「ONIGIRI Chain」で食のデータを共有ーーSARAH はなぜ Web3 に参入したのか/SARAH 酒井 × ACV 宮本明佳・青山奈津美【ACVポッドキャスト】

本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容をテキストにまとめて掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ (ACV)がスタートアップと手を取り合い、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャスト・シリーズです。旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

今回のゲストには、グルメコミュニティ「SARAH」を展開する SARAH 取締役 CSO で共同創業者の酒井勇也さんにご登場いただきます。同社の Web3 を活用したグルメサービスについて現在のサービス内容や、なぜ Web3 に参入しようと思ったのか、今後の展望などについて詳しくお話いただきました。

酒井さんは、自社のサービスを通じて「世の中においしい!を増やす」というミッションを掲げており、そのために Web3 の技術を積極的に取り入れていこうとしています。インタビューでは、その取り組みの背景にある思いや、具体的なサービス設計についての考え方なども伺うことができました。

「どんな麻婆豆腐が流行っているか」がわかる

SARAHウェブサイトより

SARAH は、2014年12月に創業したグルメサービスを提供している会社です。「おいしい!を増やす」というミッションを掲げ、主に2つの事業を展開しています。ひとつは「SARAH」というグルメアプリの運営、そしてもうひとつが「FoodDataBank」という食のビッグデータアナリティクスサービスの提供です。

SARAH は、飲食店のメニューに掲載されている一品一品の口コミを集めるアプリで現在、月間200万人に利用されており、100万件以上の口コミデータが集まっているそうです。ユーザーは自分の食べた料理の写真や感想を投稿することで、他のユーザーと情報を共有することができます。さらに、コアなユーザー同士のコミュニティも形成されており、オフ会なども開かれているとのことです。

一方の「FoodDataBank」は、SARAH で集めた膨大な口コミデータを食品メーカーなどに提供し、商品開発などに役立ててもらうサービスです。単なる口コミの数だけでなく、どのような属性の人がどういった感想を持っているのかという、きめ細やかな分析が可能だそうです。例えば、ある料理が「30代女性に好まれている」「ヘルシー志向の人に支持されている」といった具合です。

こうしたデータは、食品メーカーの商品開発だけでなく、飲食店のメニュー開発などにも役立てられているとのことでした。例えば麻婆豆腐が流行ってるとわかったとき、さらに深掘りしてどのような麻婆豆腐が流行ってるのか、そうした解像度の高い情報を口コミデータを分析することでわかるようにしているのだとか。

Web3に参入した理由

発行するUMEトークン(SARAHウェブサイトより)

SARAH ではコロナ禍の影響もあり、ユーザー同士の交流したいというニーズの高まりを受けて、昨年末に Discord サーバーを立ち上げました。もともとユーザーとの交流は大切にしていたそうで、リアルなオフ会なども開催していたそうです。しかし、コロナ禍でそうした活動が制限される中、オンライン上でのコミュニティづくりに乗り出したのだとか。

Discord サーバーを立ち上げてみると、ユーザー同士で自主的にオフ会を開いたり、お店を紹介し合ったりする動きが出てきました。さらには、新しいお店の情報をプラットフォームに登録する作業をユーザー自ら買って出てくれるようになったそうです。わずか100人のコミュニティから、半年で1.2万枚ものメニュー写真が集まったそうです。

ーーDiscord サーバー内の盛り上がりを見てどう感じましたか?

「ユーザーが自律分散的に考えて勝手に動いてくれてると思ったんですよ。むちゃくちゃいいなと思って、これをもっとこう促進できないかっていうところで、行動を促進したり、価値を計測してあげる手段としてトークンが相性いいんじゃないかなと」。

この動きを見た酒井さんは、Web3 の仕組みを活用することで、ユーザーのこうした自律的な行動をさらに促進できるのではないかと考えました。そこで、ユーザーの投稿などの行動に対してトークンを付与する「UMEトークン」を発行。

ユーザーのモチベーションを高め、さらなる自律的な活動を促そうと考えたのです。今後は、ユーザーの投稿に対して「UMEトークン」を付与したり、飲食店の「NOREN NFT」を発行したりすることで、ユーザーと飲食店の相互のインセンティブ設計を行っていく予定だと酒井さんは話します。

ちなみに「NOREN NFT」は、ある飲食店の常連客であることを証明するような NFT です。来店回数などに応じてランク分けがされており、上位ランクの NFT ほどレアリティが高くなるような設計になっているそうです。将来的には、この NFT をベースに、飲食店がユーザーに特別な特典を提供したり、ユーザー同士で売買したりできるようになるかもしれないとのこと。酒井さんはこうしたツールを使って新たな世界を作りたいと次のように語ります。

「常連さんを表現する手法って別にウェブでもあったし、もはやウェブとか関係なくポイントカードというものでも成立してたんですよね。ただ、ポイントカードにしろ Web2 にしろ、誰がどこのお店に通って常連さんですという情報はお店とお客さんでしか共有されてなかったんです。この情報をブロックチェーン上にパブリックにすることによって僕はもっと価値が生まれるんじゃないかなと思ってます。

例えばあるカレー屋さんがおいしいから100回ぐらい行ってエバンジェリストの NFT を持ったとするじゃないですか。それを持ってるってことは、むちゃくちゃカレー好きということになる。じゃあカレーを作ってる食品メーカーさんが、そんなにカレーが好きなんだったらちょっとうちの商品、試してみてくださいよと何か送るだとか、新商品の限定イベントやるので、よかったら来てくれませんかみたいな感じでいろんな人がユーティリティを提供できるんじゃないかなと思っています」。

また、自社で「ONIGIRI Chain」というブロックチェーンを立ち上げ、食に関するデータを業界全体で共有できるプラットフォームの構築も目指しているそうです。これまでは、個社でデータを抱え込むのが当たり前でしたが、データをオープンに共有し合うことで、業界全体の発展につなげられるのではないかというのが酒井さんの考えです。

例えば、食に関するデータは、医療や金融など他の業界にも活用できる可能性を秘めています。20年後、30年後の未来に、パーソナルデータと組み合わせて画期的なサービスが生まれるかもしれません。「ONIGIRI Chain」では、そうした未来も見据えてデータ基盤を構築していくのだそうです。

ーー他社とのデータ連携において、ブロックチェーンを使うメリットは何でしょうか?

「各社各サービスでやっぱりデータを共通利用できるプラットフォームは必要だなと思いました。今まで API 連携みたいな形で契約書を交わしてといった感じのやり取りはあったんですけど、そうなるとどうしてもデータの規格が違うだとか、開発しないといけないとかでなかなか進まなかった。そもそもこれこそブロックチェーンでやるべきことなんじゃないかと思って我々が作りました。(中略)日本の強みとしても、いろんな食品メーカーさんや事業会社さんと一緒に ONIGIRI Chain を作っていきたいなと思っています」。

インタビューを終え、Web3 の力を活用しながら、ユーザーと飲食店双方にとってのメリットを生み出し、日本の食文化を世界に広めていこうとする酒井さんの展望に、大きな可能性を感じました。「SARAH」や「FoodDataBank」、そして「ONIGIRI Chain」の取り組みは、まだ始まったばかりですが、日本の「食」の未来を切り拓く一歩となることを期待したいと思います。

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