ピッチきっかけで大企業など12社が利用、ユーザの声を元に進化続ける国際リスク情報収集ツール「Glocalist」/Monthly Pitch! アルムナイ

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Glocalist CEO 吉川真実さん

本稿はベンチャーキャピタル、サイバーエージェント・キャピタルが運営するサイトに掲載された記事からの転載。毎月第2水曜日に開催される Monthly Pitch へのピッチ登壇をご希望の起業家の方、オーディエンス参加をご希望の起業家の方の応募はこちらから

「MonthlyPitch アルムナイ」では、これまでにMonthlyPitch にピッチ登壇し、それを機に成長・発展したスタートアップの最新の動向をお伝えします。

海外で事業展開する企業向けに、現地でさまざまなチャネルから収集したリスク情報を整理し、日・英・現地語の3か国語で知らせてくれるサービス「Glocalist」。前回、MonthlyPitchに登壇していただいたのは2022年1月のことです。それから2年以上を経て、どのような変化があったかをお聞きしてみました。

クローズドな環境で安心のピッチ、初期ユーザを得てPMF達成目指す

リクルートを経て、2013年にグローバルマーケティングの会社を設立した吉川真美さんが、自身2度目の起業として2020年に立ち上げたのがGlocalist。グローバルビジネスを展開する企業を支援してきた経験を元に、彼らの事業課題をより具体的なサービスで解決支援しようとしたのが、このサービスの生まれたきっかけです。

Glocalistは会社創業後にプレシードラウンドでクオンタムリープベンチャーズから資金調達し、その後しばらくはサービスの開発に専念。2021年後半から2022年にかけ、サービスの形が見えてきた頃、吉川さんはそのサービス開発の着手とシードラウンドでの資金調達に動き始めました。

シードラウンドの調達をしていた時、サイバーエージェントキャピタルさんに相談させていただく機会があり、「そういえば、MonthlyPitchというのがあってね」という話になり、登壇させていただくことになりました。その後、サイバーエージェントキャピタルさんにリードを引き受けていただき、他に3社参加いただいてシードラウンドが完了しました。(吉川さん)

現在では5カ国(インド、ベトナム、タイ、インドネシア、マレーシア)のリスク情報を提供するGlocalistですが、MonthlyPitchに登壇した段階では、インド版の開発を始めたところでした。プロダクトマーケットフィット(PMF)はおろか、サービスの方向性さえ明確には定まっていない状況でしたが、MonthlyPitchはクローズドな環境なので安心感があったといいます。

MonthlyPitch登壇を通じて、ベトナム、インドのリスク情報提供サービス展開の可能性を探ることができました。シードラウンドでの調達後、昨年2月にはα版をローンチしました。α版で得られたユーザからのフィードバックを元に、昨年12月にローンチしたβ版には、リスクアラート機能を追加し、業種別のニーズに合った情報提供が可能になりました。(吉川さん)

プレシード資金を使ってα版、シード資金を使ってβ版と、順調な進化を見せてきたGlocalistですが、今後待たれるのは正式版です。リスク情報のカバーはリリース済みの5カ国に加え、9つの国と地域(アメリカ、シンガポール、マレーシア、フィリピン、ドイツ、メキシコ、中国本土、香港、台湾)を拡大予定で、進行中のプレシリーズAラウンドもそのためのものです。

まだβ版の段階ですが、ありがたいことに有料課金を開始いただいているお客様が、皆さんがよくご存知の上場企業を含め12社います。特筆すべきは、MonthlyPitchの協賛者でもあるEY Japanさんが関わっていることです。EY Japan主催のEY Winning Women 2023にも選出いただき、事業拡大へのアドバイスや大企業とのマッチングの機会をいただいています。(吉川さん)

リスク情報収集に生成AI導入、必要な情報をプッシュで届ける

Image credit: Glocalist

正式版リリースに向けてGlocalistの開発を進める一方で、吉川さんにはユーザの使い方や状況を見て気づいたことがあります。それは、たとえ大企業でも、海外のリスク情報を調べるだけのために専任担当者を置けるケースは少ないかということ。コンサルティングファームならアドバイス業務の一環として、企業担当者なら通常業務の合間に見る、といった使われ方です。

ユーザが求めている情報を、システム側から能動的かつプッシュ的に知らせてくれる機能は重要で、その一つが前述したリスクアラート機能です。さらにGlocalistでは生成AIを導入し、システムのデータベースを最適化することで、ユーザが求める最新情報を探し出せるようにしました。企業は、株主総会や決算報告にもこれらの情報を取り入れることが可能になります。

一般の検索エンジンでは、必要な情報を全てカバーして検索することには限界があります。そこで、生成AIを活用してバックエンドで情報の整理を行うことで、業種のニーズに応じた情報を効率的に提供できるようになりました。これは大きな競争優位性となっています。カーボンニュートラルなど、最新情報の迅速なアップデートを必要とする分野で活用されています。

α版の頃には、お客様の言葉をそのまま伝えさせていただくと、「国会図書館がドンとできたという感じ」と言われていました。当時の Glocalistは、リスク情報について網羅性は担保することはできたのですが、そこから自分が調べないといけないのが大変。せめて、ピックアップしてもらえるとありがたいと言われ、生成AIの機能を実装させていただきました。(吉川さん)

ただ、ここで新たな課題に直面します。生成AIの多くは数年前までの古い情報を学習データとしてトレーニングされているため、最新情報を担保するには限界があります。また、東南アジアではインターネットドメインの管理が不備で、民間企業が公的機関のように見せかけて情報を発信しているケースが散見され、信頼性の高い情報源を確保することが重要になりました。

こうした問題に対処すべく、Glocalistでは各国政府とMoU(覚書)を締結し、公式発表の情報を取得することで、信頼性の高い情報源からデータを収集できる体制を強化しました。また、行政文書は画像やPDFで提供される国も多いため、それらをOCRを使ってテキスト化し、データベースに取り込んだことで、情報の検索性は大幅に向上しました。

Glocalistとやり取りするのは、大企業でESGガバナンスやリスク管理に関わる専門知識をもった人々。SaaSであるものの、業務にどのように組み込んで役立ててもらうかを提案する必要があるため、オンボーディングにはコンサルティング的な要素を伴います。グローバル視点を持ち、営業や開発に取り組んでくれる人材を積極的に獲得していきたい、とのことでした。

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