東大松尾研発の ELYZA、KDDI の連結子会社にーーオープンモデルの日本語汎用 LLM 開発推進で将来的なIPOも視野

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新 LLM の性能比較を紹介する ELYZA 代表取締役 CEO 曽根岡侑也氏 Image credit: Masaru Ikeda

東京大学松尾研究室発の AI 企業、ELYZA は3月18日、KDDI および KDDI Digital Divergence Holdings と資本業務提携を締結した。4月1日を目途に KDDI が43.4%、KDDI Digital Divergence が10.0%の ELYZA 株式を保有し、ELYZA は KDDI の連結子会社となる。KDDI グループの支援を受けながら、将来的なIPOを目指す方針。

ELYZA は2019年から LLM の研究開発を行っており、国内でその社会実装を牽引してきた。3月12日には、グローバルモデルに匹敵する日本語の性能を持つ700億パラメータの LLM「ELYZA LLM for JP」を開発したことを発表。デモ公開も行っている。

今回の提携により、ELYZA の国内トップクラスの LLM 研究開発力とKDDI グループの計算基盤、ネットワーク資源などのアセットを組み合わせ、生成 AI の社会実装をさらに加速させる。具体的には、オープンモデル活用型の日本語汎用 LLM 開発、領域特化型の LLM 開発、生成 AI を活用した DX 支援・AI SaaS の提供の3点を進めていく計画だ。

連携のイメージ:リリースより

領域特化型の LLM 開発においては、KDDI の関連会社でデジタル BPO 事業を展開するアルティウスリンクと連携。コンタクトセンター特化型 LLM 開発・実装も視野に入れ、企業・自治体のコンタクトセンター業務の DX を推進する。今後は金融・小売をはじめ、他の特定領域にもサービスを広げていく予定としている。

本提携の背景には、少子高齢化による人手不足の加速や、事業環境変化に伴うデジタル変革ニーズの高まりがある。生成AIの活用で業務効率化や生産性向上が期待される一方、グローバルモデルの利用だけでは本格的な課題解決に至らないケースも増えてきた。日本語に最適化された汎用 LLM や、業界・領域・個社に特化した LLM による課題解決が求められている。

このような社会背景を踏まえ、ELYZA と KDDI グループは生成 AI の社会実装力を高め、企業や自治体の課題解決を促進していく考えだ。KDDI はこれまでも社内外で生成 AI を活用してきたが、KDDI Digital Divergence Group と、ELYZA の LLM 開発力を掛け合わせることで、生成 AI を活用した DX 支援や AI SaaS の共同開発・販売をより強化し、企業・自治体での導入を広げていく方針とした。

ELYZAは2018年9月に設立されたスタートアップ。大手企業向けに、GPTや独自モデルを活用したAIシステムの実装を含むソリューションサービスを提供する「AIリサーチ&ソリューション事業」と生成AIを基軸としたSaaSプロダクトの提供を手掛ける。

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