スタートアップのコーポレート、最初に雇うべきは誰?ーータイミー八木氏・LayerX横田氏に聞く【カムスタ!アカデミー】レポ

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写真提供:サイバーエージェント・キャピタル

テック・スタートアップにおける最大の最初の難関は、間違いなく「市場の見極めとプロダクトの開発」なのですが、もし、万が一これをクリアすることができたならば、その後に待っている宿題は「組織づくり」になるはずです。

市場にフィットしたアイデア・プロダクトに最適な組織をどうつくるか。この興味深いテーマについて昨年末、経験者が語るクローズドの勉強会が開催されました。サイバーエージェント・キャピタルが開催したもので、セッションにはタイミーで大型のデット調達をリードした取締役CFOの八木智昭氏と、サイバーエージェント、メルカリなどでコーポレートを手がけた、LayerX取締役コーポレート担当の横田淳氏が登壇されました。本誌BRIDGEもメディアパートナーとして協賛し、筆者もモデレートで参加しております。

クローズドということもあり、当日話をされた深い内容は参加者のみなさんのみの共有事項になるのですが、その一部を記事として一問一答の形で読者のみなさんにも公開させていただきます。なお、次回は大手・異業種からの採用をテーマに3月12日にも同様の勉強会を開催予定です。引き続き招待制・クローズド開催ですが、一般からも一部抽選という形で参加することも可能です。詳しくはこちらの募集記事をご覧ください。

では、八木さん・横田さんとの一問一答です。

Q:コーポレート人材の採用でセンシティブ情報などの扱いもあるなか、カルチャーフィットとスキルフィットのどちらを優先すべきでしょうか?

写真左から:タイミー取締役CFOの八木智昭氏とLayerX取締役コーポレート担当の横田淳氏

横田さん:結論、全部求めます。ただ、どうしてもどちらかを選べと言われたら、最初はやはりカルチャー。経験は後からつけることができるので。また、最初にそういう(スキルフィットしてない)人を取った時は、あとから入る人に経験者を入れることで帳尻を合わせていく。そもそも業務はツールを使ったり、アウトソーシングという手段もあるのでやり方は割といくつかあるんですけど、「本当にこの人に情報を預けていいか」っていうところは、なかなか外部に出せない。また、カルチャーづくりには時間がかかるのでそっちが優先。

八木さん:横田さんの言う通り全部求めますね。ただ、この問題はかなり難しくウチも1回失敗しているんです。最初はやはりスキルセットの方優先してしまったんです。すごい経験を持っているのだけどカルチャーが微妙。ただとにかく人が足りなかったので採用して結局失敗してしまった。やはりアーリーであればあるほど、朝令暮改じゃないですけど、すぐ変わってしまったりということが結構起きやすいんですね。

その後からは、基本的にはカルチャーフィットする人を取るようになったのですが、一方でそうするとなかなかワークしにくくなる。そこでやったのは、カルチャーフィットして何でも穴が開いてるところをしっかりやってくれる人をまず取る。そこでチームに良い雰囲気を作り、加えて(チームに)スキルセットが足りないところは、仕組み化とか、チームで補完する。例えば経理チームでやっているのはマニュアル化で、誰かが抜けたとしても全部できるよう、ローテーションを組むようにしました。

Q:上場に向けて企業のステージが変わる中、スキルが合わなくなってくるメンバーが出てきます。フェーズ毎に入れ替えて新たにポジション採用するべきなのか、その当人に成長を求めていくのかどちらがいいのか

横田さん:例えばサイバーエージェントの場合、育てたんですね。時間はかかったけどカルチャーはとても強い会社になった。メルカリは逆で、経験者をバンバン取った。抜ける人もいましたけど即戦力の人が常に入れ替わって回る組織ができたので、どちらでもいけると思うのですが、中途半端はよくないですね。

Q:CFO採用のコツを教えてください

八木さん:(資金調達ラウンドが進んでファイナンスの)タスクがめちゃくちゃあるみたいな話だといいんですけど、それがないと「ファイナンスやって暇になる」っていうのがあったりするんですね。(タイミングを間違えると)高所得かつキャリアのCFOが入った結果、ファイナンスやってそれ以外はあんまやりませんみたいな話になってしまう。つまり、見極めポイントを言うと、CFOと言いながら正直、何でもやる人がいいです。

本当にスタートアップのシリーズAとかBとかのファイナンスでめちゃくちゃ難しいものってあまりなくて、おそらく社長と一緒に企業価値をどれだけ上げられるかという話なんです。だから「全部やる」みたいな気概を持ってる人じゃないといけないなと思ってて、自分もコーポレートももちろん、去年からカスタマーサポートを掌管して、2024年期は事業戦略本部も正式に役員として掌管することになりました(笑。

Q:適切な監査を受けられる会社の意思決定プロセスをどのように合理化するべきでしょうか?

横田さん:いくつかポイントがあります。まず意思決定プロセスで一番大事なポイントは、権限を明確にちゃんと作るってことですね。よくある話として、創業期に作った規定ってどこかの規定を参考につくったりするケースがあるんですが、なるべく早いタイミングで、ちょっと先手を打つぐらいで経営規定をちゃんと整理する。これはサイバーエージェントでやっていたんですが、ステップを減らす。5人ぐらいが稟議を承認すると遅くなっちゃうんで「ツーステップ稟議」というものを採用していました。申請する人、ちゃんと見る人、意思決定する人。この3人しか関わらないようにすると。途中の人は口頭でよくなる。

ビジネスを起こすためであれば、ステップを減らすことはやっぱり大事かなと思いますね。あとは急成長してる会社の意思決定権限は、定期的に見直した方がいいです。結局、意思決定じゃないところで意思決定がされて、稟議が形骸化してくる。そこをずらさないために、できれば半年に1回ぐらいは人数などを絞って見直した方がよいです。

八木さん:職務権限規定の中で「外注だったらいくらまで」という予算設定がありますよね。(設定のコツとして)まず金額をどこまでデリゲートできるかという点と、もうひとつ自分たちがこだわった点として「決裁権者に何を見て欲しいか」を一緒に添えてやってました。

基本的な裁量権限を渡していくので、広告宣伝であれば「この三つの指標を必ず見てくれ」とか、重要なポイントをセットで型化して金額はどんどん上げていく。そうすると金額が大きくなってもその判断がぶれない。

横田さん:あと、議事録を省略しないで取るようにしているんです。議事録も公開すると情報共有がちゃんとできるんですよ。経営会議とか重要な会議の議事録はちゃんと書いてあえて公開する。

八木さん:組織拡大時に「経営と現場」の乖離が発生してしまったことがあったんです。経営は何を考え、何をやろうとしてるのか全く見えない。その時、経営会議の議事録も(一部情報を除き)全部、毎週公開し誰でも見れるようにして質問もできるようにしたんです。

横田さん:メルカリも経営会議の情報は公開していて、何でそれをやってるかっていうと「大事」だから。

八木さん:(コーポレート業務で効率化を求めてなんでも)省略した方がいいですよ、みたいなことを言う人が割と多いんですけど本当に省略した方がいいのか、むしろちゃんとやった方がいいのかっていうのをコーポレートの人が考えて判断していかないといけないですよね。

Q:会社の成長に合せた理想的なコーポレートの成長をどのようにデザインすればよいでしょうか?またコーポレートはどうしてもコストセンターになるので、どのように社内のコンセンサスを取ったのかも合せて教えてください

横田さん:(上場すると企業人員の)10%前後みたいなことはよく言われてました。ただ、最近はいろんなツールが出てきたり、効率化もできるので、7-8%ぐらいでいいのかなと思います。スキルや経験にもよるんですけど、本当にわかってる人が2、3人いれば上場までは大丈夫で、あとは外部(スタッフ)を使ったりという形ですね。それとコーポレート人材には採用する順番があるんです。理想なのは「お金を調達してくれる人」と「採用できる人」ですね。それが最優先です。次が経理と予算管理と。法務はあとでいいんです。この順番を間違えない方がよくて、最初にガバナンスの人だけで作っちゃうと、お金を調達できないし採用ができない。

八木さん:私は(投資)銀行出身で今の話だとファイナンスの方なので、会計監査法人対応など経営の細かいオペレーションに経験を持ってるわけではなかったので、一番最初に会計士出身の方の採用にフルコミットしました。採用は私の方で注力してやって、管理部長と法務の弁護士が入って軸をしっかり固めて、そこからさらにメンバーを増やしていった感じです。

横田さん:(シード・アーリー期にコーポレートはないですよね、という問いかけに対して)ないと思いますし、それはどこの会社も同じで、アドバイザーみたいな人がやってくれたり、お母さんが税理士です、とかね。そこから抜けて次、いわゆる会計や資金調達、それと人事が優先として入って、そこから先に八木さんが今、言われたみたいにちょっとずつ組織化していく。

Q:採用に加えて経理や予算管理が重要になってくる理由を教えてください

横田さん:経理をちゃんとしてないと、お金がいくらあって会社がどうなってるかよくわかんなくなってくるんですよ。ベンチャーキャピタルの方に決算書を出してと言われた時に対応できなくなっちゃう。それまでは税理士の人にとりあえずこれでと言ってしのげるんですけど、シリーズAとかBくらいになってくると、数字を出してくださいという人も出てくる。予算は作っても変わっちゃうので、最初は作らなくてもいいと思うんですが、徐々に(資金調達などのシーンで)予算を出してと言われるので、求められはじめたら担当を採った方がよいと思います。

Q:スタートアップがデット・ファイナンスを活用できる状況があったとして、金利以外の意義のようなものがあれば教えてください

八木さん:将来的に大型のデットファイナンスを行なっていくためにも、基本的には早めにやった方がよいですね。一発で何かできるものじゃないので、小粒でも実績を積んだ方がいいです。よく言ってるのが、ずっと銀行に対して啓蒙し続ける。やはりスタートアップって基本的にはPLが赤字なので(通常の融資は)絶対無理なんです。でも資金使途やプロジェクトによっては資金繰りが回ることが証明されるケースもあるので、そこだけにお金をつける。1000万円とか、500万円でもいいんです。そういったものから始めるのは、全体のPLが赤字でも全然できるかなと思います。

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