人事部門を企業の“競争優位の源泉”にするための3つのアクション

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<目次>
1.人事部門のケイパビリティの5つのレベル
2.組織に求められる次世代のCHROの役割とは
3.新たな人事のキャリアパス
4.人事部門をバリューアップさせる3つのアクション
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人事部門は、企業の資本となる「人材」を扱う重要なポジションです。しかし、「人事部門は事務管理を行うような裏方」と考える人が少なくなく、人事部門への評価は辛口気味だといいます。

どのようにすれば、人事部門が企業の“競争優位の源泉”へと進化できるのでしょうか。株式会社ITSUDATSUの代表取締役の黒澤伶氏に、人事部門をバリューアップさせるためのアクションについてご寄稿いただきました。

「人的資本経営(人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方)」が注目されている近年。

人材に関する注目度がますます高まる中で、企業の中でも、人的資本に関する課題が認識され始めている。

デジタル化や脱炭素化、コロナ禍における人々の意識の変化など、経営戦略と人材戦略の連動を難しくする経営環境の変化が顕在化するにつれ、非財務情報の中核に位置する「人的資本」が、実際の経営でも課題としての重みを増してきている。

しかし、「人が資本だ」とはわかりつつも、今なお多くの企業では、「人事部門は労務や福利厚生や入社オリエンテーションなどの事務管理を行うような裏方だ」と考えている経営陣や社員が多い。

もちろん、事務管理は必要だが、組織に大きな付加価値をもたらすことは少ない。

HR総研により「人事の課題とキャリアに関するアンケート調査」でも人事部門のパフォーマンスについて質問したところ、「50~70点未満」(39%)がトップで、「30~50点未満」(34%)が多く、「30点未満」が11%も存在する。人事部門の評価はやはり辛口なのが現状だ。

どのようにすれば、人事部門が企業の競争優位の源泉へと進化できるのだろうか。本記事ではどんな手段とロードマップがあるのか考えてみたい。

1.人事部門のケイパビリティの5つのレベル
人事部門が管理部門ではなく、価値提供部門として成長するためには、具体的にはどのようなロードマップがあるのだろうか。
私は、大きく人事部門を5つのケイパビリティ(企業の組織的能力、強み)のレベルで分けて考えている。

1. 目の前の業務を回すのが精一杯で、現場の御用聞きになっている

多くの中小企業の人事部門はこの段階ではないだろうか。

この段階の人事はノンコア業務(利益に直接つながらない業務)とコア業務(利益に直結する業務)を切り分けることができず、特に採用の日程調整等で1日が消化されることが多い。

当然ながら、現場の採用ニーズに応えることが難しく、すべて現場からの提案ベースで人事が動くことが多いため、現場からの信頼度も当然ながら低い状態にある。

2.滞りなく業務を進めているが「採用部」止まり

レベル2の段階は、目の前の定型業務を滞りなく進めている状態。いわば人事のインフラを回している段階だと言える。

しかし、「人事部」ではなく、「採用部」「労務部」「教育部」といった特定の人事ファンクションのみを行っていることが多い。

例えば「採用」に焦点を当てた場合、採用媒体や転職エージェントなど、採用費用を投下したフロー型の採用に依存していることが多く、自社ならではの採用ブランディングを中心とした創意工夫が欠けている段階とも言える。

3.課題解決型「人事部」

レベル3の段階は「人事領域の広範囲を自社内で抱えており、なおかつ潤沢な人事リソースが整っている企業」に多い。

こうした企業は、課題解決型の人事機能をもち、1~2年程度のスパンで現場のニーズを先回りし、採用・育成・評価・配置・人材開発・組織開発などの一貫性のある施策を展開できている。

この段階になると、人事部門全体がプレゼンス(存在感、影響力)をもち始め、現場が人事に協力的になり、同時に社内からも注目も浴びるようになる。

4.経営と人事の一体化、「人事部」から「戦略人事」へ

レベル4の段階は、「CHRO(Chief Human Resource Officer:最高人事責任者)」が設置されることが多く、より人事に戦略性が増すことが多い。

この段階は、経営戦略と人材戦略を連動させるため、全社的な経営的課題及び組織・人材的課題を経営トップとCHROを中心に対話を深め、課題を抽出し、両戦略を連動させていることが大きな特徴である。

人材に関する取り組みは、息の長いものとなる。その意味でも、5年先の組織図から逆算した人材戦略の提示と優先順位を付け、その効果を見極めて改善を重ねていく絶え間ない試行錯誤が求められる。

この試行錯誤の先に、変数が多い組織・人材領域に再現性が出てくるようになるのだ。

5.強固なカルチャーが醸成され、人が「育つ」磁場になる

レベル5の段階になると、その組織にしか滲み出せない強力なカルチャーが形成され、そのカルチャーが人を育て、なおかつ、人を引き寄せるようになる。

この強力なカルチャーは、部外者の理解をにわかには得られないような「奇怪なルール・哲学・ポリシー」が暗黙知で共有され、組織自体が強烈な個性を生む。やがて、他社が真似できない「模倣不可能な領域」にまで進化するのだ。

この段階は、CHROが設置されていることはもちろんだが、経営陣(特にCEO)が組織・人材ファーストの経営を行なっていることが特徴と言える。

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