会社に必要な機能はどうするんだ、という論点が浮上しました。技術ドリブンの大学発ベンチャーにありがちな話です(苦笑。

僕自身は、テレイグジスタンス技術の可能性を信じてましたし、技術的な難しさはあるものの、ティッピングポイントを超えて社会実装された時の変化率もしくは進化率は自分が今まで感じたものの中では一番大きいと思ってました。なので誰もやらないなら、自分でやってしまおう、と。当時のKDDIやSupershipの関係者とも相談し、経営側の人間として立ち上げに参画することにしました。

なかなかのジャンプですね

富岡:技術が実際にあったのも大きかったです。流石に紙だけのコンセプトであれば心配ですが、東大の研究室で実際にプロトタイプが動いているわけですし、エンジニアを揃えて資金と実現までの時間軸を考えてスケーリングさせるのはまさに自分が三菱商事をやめて体験したかったことだと思いました。

ただやはり、既に存在している市場で技術やビジネスモデルの焼き直しをするのではなく、本当にゼロから市場を作ることになりますからね。何もない。本当の新規事業です。そういうものをやるのって、まあ、しんどいですよね。

サラリーマン時代に事業・資産買収やシリコンバレーのグロースファンドをやってファイナンス知識・事業に関する経験もある程度備わっているわけです。創業の難しさはどこにありましたか

富岡:創業することに難しさはあまり感じませんでした。誤解を恐れずに言えばシードファイナンスはその後に経験するハードシングスに比べればまだ楽です。そこからです、本当の難しさは。技術・事業のマイルストーンをきちんと実現し、正のキャッシュフローが出るまで醸成した期待値を調整、維持、拡大しないといけない。この過程でスタートアップをやっている人間にかかるプレッシャーは相当大きくなります。

MODEL Hの遠隔操作(2018年)

更に言えば、ハードウェアスタートアップ独特の難しさもある

富岡:例えばファイナンスで言えば、ソフトウェアスタートアップなら一回の資金調達でランウェイを18カ月用意しましょう、みたいな資本市場の暗黙の共通認識があると思います。これに従いソフトウェアのスタートアップは資金調達後、18ヶ月以内で重要なマイルストーンをクリアしてその後もファイナンスを繰り返していくわけです。今はソフトウェアビジネスが全盛の時代なので、この18ヶ月というのがいつの間にかソフトウェアのみならず全てのベンチャー投資の共通認識になるわけです。

一方、ロボティクスやハードウェアビジネスが18ヶ月以内に技術・事業開発で、次の資金調達の時価の根拠となるマイルストーンをソフトウェアビジネスのようにいくつもクリアしていくのは難しい。従って、18ヶ月分の資金調達、という認識がある資本市場で、ハードウェアスタートアップは24ヶ月や30ヶ月分の資金を一度の調達で確保しなきゃいけない。

このギャップを乗り越えるには、ビジョンや技術、事業構想ももちろん重要ですが、それを誰がやるのか、という実行者の実力を、実行前に証明することが必須です。

どれだけ経験していてもロジックだけではどうにもならない

富岡:当初は2017年5月にシードファイナンスをして次の調達予定は2018年11月の予定でした。きっちり18ヶ月です(笑。当時の私はハードウェアは初めてで資金繰りの計画を甘く見積もってました。

想定外の部材を準備しなくてはいけなくなったりと、ロボット開発はびっくりするほどお金がかかります。シードで用意した資金で想定していたこと「以外」のことがガンガン起こる。会社の製品としての試作機を開発して、その上でどの事業領域をどういうビジネスモデルで行うのかを示すのが次の調達に向けてのマイルストーンだったので、そのプロトタイプが完成しない限りには顧客候補とも議論が出来ない。そして刻一刻と資金は尽きてくる。苦し紛れに顧客と話をしても「コレまともに動いてないじゃん」と。もはや時間切れでファイナンスの交渉力もなくなってくるわけです。

でもようやくなんとかプロトタイプが完成して、さらに100社ぐらいですかね、各事業領域での大手顧客候補との話も終わり、将来のゲームプランもできていたことで先に進めました。明日振り込みがなかったら、というギリギリとの戦いです。

どうもありがとうございました。

テレイグジスタンスと通信を通じて、身体性を伴う人間の労働が拡張される世界へ

ということで2回に渡り、Telexistence富岡仁さんのお話を伺ってきました。創業からたった3年という時間軸で研究段階だった概念を形にし、社会実装できる一歩手前の段階にまで駆け抜けた裏側には、普通のスタートアップとは少し違った大手との共創ストーリーが隠れていました。話の最後、富岡さんにロボットと共生していくこの先の未来について尋ねたところこのようなお話をしてくれました。

「テレイグジスタンス(遠隔存在)技術は人間の身体的能力を音楽や書籍と同様にどうやってデジタル信号にして伝送するか、と言う問題を解いています。そして、この物理的な身体的能力のデジタル化を労働に結びつけるとTelexistenceの事業コンセプトである、「拡張労働力」、につながります。

つまり、我々が作りたい世界というのは、オフィスワーカーがZoomを使って遠隔で仕事をするように、肉体的な労働力を提供しているエッセンシャルワーカーが、世界中のどこからでもロボットを通じてその労働力を提供する世界です。こうすることで、人間は、インターネットとロボットで構成されるネットワーク構造を通じて、複数の時空間スケールにまたがる形でつながり、相互作用し、そして進化すると思っています」。

大手との共創で世の中にある技術が大きく社会を変える、スタートアップの本来の役割を感じる取材となりました。次回もまた共創によって社会を変えるキーマンの話題をお届けします。(了)

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本稿は、11月7日に福岡市内で開催されオンライン配信された「明星和楽2020」に関する記事の一部。明星和楽のイベントウェブサイトに掲載されたものを、主催者の了解のもと転載した。


11月7日、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、オンラインで配信された明星和楽2020。

明星和楽は福岡市を拠点としたテクノロジーとクリエイティブの祭典だ。年齢やポジションに関係なく「異種」な人々が「交」わる場として毎年イベントを開催。

福岡から新しいモノ・コトが創り出されるきっかけを提供してきた。今回は、10年目の節目を迎え、民間と行政の関係性に注目した「共犯関係 -GovTechのゆくえ-」をテーマに2つのトークルームでイベントを配信。「GovTech セッション」では、官民から下記の豪華ゲストが登壇した。

【ゲスト】

  • 髙島宗一郎氏 福岡市長
  • 池田将氏 BRIDGE 共同創業者 兼 シニアエディタ
  • 江口晋太朗氏 TOKYObeta Ltd. 代表

【モデレーター】

  • 石丸修平氏 福岡地域戦略推進協議会 事務局長
左から:石丸修平氏、髙島宗一郎氏、池田将氏、江口晋太朗 氏

行政の役割の充実のために必要なテクノロジー

髙島市長は GovTech の推進には、行政と民間のコラボレーションが必要だと話した。街づくりにも民間のノウハウを取り入れ、「より効率的に、かつ面白く、ワクワクしよう」という時代の変化が背景にある。菅政権下でデジタル庁新設の話も進んでおり、GovTech を加速させるタイミングだと期待。

行政の主な役割は、定型的な情報のやり取りである「インフォメーション」と、高齢者や障がい者支援のような「人のぬくもりが必要なもの」の2つだ。「インフォメーション」は、効率的に人手をかけないこと、一方で「ぬくもりが必要なもの」は、「誰一人取り残さない」ために人が入っていくことが重要だ。その人的リソースを生み出すために、テクノロジーの力は欠かせない。

石丸氏は今年、新型コロナウイルス感染拡大と九州の災害は大きなインパクトを与えた。テクノロジーの浸透に向け、民間企業、クリエイティブ人材、行政が手を取り合っていく必要性があるとした。

欧米では、新型コロナウイルス感染拡大で事業内容を変更するスタートアップが急増

海外の GovTech 事例について池田氏は、欧州でのロックダウン下における失業者との雇用のマッチングや、医療従事者などエッセンシャルワーカーの移動の支援などを挙げた。

また、米国カリフォルニアの事例では、新型コロナウイルス感染軽傷者と宿泊者が急減したホテルのマッチングにスタートアップが介在する事例などを挙げた。欧米ともに新型コロナウイルス感染拡大を受けて、業績が低迷した旅行や宿泊業などのスタートアップがサービス内容を変更し、社会のニーズに合わせた新たなサービスを展開している事例が増えているという。

欧米に比べると新型コロナウイルス感染拡大での重傷者数、死亡者数の割合が低い日本も第3波の感染拡大に備えた対策に危機感をもって対応することが求められている。

行政のオープンデータ化により、民間企業のビジネス創出を促す

国内でのテクノロジー活用のポイントとして江口氏は、「データ収集」「データ提供」「データ基盤」の3つのポイントを説明。行政が保有している気象や汚染状況などさまざまなデータを整え基盤化させ、オープンデータとして公表し、ベンチャーやスタートアップに自由に利用を促すことにより、新しいビジネスの創出を促す動きについて挙げた。

国内のオープンデータの活用事例として、福井県の鯖江市の事例などを説明。 国内外も含め、街のマイナス的な要素をあえて公開し、発信することにより、市民参加型でその街の課題解決に向かう事例もあるとした。

個人情報の取扱いという難題を、テクノロジーで解決する

対談では、現場で感じるGovTechの厳しさについても語られた。個人情報と切り離したデータ活用について、エッジコンピューティングなどの最新事例も挙げられ、個人情報の取扱いの課題解決に向け可能性を感じる内容となった。

EU の GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)を踏まえ、情報取扱のルールを設けることで、市民のリテラシーを高め、結果として市民の不安を払拭するという解決方法も挙げられた。

また、海外で行政の中に CDO(チーフデジタルオフィサー)として外部人材を起用する流れが起きていることについても深い議論がなされた。福岡市の AI バスやオープンデータの公開、熊本地震の際に構築したクラウド上のプラットフォームなど、GovTech の実際の活用事例も共有され、社会課題の解決への可能性を感じさせられた。

本セッションから、GovTechで「誰一人取り残さない」社会の実現のための、未来へのヒントを学んだ。明星和楽では、引き続きGovTechの動向を追っていく。

当日の動画はこちらの明星和楽2020 オンライン開催 ルーム「明星」〜テーマ「共犯関係」〜から。本セッションは1:12頃~2:13の配信。

Autodeskによる建設SaaS企業の連続買収に見るVertical SaaSの現在地

ピックアップ:Why Autodesk Just Spent $1.15 Billion On Two Construction Tech Startups ニュースサマリー:図面作成ソフトウェアを提供するAutodeskは2018年にPlanGridを8億7,500万ドル、同時期にBuildingConnectedを2億7,500万ドルで買収している。買収した両社は共に建設系のテックスタートアッ…

Image Credit : Autodesk

ピックアップ:Why Autodesk Just Spent $1.15 Billion On Two Construction Tech Startups

ニュースサマリー:図面作成ソフトウェアを提供するAutodeskは2018年にPlanGridを8億7,500万ドル、同時期にBuildingConnectedを2億7,500万ドルで買収している。買収した両社は共に建設系のテックスタートアップだ。

重要なポイント:建設ソフトウェアは、ソフトウェアの中で急成長しているカテゴリーの一つ。Autodeskとしては、BuildingConnectedを買収し、請負業者とサプライヤーや下請け業者のマッチングプラットフォームを手に入れ、設計から建設までのプロセスを一気通貫で扱うことを目指す。また、PlanGridはデジタル設計図と現場レポートを提供するのに最も人気のあるアプリの一つで、同領域の機能充足を目指す目的があるようだ。

詳細情報:急成長を続けるBuildingConnectedがAutodeskの傘下に入ったのは、北米以外の地域に進出する際のネットワークの有効活用が見込めるとの算段だろう。SaaSは大きく二分され、ひとつ目は業界横断で利用される人事・マーケティング・セールスなどのソフトウェアである水平分業的なSaaSがある。ふたつ目は、建設・物流・製造・小売りといったインダストリー特化のドメイン知識を盛り込まれた垂直統合型のSaaSがあり、今回の動きはまさにこの動きの中での成長戦略であると言えるだろう。

  • SaaS全体の市場規模は、グローバルでは16%で成長し2022年には15兆円規模に至り、日本国内では年平均成長率12%で2023年には8,200億円に到達すると予測されている。また、水平分業なSaaSもまだまだ成長の余地はあるものの、今後は垂直統合型のSaaSが成長のドライバーになっていくという考察もある。
  • その潮流にまつわる日本国内のマクロな動向として、国土交通省が7月末に「インフラ分野のDX推進本部」を立ち上げた。ここでは「非接触・リモートを前提とした公共事業への転換」「インフラのデジタル化を推進し2023年までに小規模なものを除く全ての公共工事についてBIM/CIM活用に転換」、「熟練技能労働者の技能のAI活用による継承」、を軸にインフラ領域のデジタル変革が推進される。
  • この推進本部は、スタートアップや大学との連携や、革新的技術によるオープンイノベーションの推進も表明し、PoCや技術開発に必要な実費を計上するなどより多くのスタートアップエコシステムからの参入を目指す。
  • 近年動向が活発な日本の建設関連のSaaSスタートアップとしては、アンドパッド・助太刀・Photoructionといった会社が挙げられる。
  • アンドパッドは、ANDPADという現場の効率化から経営改善までの一元管理を実現する施工管理アプリを2,000社以上の企業に導入している。今年7月には、40億円の資金調達、10月には追加で20億円の調達に成功している。クラウドサインやSalesforceを始めとした水平分業なSaaSソリューションを提供する企業を始めとしたパートナーリングを促進し、建築企業の業務全体のDXを目指す。
  • 建設業の受発注者のマッチングアプリ「助太刀」は建設現場の人手不足問題の解決を目指す。今年7月からは、求人情報を掲載できるサービス「助太刀社員」の提供を開始し、建設業の人材採用を支援する。2018年に5.3億円、2019年に7億円の資金調達を実施し、設立した2017年のその翌年からの2年間で累計13億円の資金調達をしている。
  • 建設現場を見える化して生産性と品質を向上させる建築・土木の生産支援クラウドが「Photoruction」だ。今年5月には、5.7億円の資金調達を実施し、開発強化と共に、建設業特化AIを活用した建設BPO事業の立ち上げを公表している。

背景:McKinseyによると、建設業界は生産性が最も低い業種の一つでデジタル化の遅れがその要因として指摘されている。しかし、それと同時に建設系のソフトウェアは急成長しているカテゴリーの一つで、当記事で挙がったようなスタートアップの台頭による生産性向上のポテンシャルは大きい。

執筆:國生啓佑/編集:岩切絹代