世界中の旅行者から手荷物の悩みを解消、台湾発LuggAgent(行李特工)のこれまでと次なる一手

COO Eva Chuang(荘子芸)氏、CEO Lance Lin(林志洋)氏、ビジネス開発マネージャー Zi Xin Huang(黄子芯)氏
Image credit: LuggAgent(行李特工)

私たちの宿泊先は道路を挟んだ向かい側にあったのですが、荷物を持って地下鉄の駅を通り抜け、通りの反対側まで歩いていかなければならず、宿泊予定のホテルまで40分近くかかりました。

LuggAgent(行李特工)の創業者 Lance Lin(林志洋)氏は、家族と上海を旅行した自身の経験をこう振り返る。

このような光景は、海外旅行では誰もが目にする。

この問題を解決するため、Lin 氏は2015年に LuggAgent を設立し、世界中の旅行者がホテルのチェックイン前やチェックイン後に荷物に縛られることなく、手ぶらで自由な旅行を楽しめるよう、指定した宿泊施設や空港まで荷物を運ぶサポートをしている。

LuggAgent は現在、200以上の都市で30万個以上の手荷物を提供しており紛失率は0%である。しかし、事業の初期段階では、LIn 氏は手荷物を届けるために自ら目的地まで飛行機で出向き、注文を受けた早朝に飛行機に乗らなければならないこともあった。彼はどのようにサービスを提供してきたのだろうか。

出発地に合わせ、旅行者のニーズに応える

2005年以来、私は30カ国以上を旅してきましたが、使いものになる手荷物預かりサービスには出会ったことはありませんでした。(Lin 氏)

Lin 氏は、自分は旅行前に前もって計画を立てない人間だと話す。十分な下調べをしていても、旅行中に何が起こるか予想できない。例えば、ルートを間違えたり、何とか見つけたスーツケースに十分なスペースがなかったり、あるいは強盗に遭ったり、その他の不測の事態が起こるかもしれない。荷物を持ち歩くという事実も相まって、旅行はより厄介なものとなってしまう。

こうした蟠り(わだかまり)は Lin 氏の心にずっとあり、会社を辞めた後、軍隊で知り合った Hogan Chiang(江佳宏)氏や Tony Wong(王奕翔)氏とともに Luggage Agent を共同設立し、中国での荷物配送サービスの普及に乗り出すことにした。

旅行者にとって最大の苦痛は、到着初日、出発する旅の最終日、途中でホテルを変更する際、次の旅行を始める前に、荷物を所定の場所まで持って行って預け、受け取る必要があり、それには時間と労力がかかることだ。そこで、LuggAgent はこの配送プロセスの物流サービスとなった。

旅行者は出発の24時間前までに公式 Web サイトで予約を行い、手荷物の個数、ピックアップとドロップオフの場所を選択し、フライト、ホテル宿泊の予定時間を伝える。注文完了後、旅行者には配送先住所、時間、個数、料金(個数課金、破損・紛失時の保険を含む)が記載された確認書と、注文情報、領収書や写真など、手荷物を受け取る際に必要なガイドラインに関する情報が送付される。

LuggAgent の予約インターフェース
Image credit: LuggAgent(行李特工)

Lin 氏は、LuggAgent では手荷物の保険料は500米ドル以下、輸送距離は150km以内に制限されているとし、「一部の例外を除き、この距離を超えると、人々は鉄道や航空機を使って移動するため、LuggAgent が出る幕ではなくなる」と語った。

Lin 氏によると、このような生活支援サービスで最も重要なのは、リアルタイムの顧客サービスだという。各国の旅行者のニーズに応えるため、LuggAgent では、各タイムゾーンに24時間待機しているカスタマサービススタッフがいる。各国の旅行者は、最も使い慣れた通信ソフトウェアでカスタマーサービススタッフに連絡することができるため、旅行者それぞれのニーズと利便性を満たすために最善を尽くすことができる。

手渡しや早朝便だけではない、顧客要望への最適化

LuggAgent のサービス開始から7〜8年が経ち、類似サービスも徐々に登場しているが、LuggAgent の COO Eva Chuang(荘子芸)氏は、他の手荷物宅配サービスが抱える問題点——例えば、事前予約ができない、カスタマサービススタッフとのコミュニケーションに問題がある、一部のホテルや B&B にしか配送できない、など——に比べ、LuggAgent のサービスははるかにシンプルで包括的だと語る。

Lin 氏は、指示カードの翻訳、案内情報、保険、さらには不特定のホテルに届けられる、などの包括的なサービスは、実はすべて過去数年間に蓄積されたサービスのノウハウで、特に国際線を使う旅行者にサービスを提供する場合、直面する問題が多くなると明かした。

最初の問題は、協業する国際物流会社を見つけることだ。

私たちが海外市場に参入した当初は、協力してくれる物流会社がなかったため、自ら現地まで飛行機で出向き、レンタカーを借りて顧客のために荷物をピックアップ/ドロップオフしなければなりませんでした。(Lin 氏)

Lin 氏はかつて、Lin 氏とパートナーが北京、日本、バンコクに飛び、B&B と車を1カ月ほど借りて、顧客の荷物を運んでいたと話した。その過程で困難にぶつかりながらも、Lin 氏とパートナーは LuggAgent をあきらめず、最終的には香港に本社を構え、徐々に国際的な認知度を高めていった。

日本での配送の様子
Image credit: LuggAgent(行李特工)

LuggAgent は2016年、Klook(客路)や KKday(酷遊天)などの大手旅行サイトや航空会社と協力し、200以上の都市にサービスを拡大することに成功し、世界中の旅行者のために30万個以上の手荷物を輸送した。

B2B から B2C へのピボットと国際プロモーションの拡大

台湾市場からスタートした LuggAgent は、国際市場へも進出している。LuggAgent のビジネス開発マネージャー Cindy こと Zi Xin Huang(黄子芯)氏は、より多くの旅行者に LuggAgent を知ってもらうため、インフルエンサーマーケティングに加え、2023年から銀行と提携し、LuggAgent の配送サービスを予約する際のクレジットカード決済で、カード会員が優待割引を受けられるようにし、より高い認知度を開拓していると語った。

また、Huang 氏によると、LuggAgent は2024年末に「旅行アシスタント」と「買い物代行」のサービスを開始する予定だという。旅行アシスタント は旅行版 ChatGPT のようなもので、旅行者に現地の話題のスポットやグルメなどを勧めてくれる。買い物代行は、多くの人が海外に行く際、友人や親戚の買い物を代行する必要があることを考慮したもので、旅行者はオンラインで買いたい商品を選ぶだけで、LuggAgent の担当者が商品を代理購入し、空港で受け取ることができるというものだ。これなら商品を探して移動する時間を節約できる。

Image credit: LuggAgent(行李特工)

今後の海外市場のターゲットについて Wang 氏は、「顧客基盤の促進と拡大」に注力するとし、現在、各国の旅行者が旅行時に最も気にすることを調べるため、積極的に各国の市場調査を行っているという。例えば、シンガポール人の旅行者は、旅行サービスが中国語と英語の両方で利用できるかどうかを気にする傾向があり、韓国人の旅行者は通常、Naver で情報を確認することに慣れているため、LuggAgent はこの点に重点を置いている。また、LuggAgent の国際プロモーションを支援するため、さまざまな国からマーケティングの人材を積極的に採用している。

起業に関する簡単な Q&A

Q: 起業してからのベスト3は何ですか?

  1. 旅行者が世界中で当社のサービスを利用できるよう、グローバルブランディング戦略をとったこと。
  2. 世界中のドライバ、販売チャネル、カスタマーサービスが効率的に連携できるよう、すべてのプロセスを簡素化し、最も迅速でスケーラブルな連携方法を確立したこと。
  3. 製品と市場ニーズが交わる場所を見つけ、市場ニーズと会社の収益性とビジョンのバランスを見つけたこと。

Q: LuggAgent の競合他社に対する優位性は何だと思いますか?

  1. グローバル・ブランド・マーケティング・プログラム
  2. 旅行者がどの都市を訪れても当社のサービスを利用することができ、一貫したグローバルなサービスプロセスと経験があるため、旅行者は当社に荷物を預けることに自信を持つことができる。
  3. 24時間、多言語でカスタマーサービスを提供し、週末、夜間、緊急時にかかわらず、専門家がすぐに対応する。

Q: 現在の市場競争をどのように見ていますか? 市場の将来の進展動向についてどう思いますか?

即時配送の Lalamove、Uber、物流事業者の SF Express(順豊速運)、ヤマト運輸などは現在、配送能力に空きがあるが、言語、決済、顧客サービスなどの理由で旅行者が直接利用することが困難だ。LuggAgent の役割は、これらの物流リソースを統合して、より良い旅行体験を創出しながら、新しい旅行輸送周辺マーケットを創出することだ。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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