非日常空間でビジネスと癒やしを融合、Island and officeが熱海にオフサイト施設をオープン

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Island and office の皆さん。須磨一清氏(中央左)と柏木彩氏(中央右)が共同代表取締役を務める。
Image credit: Island and office

大企業やスタートアップなどのオフサイト施設を展開する Island and office は17日、同社にとって2拠点目となる「I&O熱海」を開設した。I&O熱海は熱海駅からタクシーで5分程度の丘陵地に位置し、部屋からは相模湾や初島、天気の良いときには伊豆大島を眺めることができる。オープン前日となった16日には、東京や地元・静岡から数十名ほどの関係者が招かれ、新施設の披露を兼ねたパーティーが開催された。

Island and office は、徳島・神山の神山まるごと高専や Sansan 神山ラボを設計したことで知られる建築家の須磨一清氏と、以前マネーフォワードで7年余りにわたり広報部長を務めた柏木彩氏が共同で代表取締役を務める。2021年5月、同社初となるオフサイト施設を八丈島に開設した。コロナ禍を経て働き方の多様化が進む中で、当初の企業向けサテライトオフィスとしての位置付けから、都会の喧騒を離れて、レクリエーションを取り入れながら合宿ミーティングなどができるオフサイト施設へと舵を切った。

Image credit: Island and office

企業は一定期間を利用・宿泊できる権利を買い取ることで、その日数分を自社の社員や関係者のオフサイトのために施設利用できる。これまでに事業会社では、ミクシィ(東証:2121)、ウイングアーク1st(東証:4432)、エッグフォワード、PKSHA Technology(東証:3993)などが、部署単位でのオフサイト活動などに利用、また、VC ではインキュベイトファンドや DNX Ventures が自社の合宿や、投資先スタートアップにオフサイト機会として無償提供していると事例があるという。

ホテルにはない価値を提供

大都市を離れてオフサイトをするには、郊外や地方都市のホテルでも間に合いそうな気がする。しかし、ホテルは基本的には宿泊・休憩することを第一義に設計された施設だ。稼働率を上げ、清掃作業を効率化する観点から、多くのホテルではチェックインは昼下がり以降、チェックアウトは午前中に設定されていることが多いが、これは朝一番で現地に入ってミーティングに励み、午後や夜はむしろ付近を散策するなどレクリエーションを過ごしたい、といったオフサイトのニーズには合致しにくい。

16日夜には、お披露目を兼ねたパーティーが開かれた。
Image credit: Masaru Ikeda

喧騒や誘惑から途絶された空間で、特別に扱われていると感じさせる環境が、参加者には良い影響を与えるのだという。そういった環境は、往々にして生活をする観点から考えると不便なこともあるが、I&O 熱海では、付近の複数の飲食店、八百屋、コンビニなどでの代行購入およびデリバリサービスなどと提携し、いながらにして美食と非日常体験を味わえる環境を実現した。熱海にいながら温泉街とは全く違った環境が味わえる一方、夜であれば、徒歩で15分くらい山を下りれば、熱海のスナック街に繰り出すことも可能だ。

I&O 熱海には、言うまでもなく、起業家や投資家に大人気のサウナもある。このサウナの設計にあたっては、サウナー界で有名な「軽井沢サウナ KASA(ペンションラブラドール)」のオーナーが協力しているという。そのほか、滞在中にはオプションで、オランダで有名な Wim Hof Method によるアイスバス、茶道家・田中宗哲氏と提携し、茶道とビジネスを掛け合わせた「Role Rebrew Program」などのオリジナルコンテンツを楽しむこともできる。

社員をエンゲージする手段の変化

サウナは110℃に設定されていた。オリジナルコンテンツ「Thermal Teamwork」もここで提供される。
Image credit: Masaru Ikeda

産業界全体で言えば、オフサイトを実施している企業はまだまだマイノリティだろう。統計にもよるが、日本国内には約400万社の企業があり、そのうちの約9割が従業員10人未満だ。組織が小さいということは売り上げも小さいことが多く、実業に直結すること以外に経費を使いにくいという事情もあるだろうし、組織が小さいゆえに組織を積極的にエンゲージしようとするモチベーションは働きにくいかもしれない。しかし、小さい組織ほど少人数でも辞職者が出た時のインパクトは大きく、そのリカバリには大きな力を要する。

柏木氏によれば、日本においては、1980年代は社員旅行型、1990年代は社員研修型、2000年代は合宿型と、それぞれ時代の変遷に応じて、企業の経営者は適切とされる社員エンゲージメントを模索してきた。リモートワークや分散型の働き方が状態した今だからこそ、リーターと社員、社員同士の関係性を深めたり修復したりする上で、オフサイト施設は「まさにスポーツジムみたいな感覚(柏木氏)」で、最高の飛び道具として機能するのだという。

パーティーでは、茶道家の田中宗哲氏による「Role Rebrew Program」の体験会が開催されていた。通常は屋外で実施するが、この日は風が強かったため屋内になったとのこと。(画像の一部を加工しています)
Image credit: Masaru Ikeda

この分野では、日本人起業家がシリコンバレーで起業した事例として、オフサイトをアレンジしてくれる SaaS 「Retreat」などのスタートアップが存在する。Island and office では今後、企業の経営陣、各部署、人事担当部門などへの営業を強化するほか、企業に対して社員研修や合宿を企画・提案する組織などと連携し利用権の販売を促進、I&O 八丈島や I&O 熱海を利用するユーザを増やしていくものとみられる。

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