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AIドクターは世界医療をどう変える?ーー医療システムをハックする「2つの戦略」【後半】

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ニュースサマリー:前半からの続き。人工知能を利用したAIドクターを提供する「Babylon Health」がシリーズCで5億5000万ドルの資金調達を完了した。本件に関連してAIドクターの潮流について考察をお届けする。 話題のポイント:CEOは「ヘルスケア領域では世界の様々な国のニーズに合わせ、ローカライズが必要だ」と言っています。同社が挑戦する「社会保険システム」「民間保険システム」は各国で患者…

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ニュースサマリー:前半からの続き。人工知能を利用したAIドクターを提供する「Babylon Health」がシリーズCで5億5000万ドルの資金調達を完了した。本件に関連してAIドクターの潮流について考察をお届けする。

話題のポイント:CEOは「ヘルスケア領域では世界の様々な国のニーズに合わせ、ローカライズが必要だ」と言っています。同社が挑戦する「社会保険システム」「民間保険システム」は各国で患者のユーザビリティに多少違いはあれど、お金の流れが大体同じと言えます。

アジア・アメリカ市場での成功は世界へ裾野を広げることを容易にするのです。次に、イギリスで培ったAIドクターによる初期診察の技術を強みにどのような戦略でアジア・アメリカへ事業拡大するのかを考えていきます。

パートナーシップ

同社が挑戦する両市場に共通するのは、医療費の自己負担額がゼロになることが少ないことです。更に予約、訪問、診察、会計を考慮すると、患者は受診を負担と感じています。実際、医療費の自己負担額が無料のイギリスで、同社のアプリを利用した40%の患者が自己治療を選択しています。

一方、医療サービス業者側は「出来高払い」であるため診察報酬が高い内容を優先して行いたいと考えるのが本音ではないでしょうか。しかし緊急性以外の理由で優先順位を決めるのは難しいだろうと思います。

AIドクターによる初期診察は条件が整えば、患者の負担軽減と医療サービス業者の希望を両立できます。それはリアルクリニックとの連動です。ここでは対面での受診、処方箋の発行を行うクリニックをリアルクリニックと呼んでいます。

同社のサービスがバーチャルクリニックとすると、初期診察だけがバーチャルになるだけではリアルクリニックの利便性に勝てません。初期診察が二重になり、かえって負担になるケースもあるでしょう。

前述の通り同社はイギリスでNHSを巻き込むことで成長してきました。同様に違和感のない医療スキームを構築するためにリアルクリニックとの連携がトラクションを生むと考え、連携システムに大きな投資を実行することが予想されます。

連携システムの充実は医療サービス業者にとって患者単価を上げることに加えて、来院しない患者からの収入を生み出す可能性があるためインセンティブが小さくありません。

リアルクリニックには連携する理由があり、同社者には準備をする資金と実績があるのです。

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医者の雇用による低価格化

アメリカにはすでに競合になるTeladoc、Health Tapなどの大手が存在します。遠隔治療サービスに位置づけられ、オンライン診察や基本的な医薬品の処方を24時間受けられます。同社は既存の大手に対抗する戦略を持っています。それが医師を専属雇用し、効率的に対応をすることで価格を抑える仕組みです。

Teladocを例にすると、2016年時点で登録医師を約3100名を抱えて2000万人を超える会員に対応をしています。これに対して同社は利用者430万人に対し、1日あたり4000件の医療診断を約100人の医師で対応しているといいます。価格はTeladocが468ドル/年なのに対して、同社は89.99ポンド/年で大きな差があります。

まだアメリカでのサービスが始まっていないため価格の差が縮まる可能性はありますが、十分なアドバンテージになることが予想できます。アメリカ市場では低価格化戦略が大きなインパクトになるでしょう。その背景を少し紹介します。

アメリカのヘルスケア領域では経済性が要求されます。質の高い医療には高い対価を支払うという考え方から医療費が高く、その保険料の負担を企業が担うことが多いからです。医療に資源の効率分配が実現していることは医療技術の進歩に貢献します。しかしこれがさらなる医療費の高騰を生んでいます。

企業には高騰する医療費が死活問題となるため、価格に一層敏感になっているのです。この状況を変えるために、雇用者の保険料負担額が大きい保険プランに移行する企業、また保険を提供しない企業が増えています。これはオバマケアが生まれた経緯でもあります。

上記の背景から、低価格化の戦略はアメリカ市場で必須要素であると言えます。同様の理由からアジアよりも先行してアメリカ市場を開拓していくのかもしれません。それほど市場の要求にマッチしているのです。

ここまで、「お金の流れ」の観点から同社が世界を取りに来た考える理由とグローバル戦略を考察してきました。特に2つの戦略は一見当たり前のように感じるかもしれません。

しかし、イギリスで培った強みがなければ実現は難しいものです。

ここに同社が世界で利用されるサービスを作り上げるのが時間の問題だろうと考える理由があります。(執筆:佐々木峻

AIドクターは世界医療をどう変える?ーー医療制度「お金の流れ」からみるグローバル戦略【前半】

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ピックアップ:Babylon Health confirms $550M raise at $2B+ valuation to expand its AI-based health services ニュースサマリー:人工知能を利用したAIドクターを提供する「Babylon Health」がシリーズCで5億5000万ドルの資金調達を完了した。このラウンドはPIF(サウジアラビア公共投資基金)やドイ…

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ピックアップ:Babylon Health confirms $550M raise at $2B+ valuation to expand its AI-based health services

ニュースサマリー:人工知能を利用したAIドクターを提供する「Babylon Health」がシリーズCで5億5000万ドルの資金調達を完了した。このラウンドはPIF(サウジアラビア公共投資基金)やドイツの再保険など保険企業も参加している。

今回の調達はアメリカ・アジアへの事業拡大および研究開発を行うためのものだ。同社は手頃な価格の医療をアクセス容易にし、地球上のすべての人々に届けることを目指している。これを実現するため世界中どこにいても、携帯電話の利便性と人工知能の組み合わせによって医療を受け、必要なときには医師とも話すことができる一連のテクノロジーを開発している。

同社は「GP at hand」というAIドクターを提供している。医療診断チャットボットアプリでの診察、テレビ電話で在宅の専属医師の面談が可能で、リアル受診が必要かどうかを判断してくれる。

医療診断チャットボットアプリは症状を入力すると、AIが提示する項目から当てはまるものを選択する形式で「問診」が行われる。英国国営の国民保険サービスのNHS(National Health Service)と協業しており、「初期診断」としての信頼を築きつつあり、医師の負担を軽減し、混雑の緩和を実現している。

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話題のポイント:日本では馴染みがないBabylon Health。同社がシリーズCにして、世界を見据えた勝負に出てきました。本稿では、なぜヘルスケアは地域特性が強いにも関わらず、アジア・米国の市場に参入することが世界を見据えることに繋がるのか、そして世界を勝ち取るための2つの戦略を「お金の流れ」の視点から考察していきます。

ヘルスケア領域は世界各国の医療制度に大きく影響されるため地域特性が強いと言われます。財源とサービスの提供という観点から「国営システム」「社会保険システム」「民間保険システム」の3つのタイプに大別できます。

「国営システム」の代表国はイギリスです。税を財源としてほぼ無料で医療サービスを提供します。

イギリスでは緊急時を除いて、各個人が指定したGP(General Practitioner)と呼ばれるかかりつけ医に診察してもらう必要があります。GPが専門医の診察が必要だと判断した場合のみ専門性のある大きな病院に紹介してもらうことができるのです。

GPはNHSから登録人数に応じて1人あたり平均80ドルを受け取ります(高齢者と慢性疾患を持つ患者は200〜300ドル、若者や健康的な患者は30ドル)。

同社が運営する「GP at Hand」はGPの代替となります。「GP at Hand」を選ぶと初期診察、処方箋の発行、医師への受診の必要性を判断してくれます。そのため、GPと同様にNHSから登録者に応じた金額が支払われます。

NHSから見ると患者一人あたりのコストはGPもBabylonも変わりません。GPが抱える患者数が多く、予約が数週間後になることを防ぐ手段として両者の併用をしているのでしょう。

初期診察の実現を目指したAIドクターを提供する会社が少なくない中、同社はこのお金の流れにうまく入り込むことで成長しました。

「社会保険システム」の代表国は中国、韓国、台湾、日本、ドイツ、フランスです。国民の多くが医療保険に加入して、保険料を財源としています。診察内容によって医療費の10 〜30%程度の自己負担額で医療を受けることができます。

医師は診察行為に対して報酬を受けるので、やればやるほど収入が増える「出来高払い」です。そのため国が如何に医療費削減を医療現場に求めても医療サービス業者が前のめりには動かない環境と言えるでしょう。

「民間保険システム」の代表国はアメリカです。アメリカでは公的医療制度は高齢者および障害者を対象としたものしか用意されていません。ほとんどの人が企業が保険料を負担して従業員に提供する民間保険に加入するのが一般的です。

今回調達した資金の使い道と明言したアジア・アメリカへの事業拡大は、イギリスで成功しているビジネスモデルの拡張ではなく、世界の保険システム3タイプ全てに適応するビジネスモデルを新たに構築すると宣言したと捉えることができるでしょう。後半はAIドクターが強みとする初期診療モデルでどのような拡大戦略を描くのか考察してみたいと思います(執筆:佐々木峻。後半へ続く)。