バクラクは生成AIでどう変わる?ーー1万社利用のLayerX、新「AI-UX」戦略を発表

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LayerX代表取締役の福島良典氏

企業活動のデジタル化を推進するLayerXは2月20日、都内で説明会を開催し、新たなプロダクト戦略を公表した。同社の主力製品である「バクラク」シリーズは請求書処理や経費精算、法人カードなど、企業の費用・支出管理に関するサービスを複数展開するクラウドサービス群。契約社数は1月時点で1万社を超えた。昨年11月時点での取材時に同社代表取締役の福島良典氏が説明した状況では7,000社なので、約2カ月で3,000社が積み上がった形だ。

売上については非公開ながら「T2D3(ARR1億円を超えた後の売上3倍成長を2年継続の上、倍成長を3年継続させるスタートアップ成長モデル)」を超える勢いを維持しているという。今回の説明会では昨年8月に公開した「バクラク請求書発行」に続く製品展開として、新たに独自の生成AIを組み込んだ取り組みが公表された。

生成AIでバクラクはどう変わる

今回お披露目されたのは「バクラクAIワークフロー」。開発中の製品で、まだバクラクにおけるプロジェクトのひとつという話だったが、生成AIを組み込むことで得られる新たな体験がデモで示された。

これまでも同社にはAI-OCRを活用した「バクラクワークフロー」が存在していた。例えば経費精算ではアップロードした領収書に記載されている金額や社名などは読み取ることができた。しかし、経費精算には同じ飲食費でも社内なのか社外なのかで処理が異なるなど、各社独自に基づくルールがあるのが特徴だ。これをこれを独自に組み込んだLLM(大規模言語モデル)によって改良したものが「バクラクAIワークフロー(仮称)」になる。

開発中のデモ。紫色の項目は従来のAI-OCRでは手入力だったが、生成AI搭載になるとこれらの項目を推測して入力できるようになっていた。

実際のデモをみると、従来のAI-OCRでは手動入力となっていた項目が生成AIによって自動的に記載された状態となり、そこから経費精算などの処理を開始することができる。気になる入力の精度だが、開発中のプロダクトを説明した飯沼広基氏によれば、生成AI独特の癖である「幻覚(ハルシネーション:偽りの情報を回答する現象)」を回避するため、実際のプロダクトリリース時には「サジェストして入力補完するような形になるのでは」という話だ。

なお、経費精算ひとつとっても企業ごとに処理のルールは異なる。こうした社内独自情報については、やはりLLMに学ばせる必要があり、まだ何も決まっていない状態と前置きしつつ、カスタマイズの必要を伝えていたので、利用する段階では一定の導入ステップが必要になるはずだ。

生成AI時代のソフトウェア「AI-UX」とは

バクラク事業でプロダクト企画部の部長を務める飯沼広基氏

今回の説明会で福島氏が伝えた、今後のプロダクト戦略で重要なテーマのひとつ、それが「AI-UX」だ。

「いままでのソフトウェアに加えてAIという知識のレイヤー、自動化を前提としたものにソフトウェアを作り替えていく。AI-UX(AIを前提とした利用体験)の重要なポイントは「業務自体をなくす」こと。労働人口が減る中、AIの活用でこの国の重要なテーマになる。つまり、AI-UXが大事な概念になる。LayerXとしてここリソースを投下していく」(福島氏)。

もちろんこの考え方は今日、突然でてきたものではない。福島氏はそもそも大学時代に機械学習の研究を通じて最初のプロダクトとなるGunosyを共同開発した。その後も様々なテクノロジーやビジネスを通じて「AI」を事業に反映させてきた経緯がある。

そして昨年に巻き起こった生成AIブームだ。ChatGPTの登場でこの生成AIが労働環境を変えることはもう不可避であり、LayerXでもAI・LLM事業部を昨年に設立している。大手や金融機関から引き合いもあり、開設からわずか3カ月で20ものプロジェクトが進行しているという。なお、今日の発表会で示されたバクラクのAI組み込みデモとは別に、春頃の新サービス発表も控えているという話だ。

では「AI-UX」でどのように仕事が変わるのだろうか。前出の飯沼氏はAlgomaticのDory氏が提唱したモデルを参照して説明した。まず、生成AIが業務に役立つ領域として「Automation(自動化)、Agent(代行)、Advice(助言)、Augment(強化)」がある。例えばソースコード開発に対してGitHub Copilotはユーザー主体で書いたコードをAIがサポートしてれることで爆発的な人気となった。これはAugmentの領域だ。

この中でLayerXがまず、注力しようとしているのがAutomation(自動化)とAdvice(助言)になる。例えば稟議を自動化したり、前述のように経理業務の負担をさらに軽くする。そしてバクラクが可能にする生成AIならではの提案が「不正検知」だ。昨年11月のインタビューで福島氏は次のように語っていた。

「さらに不正経費の使い方、みたいなデータが溜まっていくとそこにアルゴリズムを押し込める。UX(体験)が、機械学習を武器にすることによってものすごく大きな差になってくる。サービス統合によるただの便利さだけでなく、その先にある業務の自動化、自動化の精度とか、その自動化の体験の向上みたいなところができるようになる。(中略)不正な経費はこういうパターンですよとか、あなたの会社の中で削れる経費、例えば旅費ってもうちょっと削れますとか、こういうコストの使い方をしてる会社って時価総額が上がってます、こういったデータによるこのサジェストのレベルっていうのが向上するんです」(シリーズA “102億円調達”のLayerXーー成長の鍵は「コンパウンド」(前編))。

LayerXでは半年に一度のペースで新たなプロダクトを出している。最新のものが昨年8月なので、次のタイミングはちょうど春頃になるはずだ。また続報がでたらお知らせしたい。

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