ギグワーカーがお客様——南米発、フードデリバリ配達員43万人にコーヒーとトイレを無料提供するNippy

Image credit: Nippy

このスタートアップは、配達員に無料でトイレとコーヒーを提供する。

Fredy Ivan Alba Trejo 氏はフードデリバリの配達員だが、ある問題を抱えていた。

多くのレストランやショッピングセンターでは、フードデリバリの配達員が店内の施設を利用したり、リュックやヘルメットを店内に持ち込んだりすることを許可していない。荷物を店外に置いておくことを義務付けているのだ。

これでは、私たちの所有物が盗まれる危険性がありました。(Trejo 氏)

アルゼンチンのスタートアップ Nippy は、アプリをダウンロードすると、スペースがない配達員などのギグワーカーのために、清潔なトイレと無料のコーヒーが飲める休憩所を設置することでこの問題を解決した。

Nippy は現在、アルゼンチン、メキシコ、ドミニカ共和国に休憩所を設置し、合計約43万人の会員がいる。

無料休憩所を設置、ギグワーカーに福利厚生

2023年の世界銀行のデータによると、ギグエコノミーは世界の労働市場の12%を占めるが、こうしたギグワーカーには仕事を離れて休憩するスペースもなければ、福利厚生もない。

Nippy は、ギグワーカーに休憩場所と福利厚生を提供する。ギグワーカーが Nippy の休憩所を利用したい場合、アプリに登録し、メールアドレス、居住地、生年月日などのデータを提供するだけで、「Nippy Center」にアクセスできる。

食事、WiFi、電源が利用できるだけでなく、Nippy はギグワーカーのために、バイクのローンや傷害保険など、その他の福利厚生も提供している。

Nippy の共同創業者 Florencia Moroni 氏は次のように語った。

私たちは、ギグワーカーのニーズを満たし、ギグワーカーのためのコミュニティを築く場所を作りました。

Nippy はまた、南米のデリバリプラットフォーム Rappi と提携し、Rappi の配達員が未配達の商品を返品できる場所を Nippy Center に設定した。

Nippy が開設される前は、未配達品を返却する必要がある配達員は、市外にある Rappi の2つの返却センターまで数キロ移動しなければならなかった。

MasterCard は、専用の金融商品をローンチへ

Image credit: Nippy

Nippy は、ギグワーカーのデータを金融、保険、通信会社に販売することで収益を上げ、そのデータを使ってギグワーカーに特別割引や限定商品を提供することができる。

Nippy は、これまで誰も提供できなかったデータを持っており、それがこれらの組織を Nippy との提携に駆り立てている。(Nippy に投資する Ana Abreu 氏)

Nippy の共同創業者 Diego Amondaray 氏によると、Nippy はすでにアルゼンチンとドミニカ共和国で MasterCard と提携しており、今後数ヶ月で小売労働者向けの金融商品をローンチする予定だという。

しかし、第三者にデータを転売することにプライバシーの懸念はないのだろうか?

Rest of the World がインタビューしたギグワーカーの多くは、自分たちのデータが第三者と共有されていることには気づかなかったが、同社が自分たちのデータを利用することには「何の問題もない」と述べ、Nippy が将来、自分たちが利用できるサービスをさらに提供してくれることを願うばかりだと語った。

マサチューセッツ工科大学でプライバシーと監視技術を研究している Mariel García 氏は次のように語った。

ギグワーカーが、休息場所を得る権利と引き換えに、自分のデータの管理を放棄しているという事実こそ、ギグエコノミーの現状なのだ。

現在、Nippy は米州開発銀行(IDB)やその他の国際機関とも協力し、ギグエコノミーへの理解を深めている。

データはギグエコノミーを理解するのに役立つだけでなく、政府がこのセクターをよりよく監視するのにも役立つ。(Amondaray 氏)

事業を Uber 化、100都市への拡大を目指す

Nippy を起業する前、Amondaray 氏は弁護士だったが、Uber のドライバーだった Luis Sequea 氏の話を聞いて起業を決意した。

Sequea 氏はベネズエラ人で、家族を置いてアルゼンチンに移住してきた。Amondaray 氏は、ギグエコノミーが移民や柔軟な仕事を求める人々に提供する機会を認識する一方で、その限界もよく理解していた。

娘と妻を手放すことができない中で、ギグエコノミーの存在により、自分にできることがあることに気づいたんだ。(Sequea 氏)

当初、Nippy はラテンアメリカの移民のためのジョブバンクだったが、Amondaray 氏は、仕事を探している移民が多過ぎること、多くの企業が移民にほとんど門戸を閉ざしていることに気づき、このビジネスモデルはどう考えてもスケールしないと考え、ギグワーカーのための福利厚生・休憩所に姿を変えた。Nippy は今後、100以上の都市に拡大する予定だ。

今では、配達員はスマートフォンの充電を待つ間、Nippy のセンターで他の配達員とコーヒーを飲みながらおしゃべりをする「安全な場所」を見つけることができた。(Trejo 氏)

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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