世界的金融機関 Goldman Sachs はかつて、20%のファンがアーティストとの深い交流のために2倍の購読料を支払うことをいとわないとすれば、これらのファンは「スーパーファン」に分類され、2030年までに、これらのファンがもたらす「スーパーファンエコノミー」は年間40億米ドルのビジネスチャンスを生み出すことができると仮定した。
最近、世界的に有名な音楽会社 Universal Music は、韓国 HYBE と10年契約を締結したと発表した。世界のほとんどの地域でHYBE のアーティストの独占音楽販売代理店となることに加え、同社はスーパーファンプラットフォーム「Weverse」への投資を増やすというものだ。
Weverse は、スーパーファンエコノミーの原動力である。
HYBE は BTS や SEVENTEEN を擁する、韓国の4大芸能事務所の一つだ。2019年、HYBE は Weverse をローンチし、コミュニティ、生配信、ウィークリーショップなどの無料・有料のサブスクサービスを提供している。HYBE にとって競合の事務所(YG Entertainment)所属 BLACKPINK などが参加、K-POP 市場のリーダーとしての地位を確立した。現在、Weverse は海外の音楽市場にも目を向けており、ヨーロッパ、アメリカ、日本のアーティストを誘致している。
Weverse はどのようにスーパーファンを獲得し、より大きな成長を目指しているのか? 海外市場への参入はあるのか?
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スーパーファンのためのワンストッププラットフォーム
Weverse は、HYBE の子会社 Weverse Company によって開発されている。Weverse の創設者ソ・ウソク氏は、次のように語った。
コンテンツの投稿」に焦点を当てた既存の SNS とは異なり、Weverse は K-POP アーティストとそのファンとの「より深い交流」のためのプラットフォームを提供したい。
BTS のメンバー JUNG KOOK(정국)は、早朝に Weverse 上でファンのために4時間で30曲歌う「ルームコンサート」を開催し、1,630万人の視聴者と3億4,000万以上の「いいね!」を集めた。
Weverse では、ファンはお気に入りのソングライターのコミュニティに参加し、投稿にコメントを残したり、放送中に交流したりすることができる。プラットフォームの安全性を確保するため、Weverse は Naver と提携し、機械学習と AI 技術を使って動画や写真の投稿をレビューし、ボットを使ってわいせつな言葉をフィルタリングすることで、アーティストとファンにとって安全な環境を構築している。
Weverseの現 CEO チェ・ジュンウォン氏は次のように語った。
Weverse はアーティストとファンに安全な避難所を提供し、彼らがオンライン上のネガティブな要素から解放された環境で、より強固な関係を築けるよう、舞台裏で安全なプラットフォームの維持に努めています。
このコミュニティベースのビジネスモデルは、ファンとアーティストの絆をさらに強める。
Weverse では、ファンは22,000ウォン(約2,500円)から30,000ウォン(約3,400円)の年間購読料を支払ってクリエイタコミュニティのメンバーになる。会員になると、ファンは会員限定の投稿や追加の生配信を見ることができる。同時に、会員限定の周辺グッズの購入やコンサートの優先チケット購入権などの特典も受けられる。例えば、2023年に高雄で開催される BLACKPINK のワールドツアーのチケットは、Weverse 会員のファンが優先的に購入できる。
また、同じくアーティストとファンとの交流を重視し、韓国のアーティストに広く利用されている「Bubble」に比べ、Weverse は e コマースプラットフォーム「Weverse Shop」と連携し、アーティストの関連グッズやアルバム、メンバーシップを販売している。現在、Weverse Shop はアメリカや日本などの主要地域に物流センターを持ち、包括的なグローバル物流システムと現地の決済方法に対応している。
我々は、スーパーファンが同じプラットフォーム上でチャットしたり、生配信を見たり、オフィシャルグッズを購入したりできるような場所になりたいと思っています。(チェ・ジュンウォン氏)
Weverse によると、2023年には、このプラットフォームの月間アクティブユーザ数は1,000万人を超え、ダウンロード数は1億1,300万を超えたという。
海外アーティストの〝スイートスポット〟を見つける
HYBE の自社アーティストに加え、同じ韓国4大エンターテインメントの YG Entertainment や SM Entertainment(かつては HYBE と競合していたが、現在は買収され、HYBE が筆頭株主である)のアーティストも Weverse を利用しており、2023年、HYBE は Weverse を含むファンクラブビジネスを通じて6,970万米ドルの収益を生み出した。これは1年で35.9%の増加である。
Weverse のレポート「Fandom Trend」によると、2023年にはアメリカが Weverse の新規ユーザ数が最も多い地域のひとつになるという。今回の提携は、HYBE と Universal Music にとって、Weverse のアーティストリストを拡大し、K-POP アーティストのグローバルリーチを広げるビジネスチャンスを生かす機会となる。 Universal Music にとって、Weverse の投資は「スーパーファンの育成」というミッションの達成につながる。
しかし、アーティストが日常の時間を割いてファンと交流する、アーティストとファンの「つながり」を重視する韓国のファン文化に比べ、アメリカや日本など海外のアーティストは、公の場以外でファンと交流する機会が少ない。彼らは、韓国のファンプラットフォームにどのように適応していくべきだろうか。
私たちの目標は、さまざまなアーティストの〝スイートスポット〟を見つけ、彼らがこのプラットフォームを使ってグローバルにファンベースを拡大する方法を見つけることです。(チェ・ジュンウォン氏)
現在、すでに Weverse を利用している海外のアーティストは、アジアでのファンベースを拡大するためにこのプラットフォームを利用している。例えば、イギリスのバンド New Hope Club は、最新アルバムのプロモーションのために Weverse を利用した。Weverse では、アーティストや所属企業が、ダッシュボード機能「Weverse Insights」を通じてファンの傾向や好みを観察することができ、将来のカスタマイズされたサービスやコンテンツの提供を検討するのに役立つ。
画期的な Weverse モデルでスーパーファンを取り込む機会を得たことで、音楽業界を共にリードするプラットフォーム・ビジネス・パートナーシップを発展・拡大させることに興奮しています。(Universal Music 会長 Lucian Grainge 氏)
我々は、この提携がファン、アーティスト、レコード会社に利益をもたらすと同時に、我々の世界的な足跡を拡大すると確信しています。(HYBE 会長 パン・シヒョク氏)
【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup
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