逆境、それでもスタートアップした二人の連続起業家

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夢だけを語り、スタートアップした二人はどのようにして成長の切符を手にしたのか。連続起業家だからできたことは何か、逆境でスタートアップすることの意義や落とし穴はどこにあるのか。

ショックレー半導体研究所から独立した八人はFairchild Semiconductor International(フェアチャイルド・セミコンダクター)を設立し、シリコンバレーの礎を築いたと言われています。出身者たちはやがてIntelやAMD、Appleのような企業を生み出し、Kleiner Perkins、Sequoia CapitalのようなVCも誕生しました。

反逆者は常にイノベーションの先頭に立つーー。世界がコロナ禍という未曾有の出来事に混乱する中、敢えてこの時期を「再出発の時」とした起業家がいます。

しかも二人がスタートアップのテーマにしたのは「旅」。ひとりは新しいデジタル時代のトラベルエージェンシー、そしてもう一人は旅をするように生活する、新しいライフスタイルの提案でした。

令和トラベルNOT A HOTEL

世界的な紛争と歴史的な円安というさらなる追い討ちを受けた二人。しかし創業から数年、その結果は大方の予想を裏切るものになります。本稿では特別に機会を得て、「NOT A HOTEL ABROAD」で事業としても提携をしたお二人に、その出会いからこの数年での成長と挑戦についてお話を伺ってきました。

「連続」起業家として出会ったふたり

同い年で趣味も合うーー。NOT A HOTELの濵渦伸次さんと令和トラベルの篠塚孝哉さんは同時期に連続起業家としてスタートアップした経営者同士というだけでなく、投資家と起業家、友人としての関係値も持ち合わせています。

令和トラベルの創業は2021年4月。海外旅行のデジタル旅行代理店としてスタートアップし、創業からわずか2カ月後の6月に「サービスコンセプトだけ」の状況でVCや事業会社、個人投資家などから22.5億円の大型調達を発表します。当初、夏頃にリリースを予定していた海外パッケージツアーのかんたん予約サービス「NEWT」は感染症拡大の隔離措置解除を経た2022年4月にサービスイン。

コロナ禍明けで人々が我慢していた旅行に飛び出すかと思いきや、時を同じくして発生したロシアによるウクライナ侵攻と歴史的な円安がダブルパンチで同社を襲います。

創業者の篠塚孝哉氏はリクルート出身の連続起業家。2013年に創業したLoco Partnersで宿泊予約サイト「Relux」を立ち上げ、2017年にKDDIへ売却、連結子会社化した経験をお持ちです。2020年に同社代表取締役を退任した後、しばらくの時を経て令和トラベルを創業します。

一方のNOT A HOTELの創業はそれよりも1年早い2020年4月。創業者の濵渦さんは2007年にSaaS型コマースプラットフォーム「アラタナ」を創業した人物です。2015年にZOZOに企業売却してグループ入りし、子会社役員を経て2021年3月に退任、翌月の4月に同社を創業しました。初期の投資家には篠塚さんもエンジェルとして参加されています。

そしてこのNOT A HOTEL、令和トラベルと同じく創業時点でサービスも何もありませんでした。一点、大きく異なるのが「不動産」を扱う点にあります。そうです、実際に土地を取得して建物を建てなければ、事業は進まないのです。この立ち上げの破茶滅茶ぶりはこちらの過去記事に譲るとして、二人とも、二桁億円の資金を集めながら大逆境の中、異例の立ち上げを実施しているのです。

前置きが長くなりました。そもそも二人はどのようにして出会い、現在のような関係になったのでしょうか。

ーーそもそもお二人っていつぐらいからの関係なんですか

濱渦:お互い会社を売却した後なんですよね。それまでは存在を知ってるぐらいの感じで、初めて会ったのは2019年ぐらいかな。

篠塚:NOT A HOTELやるとき、それこそエンジェル投資では参加しているから設立する半年ぐらい前に初めて会ったんですよね。

ーー起業家ってたくさんの横繋がりがあるけれど、気が合うとか合わないとかあるじゃないですか

濱渦:全く同い年だし、やっぱり存在として知ってるから会った気にはなってるわけですよ。起業して売却して、今どんな感じかっていうのも何となく知ってる。そういう意味では、昔からリスペクトはあったんですよね。ただ、(前職を)辞めるって自分で決めたときからちょっといろんな人に会いたいと思ってたのもありますね。そもそもあんまりネットやIT界隈の人たちと繋がりがなかったんですよ。なんならアパレル関係者とかの方が繋がりが多かった。

ーー篠塚さんもそこまでインターネット界隈の起業家の交流会とかにあまり出てこなかった印象あります

篠塚:僕も似てるかもしれませんね。仲良くなった理由はまさに同い年だし、(連続起業家になった)シチュエーションが似てる。あと趣味が非常に近かった。83、84世代で1社目を起業して、M&Aで大手企業に入って、しかももう1回起業しようとしてる。趣味は僕自身、ホテルや旅館がめちゃくちゃ好きだし、家具とか建築とかも大好きだった。それにご飯とかワインとかアート。そこが完全に一致する人って意外とITやインターネットの界隈ではそこまで多くはないんですよね。

濱渦:仕事でも最初はよく相談に行ったんですよ。僕は旅行とかホテルに全然詳しくなかったので、話を知りたくて、知見をいろいろ学ばせてもらおうと思って。夜だけじゃなくて昼も相談しに行って、その流れで(投資家としても)参加してくれることになって。

ーーNOT A HOTELのアイディア、最初の印象ってどうでしたか

篠塚:事業計画を見てないです(笑。見てない。出資したとき、既に那須のパースぐらいがあった程度で、『これ作りたいんだ』みたいな時期。周りの何人か近しい関係の仲間たちが社外取締役とかもやってて、出資もしてたのでじゃあ自分も参加しようかと。緩い感じで見ました、僕自身、宿が好きだったし。

濱渦:国内外のホテルとかね、すごい詳しい。語り出したら止まらない。

篠塚:確かに今日、事前に話してたけど、海外ホテルの話しを始めたらそれだけでも数時間話せるぐらいに喋りたいホテルがいっぱいあります(笑。

濱渦:海外に出張行くときはこのホテル良かったよとか、いろんな情報をくれるんです。だから今、やってる提携とかは篠塚さんと組むのが一番いいと思ったんです。

逆風をチャンスに変える

両社は現在「NOT A HOTEL ABROAD」を通じて提携も実施しています。NOT A HOTELのオーナーが海外提携ホテルを相互利用できるもので、2024年4月から開始しているサービスです。

NOT A HOTELはホテルにもできる別荘を年単位で「シェア購入」できるサービスで、予算に応じて年間10泊から30泊の「権利」を得ることができます。この1泊分をそのまま海外のラグジュアリーホテルの1泊と「交換」できるサービスで、「The Ritz-Carlton Maldives」「Six Senses Ibiza」「The St. Regis New York」などのホテルが価格を意識せずに使えるようになります。

この予約部分を担うのが提携する令和トラベル、というわけです。

ーーNOT A HOTELと令和トラベルのNEWTで連携が4月から始まってますよね。あれってどういうものなんですか

濱渦:NOT A HOTELで保有している1泊の権利と海外のホテルの1泊を交換する仕組みなんです。オーナーさんは1泊いくらと意識せずに、自分の家みたいに海外ホテルを選べるようになる。

ーーどういう経緯で始まったんですか

濱渦:NOT A HOETLには『世界中にあなたの家があるよ』っていうコンセプトがあるんですね。別荘って買ったら一つで終わっちゃうじゃないですか。ひとつとか二つとか。僕はちょっと飽きっぽいのもあって、世界中に持ってたら幸せだなと。それで国内30カ所をまず目標にしてるんですけど、海外にも作って欲しいという要望がとても多い。

国内にはあるけど、海外にはないよね。じゃあ海外に作ろうとなったときに、事業として競合も増えてくる中、国内を手薄にできないわけです。海外にリソースを割くタイミングじゃないなと思って、それであれば海外はまず提携から始めようと。それでパートナーを考え始めてたんです。ただ、僕は元々NOT A HOTEL自体、自分が欲しいと思ったサービスなので、パートナーについても自分と感覚が合うことがとても大事だったんです。

篠塚さんがホテルの情報を送ってくれるから、一緒に仕事やるのが一番早いんじゃないかということでぱっと決まった。僕も去年の10月ぐらいにNEWTでニューヨークに行ったんですけど、これとても便利なんですよ。

海外旅行についてはいろんなアプリを触ったんですけど、日本語という安心感もあるし、UIUXは作り込まれている。自分たちで作るよりもいいし、海外のホテルとの提携も一緒にいろいろやってくれる。話を始めて1、2カ月でコンセプトも提携先も決まってリリースしたっていう感じですね。

ーーホテルブランドとの交渉ってどういうものなのですか

篠塚:NEWTでは2パターンがあります。1つはホテルのシステムには料金や在庫が取得できるBtoBマーケットプレイスの提携やAPI。もう1つは現地ホテルと直接契約をしているダイレクトコネクト。今回のケースではどちらも使い分けていく予定です。

そもそもNEWTでは創業からVIP向けのコンシェルジュサービスをずっとやっていて、IT富裕層の方とか本当、大企業のオーナー様とか、開業医、開業医の方とか中小企業オーナーさんとか、すでにかなり使ってくださってるんです。僕自身、宿が本当に好きだし大体、こういう方々がどこに行きたいかニーズを聞けば、パッとどこのエリアでも提案できるんですよ。それをコンシェルジュチームも形式知としてインストールしてますし、今回の提携は非常にありがたい形なんですよね。

濱渦:今までの施策で一番反応がありましたね。NOT A HOTELは年間で保有している日数だけ使えるので、アナウンスを見てみなさん(海外ホテルの予約を)確保されてますね。(国内だけで)30泊も使いきれないけど、海外も使えるならと売上にも直接貢献してくれてます。打ち手としてはNFTなどいろいろやってますけど、今回はかなり大きかったですね。

NOT A HOTELの事業成長は凄まじく、4期目の販売売上は119億円(2023年11月公表情報)に到達しました。もちろん、販売価格が高価格帯であることも売上を押し上げる要因なのですが、できるだけこのライフスタイルを一部の富裕層だけでなく幅広い人々に提供したいと考え、現在はNFTや暗号資産のアイデアを取り入れて、その範囲をさらに拡大しようとしています。

一方の令和トラベルはどうでしょうか。その事業状況について篠塚さんは意外な話を明かしてくれました。

ーーNEWTの顧客層ってどうなんですか。海外旅行でここまでの円安になるとあまり予算云々を考えなくていい人たちが使っていそうな印象があるんですが

篠塚:いや、そんなことはないですよ。NEWTの利用者属性に関しては、20代女性が中心ですよ。

ーーえ、意外。仕事中心に富裕層が多く使ってると思ってました

篠塚:用途はバラバラで出張はもちろん、家族の旅行もありますよ。エリアについても全世界カバーしてるので、北米だろうがヨーロッパだろうがハワイだろうが東南アジアだろうが、どこでも。

今、サービス全体でいうと6-7割が女性でそのうち半数は20代の方々なんですよ。メインは韓国、台湾、タイとか、その辺のエリアが中心で、あとはやはりハワイあたり。その辺は日本人の出国先の比率と同じぐらいなんですけど、ほぼほぼそれで99%ぐらい。印象を持たれてる異次元のVIPの方もいらっしゃいますけど、全体の売上に占める割合は10%ぐらいです。

濱渦:僕らにとってのメリットは金額を出さないところなんです。1泊いくらで調べて、金額が数百万円になると、どうしてもシビアに考えちゃう人も出てきてしまう。でもあくまで自分が持っているNOT A HOTELとの『交換』なので、海外のホテルでも自分の家みたいに選べる。(円安の影響が大きい今だからこそ)金額を意識しないで使ってもらえるのは双方にとってもメリットになると思ってますね。

まさに別荘感覚だよね。別荘に泊まるとき別に金額とか気にしないわけだし。

ーーコロナ禍を経て海外旅行業界全体がまだ6割ほどしか戻ってきてない中、さらに円安の影響も大きいわけじゃないですか。NOT A HOTELは最終的に一般の方々に旅をするようなライフスタイルを提供しようというビジョンはありつつ、今はやはりそれなりに所得がある方が立ち上がりを牽引したわけです。売上規模も119億円(2023年11月時点)と開示されていてわかりやすいですし。一方の令和トラベルはどうなんですか?

篠塚:売上はまだ公開していないですが、規模感でいうと、立ち上げから2年で以前にRelxuが買収されたときと同じぐらいに成長してます。Reluxで6年ぐらいかかったんで、相当な速度であることは伝わると思います。

ーーこれも意外でした。地域紛争についてはエリアの話なので限定的かと思いましたが、やはり円安はかなり影響範囲が広いですからね

篠塚:海外旅行をやって気がついたんですけど、Reluxのときは日本というマーケットでやってるんで、PMFのあり方が単一的なんですけど、海外旅行って渡航先エリアによってカスタマーターゲットが全然違う。エリアごとのPMFがあるって社内でずっと言ってるんですよ。

つまり、韓国旅行でPMFしたかどうかと台湾、またはハワイでPMFしたかは違う。よく見ていくと、海外旅行代理店って、全国にたくさんあるんですけど、ヨーロッパ専門の海外旅行代理店とか、スポーツ観戦のための海外旅行代理店とか、ハワイに特化した旅行代理店とかっていうのがとてもたくさんあるんです。それはなぜなら、人々は、そのエリアに詳しい人に相談したいから。

令和トラベルに話を戻すと、完全にPMFしたなって思えるのは、それでもソウル、台北、あともう少しでハワイっていう感じなんですね。ヨーロッパはまだまだこれからだし、北米も伸びしろだらけです。だからこれからそれらを一つひとつやっていくとまだまだ伸びる。

ーー令和トラベルだけ伸びているのですか?競合の状況はどうみてます

篠塚:当然、他社さんも伸びてはいますし、ものすごく協力関係にもあります。一人勝ちが難しい産業ですし、カスタマーの安全サポートも大切なので協調が必要だと思ってます。

ちょっと話がズレるかもしれませんが、今回のインタビューの『逆風の中でどうしてスタートアップしたのか』っていうテーマにもかかわるんですが、僕はこの状況を全く逆風とは思ってないんです。むしろ順風と思ってスタートしている。なぜなら(コロナ禍で)海外旅行市場がリセットされて、右肩上がりに戻るしかないマーケットシチュエーションにて参入したからです。

そんなマーケットで起業すれば身軽で、ピカピカの船に乗ってゆっくりと2年かけてプロダクト開発に集中できる、こんなチャンスはない、そんな風に考えていました。なので逆風というか順風です。

話を戻して今、他社さんも伸びてます。ただし、コロナ禍前の2019年比で言うとまだ半分ぐらい。なぜならマーケットが全体でもまだ6割ぐらいしか戻っていないから。2019年時点での各社の決算状況はそこまで余裕という状況ではなかったので、戻りの状況から考えるとまだまだこれからであることは間違いないです。

ーーただ、予想外のことも多かったと思います。実際、シード段階で成長期待値からかなりの資金を調達してるわけなので、そのあたりの軌道修正とか考え方とかどうしたのか興味ありますね。メンタルがかなり強くないと外部要因の責任にしてしまいたくなります

篠塚:そうですね、3年前に起業したときは今日現在、既に海外旅行が完全回復していて、なんならニュースで『コロナが明けて海外旅行が活況です』って空港の映像と共にバンバン取り上げられている明るい状況を予想していました。それは本当です(笑。

だから、もう今のシチュエーションの中で戦うしかない。それだけですよ。例えばこの伸びが遅いっていうのは、スタートアップからすると実はチャンスなんですよ。今、(マーケットが)100%に戻らなくてよかったっていうのも実は思っていて、一気に戻っちゃうと私たちの成長速度、組織適合には間に合わなくもなっちゃう。マーケットがまだ半分なので、多くの会社さんも言わば船の修理中なんです。それにもし万が一、マーケットの完全回復が1年半前とかだったらプロダクトが間に合ってない。

ーー篠塚さんって想像以上にポジティブですね

篠塚:今のプロダクト(NEWTアプリ)は、レビューも好評で体制も整ってきたので今ならいつでも100%に戻ってくれていいんですけどね(笑。

地域紛争は当然、予想なんてできるわけもなく突然始まるわけです。あのときはヨーロッパとか、長距離路線の方がドル箱というか、儲かることはわかってたんで、そっちに力を入れようとしてました。けど一瞬で全部ストップ。ピタッと。全部。

濱渦:そもそも飛行機が飛ばないとかね。

篠塚:めちゃくちゃありましたよ。それと円安。そこは逆風だし、予想外すぎました。

ーー傍からみていると篠塚さんそういう状況が好きなのかなって思ってました。逆境で燃えるタイプ

篠塚:いやでもね、今100%に戻ってても常にポジティブな話をしてると思います。

ーー笑。濱渦さんも傍から見てて大変な状況がいっぱい起こるわけないですか。どう見てました

濱渦:なんだろうな、いや、なんとかする(笑。篠塚さんはいつも、感情も含めてあまりブレがないんですよ。常に落ち着いていて、極端にポジティブでもない。同年代中で一番冷静な経営者だなって思っていて、仕込みはがっつりするけど、あとはもう現場に任せたりとか。僕との提携も(篠塚さんは)1回も出てきてないですからね(笑。

篠塚:確かに1回も出てない(笑。

濱渦:組織作りはすごいですよ。メンバーがみんな優秀で仕込みを黙々とこなしてくれる。

ーー篠塚さん抜きで(笑

クレイジーな「連続」起業家が世界を変える

二人の連続起業家、共通しているものはなんでしょう。

コロナ禍にスタートアップするという「逆張り」は一見すると外れたように思えます。コロナ禍が終わっても、世界的な政情不安、円安、そしてインフレはあらゆる価格に直接跳ね返ったからです。そしてある意味、終わりのない恐怖が続いているからです。しかし、ここまで話を聞いた通り、二人はスタートダッシュにつまづいた素振りすらみせません。それどころか数字は拡大するばかり。

インタビューの終わり、お二人にこの逆境をどう受け止めたのか、駆け抜けた創業期の振り返りを聞いてみました。

ーーNOT A HOTELについてはこれまでにも何度かインタビューで立ち上げの話を聞いてますけど、改めて相当クレイジーですよね

濱渦:やったことなかったのが逆に良かったと思うんです。(不動産やホテル経営について)知識がなかった。アパレルとeコマースしか知らなかったので、その中で不動産、ホテルという、全く違うところに入って、軽井沢とか宮崎とか、そんな中途半端な場所で坪100万以上で売れるわけがないとか、CGだけで売れるわけがないとか散々言われました。

いろんなことを言われたので、その中でやったのは良かったなと思いますね。

ーー濱渦さんも篠塚さんと同じで逆境に燃えるタイプですね(笑。タイミング的には今、振り返ってどう評価します

濱渦:僕は今やれって言われたら怖くてしょうがないですよ。逆にね、知識ができたから。もうちょっとコストを落として、まあまあなものを作ってるかもしれない。ただ、僕は欲しいものを作っていただけなので、坪1000万円でも2000万円でもその人が欲しいと言ったら買うでしょう、というつもりでやっていた。無知が良かったなと思うんですよね。

あと、建築するときの費用。今、ものすごく上がっているんです。あのときは想像できなかった。

僕はやっぱり、先を読みすぎちゃ駄目だと思っていて、別に学者でもないしそこを予測しようとしたら駄目で、淡々と自分がやるべきことをやれるというのは本当に大事だなと。時代の流れとか無視してやっていた部分もありますね。

ーー私は濱渦さんにこれまでに何度かインタビューさせてもらってるんですけど、とにかく考えるじゃないですか。いろいろな施策やアイデアを。NOT A HOTELの仕組みはもちろん、マーケティング的な視点でのNFTの発行やトークンの設計もとてもよく練られてる。スタートアップとしての勝負所ってどこにあると思います?

濱渦:唯一よかったのは早くやったとこだけですね。今やったらできない。建築費も上がりきってるし、既にやっているところがもっと大きくなっている。あの時に自分たち以外がやらなくてよかったなと思いますね。

ーーあとお二人とも連続起業家じゃないですか。前の経験が役に立ったことってありましたか

篠塚:僕はとてもありましたね。本当に全方位的に役に立ってます。学ばなきゃいけないポイントもいっぱいあって、知識としてのファイナンスとか採用とか、組織ガバナンスとか、経理財務みたいなところとか。あとは買収されKDDIグループのおかげで学べたたくさんのことを全部総動員して起業できたのは、本当に役立ちました。

一方で学ばなきゃいけないなと思ったのは、今の話にも近くて、当たり前のところをやっぱ考えちゃうんです。前例に倣って、こうやったらこうなるはずだという、すごいバイアスがかかりがちになるんです。だからそこはアンラーニングも同時にたくさんするよう強く意識しました。

ーー篠塚さんってnoteもたくさん書かれていて、ロジカルな戦略家のイメージが強いんですけど、アンラーニングした部分ってどこだったんですか

篠塚:僕、起業してファイナンスしたとき、(前回のReluxと)同じ旅行事業なので、ケイパビリティあります、だから自分たちに賭けてください、みたいなコミュニケーションを投資家さんたちにしていたんです。

けど、やってみたら実は海外旅行のツアーって、国内旅行とは全く似て非なる事業で、全然違ったんですよ。だって法律も違うし、そもそもツアーっていう仕組み自体、ホテルとフライトの契約とかも全然異なるんです。そもそもフライトって僕やったことなかったんで。

ーーちょ(笑

篠塚:法律も税金も燃油サーチャージも国によるルールも全く違う。だからある種、門外漢で入った状態になれた。自分は海外旅行やホテルが大好きで、そういう視点で見てきたものと、そのビジネスを作るっていうのは、やっぱこんなに違うんだなと思いましたね。最初『そういえば、ツアーってどうやって作るんだっけ?』っていうところから始まってますから。(笑

ツアーやるとあれだけ大口を叩いたけど、そもそもツアーって何だっけみたいな。そしたら法律や規定がめちゃくちゃいっぱいあって、メンバーと一緒に本を10冊ぐらい買って読むところから始めました。でもそのおかげで他社さんとは違うUXが実現したし、ツアーだけど超簡単に取れるみたいなのができたっていうのはあります。偶然の産物ですけど。

濱渦:どの業界にも『なんで大手はやらないんだろう』というものがいっぱいあるけど、相応に(事業を立ち上げるのは)面倒なことが多いからね。だから大手が面倒くさいと思うことをやらないといけない。無理だって彼らが思ってること。

ーー濱渦さんはいかがですか。ZOZOグループに入った経験から勘が働いたところって何かありましたか

濱渦:ファッション業界にいたからこそできたこともいっぱいありましたよ。特に初期のメンバー。できたばっかりの会社に、仕事一緒にやろうって建築家の方やクリエイターのみなさんに集まってもらえたのはすごい大きかったんですよね。1棟10億円以上のものを売る。だから当然、信用の積み上げもとても大事で、僕自身のキャリアがある意味役に立った部分でもあります。

あとはやはりコマースをずっとやってきたので、みんながそれを欲しいと思うかというところには結構勘どころがありますね。最初、那須のファーストロットを出したとき、最初のファーストプランをデザイナーと話して『これじゃ売れない』と1カ月延期したんですよ。

そのビフォー・アフターが全然違うんです。もし、これで出してた全く違う結果になっていたでしょうね。ぞっとしますよ。ファッションって年2回のファッションショーで全てが決まるんですよ。そのデザイナーの、その会社のね。なので、数カ月遅れようが最高の状態で出す。

こういうファッション業界やコマースの知見はとても役に立ってます。

ーーまだまだお話お聞きしたいですが時間になったので続きはまたの機会に・・

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