【マインドのDNA】私たちは中身に妥協しない「侍集団」/株式会社フルステム千葉 俊明氏

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

「マインドのDNA」では、いま注目のスタートアップ起業家をピックアップし、現在の価値観やマインドをさまざまな角度から深掘りしていきます。

今回登場いただいたのは、幹細胞の高密度大量培養技術を実用化する株式会社フルステム 代表取締役社長の千葉 俊明氏です。

千葉 俊明
脳外科専門医として手術や診療をしながら、大学院で治せる脳外科医を目指した再生医療研究を開始。2002年に米国コロラド州立大学に留学し、ヒトES細胞の大量培養技術等を開発し動物モデルで細胞治療を行う。帰国後は医療と研究の二足の草鞋で継続。沖縄県の大型研究開発事業の成果として、留学時の経験を生かした不織布大量培養技術の基盤技術を確立し、2016年に起業した。

──なぜ起業という選択を?

今後は医療のどの分野においても、再生医療が新しい治療として求められ、発展すると予想されます。しかしそのためには、通常の治療で薬が使用されるように、再生医療の主体となる幹細胞も一定の品質で大量に用意する必要があります。言い換えると、使用する医師の視点に立って適切な細胞製造インフラができないと再生医療は広く発展しないと考え、自らの技術や知識と経験が必要であると感じ、起業をしました。

──失敗・挫折にはどう向き合っている?

現在の基盤技術が生まれた研究開発事業を受託し開始するためには、大学研究者を辞めざる得ない不合理な状況がありました。その時、相談した母校の法人トップであり医師の大先輩から「大学職とやりがいのどちらが、自分にとって大切か」と問われ、研究開発に没頭することができました。そのため普段からこういった人のつながりを大切にしています。

自動培養技術の実用化は、工学的な要素に無知なこともあって困難を極めました。そこで用いたのが「既存の培養技術をどう自動化させるか」という通常の発想ではなく、「どうすれば求める量が得られ、使える自動化技術が達成できるか」と逆算方式で課題を立てて考えるアプローチです。そして最終的には、細胞にとって不利益がない方法を選びました。

結果として、類似技術がない実用性の高い製品の完成に繋がったと考えています。あきらめたり不可能だと決めつけたりせず、視点を変えながら、よく考えることは今後も大事にしていきたいですね。

──最もゆずれないものは?

物事は憶えずに一切理解すること。また、こだわる部分とそうでない部分を明確に分けて、こだわる部分には妥協を自他ともに許さないことです。

単純にすべての物事を記憶することはできませんし、自分も含めて万能な人間はいません。特化できる部分を強調できないと、何事もものにならず結果は生まれないと考えています。

──チームをひとことで表すと?

武士道を尊ぶ侍集団。内容や中身だけは譲れない戦う専門人材の集まり、であると思っています。

──心身ともに疲れたときのリフレッシュ方法は?

サウナでの温冷浴や温泉、ゴルフ。

──自分を突き動かすエネルギーは?

開発した技術によって、医療として広く多くの患者に貢献できることを実現するという思いです。

──CEOに必要な資質とは?

CEOのあるべき外形にとらわれず、達成する理念や目的に向かって、人と協力し会社の資材も活用し、初志貫徹できることだと考えています。

──最後に今の夢を教えてください

不織布培養法を治療用途の細胞製造のゴールドスタンダードにすることです。

再生医療はご存知のように次世代の先進的な医療技術ですが、東洋医学(漢方)と西洋医学の中間にあるような第3の医療だと私は考えています。漢方の生薬と同じように、幹細胞の力で身体を良くする治療であり、幹細胞の質が治療効果に対して最も重要です。

しかしながら現在、幹細胞は手作業培養のみに依存しているため質的にも量的にも限界があります。この課題を解決し得る唯一の策が、体内環境に類似した性質をもつ三次元不織布培養法であると考えています。

また、普通の医師は漢方にはあまり詳しくないのと同様に、再生医療に詳しい医師も多くありません。品質にばらつきがあり大量製造できなかった漢方を、一定の品質の医薬品として発売している製薬企業がありますが、私たちは幹細胞においてそのような存在でありたいと考えています。製薬企業はもちろん、広くクリニックの医師にも適切な幹細胞技術を提供し、どこでも誰でも再生医療が受けられる世界を創造するために寄与していくのが今後の夢です。

株式会社フルステム

クリニックや大学、製薬企業向けに、治療用途の幹細胞の大量培養技術開発や、装置・培養キットを提供している。最近では独自技術によって得られる大量の良質幹細胞が放出するエクソソームをクリニック向けに解析及び提供するサービスも開始した。高密度培養技術による小型で実用性の高い自動培養装置により、どこでもだれでも再生医療が実施できる世界を創造する企業である。

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