GitHubに公開されたコードからプログラミングスキルを評価、香港発「GitRoll」が米国進出へ

右が CEO Ray Kuo(郭峰瑞)氏、中央が Jovy Yu(余卓璿)氏。共に GitRoll の共同創業者
Photo by Hou Junwei(侯俊偉)氏

オフィスを訪れると、そこにいた人々は若かった。平均年齢25歳にも満たないこのチームが、これまでに創業経験があったとは想像できない。

GitRoll はメタバーススタートアップ Metamory の前身を経て、2024年に正式に設立された。共同創業者 Ray Kuo(郭峰瑞)氏は、「前回の経験とは違い、今回は市場のニーズを的確に捉えることの重要性を学んだ」と語る。

今回、彼らが狙ったのは「エンジニアが見つけにくい」というペインポイントだ。彼らは今回、エンジニアが書いたプログラムコードをスキャンし、プログラミングスキルを評価するシステムを立ち上げた。

GitRoll は、スキルがありながら学歴や経験などの要素に左右されるエンジニアが、スキルに見合った仕事を見つけるのを支援する一方で、企業が不適格な候補者を排除し、未開拓のダイヤモンドの才能を見つけるのを支援する。

Image credit: GitRoll

学歴就職神話を打ち破る「プログラミング適性スキャンシステム」

優秀なエンジニアを素早く見つけることは、全てのテクノロジー企業やスタートアップ企業にとって重要なことだ。しかし、優秀なエンジニアには優れた個人的スキルが必要なだけでなく、チームに効果的に溶け込み、他のエンジニアと協力するスキルも非常に重要だ。

GitRoll の共同創設者 Jovy Yu(余卓璿)氏は次のように語った。

エンジニアを採用する際、企業は学歴や関連する経験といった外部的な基準でエンジニアを選別することが多いが、このやり方では、卒業証書が人目を引くものでないエンジニアは埋没しやすい。また、テストを経たとしても、プログラミングスキルがどの程度あるのかが分からない場合もある。

既存の採用システムの問題点に気づいた GitRoll は、チームメンバーのプログラミングスキルと企業プロモーション経験を組み合わせ、「学歴の壁を打ち破る」プログラミングスキル評価システムの構築を試みた。これは既存の手法の不足を補うものである。「私たちは映画「マネーボール」のようにデータに基づいて判断し、経験に頼らない」と Kuo 氏は笑顔で語った。

プログラミングにはコミュニケーションスキルも必要、「5つの力」でエンジニアの価値を評価

GitRoll を使用するには、人事は応募者の GitHub ページをアップロードするだけで、数分以内にその人のプログラミングスキルの客観的な分析を入手できる。

GitRoll システムは、以下の5つの分析軸を提供している。

  • セキュリティ(security) …… セキュリティホールやセキュリティの脆弱性があるかどうか
  • 信頼性(reliability) …… プログラムにどのくらいのバグ(エラー)があるか
  • 保守性(maintainability)…… 他の人が理解しやすく、引き継ぎやすいかどうか
  • 影響力(influence)…… コミュニティ内での評判と地位
  • コミュニティへの貢献度(contribution)…… オンラインで他のエンジニアと協力してプロジェクトを行う際のパフォーマンスと評価
Image credit: GitRoll

GitRoll のシステムは、プログラミングの実力を重視するセキュリティ、信頼性、保守性に加えて、エンジニア個人のソフトスキルを重視する影響力とコミュニティへの貢献度という5つの分析軸を提供している。

個人のエンジニアのデータをスキャンするだけでなく、GitRoll にはスキャン結果を保存する機能もあり、さまざまなスキルを持つ申請者の分析結果を一元的に比較することで、企業が求める最適な候補者を見つけることができる。

現時点で GitRoll はプログラミングスキルの判断しか提供していないが、コミュニケーションスキルや協調性などのソフトスキルの評価はまだ完全ではない。しかし、Kuo 氏によると、GitRoll のローンチ後、エンジニアコミュニティでは熱心な議論が行われており、エンジニアらが自ら、将来どのような機能を追加してほしいかを積極的に語っているとのことだ。そして、チームが企業向けの開発に精を出している間も、コミュニティのエンジニアたちが自発的に公開プログラムを修正したい、と求めてきたそうだ。

みんなが自分で『遊びたい』と言っている。GitRoll システムはエンジニアたちに推されることで進化されている、と言っても過言ではない。(Kuo 氏)

新たな〝国際人身売買業者〟

自分たちを冗談っぽく「新たな国際人身売買業者」と呼ぶ GitRoll は、スキルスキャンシステムの構築に加え、将来的には「エンジニアヘッドハンター」を目指すと述べている。

GitRoll はエンジニアコミュニティでの影響力を徐々に拡大し、エンジニアのデータベースを立ち上げる予定だ。企業がエンジニアを採用したい場合、直接 GitRoll のウェブサイトで検索し、希望のエンジニアタイプで絞り込むことができる。

現在、チームは選別アルゴリズムの設定が完了しており、さまざまな分野のエンジニアと次々と連絡を取り、システムのデータベースを拡張している。GitRollシステムは2023年11月のリリース以降、5,000人のエンジニアのデータを蓄積した。

設立から半年も経っていないものの、GitRoll のチームは過去の創業の失敗例から学び、市場の問題を見つけた後、市場の規模と製品の実現可能性を確認してからソフトウェア開発に専念し、注目されることの少ないプログラミングスキルの領域で徐々に足場を築いてきた。

明確な企業目標とビジョンを共有するチームメンバーを持つことで、GitRoll チームの次のステップはより大きな産業需要のあるアメリカ市場に進出することを計画している。チームは自分たちがアジアコミュニティから、過小評価され埋もれていたエンジニアの才能を発掘し、彼らに国際市場への橋渡しをし、「実力主義」の未来に向けて歩んでいけるよう支援することを目指している。

起業に関する簡単な Q&A

Q: 次のステップの目標を達成するために、チームに不足している資源は何ですか?

  • エンジェル投資家
  • アメリカ市場に導いてくれるベテランリーダー

Q: 起業によって学んだことは何か?

  1. パートナー選びは慎重にすべき。パートナーが適切でないと、大きく失敗し、会社が倒産する。(前の会社の教訓)
  2. 感謝の気持ちを忘れずに。創業の道のりでは多くの方々に助けられた。
  3. よく阿弥陀仏を唱えよう。

Q: 起業してからのベスト3を教えてほしい。

  1. MVP を迅速にリリースできたこと。
  2. 迅速に市場投入し、試行錯誤を重ね、迅速に改良できたこと。
  3. 良いパートナーがいたこと。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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