寺田倉庫、東京・天王洲にスタートアップハブを開設——シードスタートアップ最大10社を無償支援

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Image credit: Warehouse Terrada

東京・品川区を拠点とする寺田倉庫は17日、天王洲エリアを新たなスタートアップハブにする「Isle of Creation TENNOZ」プロジェクトを発表した。具体的には、エリア内の空室オフィスを活用し、シェアオフィスやコワーキングスペースを設置する。さらに、スタートアップのニーズに合わせたサービスを導入することで、利便性の高い起業環境を生みだす。都心の商業中心地の喧騒からは距離を置きつつ、新幹線が発着する品川駅や羽田空港に近く、交通の便が確保されていることが売りの一つだ。

Isle of Creation TENNOZ の第一弾として、寺田倉庫では、同社が所有する倉庫をリノベーションしたインキュベーション施設「Creation Camp TENNOZ」に、シードスタートアップを最大10社無償で受け入れる。採択されたスタートアップには、2年間無償で利用できるオフィス空間に加え、寺田倉庫から1社あたり1,000万円の出資を受けられるほか、投資家や事業会社のメンター陣からのアドバイス、各種勉強会の提供などを通じて総合的な支援を講じる。

1年毎に10チームが入居するインキュベーションスペース(工事中)。最大2年間入居できるので、同時に最大20チームが入居することになる。
Image credit: Masaru Ikeda

応募資格は、公序良俗に反しない限り業種・技術分野は問わず、会社設立から2年以内で創業メンバーが2~5人程度の規模のスタートアップが対象。5月31日までに公募を行い、書類選考と対面面接を経た上で、7月末から8月初旬にかけて事業の将来性や実現可能性、チームの熱意などを基準に最終選考を実施する。

プロジェクトの運営には、天王洲に本社を置き、寺田倉庫の施設内で2018年から「JAL Innovation Lab」を展開する日本航空(東証:9201)のほか、天王洲にインキュベーションオフィス「EZOHUB」(札幌)の東京拠点「EZOHUB TOKYO」を5月に開設するサツドラホールディングス(東証:3544)、KANAMEL(旧 AOI TYO Holdings)、コクヨ(東証:7984)、サムライインキュベート(2019年に六本木に移転するまでは天王洲にあった)、New Commerce Ventures、フォースタートアップス(東証:7089)が協力する。

インキュベーションオフィスの備品やレイアウトは、パートナーであるコクヨが協力・提供している。
Image credit: Masaru Ikeda

寺田倉庫は2022年に IPO したファッションサブスク「airCloset」の初期投資家として知られる。これまでに、F Ventures などのファンド、荷物収納サービス「Sumally Pocket(サマリーポケット)」を運営するサマリー、アウトドア情報の検索サービス「hinata」を提供する vivit などにも出資しているほか、自らも個人がどこからでも自分の倉庫が持てるサービス「MINIKURA」を展開している。

寺田倉庫では、天王洲エリア全体でスタートアップが集まり、働きやすい環境を整備することで、「ビジネスイノベーションの拠点」としての地位を確立したいと考えているという。コロナ禍以降、WFH(ワーク・フロム・ホーム)が一定程度広まったことでオフィス需要が下がり、天王洲アイルを含む東京のウォーターフロントではオフィス空室率が高止まりしている。こうしたエリアに新たな需要を開拓しようという狙いもあるようだ。

天王洲は東京・品川区に位置するが、Isle of Creation TENNOZ は「五反田バレー」などを展開する品川区の新たなまちづくり指針とも合致している。区は天王洲地区の今後10年間の目標として、「ビジネスイノベーションの拠点化」を掲げ、一帯の土地利用の転換を後押ししようとしている。人口減少やデジタル化の波に直面する東京でも、未来に向けた新しいモデルを生み出そうとしている。

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