K-POPアイドルとチャットできるアプリ「bubble」運営、時価総額が780億円を突破

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Image credit: DearU

「グループ XX のメンバーは、どれくらいの頻度で bubble を使っているの?」「XX 社所属アーティストの bubble がお勧め」「bubble のクーポン問題」など、Dcard(編注:Dcard とは、台湾の人口の3分の1が利用しているという大学生向け SNS)の、芸能人追っかけ掲示板には、「bubble」に関連する話題が頻繁に登場し、ファンから熱心に議論されている。ファンが口にするbubbleとは一体何だろうか?

この bubble は、2020年に韓国のスタートアップ DearU が発売したソフトウェアだ。ファンとアーティストの1対1の専用チャットルームを提供し、BLACKPINK のジス(지수)、TWICE のツウィ(子瑜)など多くの有名 K-POP スターが bubble を利用している。bubble がリリースされて以来、すでに200万人以上のユーザが登録し、DearU の現在の企業価値は約6,920億ウォン(約780億円)にもなっている。

一体ファン経済の力はどれほど大きいのだろうか?

ファンとアーティストの Win-Win を実現、継続率は90%を超える

bubbleでは、ファンは毎月4,500ウォン(約500円)を支払うと、好きなアーティストとチャットできる。芸能人は、テキスト、画像、音声などさまざまな形式のメッセージを、登録しているファンに一斉に送信でき、日常生活をファンと共有することができる。

登録したファンは、友人からメッセージが届いたかのように、専用チャットルームでメッセージを受け取り、1回につき最大3件の返信ができる。bubble はさらに登録日数に応じて、ファンが返信できる文字数を制限しており、この仕組みにより bubble のチャーンレートは非常に低く、継続率は90%を超えている。

bubble では、登録ファンはアーティストからメッセージを受け取り、返信することができる。
Image credit: DearU

普段から見きれないほどメッセージがあるのに、なぜさらに有料で他人からメッセージを受け取る必要があるのか、と思っていましたが、実際に購読してみると、アーティストから励まされたり、日常生活や仕事での出来事を共有してもらえたりと、本当に癒された。

あるファンが Dcard で、bubbleを1か月契約した感想をこのように投稿している。ファンにとって bubble は、低コストで好きなアーティストとさらに交流できる方法なのだ。

アーティストにとっても、bubble を利用すればサブスクの収益を得られるだけでなく、感情的な支えも得られる。とDearU の副社長 Hak-hee Lee(이학희、李鶴熙)氏は次のように語った。

公開されているアーティストの SNS には常に悪意のあるコメントがつきものだが、bubble はファンだけのコミュニティなので、アーティストは気持ちを癒やされる場所として利用している。

失敗続きの赤字から、ファンコミュニティプラットフォームにピボット

実は、bubble は DearU の最初の製品ではない。

2017年、DearU は当初 EverySing という社名で設立され、2019年には通信ソフトウェア開発企業の Brinicle と合併した。Brinicle は若者向けの通信アプリ「Don Talk」をローンチし、200万人以上の有料会員を獲得したが、結局 KakaoTalk に押されて事業を終了させた。また、Woori Bank(우리은행)と の提携で「Wibee Talk(위비톡)」というアプリを開発したが、これも利用者が少なくて終了に追い込まれた。

Brinicle が連続した失敗で赤字に陥った時、チャンスが訪れた。韓国の4大芸能事務所の一つ SM Entertainment が Brinicle に専用ファンコミュニティ「Lysn」の開発を依頼したのだ。その後、アーティストとチャットできるイベントを開催したところ、予想外の大反響を呼び、現在の bubble サービスに発展した。

起業の過程で最も重要なのは、失敗した時にためらわず従来の事業を手放し、自社の強みを生かして転換することだ。(Lee 氏)

次々と芸能事務所がサービスを開始、アーティストとファンのコミュニケーションはビジネス化されるべきか?

bubble はローンチ1年足らずで120万人以上の購読者を獲得し、毎月の収益が54億ウォン(約6億円)に達した。SM Entertainment に始まり、JYP Entertainment、STARSHIP Entertainment などの芸能事務所にサービスを拡大している。2023年9月時点での DearU の公式サイトによれば、bubble は114の芸能事務所、570人のアーティストに専用チャットルームを提供しているそうだ。

数々の K-POP アーティスト向けの「bubble」
Image credit: DearU

bubble の台頭により、アーティストとファンのコミュニケーションのあり方が変わり、それをビジネス化する動きに関する議論も起きている。アーティストのプラットフォーム内での交流頻度がアーティストの評価基準になっており、一部のファンからは「オンラインになっている頻度が少ない」と非難されることもあるそうだ。「有料プラットフォームが登場すると、お金を払わないとファンにはなれないという義務感が生じてしまう」とか、「これが正しい変化の方向性なのか分からない」と話す bubble ユーザもいる。

bubble のほか、HYBE 傘下のファンコミュニティ「Weverse」や、ファン向けにカスタム動画を制作するアメリカの Cameo なども、ファン消費を見込んで次々とサービスを開始している。アーティストとファンのコミュニケーションをビジネス化する動きに反対の声もあるが、ファン経済は確実に大きな潮流となっているようだ。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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