「寝具で睡眠の質を高めることで、日本人と日本経済を元気にする!」 「安心・安全・安らぎ」を創造してきた新英産業の機能性寝具事業への挑戦!

新英産業株式会社は1961年設立のウレタンをはじめとするスポンジ・クッション材の製造・加工メーカーです。創業以来、製品の企画開発と製造を通して「安心・安全・安らぎ」を創造してきました。スポンジ・クッション材の総合加工メーカーとして取り扱い分野は広く、産業資材や包装資材、体育館や野球場等のスポーツ施設における防護マット、医療・介護分野の体圧分散製品、保育教具、業務用家具などで使われるクッション材の加工や施工を行っています。創業当初から「世の中に無くて、皆が困っていることがあれば、自分たちで解決しよう」という風土があり、これまでも、ぶつかっても痛くない「ソフト跳び箱」や美容院で洗髪する際の「美容枕」など、今では常識となっているような商品を世に先駆けて開発してきました。
そんな新英産業が、今回「寝具で睡眠の質を高めることで、日本人と日本経済を元気にする」を事業テーマとし、新規事業に挑戦します。このストーリでは代表取締役社長の渡辺が新規事業に取り組む事になった経緯と製品開発にかける熱い思いをお伝えします。

代表取締役社長 渡辺 一正

◆戦略ミスや社員の退職続きによる組織崩壊。赤字スレスレの苦難の時代

以前、私たちには「重要戦略分野」というものがありました。これは自分たちの強みが活かせる分野に注力して業績を伸ばそうという戦略でしたが、数年に亘って注力していても一向にこの分野の業績が伸びません。不審に思った私たちは、市場規模を調べてみる事にしました。市場規模調査は不慣れなため苦労しましたが、なんとか推定してみると、愕然とすることになります。どの分野も非常にニッチな市場で年間6億円から10億円程度。しかも、少なからず地域性があり、遠方の業者が物件を取る事が簡単ではない分野にもかかわらず、私たちは既に5~10%程度ものシェアを持っていたのです。誰も口にはしませんでしたが、皆、心の中で「そりゃ、伸びないはずだ!既に十分大きなシェアを取っている・・・しかし、そうなるとこれから自分たちは何を信じてどう業績を伸ばせばよいのか?・・・」
完全に戦略ミスです。しかし、代替案も見つけられず、ただただ不安にかられるだけでした。それでもその年の決算(2017年5月)は、ここ十年の中で最高益を叩き出していました。
各取引銀行からは「順調ですね!」とお褒め頂くのですが、数年来の戦略ミス挽回の糸口すら見出せない私は「いや、来年の今頃は倒産しているかもしれない」と答えていました。
そんな嫌な予感はすぐに暗雲となって現れます。
2017年7月、体調面の健康不安から営業部長が、家庭の事情で工場長が退職の意向を示してきました。製販の要の2人からの退職希望です。当然慰留はしますが、事情が事情だけに時期を延ばして貰う事程度しか出来ません。仕方なく次なる体制を模索している最中、副工場長(工場長候補)が機械で左手の指を失うという創業以来最大の労働災害事故が発生します。更には、当時のエース営業マンが退職届を出すに至ります。後で分かったことですが、退職届を出した営業部長が、勝手な思い込みで会社に不信感を持ち、エース営業マンを知り合いの大手メーカーに転職させたのです。組織は事実上、体をなさなくなりました。
業績は一気に下がり、年末の賞与は寸志みたいな額になり、社内の雰囲気は最悪!だれがいつ辞めてもおかしくない状況に陥りました。
その後も、私自身が人間ドッグで怪しい影が見つかるなど悪い事が連鎖し2018年5月の決算は売上げこそ前年比約2%ダウンだったものの、税引前利益は約1/60と赤字スレスレにまで落ち込んでしまいました。
予感的中!地獄に落ちた思いでした。

◆挫折からの立ち上がり。再起に向けて行った社内ワークショップで生まれた「寝るだけで痩せるマットレス」というアイデア

度重なる試練に、私は一時うつ状態にまでなりましたが、そのまま倒れてしまう訳にはいきません。1年間の試練は、私に「夢と希望」の重要性を教えてくれたように思います。
「もう一度、会社と従業員に夢と希望を持って貰えるようにしなければならない!」強く決意した私は、外部顧問を招聘し、会社の再起に動き出しました。顧問の勧めで社内の知恵を結集すべく全従業員を集めてワークショップを開きアイデア出しを行いました。活発に議論は行われたのですが、夢物語みたいな話も多く、実現性のあるアイデアはほとんどありませんでした。しかしながら、従業員が選ぶ次にやりたい新規事業に選ばれた「寝るだけで痩せるマットレス」は大きなヒントとなり現在の「機能性寝具CocoSleep事業」が生まれてきたのです。

◆腰痛、肩こりの要因は寝返りの回数。寝返りのしやすい高機能マットレスの開発と市場参入へのジレンマ

調べてみると2013年を機にマットレス市場は大きく伸びており、現在の少子高齢化、介護保険の動向を考えると、高機能なマットレスの需要はまだ伸びそうだという事が分かりました。そこで、何に困っている人が多いのか?を調べてみた所、一番多い悩みが「腰痛」「肩こり」でした。腰痛、肩こりの要因の中でも睡眠中の寝返りの回数が大きな原因の1つという情報を手に入れます。そこで、これまでの知見を基に、寝返りが打ちやすく体圧分散も良い理想的と思えるマットレスを開発し、大手量販店に売り込みを掛けました。
しかしながら、「良いものだという事は分かるが、現在取引のある大手ブランドメーカーとの関係を考えると取り扱う事は難しい。それよりも今注目されているお昼寝枕などは大手ブランドもないし、本当に良いものって何かもよく分からないから、そういったものを開発して貰えると取り扱えると思います。」との返答を頂きました。
「お昼寝枕」ってなんだ?早速、様々なタイプのお昼寝枕を購入し試してみました。しかし、お腹が苦しかったり、首が痛くなったり、寝跡やよだれを気にしなければならないもの、大きくて収納に困るものなど、1つとして良いと思えるものがありませんでした。

◆「世の中に無くて皆が困っている事は自分たちが解決しよう!」デザイン会社とのタッグで新発想のお昼寝枕を開発

昼寝は午後の仕事の効率アップや事故の防止につながることから海外では積極的に推奨されているなど、今後日本でも伸びる可能性のある分野と思われますし、なにより「世の中に無くて、皆が困っている事は自分たちが解決しよう!」という私たちの企業風土にもあっていましたので、挑戦する事になりました。
開発当初は、自分たちの強みを活かすことを重視し、スポンジ・クッション材ありきの開発でしたが、どうしても納得がいくものが作れません。そこで、改めて購入したお昼寝枕に向き合い、なぜ良いものが無いのか?市販されている枕の何が問題なのか?を検討していきました。結果「あごの下で頭を支える」というこれまでにない発想でいく事が決まりました。しかしそうなると、今までの自分たちの知見では事足りません。そこでプロダクトデザインの経験が豊富なデザイン会社を探すことにし、顧問のネットワークから新潟にあるデザイン会社とタッグを組む事にしました。装着時の安定性と収納性の両立など、難問も多く何度も試作を重ね、ようやくこれまでの問題点をすべてクリアした、1サイズで様々な体形の人に対応し、座る場所さえあればいつでもどこでも眠ることができるコンパクトな納得のお昼寝枕「パワーナップピロー」の開発に成功しました。

代表的な試作品

いつでもどこでも座る場所さえあれば仮眠可能なパワーナップピロー

◆苦労した分なんとか事業化したい。事業再構築補助金とクラウドファンディングで新規事業に追い風を

デザイン段階での開発に目途が付いたタイミングで事業再構築補助金の施策が発表されます。ここまでにかなりの開発費用をつぎ込んでいた上に、世界的な新型コロナウイルスの影響で既存事業の業績はかなり厳しく、国の各種支援策を使って何とか事業を回すのが精いっぱいの状況での発表でした。ここまで苦労してきただけに何とか事業化したいという想いから、この補助金に挑戦することにしました。また、さらに開発費用を稼ぎつつ、話題を呼んで新規事業全体のブランド化につなげられないか?という事でクラウドファンディングにも挑戦する事にしました。幸い、事業再構築補助金は無事に採択され、更にクラウドファンディングでも、一時ランキング入りするなど大いに話題となり、結果1000人を超える方々に支援いただき、マスコミ各社様からも取材を受け、多数のネット通販会社様とのお取引も始めることができました。

多くのサポーターに支えられたクラウドファンディング

◆お昼寝市場は小さく事業とは言えない。自分たちが納得できる、価格を抑えた良いマットレスの開発への挑戦

幸運に恵まれたこともあり、なんとか新規事業の第1弾は成功することができました。しかし、日本でのお昼寝市場は残念ながらまだまだ小さく、これだけでは事業になりません。やはり、新規事業は一般のマットレスや枕を販売できるようにならなければ、成功とは言えません。そこで枕とマットレスの開発に改めて取り組みました。枕は女性社員の意見で、清潔さ、頭寒性(通気性)、寝返りサポートの3つの機能を、マットレスは体圧分散性、寝返りサポート、快適さの3つを軸に開発を進めました。結果、元大手通販会社のバイヤーも驚くほど、良い製品が出来たのですが、原価が一般的寝具の3倍ほど掛かってしまった為、いくら頑張っても非常に高い上代設定をせざるを得ない事になってしまいました。一応、自社WEBサイトで販売は始めたものの、無名ブランドがブランド力のある商品よりも高くてはなかなか売れません。商品には絶対的な自信があるので、この商品はフラッグシップモデルとして販売を継続しながらも、今後は、もう少し価格を抑えた、しかし自分たちが納得できる本当に良いマットレスの開発通じて、この新規事業を軌道にのせていきたいと思います。開発にあたって、様々なマットレスを購入しましたが、高反発=硬いというイメージが一般消費者にある事から、実際の高反発ウレタンは比較的軟らかく体圧分散性も良いのですが、硬いだけで高反発を謳ったり、サイトに載せている体圧分散データが明らかにおかしいものなど謳い文句ばかりで粗悪なものも少なからずありました。私たちは素材のプロとして、「寝具で睡眠の質を高めることで、日本人と日本経済を元気にする!」というCocoSleep事業の事業理念実現をめざして今後も挑戦していきます。

自社ECサイト

◆オンラインショップ
座ったまま快適に眠れる枕「パワーナップピロー」オンラインショップ
https://powernappillow.shop/

洗えるぐっすり枕「ラクーン」オンラインショップ
https://cocosleep.jp/raccoon/

睡眠を徹底追及したマットレス「腰肩安眠」オンラインショップ
https://cocosleep.jp/koshikata-anmin/