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Takeshi Hirano

Takeshi Hirano

ブロガー。TechCrunch Japan、CNET JAPANなどでテクノロジー系スタートアップの取材を続け、2010年にスタートアップ・デイティング(現・BRIDGE)を共同創業し、2018年4月に株式会社PR TIMESに事業譲渡。現在はBRIDGEにて取材・執筆を続ける傍ら、編集からPRを支援するOUTLINE(株)代表取締役も務める。

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執筆記事

KDDIが企業共創・オープンイノベーション情報を発信する「MUGENLABO Magazine」創刊

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KDDIは26日、企業共創・オープンイノベーションをテーマとしたオウンドメディア「MUGENLABO Magazine」を創刊した。国内の大企業、スタートアップを中心に出資や協業の現場で起こる現場の裏側、ケーススタディなどを取材記事として伝える。コンセプトは「オープンイノベーション情報をすべての人へ。」で、主に大企業の事業企画や経営戦略の担当者、スタートアップ経営者に向けたヒントとなる情報を配信す…

MUGENLABO Magazineウェブサイト

KDDIは26日、企業共創・オープンイノベーションをテーマとしたオウンドメディア「MUGENLABO Magazine」を創刊した。国内の大企業、スタートアップを中心に出資や協業の現場で起こる現場の裏側、ケーススタディなどを取材記事として伝える。コンセプトは「オープンイノベーション情報をすべての人へ。」で、主に大企業の事業企画や経営戦略の担当者、スタートアップ経営者に向けたヒントとなる情報を配信する。

KDDIは2011年にスタートアップのインキュベーションを目的としたプログラム「KDDI ∞ Labo」を開始しており、その後、50社ほどの大企業を中心とするパートナー連合ネットワークを構築。これら企業とスタートアップの「共創」を通じて新産業創出や地域経済活性化などを模索してきた。

現在はプログラムとして、パートナー連合各社が提供するアセットでスタートアップの事業を支援する「MUGENLABO支援プログラム 2020」と、パートナー連合各社とスタートアップが特定のテーマで共同事業化を目指す事業共創プログラム「∞の翼」を開催している。

KDDI ∞ Labo パートナー連合に参加する各社

オウンドメディアを通じてこれらの活動を伝えるほか、共創に関する情報を蓄積することで、共創やオープンイノベーションを求める企業の協業活動を加速化させる狙いがある。マガジンの発行人であり、KDDI ∞ Labo長の中馬和彦氏は創刊にあたって下記のコメントを公表している。

「MUGENLABO Magazine」創刊のご挨拶

蒸気機関の登場により工業化の幕が開けた第一次産業革命。

その後の革新で発明された電気は自動化の波を作り、インターネットは情報革命を勃発させました。

これまでの産業のイノベーションを振り返ると「足し算」の歴史でした。繊維産業の後に蒸気機関や電気が出てきても、前者は後者を破壊しなかった。確かに世界の中心は、時代の流れと共に繊維産業から機械、インターネットへと変遷しましたが、インターネットが出てきても未だ繊維産業も製造業も自動車産業も健在です。

しかし次にやって来ると言われている革命は違うものになると考えています。何か全く想像していない新しいものが生まれ、世の中を変革するのではなく、今あるものが大きく、そして全てが変化する、そういう未来を想像しています。

キーはやはりインターネットです。

情報テクノロジーが一次産業や二次産業に染み出していって、それぞれの風景を変えてしまう。農業と工業が混ざる、全産業がオートメーション化される、そういう社会になると考えています。

自分は関係ない?確かにこれまでは別にECに手を出さなくとも事業は回っていたかもしれません。

しかし社会を見てみてください。人口は減少し、社会課題は増えるばかりです。この複雑な問題をどこかの誰か、スタープレーヤーが華々しく解決してくれるのでしょうか?テクノロジーへの取り組みはもうどの産業も待ったなしとなりました。そして感染症拡大はこの状況を加速させたのです。

これがデジタルトランスフォーメーションの本質です。小手先のデジタル化ではなく、産業構造自体の変化。これが全産業で一気に起こる。

私たちはこの激動の2020年代を走りきるため、MUGENLABO Magazineを創刊しました。

情報は武器になります。繋がりは力になります。「共創」というキーワードは単なるバズ・ワードではなく、地に足のついた、それでいて真にスケール感のある、次の産業を生み出すための行動理念です。

ぜひこのメディアを通じてみなさんと手を取り合い、新たな社会課題の解決を目指せればと考えております。

MUGENLABO Magazine
主筆:中馬 和彦

情報開示:PR TIMES・BRIDGE編集部ではMUGENLABO Magazine編集部と連動し、コンテンツ配信のサポートを実施しております。情報をお伝えするにあたり情報開示させていただきます

ジェネシア・ベンチャーズが80億円ファンドをクローズ、シード注力で産業のデジタル化を推進

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ニュースサマリ:独立系ベンチャーキャピタルのジェネシア・ベンチャーズは26日、 2018年12月に公表していた 2号ファンドの最終募集が完了したことを伝えている。集まった資金は総額80億円で、前回公表時から新たに参加、公表となったLP投資家は藍澤證券、オリエンタルランド・イノベーションズ、日本ユニシス(LP参加は同社が運営するCVCF2投資事業有限責任組合)、キヤノンマーケティングジャパン、グリー…

ニュースサマリ:独立系ベンチャーキャピタルのジェネシア・ベンチャーズは26日、 2018年12月に公表していた 2号ファンドの最終募集が完了したことを伝えている。集まった資金は総額80億円で、前回公表時から新たに参加、公表となったLP投資家は藍澤證券、オリエンタルランド・イノベーションズ、日本ユニシス(LP参加は同社が運営するCVCF2投資事業有限責任組合)、キヤノンマーケティングジャパン、グリー、大日本印刷、日本政策投資銀行、博報堂DYベンチャーズ(LP参加は同社が運営するHAKUHODO DY FUTURE DESIGN FUND投資事業有限責任組合)、みずほ証券プリンシパルインベストメントとなっている。

1号ファンドは2017年12月に総額40億円を集めており、リード投資家として日本・東南アジア地域(主にASEAN主要国)のシード・アーリーステージのスタートアップ47社(内、海外12社)に投資実行しており、2号ファンドはこれまでに国内29社、海外11社への投資を完了している。1号に引き続き投資ポリシーとして変わらずシード、アーリーステージのテクノロジースタートアップに対し、リード投資家として参加する。

投資領域としてはデジタル化で産業構造を変化させるデジタル・トランスフォーメーションを狙う領域や、個人のエンパワメント、OMOやC2Cなど経済のサプライチェーン構造に関わる領域、そしてメディア・エンターテインメントとなっている。

同社の説明によれば、プレシリーズAあたりまでのラウンドに参加し、1社あたり追加を含めた最大で5億円までの投資枠を設定している。また、今回、LP投資家として非公開ながら個人投資家もファンドに出資参加しており、こういった有力なエンジェル投資家との連携でシード期からのバトンタッチをスムーズにする考えだそうだ。

話題のポイント:ジェネシアが 2号ファンドの募集完了を伝えています。 2号ファンド自体は一昨年の秋に公表されているもので、予定通りの着地になったようです。ジェネシアと言えば、産業構造自体のデジタル化による変革、いわゆる「DX」を志向する起業家支援が特徴的で、建設業人材の助太刀や多くの企業で採用されている人事評価のHR Brain、小売流通のサプライチェーン改善CO-NECT、オフィスや働き方を改革するACALLなどが主な出資先としてあります。どれも業務効率改善から一歩先に進んだ各領域のビジネスモデルに関わるサービスを展開しており、今後、こういった産業領域で新たな事業を求める企業との協業や買収などの加速が期待されています。

いわゆるオープンイノベーション文脈なのですが、ここについてジェネシアではLPとなった事業会社と支援先をマッチングさせるような機会提供も定期的に実施しているというお話でした。ちなみにジェネシアの代表を務める田島聡一さんはJVCAのオープンイノベーション委員会で大企業連携の部門も担当しており、自身の運営するファンドだけでなくもう少し広い視点で、国内のオープンイノベーションを推進する役割も担っています。

ジェネシアが支援するLogislyは独特なB2B SaaSモデルを展開している/画像:同社ウェブサイト

もう一つ、領域の話で言うとASEANでのシード投資にも力を入れています。主にこの部分を担うのがもう一人のジェネラル・パートナー鈴木隆宏氏で、東南アジア・ローカルで発生しているある状況について教えてくれました。

「東南アジアだと(1)人件費が安い(2)決済の未発達などの理由からSaaSの月額サブスクリプションでのMRR/ARRのビジネスではないモデルが出てきつつあります。例えば物流の支援先Logislyの事例では、「業務効率化」支援的な側面であるトラックマネジメントシステムといった「SaaS機能」は無償で顧客へ提供し、彼らの業務フローに深く入り込んでいき、その先にある物流ニーズに合わせてトラックをマッチングするところでトランザクション手数料を取る「取引効率化」の2軸で事業を作り込んでいくスタートアップが増えてきています。また業務効率化支援的な側面を持ったSaaS機能を無償提供(もしくはかなり安価で提供)することで、顧客の面を取りやすいと言うこともあります」(鈴木氏)。

東南アジアでは国内で隆盛しているSaaSモデルだと単価が安くなりすぎてビジネスにならず、どうしてもワンショットのモデルに偏るそうです。結果、フリーミアム的なアプローチが増加しているそうです。このように、日本国内とはまた違った事情で新たなモデルが生まれるケースには興味が湧きました。

胆力を試されるシードVC

MOSH創業メンバー・画像提供:MOSH

ジェネシアのもう一つの顔、それがシードVCです。数あるファンドの中でもスタートアップのシードを担う面々はEast  VenturesやANRI、STRIVE、インキュベイトファンドなどがあり、ジェネシアもそこにラインナップされています。シード期の起業家は判断が非常に難しく、例えば海外ではこういった課題を解決するため、2010年代にはY  Combinatorのような仕組み化が進みました。いわゆる数の論理です。

一方国内では、どうしても市場の特性から起業家の数が限られる傾向にあり、結果、一人ひとりの職人的な見極めと、どこまで支援し続けるかという判断力が常に試されることになります。

個人をエンパワメントするMOSHもそういったケースの1社です。先ごろ、BASEをリードとする3億円の増資に成功しましたが、そこに至るまではジェネシアを中心に数回に渡って支援を続けたそうです。

創業者の籔和弥さんは元々Rettyに在籍していたこともあり、前職で出資者として面識もあった田島さんたちが創業を支援することになります。しかしサービスECというのは差別化が難しく、2017年7月の創業からしばらくは我慢の日々が続きます。田島さんにとって見極めのポイントは「こだわり」だったそうです。MOSHという個人が活躍する社会を支えるプラットフォームの世界観を作り込み、そこにこだわっていつかはこの価値に気がついてくれる日がやってくると信じていたそうです。

もちろん盲目的にではなく、ロジックとしても社会のデジタル化が進むこと、産業構造の変革をフォーマットとして分析してそこのシフトが発生すると予想しており、結果、機能としてMOSHは決済ができることを優先させていたことも今回の波を逃さなかった要因とお話されていました。

なかなかこの辺りの価値観を伝えるのが大変だったようですが、こういった各社で評価が分かれる点もシードVCの興味深い点です。

5G対応の「小さい」iPhoneが本当に出た(iPhone SE2より小さい)

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え?本当に?iPhone SE(2)より小さくて軽いの? 数々の予想の答え合わせが日本時間の14日午前2時から開始され、ほぼここにまとめられているような内容を綺麗なビデオ・プレゼンテーションで披露いただきました。目を引いたのはiPad Airで先に登場したA14 Bionicプロセッサでさくさくと動いている様子のリーグ・オブ・レジェンド、これ本当にスマホに必要?というプロ仕様のカメラ、そして何より…

サイズ比較・Image Credit : Apple

え?本当に?iPhone SE(2)より小さくて軽いの?

数々の予想の答え合わせが日本時間の14日午前2時から開始され、ほぼここにまとめられているような内容を綺麗なビデオ・プレゼンテーションで披露いただきました。目を引いたのはiPad Airで先に登場したA14 Bionicプロセッサでさくさくと動いている様子のリーグ・オブ・レジェンド、これ本当にスマホに必要?というプロ仕様のカメラ、そして何よりもiPhone 5時代に戻った「角張り」デザインです。

あ、あとMagSafe復活おめでとう。

私は発表に先立ってこちらの記事で小さいiPhoneが欲しいと書きましたが、なんと、本当に全ての面において小さいiPhoneが実現しておりました。ミニは言葉だけじゃなかった。

12が採用したのは5以前のデザインに近い(左)iPhone4SとiPhoneSE(第2世代)・筆者撮影

Appleのサイトで比較したのが冒頭の画像ですが、iPhone 12 miniの高さが131.5 mmに対して現在最小のiPhone SE(2)が138.4 mm、幅は64.2 mmに対して67.3 mm、厚さはiPhone SEの方が薄い7.3mm(miniは7.4mm)ものの、なんと重量はminiが133 gでSEの148 gよりも15 gも軽くなってるではありませんか。本当?これ?本当に?見間違えてるのかな。

サイズ比較・Image Credit : Apple

これでいて、iPhone 12とminiは機能に差がありません。カメラは複眼で、画面サイズは筐体フルスクリーンで5.4インチ。当初、4G対応に留まるという予想も一部でありましたが、無事5G対応。価格は日本価格で税別7万4800円から。買います。

5G対応の「小さい」iPhoneが欲しい

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ピックアップ:iPhone 12: everything we think we know about Apple’s 2020 5G iPhones, which could be announced on October 13th 追記:本当に小さいのが出ました Appleの新製品イベント「Hi, Speed」が日本時間の14日午前2時にありますが、やはり大方の注目は新型iPhoneでようやく…

iPhoneSE(第2世代)とiPhoneXS(筆者撮影)

ピックアップ:iPhone 12: everything we think we know about Apple’s 2020 5G iPhones, which could be announced on October 13th

追記:本当に小さいのが出ました

Appleの新製品イベント「Hi, Speed」が日本時間の14日午前2時にありますが、やはり大方の注目は新型iPhoneでようやくの5G対応、という点になるでしょうか。ただ、まあ「iPhon 12 vs Pixel 5特集」でVentureBeatのJeremy Horwitz記者が伝えている通り、5Gについてはキャリア側の対応が各国でバラバラ過ぎて、今のところ満足いくパフォーマンスで体験できそうなのが中国や韓国の一部にとどまりそう、という印象です。日本についても同様で、これは5G自体の特性でもあるので気長に待つしかないのかなと思ったりしています。

その上で、実は私が地味に期待してるのが筐体のサイズです。

iPhoneは初号機に搭載された3.5インチのスクリーンサイズを順調に伸ばしてiPhone XS Maxでは倍に近い6.5インチになりました。一方、筐体サイズは208gと現在、販売されているiPhone SE(2)148gに比較して明らかに重いです。私は両方の端末を持っていましたが、正直、200gを超えると普段使いとしては存在感が出てしまいます。SE(2)は軽くてよいのですが、画面が筐体に対してフルスクリーンではないのでこれまた情報量の観点から使いづらく、結果、現在はXS(177g)をそのまま使い続けるということになっていました。

今回の12が採用すると噂の5以前のデザイン(左)iPhone4SとiPhoneSE(第2世代)・筆者撮影

個人的にはSE(2)のサイズ感で画面がフルスクリーン、かつ5G対応でしばらく使える、となると即買いです。XSデビューが2018年9月ですからJeremy記者が伝えている通り、3年の買い替え周期に少し早いぐらいのタイミングですが、まあいいでしょう(それ以外にも大量に購入してるし)。

と、ここで改めてiPhone 12ファミリーの予測を見てみます。5G対応については海外予想ではあらかた全ファミリー搭載となっていますが、もしかしたらminiは外れるかもという話もあるようです。この予想はTHE VERGEに掲載されていた情報を少しサマっております。元ネタはAppleリークサイト「AppleTrack」の情報が中心です。

iPhone 12 mini:5.4インチのディスプレイで価格は699ドルから。カラバリはブラック、ホワイト、レッド、ブルー、グリーン。ストレージのオプションは64GBから256GBの範囲。広角と超広角のデュアルカメラを搭載し、11月6日か7日に予約開始、発売日は11月13日か14日。

iPhone 12は6.1インチディスプレイで799ドルから。カラバリはブラック、ホワイト、レッド、ブルー、グリーン。ストレージは64GBから256GBまでのオプションで、12 miniと同じくデュアルカメラ。10月16日か17日に予約開始、発売日は10月23日か24日になる。

iPhone 12 Proは6.1インチディスプレイで999ドル。カラバリはゴールド、シルバー、グラファイト、ブルー。ストレージは128GBから512GB、カメラは広角と超広角カメラに加え、4倍の光学ズームと拡張現実のためのLIDARセンサーがくわえられる。10月16日か17日に予約開始で、10月23日か24日に発売される。

6.7インチのiPhone 12 Pro Maxは1,099ドルからの予想。カラバリとストレージはProと同じで、望遠レンズの倍率が5倍になる。予約は11月13日か14日で、発売日は11月20日か21日の予想。

5G対応:全モデルが5G対応で米国モデルについてはミリ波対応のオプションが付くモデルもある。

少し話は逸れますが、価格は確かにPixel 5のラインナップが魅力的です。もう完全に麻痺していますが、例えばProについては大してやれることも変わっていないのにバンバン買い替えるには高すぎる買い物です。そう考えると150ドルから300ドル下げてミッドレンジを狙ってきたPixel 5はビジネスユースで結構なアドバンテージを取るんじゃないかというJeremy記者の考察は納得感があります。

さておき、今度の12ファミリーは以前の5まで採用されていたデザインに戻る、という話もあります。

miniの5.4インチという画面サイズはXS(11 Pro)の5.8よりもやや小さいので、期待値としては重さについても頑張ってもらって(11Proは XSより14g重くなった)SEにとまではいかなくとも、XSよりは軽くしていただきたいと願っております。

コロナ後、会議はどうかわる:在宅とオフィス勤務をハイブリッドにする「ホテリング」(1/2)

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(前回からのつづき)Microsoftのイベント「Ignite2020」に関連して、会議や働き方の近未来についてACALL、⻑沼⻫寿氏のショート・インタビューをお送りしている。後半では実際のケーススタディについてだ。在宅とオフィス勤務を混在させる場合、何から手をつけたらよいのだろうか。働き方とセットともなると右往左往してしまうかもしれない。(太字の質問は全て筆者、回答は長沼氏) 在宅とオフィス勤務…

在宅とオフィス混在で、会議室はどうなる(画像提供:ACALL)

(前回からのつづき)Microsoftのイベント「Ignite2020」に関連して、会議や働き方の近未来についてACALL、⻑沼⻫寿氏のショート・インタビューをお送りしている。後半では実際のケーススタディについてだ。在宅とオフィス勤務を混在させる場合、何から手をつけたらよいのだろうか。働き方とセットともなると右往左往してしまうかもしれない。(太字の質問は全て筆者、回答は長沼氏)

在宅とオフィス勤務をハイブリッドにする場合、各社どういう課題を抱えているケースが多いですか

長沼:(自分たちのケーススタディの範囲で)生産性向上の観点で在宅勤務とオフィス勤務のバランスをどう設計すればいいのか、まだ各社手探りの状況です。オフィス出社率の計画とその可視化、改善に課題を抱えています。ワーカーとワークスペースを最適に割当てるための計画と実績をうまくマネジメントする仕組みがないため、恣意的な判断になりやすいのが現状の課題かもしれません。また、在宅勤務時の社員のケアを効果的に行う方法が確立されておらず苦心するケースがあります。

Microsoftの提唱した「リモート通勤」の必要性、という調査結果は面白いものだった。人は通勤時間に今日やるべきこと、やったことの振り返りをすることでリフレッシュし、次の仕事に備えることができる、というものだ。メンタルヘルスの問題は以前から伝えられていたが、通勤時間がなくなって働きすぎになる、という課題もある。

Teamsでは働きすぎ問題が提示されていました。この件についてどのように思われますか

長沼:商談を中心にオンライン主体のスケジュールが可能になったことで、生産性は上がっているように思えます。一方で、スケジュールを詰め込みやすくなったことで、働き過ぎの問題は顕在化しています。また、リモートワーク主体の働き方は「孤独感」を誘発しやすいため、メンタル面でのケアも考えていく必要があります。

たとえば、個人単位、チーム単位であらかじめ時間割のような予定を作成共有して、合間には必ず休憩を挟むようにプログラムし、一定の「余白」を促す仕組みや、チームメンバーがオフィスに集まる予定を自動的にシステムが理解して、次の日はオフィスへの出社をレコメンドするような仕組みがあると良いかもしれません。リモートワークとはセルフマネジメントを高めていく取り組みではありますが、組織としてエンパワーメントする仕組みの構築が早期に望まれていると思います。

いずれにせよ今は各社、新たな課題と向き合う時間になっているようだ。話を物理的なオフィスに戻そう。

話を戻します。在宅とオフィスを混在させることで、話し声問題やプライバシー、機密情報の扱いなど場所に起因する課題が増えていますよね

長沼:在宅勤務の増加によって未稼働のオフィススペースを最適化する動きがあります。具体的には、社員一人一人に割当てていた固定席をなくして予約制のフリーアドレス席や個室ブースを設けるというものです。一方、フリーアドレス型のワークスタイルはオンライン会議におけるハウリングの問題やソーシャルディスタンスを考慮した場合の最適なスペース確保が難しい課題としてあります。

新しいワークスタイルを支えるうえで、個室ブースや少人数のプライベートブースをうまく組み合わせることで、フリーアドレスのデメリットを解決していく必要があります。

またリモートワークで社員一人一人のつながりが見えづらくなっている中で、物理的なオフィスに帰属意識や仲間意識といった情緒的な価値を求める動きもあります。オンライン空間だけでは困難なカルチャー、ビジョン共有といった組織内の暗黙知を内面化していく「場づくり」の取り組みは、物理的なオフィスの方が適しているため、各社のカルチャーやビジョンをオフィスレイアウトや内装などに反映するケースが増えていくのではと思います。

長沼氏はこういった場所にまつわる課題について、新たなアイデアとなるホテリングの考え方を教えてくれた。

ホテリングについてもう少し詳しくおしえてください

長沼:ワーカーに対してワークスペースを最適に割当てる仕組みのことです。飛行機や新幹線の座席予約のようにオフィスのワークスペースをモバイル等から事前予約し、チェックインして利用するというものです。このコンセプトをワークスペース内のソーシャルディスタンス、ビデオ会議時のハウリングを防ぐための座席の割り振りなどの共通ルールを反映させる方法として、執務室、会議室などのワークスペース全体に取り入れる動きが広がっています。

固定席でもフリーアドレスでもない第3のワークスペースマネジメントのあり方として注目されています。特にリモートワークの広がりによって、ワークスペースの選択肢が広がったことで、ワークスペース利用の流動的な変化をとらえることができるホテリングのコンセプトは、新しいワークスタイルによって直面する各種の課題解決に貢献すると考えられています。

ワークスペースを改善するにあたり、どういった費用を考えなければならいのでしょうか

長沼:個室ブースを導入する費用に加えて、ワークスペースとワーカーを最適に割当てるためのルールをシステム化するための費用、またオンライン会議をストレスフリーに行うためのネットワーク環境の見直しも必要となります。執務室や会議室にはオンラインワーカーとオフラインワーカーをつなぐ接点として、大型モニターやロボットアバターを活用する費用も見ておくといいかもしれません。

これらのデバイスを組み合わせることによって、オンラインとオフラインの継ぎ目をなくすワークスペース体験が得られそうです。すでに顧客の中には複数の拠点とリモートワークを組み合わせて、オフィス分散型のワークスタイルを実現されているところがありますが、オンラインとオフライン空間の接点として会議室をうまく活用しており、各拠点の状況を集約表示する大型モニターなどの設備投資にも積極的です。

Teamsの発表でもあったが大型のSurface Hub 2Sのように、デバイスとソフトウェア、そしてオフィススペース・在宅スペースというのは地続きになる必要があるのだろう。上で働く人々の変動要素が多くなる分、下を支えるインフラが一緒になって動くと混乱が激しくなる。

今回は会議というテーマでその場所となるオフィス、働き方の変化について長沼氏の話を元に辿ってみた。感染症拡大を一過性のものと考えるのは、かつてガラケー時代にスマートフォンなんてこないと決めてかかった考え方に近いかもしれない。ここでどのような想像力を働かせ、情報収集をし、具体的にアクションするかを各社求められているように思う。

はじまる「シン・副業」:副業からはじまる“独立・起業”の可能性(5/5)

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(前回からのつづき) コロナ禍以前、副(複)業の考え方といえば内職に近いものがほとんどだった。当然、企業は余計な仕事を禁止したいだろうし、実際そういうケースが多かったように思う。感染症拡大で全てが一気にがらりと変わったわけではない。元々、副業を上手に考え、採用活動のステップに活用したり、自分のキャリアの役に立てたりする人たちがじわじわ増えていったのだ。 ここまでの連載でその変化についてお伝えしてき…

タイミーは「スキマバイト」で躍進した(同社ウェブサイトより)

(前回からのつづき) コロナ禍以前、副(複)業の考え方といえば内職に近いものがほとんどだった。当然、企業は余計な仕事を禁止したいだろうし、実際そういうケースが多かったように思う。感染症拡大で全てが一気にがらりと変わったわけではない。元々、副業を上手に考え、採用活動のステップに活用したり、自分のキャリアの役に立てたりする人たちがじわじわ増えていったのだ。

ここまでの連載でその変化についてお伝えしてきた。そしてこの一連の取材の最後に「副業からの独立・起業」という可能性について触れてみたい。

ギグワークのタイミーに訪れた変化

隙間時間で即アルバイトができる「タイミー」はここ1、2年のHRテックの中でもトップクラスの注目株だ。昨年3月のサービスイン(創業自体は2017年8月)ながら、昨年10月に20億円調達、先月9月には13億円超の資金を集めている。飲食店やコンビニエンスなどで発生する人手不足を、細切れの時間活用でカバーしようというアイデアはヒットし、公表している今年6月時点での導入店舗数は1万9,000箇所で、利用者は135万人(※同社ウェブサイトより)を数えた。

訂正:タイミーの現時点での導入店舗数は2万5.000箇所、利用者数は150万人となっているそうだ。追記させていただく。

ともするとギグワーク(極めて短時間のスポット仕事)の象徴とも言えるタイミーだが、少し変わった使い方、きっかけの提供が発生しているという。それが「お試しワーク」とも言える利用方法だ。

タイミーを100回以上利用してカフェ開業にこぎつけた平林さん(写真提供:タイミー)

タイミー利用者である平林明菜さんは、前職にて飲食関連のコンサルティングを手掛けていた人物で、飲食のビジネスに関わり続ける一方、いつか自分でカフェを開業したいと考えていたそうだ。現場での経験が必要と考えた彼女はカフェで実際に働いていたそうなのだが、より幅広い経験を求めてタイミーを利用するようになった。その回数は昨年6月から100回以上というから本気度は高い。

飲食店のホールやキッチンスタッフとしてギグワークを続ける中で、ある日、ゴーストレストランの仕組みで運営している飲食店のヘルプに入ることになった。ゴーストレストランは自分では店舗を持たず、既存レストランなどの空き時間に厨房を借り、UberEatsなどのデリバリーを使って販売するモデルのことだ。

平林さんはこの仕組みが気に入り、結果、タイミーで知り合ったこの飲食店のオーナーからフランチャイズでの開業を打診されて今年、2月に自身のカフェを開業するに至ったそうだ。

副業をきっかけとした起業のあり方

この平林さんの開業ストーリーはもちろん、まだタイミーの事業全体から言えばレアケースだろう。また、平林さんも開業を目指してタイミーを利用していたので、純粋な意味での副業とは異なるかもしれない。

一方で可能性は広がる。例えば同じように小さなカフェを開業したいと思っていたとして、幅広い仕事を短時間だけ経験することは難しい。インターンのようなものかもしれないが、受け入れ側としてこうしたスポットの考え方がなければ無理だろう。

逆に言えば受け入れ側に、起業前提であったとしても本当に必要な時間だけ手伝って欲しいという合意があればそれと引き換えに人手不足の問題をクリアできる。平林さんのケースでは、結果的にフランチャイズとして事業拡大もできている。

タイミーにこういった「幅広い仕事を体験できる」ようなケースを増やしていく考え方はあるのかと尋ねたところ、このように回答してくれた。

「あります。以前は「タイミー=飲食店でのアルバイト」とのイメージが強くありましたが、現在はコロナ禍での方針転換もあり、物流や小売などの業種もかなり増えてきています。今後もより幅の広い業種の企業様にご導入いただけるように成長してまいります。

また経験者に限定した案件や有資格者向けの案件も増加させることによって、より幅の広い職種でのお仕事を提供してまいります。様々な業種・職種を気軽に体験できるプラットフォームになっていきたいと考えています」(タイミー代表取締役の小川嶺氏)。

ーーということで数回に渡って、インターネット・テクノロジーを活用した、新しい副業の形についてお伝えしてきた。働き方は多様化しなければならない時代に入っているし、固定的な概念に囚われていたのでは経営側も、また働く側も損をすることになりそうーー。そんな感想をいただいた取材活動となった。これらの特集が現在の働き方についての参考になれば幸いだ。

ラクスルはペライチをどう評価したーーノーコードとスモールビジネス、その課題(2/2)

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(前回からのつづき)サポーター制度の中心となる「ペラナビ」はユニークで、パッと見た感じだとビザスクやココナラのようなクラウドコンサルプラットフォームのような形式を取っていて、相談を受ける側は直接、相談相手に掲載されている費用を払ってレクチャーを受けることができる。 サイトのコンサルから一見すると関係なさそうなZoom講座まで様々で、基本的に彼らが対象するユーザーのお困りごとを支援している内容であれ…

ペラナビはスモールビジネスの課題を教え合う互助の仕組み

(前回からのつづき)サポーター制度の中心となる「ペラナビ」はユニークで、パッと見た感じだとビザスクやココナラのようなクラウドコンサルプラットフォームのような形式を取っていて、相談を受ける側は直接、相談相手に掲載されている費用を払ってレクチャーを受けることができる。

サイトのコンサルから一見すると関係なさそうなZoom講座まで様々で、基本的に彼らが対象するユーザーのお困りごとを支援している内容であればOKで、現時点でペライチはここで手数料などの徴収はしていない。

中小企業で360万、彼らが対象にする個人事業なども含めると桁がまた一つ上がる。こういった方々の細かい課題解決は確かにコミュニティモデルでなければ対応は難しい。

ノーコードであっても操作というよりデジタルマーケティングに対する知識や考え方、こういったサポートがなければ生きた施策にならない。この点でもうひとつ課題になるのが「予算」だろう。小さな飲食店であればこれを使うことでいくら儲かるのか、そのことを考えるはずだ。

中小企業ではマーケティングなどの知識・経験も乏しく、予算をうまく立てられないケースもあると思います。費用対効果をどう考えるか、また、用途によってバラバラの中、どのようにして価格を決めましたか

橋田:まずはウェブサイトを作るという点であれば、個人・中小の価格でも払っていただきやすいような価格感(1000〜2000円程度)と考えていました。その後、機能の増加に伴い用途がバラバラの中でも、基本的なウェブサイトを作って集客するなどのマーケティング行動は最大公約数的な共通項があるとは思っています。

これまではノーコードでウェブサイトを作れる、という価値提供が主だったと想像しています。価格の件にも関係していきますが、この先、ペライチはどのような提供価値を考え、ノーコードサービスのポジションをどこに置こうと考えていますか

橋田:ペライチでは作れるのその先へ、というビジョンを掲げておりその先、具体的にはユーザーさんに成果を出していただく部分、例えば決済や申し込み、予約といった箇所に力を入れていこうと思っています。

例えば同じくノーコードでアプリを作ることができるYappliは創業当初、価格を安く抑えて多くの企業が利用できる戦略を持っていた。しかし、実態は企業がプラットフォームを使って自由自在にアプリを作れる、とはならず、価格を大きく引き揚げてサポートを手厚くする戦略に切り替えて大躍進を果たしている。

橋田氏の話では今後、10名以内のスモールビジネス事業者という基本的なユーザー像は変えないものの、上位プランとなる価格設定や、前述の決済などのオプションで次の展開を作っていくということだった。

確かに数年前と違って競合も多い分野だが、ペライチの展開を見ていると、とにかくスモールビジネスの事業者にターゲットを絞り込んで、ユーザーサポートに正面から取り組んでいる様子がわかる。ノーコードの部分では使いやすさ等ももちろんあるが、それ以上にこれらユーザーの経営課題にどこまで寄り添えるか、そこが拡大の鍵になりそうだ。

ラクスルはペライチをどう評価したーーノーコードとスモールビジネス、その課題(1/2)

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コロナ禍によってスモールビジネス、特に飲食や観光といった分野が大きな転換点を迎えている。 日本の中小企業は 約360万社と言われるのだが、 感染症拡大の問題で大きく動いたのがデジタル化の波だ。コマースプラットフォーム「BASE」では、GMVが前年同四半期比で196%増(2020年第2四半期)と大きく跳ね上がるなど、急な売上の落ち込みをECでカバーしようとした結果は如実に数字として現れるようになった…

ペライチチームとラクスル取締役CFO、永見世央氏(上段中央)・写真提供:ペライチ

コロナ禍によってスモールビジネス、特に飲食や観光といった分野が大きな転換点を迎えている。

日本の中小企業は 約360万社と言われるのだが、 感染症拡大の問題で大きく動いたのがデジタル化の波だ。コマースプラットフォーム「BASE」では、GMVが前年同四半期比で196%増(2020年第2四半期)と大きく跳ね上がるなど、急な売上の落ち込みをECでカバーしようとした結果は如実に数字として現れるようになった。

一気に動き始めたデジタル化の波だが、10年前であればもしかしたらここまでスピーディーにコトは進まなかったかもしれない。なぜか。開発が必要だったからだ。ホームページひとつ作るにも要件を決め、受託できる開発会社に依頼し、馬鹿高い費用に怯えながら仕上がりを待つ、なんてことは日常茶飯事だった。

この状況をゆっくりと、しかし確実に変えていった概念がある。それがノーコードだ。コロナ禍における業務効率化、リモート環境へのスムーズな移行の救世主として数多くのサービスが今、注目を浴びることになった。本誌でも特集として話題をまとめている。

ペライチも国内ノーコードサービスのひとつだ。極めて小規模の事業者が開発なしに手軽にホームページを簡単に持てる体験が支持され、2015年のリリース以降、40代から50代のユーザーを中心に中小企業や個人事業主が利用しており、現時点で会員登録数は26万件となっている。そして先月10日にはラクスルとの資本業務提携を発表し、49%の株式と引き換えとする4億9,000万円の増資を公表した。ペライチによれば無事、このディールは成立したそうだ。

ラクスルはペライチをどう評価したのか。同社代表取締役の橋田一秀氏にその裏側を聞いた。(太字の質問は全て筆者、回答は橋田氏)

創業から約6年ほど、中小企業向けのウェブサービス(ノーコード系)は増えました。中でもペライチが中小企業に支持されて、またラクスルが他のサービスと違って御社を評価した点はどこにありますか

橋田:やはりページ公開までの手数が早いこととサポーター制度などで、ユーザーさんが躓くところを一緒に解消してきたからではないでしょうか?ラクスルさんの評価でいうと、具体的なユーザー像が近かったことや、ペライチに足りないマーケティングやプロダクトの両面が見えていて、そこを補完できるチーム体制のイメージがあったということだと思います。

ラクスルの永見世央氏と橋田氏は数年前に出会い、ラクスルの得意とするローカルビジネスにおける「印刷」というリアルなマーケティング手法と、ペライチが目指すウェブ・デジタルマーケティングはターゲット層が近く、ただ、山の登り方が異なるという認識を持っていたそうだ。当時から出資の話はあったものの、ラクスルは上場したばかりということもあり、企業としては出資できなかったが、変わりに永見氏が個人としてエンジェル投資することになった。これが一昨年の話だ。

具体的なシナジーに向けての取り組みについてはまだ検討中ということだったが、例えばユーザー基盤を共通させることで、双方の顧客に適切なアナログ・デジタル両面のマーケティング施策を提案することができるようになる。

可能性が広がる一方、彼らがターゲットとする小さな事業者は常にリテラシの課題を抱える。橋田氏は現状としてまだまだ問題がなくなる様子はないものの、解決方法としてコミュニティを活用する方向性を考えているという。

特に非情報系の中小企業が問題とするリテラシ問題は、この10年でスマートフォンの進化と浸透により改善されたケースをよく聞くようになりました。ペライチが提供する中小企業の現場でこの問題はどのように乗り越えようとしていますか

橋田:リテラシの問題はいつでもついて回りますが、ペライチではサポーター制度で解決しています。これはペライチに詳しい方にサポーターになって頂き、直接対面で支援する方法です。現在26万人の方々にご利用いただいていますが、これをマス層に広げようとすると、チャットやコールなどのサポートでは不足します。ひとり一人に向き合おうとすると、SEOどうしたらよいかといった一般的なものならまだしも、渋谷で10人ほどの飲食店をやっているけどどうしたらよいか、というような個別案件の相談はやはり難しいです。

(次につづく)

はじまる「シン・副業」:副業収入以上に重要なもの(4/5・後半)

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報酬よりも大事なものとは (前回からのつづき)キャリア形成における副業の役割はどう考えますか 岩崎:育成観点では、流行りの言葉で言うなら、「会社が育成してくれる」というメンバーシップ型の時代から、個人の専門性が問われるジョブ型の時代に変わる過渡期において、副業をはじめとした「仕事の実践」が成長・育成の手段になることは必然だと考えています。 今までは、研修やジョブローテーションがその役割を担っていま…

報酬よりも大事なものとは

(前回からのつづき)キャリア形成における副業の役割はどう考えますか

岩崎:育成観点では、流行りの言葉で言うなら、「会社が育成してくれる」というメンバーシップ型の時代から、個人の専門性が問われるジョブ型の時代に変わる過渡期において、副業をはじめとした「仕事の実践」が成長・育成の手段になることは必然だと考えています。

今までは、研修やジョブローテーションがその役割を担っていました。しかし、企業は即戦力を、求職者は実践経験が欲しいとなると、どうにも足りない。YOUTRUSTも、副業を探している人には、「1ランクアップの役割 or 斜めの職種/スキル」にチャレンジしてみること、企業側にもそのように少し足りない部分がありそうな人も積極的に声をかけてみるように勧めています。

実戦投入による成長というのはOJTの比ではないですからね

岩崎:ちょっと背伸びすることで、その分本気度も高まりますし、きちんと成果が出ればプロフィールに書ける実績になるし、自信にもつながる。また、企業としても自社でかけられない人材育成のコストを削減できるので、メリットは大いにあります。また新しい経験・スキルをもつ副業者がチームに加わることで、既存チーム(≒社員)への育成効果も期待できます。弊社でも新しいサービスの開発に当たって、エンジニアが新言語を学ぶ動機付けになったり、営業トレーニングの実践を行って磨き込みがなされていたりします。

すごい副業、面白い企画ですよね。これはなぜ始まったのですか?

岩崎:背景は、至ってシンプルで「より多くの人に『副業』を知ってほしい」ということがきっかけです。8月に ユーザー向けに調査 をしたところ、副業未経験者が副業をしない理由の第1位が「副業の探し方が分からない」というものでした。本業での禁止や税金面での不安を上回る結果だったので驚きました。

だったら、皆がやってみたくなる副業を募集すれば、話題性も相まってまだ副業をしたことがない人や、探し方が分からないという人にも届くのではないかという思いでこの企画を始めたんです。

また、せっかくやるのであれば募集する方にもメリットがあるように、という観点で、各企画毎に詳細をご本人とすり合わせて決めています。正社員を見据えての副業の時もあれば、今回の南場さん企画のように、本人の「今必要としていること」に合わせた副業の時もあります。ちなみに「すごい副業」の企画も、YOUTRUSTの副業社員がメインで進めています。

副業を通じて経験するとキャリアに繋がるケース:画像提供:YOUTRUST

これまで副業はどちらかというと内職的なおこづかい稼ぎのイメージが強かったですが、向こう10年でこの領域はどのようなポジション変化を起こすとお考えですか

岩崎:収入獲得以上に、自分のキャリアを形作る上で欠かせない経験になります。

10年後には、「本業/副業」という概念はなくなり、雇用ステータスに縛られないキャリア形成が進んでいくと思います。正社員も業務委託もアルバイトも契約社員も雇用ステータスは自分の好きなように選べるし、正直あまり重要なことではなくなります。緩やかにつながったコミュニティのなかで、プロジェクトベースで人が集まったり、解散したりする、そんな未来になると確信しています。

履歴書や面接を必要とする「転職活動」はなくなり、代わりに必要になるのが「信頼」と「スキル」です。信頼とスキルを積んでおかないと、噂はすぐ広まり、声がかからなくなります。

今現在でも、ベースラインが満たされている優秀な人は、副業やフリーランスで数社手伝った後、その中で1番エキサイティングな職場を次の職場に選ぶという転職活動をしている方が増えてきているのを実感します。この動きが(キャリアを考える人にとっては)当たり前になっている未来が早く来るのを、期待していますし、その波を先導するサービスでありたいです。

ありがとうございました。

ーー筆者も長らくフリーランスという働き方を続け、媒体の立ち上げをきっかけに、PR TIMESという組織と、個人を中心としたユニットの両方を行ったり来たりするようになった。ここで重要なのはやはりスキルだ。技術があるからこそ依頼があるし、プロジェクトの中にポジションを見つけることができる。

一方、組織として動く場合にはカルチャーへの参加も重要なポイントになる。

副業には必ず「本業」がある。特に企業で働く人は、その企業のルール、カルチャーに促した行動を求められるはずだ。一方、同じ「ムラの中」で過ごす時間が長くなると、どうしてもスキルの幅が広がらなくなる危険性が伴う。副業を育成のチャンスと捉えるならば、この「スキル」にフォーカスした活動を考えるのがよいと思う。岩崎氏の話を聞きながらそう改めて思った。

次回は副業をきっかけに事業を始めた人のストーリーをお届けする。(次につづく)

はじまる「シン・副業」:副業はキャリア形成に役立つのか(4/5・前半)

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(前回からのつづき) 副業に関するテクノロジーや採用ステップとしての利用シーン、大企業や行政がどのようにこの働き方に向き合っているのか、という件について綴ってきた。今回と最終回は副業という働き方を選択した人たちの話をお伝えしたい。 リファラル採用という仕組みはここ10年、ソーシャルメディアの発達と共に一般化した手法だ。友人つながりを可視化し、そこでのデータや口コミを元に採用に繋げよう、という動きだ…

(前回からのつづき) 副業に関するテクノロジーや採用ステップとしての利用シーン、大企業や行政がどのようにこの働き方に向き合っているのか、という件について綴ってきた。今回と最終回は副業という働き方を選択した人たちの話をお伝えしたい。

リファラル採用という仕組みはここ10年、ソーシャルメディアの発達と共に一般化した手法だ。友人つながりを可視化し、そこでのデータや口コミを元に採用に繋げよう、という動きだ。これを副業に取り込んだのがYOUTRUSTになる。今年1月にはW venturesやデライト・ベンチャーズ、STRIVE、TLMなどから資金調達を成功させた。社員の「友達の友達」という範囲までを対象に募集ができる仕組みで、現在、12名の社員体制中、10名全員が副業またはインターン経由での採用で、うち6名はYOUTRUST経由での採用なのだそうだ。

副業は本業と同等の時給水準に

副業に関する報酬・時間のアンケート(出典:YOUTRUST調べ)

彼らが興味深い調査結果を公表している。副業に関する報酬の調査だ。YOUTRUSTのユーザー240名ほどを対象にしたもので、8月にウェブアンケートの形式で実施された。これによると、時給換算にした際の副業報酬は2,000円から3,000円が最多で、この水準だけを見ると本業と同等もしくは高いと回答した人が半数以上になっている。

また、全体の7割が副業に1週間で10時間以内の時間を充てているという。具体的な報酬額としては1カ月10万円を超えるあたりがボリュームゾーンでこれも半数近くとなっている。

YOUTRUSTのユーザーのみ、かつスポットのお仕事と雇用の時給換算を比べているので偏りは仕方ないにしても、それでも単なる文字入力などの「副業=お小遣い稼ぎ」ではなかなか得られない時給水準と言える。このデータからも副業に対する変化が窺い知れる。

副業はキャリアにどう影響するのか

それともう一つ、YOUTRUSTが仕掛ける面白いキャンペーンが「すごい副業」だ。著名人の依頼にスポットを当てた企画で、先日、ディー・エヌ・エー代表取締役会長の南場智子氏の「ウォーキングパートナー」の募集を開始していた。自身が得意とする分野の話題を散歩の時間を使ってマンツーマンでレクチャーするという、なんとも稀有な体験だ。

そもそも副業を企業がOKとする場合、「自社の事業と完全に競合しないもの」にしているケースが多い。デザイン事務所の社員が個人でデザインの仕事を受けてしまったら、本業に悪い影響を与える可能性があるだけでなく、本人も単なるお小遣い稼ぎの延長にしかならない。でも、もし自分のノウハウをこうやって経営者にレクチャーすることで、知見を整理したり、新しい出会いに繋がることは自身のキャリア形成にも大きく寄与する。ましてや本業の方に案件がやってきたらなおよしだ。

副業が自身の成長にどのように寄与するのか。この点についてYOUTRUSTの創業者で代表取締役の岩崎由夏氏に話を聞いた。(太字の質問は全て筆者、回答は岩崎氏)

人が知り合いベースで繋がって成長する、という一見すると再現性がなさそうな採用・育成プロセスに「副業」というお試しを挟むことで「あるフォーマット」に落とし込める可能性があると感じてます

岩崎:採用観点では、すでに「副業が採用アトラクトの手段」として確立してきているのを感じます。スタートアップ界隈において、企業/求職者ともによく聞く声としては「誤った判断をしたくない」ということです。規模が小さいほど、1人の入社インパクトは大きいので、リファラルは良かったとしても、いざ自社で同じような結果になるかは実際に一緒に働いてみないと分からないですよね。働いてみることで、実務の相性のみならず、カルチャー・人間関係を体感した上でお互い判断ができるので、判断ミスは格段に減ります。また、当然ながら関わる時間や人も増えるので、必然的にアトラクトできる機会も増えます。(次につづく)