世界の有力VCも注目する、Web3系「美容プラットフォーム」の成長戦略/GB Tech Trend

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700万ドルの調達を発表した「Kiki World」
Image Credit: Kiki World

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

クラウドファンディングの登場以来、商品化前のアイデアでファンを集め、一定の売り上げ目処を事前に立てる戦略が一般化しました。今回紹介する「Kiki World」も同様のアプローチですが、一味違うのはブロックチェーン技術を採用している点です。解説していきます。

Kiki Worldは、美容品ブランドの新商品企画に投票できるボーティングプラットフォームです。ユーザーは気になる美容商品企画に投票することで、Kiki Worldオリジナルのポイント(トークン)を獲得し、実際に商品化された後に特別価格で購入できたり、ブランドの招待制イベントへ呼ばれたりするメンバーになれます。投票が締め切られた後に試供品が郵送されるので、ユーザーがいち早くレビュー動画をソーシャル上にアップできるのもKiki Worldの特徴です。

配布されるポイントは「Programmable Points」と呼ばれ、どの時期に、どの商品企画に対して投票をしたポイントなのかがブロックチェーンのスマートコントラクト上に記録されます。これにより、ブランド側は投票行動を行なったロイヤリティユーザーに対して、スマートコントラクト上で事前に決められた報酬を自動配布できます(たとえば3回以上自社ブランドに投票を行った人へ毎月報酬を贈るような設定など)。

イーサリアムを使うため、ブランド側は自社プラットフォーム上でユーザー管理システムを運用する必要がなくなります。管理維持コストの軽減につながるので、従来のプラットフォーム事業と比較してランニングコストの面でメリットがあると言えるでしょう。このようにKiki Worldはブランドと美容好きユーザーの行動をうまく捉え、ブロックチェーンを用いる形でWin-Winの関係値を築こうとしています。今回、同社は700万ドルの資金調達を発表しました。Andreessen Horowitz crypto fundからも出資を受けています。

Kiki Worldと共通した取り組みをしているのが、以前紹介したレストランの会員権サービスを発行する「Blackbird Labs」です。Blackbird Labsも、どの顧客がロイヤリティ高く、どのくらいの頻度で通っているのかわからないといったレストラン(店舗側)が抱える課題解決のために、ブロックチェーンを使った会員権サービスを提供しています。ユーザー側は会員権を持っているレストランに行くとパーソナライズされた待遇を受けられ、レストラン側はどの顧客層に人気なのか多くのデータが受け取れる、という仕組みです。

Kiki Worldも投票してくれたユーザーからのフィードバックをいち早くブランド側に提供できます。それだけでなく、ユーザー別のロイヤリティ度合いがブロックチェーン技術を使って記録されるので、コミュニティ形成も円滑に行えます。

こうしたクラウド投票のアプローチは以前から評価されています。例として挙げられるのが、Fordが買収した地域路線バス「Chariot」です。同社は一般バス路線の走らない住宅街など、なかなか手の届かないエリアに小さなバス(ほぼバンに等しい)が走る交通網を敷きました。どのエリアに路線を走らせるかはWaitingリストを用いて需要を確認する仕組みになっており、さながらルートに“投票”するようなサービスでした。

残念ながら、ChariotはFordに買収されたのちに廃業となってしまいました。しかし、昨今のWeb3やブロックチェーンを活用したコミュニティ市場への注目を追い風に、改めてChariotが実践していたクラウド投票が再評価される可能性はありそうです。Kiki Worldのように美容業界向けに仕掛けることも十分にありえますし、Chariotのような過去事例に遡って、改めてブロックチェーンの価値を付加させて開拓できる市場もあるかもしれません。

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