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SasakiShun

SasakiShun

起業準備中。元ソフトバンクのエンジニア。学生時代に鳥人間コンテスト入賞経験あり。ディープテックや社会実装をテーマ>にしたスタートアップが好き。執筆分野は医療/不動産/VR/AR/AI。Twitterアカウント@sanyama1

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リチウムイオン電池は“多様性”の時代へーーエアバスが選んだ「Amprius」の魅力を紐解く

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ピックアップ:Airbus Partners with Amprius, Leader in High Energy Density Battery Technology ニュースサマリ:シリコンベースのリチウムイオン電池を開発する「Amprius」は2019年10月31日、Airbus Defence and Spaceから資金調達したことを発表している。調達額は非公開。今回の資金をもとに、Am…

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Image Credit:Amprius HP

ピックアップ:Airbus Partners with Amprius, Leader in High Energy Density Battery Technology

ニュースサマリ:シリコンベースのリチウムイオン電池を開発する「Amprius」は2019年10月31日、Airbus Defence and Spaceから資金調達したことを発表している。調達額は非公開。今回の資金をもとに、AmpriusはAirbusの次世代事業「高高度疑似衛星: HAPS」と、「電気垂直離着陸: e-VTOL」向けのバッテリー大量生産体制の確立を目指す。

話題のポイント:Ampriusの最大の魅力は「軽さ」です。この点において現在市場に出ている製品で最も優れているでしょう。下図は重量エネルギー密度(横軸)と体積エネルギー密度(縦軸)を示したもので、赤い領域がAmpriusの製品です。横軸に注目すると、最新のリチウムイオン電池に比べても重量を60%ほど軽減できていることがわかります。

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Image Credit:Amprius HP

なぜAmpriusは軽い電池を作れるのでしょうか。答えはとてもシンプルです。採用している素材が軽いのです。

Ampriusは電極を100%シリコンで作製しています。シリコンはリチウムイオン電池で採用されることが多いグラファイトに比べると、1gに約10倍の電気を貯めることができます。言い換えれば、シリコンと同量の電気を貯めるのに必要な重量が1/10で済むということです。

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Image Credit:Amprius HP

シリコンを使うと軽くできることはよく知られています。この事実が知られているにも関わらず、シリコンが採用されないのには理由があります。シリコンは充電されると、膨張して破壊されてしまう欠点を抱えているのです。

少しでもシリコンの恩恵に授かろうと、シリコンをグラファイトに混合する試みがされる中、2007年にスタンフォードの研究者は問題を根本的に解決する研究を発表しました。シリコンをナノワイヤー形状にすると、電気を貯めても壊れないといった内容です。そして、発表をした研究者がAmprius創業者のYi Cui氏でした。つまり、Ampriusの凄さとは、シリコンが持つ能力をほぼ100%活かせる点にあるのです。

さて、そもそもリチウムイオン電池において軽さは魅力となり得るのでしょうか。実際、日常生活でリチウムイオン電池の重さに嫌々している人は少ないと思います。

Ampriusの電池を搭載することを公式に公開しているアプリケーションは下記です。

  • 高高度疑似衛星(High Altitude Pseudo-Satellite:HAPS)
  • コンフォーマルウェアラブル
  • クワッドコプター
  • 電気垂直離着陸(e-VTOL)車両
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Image Credit:Amprius HP

今回の調達および提携では、Airbusが開発するHAPS機種「Zephyr」とe-VTOL車両に、Ampriusの電池が採用されることを前提に行われました。HAPSとは成層圏を無人で飛ぶ飛行機で、ソフトバンクの子会社であるHAPSモバイルとFacebookが、ネットワークが繋がりにくい地域や発展途上国にインターネット環境を提供するのに基地局として利用することを発表しています。

HAPSには疑似衛星の名前が付いていることからも分かる通り、衛星同様に永続的なサービスを維持するためには、数カ月間の連続飛行が求められます。回線を継続して提供するためには、航続距離が必要になる仕組みです。そして、重さは航続距離に大きく影響します。

簡単に解説します。水平に飛行するには重量と釣り合う揚力が必要です。仮に飛行機の重量が軽くなると、必要な揚力(浮くための力)は小さくなります。HAPSが飛行する環境を考慮すると、揚力を小さくするためには迎角(空気の流れに対する翼の角度)を小さくすればよく、そのとき抗力が小さくなることが一般的に知られています。抗力が小さい状況とは、同じ速度を出すにしても必要なエネルギーが少なくても済むということです。例えると、50m走で7秒を出すとしても、向い風が強い状況と、追い風が強い状況では、疲れ方が全く違うのと同じです。

飛行を少ないエネルギーで維持できれば航続距離が伸びます。そのため重さはHAPSを実用化するための重要な要素なのです。これはHAPSに限らず、ドローンやe-VTOL、軍人が身に着けるコンフォーマルウェアラブルでも同じくことが言えます。

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Image Credit:Amprius HP

以上のように、Amprius軽さがとても求められる業界に足して、自社の強みを活かして事業展開をしています。

Pocket-lintによると、現在材料の選定から構造の改良に至るまで、様々なアプローチで研究が盛んに行われています。なかには、全く壊れないバッテリーを作れるという金ナノワイヤー、折り紙のように折り畳めるバッテリーなどがあり、強みがはっきり見えるものが目立ちます。今後、Ampriusのようにバッテリーの強みに合わせて用途が決まるような多様性が生まれていくのはないかと思います。

バッテリー性能の発展次第で、今後IoTや5Gが生活を劇的に変えるのかがかかっていると言っても過言ではありません。どの企業がどのポジションに着くのか、そういう視点でも増々注目していきたい業界です。

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核融合発電所は何が難しく、いつ完成するのかーーベゾス氏ら220億円出資「General Fusion」の可能性

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ピックアップ:General Fusion Closes $65M of Series E Financing ニュースサマリ:核融合発電所の実現を目指す「General Fusion」はシリーズEで6,500万ドルの資金調達を発表した。同社は核融合による発電で商業化を目指すカナダのスタートアップ。累計調達額は2億ドル(約220億円)を超える。資金はプロトタイプ建設に使用され、2025年から実証実…

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Image Credit:General Fusion HP

ピックアップ:General Fusion Closes $65M of Series E Financing

ニュースサマリ:核融合発電所の実現を目指す「General Fusion」はシリーズEで6,500万ドルの資金調達を発表した。同社は核融合による発電で商業化を目指すカナダのスタートアップ。累計調達額は2億ドル(約220億円)を超える。資金はプロトタイプ建設に使用され、2025年から実証実験を行う予定だ。

この調達ラウンドはシンガポールの投資ファンドTemasekがリードを担当し、Chrysalix Energy Venture Capital、Bezos Expeditions、Khazanah Nasional Berhad、Breamar Energy Ventures、Entrepreneurs Fund、SET Venturesなど既存投資家も参加した。

話題のポイント:アポロ計画に由来する言葉「ムーンショット(Moonshot)」を聞いたことがある人は多いと思います。癌の撲滅、環境問題解決、食糧不足問題の解決など、困難で莫大な費用が必要ではあるが、解決したときにインパクトがある社会問題解決に向けたイノベーション創出の総称です。

核融合による次世代エネルギー生成もムーンショットの一種と言えるでしょう。気候変動に影響を及ぼすCO2/SO2/NOxのガスを一切排出せず、火力発電に代わる持続可能なエネルギーを生み出す可能性を持っています。

最近では再生可能エネルギーの発展に期待が寄せられていますが、火力発電に100%代われるかというと現状では見込みが薄いと言えます。環境を相手にする点が不安定であるのに加えて、火力発電は世界の発電の67%に当たる17兆Whを生み出しているため、相当する電力量を埋め合わせる術がないのです。

この点、核融合は電力量の確保の心配はありません。火力発電の数百万倍、原子力発電の約3倍に相当するエネルギーを生成できます。さらに材料は水素であるため海が干上がらない限り枯渇しません(ただし材料の水素は同位体である重水素とトリチウムであり、自然界にはほとんど存在しないため人工的に作製する必要があります)。

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Image Credit:General Fusion HP

大きな可能性に満ちあふれている核融合ですが、挑戦の歴史は古く、実は1930年代から行われてきました。現在、日本を含む35カ国が参加して、250億ドル規模の予算をかけて国際熱核融合実験炉(ITER)の開発が進められています。一方、General FusionはAmazon CEOのジェフ・ベゾス氏を始めとする世界の投資家から2億ドルを集めて実用化へ急速に開発を進めています。

ここまで聞くと実用化まで真っしぐらに進んでいると感じますが、決してそんなことはありません。このまま順調に各プロジェクトが進行したと仮定しても、実用化は2050年前後になると予測されています。

本記事では核融合を実現するのはなぜ難しいのかをご紹介します。今後核融合の話題を見るときの一つの視点にしていただければ興味深く見ることができると思います。

まずは簡単に核融合の原理を説明します。核融合とは原子核同士が合体することです。原子力発電ではウランの原子核が分裂することを利用して発電をしているため、真逆の原理を使っていることになります。

中学理科の復習をすると、原子核は+電荷の陽子と無電荷の中性子で構成されています。核融合には原子核同士をかなり接近させなければならないのですが、原子核が+なので強く反発し合います。そのため、大きいエネルギーを与えて無理やり接近させる必要があります。

この大きいエネルギーは熱として与えます。現在核融合のプロジェクトのほとんど採用されている重水素ートリチウムの場合、約1億℃の熱が必要になります。

難しいのはここではありません。

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Image Credit:General Fusion HP

この温度になると水素はプラズマの状態に変わり、大きな運動エネルギーを持って拡散しようとするのです。拡散して他の材料にぶつかるとプラズマは冷えてしまうため、核融合が行われるように一定の場所に留まらせる必要があります。プラズマを制御する方法、これが核融合を人類の手中に収めるのに最も困難な部分です。また、実験するのも容易ではありません。

核融合研究はプラズマ制御のアプローチで大別することができます。ITERを始めとする多くのプロジェクトで採用されている磁気を使ってプラズマを閉じ込める磁場閉じ込め方式。周りからレーザーを照射する慣性閉じ込め方式。General Fusionでは2つを組み合わせた磁化標的核融合方式を採用しています。

それぞれの長所短所をまとめると下記のようになります。

  • 磁場閉じ込め方式:制御性能が最も高いが、ものすごく規模が大きい
  • 慣性閉じ込め方式:扱いにくい磁場は必要ないが、工学的な課題が多い
  • 磁化標的核融合方式:機械的でシンプルなため安価だが、プロトタイプがないため能力が理論通りかわからない
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Image Credit:General Fusion HP

General Fusionが採用する磁化標的核融合方式は、プラズマを球状に満たされた液体金属の中に入れて、ピストンで液体金属を圧縮するというとてもシンプルな構造です。安価で小さく、目立った欠点はありません。大きな資金を集められているのも頷けるポテンシャルを持っています。

しかし、上の動画で紹介されているプラズマ入射装置、プラズマ圧縮装置(ピストン部分)、音響ドライバーシステムが理論通り駆動できるのかは分かっていません。つまりキーコンポーネントにシミュレーション以上の確証が全くない状況なのです。

今回の資金調達は、構築した理論が机上の空論ではないことをプロトタイプを作製して確かめるために使われます。プロタイプの完成が2025年の予定なので、実用化はさらに10〜20年程度の年月と数十億ドルの追加資金が必要になるでしょう。

果たして核融合は次世代エネルギーとなり、脱炭素化を実現できるのか、そして民間企業がどこまで資金繰りをしながら生き抜いていくのか。長い目で応援していく必要がありそうです。

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D2Cブランド乱立で「アパレル業務効率化」は死活問題、AYATORIの挑戦と世界観を聞く

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日本では2012年頃から徐々に小売の選択肢が多様化してきました。Amazonマーケットプレイス、メルカリ、BASEやSTORE.jpなど、もはやインターネットを通して私たちに届かない物は存在しないと言っても良いでしょう。 物の売り買いが格段に容易になった一方、生産現場では大きく変わっていないことがあります。そのひとつがコミュニケーションと関係者から集まる情報の管理方法です。依然として電話連絡やメー…

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「AYATORI」を運営するDeepValley代表取締役社長、深谷玲人氏

日本では2012年頃から徐々に小売の選択肢が多様化してきました。Amazonマーケットプレイス、メルカリ、BASEやSTORE.jpなど、もはやインターネットを通して私たちに届かない物は存在しないと言っても良いでしょう。

物の売り買いが格段に容易になった一方、生産現場では大きく変わっていないことがあります。そのひとつがコミュニケーションと関係者から集まる情報の管理方法です。依然として電話連絡やメールでのやり取りが主流であり、外部とのやり取りを一括で管理できていないケースもまだまだ耳にします。

なかでもアパレル業界ではその傾向が顕著だそうです。

不良品や納期遅れが頻発するため、マメに電話とメールで進捗確認を行うのが一般的なのですが、関係者が複雑にたくさんいるため大きな負担となっているそうです。そのため、単にデジタルに置き換えるだけであっても解決することができませんでした。

ということで本稿でお話を伺ったのは、アパレル生産管理の業務特化型SaaS「AYATORI」を運営するDeepValleyの代表取締役社長を務める深谷玲人氏です。深谷氏はアパレル業界にいた10年で多数のブランド立ち上げに関わった後、営業ウェブ会議システムを提供するSaaS企業「bellFace」で社員第一号としてカスタマーサクセスに2年半従事した経験を持ちます。

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Image Credit: AYATORI

アパレル業界のサプライチェーンのウィークポイントに精通する深谷氏が開発するのが、先述した生産現場の問題を解決すべく生み出されたのがAYATORIです。

2年前ぐらいからニーズ変化に合わせるようにD2Cブランド立ち上げが増加しました。こうしたトレンドを背景に、大量生産によるマスプロダクトから少量多種の商品作りが必要になっています。1種類の服を大量に作るのと数種類を数百枚のでは生産現場に求められる業務負荷が違ってきます。従来とは違う生産プロセスに耐えるため、まさに今、時代に合わせたアパレル生産業務の効率化が望まれています。

AYATORIは例えるなら生産管理版Trello。各ステークホルダーとのメッセージを手軽に、かつ履歴もわかりやすく検索できるアパレル市場特化の生産管理コミュニケーションツールです。情報が整理されてアクセスが簡単できる設計のため、関係者は全プロジェクトを効率的に把握できます。

そもそも、なぜアパレル業界から離れてITの世界にキャリアを進めたにも関わらず、またアパレル業界の課題に取り組むことを決めたのでしょうか(太字の質問はすべて筆者)。

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Image Credit: AYATORI

アパレルの生産管理の問題を解決しようと思ったきっかけを教えていただけますか?

第二のシャネルを創れるデザイナーの活躍を支援したいと想い続けてきました。

最近はD2Cという形で自身のブランド設立に挑戦する人が増えています。D2Cの小さいブランドが出てくることは喜ばしいことだと思っていますが、生産現場の問題でこうしたデザイナーたちの息が詰まるケースが増えてきたと感じたのがきっかけです。

なるほど。もう少し詳しく課題感を教えていただけませんか?

私自身、今までブランドに20個ほど携わってきたんですが、いま残っているブランドは2-3個しかありません。アパレルは生産ロットの制限があるので、売れないと分かっていても作らなくちゃいけない時があります。もちろん、その在庫をある程度消化しないと黒字になりません。数をさばくためには広告を打つ必要が出て、さらに資金繰りが厳しくなっていくんです。

AYATORIは生産の工程を直接解決するものではないように思いますが

生産現場におけるコミュニケーションと情報管理の効率化によって生産性が上がり、一着にかかるコストを小さくできれば大量生産の仕組みから脱却できると考えています。

そうすればデザイナーになりたかった、またはブランドを立ち上げる夢があったけどたくさん売らないと成り立たない現実を目の前にして夢を諦めた、シャネルやイブサンローランなどに匹敵するセンスが合ったかもしれない人たちにチャンスを与えられるんじゃないと思っているんです。AYATORIを起点に、そんなアパレル業界を作っていきたいと思っています。

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Image Credit: AYATORI

なるほど。それでは現在、具体的にどんなユーザーを想定されていますか?

現在のメインターゲットは商社です。私たちの製品のようなSaaSの鉄則はパワーバランスが一番強いところを攻めることです。アパレル業界では商社よりもブランドの方が立場が上ですが、ブランドは企画を出して製造をほぼ丸投げする企業も多くターゲットにはなりません。そのため、生産において強い課題感を抱えている商社を初期ターゲットにしています。

最近では商社向けの機能を実装しているとお聞きましたが

2020年春に、商社の課題を解決するような新製品をリリースすることを発表しました。手書きの縫製仕様書などをAIを使ってデジタル仕様書に書き出し、自動でプロジェクト管理機能に連結できます。さらに翻訳まで自動でできる機能もあるため、海外に工場をもつユーザーのコストを削減できるように設計しました。様々なレイヤーの方にヒアリングを重ねた上で開発に踏み切っています。

深谷氏によると、名だたる日本のクリエーターを輩出する文化服装学院の学生には、デザイナーになりたい、ブランドを立ち上げたいという想いを持って入学する人が多いにもかかわらず、卒業時に実現できている人は10人にも満たないのが現実なのだそうです。

冒頭でも触れたとおり、商品を届ける手段は徐々に多角化している一方、イメージを商品化する生産プロセスで挫折する理由がまだまだ存在します。その理由がAYATORIの取り組む生産現場に横たわるコミュニケーションと情報管理の問題です。こうした服を生み出す才能に溢れた人材の諦める理由をなくすことが究極の目標だと深谷氏は語ってくれました。

続けて深谷氏は、クリエイターが自由になる世の中を作る上でもう一つ問題になることがあるといいます。それがトレンドです。

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アパレル市場が持つ「トレンド」の問題について詳しく聞かせてください

これは最終的に一番やりたいことなんですが、パリコレやLVMH一辺倒になっているパワーバランスを崩したと考えています。彼らから生み出されるトレンドはすごい好きなんですけど、それが9割みたいな世の中は違うなと思っています。自己承認欲求ではなくて、自己実現欲求が多様な世界を作りたいんです。

パリコレが9割というのはどういうことですか

アパレル業界は特殊で、情報格差が付加価値なんですよね。世界的なファッションの祭典である「パリコレ」や「メットガラ」を見に行ったことがある人はほとんどいません。なぜなら招待制でVIPだけを招待するからです。

たしかに、選ばれた人しか入れなさそうな印象ですね

世界中から特別選ばれた人だけがいち早く情報をキャッチして、1〜2年をかけて商品に落としていく。そして他のブランドも真似したものを商品化して、最終的に田舎の末端まで届くというのがアパレルにおける「トレンド」を軸にしたマーケットです。

トレンドの源流が決まっていて、それに傚ってしまう世の中はおもしろくないということですね

ファッションの本質はコスプレだと思っています。スーツもコスプレだし、ウェディングドレスもコスプレです。本来、身に纏うことによって楽しいのが服のはずなんですよ。

胸が踊るTシャツを買ったけれども着るところがない、トレンドに合ったものでないから変な目で見られるんじゃないかという雰囲気をなくしたいんです。それがなくなれば毎日がハロウィンなわけです。あれだけ仮装というファッションで盛り上がるということは、毎日同じものばっかり着たり作ったりじゃおもしろくないということの裏返しなんじゃないでしょうか。

日本人に自由な環境を受け入れる国民性や文化が備わっているかに個人的に疑問があります。何も考えたくない人が多いようにも感じるんです

最近オタ活ってあるじゃないですか。「あなた何ヲタ?」と気軽に聞けるぐらい一般的になっていて、ブランドを気にしていません。ブランドが外になるのではなく、自分の中にあるイメージだと思うんです。服の種類がたくさん存在するようになれば選択肢として、受け入れられていくのかなと思っています。

なるほど

私が潰してきたしまったブランドたち、そして素晴らしかったけどデビューできなかったデザイナーたちは、こうしたトレンドに左右されない世界なら活躍できたと思うんですよね。人を魅了する力は絶対にあったので。

アパレル業界で経験したブランド立ち上げの失敗、そしてbellFaceのカスタマーサクセスで得たSaaS開発の知識が相まって誕生したAYATORI。深谷氏が歩んできた道と製品ビジョンが綺麗に繋がって見えるのは、クリエイターの成功を本気でサポートするという想いが全くブレていない証拠なのだろうと感じました。

業界で昔から変わらない生産業務とトレンドの問題解決に取り組む姿勢を見ていると、本当に業界全体を変えて深谷氏が望む「服を心から楽しめる世界」を生み出すことを信じさせてくれました。

筆者は服に疎いですが、「毎日がハロウィンになる」という深谷氏の発言には心が踊りました。本当は周りとの調和を気にして生活がするのが窮屈だっただけで、自分の感性に身を委ねて布を選ぶことは好きだったのかもしれません。

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iPS細胞から“本物のお肉”をつくる「Meatable」の衝撃

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ピックアップ:Dutch startup Meatable is developing lab-grown pork and has $10 million in new financing to do it ニュースサマリ:12月6日、養殖肉スタートアップ「Meatable」がシードラウンドで1,000万ドルの資金調達を発表した。すでに投資していたBlueYard Capital、Transfe…

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Image Credit: Meatable

ピックアップ:Dutch startup Meatable is developing lab-grown pork and has $10 million in new financing to do it

ニュースサマリ:12月6日、養殖肉スタートアップ「Meatable」がシードラウンドで1,000万ドルの資金調達を発表した。すでに投資していたBlueYard Capital、TransferWise社CEOのTaavet HinrikusやAlbert Wengerらエンジェル投資家から700万ドル、欧州委員会から300万ドルである。

同社は2018年にオランダで創業。1つの細胞からと殺(家畜などの獣類を、肉・皮などを取るために殺すこと)を必要としない肉の生産技術を持つ。今回の資金は小規模バイオリアクターの開発と生産コスト削減チームの拡大に使われ、2020年夏に計画される最初のポークチョップの開発を加速させる。

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Image Credit: Meatable

話題のポイント:Meatableが作る肉はいわゆる「人工肉」のくくりです。しかし、最近話題の「Beyond Meat」、「Impossible Foods」が植物由来の加工肉であるのに対して、Meatableは100%本物の人工的な食肉である点が大きく異なります。

一見矛盾してる「本物の人工的な食肉」とは一体なんでしょう。それは牛または豚からサンプルを採取して生み出したマスター細胞を基に、脂肪と筋肉を成長させて作り出す食肉のことです。本物の食肉を作れるため、植物由来の人工肉ようにひき肉メニューに縛られることはありせん。

さらに家畜による環境負担、動物愛護の観点から人工肉を選択したい人には、Meatableの人工肉の生産プロセスに抗生物質が含まれない分、魅力的にみえるでしょう。

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Image Credit: Meatable

ここからは先述した「本物の人工肉」を支える大きな2つの技術を紹介したいと思います。

一つ目は、日本人なら多くの人がご存知の「iPS細胞」です。2012年に京都大学の山中伸弥教授がノーベル賞を受賞したことは記憶に新しいと思います。

細胞の中には、幹細胞とよばれる様々な部位を作るための大本となる細胞に分化する能力を持つ細胞が存在します。この幹細胞は成熟してしまうと、肺だけを作る、神経だけを作るなど機能が固定される特徴があります。逆に言えば、初期の幹細胞だけがどの部位にでもなる可能性を持つのです。

マスター細胞ともいえる初期の幹細胞に再生医療を実現する可能性があることはよく知られていましが、胚でしか採取できないため入手の困難さが大きな課題だったのです。

2006年、山中教授は成熟した幹細胞を初期の幹細胞に変換できる特定の遺伝子を発見します。これにより、胚ではなく皮膚からでもマスター細胞を作り出せるようになりました。この偉業をたたえてノーベル賞が贈られたのです。

ただ、iPS細胞にも実用化に向けて解決できていない課題があります。それがiPS細胞が成熟した幹細胞に成長するのに時間がかかりすぎる点です。この点を解決したのがMeatableが持つ2つ目の技術です。

2017年、ケンブリッジ大学のMark Kotter博士は「Inducible and deterministic forward programming of human pluripotent stem cells」という論文で、OPTi-OXという技術を発表しました。この手法を用いるとマスター細胞が人間の脳細胞に変化するのに普通なら3カ月以上かかるところを数日に短縮できるようになります。牛であれば、と殺するのに十分なまで成長するのに3年かかるところを3週間で済むそうです。

現在、Kotter博士はMeatableの役員を務め、OPTi-OXの技術はケンブリッジ大学の技術移転部門であるCambridge Enterpriseを通じてMeatableにライセンス提供されています。

上記2つの技術を使うと、食肉を生み出すために必要な物は「へその緒」だけです。これをIPS細胞に変換させて、OPTi-OXで筋肉および脂肪細胞に成長させれば、と殺することなく、一頭から取れる何倍もの安定した食肉を確保できるというわけです。

Meatableは目下、従来の食肉と同等の価格にできるか挑戦中です。今回の調達した資金は主に価格を落とすための製造プロセス開発に使われます。ここが技術的な最後の壁となるでしょう。

地球上の人口が増え続けるのに対応するため、持続可能な食料源を開発することは急務な課題です。意識を高く持ち、合理的な判断で食肉から離れる人だけでなく、多くの人に選ばれる選択肢となるのか、引き続き「人工肉」周辺の動向に注目です。

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忍び寄る「第2のリーマン・ショック」、防ぐ決め手は“NLP”

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  ピックアップ:Eigen Technologies raises $37m (£29m) in Series B funding round to accelerate market expansion ニュースサマリ:自然言語処理(NLP)を用いたドキュメント分析サービスを展開する「Eigen Technologies」は11月14日、シリーズBで3,700万ドルの資金調達したこと…

 

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Image Credit:Eigen Technologies

ピックアップ:Eigen Technologies raises $37m (£29m) in Series B funding round to accelerate market expansion

ニュースサマリ:自然言語処理(NLP)を用いたドキュメント分析サービスを展開する「Eigen Technologies」は11月14日、シリーズBで3,700万ドルの資金調達したことを発表した。本ラウンドはLakestarとDawn Capitalが共同でリードし、TemasekとGoldman Sachs Growth Equityが参加した。累計調達額は5,500万ドルに達した。本調達資金はR&Dへのさらなる投資や、欧米での市場展開を加速するために使われる。

同社のNLP技術は、契約書などの複雑な内容の文書からインサイトを抽出することを可能にする。金融安定理事会(FSB)が認定した世界的な銀行「G-SIB」の25%以上で利用されており、シリーズA以降、経常収益が6倍に増えるなど確実な成長を遂げている。

話題のポイント:英国に本拠点を持つEigen Technologiesは、現在ヨーロッパで高く評価されているAI文脈で急成長をしてきたフィンテック・スタートアップです。実際、2019年に入ってから「FinTech50 2019」「Financial Times Intelligent Business Awards」「CogX 2019 Innovation Awards」など数々の賞を獲得しています。

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Image Credit:Eigen Technologies

今回取り上げるEigen Technologiesの特徴は、「第2のリーマン・ショック」の発生を予防に繋がるサービス展開をしている点です。そこでまずは2008年に起きたリーマン・ショックの経緯から説明を始めたいと思います。

2008年、投資銀行リーマン・ブラザースの経営破綻したことをきっかけに起きた金融危機がリーマン・ショックです。信用力の乏しい低所得者向けに高い金利で貸し付けた住宅ローン「サブプライム・ローン」の債権を、住宅ローン会社から投資会社が買って証券を発行。発行した証券を担保に新たに証券化をして金融機関やヘッジファンドに大量に売っていました。

しかし、元々信用力が低い人に向けた貸し付けだったため、不良債権となる案件が大量に発生。これによって担保にしていた住宅の差押えや売却が大量に発生し、市場価格が下落。次々とヘッジファンドが破綻する中、銀行が資金回収を実施して資金流動性と信用を失ったことで経済の悪循環が世界中に波及しました。なかでもサブプライム・ローンを大量に購入していて経営破綻したのがリーマン・ブラザーズです。負債総額約64兆円のアメリカ史上最大の企業倒産になりました。

映画『ザ・ビッグ・ショート』(邦題:世紀の空売り)では、ヘッジファンドマネージャーである主人公マイケル・バリーが担保付債務を調べてサブプライム・ローンという爆弾の存在に気付くシーンが描かれています。ここで描かれてる通り、金融危機の本質的なリスクは十分に予想が可能でした。ところが、当時は市場関係者が必要な情報にアクセスして追跡する手段を用いていませんでした。取引文書の量を考えれば当然のことだと思います。

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Image Credit:Eigen Technologies

さて、リーマン・ショック以降、米国規制当局は銀行に潜むリスクを正確に把握しようと試みてきましたが、現在扱えるのは企業が持つデータのうち20%の構造化された定量的なデータのみです。各契約に潜むリスクは80%にあたる非構造化データに潜んでいます。このままでは「第2のリーマン・ショック」の発生リスクがくずぶったままです。

そこで注目されているのがNLP(自然言語処理)です。複雑な金融商品に関連した契約文書から各種データを抽出できます。そして従来、非構造化データとして放置されてきたコンテンツを分析して資産化することに成功し、金融機関は抽出データを分析して意思決定に利用できるようになりました。

つまりNLPによってローン担保証券の透明性を大幅に高めることができるようになったのです。金融危機の原因リスクについていち早く、かつ正しく認識できるようになったことを意味します。そして、こうしたNLP技術に長けているEigen Technologiesに注目が集まっています。

最大50ほどのドキュメントを学習させるだけで競合他社と同等以上の精度を出す技術を武器として、法的デューデリジェンスや契約のレビュー、運用自動化とレポート、LIBORの特定、電子メールの選別と処理などのタスクを高速でおこないます。競合となるIBM、Kira、Sealなどの機械学習プロバイダーを抑えてゴールドマンサックス、ING、A&O、Hiscoxなどの大手と契約していることから技術力の高さが伺い知れます。

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Image Credit:Eigen Technologies

現在、米国には「レバレッジド・ローン」と呼ばれる信用の低い企業に対して、高金利ではあるものの緩い規制で貸し出される金融商品が問題として浮上しています。これは証券取引委員会を経由しない特徴があるため、規制当局が銀行の引受け基準や未払い額に注意深く監視しなくていはいけない状況が続いています。また、「担保付きローン債務」として有価証券になり、金融商品として扱われている点も含めてリーマン・ショックと酷似するため再来になるのではないかという意見が挙がっています。

そこで今回の調達資金を元に米国進出を本格化するEigen Technologiesに対して期待が集まっています。「第2のリーマン・ショック」を防ぐソリューション提供できれば、まだ黎明期と言えるNLPの象徴的な成功モデルになるはずです。

AI技術の中でも、NLPが資本市場を変革する大きな可能性を秘めていることは明らかです。筆者は定性データの処理能力が向上させ、非構造化データに新たな“価値”を付ける手法が一般化されることが、AIによる本当の変革なのだと信じています。

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機械学習は次のステージへーーMIT研究者が発明、“No-Hardware AI”「Neural Magic」のインパクト

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ピックアップ:Neural Magic gets $15M seed to run machine learning models on commodity CPUs ニュースサマリ:“No-Hardware AI” 企業を謳う「Neural Magic」は、11月6日、シードラウンドにて1,500万ドルの資金調達を実施したと発表した。出資者にはComcast Ventures NEA、Andre…

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Image Credit : Neural Magic HP

ピックアップ:Neural Magic gets $15M seed to run machine learning models on commodity CPUs

ニュースサマリ:“No-Hardware AI” 企業を謳う「Neural Magic」は、11月6日、シードラウンドにて1,500万ドルの資金調達を実施したと発表した。出資者にはComcast Ventures NEA、Andreessen Horowitz、Pillar VC、Amdocsが名を連ねる。

同社は、MITでマルチコア処理と機械学習を長年研究してきた2人の研究者によって2018年に設立された。ディープラーニングモデルを処理する高コストなGPUやTPUなどの専用AIハードウェアを使うことなく、汎用CPUでより大きなモデルをより速く、より高い精度で処理するソフトウェアを開発する。

調達した資金は機械学習エンジニア、ソフトウェアエンジニア、セールスおよびマーケティングの採用に使われる。

話題のポイント:現在、AIの躍進を支えるのはムーアの法則(1965年にインテル共同創業者のGordon E. Moore氏が唱えた「集積回路の実装密度は18カ月ごとに2倍になる」)をなぞるように発達したコンピュータの計算能力であることは周知だと思います。

しかし、見方を変えれば2012年以降、常にAIのあしかせになっているのがハードウェアでしょう。画像処理でよく用いられる畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を訓練する場合、GPUのメモリ制限内に収まるように画像サイズやデータセットを縮小する必要があります。こういった精度を犠牲にするやり方は、大規模な医療画像データセットを使用する場合、好ましいとはいえません。

実際、AI専用のチップセットを作る大手NvidiaのチーフサイエンティストのBill Dallyは「ディープラーニングはハードウェアによって完全に制限されている」と述べています。

機械学習が実用的かどうかは予測の速度、効率、精度が判断基準となります。高いレベルで実行されれば適用事例は格段に増えるはずです。

さて、ここまで書いたことがよく知られている一般的な話です。

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Image Credit : Neural Magic HP

今回取り上げた「Neural Magic」は“No-Hardwawre AI”を謳う企業です。高価なAI専用GPUやTPUを使わずに、誰でも持っているPCに入っている汎用CPUで大きなディープラーニングの高性能実行するためのソフトウェアを開発しています。

Neural Magicがユニークなのは「ハードウェアはボトルネックだが、ソフトウェアでもっとできることはないのか?」というニーズに応えている点です。

同社はコネクトミクスの研究を起点に以下を提供すると発表しています。

  • 汎用CPUで大規模なディープラーニングモデルを実行した場合、条件によっては最大10倍のコスト削減
  • 精度を犠牲にすることなくGPUと同等のパフォーマンスを実現
  • 既存のツールと連携し、必要な場所(オンプレミス、クラウド、またはエッジ)に展開できる柔軟性

CNNが適用できる領域に限られますが、ハードウェアの発展に頼らず低コスト化とハイパフォーマンスを実現できる衝撃は大きいです。仮にGPUと併用できるならハイスペックマシーンを社内で取り合うことは間違いなくなくなるでしょう。

ちなみに、CNNが適用できる領域を少し紹介すると、衛生画像や医療画像の分析、音声認識、感情分析、SpotifyやTikTokのレコメンデーションなどが挙げられます。ディープラーニングが得意とする画像分析に含まれているので十分な適用範囲といえます。

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Image Credit : Neural Magic HP

たとえハードウェアの効率化をしたとしても、導入企業からすればスイッチコストが非常に高くなります。一方、ソフトウェアは入力と出力の型を統一しておけば、新しいコンセプトのソフトウェアが登場したとしても柔軟に対応できます。

また、ビッグデータの取り扱い需要の高騰に伴い、これまで表計算程度の処理で済んでいたシステムに限界が押し寄せるでしょう。そのため、リレーショナルデータベースや基幹系システムに代わる新たな仕組みに期待が集まります。

そこで最小限の処理機能しか想定されていなかった従来型ソフトウェアの大幅アップデートがAI市場で起こると感じています。この再発明はスタートアップにとって大きなチャンスが眠っており、Neural Magicはまさにそこを突きました。

Neural Magicは資金調達の翌日、最初の製品となるNeural Magic Inference Engineを発表しました。現在、アーリーアクセスができる状態です。Pytorch、Tensorflow、Caffeなどの主要な機械学習フレームワークからONNXファイル出力で動作します。気になった方は是非試してみてください。

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電気自動車のカギ握る「リチウムイオン電池」、急成長するバッテリースタートアップたち

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ピックアップ:Daimler-Backed Battery Startup Raises Funds, Hires Tesla Veteran ニュースサマリ:次世代リチウムイオン電池の開発を行う「Sila Nanotechnologies」は11月4日、カナダ年金制度投資委員会から4,500万ドルの資金調達を発表した。同社は今年4月にDaimler AGがリードして1億7,000万ドルを資金調達…

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Image Credit:Sila Nanotechnologies HP

ピックアップ:Daimler-Backed Battery Startup Raises Funds, Hires Tesla Veteran

ニュースサマリ:次世代リチウムイオン電池の開発を行う「Sila Nanotechnologies」は11月4日、カナダ年金制度投資委員会から4,500万ドルの資金調達を発表した。同社は今年4月にDaimler AGがリードして1億7,000万ドルを資金調達したばかり。総資金調達額は3億4,000万ドルとなった。

2011年、Sila Nanotechnologiesはテスラ7番目の社員であったGene Berdichevsky氏とジョージア工科大学教授のGleb Yushin氏によって設立された。

資金調達に合わせて2人の幹部の参画を発表。副社長にパナソニックとテスラの元幹部Bill Mulligan氏、COOにソーラーパネルメーカーSunPower元副社長のKurt Kelty氏が加わる。今回の投資と幹部確保によって、バッテリー製品の市場投入を目指す。

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Image Credit:Sila Nanotechnologies HP

話題のポイント:自動車業界の成長と共に、電気自動車の基幹部品となる次世代リチウムイオン電池の開発投資額が増え続けています。

Mercom Capital Groupのレポートによると、バッテリースタートアップの資金調達額は2018年9月時点で7億8,300万ドルだったのに対し、2019年9月時点で16億ドルと倍増しており、その多くの会社がリチウムイオンベースの企業でした。全てにソフトバンクが関わったのではないかと疑いたくなる金額です。

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Image Credit:Battery Storage, Smart Grid, and Efficiency Companies Raise Over $2 Billion in VC Funding in 9M 2019

実際に製品を市場投入している企業が少ない中、調達額が1億ドルを超える企業が増えている理由は電気自動車の拡大と汎用性だと考えられます。

大和証券によると、2038年までに世界の新車販売台数の50%超が電気自動車に置き換わるそうです。それに伴う市場規模は9,185億ドルになる見通しです。

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Image Credit:大和証券 HP

成長曲線の実現性の鍵を握っているのが、電気自動車の部品で最も価格が高いバッテリーといえるでしょう。というのも、未だ内燃機関を上回るコストパフォーマンスを性能面で実現できていないためです。十分な性能のバッテリーをどの会社が最初に手に入れるのか、各自動車メーカーが張っている状態なのです。

数例紹介すると、今回取り上げている「Sila Nanotechnologies」はメルセデス・ベンツで有名なDaimler AGとBMWから投資を受けています。加えて、スウェーデンのスタートアップ「Northvolt」はフォルクスワーゲンとBMWから10億ドル、固体リチウムイオン電池の実用化を目指す「QuantumScape」はファルクスワーゲンから1億ドルの出資を受けて実用化を急いでいます。

日本では2020年に電気自動車向け電池で売上高8,000億円を目指すパナソニックが、本格的に電気自動車の販売へ踏み切るトヨタと合併会社を作って開発を進める意向を発表。世界に遅れを取らない姿勢を示しています。

もちろん、リチウムイオン電池の性能向上がもたらす恩恵は自動車業界に留まりません。電池の持続時間が購入理由になるデバイスは多岐に渡ります。たとえばIoT化でより知能的に振る舞うためには電池の発展が不可欠でしょう。そのためメーカーは低消費電力化に尽力しています。

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Image Credit:Sila Nanotechnologies HP

こうした市場状況下で2018年7,000万ドル、2019年2億1,500万ドルと大型調達しているのがSila Nanotechnologiesなのです。同社はリチウムイオン電池のアノード材料に既存のグラファイトではなく、シリコンベースの材料を採用する技術を持ちます。これにより高サイクル寿命、超低膨張、高エネルギー密度、低コストが実現できると述べます。

Sila Nanotechnologiesの特筆すべき特徴は、「市場ポジション」と「ドロップイン製造プロセス」の2点です。Sila Nanotechnologiesはバッテリーの材料を製造する会社であり、バッテリーを作る会社ではないことを明確にしています。また、既存製造プロセスを変えることなく材料の導入ができる仕様にしているためスイッチコストを最小限に抑えています。市場概念のディスラプト(破壊)を望むVCが大きく興味をそそられる理由ががここにあります。

事実、BMWとAppleとSamsungのバッテリーを作る「Amperex Technology」がクライアントになることがわかっています。バッテリーを作らないことが急速な事業拡大の最大の理由となりそうです。

今年、リチウムイオン電池を実用化した旭化成の吉野彰氏がノーベル化学賞を受賞しました。しかし25年以上経過してなおリチウムイオン電池は膨張や爆発など不完全な面が残っています。

将来のインフラと言っても過言ではないリチウムイオン電池。利用リスク課題を解消し、私たちのニーズを満たす技術を生み出すのはどの企業になるのか、これから5年程度で大きな動きを見せそうなバッテリー領域から目が離せません。

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5年後の市場規模は663億ドル「大麻業界」、ゴールドラッシュのツルハシ目指す“Flowhub”とは

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ピックアップ:KRAFT HEINZ MAKES FIRST INVESTMENT IN CANNABIS, CO-LEADS $23M SERIES A FOR CANNABIS TECH STARTUP FLOWHUB ニュースサマリ:10月15日、大麻薬局向けの小売管理ソリューションを提供する「Flowhub」はシリーズAで2,300万ドルの資金調達を実施した。同ラウンドのリードはEvolv…

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credit:Flowhub HP

ピックアップ:KRAFT HEINZ MAKES FIRST INVESTMENT IN CANNABIS, CO-LEADS $23M SERIES A FOR CANNABIS TECH STARTUP FLOWHUB

ニュースサマリ:10月15日、大麻薬局向けの小売管理ソリューションを提供する「Flowhub」はシリーズAで2,300万ドルの資金調達を実施した。同ラウンドのリードはEvolv Venturesが担当し、e.ventures、9Yards Capital、元NBAコミッショナーのDavid Stern、Venmo共同設立者兼元CEOのIqram Magdon-Ismail、Poseidon Asset Managementが出資している。

Flowhubは合法大麻企業向けに各州の規制に対応した販売、管理、分析、および拡大する方法を提供している。具体的には規制順守、販売時点管理、在庫管理、API接続を保証するツールが挙げられる。

調達資金は生産フロー革新の加速、技術人材の採用、オープンAIアプローチを用いた技術統合とコラボレーションによるパートナーシップエコシステムの拡大に使用される。

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credit:Flowhub HP

話題のポイント:成長著しい合法大麻市場。市場規模は2025年末までに663億ドルになるとされ、年平均成長率は23.9%と物凄い加速度で成長するとみられます。

日本では「依存性」を懸念して否定的な意見が多い印象ですが、世界の見方は少し違います。なかでも医療用大麻においてはその有用性が主張されつつあるため肯定的な意見が増えています。実際、2018年4月時点では大麻由来の製品を承認している国は49ヶ国存在します。

世界の中でも医療用大麻業界のパイオニアとされる米国。Flowhubは米国で欠かせない存在になりつつあります。その背景として2つの需要が挙げられます。

1つ目が、急拡大する市場需要です。1996年のカリフォルニア州から始まり14の州が住民投票によって医療用大麻が合法化されました。

アルツハイマー病などの神経性疾患、がんの化学療法やHIV/AIDS関連の副作用など消化管などの病気に対する効果があることが認められつつあります。これを受けて、医師と患者から規制緩和の声が大きくなっているのです。

加えて、違法に関わらず生産、流通、販売を行う反社会勢グループの資金源になっていることを問題視する声が上がっています。違法の状態でも犯罪件数が減る傾向が見られないため、合法化して国が管理することである程度の制御をする需要が高まりつつあります。

2つ目が、税収増加による公共政策目的です。大麻草と派生品に課税をすることで税収を得ることができます。さらに企業利益の増加が州税収を増加させます。

2004年のバーモンド州から始まり15の州が立法プロセスによって税収政策が可決されました。これらを学校資金、薬物依存防止・治療など社会的利益に配分しているのです。

以上の2つの要望を踏まえて、国民主導による市場健全性を優先するような合法化の動きと、産業による税収創出を目指した制度化に突き動かされているのが米国の現状です。

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credit:Flowhub HP

一方、医療用大麻は国連の薬物統制条約で禁止されている(2020年3月までに規制見直し予定)ため、地域ごとのリテラシーに差があり、規制制度の足並みを揃えることができない状況です。州ごとにコントロールできる税の最適解も模索中であることもあり、規制制度は混乱の真っ只中にあるといえます。

こうした環境に柔軟に適用できるからこそ、Flowhubの存在価値が大きくなることは想像しやすいでしょう。規制対応を外部に任せられるため、利用企業はサプライチェーンのサービス拡大に集中できます。

改めて、米国の善意に任せない「仕組み化」の能力の高さに驚かされます。良いと判断すれば潮流に逆らってでも実現する国民性と仕組み化で業界を牽引してきます。

日本においても、今年5月に厚生労働省が「海外で承認前の薬であっても、安全性が確認できれば医療機関が治験で使うことを認める」と発表し、医療用大麻に前向きな動きを見せています。日本市場でFlowhubのような立ち回りがベストかどうかはわかりませんが、サプライチェーンに食い込むなら今から準備が必要となりそうです。

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AmazonからMSへ電撃移籍、ゲームストリーマーShroudが「Mixer」で独占配信へ

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ピックアップ:Twitch megastar Shroud is joining Ninja on Mixer as an exclusive streamer ニュースサマリ:世界で最も有名なゲームストリーマーの一人であるShroud(シュラウド)が、Amazon傘下のストリーミングプラットフォーム「Twitch」を離れ、Microsoftが所有する「Mixer」で独占配信することを発表した。 …

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Image Credit: Twitter

ピックアップ:Twitch megastar Shroud is joining Ninja on Mixer as an exclusive streamer

ニュースサマリ:世界で最も有名なゲームストリーマーの一人であるShroud(シュラウド)が、Amazon傘下のストリーミングプラットフォーム「Twitch」を離れ、Microsoftが所有する「Mixer」で独占配信することを発表した。

今年8月に同じくTwitchのスターであったNinja(ニンジャ)がMixerと専属契約を結んだことを発表し、ストリーミング業界に衝撃を与えたニュースは聞くに新しい。著名ゲーマー2人の移籍はファンにとっても、業界にとっても衝撃を与えるだろう。

話題のポイント:e-sportsやストリーミング業界に少しでも関わりがある人なら誰でも知っているShroud。プロゲーマー達も彼の一挙手一投足に注目し、新作ゲームに対する彼の評価は大きな影響力を持ちます。

現在ストリーミングプラットフォームはTwitch(Amazon)、YouTube Gaming Live(Google)、Mixer(Microsoft)、Facebook Gamingの4つが市場シェアの大半を占めています。Twitchが業界をリードしており、視聴時間で比較すると業界2位のYouTube Gaming Liveに38倍の圧倒的な差をつけています。(ちなみにMixerの283倍)

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Image Credit:Streamlabs & Newzoo Q3 2019 Live Streaming Industry Report

Shroudは業界をリードするTwitchで第2位のフォロワー700万人を超えるトップストリーマー。その彼が業界3位を争うMixerに移籍したのです。大胆に例えると、日本でYouTube登録者数第2位のヒカキンがニコニコ動画にだけ動画を上げることを宣言したのに匹敵する衝撃です。ちなみにNinjaもTwitchでフォロワー1,400万人を超えるトップストリーマーでした。

今回はShroudのMixer移籍がストリーミングプラットフォームにどのような影響を与えるのか、2カ月早く移籍しているNinjaの例から考えようと思います。

SteaLabsとNewzooの業界レポートによると、Ninjaが加入した8月以降、Mixerのストリーミングプラットフォーム主要指標は第2四半期比で、総視聴時間は10.6%減の902万時間、総ストリーミング時間は288%増の326万時間、ユニークチャンネルは200%増の300万でした。

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Image Credit:Streamlabs & Newzoo Q3 2019 Live Streaming Industry Report

総視聴時間が減少している点に言及すると、メガヒットゲーム「Fortnite」に世界中が飽き始めていることが原因だと思われます。現在でも最も視聴されているコンテンツであることに間違いありませんが、全盛期に比べると40%ほど視聴時間が減っています。

Ninjaは「Fortnite」で絶大な人気を手に入れたプレイヤーです。Ninjaによるストリーミングのほぼすべてを占める「Fortnite」の人気に陰りが出たことが活躍の足かせになっていることは自明でしょう。

しかし、この傾向は移籍前から出ていました。Ninjaチャンネルの有料登録者数は2018年3月時点で25万人いたのに対し、2019年7月時点で1万5,000人と約6%にまで急激に落ち込んでいます。つまりMixerがNinjaに移籍金をわざわざ払って引き抜いた目的は視聴時間の増加ではなく、ストリーマー数の増加が目的と推測されます。

一般的にストリーミング拠点を複数持つ人は少なく、ユーザーにお試しで使ってもらえるだけで一定数のユーザーがMixerに定着する自信が合ったのでないでしょうか。言い換えれば広告塔としての役割を持ってもらうだけで十分な費用対効果があるという算段であったと感じます。

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Shroud のTwitterを引用

Mixerの引き抜き戦略を考えるとShroudの移籍もストリーマ増加が目的でしょう。ただしNinjaとは違い、視聴時間の増加も大いに期待ができます。

Shroudの特筆べき特徴は「配信回数の多さ」「人気がゲームタイトルに依存しない」の2点です。Ninjaが1カ月に約15日ストリーミングを行うのに対して、Shroudは約25回です。そのほとんどで7〜12時間のストリーミングを行います。また、FPSを軸に「PUBG」「Apex Legends」「CoD」など多様なゲームをプレイし、どのゲームに対しても2万人程度の視聴者を集めています。つまり、ゲームタイトルの流行り廃りの波を乗りこなしてくことができるわけです。

最近の二人のストリーミング状況を参考に、今後のMixerでの活動実績を予想してみます。Ninjaの基本スペックを「視聴者数:1万人、視聴時間:6時間、視聴回数:15回 / 月」と仮定すると月の総視聴時間は90万時間。Shroudを「視聴者数:2万人、視聴時間:6時間、視聴回数:25回 / 月」と仮定すると月の総視聴時間は300万時間になります。およそ33倍となり、ShroudだけでMixer全体の1/3程度の視聴時間を生み出す計算になります。

もちろん既存Twitchユーザーにとってはスイッチコストがあるため上記ほどの差は生まれないと思います。しかし、「配信回数の多さ」「人気がゲームタイトルに依存しない」の2点が続くとすればMixerの躍進に貢献することは間違いないでしょう。Ninjyaがユーザーのアテンションを惹きつける役割を果たし、Shroudが継続利用するフックとして機能する形になると感じます。

タレントの人気を生み出すことで成長したライブストリーミング業界。まだ黎明期の業界を牽引してさらなる成長を生み出すのは誰になるのか、GAFAMのうち4社(Google VS Amazon VS Facebook VS Microsoft )がしのぎを削る戦いにこれからも目が離せません。

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Amazonが変革する医療サービス

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ピックアップ:Amazon acquires start-up Health Navigator, its first health-related purchase since PillPack ニュースサマリ:10月24日、Amazonがオンライン医療診断サービスと患者の重篤度選別ツールを開発する「Health Navigator」を買収したことを発表した。買収額は非公開である。 Health…

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credits : Amazon HP

ピックアップ:Amazon acquires start-up Health Navigator, its first health-related purchase since PillPack

ニュースサマリ:10月24日、Amazonがオンライン医療診断サービスと患者の重篤度選別ツールを開発する「Health Navigator」を買収したことを発表した。買収額は非公開である。

Health Navigatorは2014年に設立され、臨床医や看護師が患者を症状に合わせて適切な施設に案内できるサービスとして立ち上がった。Health Navigatorはオンライン医療企業向けサービスであり、顧客企業のプラットフォームに統合することを前提に開発されている。

買収後はAmazonが9月に立ち上げた「Amazon Care」に参加し、従業員向けにサービスが継続提供される。これまでの外部顧客に対しては段階的に提供を停止する。

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credits : Health Navigator HP

話題のポイント:今回の買収はAmazonが目指す“ヘルスケア・ポートフォリオ”の実現に向けた確かな一歩となります。昨年、Amazonは「Berkshire Hathawa」と「JPMorgan Chase」と提携して非営利団体「Haven」を立ち上げました。また、オンライン薬局「PillPack」を7億5,300万ドルで買収しています。今回の「Health Navigator」の買収も、Amazonが目指す一大ヘルスケア・ポートフォリオ確立を達成する上で重要なマイルストーンになったことは間違いないでしょう。

こうした買収企業サービスとAmazonが持つ物流インフラと組み合わさった際、医療サービスの利便性が向上される点は容易く想像できます。病院へは必要最低限行けばよく、軽度な症状の治療に必要な物は自宅に届くようになるでしょう。風邪薬と安心感を貰うためにスケジュールを割いて病院へ通う時間を消耗する必要がなくなるはずです。

ここまで聞くとサービスの恩恵を受けるのは消費者だけだと感じるかもしれませんが、むしろ一番喜んでいるのは雇用主である企業です。

米国の医療費が世界で最も高いことは知られています。日本と違い米国では公的医療制度は高齢者および障害者を対象としたものしか用意されていないため、企業が保険料を負担して従業員を民間保険に加入させるのが一般的です。企業にとって年々高騰する医療費に合わせて高くなる保険料が大きな負担になっているのです。

そのためAmazonの業界参入を称賛し、最適化したリソースで予防医療に挑む試みに期待が寄せられています。

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credits : Amazon Care HP

しかしAmazonはとても慎重なプロセスを選んでいます。今年9月に自社従業員向けサービス「Amazon Care」を発表。Amazonの従業員であればオンライン医療サービスを通じていつでも受けられます。つまり、市場需要は把握しつつも、自社内で完結するサービスに留まる決定しかしていません。

大きな理由として、ヘルスケア業界はステークホルダーが複雑であることが挙げられます。一貫したシステムを構築するには提携が困難になることが予想でき、時間とお金を無駄に消費する可能性が高いため大きな失敗の原因になると判断したのでしょう。

実際、2008年にGoogleは「Google Health」という処方箋や投薬履歴、通院記録の管理ができるサービスを立ち上げましたが、病院や保険企業などと提携に苦戦した結果、2011年に閉鎖しています。

現在60万人を超える従業員数を抱えるAmazonでは、従業員向けだとしてもサービス展開規模としては十分なもの。ここで培われるノウハウとサービス完成度を武器に、ヘルスケア業界に乗り込む戦略をじっくり取れる点は一つの強みといえるでしょう。

現状、米国にある医療に関する社会問題を解決できる環境が整いつつあるのはAmazonだけのように思えます。Amazonが生み出す結果がこれからの社会の流れを大きく変えることになるかもしれません。果たして救世主になれるのか、今後の動向に注目が集まります。

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