デジタルで組織の絆を深める「TeamSticker」、マケプレ活用で世界を目指す——生成AI、成長の方程式/コミュニティオ 代表取締役 嶋田健作氏 #ms4su

本稿は日本マイクロソフトが運営するスタートアップインキュベーションプログラム「Microsoft for Startups Founders Hub」による寄稿転載。同プログラムでは参加を希望するスタートアップを随時募集している

既に日常生活にも浸透しつつある生成AIテクノロジーですが、明らかな成果を出すために活用するには、知識やデータとの組み合わせが欠かせません。今回のシリーズでは、生成AI技術の活用によって、ビジネスやサービスに革新的な成長をもたらそうとしているスタートアップの事例を取り上げます。

今回紹介するのは、Microsoft Teams上で動くデジタルサンクスカード「TeamSticker」を展開するコミュニティオです。2019年の創業から一環して組織内のコミュニケーションにまつわる課題解決に伴走してきたコミュニティオの事業は、生成AIの活用でさらに進化しているといいます。そんな同社の取り組みについて、代表取締役の嶋田健作氏に聞きました。

〝Teamsに特化したビジネスアプリ〟で大企業での導入加速

コミュニティオの主力製品であるTeamStickerは、Microsoft Teamsのチャット上でサンクスカードを送り合える社内用のコミュニケーションアプリです。ユーザーは業務中に生じたちょっとした感謝や称賛の気持ちを、普段使っているTeamsの中で手軽に表現できます。

感謝や称賛を表現する方法としてポイントを付与しあえるピアボーナスツールなども存在しますが、TeamStickerではポイントではなく〝デジタルギフト〟や〝オリジナルステッカー〟が用意されているのが特徴です。サンクスカードにはコーヒーのチケットやオリジナルのノベルティといったデジタルギフトを添えられるほか、スタンプの要領で企業の文化や特定の感情を反映した独自のステッカーを貼り付けることもできます。

これらの仕組みが組織内でサンクスカードの運用を定着させ、社内のコミュニケーションを活性化していくことにも一役買っているそうです。

現在TeamStickerはNECや東京海上グループをはじめ大手企業を中心に導入が進んでおり、数万人規模で活用される事例も生まれています。その背景には「Teams用アプリとして特化し、Teamsの1機能のような使い勝手を実現していること」を始め、サービス内の機能やユーザー体験を大手企業向けにチューニングしてきた歴史があるといいます。

例えば歴史のある大手企業にはさまざまな年代、経歴の社員の方が在籍されています。そういった企業ではポイント型のツールが合わないこともあるんです。年の離れた年配の上司にいきなり「A部長に90ポイント」といったようにポイントを付与することには、抵抗があるという方もいます。我々は大企業の方々が安心して使えるサービスを前提に、必要な機能を一つひとつ実装してきました。社員の数が増えるほど、この会社を良くしたいという気持ちは強いものの、社内のコミュニケーションが課題につながりやすいです。(嶋田さん)

2023年にローンチした「NewCommunicator」も顧客の声を基に開発したTeamsアプリです。同サービスの特徴は、Teams上で全従業員宛てにメンション通知付きのメッセージを一斉配信できること。Teamsは1万人以上に対してはそのようなメッセージを送ることができない仕様になっているため、ユーザーにとっては“Teamsを補完する拡張機能”のような位置付けで使われています。

このようにサービスを拡張しながら事業を広げてきたコミュニティオですが、現在はさらなる進化に向けた研究開発に取り組んでいます。そこで鍵を握るのが「生成AI」です。

一例としてTeamStickerではMicrosoft Copilot for Microsoft 365(以下 Copilot )を活用し、「AIのアドバイスに基づいてサンクスカードの内容をブラッシュアップできる」機能の提供を試験的に始めています。

誰に対して、どのようなサンクスカードを送るべきなのかがわからない。そのようなユーザーがAIとの対話を通じてサンクスカードの内容を考えながら、「感謝や称賛の気持ちを表現するスキル自体を培っていける」ことがポイントです。

AIと対話をしているうちに自然とそのスキルが磨かれていくこと。これは(生成AIによる)大きな発明の1つだと思うんです。これからはツールを使い続けていると、自分でも気がつかない間にリスキリングされているという世界が広がっていくのではないでしょうか。まさにCopilotのような技術が企業のインフラのあり方を変えるような感覚があるので、私たちもマイクロソフトさんとディスカッションしながら機能開発を進めている段階です(嶋田さん)

生成AIを用いたアドバイスの機能についてはプロトタイプの段階のものではあるものの、実際に利用したユーザーの7割程度からは「すごく良かった」というアンケート結果が得られているそうです。新しい視点や自分では気がつきにくい角度からアドバイスをもらえることが、評価につながっている要因だといいます。

マイクロソフトの巨大なエコシステムに乗って成長する

Teams用のアプリというプロダクトの性質もあり、コミュニティオでは2019年からマイクロソフトと連携を進めてきました。

別のクラウドサービス上で構築していた基盤をMicrosoft Azureへ移行するプロジェクトから始まり、プロダクト開発における連携やセールス・マーケティング領域での協業、さらには生成AIにおける取り組みに至るまで。2021年にコミュニティオがマイクロソフトのスタートアップインキュベーションプログラムを卒業して以降も、これらの取り組みは加速しているといいます。

我々も最初は単なる「インフラ」としか捉えられていませんでした。ただ実際にマイクロソフトのプラットフォームに振り切って事業を作ってみると、世界の名だたる企業が参加している巨大なエコシステムだと気づいたのです。システムを導入する大手企業にとっては、見たこともないスタートアップのお手製のシステムと、マイクロソフトのプラットフォーム上で展開されているシステムでは見え方が全く違います。

またマイクロソフトは大手企業とのコミュニケーションにおいて先行しており、我々が持っていないような知見も持っておられた。我々はTeamsに注力するという形でこの巨人の肩の上に乗ったわけですが、自分たちの今後のアクションプランを踏まえても、このプラットフォームの上でビジネスを展開していくことが1番正しいのではないかと考えたのです。(嶋田さん)

コミュニティオ代表取締役の嶋田健作さん

嶋田氏の話を象徴する1つのエピソードが、マイクロソフトのアプリマーケットプレイスを通じた海外展開です。

マイクロソフトでは「Microsoft AppSource」や「Microsoft Teams アプリストア」など、同社の製品に関連した業務アプリケーションのオンラインマーケットプレイスを保有しています。スタートアップにとって、この場所は「世界中のマイクロソフト製品の顧客に自社製品を知ってもらえる一等地」にもなりうるわけです。

実際にコミュニティオでもこのマーケットプレイスを通じて北米や南米、ヨーロッパなどの企業からの引き合いが増え、年間サブスクリプション契約の締結に至った海外顧客の事例も生まれてきているといいます。海外向けに特別なセールスやマーケティング施策を実施してきたわけではなかったにも関わらず、です。

こうした流れを受けて、コミュニティオではマイクロソフトと連携し、昨年からMicrosoft アプリストアを通じた本格的な米国市場の開拓も始めています。

生成AIで変わる企業内のコミュニケーションとリスキリング

日本マイクロソフト パートナー事業本部 クラウドパートナー開発本部 山口裕土さん

マイクロソフトにとっても、Azure上で動くコミュニティオのサービスが使われるほど自社の売上は増えていきますし、Teamsの使い勝手を良くするコミュニティオ製のアプリはTeamsユーザーの利便性向上にも繋がるはずです。

日本マイクロソフト パートナー事業本部 クラウドパートナー開発本部 山口裕土さんは「コミュ二ティオとはwin-winの関係性を構築できたことで、お客様の視点でプロダクトの展望を議論しながら、海外展開に向けた協業など攻めた取り組みにまでつなげることができた」と振り返ります。

直近のCopilotの取り組みでは定例会議にマイクロソフト本社のエンジニアも加わり、Copilotの新機能の使い勝手や活用方法について議論を交わす中で、お互いが一緒にアップデートしている感覚があり、マイクロソフトとしても良い協業につながっていると考えています。

Teamsのアプリストアやグローバルのユーザー基盤はまだあまり認識されていないものの大きなマーケットだと思っているので、今後は日本のスタートアップとしていかにそこを攻略していけるか。コミュニティオのグローバルに向けた挑戦に、私たちも一緒に取り組んでいけたらと考えています。(山口さん)

TeamStickerのローンチから今年で丸5年。これからさらにCopilotに乗って進化していきたいと嶋田さんが話すように、生成AIの活用によってサンクスカードの活用のされ方や、企業内のコミュニケーションのあり方そのものも大きく変わっていく可能性がありそうです。

人間が生きている限りコミュニケーションの課題は存在しますし、改めて人の感情を変えていくことはハードルが高いことだとも感じています。でも、だからこそチャレンジしがいのある領域であり、Copilotのような技術によって今までは人がアプローチしてこなかった課題にも挑戦できると考えているんです。AIとの対話によるリスキリングも含めて、これからAIの活用がもう1段階進んでいく中で、お客様が驚くような新しい世界観を実現していきたいです。(嶋田さん)

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