重工業の製造現場DX・SaaS「Proceedクラウド」運営、ANRIから約1億円をシード調達——2月に正式版をローンチへ

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エンジニアの綿引泉氏、代表取締役の池実氏、エンジニアの糸川和宏氏
Image credit: Tokyo Factory

重工業の製造現場向け SaaS「Proceed クラウド」を開発・提供する東京ファクトリーは、シードラウンドで ANRI から約1億円を調達したことを明らかにした。東京ファクトリーは、川崎重工業でボイラー生産などに携わった池実氏(現・代表取締役)が、ボストン・コンサルティング・グループ勤務を経て2020年4月に設立。Proceed クラウドを開発し、2020年10月からβ版を提供している。

池氏によれば、数ある製造業の中でも、プロセス系製造業(石油・医薬品・飲料や食品)はデジタルツインや機器の故障予知、ライン生産される輸送機器・電子系製造業(自動車・家電・工作機械)は生産ラインの自動化や需要予測に基づいた製販連携や 3D プリントなどそれぞれ自動化(DX 化)が進んでいるが、これらと対照的に、セル生産の重工業(プラント機器・船舶・大型構造物)は DX の試みがまだ定まっておらず、労働集約型の業務形態は脱せていないという。

プロセス系やライン生産の製造業では、プロセス毎に作業内容が設計されているため、設備の IoT 化による DX を展開しやすいが、セル生産型の重工業(ライン生産と対照的に、一箇所に留まって作業員が複数のプロセスを作業する形態)ではプロセス自動化が難しいため、むしろ人間(専門職や職人)の作業をデジタル化するアプローチをとったほうが DX に有効だという。

「Proceed クラウド」
Image credit: Tokyo Factory

重工業の製造現場では、作業の担当者はそのプロセスを写真撮影し記録していることが多い。これらの写真は担当者がローカルのパソコンに保存していることが多いそうだが、Proceed クラウドにアップロードしてもらうことで、作業の進行状況をチーム全体で把握することが容易になる。作業を外部業者に委託している場合でも、発注側は委託先の作業の進捗状況を容易に把握できるようになる。電話やメールで確認する手間が軽減され、必要に応じて進捗のリカバリ対応も取りやすくなる。

労働人口の高齢化に悩む製造現場では、技能伝承という文脈でも Proceed クラウドは威力を発揮する。第一線の職人にとっては、品質を上げるためのコツや技を言語化し、後進のためにマニュアル化するような作業は対応が難しい。後進にとっても、マニュアルに依存した情報だと座学的な〝勉強〟に留まってしまう。Proceed クラウドを使えば、プロセス毎に実際の製造現場の生の情報が目に見える形で記録されているため、より実務面での作業に生かせる可能性が高まる。

東京ファクトリーでは、Prceed クラウドの対象となる企業は日本国内で7,000社以上あると見ている。2月にはβ版の利用を通して得たフィードバックをもとに機能改善を行い、正式版の提供を開始する予定。同社では今回調達した資金を使って、顧客サポートのための社内体制強化のために行うとしている。

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