B Dash Camp 2024 Spring in 札幌のPitch Arenaは、犯罪予測AIで世界の治安向上を支援「CRIME NABI」運営が優勝 #bdashcamp

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本稿は、5月22〜24日に開催されている B Dash Camp 2024 Spring in Sapporo の取材の一部。

札幌で開催中のスタートアップ・カンファレンス「B Dash Camp 2024 Spring in Sapporo」のピッチコンペティション「Pitch Arena」には約100社から応募があり、書類審査・面接を通過した15社のスタートアップが予選に登壇、このうち6社がファイナリストに選ばれた。決勝では、犯罪予測 AI で世界の治安向上を支援する Singular Perturbations が優勝した。

Pitch Arena ファイナルラウンドの審査員を務めたのは、

  • 清明祐子氏(マネックスグループ代表執行役社長 Co-CEO)
  • 長井里実氏(野村證券 コーポレート・ファイナンス八部部長)
  • 舛田淳氏(LINE ヤフー 上級執行役員 エンターテインメントカンパニー CEO)
  • 宮田昇始氏(Nstock 代表取締役 CEO/SmartHR 取締役ファウンダー)
  • 吉田浩一郎氏(クラウドワークス 代表取締役社長 兼 CEO)
  • 渡辺洋行氏(B Dash Ventures 代表取締役社長)

……の6人の皆さん。

本稿では、ファイナリストの顔ぶれとピッチの様子をランダウンしてみたい。

【優勝】【野村賞】CRIME NABI by Singular Perturbations

Singular Perturbations は、先進的な犯罪予測システムの開発に取り組んでいる。このシステムは、過去の膨大な犯罪データや人工衛星画像、実際の警備オペレーションデータなどを AI が学習し、いつどの場所で犯罪が発生する可能性が高いかを高精度で予測できる。ブラジルやウルグアイでの実証実験で大きな成果を上げ、実際に導入した地域では、従来に比べ犯罪発生件数が69%も減少した。

同社では主に政府機関向けにこのシステムを提供してきたが、今後は民間企業にも積極的に活用してもらいたいという。機械学習の発展で、過去のデータがないエリアでも高精度な予測が可能になった。旅行先の治安リスクが提供できるため、旅行業界にはツアー地の治安情報、保険業界には加入者の居住地域の犯罪リスク予測、不動産業界には価値変化の予測などのユースケースが考えられるとしている。

【準優勝】【パーソル賞】BUMP by emole

emole の「BUMP」は、ドラマバージョンの4コマ漫画と言えるだろう。配信されるドラマは3分の短尺作品で、最初の数編は無料で視聴可能で、広告視聴や話課金により全編を楽しめる。収益の8割は有料作品の購入費から得られているそうだ。YouTube や TikTok で創作活動は可能だが、クリエイターの収益化は難しい。BUMP を使えば、ヒット作品の適切な対価還元を実現できる。

2022年12月にリリース後、広告費をかけずにダウンロード数は110万件を突破。ショートドラマは、中国ではすでに1,000億円市場が形成され、2027年には1兆円に達すると予測される。2029年には世界市場で9兆円に拡大する見込みだ。Bump は今月、韓国でもアプリローンチした。日本からコンテンツを世界に発信し、また世界各国の作品を国内で楽しめるプラットフォームを目指す。

【ノバセル賞】Smart Craft by Smart Craft

Smart Craft は、製造業のスマート工場化を支援する SaaS プロダクトだ。日本国内の製造業においてデジタルトランスフォーメーション(DX)は一部大手企業を除いて遅れているのが現状だ。特に製造現場では、生産計画策定、日々の記録作業、コミュニケーションなどが Excel や紙、FAX など非デジタル的な手段に頼っている企業が多い。

Smart Craft は、スマートフォンやタブレット、IoT デバイスを活用し、製造データを一元管理できるプラットフォームだ。製造現場の業務プロセスに詳しいエンジニアチームが開発を手掛けたため、現場の課題解決につながりやすいとの評価から、中小製造業やグループ企業に導入が進んでいる。今後は国内だけでなく、日本企業の海外工場への展開も視野に入れているという。

【AGS 賞】WHERE by Penetrator

従来の不動産取引(物上げ業務)は、そのプロセスは膨大な手間とコストがかかっていた。しかし、Penetrator が開発した「WHERE」を使えば、数億円規模の不動産取引を、わずか数クリックで完了できるようになるかもしれない。同社は衛星データを元に AI を活用して不動産取引の可能性がある物件を特定し、法務局のデータから物件の所有者を把握し、直接所有者にアプローチをかける、という仕組みを構築した。

従来は困難だった多額の不動産取引を、劇的に効率化・簡素化したわけだ。このサービスの開発には、宇宙技術の知見による衛星データの活用、AI の専門知識、そして不動産取引に関する深い理解が必要だった。同社ではこれら3分野の専門家がチームを組み、知見を最大限に生かしている。不動産は高額取引が常となる業界だが、このサービスにより、多大な手間暇とコストを大幅に削減できる。

【UPSIDER 賞】ごっこ倶楽部 by GOKKO

GOKKO は、縦型ショートドラマのクリエイター集団だ。累計動画再生数33億回、フォロワー数300万人を誇る。過去2年間の活動実績を振り返ると、これまでは企業案件が多く、トヨタ、JAL、NTT ドコモなど大手企業との協業で高い評価を得ているが(B 向け)、今後、一話ごとに課金する PPV 課金対応のコンテンツを強化する予定だ(C 向け)。

ReelShort や Bump などショートドラマの配信プラットフォームを通じて、コンテンツを販売・提供していく。映像制作の分野では作品毎にプロジェクト体制が組まれることが多いが、GOKKO では企画・撮影・編集など映像制作に必要な一連のプロセスを全てインハウスで対応できることが特徴で、監督18人、脚本家26人など多様な人材を擁していることを強みに、2025年には年間100タイトルのドラマ制作を予定している。

OSUMITSUKI by PortRay

大学の入学試験では一次段階の審査プロセスは「センター試験」で共通・標準化されている。一方、入社試験においても、会社は違えど共通の審査項目を取り入れていることは多い。この点に着目した PortRay は、転職のセンター試験「OSUMITSUKI」を開発した。企業毎の選考に代わり複数社の一次面接を一括実施、受験者は一度の面接で最大70社の内定判定を得られ、応募から内定までを短縮できる。

通常の人材紹介会社経由などと比べ、OSUMITSUKI では高い内定率を実現しているという。各企業の求める人物像が可視化されるため、志望先に合った準備や対策もしやすくなるといった利点もあるという。また、AI が企業の求める人材像を分析し、面接官に適切な質問を提案するシステムを採用。人力では対応しきれない大量の求人情報の分析にも AI を活用し対応できる。

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