一皿、一皿に愛情と情熱を込めて。料理店として未来の食文化へ貢献し、次の担い手の手本となるべく高みを目指す。ミシュランガイド東京1ツ星6年連続獲得店のサステナブルで先進的な取り組みとは

ジビエフランス料理レストラン LATUREは、料理の質を追求するだけでなく、
数あるさまざまな料理のテーマから
フランス料理の中のジビエ、自家栽培というテーマを
採用し自然からの恩恵や命の大切さの啓蒙、様々な社会課題に取り組む。
未来の担い手となる若い世代に料理の楽しさ、
飲食業はやりがいのある素晴らしい職業だとをいうことを伝えるべく
子ども向け料理教室を定期的にかかさず行っている。

2024年12月、6年連続ミシュランガイド東京1ツ星を6年連続獲得。
また、2020年からサステナビリティに積極的に取り組むレストランをハイライトする グリーンスターも4年連続獲得。 LATUREが現在に至るまで、根底にある料理に対するその情熱や姿勢、 多く語られていなかった背景を室田オーナーシェフが語る。

LATURE オーナーシェフ室田 拓人の、

輝かしい受賞歴の背景に隠された探究心と信念

室田オーナーシェフは武蔵野調理師専門学校卒業後、複数のレストランを経て、
2009年に狩猟免許を取得。2010年より「deco」のシェフに就任。

キャリアスタート当初からフランス料理の真髄とは何かと模索。
おいしい料理を追求していく中で、廃棄される食材に対し、疑問を持ち続けていた。
その過程でジビエというテーマに辿り着き、
「数多くの食材を扱う料理人、レストランの責務として、命あるものを美味しく無駄なく料理へ昇華させ、美味しく食べることが命への償い、そして命や自然への感謝をわすれない。」
この考え方が次第に大きくなっていく。

フランス料理は先進的で美しい印象がある一方で、動物の骨、野菜や果物の皮・種までも余すことなく使い、活用できる技法があることもフランス料理の特徴。
その魅力や特長を最大限に活かそうとフランス料理の中でも”贅沢なごちそう”であるジビエを活用することを選択する。

2016年8月にLATURE(ラチュレ)を独立開業。
2016年12月、フランス発の美食本『Gault&Millau(ゴーエーミヨ)』にて
明日のグランシェフ賞を受賞。
2017年11月には『ミシュランガイド東京2018』にて一ツ星を獲得、
それ以降毎年一ツ星に輝いている。
輝かしい受賞歴の背景には人には見えない探究心と信念が隠されている。

ゼロからのスタート。料理に打ち込んだ20代。

留学せず現場で技術を身に着けた体験、

自ら足を運んで食べた体験を通して

料理人を目指す若者に新しい可能性を伝えたい

「料理人は他の仕事とは少し違うかもしれません。仕事をするというより修行する感覚が強い。 朝早い時間から夜中までフルで働くので、毎日クタクタでシェフや先輩達について行くので毎日いっぱいいっぱいでした。」
仕事をしていく中で、ただ業務を遂行するのではなく、
自分の料理をみつける旅のようなことを続けていたという。

「料理を作る事も好きですが、食べるのも大好きです。色々なレストランに食べに行って勉強していました。その時の記憶が今でも新しい料理を考える時に生かされていると思います。レストランの料理はシェフの人生の写し絵だと思ってます。
今まで生きてきた中での経験や感覚や想いが一皿に込められていると思います。
料理を作るだけでなく色々な体験をした方が奥行きのある料理が作れると思っています。

厨房は閉鎖的なので色々なストレスが行き交います。
自分の作ったまかない料理を食べないで、目の前で捨てられた事もありましたし、「おまえなんて料理人向いてないから辞めろ!」と毎日言われていたこともあります。 もちろん僕の時代は張り手もゲンコツもありましたので、毎日が戦場に行ってる感覚で、そのおかげでメンタルは凄く強くなりました(笑)。」

留学をする機会を与えられなくても、有名店のシェフやスーシェフ(副料理長の意)の経験を踏まなくても、料理創作への情熱、料理への探究心を持ち、追求し続ければミシュラン獲得店、さらなる高みも目指せるということ、料理人を目指すこれからの若者に多くの可能性を示したいと室田オーナーシェフは強く語る。

来客が全くない日も。

ジビエに出会えたことが他店との差別化につながった

来客が全くない日々、集客のためのプライドを捨てた格安メニューの提供、同世代シェフの活躍…現在のLATUREからでは想像もできない、数多くの苦難も経験。
LATUREオープン前には資金繰りにも苦労した。

「僕は裕福な家庭ではなかったですし、お給料も少なかったのでお店をやりたい気持ちは強ま一方、貯金は全然ありませんでした。開店当初の運転資金もほとんどなく、もしオープンしてお客様が1ヶ月全く来店していただけなく、
赤字だったら即閉店という状況からスタートしました。」
そんな状況下の中でも料理の質、独創性を高めることはやめなかった。

「私のキャリアで一番こだわっていることは唯一無似です。東京は世界で一番飲食店があると言われ激戦区の一つだと考えています。他のお店と同じ事をやってもお客さんは来ません。 真似事ではお客さんに簡単に見抜かれます。 その中でジビエに出会えたことはとても良かったと感じていますし、その出会いに感謝しています。」

キャリアスタート時から、料理に対しサステナビリティというキーワードに関心を持ちながら、ジビエに出会えたことでより可能性が広がった。

ネット上のネガティブな書き込みも真摯に受け止め、糧にして次に活かす。

「好きで料理をしているので睡眠時間が削られなかろうが、休みがなかろうが好きでやってるので全く努力とは思っていません。美味しい料理を作るうえで、当たり前のことを当たり前にやってるだけです。
料理し、美味しく召し上がっていただくことがとても楽しいです。」

ショックな事を言われる(ネット上に投稿されるも含む)ことは日常茶飯事のようだ。 特にSNSやネット上の口コミが当たり前この時代、本当にお店に来ているかどうかわからないようなユーザー、予想だにしていなかったコメントもネットで書かれることもある。

「粗探しのイタチごっこのように感じることもあります。私も普通の人間ですから、傷つくことも当然あります。もちろん自分がそうだなと思った事は改善します。
常にアップデートです。」 と前向きに語る。

自分で狩猟し料理するということは料理人にとって究極の仕事

LATUREにとってジビエは自然への感謝の表現、よりよいサステナブルな仕組みの構築のためのプロセスの一部で手法の一つであり、ジビエをメインのテーマとして掲げてはいないと語る。

「近年、猪や熊や鹿が人里に出没し、あたかも猪や熊や鹿が悪いように報道され続けている中、元をたどれば私たち人間が彼らの住んでいる森を自分たちの営利目的のために破壊したからだということに気がつくことがでます。 ジビエは同じ種類でも育った環境によってまったく違う肉質になります。

鴨であれば田んぼの近くで仕留めれば米を食べており肉質は甘味がありまろやかになり、山で仕留めれば木の実を食べており肉を焼くとナッツのような香ばしい香りがする。海の近くで仕留めれば小魚を食べておりアンチョビの香りがする。必然的に獲れる場所によって調理方法は変わります。

ただ彼らを撃ち殺し捨ててしまうのではなく、美味しく調理し食べてあげることが私たちのできる罪滅ぼしの1つなのではないかと考えており、自分で狩猟をし獲物を捕まえて料理するということはまさに料理人にとって究極の仕事なのではないでしょうか。」

LATUREの質の高い料理の後ろ盾である素晴らしい生産者たち。

より質の高いサステナブルな料理店を目指して

素晴らしい生産者たちがLATUREの質の高い料理の後ろ盾となっおり、彼らなしでは料理の質が成立しないという。
「雨の日も風が強い日も個性のある野菜を育ててくれる農家さん。肉にストレスを与えず少しでも美味しくなるように餌を試行錯誤して真剣に向き合ってくれる酪農家さん。旬のものをより新鮮に届けようと締め方を工夫して毎日気にかけてくれる漁師さん。急な斜面を登り危険にもかえりみず珍しくて美味しいキノコや野草、山菜などをくれる山人さん。
LATUREは情熱と愛情のある生産者の皆様がいないと成り立ちません。
私どもはその魂の食材を使い料理します。」

LATUREでは室田オーナーシェフの故郷、千葉の自社農園にてLATUREの力強い料理に負けない野菜、有機農法の身体に優しい野菜を研究している。
また、現在の日本の農業の状況では形が悪い野菜、少しでも傷がある野菜は市場に出せず全て廃棄されており、そのような野菜も捨てる事なく料理に昇華させ、お客様に喜んでもらえるよう日々努力を続けている。

旬の食材との貴重な出会いを大切に。

その瞬間でしか表現できない特別な一皿を追求

「LATUREでは日々移り変わる世の中をとおして、
お客様に最高のおもてなしを提供できるよう、スタッフ一同素材への研究を行い、
一皿への情熱と愛情をかけ提供します。」

日本ならではの四季折々の旬な食材、特別な瞬間に出会うことができ、
LATUREはその貴重な出会いを大切にし、
その食材、その瞬間でしか表現できない特別な一皿を追求。
LATUREでは毎年特別なスペシャリテを創作している。

「天然鮎の細かいフワッとした身質と鮎の香りが季節感を感じさせてくれ、丁寧に卸してグリエした鮎に身と川苔のような香りのトリュフをイズニーの発酵バターを折り込んだ自家製パイ生地で包み焼き上げる。そして鮎の骨から取った出汁のバターソース、ほろ苦い鮎肝のリエットを添えたシンプルな構成。」

2023年は鮎の形でパイを創作

社内で意見交換を行い、

若手が活躍・挑戦できる環境を作る

LATURE料理人の松島シェフは23歳とLATUREの中では若手に入るが、
2023年11月、都内で開催されたパテアンクルートのアジア大会で入賞した。

「有名シェフたちに囲まれ、生まれてから今までかつてないほどの緊張の中、
やり遂げることができました。室田は『世界1位になるまで挑戦させる』
といっていますが、私自身も1位をとるまで諦めません。」
と松島シェフは語る。

LATUEREでは室田オーナーシェフの指導の元、たくさんの若手料理人が活躍。
メニュー開発についても定期的に社内で意見交換を行っており、
若手が活躍・挑戦できる環境があり、
第一線で日々の業務を遂行している。

◆店舗以外でも提供できる”おもてなし”

◆新しい取り組みとしてパン屋「monica」を併設、

◆ネット販売でギフト用の料理にも挑戦

LATUREでは店舗以外でも提供できる”おもてなし”の研究にも取り組んでいる。
その一つが店舗に併設されたパン屋「monica」だ。

LATUREの技術が詰まった料理を乗せた”ごちそうパン”、パティシエのデザートのように綺麗な”スイーツパン”。 他にはない新しいパンの開発に取り組んでいる。

「パンが日本に本格的に普及して約150年。
日本ではヨーロッパにはない進化を遂げてきました。
日本の食文化や素材を大切に培った技術を使い想いを込めてお作り致します。」

さらには贈答用の”おもてなし”に対応すべく、
家庭でたのしめるLATUREの料理、プレミアムなバターサンドを展開。
料理の提供方法を店舗だけでなく、販売、そしてネット通販、LATUREは活動の場を広げ、新しい料理の可能性を探っている。

左: monicaのパン 中: 家庭用のLATUREの料理 右: レーズンバターサンド

◆未来の食文化を次世代に。

◆子ども食堂を通じて食サステナブルの重要性を伝える

「未来を担う子供達に食の素晴らしさを知ってもらいたい。
そして、わたし達人間の手によって食が危機にさらされている事も知ってもらいたい。
このままでは日本をはじめ世界の素晴らしい食文化は衰退してしまいます。わたし達と一緒に料理を作ることによって食サスティナブルの重要性を知ってもらい、
なにより将来料理人になりたい !!
と思ってくれる子が増えてくれたら本当に嬉しいです。」

飲食業界での人材不足が深刻化している昨今、 未来の食文化につながるよう、飲食業がやりがいのある素晴らしい職業で、より有望な業界に昇華できるよう私たちができる私たちの小さな活動からでも繋げていけたら。」
と小さなことからでも食の文化のために貢献していきたい、と強く語る。

LATURE主催 子ども食堂の様子