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企業とスポーツの新しい関係を模索ーーookamiと第一生命の共創 Vol.2

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 課題とチャンスのコーナーでは毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディーをお届けします。 前半では、スポーツエンターテインメント事業Player!を運営するookamiと第一生命保険の取り組みについて、スタートアップサイドからこのプロジェクトの狙いをお伝えしました。後半では第一生命…

第一生命保険・イノベーション推進部の野村直矢さん

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディーをお届けします。

前半では、スポーツエンターテインメント事業Player!を運営するookamiと第一生命保険の取り組みについて、スタートアップサイドからこのプロジェクトの狙いをお伝えしました。後半では第一生命サイドで本プロジェクトを企画・推進する同社イノベーション推進部の野村直矢さんにお話を伺います。

同社がスポーツエンターテインメント事業に参戦する意義や目指すゴールについて語っていただきました。(太字の質問は MUGENLABO Magazine編集部、回答は第一生命イノベーション推進部の野村さん)

企業がスポーツチームを「応援」する課題

共創に至った経緯について教えてください

野村:実は第一生命では約1年前から、寄付機能がついたスポーツ応援プラットフォーム構築のプロジェクトが動いていました。これは本来東京オリンピック前のローンチを見据えていたのですが、コロナ禍でオリンピックも延期になりその想定が崩れた経緯があります。

なるほど、オリンピックはスポーツに注目の集まる格好のタイミングでしたよね

野村:そんな中、ステイホームを余儀なくされるアスリート自身が、YouTubeの動画投稿やクラウドファンディングを実施するトレンドが生まれましたよね。つまり自前で新たにプラットフォームを構築する意義が薄れてしまったんです。

その中で、自分たちがやろうとしていたことに近しいプラットフォームを運営するookami社と出会い、第一生命からコラボできないかと打診しました。

なぜスポーツエンターテインメント事業が持ち上がっていたのでしょうか

野村:第一生命はQOL向上や頑張る人の応援をする・寄り添うことを理念に掲げています。そこで今回は、ookami社との共創という形で「Cheerding」(Cheerdingは”Cheer up”+”Funding”をかけ合わせた造語)プロジェクトを立ち上げ、マイナースポーツのアスリートやそのファンを切り口に、動画コンテンツでスポーツのことを知ってもらいつつ、寄付機能でファンの想いを届ける仕組みを考えました。

コロナ等も影響し、スタートアップとの共創となりましたが、協業することで得られたフィードバックなどはありますか?

野村:スポーツチームやアスリートをエンタープライズが応援する形として、まず協賛金が求められる点に違和感を感じていたんです。実際、今回のプロジェクトでもフォーカスしたいスポーツ団体から「まずは協賛金を」と求められたりしました。

そこで今回は第一生命として協賛金を出すことなく、ファンと選手が想いをカタチにし、繋がれることにこだわりました。ookami社がコネクションを有する大学スポーツチームを軸に交渉し、大手企業として協賛金無しでスポーツのプロジェクトにかかわることができたことは、私たちだけではできなかったことだと思います。

協賛金ありきではなく、別の関係性を模索した

野村:はい、第一生命が保険のお客さまとしてあまり接点を持たない若い世代の反応を見ることも今回のプロジェクトの目的にありました。結果、社外の関係先や保険のお客さまからも、この「Cheerding」プロジェクトに参画したいという声がかかり、想定していたよりも影響の広がりが大きくありましたね。テレビ局からもお声がけがあり、関連する番組を放映し、番組に連動させる形でCAMPFIREのプロジェクトを展開しています。

協業によって新しい関係が見えたり、具体的な反響があるのはよいですね

野村:社内からは、このような新しい取組に関心がなさそうな部署や社員からも連絡があり、「実はこういうの好きだった」とか「寄付したよ」などポジティブな反応を多くもらいました。こうした波及の価値をしっかり分析し、若い世代に今回のプロジェクトだけでなく、第一生命のファンになってもらえるような仕掛けを両社で検討していきたいです。

「Cheerding」プロジェクトに少しでも興味を持っていただいた方には、ぜひPlayer!のwebやアプリに触れたり、テレビ番組を見たり、CAMPFIREのプロジェクトに参加したり、自分にあった方法で共感をカタチにしてもらえたら嬉しいです!

ありがとうございました

コロナ禍でデジタル化の先頭を走るエストニアから、日本のDXを考える〜福岡「ASCENSION 2020」から

福岡市は、2020年11月27日にスタートアップに特化した国際交流オンラインイベント「ASCENSION 2020」をオンライン開催した。 本稿は、ASCENSION 2020 で行われた、「GLOBAL STAGE」のエストニアセッションについてまとめた。GLOBAL STAGE では、福岡市がパートナーシップを結ぶ世界各地域の最新のスタートアップやテクノロジーの情報や海外展開に関する最新動向が…

左上から時計回り: Ait Oliver 氏(駐日エストニア大使館)、宗原智策氏(NordicNinja)、日下光氏(xID)、斎藤アレックス剛太氏(SetGo)

福岡市は、2020年11月27日にスタートアップに特化した国際交流オンラインイベント「ASCENSION 2020」をオンライン開催した。

本稿は、ASCENSION 2020 で行われた、「GLOBAL STAGE」のエストニアセッションについてまとめた。GLOBAL STAGE では、福岡市がパートナーシップを結ぶ世界各地域の最新のスタートアップやテクノロジーの情報や海外展開に関する最新動向が語られた。

本セッションは、駐日エストニア大使館商務官の Ait Oliver 氏、行政の DX(デジタルトランスフォーメーション)支援を行う xID(クロスアイディ) CEO の日下光氏、NordicNinja のベンチャーキャピタリスト宗原智策氏をパネリストに迎え、xID や日本企業のエストニア進出支援を行う SetGo の斎藤アレックス剛太氏がモデレーターを務めた。

(文:馬本寛子、編集:池田将)

繋がりの強い小さなコミュニティの「強み」

エストニア・タリンの街並み
Image credit: scanrail / 123RF

エストニアで xID を創業した日下氏は、「コミュニティは小規模だが、中の人同士の繋がりが強い」と話す。

国内市場が小さく、多くのスタートアップは海外展開を前提に事業を立ち上げるため、様々な国の市場について情報を共有する環境があるのではないか。(日下氏)

また、エストニア政府の一員でもある Ait 氏は、政府と民間の距離が近く、包括的なスタートアップエコシステムがつくられていると特徴を述べた。ICT 教育を強化し、小学校教育から、プログラミングを教えるなどの取り組みが行われていることからも、政府の熱量がうかがえる。それらの特徴に加え、資金調達やメンタリングシステム、ネットワーキングを行う環境は、比較的整備されていると話した。

宗原氏は、エストニアスタートアップエコシステムの雰囲気について触れた。

日本人である私はエストニアでは「外国人」という立場だが、スタートアップシーンをつくりあげていく一員として、(エコシステムに)所属していると実感できる。国外からも参加しやすい、居心地の良いコミュニティだ。(宗原氏)

パネリストの全員が、官民連携の強さやコミュニティが小規模ながら繋がりの強さを指摘した。2011年にマイクロソフトに買収された「Skype」の創業や経営に携わっていたメンバー(Skype マフィア)や、ユニコーンをつくりあげた起業家が身近にいることから、良いメンターに巡り合える可能性も高いと言える。

コロナ禍で浸透が進んだデジタル化

Image credit: Government of Estonia

「コロナ禍における、エストニアのビジネスシーンが受けた影響」について、Ait 氏は、行政面とスタートアップ面のそれぞれの変化について話した。

エストニアでは、2001年頃から政府のデジタル改革が進められており、コロナ禍において、これらの取り組みは功を奏した。国民一人ひとりにデジタル ID が与えられ、インターネット投票なども行われている。デジタル化に伴う、法的整備も進んでいたことから、法的文書のデジタル署名なども問題なく進められた。

コロナ禍以前にもデジタル署名は使用できたが、コロナ時代に突入してから、デジタル署名の使用率は5割上昇した。また、サイバーセキュリティや IT サービスを取り扱ったスタートアップなどが多いことから、多くの企業が売上も良好で、コロナ禍でも資金調達のニュースが多かったという。

さまざまなエストニアスタートアップの投資に関わる宗原氏は、コロナ禍で成長した投資先企業として AI を利用したオンライン ID 認証システムを提供する Veriff、配車サービスの Bolt、オンデマンドデリバリの ZITICITY の3社を挙げた。

例えば、これまで配車サービスに注力していた Bolt は、コロナ禍で電動スクーターや電動バイクなどのマイクロモビリティ事業が成長し、公共交通システムに変わるサービスになりつつあるという。乗降車のオペレーションシステムが評価され成長が加速しているそうだ。

DX の鍵を握る「データマネジメント」

DX の局面で発生するトラブルやそれらの解決方法については、データマネジメントが DX の鍵を握る。アナログデータからデジタルデータに移行することをデジタル化の定義とし、データ活用事例とデータを取り巻く現在の課題についても議論がなされた。

デジタルデータは収集が容易であり、集めたデータを分析することでユーザー理解を深め、マーケティング戦略の構築に活用できるが、課題もある。UberEats やDoordash などのフードデリバリサービスのようなプラットフォーマーに顧客データの詳細が集中するため、実際に食べ物を提供する飲食店などのサプライヤーに情報が届かなくなり、商品開発にデータを活かせないという課題が浮上する。

近年、欧米では Cookie でのデータ取得が難しくなりつつある状況も踏まえ、今後はデータをどのように収集し、取り扱っていくかというデータマネジメント上の課題の解決方法が鍵となるだろう。

政府のデジタル化を進めた3つのポイント

エストニアの電子 ID システム
Photo credit: e-Estonia Showroom / CC BY 2.0

2001年からデジタル化に乗り出したエストニアが、政府の電子化を実現した背景について Ait 氏は、3つのポイントを挙げた。

1. デジタル化を進めるために、政府は具体的な目標を掲げた。

エストニアの政府戦略は、明確な目標が設定されており、具体的な目標数値、KPI、目標のために実行されることが国民に対しても明示されている。

2. デジタル化を進めるためのツールがしっかりと用意された。

デジタルIDの取得はエストニア国民の義務とされているため、全ての国民がデジタルIDやIDカードなどを保有している。これらの「義務化」は重要な役割を果たした。

3. 導入されることによって、政府・企業・国民のそれぞれが便利になり、国民の理解が進みやすいサービスからデジタル化が進められた。

一番はじめに、税金関連の仕組みからデジタル化が進められた。もし、投票システムを足掛かりにはじめていたら、デジタル化はここまでスムーズに進まなかっただろう。

モデレータの斎藤氏は Ait 氏が挙げたこれらのポイントに加え、、エストニア政府の透明性について触れ、「政府も、スタートアップ的な視点で行政を執り行っていると感じる」と話した。

日本のスタートアップに必要な視点「BLT」

加賀市とxID(当時、blockhive)が連携協定を締結(2019年12月)
Image credit: xID

石川県加賀市や茨城県つくば市と行政のデジタル化に取り組む日下氏は、日本国内におけるデジタル化を取り巻く課題について話した。

日本国内のスタートアップの多くは、法的な課題にぶつかる。日本でスタートアップとして新しい事業を行っていくには、BLT(ビジネス・リーガル・テクノロジー)の3つの全てをバランスよく理解せねばならない。

そのような問題を解決する方法のひとつとして、大企業との協業という選択肢を挙げた(編注:xID は加賀市のプロジェクトで、トラストバンクと連携)。協業先と共に法務的な面からサービスを考えたり、力を借りたrしながら法規制に働きかけるなどして、問題解決に取り組める可能性を示唆した。

また、国と地方自治体では、規制や法律が大きく異なることについても指摘した。実際に xID では加賀市で、デジタルIDアプリとマイナンバーカードの連携を行い、行政のデジタル化を進めているが、これらの導入においては、日下氏らが加賀市に1ヶ月間滞在し、ワークショップなどを行ったという。

パネリストは日本の行政などの DX 化に向けて必要なことを挙げ、本セッションは締めくくられた。

このチャンスを活用することで、誰もが便利で意味のある仕組みが作れるのではないか。コロナ禍の今こそ、大きく前進するチャンスだ。(Ait 氏)

若い世代に対してデジタル化による恩恵について伝え、エンパワーメントしていくことが必要だ。(宗原氏)

デジタルIDは、行政のデジタル化において重要な役割を果たすと思う。デジタルIDを浸透させるためには、国民を安心させるほどの透明性の確保が重要だ。(日下氏)

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日本企業とイスラエルスタートアップ、協業成功の秘訣とは〜福岡「ASCENSION 2020」から

福岡市は、2020年11月27日にスタートアップに特化した国際交流オンラインイベント「ASCENSION 2020」をオンライン開催した。 本稿は、ASCENSION 2020 で行われた、「GLOBAL STAGE」のイスラエルセッションについてまとめた。GLOBAL STAGE では、福岡市がパートナーシップを結ぶ世界各地域の最新のスタートアップやテクノロジーの情報や海外展開に関する最新動向が…

Image credit: 左上から時計回り:寺田彼日氏(Aniwo)、田中克典氏(Sentinel One)、岡本敏氏(住友化学)

福岡市は、2020年11月27日にスタートアップに特化した国際交流オンラインイベント「ASCENSION 2020」をオンライン開催した。

本稿は、ASCENSION 2020 で行われた、「GLOBAL STAGE」のイスラエルセッションについてまとめた。GLOBAL STAGE では、福岡市がパートナーシップを結ぶ世界各地域の最新のスタートアップやテクノロジーの情報や海外展開に関する最新動向が語られた。

本セッションには、住友化学(東証:4005)技術・研究企画部 担当部長 岡本敏氏、とセキュリティ事業を営むイスラエル企業 Sentinel One 日本法人リージョナルディレクター田中克典氏をパネリストに迎え、日本とイスラエル間のオープンイノベーション推進などの事業を行う Aniwo CEO の寺田彼日氏がモデレーターを務めた。

(文:馬本寛子、編集:池田将)

イスラエルスタートアップの鍵を握る R&D

イスラエルで起業し、日本企業とイスラエルスタートアップの協業支援を行う寺田氏は、セッションの冒頭でイスラエルのスタートアップエコシステムについての基礎情報について話した。日本の四国と同程度の面積に882万人が暮らすイスラエルだが、国民1人あたりのスタートアップ数や投資額は世界一と言われている。2019年には、約9,000億円(約82億ドル)の投資額を集めている。日本のベンチャー投資額は年間でおよそ4,000億円程度と言われているため、日本の2倍の投資額である。

また、世界中のスタートアップエコシステム を研究・調査する独立系の調査会社 Startup Genome  が2020年の6月に発表した「Global Startup Ecosystem Ranking 2020」では、イスラエルの都市テルアビブが世界6位であることについても触れた。「イスラエルのIT系スタートアップの多くがテルアビブに集中しており、世界中の企業が研究開発を行っている。日本企業も現在増えつつあり、日本とイスラエルの連携は今後より強化されると考えられる」と寺田氏は話した。また、テルアビブの他にも、ハードウェアなどを扱うスタートアップはハイファという都市に集まっており、都市ごとに集中する産業が異なることも特徴のひとつだと述べた。

視点をずらして価値を生む

Image credit: Israel Startup Map

イスラエルスタートアップの基礎情報が共有されたのち、3つのトピックを軸にパネルディスカッションが展開された。「イスラエルのスタートアップはなぜイノベーティブなのか?」というトピックから、イスラエルにおけるイノベーション創出力の源泉とは何か、議論が交わされた。

アメリカやイスラエルを中心にスタートアップとの協業に取り組み続けてきた住友化学の岡本氏は、アメリカと比較しながらイスラエルスタートアップの特徴について話した。

少し、外した視点から物事に取り組む「Out of Box」の精神で、他の企業とは次元が違う取り組みを行えるのがイスラエルの強みだと思う。(岡本氏)

このコメントに寺田氏も共感を示し、これまでの開発の視点と異なる解決法で CPU のパフォーマンスを改良した Intel のイスラエルチームでの開発事例を挙げた。

また、サイバーセキュリティを手がける Sentinel One 日本法人の田中氏は、エンジニアリング力の強さを感じているという。

私が所属する企業から感じることであり、全てのイスラエル企業に共通するとは言えないが、セールスチームの規模がものすごく小さいことに驚いた。(田中氏)

アメリカの企業では、基本的に大規模なセールスチームがあり、それらをサポートする位置付けとして、エンジニアリングチームが配置されている一方、Sentinel One では、半数以上がバックエンドを支えるエンジニアだそうだ。エンジニアの特徴についても触れ、多くのエンジニアが専門的な知見を持ち、若い20代が活躍していると続けた。

エンジニア同士の横のつながりが強いと感じている。同世代の連携が強いため、密度の高い社外連携が行われている。そうした背景から、ひとつの企業のみでは成り立たないようなエコシステム の醸成がなされているのではないか。(田中氏)

イスラエルの特徴を語る上で「同世代間のつながり」は重要なキーワードである。その背景について、寺田氏は高校卒業後の国民に課される2〜3年間の兵役義務が同世代間のネットワーク醸成に一役買っているのではないかと考察を述べた。軍隊の中には、サイバー攻撃の実践的な内容を教育する部隊も存在しており、学力的にも上位に位置する層がその部隊に集められているそうだ。

ストレートで合理的なコミュニケーション

image via. Flickr

臭気検知 IoT プラットフォームを開発するイスラエルのスタートアップ Nanoscent への出資に携わった岡本氏は、「イスラエル企業との協業は、これまでの他国との協業の事例と比較しても進めやすかった」と話す。その背景として、イスラエル企業とのコミュニケーションが、合理的かつストレートな傾向にあることが挙げられた。

一方で、実際のコミュニケーションの中で発生した問題についても語った。

日本企業との協業は年々増えつつあることもあり、協業には意欲的だが、上層部の承認を得る際に時間がかかるなど日本独自の企業文化に対しては、不安に思われ、指摘されることもある。そうした問題を解決するためにも、協業企業とは正直かつ、こまめに状況の説明を行う必要がある。(岡本氏)

住友化学が2019年12月に出資した後も、2020年5月には同社から Nanoscent に追加で資金提供が行われている。こうしたスピーディーな意思決定を可能にした背景について、寺田氏が尋ねたところ、岡本氏は「泥臭い方法以外ない」と述べ、社内の役員に対して何度も説明を行ったことや、投資先とも頻繁にコンタクトを取り続け、時間を回数で補ったと明かした。

何よりも現地へ赴くこと

テルアビブで開催される年次スタートアップイベント「DLD」
Image credit: Masaru Ikeda

コロナ禍でも、イスラエルスタートアップの買収は行われている。セッションでは、交渉から買収まで全てリモートで行われた最高額の取引例として Intel が交通アプリを開発する Moovit を約960億円で買収した話が話題に上った。

岡本氏は2020年から始まった新規プロジェクトは無かったとし、連携の工夫について次のように話した。

オンラインのみでのコミュニケーションだと齟齬が生まれることもある。オンラインでのこまめなコミュニケーションのみでなく、イスラエルに住む日本人の協力を仰ぐなどしている。(岡本氏)

田中氏は、リモートワークが増え、オフィスから離れた場所で働く人が増えたことで、セキュリティにおける新たな課題が生まれていることについて述べ、誰でも、どこからでも働くためにはセキュリティ環境において全てを信用しないゼロトラスト環境であることを前提にセキュリティを考える必要性があることを指摘した。

また寺田氏が  Sentinel One の魅力について田中氏に問うと、技術力の高さや思慮深さを挙げた。問題が発生した際に、顧客のペインに対して深く議論し、解決法を見出そうとする姿勢に魅力を感じていると話した。

セッションの最後には、イスラエルに実際に赴くことの重要性についても議論された。岡本氏は、大企業の担当者として協業を考える場合について注意すべき点について述べた。

上層部への説明についても考えながら進めていく必要がある。(岡本氏)

また、彼は外注した調査の結果から吟味するのと実際に足を運ぶのでは、新たな発見の数に大きな差があると指摘した。少しでも可能性が見えるならば、それらの企業と会ってみることが大事だとし、イスラエルの雰囲気を肌で感じた上で協業等に取り組むことをすすめた。

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スマートコンタクトレンズに必要な「ある技術」とはーーメニコンとMojo Visionの共創 vol.2

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。 スマートコンタクトレンズの開発を進める「Mojo Vision」と昨年に共同開発契約を締結したことで話題となったメニコン。前半ではMojo Visionがメディア向け説明会にて明かしてくれた開…

取材に応えてくれたMojo Visionとの協業を進めるメニコンチーム

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。

スマートコンタクトレンズの開発を進める「Mojo Vision」と昨年に共同開発契約を締結したことで話題となったメニコン。前半ではMojo Visionがメディア向け説明会にて明かしてくれた開発の状況についてまとめました。後半となる本稿では、共同開発研究のパートナーとして名乗りを上げたメニコン側のストーリーを紐解きます。

なぜメニコンだったのか

Mojo Visionとメニコンの提携で、この件に注目する多くの方が不思議に思ったのが「なぜメニコンだったのか」ではないでしょうか。確かに国内ではトップクラスのコンタクトレンズメーカーとして業界を牽引する同社ですが、グローバルサイズでみるとまだまだ大手の競合他社が存在しているのも確かです。

こちらの調査会社の昨年10月の発表概要によれば、世界のコンタクトレンズ市場は2020年に74億米ドル(2021年1月時点の日本円換算で約7,800億円)規模という試算がある一方、国内市場は2,889億円(※)で、ここにもジョンソン&ジョンソンやアルコン、ボシュロムといった外資メーカーが食い込んできているという状況があるようです。

日本コンタクトレンズ協会の公表データより

この点についてメニコンの担当チームに尋ねたところ、創業期から大切にしてきた技術開発へのこだわりが根底にあったとその経緯を教えてくれました。

「今から議論する段階にあるため、詳しいことはなかなかお話しできないのですが、例えば現在、コンタクトレンズといえば「使い捨て」がイメージされると思いますが、AR用途の場合、コストを考慮するとそういうわけにはいきません。些細なことと思われるかもしれませんが、コンタクトレンズをディスポーザブルではない(業界では、コンベンショナルと称する)使用形態を取りますと、ケアシステムへの対応が必要になります。

界面活性剤による洗浄・すすぎ、薬剤による滅菌等のケアシステムへの耐久性を甘く見ると、後々大きな問題となるんです。特に、スマートレンズは、電子デバイスを埋め込んだレンズですので、それらケア用品によるダメージがより深刻化することが懸念されます。

その点、弊社は、ディスポーザブル・リプレイスメントといった使い捨て対応のレンズと同時に、酸素透過性硬質レンズや従来のソフトコンタクトレンズといったコンベンショナルタイプのレンズも得意分野としており、またケア用品もグループ内で開発しておりますので、これらのマッチングを図るためのノウハウも持ち合わせております。

この長所を活かし、スマートレンズだからこそのケア用品並びにケアシステムを提案できることも、弊社の強みと考えています。このように、顕在化した課題から表面的には顕在化していない課題まで、今回タッグを組む2社であればかなり広い技術範囲をカバーしていけると考えております(メニコンチーム談)」。

コンタクトレンズには現在、大きく分けてソフトレンズとハードレンズという分類があります。歴史として古いのはハードレンズでその名の通り硬い素材でできており、元々は眼科医の間で強角膜レンズ(白目の部分まで覆う直径の大きなレンズ)の研究が最初にされていたそうです。

中でもメニコン創業者の田中恭一氏が1951年に独学で開発したのが角膜だけを覆うタイプのもので、これが現在のハードレンズの主流となる、国内における角膜レンズの始まりになりました。

一方、ハードレンズは高い安全性を誇るものの、使用感に劣ることから、「使い捨て」のソフトレンズに徐々に市場を押されていくことになります。メニコンもビジネス的な観点からソフトレンズの展開を進めるものの、決して祖業であるハードレンズの研究開発の手を止めることはありませんでした。

使い捨てレンズと同様に、酸素透過性の高いハードレンズの開発も継続してきたことが、ハードレンズの総合的な技術を必要とするMojo Visionとの協業につながった、というわけです。

田中氏はかつて眼科医の間で大きな直径のレンズが研究されていることを知らなかったそうです。それが今日まで続く「人真似をしない」というメニコンの独自の研究開発精神に繋がっているそうで、このこだわりもまた、共創につながったエピソードのひとつとお話されていました。

話をMojo Visionに戻します。

昨年、2020年のCESでメニコンは衝撃的なMojo Visionの極小ディスプレイ技術に出会います。その時の衝撃をこうお話されていました。

「弊社研究開発のトップが展示会でMojo Vision社のコンタクトを手に取らせていただいたのがきっかけです。とにかくディスプレイのインパクトがすごかった。このトップが強い思い入れを持ち、一方、本件とは関係なくそもそもコンタクトレンズの応用技術として、スマートレンズの開発を志していた研究員の思いが繋がったのが非常に大きかったと思います。

通常、外部とのアライアンスを検討する際は、慎重な意見が出てなかなか結論にたどり着かないのが常ですが、本プロジェクトについては現場から経営トップにいたるまで、なんのストレスもハードルもなく、極めてスピーディに共創することを決定いたしました(メニコンチーム談)」。

スマートコンタクトレンズの研究は、Googleが2012年頃に血糖値を測定できるコンタクトレンズの研究コンセプトを発表したのが大きな話題になりました。メニコンの説明によると、企業スローガンである『より良い視力の提供を通じて、広く社会に貢献する』という見ることへのサポートに活用することを第一に考えており、ユースケースとしてはARコンテンツの表示といったエンターテインメント要素のある使い道には大きな期待があるものの、視力矯正や老眼などの改善を最初に考えたいというお話です。

例えば遠近両用の眼鏡はありますが、これをコンタクトレンズで光学的に再現しようとすると技術的にハードルが高くなるそうです。もしここにデジタルの力を使うことができたら解決の幅は広がります。また、Mojo Visionのユースケースでも示されていた通り、生体情報を常に取得するにはコンタクトレンズは最適な方法です。基礎疾患を持った患者の情報をいち早くデータ化できれば、今、大きな話題になりつつある予防医療の可能性も広がります。

越えるべきハードル

Mojo Visionとメニコンの共創はまだ始まったばかりです。当然ながらMojo Vision側も乗り越えるべきハードルの多さをこう説明していました。

「As you can imagine, there are several challenging aspects of developing the world’s first smart contact lens, and it’s difficult to pinpoint one specific hurdle that outweighs the others. Many of the components in Mojo Lens had to be custom-designed and built. We’ve had to optimize for both power efficiency and size, so the opportunity to find and use off-the-shelf components was rare. Successfully integrating all of these components together into a system small enough to fit inside a contact lens has been one of the biggest technical challenges and really required close design and coordination across many different engineering disciplines.

(ご想像の通り、世界初のスマートコンタクトレンズの開発にはいくつかの困難な面があります。Mojo Lensのコンポーネントの多くは、カスタム設計して作らなければなりませんでした。電力効率とサイズの両方を最適化しなければならなかったので、既製品の部品を見つけて使用する機会はほとんどありませんでした。これらすべてのコンポーネントを、コンタクトレンズの中に収まるほど小さなシステムに統合することに成功したことは、最大の技術的挑戦の一つであり、多くの異なるエンジニアリング分野の緊密な設計と調整を必要としました)」(Mojo Vision)。

特にバッテリー問題はやはり課題の最たるもので、メニコン側もMojo Vision側と更なる協議が必要と断った上で「給電については一層の技術向上が必要。世界的にも極小サイズのバッテリーに関する分野の研究者は少なく、大手企業のこれに特化した開発は少数です。このような状況から、独創的なアイデアをもったスタートアップも探索する必要があるかもしれません」と新たな技術の必要性を語っていました。

今回の共創は「大手とスタートアップ」という矮小化されたタッグではなく、技術と技術のぶつかり合いに醍醐味があります。

「弊社も創業者から脈々と受け継がれている「創造」、「独創」、「挑戦」を企業理念とし、Mojo社に負けず劣らず、意欲的に研究開発を行っており、スマートコンタクトレンズの分野についても、これまでに様々な取り組みを行って参りました。ARのみならずVRやセンシング等を含めると将来、巨大な市場が予想されており、ゴーグル等では得られないユーザー価値を生み出していくことが、約70年の長きにわたりコンタクトレンズに向き合ってきた我々の使命であると思いから、Mojo社との共創は「必然」ともいうべきものだと感じています(メニコンチーム談)」。

メニコンにはハードレンズにおける材料、レンズケア、フィッティングといったプロダクトノウハウがあるだけでなく、会員制のメルスプランをはじめとするビジネスにおける膨大なユーザーデータも保有しています。そもそもコンタクトレンズは医療機器のため、医師の診断が必要になります。この点、もし両社の共同開発が成功し、実際の販売となればこのルートが活かせることになります。

Mojo Visionによると今回の契約で一連のフィジビリティ・スタディを共同で実施し、これが成功した際にはより広範囲な協力関係を検討するとしています。国産の技術とグローバルサイズでのエッジの効いたテクノロジーが融合するのかどうか。両社の話を伺って、次世代のデバイスをめぐる開発共創の行く末がさらに楽しみになりました。

DNPの社内外をつなぐ事業共創のハブーー大日本印刷のスタートアップ投資

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本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 企業の共創活動をリレー的に繋ぐコーナー、前回お届けしたフジテレビの「フジ・スタートアップ・ベンチャーズ(FSV)」に続いてお届けするのは、大日本印刷(以下、DNP)のスタートアップ投資活動についてお届けします。 DNPは連結売上高1.4兆円、従業員数3.8万人(共に2020年3月末時点)の日本を代表す…

大日本印刷・モタイ五郎氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

企業の共創活動をリレー的に繋ぐコーナー、前回お届けしたフジテレビの「フジ・スタートアップ・ベンチャーズ(FSV)」に続いてお届けするのは、大日本印刷(以下、DNP)のスタートアップ投資活動についてお届けします。

DNPは連結売上高1.4兆円、従業員数3.8万人(共に2020年3月末時点)の日本を代表する総合印刷企業です。その事業範囲は広く、生活空間やモビリティ、素材、エレクトロニクスにライフサイエンスなど多岐にわたっています。

6月に開示されている中期経営計画でも示されている通り、DNPでは次の視点として社会課題の解決を掲げ、第三の創業を目指すとしています。既存にあった個別企業のニーズ・課題解決からより大きな社会全体の問題解決へと視点を移し、注力事業として「IoT・次世代通信関連事業」「データ流通関連事業」「環境関連事業」「モビリティ関連事業」を掲げています。

今回取材したDNPのスタートアップ投資はこの一環として活動をされているそうです。機動力のある少額出資と、多岐にわたる事業ポートフォリオに対して新しいスタートアップやテクノロジーのアイデアを社内に適切に繋ぐ「社内外ハブ」のような役割を担うというお話でした。本稿ではさらに詳しいお話を伺います。(太字の質問は MUGENLABO Magazine編集部、回答は大日本印刷のモタイ五郎さん)

DNPはCVCとして切り出すのではなく、本体投資の部門として活動されています。部署自体が立ち上がった背景などについて教えていただけますか

モタイ:DNPは「知とコミュニケーション」「住まいとモビリティ」「食とヘルスケア」「環境とエネルギー」という4つの成長領域を設定しています。この成長領域において、(1)IoT・次世代通信関連、(2)データ流通関連、(3)モビリティ関連、(4)環境関連、の4事業を主な注力事業と設定し、社会課題を解決するとともに人々の期待に応える新しい価値を創出することで、持続可能な社会の実現に貢献しようと考えています。

一方、刻々と変化する社会課題に対応すること、社会を支える世代の価値観を知るには、新技術や新たな着眼点で破壊的なビジネスモデルを狙うスタートアップの力が必要です。そこでDNPでは、新事業創出に向けてスタートアップとの共創促進の打ち手として、少額出資機能を設置しました。

この部署では幅広い事業部門やグループ会社との連携など、本社の直接投資だからこそできる機動的な意思決定のプロセスを運用しています。スタートアップには出資検討段階からハンズオンする担当者がついて、DNPの様々な事業部門やパートナーとの連携を支援します。出版印刷などの情報コミュニケーション分野を始め、食品包装や建装材、モビリティなどの生活・産業分野、電子デバイスやディスプレイ部材などのエレクトロニクス分野など、幅広い事業領域のアセットを提供しています。

具体的にどういったケースでスタートアップに出資または事業連携をしていくのでしょうか。またその方法は

モタイ:投資の方針ですが、新しいビジネスやテクノロジーを持つスタートアップで、DNP独自の「P&I(印刷と情報)」の強みを掛け合わせて、強い事業ポートフォリオ構築に取り組める各社と連携・共創をしたいと考えています。

最初はこういう部署でこういう事業ができるかもという事業部のメンバーとディスカッションをして、詳しく聞いてみたいということであれば面談を設定するところから始まります。スタートアップの事業内容を十分に理解し、その強みを活かして複数の事業部門、グループ会社との連携可能性を各部門のメンバーも含めて一緒に議論し、事業プランを練っていくような形です。

また、本社と事業部でも求めているものが異なり、本社のリクエストとしては数年(4〜5年)で事業を大きく変えるようなものが主眼になりますが、やはり足元がある事業部との接点づくりとなるとより短い期間で形になるものが多くなります。ただ、事業部の中にも新しいことをやらないといけない、という認識が生まれているのは事実です。

4事業を将来的なフォーカスとして掲げられていますが、特に注目しているテクノロジーはありますか

モタイ:AIやIoTは注目していますね。データを活用できる時代に入っていて、これまで取れなかったデータが取れるようになりました。こういう技術を活用し、私たちが強みとするサプライチェーンやヘルスケア、メディアでどのように活用できるのか検討したいと思っています。

また、前述の通り本社としてはより大きな視点で全体を見る必要がありますので、より幅広い応用が効く基盤的な技術が必要です。一方、各事業に近い所だとサービスやパッケージングされている、すぐに連携がイメージできるものがやはりよいですね。

具体的な共創のケーススタディを教えてください

モタイ:2020年7月に、モノのシェアリングサービス「AliceStyle」を手掛けるピーステックラボへの出資をしました。近年、伸張が期待されるシェアリングエコノミー市場がどの様に拡大していくのか、また、DNPの強みを活用した事業にはどのような可能性があるのか、そういった視点を出資先であるピーステックラボのハンズオン支援をしながら検討を進めています。

モノのシェアリングサービス「AliceStyle」

例えば、従来からDNPで販売しているアート作品の複製画を、AliceStyleを通じてサブスクリプション型でレンタルするビジネスを一緒に検討しています。今まで見いだせなかった新たなユーザーへアプローチすることができそうです。

掲げる持続可能な社会を作る、という点でシェア経済の確立は重要です

モタイ:はい、ただシェアリングエコノミー市場は拡大が期待される一方、利用者にもサービス事業者にも安心・安全や信頼性といった要素が求められています。DNPがこれまで多様な企業との取引で培ってきた知見やサービス、技術を活用できるのではないかと考えております。

このチームは広大な企業の適切な部門と、新たなテクノロジーやビジネスモデルを繋ぐ「ハブ」のような役割なんですね。今は何人ぐらいでやられてるんですか

モタイ:現在は限られた人数で幅広い事業分野を対応しているため、現状は国内スタートアップが中心です。今後は徐々に海外に対象をひろげていきたいです。特にエレクトロニクスやフォトイメージングなどの事業分野はグローバルにも対応していきたいと考えています。

大企業で幅広い事業分野を手掛けていると、どうしても自社の強みやアセットになかなか気づかないこともあります。是非スタートアップの方からも声をかけていただき、事業共創のきっかけにしていただければと思っています。

ありがとうございました。

ということでDNPのスタートアップ投資活動についてお届けしました。次回はヤマトHDの取り組みにバトンをお渡ししてお送りします。

食糧危機問題に取り組むケニア「Gro Intelligence」アフリカテック最大の資金調達に成功

ピックアップ:Kenyan data analytics company Gro Intelligence raises $85m Series B funding round 重要なポイント:食料安全保障や地球規模での気候変動に関する課題解決への貢献を目指すケニア発のデータ分析スタートアップGro Intelligenceは1月、アフリカのテック系スタートアップ全体で最大規模となる8,500万ド…

ピックアップ:Kenyan data analytics company Gro Intelligence raises $85m Series B funding round

重要なポイント:食料安全保障や地球規模での気候変動に関する課題解決への貢献を目指すケニア発のデータ分析スタートアップGro Intelligenceは1月、アフリカのテック系スタートアップ全体で最大規模となる8,500万ドルの資金調達を行った。今回の資金調達を受け、今後はAIを活用した同社プラットフォームのさらなる成長とグローバル展開に力を入れていく。

詳細な情報:本ラウンドはIntel CapitalAfrica Internet Ventures、Ronald Lauder氏とEric Zinterhofer氏のファミリーオフィスが共同で主導し、既存の投資家であるDCVC、GGVも参加したほか、食料安全保障イニシアチブに投資する米国拠点のRethink Foodなど新たな投資家も加わった。

  • エチオピア出身で元ウォールストリートのトレーダーである同社CEOのSara Menker氏は、各国間の農業に関連するデータの隔たりをなくすため、2014年にケニアのナイロビでGro Intelligenceを立ち上げた。同社は収穫量や土壌の質から気候要因に至るまで、世界中のさまざまな市場から収集された食料生産に影響を与えるデータを収集して膨大なデータセットを構築、農産物の需要、供給、価格設定を予測する。
  • AIを活用したGroのプラットフォームでは、4万を超えるデータセット、650兆を超えるデータの収集、正規化、モデル化を行い、食品、気候、貿易、農業、マクロ経済間の相互関係を明らかにし、食品、農業、気候、経済などのリスクに関する洞察や分析、意思決定ツール、ソリューションを提供する。
  • 現在はニューヨークにもオフィスを構えるGro Intelligenceは、各国や食品業界がバリューチェーン全体をどのように計画しているかを明確にし、地球規模での気候変動の課題解決に貢献したいと考えており、農業および気候のリスクをモデリングする世界初のビッグデータプラットフォームとなることを目指している。
  • 既存のクライアント及び潜在的なクライアントは政府から金融機関、農業投入企業、小売業者、食品および飲料企業、農業に必要な製品を生産する企業、その他さまざまな業界に及ぶ。New York Timesによれば、クライアントの1つであるユニリーバは、クノールブランドの食糧供給における持続可能な計画を立てるためにGroのデータを使用している。
  • 「Gro Intelligenceは最もエキサイティングなAI企業の1つであり、食料安全保障と気候リスクという世界最大の2つの課題に取り組んでいます。彼らのソフトウェアベースのプラットフォームは、コンピューティングを活用した国境を越えた知見によって意味あるインサイトの発見を促進し、農業領域においてより多くの情報に基づいた意思決定を可能にします」とIntel CapitalのシニアマネージングディレクターであるTrina Van Pelt氏は述べている。

背景:Groの前回の資金調達は2017年にTPG Growthが主導したシリーズAラウンドで、このラウンドはCellulant、LifeBank、Lori、およびEchoVCを通じて行われ1740万ドルを調達した。 今回の資金調達により同社の資金調達額総額は1億ドルを超えた。

執筆:椛澤かおり/編集:岩切絹代

「保険を農家に直接販売しない」ケニアのインシュアテック、Pula

ピックアップ:Pula raises $6m Series A to provide insurance for smallholder farmers across Africa ニュースサマリ:ケニアのインシュアテックスタートアップPulaはシリーズAラウンドで600万ドルの資金調達を実施した。保険普及率が非常に低いアフリカで小規模農家を対象にした保険商品を提供する同社は、新型コロナウィルスの…

ピックアップ:Pula raises $6m Series A to provide insurance for smallholder farmers across Africa

ニュースサマリ:ケニアのインシュアテックスタートアップPulaはシリーズAラウンドで600万ドルの資金調達を実施した。保険普及率が非常に低いアフリカで小規模農家を対象にした保険商品を提供する同社は、新型コロナウィルスの流行が長引き、低所得者層の多い小規模農家がこれまで以上に保証を必要としている現在の状況をスケールアップの時とみている。

詳細な情報:調達のラウンドはTLcom Capitalが主導し、Women’s World Bankingも参加した。今回調達した資金は既存の市場拡大のために利用されるほか、アジアやラテンアメリカでの事業展開も視野に入れている。

  • 同社は機械学習やCCE(Crop-Cut Experiments)と呼ばれる収穫量の分析手法や気象パターンと農家の損失などをデータ化し、さまざまなリスクに対応する保険商品を提供する。従来の保険では実際に農場を訪問してリスク評価を行うが、Pulaは衛星画像やデータを使用して干ばつや豪雨の発生率などを予測している。
  • 50の保険会社・6つの再保険会社との提携、銀行や政府、農家向けの製品を販売する企業とのパートナーシップを通じてPulaは小規模農家に保険を提供するエコシステムを構築した。また、同社のクライアントは小規模模農家だけにはとどまらず、WFP(国連世界食糧計画)、ナイジェリア中央銀行、ザンビア政府、ケニア政府なども同社のクライアントとなっている。
  • Pulaの大きな特徴といえるのは保険を農家に対して直接販売しないスキームにあり、同社では代わりに銀行や種子の販売会社と提携し、銀行が農家へ融資をする際に保険への加入を義務付けたり、種子の販売をする際に企業が保険を付けた形で販売したりといった形で普及率が非常に低いアフリカ小規模農家の保険加入を促進する。実際にこの方法で同社はルワンダとケニアで18万5千人の保険加入者を獲得した。
  • 今回の資金調達に関してPulaのCEO Goslinga氏は、世界的な新型コロナウィルスの流行で農家がこれまで以上に保証を必要としている現在、サービス開始から5年が経つ同社にとってスケールアップの時がきたと述べており、今回の資金調達ラウンドを主導したTLcom CapitalのCaio氏はこのような状況下でのPulaの成長を確信している、とコメントしている。

背景:AIを活用して農家のコスト削減や生産性向上を支援するAeroboticsは昨年12月にシリーズBラウンドで1,700万ドルを調達、小規模農家に太陽光発電システムや灌漑システムを提供するSunCultureは同月にシリーズAラウンドで1,400万ドルを調達した。また、Pulaと同じく小規模農家の経済面を支援するApollo AgricultureもPulaと同じくシリーズAラウンドで同額の600万ドルの資金調達を実施するなど、アフリカの小規模農家を主な対象とするサービスを提供しているスタートアップの資金調達が相次いでいる。アフリカでは保険の普及率が低く、2017年のアフリカ大陸全体での保険普及率は2.8%と推定されており、その中でも農業分野における保険普及率はさらに低い傾向にある。

執筆:椛澤かおり/編集:岩切絹代

投資額は過去5年で3倍、加熱するアフリカテック・スタートアップ投資

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ピックアップ:African tech startup funding passes $700m in record-breaking 2020 2020年は世界的に新型コロナウィルスの影響を受けた1年となったが、その状況下でもアフリカのテック系スタートアップ全体の年間資金調達額は7億ドルを超え、その額は過去5年で3倍以上に増加したとするレポートをDisrupt Africaが発表している。 詳細…

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ピックアップ:African tech startup funding passes $700m in record-breaking 2020

2020年は世界的に新型コロナウィルスの影響を受けた1年となったが、その状況下でもアフリカのテック系スタートアップ全体の年間資金調達額は7億ドルを超え、その額は過去5年で3倍以上に増加したとするレポートをDisrupt Africaが発表している。

詳細:Disrupt Afircaの発表したレポートによると、2020年はアフリカ全体で397のテック系スタートアップが資金調達を実施し、総額は7億146万565ドルとなった。2015年は125社が合計1億8,578万500ドルを調達しており、過去5年で3倍以上に増加している(前年比では企業数は27.7%、調達額は42.7%増)。

  • 調達額上位5ラウンドは、Vezeeta(エジプトのe-Health)が4,000万ドル、Flutterwave(ナイジェリアのフィンテック)が3,500万ドル、Skynamo(南アフリカの小売技術)が3,000万ドル、Twiga Foods(ケニアのアグリテック)が2,940万ドル、Komaza(ケニアの保全技術ソリューション)2,800万ドルとなっている。
  • アフリカ大陸の投資家の数も増加し、同レポートでは370人をアクティブな投資家としており、前年の261人から42.8%、2018年の155人から68.4%増としている。中でもアクティブな投資家はKepple Africa Venturesで、2020年の1年間で36のスタートアップへ出資した。
  • 依然として資金調達の多くはナイジェリア、ケニア、南アフリカの3国に集中している点はこれまでと変わらないが、ここ数年エジプトが存在感を増してきており、ナイジェリア、ケニア、南アフリカにエジプトを加えた4カ国における2020年の総調達額は307社・6億2,565万9,00ドルで、全体に占める割合は金額としては89.2%、企業数としては77.3%にも上る。

ケニア

2020年資金調達実績:59社・1億9,138万1,000ドル(全体に占める割合:27.3%、前年比28.3%増)

  • ケニアは4カ国の中で資金調達を実施したスタートアップの数は最も少ないが、資金調達額は最も高くなっており、平均チケットサイズは324万3,746ドルとアフリカで最も大きい。
  • 主要な実績としては上述のアグリテック企業、Twiga Foodsの2,940万ドルと環境保全を行うKomazaの2,800万ドルに加え、物流系スタートアップのSendyが2,000万ドル、RetailTechのSokowatchが1,400万ドル、再生可能エネルギー領域のSunCultureが1,400万ドル、Angazaが1,350万ドル、Solariseが1,000万ドルを調達している。
  • ケニアは他の国と比べてフィンテックスタートアップが占める割合が低く、セクター別では、エネルギー領域が4,100万ドル(ケニア全体の21.4%)、Agritechが3,570万ドル(18.7%)、物流領域 2,730万ドル(14.3%)、e-Commerce 2,370万ドル(12.4%)、Fintech 1,620万ドル(8.5%)となっている。

ナイジェリア

2020年資金調達実績:85社・1億5,035万8,000ドル(全体に占める割合:21.4%、前年比22.8%増)

  • ケニアとは対照的にナイジェリアはチケットサイズの小さい調達が目立ち、平均チケットサイズは176万8,918ドルで、過去6年間減少傾向にある。一方2020年には23のスタートアップが100万ドルを超える資金調達を実施し、同国全体の27.1%をこれらが占めている。
  • 主要な実績としてはフィンテックスタートアップのFlutterwaveが実施した3,500万ドルのシリーズBラウンドや、ブロックチェーンスタートアップBitfxtの1,500万ドル、e-Healthの54geneによる1,500万ドルなどがある。その他フィンテックのAella CreditKuda、e-HealthのHelium Healthはそれぞれ1,000万ドルを調達した。
  • ナイジェリアはフィンテックスタートアップによる資金調達が多く、37社8,934万2,000ドル(59.4%)がそれら企業によるもの。それ以外はe-Health領域が3,106万8,000ドル(20.7%)、eコマースが1,071万ドル(7.1%)、再生可能エネルギー領域が720万ドル(4.8%)と続く。

南アフリカ

2020年資金調達実績:81社・1億4,252万3,000ドル(全体に占める割合:20.3%、前年比95.2%増)

  • 資金調達を実施した企業数は81社と一昨年の79社からほぼ横ばいだが、チケットサイズは一昨年の平均92万4,296ドルから昨年で2倍近く増加し平均175万9,543ドルになった。
  • チケットサイズの増加の原因ともなるのは100万以上の資金調達を行った企業が26社あり、この数はアフリカで最も多い。主なラウンドには、RetailTech Skynamoの3,000万ドル、アグリテックAeroboticsの1,650万ドル、Planet42の1,240万ドル、WhereIsMyTransportの750万ドル、Valenture Institute700万ドル、DataProphet600万ドルなどがある。
  • 2020年の南アフリカでは、Skynamoの3,000万ドルの資金調達により、eコマース・小売テック領域の資金調達額が最も高く4,104万6,1000ドルで28.8%を占め、フィンテック領域が3,680万3,000ドル(25.8%)、アグリテック領域が1,852万5,000ドル(13%)、Ed-Techが1,071万5,000ドル、AI/IoTが985万ドル(6.9%)となっている。

エジプト

2020年資金調達実績:82社・1億4,139万7,000ドル(全体に占める割合:20.7%、前年比65%増)

  • 一昨年のエジプトのスタートアップの資金調達の多くはアクセラレータプログラムへの参加により調達したものが大半を占めていたが、2020年はVCからの資金調達が増加し、これによりチケットサイズも大きくなる傾向となった。チケットサイズは前年平均の97万2,886ドルから172万4,354ドルに増加した。
  • エジプトは、フィンテックが他国ほど投資家の注目を集めていないという点が特徴的。北アフリカの投資家にとっては、eコマース・小売テック領域が最も注目の領域であるほか、アフリカの他の国とは異なる市場への投資が活発に行われており、2020年の資金調達の34.1%は他国ではの主要な領域とはなっていないニッチな分野で行われている。
  • e-Health領域の資金調達総額が4,351万5,000ドルと大きく、同国で注目を集めている領域のように見えるが、これはVezeetaが今年初めに行ったシリーズDラウンドでの4,000万ドルの調達によるもので、資金調達総額が3,900万ドルの交通関連(Transport)領域も2つのラウンドによる調達でそのほとんどを占めている。これらを除いた同国の主要な領域はeコマース・小売テック領域の1,457万2,000ドル、フィンテック領域の317万9,000ドル、HR領域の456万2000ドル、物流領域の301万2,000ドルなどが挙げられる。

フィンテック

  • 全体を通して最も資金調達が多かったのはフィンテック領域で、資金調達総額は99社 1億6,031万9,065ドル。内訳はナイジェリアが8,934万2,000ドルで全体の55.7%、南アフリカが26社3,680万3,000ドルで全体の23%、ケニアが13社1,623万ドルで10.1%、エジプトが12社1,317万9,000ドルと、トップ4カ国でその97%を占める結果となった。

e-Health

  • 新型コロナウィルスの影響により、e-Healthによる医療の様々な課題解決に焦点をあてたスタートアップが急成長し、41社が1億299万4,000ドルの資金調達を実施、資金調達総額の14.7%を占め前年比では257.5%増となった。今年1年のe-Health領域の資金調達総額は、過去5年間の総額よりも多くなっている。
  • e-Health領域の成長に関しては、新型コロナウィルスの流行が続く限りは継続的な成長が見込まれているが、その後はユーザーがこの期間中に利用したサービスを好んで利用するか否かが長期的な成長を左右する重要な要因であると見られている。

背景:アフリカではここ数年リープフロッグ現象により、新興国や各国特有の社会課題を解決するテック系スタートアップが急増している。以前から注目していたGoogleやFacebookにとどまらず、2020年はStripeがナイジェリアのフィンテック企業Paystackを2億円で買収したり、ジェフ・ベゾス氏のVCファンドがアフリカのテック系スタートアップへ初の投資を行ったりと、先進国の企業や投資家からの注目も徐々に高まりつつある。

執筆:椛澤かおり/編集:岩切絹代

「Cheerding」でマイナースポーツを盛り上げろーーookamiと第一生命の共創 Vol.1

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 課題とチャンスのコーナーでは毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。 スポーツエンターテインメント事業「Player!」を運営するookamiと第一生命保険は、若手アスリート・マイナースポーツの支援や普及を目的としたプロジェクト「Cheerding」の共同事業を発…

ookami事業開発本部ブランドコミュニーケーションチーム/須藤斐紗子さん

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。

スポーツエンターテインメント事業「Player!」を運営するookamiと第一生命保険は、若手アスリート・マイナースポーツの支援や普及を目的としたプロジェクト「Cheerding」の共同事業を発表しています。

モバイルアプリPlayer!はプロ・アマのスポーツ試合途中経過や結果とともに、実況観戦する他のユーザと生の感動をリアルタイムに共有できるスポーツSNSです。2015年の公開以降、昨年1月には月間アクティブユーザー数400万人を突破しており、年間約2万試合を超えるスポーツイベントの情報が発信されるプラットフォームに成長しました。

前半ではスポーツをデジタルの視点から支えることの意義や、今回第一生命と共創に至った経緯などについてookami事業開発本部ブランドコミュニーケーションチームの須藤斐紗子さんにお話を伺いました。

寄付機能でエコシステムをつくる

今回のookamiと第一生命の取り組み「Cheerding」は、若手アスリートやマイナースポーツの普及をサポートするという目的のプロジェクトです。なかなか普段目にする機会が少ないマイナースポーツにフォーカスを当てることで、エンターテインメントとしてのスポーツの価値を広げることも目指しています。

マイナースポーツはどうしてもメディア等への露出も少なく、同じ興味を持つ仲間を見つけることが難しいという課題がありました。今回のプロジェクトは、そうした「とにかく知ってもらう機会」を作るため、既存のPlayer!にマイナースポーツの枠を設け、デジタル上で知る機会をユーザーに向け提供しています。

「マイナースポーツと言われる競技のアスリートやチームは注目を浴びたり、とにかく「知ってもらう」機会、競技の普及に課題を抱えている場合が多いです。一方で一度接点さえ持ってしまえば、面白いスポーツは沢山あります。このような競技とファンをつなぐような取り組みを目指しています」(須藤さん)。

また、ookamiでは既にPlayer!にて、浦和レッズや鹿島アントラーズなどと寄付機能やギフティングのような形でファンからチームにお金を入れてもらう、スポーツを通したチームへのエンゲージメント企画の経験を持ちます。このプロジェクトでも持続的にこの活動を支えるためのエコシステムの設計として、寄付機能による応援システムも導入し、よりファンがエンゲージメントを高めやすい環境を整えたそうです。

Player!内、Cheerding特設ページと実際のサポート画面

マイナースポーツに光を当てる

ある国でマイナースポーツとされるスポーツが、ある国ではメジャースポーツである、そういったことも珍しくはありません。また、マイナースポーツをどう定義するかにもよりますが、たとえメディアに露出が少ない競技であっても、競技人口が多かったり、本当に熱狂的なファンがいるといったケースもあるでしょう。

そういった視点で今回、両社が取り上げた「ラクロス」と「アメリカンフットボール」は特徴的な競技と言えるのではないでしょうか。ラクロスはカナダで国技とされる人気のスポーツですし、またアメリカンフットボールは米国4大スポーツのひとつですが、共に日本では一部のファンの競技に留まっている印象があります。

「初回の取り組みでは、ラクロスとアメフトを選定させていただきました。どちらの競技もチームで実施する競技で、助け合う/協力するという競技性も第一生命様のブランドに合致するという意味も込められています。また、熱狂的な競技者がいる一方でなかなか注目されることの少ないスポーツであることと、今回「マイナースポーツを盛り上げる」という大きなテーマにて共に盛り上げてくれる期待値の高いチームがいるところから逆算的に競技を選定しました」(須藤さん)。

なお今回のプロジェクトでは法政大学アメリカンフットボール部や青山学院大学女子ラクロス部など、大学のスポーツチームが参加対象になっています。

Cheerdingをリリースしたところ、狙い通りプロジェクトには多くの競技チームから「うちも連携できないか」との連絡が舞い込んでいるそうで、現在では5つのチームがCheerdingの対象サポートチームとして登録されています。

「どんな競技であれチームや選手の魅力を伝えることで、スポーツ感の格差なくみなさんが好きなスポーツに出会い、自由に応援できる世界を目指しています。若手アスリートのストーリーや想い、マイナーと言われる競技の面白さ、そういったものが発信されるお手伝いを引き続き行っていきます」(須藤さん)。

後半はookamiと共創に取り組んだ第一生命のエピソードをお送りします。

世界を拡張する「スマートコンタクトレンズ」とは何者かーーメニコンとMojo Visionの共創 vol.1

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本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。 昨年のCESで大きな話題となったスマートコンタクトレンズ企業の「Mojo Vision」は、砂粒程度のディスプレイを実際のコンタクトレンズに埋め込んで装着を目指す意欲的なプロダクトです。コンセ…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。

昨年のCESで大きな話題となったスマートコンタクトレンズ企業の「Mojo Vision」は、砂粒程度のディスプレイを実際のコンタクトレンズに埋め込んで装着を目指す意欲的なプロダクトです。コンセプトとしては2010年の半ばあたりからSamsungやGoogle、Sonyなどが取り組みを公表しているもので、Mojo Visionもその最中の2015年に創業されています。

彼らはコンタクトレンズに装着できるほどの極小で密度の高いダイナミックディスプレイ技術を保有しており、コンピュータービジョン用に開発された超省電力のイメージセンサー、高帯域幅の低電力無線通信器、高精度のアイトラッキングおよびぶれ補正用モーションセンサーなどの研究を進めてこのプロダクトの実現に向かっています。

日本との関わりではKDDIが運営するKDDI Open Innovation Fundからの出資(2020年)があったのですが、それに続いて昨年12月には国内大手コンタクトレンズ事業のメニコンとスマートコンタクトレンズに関する共同開発契約を締結したと公表しました。今回の契約により両社は、スマートコンタクトレンズの商用化に向けたフィジビリティ・スタディを開始するとしています。

国内大手と新進気鋭のグローバル・スタートアップがどのような経緯で共創に至り、協力してどのようなハードルを越えようとしているのでしょうか。その裏側を両社にお伺いします。前半ではMojo Vision社のプロダクトや目指すビジョンについてまとめ、後半はメニコンでこの共創に取り組むチームのお話を共有したいと思います。

スマートコンタクトレンズとは何か

現実世界に仮想のコンテンツを重ね合わせるAR(拡張現実)の世界観は、映画「レディ・プレイヤー1」にあるように古くからサイエンスフィクションの文脈で語られてきました。一方、スマートデバイスの登場で、例えばポケモンGOや、SnapなどのサービスでARコンテンツは身近になりつつあるのも事実です。

ではスマートコンタクトレンズは現在、どのような目的で、どこまでが実現しているのでしょうか。

Mojo Visionが目指すのは、極めてシームレスに現実世界に仮想コンテンツを重ね合わせる世界観です。スマートコンタクトレンズを装着していれば、視線をスマホに落とすことなく、対象になる人の情報を示すことができます。また、コンタクトという特性上、常に装着していることからバイタル情報を取得しやすい性質があります。

スマートコンタクトレンズ全般にいえる事業可能性として、例えば基礎疾患を持った方が装着した場合、血糖値などの情報をいちはやく他人に伝えて適切な処置を依頼することが可能になる、といった具合です。つまり装着している本人だけでなく、それを見ている側に対してもすばやく情報提供ができるのです。

Mojo Visionはこの世界観を「インビジブル コンピューティング」と表現していました。どの場所にいってもまるで地元にいるかのような体験を提供し、現実世界の「見た目」を変えることなく世界と関わることができます。

創業者のDrew Perkins氏は、かつて自身の目に発生した健康問題をきっかけにこのプロジェクトを考えついたそうです。その後、サンマイクロシステムで3Dグラフィックの研究をしていたMichael Deering博士と出会い、人間の目と同じ生物学的解像度を保ちつつ、必要とする演算能力や消費電力を大幅に抑えることができる技術の開発に成功します。

人類が60年かけて歩んできたコンピューティング、インターネットのデジタル世界はスマートフォンの登場によるモバイルシフトを経て、新しい世界観を求めるようになりました。多くの研究者、企業、消費者はその先にある世界が仮想現実であると予想しており、没入の具合によってVR・AR・MRのいずれかの体験がいずれ必要になると各種開発を続けています。

アニメの世界だったユビキタスの世界観は、今年のCES2021で多くのARグラスが登場してきたように、もう一般消費者の手元に届きつつあるのです。

一方、VRやAR、MRといったxRデバイスの多くは大きな「被り物」を必要とします。そこでMojo Visonはその課題をコンタクトレンズという手法で解決しようとしました。データを表示させるだけでなく、普段は普通のコンタクトレンズとして視界を遮らず、消費者や小売、政府、視覚障害者など幅広い人たちをターゲットにした新しい情報体験を提供しようというのです。

ただ、最初から全てを対象にするのではなく、初期のユースケースには「アンメットニーズ」を想定しているそうです。例えば火災現場に突入する消防士に適切な情報を提供したり、緊急医療の現場や両手が塞がるネットワーク技師、アスリート選手の競技中や練習でのパフォーマンス情報など、これまで満たされていなかった情報提供の現場を想定してこの未知のデバイスを検証するとしていました。

また、機能をオフにした状態でも通常のコンタクトレンズとして使えることを目指すため、グローバルで数億人いるという「コンタクトレンズ利用者」もターゲットになります。ゆくゆく、一般消費者が利用できるような汎用ナビゲーションサービスが実装されれば、まずはこれらのコンタクトレンズ利用ユーザーが対象になる、という考えです。

スマートコンタクトレンズはどうやって動くのか

ではここからMojo Visionが開発中のスマートコンタクトレンズの仕組みについて、今、わかっている範囲の情報を共有します。

企業として創業してから5年、構想はそれ以上前から技術調査を行っていたこのスタートアップは、現在、100名を超える従業員を抱え、これまでに1.59億ドルを調達しています。従業員の大半は博士号を持つ研究者や開発者であり、これまでに110以上の特許を取得しています。

Mojo Visonの開発するスマートコンタクトレンズはディスプレイ、無線通信、センサー、材料、すべてにおいて研究開発を進める必要があり、このようにして開発した極小のディスプレイやセンサー、バッテリーを強角膜レンズ(※)に収める必要がありました。ディスプレイは角膜には触れない仕組みになっていて、強角膜レンズの強敵である酸素供給についても最大化する特許を取得しています。

※強角膜レンズは角膜(黒目)から、強膜(白目)まで覆うレンズ。スマートコンタクトレンズでは眼球をより大きくカバーする必要があり、この世界有数の技術を保有している日本のメニコンと昨年末に提携している

強角膜レンズに配置されているバッテリーは省電力で、現時点ではワイヤレス充電を想定しているそうです。またセンサーは眼球の動きを捉えるモーションセンサーと、イメージ検出に使われるコンピュータービジョンが埋め込まれます。

そしてこの中央には0.5mm未満のサイズでテキスト、写真、ビデオを再生できるディスプレイが設置され、この上に薄い1枚のプラスティック膜を光学系として置くことで、ディスプレイから直接網膜に映像を映し出すことができる仕組みになっています。

ディスプレイは極めて網膜に近く、装着する人の視界を遮らないそうです。また現在は緑色のみのディスプレイですが、カラーバージョンも開発中とのことで、両眼に設置できるため立体視ができるというお話でした。

さて、気になるのはどうやって操作するのか、という点です。

この方法についてMojo Visionはポインティングデバイスとしてアイ・トラッキング、つまり目の動きを採用したそうです。Mojoのスマートコンタクトレンズは最初、「中継装置」と彼らが呼ぶ、ウェアラブルのデバイスと連動して動くことが想定されています。

この中継装置に対してレンズが捕捉した眼球の動きを送信し、10ミリ秒以内にレンズに送り返します。これにより、眼球の動きは常にレンズが把握するため、見ている位置が動いてもコンテンツは正しい位置に配置されるほか、この目の動きそのものがポインタデバイスとして使えることを考えているそうです。またこの中継装置は他のスマートフォンやクラウドなどと通信も可能で、ここを通じて最初はさまざまなサービスと連動するというお話でした。

ここまではMojo Visionが開発したスマートコンタクトレンズの現在地について、同社の説明を元に解説してきました。後半は昨年、衝撃的な提携発表をした国内コンタクトレンズ大手のメニコンのチームになぜ彼らだったのか、その共創の背景を伺います。