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家にいたまま抜歯さえしてもらえる在宅歯科治療スタートアップ、インドのMobiDentがプレシリーズAラウンドで資金調達

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ある関節炎を患う高齢女性が虫歯にかかっている。虫歯は時折の歯の痛みだけでなく、関節炎を悪化させる炎症も引き起こしてしまう。だが、彼女は歯医者に行くのを先延ばしにしている。 定期的に綿密な歯のクリーニングを行い、歯垢と歯石を除去しなければならないということは誰もが知っていることだろう。そうしなければ虫歯や歯周病、あるいはそれ以上に悪い事態を招く可能性があるからだ。口腔内の細菌は心臓病や糖尿病、認知症…

Photo credit: MobiDent.
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ある関節炎を患う高齢女性が虫歯にかかっている。虫歯は時折の歯の痛みだけでなく、関節炎を悪化させる炎症も引き起こしてしまう。だが、彼女は歯医者に行くのを先延ばしにしている。

定期的に綿密な歯のクリーニングを行い、歯垢と歯石を除去しなければならないということは誰もが知っていることだろう。そうしなければ虫歯や歯周病、あるいはそれ以上に悪い事態を招く可能性があるからだ。口腔内の細菌は心臓病や糖尿病、認知症といった病気とも関連している。にもかかわらず、いつも何かしらの用事ができ、歯医者に行くのを先延ばしにしがちだ。

こういったことは珍しい話ではない。そこで、インドのある歯科医と起業家が協同してこの問題の解決にあたっている。彼らは歯科医が患者の家を訪問する際に車に積み込むことができる、軽量で折りたたみ可能な歯科用チェアを備えたポータブルデンタルキットを開発した。彼らはこれを「スーツケースの中のデンタルクリニック」と呼んでいる。

このスタートアップ MobiDent は本日(1月5日)、プレシリーズ A ラウンドで、ニューヨークを拠点とする DanGold Investment Corp より非公開額の資金を調達したことを発表した。

設立者の1人はバンガロールで25年間にわたり個人で診療所を営む歯科医師の Devaiah Mapangada 氏だ。共同設立者でCEOを務める Vivek Madappa 氏は3社ものスタートアップを立ち上げたシリアルアントレプレナーである。MobiDent 以外にも大企業を対象にビジネストラベルサービスを提供する Humming Bird を経営している。

デンタルバスから箱に収納できる歯科用チェアへ

Photo credit: Mobident.
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Devaiah 歯科医は、1991年にバンガロールの中心にあるブリゲイドロードに診療所を開業した。彼は Tech in Asia にこう語っている。

その当時から多くの高齢者が住むリッチモンドタウンの住宅地を訪問し、簡単な歯科の処置を行っていました。

その後、2000年から2年間にわたり、スイスで高齢者に特化した口腔ケアについて学んだ。コース終了時、彼を教えたチューリッヒ大学の教授は学んだことをインドで活かすよう強く勧めた。

このことは(時おり日記に書いたことを除けば)ずっと頭の片隅にしまわれたままだった。そして2007年、ある患者が4時間かけて彼の診療所にやって来た。バンガロールにおける交通渋滞は日常の光景になりつつあった。

これをきっかけに、Devaiah 氏は自宅やオフィスにいる人々に歯科治療を届けることについて真剣に考えるようになった。調査を行い、高齢者や多忙な技術者、それに小さな子どもを抱える親たちの間でニーズがあるという確証を得た。

2011年、彼はついに取りかかった。6輪バスを購入すると、その中に道具一式を備えた従来の歯科用チェアを2台設置し、診療所を作り上げた。そして学校やハイテク企業の集まる地域、住宅地へと出向いた。運転手が来なくても自分で運転できるよう、大型車の運転免許まで取得した。

ある時、彼はデンタルバスに関心を示してくれた人が600人もいる巨大なオフィスビルからほどない場所にバスを停めた。だが、やってきたのはたったの12人だった。彼は気付いた。ほとんどの人は、仕事の最中の昼日中に12階から降りてきて、さらに1キロも歩かされたりしたくはないのだ。

そこで、今度は単なる移動式歯科クリニックではなく、持ち運び可能な歯科診療用キットが必要だということになった。そこで1番問題となるのが歯科用の診療チェアだ。患者をしっかりと支えられるぐらい強固な作りで、ドリル用コンプレッサーやその他の器具が取り付け可能であり、その上持ち運びができるくらい軽量でなくてはならない。

彼は歯医者バスを作った同じエンジニアと組み、2014年にはポータブルな診療チェアを手にすることができた。折りたたみとリクライニングが可能なフレームに軽量のスチールを使用し、重さは25キロ前後となった。さらにスチールの棒の内部を空洞にすることで12キロまで重さを減らすことができた。キット一式でも15キロ未満だ。次のバージョンではスチールの替わりにカーボンファイバーを使用し、重さをさらに半減させるつもりだ。

彼はまた、2014年に起業家の Vivek Madappa 氏とも協力し、多くの歯科医に呼びかけを行って MobiDent を立ち上げた。昨年、インド経営大学院アーメダバード校アントレプレナーシップセンターにおいて資金援助と育成支援を受け、ロンドンの王立工学アカデミーから賞を受賞した。

利用しやすい場所と価格

Photo credit: MobiDent.
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依頼に応じてオフィスや家庭に出向く歯科クリニックの他に、MobiDent は1年ごとまたは半年ごとの定期的なデンタルケアプランも提供している。ポータルには33人の歯科医を備えており、バンガロール、マイソール、アフマダーバード、プネーでの対応が可能となっている。今回得た資金でネットワーク内の歯科医を250人にまで増やし、今後3ヶ月でムンバイ、デリー、グルガーオン、チェンナイ、ハイデラバードにまでサービスを拡大していく予定だ。

MobiDent への依頼の大部分が予防および審美的デンタルケアを求めるものですが、高齢者に対するケアも依然として重要な要素です。(Devaiah Mapangada 氏)

ちょうど今日(1月5日)、彼と話をしていた間にも車椅子を使用している高齢の女性の抜歯を行うためチームが出かけていった。

治療に関して場所的な利便性を提供するだけではなく、手ごろな価格設定も行っている。ポータブルデンタルキットは、設備によって7万5,000インドルピーから35万インドルピー(1,040米ドルから5,150米ドル)(訳注:原文では104米ドルとなっていますが誤記と理解)という価格になるが、これは従来の歯科診療所設立にかかる金額の4分の1にも満たない。言うまでもなく、不動産の費用を削減することができるからだ。

病院や診療所でしか行うことができない従来のヘルスケアモデルは、経済的に持続させることが不可能です。(Vivek Madappa 氏)

多くの実力ある歯科医が自身のクリニックを持つ経済的余裕がなく、病院の数も十分ではない。インドでは、毎年3万人が大学を卒業して歯科医となるが、彼らの多くが先輩の元で見習いとなるか、別の分野に鞍替えをするかだ。WHO によると人口に対する歯科医の比率は非常に劣悪で、4万人に対して1人であるという。

MobiDent の狙いは、このミスマッチをなくすことだ。今後3年間で3,000人の歯科医を雇用し、ポータブルデンタルキットを用意して訪問診療に対応する計画を立てている。今後は歯医者の受診を先延ばしにする必要はない。ただ電話をして、スーツケースに診療チェアをしまい込んだ歯科医師を1人呼べば良いのだ。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia

【原文】

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