オーストラリアのオンラインデザインプラットフォーム「Canva」は3月26日、190億円超でイギリスのクリエイティブソフトウェア企業 Affinity を買収すると発表した。
2013年に設立された Canva は、多くの人に愛されるデザインプラットフォームとなった。CEO の Cliff Obrecht 氏は公式サイトで、今回の Affinity 買収はさまざまなデザイナーを惹きつけ、「総合デザインソフトウェア」となる目標に一歩近づくことにると述べた。
この買収により Canva は、Affinity傘下の3つのクリエイティブアプリ「Designer」「Photo」「Publisher」を手に入れ、それぞれ Adobe の「Illustrator」「Photoshop」「InDesign」に対抗できるようになる。
最近最大規模の買収、Canva が製品ラインアップを拡大する理由は?
今回の Canva と Affinity の買収は、Canva がデザインソフトウェアの覇者 Adobe にデザイン業界で挑戦する最初の一手と見られている。
過去10年間、Canva は非デザイナー向けのプラットフォームを提供してきたが、「世界にデザイン能力を与える」というチームの目標を達成するため、近年では AI スタートアップ KaleidoAI や画像ライブラリ Pexels、Pixabay など6社を買収している。
今年1月の時点で、Canva のグローバル利用者は1億7,500万人を超え、150億点の無料デザインテンプレートを提供し、100以上の言語に対応。さらに Warner Music や Merlin など著名な音楽会社と提携して、50万曲以上を提供している。
買収された Affinity、Canva の目に留まったのはなぜ
1980年代にWindowsのクリエイティブアプリを開発していた Affinity は、Windows だけでなくMac、iPad にも対応したいと考え、マルチプラットフォームのアプリ開発に乗り出した。
Affinityはプロデザイナー向けの手頃で使いやすいデザインプラットフォームを提供。写真編集、グラフィックデザイン、出版デザインとフルラインナップのクリエイティブソフトウェアを揃え、マルチプラットフォーム対応が高く評価されている。
Canva の発表によると、Affinityのソフトウェアには世界で300万人以上のユーザーがいる。これはAdobeユーザーの一部に過ぎないが、ワンタイム購入のシステムで熱心な支持者を獲得した。
デザインソフトウェアで実力のある Affinity は、Canva にさらなるユーザを呼び込み、シンプルで使いやすい Affinity の理念も Canva のそれと一致する。Canva の大規模な支援を受けることで、Affinity シリーズは今後さらに高速な更新と開発が期待できる。
Affinity 買収がデザイン業界の势力図を塗り替える
Canva のチームは、あらゆるデザイナーのニーズに応えられる統合デザインシステムを創ることを願っている。
Affinity の90名の従業員を加えることで、Canva は製品の開発と発売を強化し、Adobe に嫌気がさしたデザイナーを効果的に取り込み、クリエイティブ業界で Adobe に対抗できるようになる。
しかし、この買収に Affinity ユーザ全員が納得しているわけではない。従来の購入制度から変更され、サブスクリプションやシチュエーション別課金になることを危惧する声もある。
この点について、Canva 共同創業者の Cameron Adams 氏はオーストラリアの現地メディア「The Sydney Morning Herald」に対し、「2社は徐々に小規模な統合を進めるが、製品自体は独立したものとして扱われる」と語った。
Affinityも発表文で、買収を喜んでおり、Canva の支援を受けてさらに成長できることを期待していると述べている。
Affinity シリーズは Adobe の「Creative Cloud」ほど包括的ではないが、Adobe 主力の33本のソフトウェアに代替できる製品を含んでおり、「Photoshop」「Illustrator」「InDesign」の代わりになる。したがって、Canva が自社最大規模の買収に踏み切ったことは、デザイン業界に衝撃を与えた。
長年デザインを主導してきたAdobeは、このライバルの猛追を受けて、AIなどの新機能開発を加速し、覇者の地位を守らねばならない。
【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup
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