台湾の医療機器スタートアップ APrevent（宇康生科）は4月2日、シリーズ D ラウンドで600万米ドルを調達したと発表した。このラウンドは、ハイテクとバイオテクノロジーに重点を置く Taiwania Capital（台杉資本）がリードした。APrevent はこの資金調達により、ヨーロッパ、北米、東南アジア市場でのプレゼンス拡大を目指す。

発声障害の持続的解決策を開拓

2014年に設立された APrevent は、自社製品「APrevent VOIS」を通じて声門閉鎖不全という症状に対処している。声門閉鎖不全とは、声帯の閉鎖が不完全な状態を指し、声帯の片側が完全に閉鎖できないために、発声困難、息苦しい声、唾液や食物を気道に誤嚥する潜在的な危険性が生じる。この症状は、脳卒中、パーキンソン病、手術後の神経損傷が引き金となることがある。

詰め物として自分の脂肪やヒアルロン酸を使用したり、甲状腺形成術のためにシリコンブロックやチタン金属を直接埋め込むような従来の方法とは異なり、APrevent では、治癒のために「自己拡張可能なバルーン」を喉に埋め込むという物理的アプローチを採用している。

APrevent VOIS は、不活性でアレルギー性が低いことで知られる医療用シリコーンとチタンを組み合わせ、一般的な既存のソリューションに関連する頻繁な経過観察や二次手術の問題に対処する。

APrevent VOIS は2019年にヨーロッパの CE 認証を取得し、現在ドイツ、オーストリア、英国、フィンランドなどの国々で保険適用により利用されている。世界中で100以上のインプラントが使用されており、APrevent の次の段階への拡大の基盤となっている。

資金調達後ヨーロッパに照準、アメリカや東南アジアを視野に

2019年に認証を取得して以来、ヨーロッパは APrevent の焦点であり続けている。今回の資金調達により、まずは西ヨーロッパに軸足を置き、その後、北欧地域、さらには中央ヨーロッパや東ヨーロッパに向かうことを目標としている。Taiwania Capital の中東欧ファンドのマネージングパートナー Mitch Yang（楊明超）氏 は、中央ヨーロッパや東ヨーロッパの医療機器業界における Taiwania Capital のプレゼンスとネットワークが、APrevent のヨーロッパ市場開拓に役立つと強調している。

ヨーロッパ市場に加え、APrevent は今年、他の市場への進出を強化する計画だ。例えば、アメリカではすでに FDA に臨床試験を申請している。また、東南アジア諸国は CE マークを適用（CE 認証を取得した製品はその国でも使用可能）している国が多いため、東南アジアもターゲット市場のひとつと位置付けている。例えば、APrevent は2023年9月にマレーシアで認証を取得している。

APrevent が開発した構音障害患者向けの AI 音声アプリ「AiSpeak」については、1年間の調整と開発を経て、昨年末に無事ローンチしたが、現在は主に中国語圏の市場に焦点を当ててプロモーションを行っている。

Taiwania Capital のジェネラルパートナー David Weng（翁嘉盛）氏は、APrevent の製品は声門閉鎖不全患者の治療における画期的なブレークスルーであり、Taiwania Capital はこの製品に投資できることを嬉しく思うと述べた。APrevent の創業者兼 CEO  Guan-Min Ho（何冠旻）氏は、2024年は APrevent にとって極めて重要な年であり、今回の資金注入は重要な転換点であると強調した。

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