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Takeshi Hirano

Takeshi Hirano

ブロガー。TechCrunch Japan、CNET JAPANなどでテクノロジー系スタートアップの取材を続け、2010年にスタートアップ・デイティング(現・BRIDGE)を共同創業し、2018年4月に株式会社PR TIMESに事業譲渡。現在はBRIDGEにて取材・執筆を続ける傍ら、編集からPRを支援するOUTLINE(株)代表取締役も務める。

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LayerXが 「LayerX INVOICE」公開、クラウド請求書を最初のプロダクトに選んだワケ

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ニュースサマリ:経済デジタル化支援のLayerXは1月13日、経理業務を効率化する請求書AIクラウド「LayerX INVOICE」を公開した。LayerX INVOICEは請求書の受け取り後、AI-OCRによって請求書を自動でデータ化した上、仕訳データや振込データの自動作成及び会計システム連携をシームレスに実行してくれる。 開発にあたりLayerXでは月間の受領請求書枚数が1万枚を超える大手など…

LayerX社内での開発風景。彼らはオフィスに戻った(写真提供:LayerX)

ニュースサマリ:経済デジタル化支援のLayerXは1月13日、経理業務を効率化する請求書AIクラウド「LayerX INVOICE」を公開した。LayerX INVOICEは請求書の受け取り後、AI-OCRによって請求書を自動でデータ化した上、仕訳データや振込データの自動作成及び会計システム連携をシームレスに実行してくれる。

開発にあたりLayerXでは月間の受領請求書枚数が1万枚を超える大手など含む100社以上にヒアリングを実施し、課題を抽出した上で機能拡充を実施した。昨年10月からは一部の企業に対してβ版の提供を開始しており、連携する会計システムはfreee、マネーフォワードクラウド会計、弥生会計など主要なシステムが対応している。これら会計システムに連携する仕訳データを自動で作成・連携できるほか、銀行の振込データも同様に自動で作成可能となっている。

LayerX INVOICE

また、紙の請求書についても連携パートナーと協力して代理受領・データ化を請け負う。紙の請求書を代理で受け取り後、スキャンすることで紙の受領が必要なケースでもオフィスに出社せず、クラウドのみで完結できるとした。

初期費用と月額費用が必要で、請求書の対応枚数によっていくつかのプランに分かれる。詳しい価格については問い合わせが必要。同社は国内で発令されている緊急事態宣言において企業のリモートワークが推奨される状況をふまえ、今日から3カ月間の無料トライアル期間を設けている。

話題のポイント:2018年8月の創業から追いかけてるLayerXから待望のプロダクトがリリースされました。同社はこれまで自律分散技術を活用した業務プロセスのデジタル化を主力事業として活動してきていましたが、どれも大手とのコラボレーションによるものでした。LayerXのこれまでについてはこちらの記事を参照ください。

参考記事

さて、経済活動のデジタル化を掲げるLayerXはなぜ最初のプロダクトにクラウド請求書を選んだのでしょうか?実際、この手のツール類は連携するマネーフォワードやfreeeなどをはじめ、各社出揃った感がありますし、クラウドファクタリングのOLTAは完全無料のツールとして提供を開始するなど、違ったフェーズに入っているのが現状だと思います。ということでLayerXの福島良典さんに同社の現在地についてお話を伺いました(太字の質問はすべて筆者、回答は福島さん)。

LayerXではこれまで主に企業との協業スキームでデジタル化の支援を実施してきた。クラウド請求書が溢れる中、このプロダクトを最初のテーマに選んだ理由は

福島:LayerXでは三井物産様を始め、SMBC日興証券様、三井住友信託銀行様とジョイントベンチャーを作り事業運営をしています(三井物産デジタル・アセットマネジメント、以下MDM)。半年前の調達時にBRIDGEさんに寄稿させていただきましたように、この事業運営で得た知見を元に「より汎用的なソリューションとして提供していけるような体制をLayerXとしても作りたい」と考えていました。

請求書のプロセスのどこにチャンスを見出した

福島:MDMはデジタルなアセマネ会社として「今までアセット化されなかったものの証券化、今までアクセスできなかったものに対する投資の開放、裏側の業務プロセスデジタル化による金融機関の生産性向上」を目指しており、この裏側の業務プロセスのデジタル化(=コーポレートDX)では、SaaSの導入と既存SaaSでできないことを切り分け、既存SaaSの導入で効率化できる部分は導入・活用を進めてきました。

既存SaaSでカバーできていなかった領域として「請求書受領から支払いまでの効率化」ソリューションがあり、この部分を自社プロダクトとして開発し始めました。これを複数の企業にみせたところ非常に反響が良く、汎用のプロダクトとして展開することを決定した次第です。

経済活動をデジタル化する、という大きなミッションを掲げているが、企業とのアライアンスや今回のプロダクトリリースを通じて、LayerXがどのぐらいの地点に辿り着いたか認識を教えてほしい

福島:あらためて、LayerXのミッションは「すべての経済活動を、デジタル化する。」ことです。昨秋に自身で書いたこちらのnoteでも触れておりますが、当社では、デジタル化のレベルは大きく四つあると考えています。超要約して書くならば「ツール→業務→企業間・業界間・産業間」と最適化される対象が広がっていくイメージです。

DX時代の金融機関における「経営のソフトウェア化」(福島さんのnoteより)

当社が注力するブロックチェーンや秘匿化技術は「Level4のデジタル化」の根幹となる技術です。一方日本の産業界の現状はLevel1-2のDXがやっと進み始めたところです。

まだまだ国内企業のデジタル化への取り組みはこれから、という状況

福島:今まで、デジタル化が真剣に取り組む必要に迫られていなかったのは、デジタルの持つ優位性が「インターフェースをデジタルに変える」だけだったからではないでしょうか。これでは変化の幅は限られます。LayerXが(JV事業やSaaS事業において)取り組むデジタル化はLevel1-2からスタートしLevel3に移行するように解決していきます。同時に、祖業であるブロックチェーン事業については「LayerX Labs」という形を残し、5年10年単位で確実に来る大きな波を、沖にでて待ちつづけています。これらが合流する形でLevel4のデジタル化を実現していきます。

大手含めてかなりの検証を重ねた上での勝負だと思う。勝ち筋は

福島:こちらも、実はBRIDGEへの寄稿で触れていますが、インターネット×エンタープライズはチャンスが大きい産業だと思っています。なかでも請求活動は企業の最も基本的な活動の一つです。請求書業務を上述の「レベル分け」で例えてみます。Level1だと請求書の「pdf化、データ化」が実現されるイメージです。

Level2-3が今回提供するLayerX IINVOICEの範囲で、「手入力がなくなる・システム間の転記がなくなる・ミスや漏れなどを機械的にアラートする」など業務のデジタル化がされるイメージです。次に来るLevel4が「請求書の標準化・規格化によってデータのやり取りだけで完結する、デジタルマネーと請求書が結びつくことで催促や担保の概念が変わる、IoTデバイスをトリガーに役務提供や実際に物が動いたら決済される」など、業界間や産業間をまたいだ最適化になるイメージです。

このようなデジタル化が進むことで、従来の「サービスの単発売り切り型の経営」から、そのサービスを継続的に提供し、絶えず改善しながら顧客のライフタイムバリューをどう高めるかという「サービス産業的な経営(=ソフトウェア経営)」に変わっていくと考えています。

ありがとうございました。

新しい出会いの10年に向けて

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2021年がやってきました。あまりにもいろいろ起きすぎて2020年という年を振り返るのは難しいのですが、それでもやはり変化の年であったことは間違いないと思います。 思えば2010年代はリーマンショックという大きなリセッションの余韻を感じつつ、その翌年に大震災が襲いかかるという衝撃的な幕開けでした。しかし2012年の政権交代、またその翌年のオリンピック決定と、年を重ねる毎に徐々に前を向ける話題が増え…

2021年がやってきました。あまりにもいろいろ起きすぎて2020年という年を振り返るのは難しいのですが、それでもやはり変化の年であったことは間違いないと思います。

思えば2010年代はリーマンショックという大きなリセッションの余韻を感じつつ、その翌年に大震災が襲いかかるという衝撃的な幕開けでした。しかし2012年の政権交代、またその翌年のオリンピック決定と、年を重ねる毎に徐々に前を向ける話題が増えていったように記憶しています。スタートアップという視点でもIPOの件数は2010年の22件(※JVCAが公表しているレポートより)から2015年には92件にまで増加し、2018年のラクスル・メルカリ、2019年のBASE、ランサーズ、スペースマーケットといった、この10年のテック・トレンドを象徴するような銘柄が並びました。

そして2020年、その数はさらに拡大し、日本取引所グループのサイトを確認すると2020年の新規上場(予定のものも含む)は114件にジャンプアップしています。2015年の92件を最大に2018年、19年が90件と横ばいでしたので、この2020年をターゲットにしてしっかり仕上げてきたスタートアップが多かったことを思わせる数字だなと思います。

テック銘柄をざっと見返してもクラシファイドのジモティー、スポットでコンサルティングを依頼できるビザスク、デザイン開発をメジャーに引き上げたグッドパッチ、ソーシャルメディアの到来と共にグルメガイドを開始したRetty、ハンドメイドという特化型のコマースを展開したクリーマ、国内の“ノーコード”文化を牽引するヤプリ、マーケティングの世界観を大きく変えたKaizen Platformやプレイド、そして新しい世代の資産運用のアイデアを提案したウェルスナビなどが特に心に残ります。それぞれこの10年で創業し、グローバル・トレンドと言われたシェアやオンデマンド、AI、クラウドなどのテックトレンドを忠実に形にし、そして粘り強く事業化したプレーヤーたちです。

次の10年がどうなるのか、それについては昨年にこのような記事としてまとめました。10年分の予想を書いているので引き続き、その答え合わせは2030年に取っておきたいと思います。改めて今年もこのような企業、起業家たちと出会えることを楽しみにしています。

さて、少し振り返ったところで自分たちの次の1年をどう過ごすのか、BRIDGEとしてのご挨拶も書いておきます。

実は2021年はBRIDGEが運営をPR TIMESに委ねてから3年目の年となります。この2年間で編集部として、スタートアップシーンにどのような貢献ができるのか、ずっと模索を続けてきました。ナラティブなストーリーを紡いで人や企業を繋げる、という取り組みもそのひとつです。2019年に「POST」というプロジェクトで開始し、現在はいくつかの関連するプレーヤーと連携し、特集の枠組みのひとつとして起業家のナラティブな情報を継続的に出せるようになってきました。今後もニュースだけでなく、その事業や人の裏側にあるバックグラウンド・ストーリーを伝えることでスタートアップに新しい繋がりを提供できれば幸いです。

2017年に1年間だけ実施していた勉強会スタイルのミートアップ(BRIDGE X Lab.)

そして今年、2021年はまた新しいチャレンジを計画しています。思えば創業時、私たちのコア・バリューはミートアップでした。StartupDatingという小さな出会いの場所は、少ないながらも起業家と投資家の繋がりを生み出してたように思います。その後、イベント自体は大きくしたり形を変えて勉強会スタイルにするなど試行錯誤を重ねましたが、様々な判断のもと2018年を境にお休みをしていました。

それを今年、本格的に再開いたします。

コロナ禍で私たちは「実際に会う」という価値を再認識しました。同時にバーチャルに出会う可能性についても多くの気づきを得たはずです。BRIDGEが創業時から提供してきた出会いの体験がどのようにアップデートするのか、また近い時期にお知らせできればと思っています。PR TIMESからの年頭所感も合わせてご一読ください。

ということで2021年もBRIDGEをどうぞよろしくお願いいたします。

メルカリが新規事業特化の子会社立ち上げ、その名は「ソウゾウ」

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ニュースサマリ:メルカリは12月17日、新規事業を推進するための子会社「ソウゾウ」(社名は現時点で予定)を1月28日付けで設立することを公表した。(リンク先はPDF)代表には石川佑樹氏、取締役に名村卓氏(CTO)と山田進太郎氏が選任される予定。同社はメルカリにおける新たな事業の柱を集中的に検討するための子会社で、中長期の視点で新規事業の企画、開発、運営を担うための人材、環境を整備する。なお、メルカ…

2013年7月に開始した当初のメルカリ。当時はAndroidアプリのみのスタートだった

ニュースサマリ:メルカリは12月17日、新規事業を推進するための子会社「ソウゾウ」(社名は現時点で予定)を1月28日付けで設立することを公表した。(リンク先はPDF)代表には石川佑樹氏、取締役に名村卓氏(CTO)と山田進太郎氏が選任される予定。同社はメルカリにおける新たな事業の柱を集中的に検討するための子会社で、中長期の視点で新規事業の企画、開発、運営を担うための人材、環境を整備する。なお、メルカリは2019年に同じ社名で新規事業開発を担った子会社「ソウゾウ」を6月13日付で解散・清算している。(リンク先はPDF)

話題のポイント:ソウゾウが2020年の年末に復活してきました。メルカリの新規事業を担当するという名目で2015年に設立されたソウゾウは初代代表に松本龍祐氏を迎え、クラシファイドの「アッテ」書籍特化の「カウル」ブランド特化の「メゾンズ」買取アプリの「メルカリNOW」シェアサイクルの「メルチャリ」を繰り出した企業です。松本氏から代表のバトンを受け取った原田大作氏が検討した旅関連のサービスは日の目をみることはなく、2019年に解散という結果を迎えることになりました。ちなみにメルカリの創業期の社名は「コウゾウ」で、多分、メルカリの経営陣はこの社名シリーズが気に入っているのだと思います。まさかのシーズン2開始です。

新・ソウゾウの創業メンバーとなった名村氏、山田氏、石川氏

代表に就任する石川さんはメルカリNOWを立ち上げた人物で、ソウゾウからメルペイに異動し、金融新規事業のプロダクト責任者を務めている人物だそうです。現在のメルカリ経済圏は月間利用者数約1,750万人、年間流通額は6,000億円、コンビニには専用のポストまで設置される国民的サービスに成長しました。

ちなみにオープン当初のインタビューで山田さんは当時のヤフオクの月間流通総額が500億円ほどあるのでそこを目指したいとお話されてたんですが、7年で実現してました。スタートアップすごい。

ちなみにメルカリに確認しましたが、新設される予定のソウゾウでどのような事業領域を検討するかなど、詳細は未定というお話でした。FacebookやGoogleなどグローバルテック巨人たちはスタートアップを買収してエコシステムを大きくしていますが、メルカリについてはまだまだ創業・経営チームもフレッシュな顔ぶれなのでしばらくは自前路線なのかなと想像しております。

実店舗展開も開始へ、スニーカー売買「モノカブ」にGunosy Capitalら4.5億円出資

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ニュースサマリ:スニーカー・アパレルの個人間売買「モノカブ」は12月15日、Gunosy Capital、ユナイテッド、Heart Driven Fund、YJキャピタル、W venturesを引受先とする第三者割当増資の実施を公表している。調達した資金は4億5,000万円で株価や払込日程などの詳細は非公開。調達した資金でスニーカーの鑑定や配送、CSなどのオペレーションを強化するとしている。また、…

モノカブウェブサイト

ニュースサマリ:スニーカー・アパレルの個人間売買「モノカブ」は12月15日、Gunosy Capital、ユナイテッド、Heart Driven Fund、YJキャピタル、W venturesを引受先とする第三者割当増資の実施を公表している。調達した資金は4億5,000万円で株価や払込日程などの詳細は非公開。調達した資金でスニーカーの鑑定や配送、CSなどのオペレーションを強化するとしている。また、これまでスニーカー・アパレルに特化した展開だったが、今後、商材の拡大も検討するとした。

モノカブは2018年5月に開始した「日本版StockX」。スニーカーなどのハイエンドファッションに特化した個人間売買のマーケットプレースで、株式市場などで見られる「板寄せ」の手法が特徴。価格の変動を使って単なる売買だけでなく利ざやを得る楽しみ方も提供する。

話題のポイント:期待のC2Cが次のステージにコマを進めました。2019年5月にステルスから浮上してきたモノカブ(創業当時の社名はブライノ)ですが、これまで非公開だった流通総額を公開してきました。

ちょっとややこしいのがこのグラフで、同社代表取締役の濱田航平さんによれば、流通総額は現時点のものが非公開なのですが、昨年の年末あたりが5億円ぐらいに到達していたそうです。そのちょうど1年前の11月に取材した際、月次で50%成長としてましたので、グラフが正しければ現在は10億円に到達するかしないかぐらいの予想になります。

さておき、この分野は本家StockXが日本にもじわじわと進出してきたり、スニーカー特化のECということでSODAが運営するスニーカーダンクがタレントを起用したマーケティング攻勢を強めるなど、ライバルも目立ち始めてきました。かつてのフリル後のフリマアプリ乱立からのメルカリで一掃、という何かを思い出します。

ということで、濱田さんに今後の一手をお聞きしたところ、競合がやっているようなマーケティング先行というよりは地道にオペレーションを強化して磨いていくことにしばらくは注力するとのことでした。

「現状で万人が使うサービスではないと思っていてマーケティングの確立はまだ時間がかかると考えています。ただ、弊社ではマーケティングの一環として今月にリアル店舗をオープンし、より使いやすいサービスとマーケティングの両立が可能と考えています。また、それを支える組織として、オペレーションチームを大きくしています。 オペレーションに負荷がかかりすぎると品質担保できないので、今後も拡大していく予定です」。

感染症拡大もあるので、実店舗はもう少し先かなと思っていたのですが、直営店があればスニーカーの持ち込みや何かトラブルが発生した際の相談窓口としても安心感がでます。

モノカブ原宿店舗の役割

なお、アプリについてはiOS向けのみが提供されており、既にウェブよりもアプリの利用比率が高くなっているという話だった。Android版についても現在検討中ということで、この辺りのユーザー囲い込み、特に決済周りをいち早く取り込むことが今後の勝敗の行方を左右しそうです。

現実世界のアナリティクス「MODE」が600万ドル調達、グローバル・ブレインら出資

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ニュースサマリ:カリフォルニア拠点のIoTソリューションを提供するMODEは12月10日、増資の実施を公表している。増資を引き受けたのはグローバル・ブレイン、Ture Ventures、Compoundの3社。調達した資金は600万ドル(日本円で約6億円)で、株式の評価額などの詳細は非公開。調達した資金でソリューション開発を進めるほか、日本での営業展開も強化・加速させる。 MODEの創業は2014…

ニュースサマリ:カリフォルニア拠点のIoTソリューションを提供するMODEは12月10日、増資の実施を公表している。増資を引き受けたのはグローバル・ブレイン、Ture Ventures、Compoundの3社。調達した資金は600万ドル(日本円で約6億円)で、株式の評価額などの詳細は非公開。調達した資金でソリューション開発を進めるほか、日本での営業展開も強化・加速させる。

MODEの創業は2014年。企業向けのIoTプラットフォームとして業務用アプリケーション、IoT向け処理クラウド(PaaS)、センサデバイス用ゲートウェイをパッケージングして提供している。用途としてはロボットや自動運転、工場、各種センサデバイスなどのデータ収集から解析、管理を実施する。例えばメーカー等でリアルな現場の遠隔操作やデータ収集・解析が必要なサービスを立ち上げたい場合、MODEのパッケージを使うと事業化がスムーズに実施できる。パナソニックの関連企業などが実際に導入しており、商業施設などでの顧客データ収集や解析といったサービス基盤として活用している。

話題のポイント:MODEを知る上でのキーワードは「現実世界のアナリティクス」と「リカーリングモデル」の二つです。それぞれ解説していきます。

彼らが提供するのはIoTビジネスにおける管理基盤です。例えばお掃除ロボットを開発している企業があったとします。商業施設向けの大型モデルで、勝手に廊下を掃除してくれるので単純に人件費が節約できます。この場合、よくあるのはメーカーとして売り切りして定期的なメンテナンス費用を貰うモデルになります。ただこれだけでは「サービス」とは言い難い状態です。

そこでIoT機器に出番が回ってきます。センサーを搭載したお掃除ロボットはフロアの状況を確認して破損箇所を調べたり、時間帯における商業施設の人の混み具合を搭載したカメラで計測したりすることが可能です。メーカーとしてはお掃除ロボットを「掃除機」ではなく「サービス」として販売することができるようになるのです。しかしこういった事業モデルを構築するには、そもそものデータを収集する方法、解析する方法、そしてそれら全体をコントロールするためのコンパネが必要になります。そこでこれらをまとめてパッケージングしたのがMODEだった、というわけです。

ロボット向けパッケージ
  • 管理コンパネ:各事業者が利用する管理コンパネ。テンプレートでカスタマイズが可能
  • IoT向けPaaS:データ処理クラウド
  • センサデバイス向けゲートウェイ:IoT機器からのデータをクラウドに格納するためのゲートウェイ

特にセンサデバイス向けのゲートウェイについては数多くのデバイスに対応するため、独自のプラグインを用意しており、新しいデバイスに対応する場合も1、2週間ほどで開発ができるようになっているそうです。ちなみにパッケージとしてはセンサー向けのSENSOR CLOUD、モビリティ向けのMOBILITY CLOUD、生産現場向けのFACTORY CLOUDに加え、ロボット向けのROBOT CLOUDが提供されています。

さて、前述した2つのキーワードに戻ります。まずアナリティクス。

彼らのパッケージを活用してサービスを考える際、最も利用価値が高いのが現実世界を解析する、という考え方です。導入事例として挙げられているパナソニック関連の「ENY Feedback」では、商業施設でのリクエストや満足度を簡単なUIで拾えるようにするソリューションなのですが、当然ながら重要なのは現場で得られた顧客フィードバックの解析とその結果の利活用になります。メールマーケティングのようなデジタル・CRMと異なり、現実世界で得られたローデータを確実に収集し、解析・分析し、クライアントが活用できる情報として加工する必要があるわけです。

こういった現実世界におけるPDCAは、従来の方法だとデータ収集量に難があったり、開発コストとサービス事業モデルのバランスが悪いといった課題がありました。そこでMODEは基幹部分をある程度パッケージにすることでその世界観をぐっと現実に引き寄せたのです。ポイントが管理コンパネで、言わばGoogleアナリティクスのレポート画面のようなものです。MODE代表取締役の上田学さんにお話伺いましたが、スクラッチで開発するよりもある程度の定型パターンで開発工数を下げられるような仕組みになっているというお話でした。

そして現実世界のPDCAが可能になれば、当然ながらリカーリングモデルの構築が現実的になってきます。ハード売り切りとメンテナンス程度だった事業モデルは、月額課金とLTVで計測できるものに進化し、追加のサービスによってアップセルやLTVの改善といった施策も戦略的に考えることができるようになるのです。

MODE創業者の上田さんは前職でTwitterの本社でグロースハック・チームに在籍していた経験があります(その前はGoogle米国本社で日本のマップ開発に携わった方です)。データからプロダクトを改良し、継続したユーザーからまたフィードバックデータを回収してそれを改善に繋げる。この思想をそのまま現実世界に持ち込めば、もっと世界が良くなるとMODEをスタートアップしたとお話されていました。

モノからコト売りという事業転換が叫ばれて久しいですが、持続可能な社会を考える上で、MODEのような存在はより必要とされる時代がそこまできてるのではないでしょうか。

ヤマトHDが中国配送ロボ「YOURS Technologies」に出資ーーラストワンマイルの課題解決へ

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ニュースサマリ:ヤマトホールディングスは中国で自動配送ロボットの開発・事業展開を進めるYours Technologies(以下、Yours)への出資を公表している。出資額や条件等の詳細は非公開。出資は今年3月にグローバル・ブレインと共同で設立したファンド「KURONEKO Innovation Fund」の初号案件となる。今後、両社は技術交流などを通じて国内での自動配送ロボットの活用に向けた検討…

ニュースサマリ:ヤマトホールディングスは中国で自動配送ロボットの開発・事業展開を進めるYours Technologies(以下、Yours)への出資を公表している。出資額や条件等の詳細は非公開。出資は今年3月にグローバル・ブレインと共同で設立したファンド「KURONEKO Innovation Fund」の初号案件となる。今後、両社は技術交流などを通じて国内での自動配送ロボットの活用に向けた検討も開始する。

Yoursは2018年創業のスタートアップで中国北京を拠点に、食品などのデリバリーができる小型の自動走行ロボットを開発している。北京にある50箇所以上のショッピングモールや歩行者天国などの場所で自動配送の契約を結んでおり、実際に食品などのデリバリーを実施している。

話題のポイント:今年3月に公表されたヤマトHDの新ファンドの初号案件です。グローバル・ブレイン側でこのファンドを担当するチームに聞いたのですが、配送ロボット以外にもかなりの数で投資検討が進んでいるそうで、具体的な技術やサービス範囲の明言はありませんでしたが「幅は広い」というお話でした。

たまたま初号案件が配送ロボットというわかりやすい物流テクノロジーでしたが、別にこっち方面をものすごく攻める、というわけではなさそうです。さておき、配送ロボット(ドローン)はここ数年目まぐるしい進化を遂げています。AmazonのScoutやStarshipTechnologies、国内はZMPや楽天が中国EC大手の京東集団と共同でテスト運用を開始するなどの動きがあります。

今回の出資にあたってファンドのチームは全世界のドローン案件を見てまわったそうです。その中でこのYoursが採用された理由は圧倒的なコスト優位というお話でした。当然ながらヤマトHDではこれら自動配送に関する調査や研究は進めており、一番の問題点はどうやってコストを下げるかという点にあったそうです。

ショッピングセンターで配送するYoursの自動配送車(Image Credit : Yours

一般的に自動運転走行にはLiDAR(ライダー)センサーが使われることが多いです。レーザー光を使って対象物までの距離を計測するセンサー技術なのですが、とにかく価格が高い。数万円から数百万円のものまであるそうなので、当然ですが、自動運転させるにはコストもそうですし盗難などの危険性も伴うわけです。

そこでYoursはこのLiDARを取っ払って一般的なカメラを使うことでコストを劇的に下げることに成功しました。具体的な価格比較は難しいですが桁がひとつ落ちるレベルだそうで、その一方、Yoursはこういった高価なハードウェアの代わりにソフトウェアを活用しているんですね。特に彼らのコンピュータービジョンのアルゴリズムが優れていて、こういったハードウェア構成でも高精細の地図を作成することが可能というお話でした。

用途としては広範囲のエリアというよりは、彼らが導入を済ませているショッピングモールや一定範囲のエリアでのフードデリバリや物流で、今後、こういった実際のサービス展開を続けながら、MaaSのようなプラットフォームビジネスへの拡大も可能性としてはありそうでした。

Appleが突然のAirPods Max発表、オーバーイヤー型でお値段もMaxな61,800円

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ニュースサマリ:Appleは12月9日、オーバーイヤー型のヘッドホン「AirPods Max」を公表した。AirPods Proに搭載されているアダプティブイコライゼーションやアクティブノイズキャンセリング、空間オーディオといった音響体験はそのままに、オーバーイヤー型のカップにはコントロール用のDigital Crownとノイズコントロールボタンが新たに加わった。 Digital Crownでは音…

AirPods Max/Image Credit Apple

ニュースサマリ:Appleは12月9日、オーバーイヤー型のヘッドホン「AirPods Max」を公表した。AirPods Proに搭載されているアダプティブイコライゼーションやアクティブノイズキャンセリング、空間オーディオといった音響体験はそのままに、オーバーイヤー型のカップにはコントロール用のDigital Crownとノイズコントロールボタンが新たに加わった。

Digital Crownでは音量調節や音楽の再生と一時停止、曲のスキップ、電話への応答・終了、Siriの起動が操作できるほか、ノイズコントロールボタンでアクティブノイズキャンセリングと外部音取り込みモードを切り替えることができる。また、バッテリーについてはアクティブノイズキャンセリングと空間オーディオを有効にした状態で、連続20時間の連続利用が可能。

カラーバリエーションはスペースグレイ、シルバー、スカイブルー、グリーン、ピンクの5色で今日から予約受付を開始し、販売開始は12月15日から。価格は税別で61,800円となっている。

新たに搭載されたDigital Crownとノイズコントロールボタン

話題のポイント:秋の発表会を終えたAppleが遅れての「One More Thing」を出してきました。Appleのヘッドホン環境といえば、AirPodsシリーズとBeatsブランドがあるのですが、オーバーイヤー型のものは「Beats Studio3 Wireless」以降リリースされていませんでした。Beats Studio3は旧型のW1チップが搭載されており、ノイズキャンセリングはできるものの、AirPods Proで感動的だった外部音取り込みができません。

Beats Solo ProはAirPods Proと同様のH1チップ搭載でノイキャンと外部音取り込みができるもののオンイヤー型で、長時間付けていると独特の締め付け感があります。ということで「長時間付けてても痛くないオーバーイヤー型で、かつ、AirPods Proと同等の音響体験が欲しい」という方には朗報になるわけです。

そう、価格以外は。6万超えってなんやねん。

筆者はリリースされてからずっとAirPods Proを使い続けており、おそらくこのコロナ禍に入ってからさらにその利用時間は増え続けていたと思います。イベントや外出時での騒がしい場所でのお仕事、オンラインになったことで視聴が増えた動画関連、そして毎日のようにあるZoom取材やミーティング。全てAirPods Proの出番です。

特に外部音取り込みは感動レベルで、ノイキャンしてZoomミーティングなどをしていると気が付かないうちに声がデカくなって周囲に迷惑をかけることがあるのですが、外部音が入るとうまくコントロールできたりするので本当に忘れたら取りに戻るレベルのガジェットになってます。

AirPods Maxに付属するSmart Case。超低電力状態に入る

だからこその問題がバッテリーなんですね。数件のZoomミーティングなどが続くともう持たない。ワイヤレスなので途中で充電することもできませんから、大切な会議の途中とかでアラート音が聞こえたりすると変な汗が出てくるわけです。

AirPods Proのバッテリーは公式には1回の充電で最大4.5時間の再生時間となっていますが、Maxではこれが20時間に跳ね上がっております。まあ、体感でもう少し短い感じはあるにしても、Maxであれば日常利用でほぼ心配ないレベルになるでしょう。ちなみに付属しているSmart caseはAir Podsシリーズのような充電の機能はなさそうで、単にしまうと省電力になる仕組みのようです(多分)。

Beats Studio3が34,800円で、AirPods Proが27,800円(共に税別)なので、4〜5万円のレンジだったらもうボタンを押してこの記事を書いていたと思うのですが、さすがAppleです。更なるお布施を要求してきました。AirPods Proを2個買ってさらにまだ足りない6万円超えは予想外でした。

このAppleが出してきた踏み絵を踏むのかまたぐのか、数日考えてみたいと思います。

過去最大の成長を遂げる人事評価クラウドHR Brain、13億円調達してタレントマネジメント分野へ拡大

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ニュースサマリ:人事評価クラウド「HRBrain」は12月4日、Eight Roads Ventures Japanをリードに、第一生命保険、SMBCベンチャーキャピタル、AGキャピタル、SCSKを引受先とする第三者割当増資の実施を公表している。増資に加えて3億円の融資枠を合わせ、調達した資金は最大13億円。前回ラウンドではスパークス・グループが運営する「未来創生2号ファンド」 を引受先とする第三…

HR Brain代表取締役の堀浩輝氏

ニュースサマリ:人事評価クラウド「HRBrain」は12月4日、Eight Roads Ventures Japanをリードに、第一生命保険、SMBCベンチャーキャピタル、AGキャピタル、SCSKを引受先とする第三者割当増資の実施を公表している。増資に加えて3億円の融資枠を合わせ、調達した資金は最大13億円。前回ラウンドではスパークス・グループが運営する「未来創生2号ファンド」 を引受先とする第三者割当増資の実施をしており、累計調達額は22億円となった。

調達した資金は主に体制強化に投じられ、現在80名ほどの体制を早期に120名ほどにまで引き上げる予定。HR Brainは従業員の目標設定から評価までの一連のプロセスをクラウド型で提供するSaaSモデル。2017年1月にサービスインしてから約1,000社が利用している。主なターゲットは100人から300人規模の企業で、昨今のデジタル化や感染症拡大のリモートワークへの移行に伴い、企業の導入が加速している。また、8,000名規模のヤフーが導入するなど、大型のエンタープライズでの一括導入も彼らの成長を後押ししている。

また、蓄積した各社の人材データを活用し、チーム生産性の最大化や人材配置の最適化といったタレントマネジメントの領域についても機能を拡張させている。ビジネスモデルは月額課金で、一定規模の人数のレンジに合わせて段階的な料金が設定される。

話題のポイント:HR Brainさんが大型調達です。同社代表取締役の堀浩輝さんにお話伺ってきましたが、各社のリモートワーク移行がHR Brainの利用加速をかなり後押ししているようです。4月から8月にかけてリード獲得自体は伸び続け、各社の予算決裁関連が通常に戻り始めた9月頃から一気に注文が入って成長率は過去最大になったそうです。

他の業務と異なり、人事評価はあらゆる企業が必要とするものなので、特にリモートワーク環境下ともなると、これまで対面でできていた意思疎通が難しくなりますから、自然と評価の方法もデジタル化しなければなりません。HR Brainはその一丁目一番地にブランドを構えることができたので、自然とこの状況が追い風になった、というわけです。

大切になるのはCSなどのフォローアップです。人事評価は各社ごとに異なるプロセスがありますので、チューニングが必要になります。この辺りは強く認識しているそうで、今回の調達における組織強化もこの辺りが注力領域になってきそうです。

もう一点、人事評価で堅調な伸びを示している以上、次の成長を考え始める時期にきているのが同社です。特にヤフー等の大型導入では、単なる人事評価だけでなく、そこから得られるデータを活用したタレントマネジメント、人材の可視化などの役割を求められるようになります。こういったニーズをオプションとして提供し、アップセルを狙うというのが基本的な考え方のようです。全く違うラインのプロダクトを立ち上げるというよりはHR Brainらしい着実な戦略とも言えます。

「例えば従業員のデータベースとしても使えますか?とか人材の分析や組織の分析、見える化ができるかなどのリクエストをもらうようになりました。特に大型の案件ではこういった要素が必要条件になることが多かったんです。そこで今年の春先から開発を進めていて、人材データベースや組織については機能を拡充しています。今後はピープルアナリティクス領域にサービスを拡大していく予定です」(堀氏)。

ところでこの時期のスタートアップの共通の悩みと言えば組織です。現在80名ほどの体制になるHR Brainですが、前述の通り規模を100名から120名体制に拡大させる予定です。一方、採用レイヤーについては今後、エンタープライズの導入を可能にするトップレイヤーのエグゼクティブクラスを誘う必要があります。堀さんにこの時期の採用条件はどのような考え方か聞いてみたところ、「ロマンとソロバンのバランス」として、前職レベルの報酬に加えてSO(ストックオプション)を提案しているそうです。

10年前ならいざ知らず、今の時期のスタートアップにSOを積むから分かってくれ、では確かに話は通りません。逆に言えば、現在成長株となっている(特に堅調な成長を期待されるSaaS系)スタートアップについては、人材の獲得競争はさらに激しさを増しそうです。

プロセスエコノミーと小さな経済の時代

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先日、アルというソーシャル漫画サービスをやっているけんすうこと古川健介さんから突然メッセージがやってきて「00:00 Studio(ふぉーぜろすたじお)というサービス始めたよ!マニアックでリリース前なんだけどクリエイターめちゃ増えてる!」というお便りをいただいたんですね。 00:00 Studioはクリエイター(漫画とかイラストの作家さんたち)が作業中を淡々とライブ配信するもので、彼が言う通り、す…

画像クレジット:「プロセス・エコノミー」が来そうな予感です」より

先日、アルというソーシャル漫画サービスをやっているけんすうこと古川健介さんから突然メッセージがやってきて00:00 Studio(ふぉーぜろすたじお)というサービス始めたよ!マニアックでリリース前なんだけどクリエイターめちゃ増えてる!」というお便りをいただいたんですね。

00:00 Studioはクリエイター(漫画とかイラストの作家さんたち)が作業中を淡々とライブ配信するもので、彼が言う通り、すごくマニアックです。ちょっと覗いてみたのですが、よくあるYouTubeのかっちょいいイラストの早回し制作動画とかと違い、本当に単なる制作風景です。目の前でnoteを書いている(というか、単にテキストが打ち込まれている)様子を見るというのはなんというか悪いことをしているような感覚にも近く、ライブ配信やコンテンツを視聴するとはなんぞやということを考えてしまいました。

リアリティショーや日常のライブ配信、雑談でもなく、覗き見です。

00:00 Studio:応援コメントはニックネーム入れたら送ることができます

ということでサービスはさておき、彼がこのサービスと一緒にシェアしてくれた「プロセスエコノミー」という考え方に興味あったので共有したいと思います。

プロセスエコノミーとはその通り、何かの過程自体もビジネスにする考え方です。対局にあるのがアウトプットエコノミーで、できた商品やサービスを購入するのに対して、できている過程に課金したり、そこに共感してコミュニティに参加するといった具合です。実際、けんすうたちが運営しているアルでは「アル開発室」というコミュニティをやっていて、アルを開発する上でのプロセスを公開しながら、課金で毎月200万円ほどの収入を得ているそうです。

さて、プロセスを最終のプロダクトに反映させる事例として、私が好きなストーリーがAllbirdsのケーススタディです。同社は温室効果ガスゼロを目指して製品づくりを進めていて、サイトのメインコンセプトとして強く打ち出しています。同時にAllbirdsについてはAmazonコピー問題という別の事件がありました。

当然ですがAmazonの商品にこのような製品の物語はなく単なるコピーです。もちろん消費者がどちらを選ぶかはその方々の状況次第なのですが、ここで重要な視点に「共感できるかどうか」というものがあるんですね。けんすうが言うところのプロセスエコノミーにも通じる大切なキーワードで、製品やサービスに差がどんどんなくなる時代、人々がなぜそれを手にするか。そこには絶対的な「スキ!」という感情がなければならない、共感できるものと一緒にいたいというのはごく自然な考え方ではないでしょうか。

けんすうの言う「プロセスまで含めてサービスや製品を好きになりたい」という考え方に同意するのはそういう理由からです。

パッションエコノミーと共感

Allbirdsでは全面的に環境にやさしい製品作りを押し出して消費者に共感を与える

もうひとつ、プロセスエコノミーに興味を持った理由として、とあるトレンドがあります。それがパッションエコノミーです。

ギグワークなどの「消費される」個人の生き方と異なり、個人のスキルや情熱(パッション)を別の価値に変えようという動きで、日本でもクラウドワークス・ランサーズなどのクラウドソーシング関連、BASEやMOSHといったコマースプラットフォーム、ココナラやビザスクと言ったスキルシェア、YOUTRUSTやOffersのような副業プラットフォームなどなど、様々な形で個人をエンパワメントするサービスが拡大しています。

今、日本ではようやくというか、終身雇用だったり新卒一括採用などの昭和的動きが商習慣的にも終わりを迎えつつあり、例えば先日公表された電通の個人事業主制度などは大きな話題になりました。仕事を人生の全てではなく、一部として考えれば色々な選択肢を渡り歩くのは当然で、その中に一時期は個人や小さなチームで生きてみたい、というものが出てきても不思議ではありません。

ただ、この生き方、まだまだ環境が揃っているとは言い難い部分があるんですね。特に「どうやって自分たちを知ってもらうか」というのが難しい。企業は何か製品やサービスを出す際「プレスリリース」という手法を使ったり、広告を打ったりして認知を取るわけですが、当然この方法は資本力勝負な面があります。

では資本力にどうやって小さなチームが立ち向かうか。それが先程例に挙げたAllbirdsのような「共感」を生み出す力と方法なのです。

特にプロセスは継続的に情報を出すことができます。自分がどうやって製品を作っているのか、なぜこれが必要なのか、そういったストーリーを組み込みながら、小さく情報を出していくと、自然とその考え方に同調してくれる人々が集まってくれます。課金してくれるかどうかは設計次第ですが、それでもそういう人の輪が広がっていくと、自然と小さな活動が徐々に力を持っていくのです。ちなみにBRIDGEも小さいイベントを通じてスタートアップコミュニティで共感を重ねた結果、今の状況があります。

ソーシャルメディアの発達も後押ししてくれていて、Twitterやブログサービスなどで自分の考え方を表現しやすい時代になりました。そこに共感できるストーリーがあれば、大量の広告よりも効果的に人を巻き込むことができます。

個人や小さな経済活動が広がる時代というのは向こう数年でもっと広がると思います。今回のパンデミックを機にリモートワークが進み、遠方に引っ越した人たちの話題もよく耳にするようになりました。特殊な資金調達をしてIPOを目指すスタートアップのような方法は極めてリスキーですが、自分のスキルや経験を活かした生き方というのはライフイベントに合わせて選択できてしかるべきなのです。

パッションエコノミーという時代にいかに共感を生み出すことができるかが、今後の経済活動を占う鍵になるのではないでしょうか。

iPad ProでMac OS「Big Sur」を使ってみた

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先月お披露目となったM1 Mac、話題になってますね。個人的にはM1チップを体験したいと思いつつ、Big Surの方で試したいことがあったのでそちらをやってみました。 タッチパネルでの擬似体験です。 参考記事 macOS「Big Sur」公開:iOSとの融合進む(1/2) Sillicon Mac:石橋を叩いて渡るApple、初の「M1」チップ搭載Macを振り返る(1/4) 特集:新型MacとBi…

通知センターはiOSとほぼ同じインターフェース、体験になりました

先月お披露目となったM1 Mac、話題になってますね。個人的にはM1チップを体験したいと思いつつ、Big Surの方で試したいことがあったのでそちらをやってみました。

タッチパネルでの擬似体験です。

参考記事

本誌の翻訳パートナーメディア、VentureBeatの辛口コラムニストでガチのApple信者、Jeremy Horwitz記者がレポートしている記事にもありましたが、今回のBig SurではiOSとの融合がかなり進んでいます。例えばメニューバーのコントロールパネルのデザインがiOS側に寄せられていたり、M1チップでは実際にiOSアプリの一部を動かすこともできるので、いよいよMac OSとiOSの差が縮まってきている印象です。

で、Jeremy記者が記事中で残念としているものに「タッチパネル」がありました。そう、今回の新たなMacファミリーには強力なM1チップが載ったものの、筐体はほぼ同じ(一部ポートが減って同時接続するディスプレイの数が減った分マイナス)で終わったのですね。まあ、現時点でM1チップへのネイティブ対応がまだまだの状況で、いきなりハードにまで手を入れるというのは今の時代のAppleはやらないかなと。逆に言えばスティーブ・ジョブズ時代だったらかなり斜め上のハードが登場していたかもしれません(苦笑。

さておき、Big SurがiOSに近くなったのであれば、間違いなくタッチ操作は必要になってきます。

実はiPadでMac OSを簡単に動かす方法があります。そう、Sidecar機能です。正しくはワイヤレス(BluetoothとWifiがONになってる必要あり)経由でMacの表示をiPad側に転送しているだけなので、ここで動いているわけではないのですが遅延もほぼなく、実際にMacbookを扱っているような感覚で操作できます。実際、私は執筆時のメインマシンとしても使っていたりするので間違いはないです(ただし、同じローカルネットワーク内にいる必要があります。それと全てのタッチ操作ができるわけではありません)。

iPad上で直接画像を指で拡大したりスクロールするのは便利

新たにデザインが変更となった通知センターやポップアップは、確かに指で触りたくなるアイコンになっているので、大きさの問題はあるものの、無意識に指が動きそうになります。そして現時点で便利なのが拡大縮小、二本指でのスクロールですね。プレビューアプリなどで指のピンチが使えるのですが、画像処理する時に直感的で現時点NOW、便利に使ってます。スクロールも指でやれるので左手でスクロール、右手でマウス操作、という両刀使いができます。

インターフェース的にはまだMac OSのデザインがちょっとiOSに近いた感じだけなので、マウスは必須ですしキーボードも普通に使いますが、それでも境目がなくなっていくことでMac側で使えるアプリが一気に拡大するなど、期待できる点は多いです。

あともうひとつ。バッテリーと通信ですね。

実は筆者は以前、Macbook Airを使っていました。グラフィックがかなり弱く、例えばAdobe製品や映像・音声関連を動かすと非力感は否めず、また、何よりもバッテリーが全然持たなかったです。ウェブブラウザとエディタアプリを使う程度で2時間持つかどうか。Work From Homeが始まったこともあって、持ち運びの機会が減った今年最初に据え置き(場合によって持ち運んでもOK)のMac miniにしました。

今回新たに登場したM1 Macbook Air/Proは多くのYouTuberたちがレビューしている通り、バッテリーの持ちがすこぶるよくなったようです。友人も使っているので聞いてみたところ、体感的にはiPadと同じような減り方になったとウキウキ声だったのを記憶しています。

iPad Pro(12インチ)経由でBig Surを使ってみた(筆者撮影)

iPadはバッテリーの持ちはもちろん、同時にLTE通信が可能です。そう、ずっと夢にまでみたSIM内臓Macbookの擬似体験です。Sidecarでは同じローカル環境にいないと本体のMac miniと接続できないので、外出する際はリモートデスクトップ(筆者はSplashtopというアプリを使ってます)なのですが、擬似的とは言え、やはりすぐに繋がる環境を一度手に入れるとテザリングする気が失せてしまいます。Macbookは現在の筐体だとタッチ操作やモバイル通信を前提にしていないので、もしかしたら今回試したiPadによる擬似Mac環境の方が現実に近いかもしれません。

それ以外に今回導入が期待されていたファンクションとしてFace IDもありました。ラップトップやデスクトップは室内での利用が多いので、マスク問題も解決されますし、何より便利です。今もまだ、パスワードでキーを叩く必要があるのは主にMac環境ですから、数年内にこちらに移行していただきたいところです。

補足:Sidecarでマウスを使う場合、iPad側にBluetooth接続したものは使えません。ややこしいですが本体のMacに繋がってるマウスを操作する必要があります。個人的にもハマったので補足までに。