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タイ農村部に衛星ブロードバンド環境を届けるスタートアップMu Space——2020年には、Jeff Bezos氏のロケットで自前の衛星を打ち上げへ

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宇宙技術関連のスタートアップが活気付いている。人工衛星は安価かつ素早く製作できるため、宇宙時代の熱が高まる中、衛星の打ち上げを急ぐ小企業にとっては参入しやすい分野となっている。そのため、宇宙技術関連のスタートアップは、宇宙に関する伝統のない国々でも立ち上げられている。Mu Space を例にとろう。同社は2017年にタイで James Yenbamroong 氏によって設立された。彼はタイ生まれで…

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衛星打ち上げロケット「New Glenn」の模型を持つ Mu Space CEO James Yenbamroong 氏と Jeff Bezos 氏
Photo credit: Tony Powell, Blue Origin

宇宙技術関連のスタートアップが活気付いている。人工衛星は安価かつ素早く製作できるため、宇宙時代の熱が高まる中、衛星の打ち上げを急ぐ小企業にとっては参入しやすい分野となっている。そのため、宇宙技術関連のスタートアップは、宇宙に関する伝統のない国々でも立ち上げられている。Mu Space を例にとろう。同社は2017年にタイで James Yenbamroong 氏によって設立された。彼はタイ生まれで、アメリカで教育を受けたエンジニアであり、以前はアメリカの航空宇宙・防衛企業 Northrop Grumman に勤めていた。

彼は技術によって地元の問題を解決したいという思いから、タイに戻りこの企業を始めた。

Mu Space の CEO、Yenbamroong 氏は Tech in Asia にこう語った。

衛星の応用は人々にとって、特に遠隔地域に住む人々にとって有益なものです。衛星は、例えば地方の学校の生徒たちに遠隔教育を届けるために、また遠隔地域の病院に e ヘルスサービスをもたらすために利用することができます。

地方を結ぶこと

Yenbamroong 氏はタイとニュージーランドで育ち、その後カリフォルニア大学で航空宇宙科学と機械工学を学んだ。卒業後は Northrop Grumman で無人機プロジェクトを率い、ここで遠隔通信以外の衛星の可能性を知った。同氏の望みは、環境モニタリング、捜査活動や救助活動などへの衛星の応用を探求することだった。

しかし、Mu Space の出発点は遠隔通信であり、同社はブロードバンドへのアクセス手段をもたないタイの田舎地域の人々をターゲットにしている。タイの国家放送通信委員会(NBTC)によれば、タイの6,900万人の人口のうち約830万人しかブロードバンドアクセスを有しておらず、これは全人口の約12%の計算だ。

タイランド4.0スタートの一環として、タイ政府は昨年、2018年末までにタイの7万の村にブロードバンド接続をもたらすと公約した。これらの地域に接続が行き渡るように必要なインフラを敷設するのはプロバイダにとって非現実的かつコストが高いため、サービスが不足している。

第一に、Mu Space は衛星と遠隔通信を扱うグローバルな会社、SES Networks 所有の一群の衛星の力を借りて、そうした遠隔地域に接続を提供しようとしている。

最終的には、Mu Space は自社の衛星を配備したい考えで、そうするために製造パートナーと交渉をしている。Mu Space は最近 NBTC よりタイでの衛星サービスの運営を許可され、そのような許可を得たタイ初のスタートアップとなった。

SES との提携により、そしてタイ国内の遠隔通信会社と関わっていくことにより、Mu Space は年内に収益を生み出し始めることを期待している。しかし、Yenbamroong 氏は収益予算額を公表することは避けた。

Mu Space は2020年に1機目の衛星をローンチする計画で、Jeff Bezos 氏設立の企業 Blue Origin が製作した大型ロケット New Glenn に載せる予定だ。Mu Spaceは、SpaceX のライバル Blue Origin と関係を築き、同社の再利用型ロケット技術をより評価していた。SpaceX のロケットも同じ特徴を持つが、Mu Space は Blue Origin がより予算にふさわしいと考えた。Mu Space は費用を公表していない。

Yenbamroong 氏は次のように語る。

多くのメールをやり取りし、多くの会議や交渉を行いました。私たちは取引をまとめるまでに、何としても Blue Origin に対して、我が社の真剣さと、彼らのロケットに我々の衛星を載せてローンチできる能力を示さないといけませんでした。

両社の直接の会議では、衛星ローンチのためのロケットにかかる詳細な費用を含め、契約条項、機密保持条項などに関する通常の議論が行われた。Mu Space は今なお平均で3ヶ月に1回Blue Origin と会議をしており、戦略の再検討、進捗と計画の報告などをしている。Mu Space は、それにより Blue Origin との信頼醸成が促進されたと感じている。

ローンチに向けた準備段階にある Mu Space は、衛星パートナーを通してブロードバンド接続をチョンブリーにあるイノベーションハブ Digital Park Thailand に提供することで、仕事を維持している。

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タイの農村地域に衛星アンテナを設置する Mu Space エンジニア
Photo credit: Mu Space

高い意欲

Mu Space の長期的計画はさらに意欲に溢れている。同社は、宇宙旅行サービスを提供し、宇宙旅行者向けのスマート衣服を製作するアジアで最初の企業になりたいと考えているのだ。

Yenbamroong 氏は、再利用可能型ロケットなどの技術進歩によって低価格化が促され、宇宙旅行は近い将来今より手頃な価格になるだろうとの考えだ。現在の状況では、Virgin Galactic の宇宙船に乗るか、SpaceX の宇宙船に乗るかにもよるが、宇宙旅行のチケット1枚で数十万から数百万米ドルの費用がかかる。

ここでも、(ちょうど Blue Origin と提携しているのと同様に)Mu Space は第3者宇宙船業者と提携して、人々を短期の宇宙旅行に送り出すサービスを行いたい考えだ。また、宇宙旅行の間の乗客の安全確保のため、乗客の心拍数と体温をモニターする衣服の開発も行いたいとしている。

小企業が旅行客を宇宙に送ることが実現可能か異論はあるが、この機会は心をそそるものだ。調査会社 Technavio の予測によれば、宇宙旅行市場は2016年の199億米ドルから上昇して、2021年までに345億米ドルの価値となるという。アナリストたちは2021年まで14%の安定した年平均成長率を見込んでいる。

空を目指して

Yenbamroong 氏によれば、現在 Mu Space には25人の従業員がおり、そのうち35%は技術専門者だ。年内に従業員を30人または40人に増やすため、現在さらに従業員の雇入れを進めている。

同社は今までのところ必要な人材を見つけるのに困難はなかったという。

ネットワークエンジニアなど、空きの技術職をオンラインで募集すると、平均して約500人の応募者が来ることが普通です。

しかし、より意欲的な計画のためには、1年後、2年後にタイ国外からの人材がおそらく必要になると同氏は認めている。

Mu Space が直面したもう1つの難題は、自社のブランドを向上させ、その価値をクライアントやパートナーに説得することだという。Mu Space はタイで有利なスタートを切っているようではあるが、今後、シンガポールの TranscelestialKacific、またグローバル事業者の Inmarsat など、衛星および遠隔通信関連のサービスを提供するこの地域の他のスタートアップやより大きい企業と競争せざるを得なくなるだろう。

一方で、SpaceX の Starlink 衛星ブロードバンドプロジェクトがアメリカ連邦通信委員会により認可されたことで、あらゆる衛星インターネット関連のスタートアップは不安を抱いて当然だろう。同プロジェクトが目指すのは、アメリカの田舎地域にブロードバンド接続を衛星から降り注ぐことだが、SpaceX の資力を考えれば、Elon Musk 氏の SpaceX がタイなどの地域でも機会を探ることは、無くはない話だろう。Google と Facebook も、成功の度合いは様々だったが、東南アジアでの田舎地域の接続問題に取り組もうとしたことがあった。

Mu Space には自社開発技術がないということは、自社の提供サービスの大半について第3者と関わる必要があるということだ。これは後に、もしも第3者との取引が計画通りに進まなかったり、競合がタイ市場に参入すると決めたりした時に、問題を招くことにもなり得る。Mu Space は目下のところ自社独自の技術を開発することは、「長年を要し」「多額の資金を必要とする」ため、「優先事項ではなく」、「第3者の製品を利用するのが現在はベストだ」としている。

宇宙旅行と宇宙旅行用の服という分野では、アジアでの競争は明らかにそれほど激しくない。しかし Mu Space 自身は、10年以内に行うことを望んではいるが、これらの分野にはまだ深く乗り出していない。

Mu Space はこれまでに「タイのある私企業」から300万米ドルを調達しており、さらなる900万米ドルを調達する過程にある。Yenbamroong 氏は、2018年の第2四半期に取引をまとめる予定だと語るが、投資家が誰なのかは明言しなかった。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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