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NVIDIAのVC部門も出資、「最も注目すべきAIスタートアップ50社」にランクインしたAbridgeとは

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Image credit: Abridge

Forbes は11日、Sequoia Capital と Meritech Capital が選んだ AI スタートアップのトップ50ランキングを発表した。Microsoft が支援する OpenAI、Amazon が支援する Anthropic をはじめ、ランキングには、さまざまな分野の AI スタートアップが含まれている。

注目の新チームの一つ Abridge は、音声認識と AI によるコンテンツの要約を医療分野にもたらし、AI による音声認識と整理によって、医師がカルテをまとめる時間を短縮する。

2018年の創業以来、Aridge が開発したシステムは1万人以上の臨床医に利用され、同社の評価額は8億5,000万米ドルに達している。

既存の電子カルテシステムは問題の解決にならない

Image credit: Abridge

アメリカ国立医学図書館によると、医師は勤務時間の平均3分の1を患者の医療記録の作成に費やしている。この終わりのないペーパーワークは、記録的なレベルで医師の燃え尽き症候群につながるだけでなく、患者が受ける医療ケアの質にも間接的に影響を与える。

既存の電子カルテシステムは紙のカルテをデジタルに整理することができ、医師にとってのプレッシャーや看護師が医師の手書きの文字を判読する時間を減らすことができる。しかし、電子カルテは、医師がカルテに記入しなければならない手間そのものを削減するものではない。

Shivdev Rao 氏

医師の Shivdev Rao 氏は、市場のペインポイントを見て、この状況を変えたいと考え、Abridge をローンチした。

Abridge は、音声データから重要な医療情報を認識・抽出する AI 音声システムを開発し、医師がデータ処理に気を取られることなく患者に集中できるようにした。

Abridge、独自の「再生検証」機能でディクテーション市場の支配に挑戦

Abridge は、医師が診察中にソフトウェアを起動して録音するだけで、システムが音声データの重要な要素を自動的に識別し、カルテを作成するアプリケーションを発表した。

しかし、Abridge が AI スタートアップトップ50に選ばれたとはいえ、彼らはこの分野で活躍する他のスタートアップ同様、市場最大の競合である音声認識技術開発の Nuance Communications からのプレッシャーに直面している。

Nuance Communications のチームは、Apple の音声アシスタント「Siri」の開発に携わり、医療分野の音声認識システムに注力している。同社は2022年、Microsoft に188億米ドルで買収された。

Nuance Communications は現在、50万人の医師が同社の初期音声認識ソフトウェアを使用しており、市場で圧倒的な地位を占めている。競合に対抗して、Abridge は auditability(監査機能)と呼ばれる独自機能を開発した。

auditability は、Abridge が2023年に開始した新機能で、医師が AI 生成したカルテを選ぶと、その情報の元になった音声記録の箇所を再生してくれる。

例えば糖尿病患者の場合、医師がカルテを読んでいて、患者の状態がどの程度悪化したかを知りたいとき、カルテ中の「悪化」という単語をクリックすれば、悪化に言及した音声記録を再生することができる。

監査機能「auditability」
Image credit: Abridge

さらに、チームが自社開発した多言語自動音声認識(MASR)モデルは、医療従事者向けの応用範囲を広げるだけでなく、非医療の会話に特化した機械学習トレーニングも提供する。

このシステムは、最終的な音声レポートの正確性を確保するため、診察プロセスから補助語や日常会話など医療以外の内容を自動的に除去する機能を持つ。

Abridge は設立以来、1万人以上の臨床医に同社のソフトウェアを使用してもらい、20万人以上の患者の医療記録を整理することに成功している。

多言語・多職種連携で協業を呼び込む

Abridge は、現在50以上の異なる医療専門分野をカバーし、14ヶ国語で音声メモを取ることができるシステムを、ライセンス費用を開示することなくローンチした。

医療コミュニティでの口コミによるシステムの普及に加え、Abridge はアメリカの医療センター MemorialCare やカンザス大学医療システムなどの組織とも提携している。特筆すべきは、2023年8月に Abridge が電子カルテ大手の Epic と提携したことだ。

アメリカ最大級の電子カルテ企業 Epic は、2018年に新プログラム「Partners and Pals」を発表した。これは、医療のさまざまな側面に焦点を当てたスタートアップと提携することで、医療システムを補完することを目的としている。このプログラムに参加する最初のスタートアップとして、Abridge がローンチした AI システムは、より多くの潜在的ユーザにリーチし、市場での認知度を高めるために、Epic のソフトウェアと連携した。

Abridge は今年2月、Lightspeed Venture Partners と Redpoint Ventures がリードした シリーズ C ラウンドで 1億5,000万米ドルを調達し、評価額は約8億5,000万米ドルに達した。さらに、同社は今年3月に NVIDIA と提携し、NVIDIA のベンチャーキャピタル部門 NVentures から投資を受けたことも発表した。

台湾に目を向けると、2019年に設立された AI スタートアップ KENKONE(康統医学科技)は開業医によって設立され、AI による口述筆記認識と自動カルテ整理に注力している。ただし、日常的な外来診察に焦点を当てた Abridge が開発した内視鏡バーチャルアシスタントシステム「EVAS(医瓦士)」は、市場との差別化を図るため、より難易度の高い手術シナリオに焦点を当てている。

メドテック分野に参入する企業やスタートアップが増える中、将来の医師は事務処理に費やす時間を減らし、医師と患者の関係維持により多くの時間を費やすことができるようになるだろう。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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