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SasakiShun

SasakiShun

起業準備中。元ソフトバンクのエンジニア。学生時代に鳥人間コンテスト入賞経験あり。ディープテックや社会実装をテーマ>にしたスタートアップが好き。執筆分野は医療/不動産/VR/AR/AI。Twitterアカウント@sanyama1

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マンガ専用の多言語翻訳システム「Mantra Engine」正式公開、さらなる精度向上の構想も

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ニュースサマリ:マンガに特化した機械翻訳技術および法人向けサービスを展開するMantraは7月28日、多言語翻訳システム「Mantra Engine」の正式版を公開した。Mantra Engineはマンガの高速な多言語展開を可能にする、出版社およびマンガの制作・配信事業者を対象にした法人向けクラウドサービス。 マンガの翻訳版制作に関わるほぼすべての作業をブラウザ上で可能にすることにより、簡便な操作…

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『Mantra Engine』動作画面 ©️Kuchitaka Mitsuki

ニュースサマリ:マンガに特化した機械翻訳技術および法人向けサービスを展開するMantraは7月28日、多言語翻訳システム「Mantra Engine」の正式版を公開した。Mantra Engineはマンガの高速な多言語展開を可能にする、出版社およびマンガの制作・配信事業者を対象にした法人向けクラウドサービス。

マンガの翻訳版制作に関わるほぼすべての作業をブラウザ上で可能にすることにより、簡便な操作性と、関係者全員で進捗を共有できる利便性を実現している。

同社が開発したマンガ専用の機械翻訳技術とプロの翻訳者による修正・校閲を本システム上で組み合わせることにより、従来の翻訳版制作のワークフローの約半分の時間で翻訳版の制作が可能となる。対応言語は英語・中国語(簡体字)から開始し、順次追加を予定している。

話題のポイント:マンガの海外展開、海賊版による経済的損失問題の解決を目指すMantraが手がける「Mantra Engine」の主な役割は「文字認識」「機械翻訳」「自動写植」の3つを素早く実行することです。電子版の普及を背景にライセンス運用から多言語配信で売り上げを拡大したいマンガ業界にとって、週刊連載にも対応できる仕組みは強力な武器と言えるでしょう。

テクノロジー企業の共通事項ではありますが、特にAI企業にとっては自動処理できる範囲が拡大すればそれだけ付加価値が大きくなります。コアなデータへのアクセス確保ができたら、次はストックし続けるデータを活かす手を考えていく必要があります。

Mantra代表取締役の石渡祥之佑氏は、今回の正式版から追加された「用語集」こそがまさに機械翻訳の一番大きな課題に対する解決策になると期待を寄せていました。

マンガでは作品・作家独特の固有名詞が数多く登場します。一般的にGoogle翻訳を利用する場合は、同じ固有名詞を含む文章を読ませて同じミスを繰り返しても受け取り手で処理できますが、すべて訂正するのは物凄い労力となります。新しく登場するごとに登録できるというのはシンプルですが効果は大きいです。

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Image Credit:Mantra

「用語集」は自動翻訳されたものに対して、翻訳者がどこを訂正しているのかをエラー分析するというアプローチでしたが、今後は動的な方法も検討してるそうです。

すでに学習済みのモデルを関連したタスクに応用する手法である転移学習の一種であるドメイン適応を用いることで、1ページ目の翻訳訂正を2ページ目の自動翻訳に適応することで精度を向上させるアプローチを構想していると言います。

しかし、あくまで「用語集」や「動的アプローチ」は機械翻訳の汎用的な精度向上手段です。セリフが横書き、推理マンガの長文、少女マンガのモノローグなど、マンガの自動翻訳という大きな括りで見ると、作品ごとに「文字認識」「機械翻訳」「自動写植」を適用させるような努力が今後も必要となります。

課題の優先度が横並びな分、相談された作品に必要な要素から取り組んでいくとのことでした。インパクトの大きな課題から取り組む優先順位を決めていくのがセオリーだとは思いますが、目の前の顧客を一人ひとり満足させていく過程が全てMantra Engineの外形を作り上げていく、これもターゲット領域にマッチした正攻法なのだと感じます。

軽くて安くて広く見れるARディプレイの新技術「Ostend」、その強みを紹介

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  ピックアップ:New AR Display From Ostendo Capable Of 150 Degree Field Of View At Low Cost ニュースサマリ:高度なディスプレイテクノロジー企業であるOstendo Technologiesは、ARデバイス用の高解像度シースルーディスプレイおよび光学システムを開発した。2005年に設立された同社はこれまでに2億ド…

 

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Image Credit:Ostend

ピックアップ:New AR Display From Ostendo Capable Of 150 Degree Field Of View At Low Cost

ニュースサマリ:高度なディスプレイテクノロジー企業であるOstendo Technologiesは、ARデバイス用の高解像度シースルーディスプレイおよび光学システムを開発した。2005年に設立された同社はこれまでに2億ドル以上の調達を完了している。

共同創設者兼CEOのDr. Hussein El-Ghoroury氏によると、「当社のテクノロジーにより、複数のQPIディスプレイをレンズの端にぴったりと並べることで、メガネを小さく軽量に保つことができる」とのこと。

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Image Credit:Ostend

話題のポイント:ARは目の前をディスプレイで覆うことができない分、眼鏡に搭載可能な小さなディスプレイを透過ガラスに照射することが求められます。ディスプレイが小さいため短い距離で視野角を確保するのは光学的に容易ではありません。その点において、Ostendの水平視野角150°というのは驚異的な数字です。Magic LeapやHoloLens の約3倍になります。

しかし、Ostendの本当の強みはこの「小さなディスプレイ」を作る能力にあります。もう少し厳密に表現すると、原色(赤ー緑ー青)をデジタル指定で自在に発光させられる3次元集積回路(3D-IC)半導体を作れる点が強みです。これらを高密度に配列するアーキテクチャを組むことで既存のマイクロディスプレイの欠点である電力効率、小型化、コストを緩和可能にしました。この光処理装置は量子フォトニックイメージング(QPI)と言われています。

QPIの重要な革新の1つである「小型化」がなぜできるのかについては、光学的知識を前提とせずに説明するのが困難であるため、気になる方は「Quantum Photonic Imager (QPI): A New Display Technology and Its Applications」こちらの論文を読んでいただけると詳細が掴めると思います。

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Image Credit:Ostend

QPIの特徴は高輝度、電力効率、コンパクトサイズです。今回のARグラス用ディスプレイに最適なのはもちろんですが、様々なアプリケーションに適用できます。

モバイルプロジェクターでは小さなピクセルピッチと高輝度の組み合わせにより、QPIは完全な視差ライトフィールドディスプレイを実現するのに最適です。また、軍事用途としてIR帯域のいくつかの異なる波長を単一のQPIデバイスに統合して、IR対策やIR-IFFデバイスとして使用できます。

2020年にすべての製造工程を持つ1,500平方メートルのオフィス兼工房を開く計画がある同社。ハードウェアベンダーが最先端スマートルグラスを製造するイノベーションを下支えする存在となれるのか。ゲームチェンジャーへの期待が今後さらに集まることでしょう。

16歳の少年とMicrosoftの挑戦、Mixer閉鎖は失敗だったのか?

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ピックアップ:The Next Step for Mixer ニュースサマリ:Microsoftは22日、ライブストリーミングプラットフォーム「Mixer」を2020年7月22日に閉鎖すると発表した。またMixerのコミュニティと技術はFacebook Gamingに統合される。Mixerで配信契約を結ぶパートナーはFacebookのパートナー契約に移行できる。しかし契約するかは任意である。 話題…

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Image Credit:Mixer

ピックアップ:The Next Step for Mixer

ニュースサマリ:Microsoftは22日、ライブストリーミングプラットフォーム「Mixer」を2020年7月22日に閉鎖すると発表した。またMixerのコミュニティと技術はFacebook Gamingに統合される。Mixerで配信契約を結ぶパートナーはFacebookのパートナー契約に移行できる。しかし契約するかは任意である。

話題のポイント:16歳だったMatt Salsamendi氏が立ち上げたBeamというストリーミングプラットフォームが、Microsoftに売却されてMixerという名前に変わったとき、彼は18歳でした。そして今年7月に完全閉鎖されるとき、彼はまだ22歳です。

Microsoftの看板を背負ってAmazon傘下の巨大ライブストリーミングプラットフォームTwitchへ挑戦を託され、4年の月日を大きな意思決定の連続で過ごしたのちに閉鎖となり、Facebookにコミュニティと技術を移行することになったMixerは失敗だったのでしょうか。

Windows PhoneやInternet Explorerと並びMicrosoftの代表的な失敗と批判され、パートナーからも不満が飛び交う今回の閉鎖発表。それもそのはずで、TwitchのNo.1、2ストリーマーのNinja、Shroudに契約金を支払って独占配信契約を結ぶ強行策に出たのにも関わらず、1分当たりの視聴者数はTwitchのわずか2.5%しか獲得できずMicrosoftに多大な負債を生んでしまったのです。

確かにMixerだけに注目すると失敗です。Twitchを脅かすどころか市場で最も伸びませんでした。しかし、Microsoftの視点からするとゲーム市場とクラウド市場を占拠するための攻めの一手として大成功を招いたと言えるのではないでしょうか。

今後のゲーム市場はクラウドゲームを背景に「ゲームを見る」と「ゲームをする」の壁が低くなり続けます。Google Stadia、Geforce NOW、Amazon と市場が激化していく中ではクラウドゲームの技術基盤だけでなく、YoutubeやTwitchなどのコミュニティ接点を持てているかが重要な要素です。

そして今、コミュニティ形成の競争はゲーム専用から広義なものへと変化しつつあります。YouTubeは動画のストック型から、また、Twitchはストリーミング型から、それぞれのアプローチで拡張を模索中です。実際にTwitchではゲーム以外のジャンルのストリーミングも盛んになってきており、政治解釈の意見交換の場やアーティストの発信の場としても機能し始めています。

こうした市場変化に対応するべく、Microsoftはゲーム事業のクラウドゲームサービス「Project xCloud」のタッチポイントとしてMixerコミュニティに期待していました。

しかしトップストリーマーの配信が成長ドライブではないことが判明したことで、Microsoftはゲームという角度からではTwitchのコミュニティには追いつけないと判断したのです。

一方、これまでのノウハウを活かし、既存の巨大コミュニティにバックエンド技術を導入する形で配信機会を維持する戦略に舵を切った、と考えればどうでしょうか。つまり、MicrosoftがMixer閉鎖と引き換えに欲しかったものはFacebook、Instagramのコミュニティだったということです。

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Shroud のTwitterを引用

他方、Facebook GamingはUXに課題を抱えていました。そのUXの悪さからFacebook Gaming Creator Programに移動して90日間の滞在を選択したMixerパートナーに2,500ドルを支払うとしてるにも関わらず、ほとんどMixerのパートナーがFacebookを選ばない可能性が高いことがThe Vergeの取材で明らかになっています。

この問題を解決してFacebookが得意とするコミュニティ開発に専念するためにも、Mixerが持つ1秒未満のレイテンシストリーミングプロトコルFTL(Faster Than Light)や課金システム、分割画面機能など他社にはない技術的な強みを取り入れたかったはずです。

つまり、Microsoftはコミュニティを、Facebookはツールを補うことを目的としたポジティブな統合だと捉えられることができるでしょう。これまでコミュニティ開発で成功事例がないMicrosoftにとっては最良戦略に思えます。競合がGoogle Stadia × Youtube、Amazon × Twitchという陣形を取る中、Microsoft × Facebookという布陣で対抗できるようになりました。

これだけでもMixerは失敗ではないと断定するのに十分ですが、Microsoftに更なる営利をもたらす可能性があります。それはFacebookがAzureの顧客になるかもしれないということです。

Facebookとの現段階での取引では含まれていないことを明言していますが、Microsoftは2019年5月にSonyのPlayStationと独自のビデオおよびコンテンツストリーミングサービスにMicrosoftのAzureとAIを使用することでパートナーシップを結んでいる例があります。Xbox vs PlayStationというハードウェアで競争する相手をクラウド事業の顧客としたMicrosoftが、直接の競争相手に当たらないFacebookを今後巻き込んだとしても不思議ではありません。

これまで大手クラウドサービスとは距離を置いて動いてきたFacebookが何らかのサービスにAzureを選ぶ布石になるとすれば、MixerはMicrosftにとって大成功だったと断言できるでしょう。

これはMatt Salsamendi氏が16歳から思い描いてきた自社の成功とは違うのかもしれません。しかし、彼の活動はライブストリーミングが歩んでいくこれからの歴史を促進する一つのピースとして貢献し続けるはずです。その結果がどうであれ、不確実性の中で社会にベストを尽くした誇るべき功績だと思います。

今回の発表を受けてライブストリーミング市場はどのような局面を迎えるのか、ライブストリーミングの動きも注目ですが、重役から解かれるMatt Salsamendi氏が今後何を仕掛けるのかにも注目が集まりそうです。

人工知能がスポーツトレーナーになる「Sportip」、筑波大発スタートアップにDEEPCOREらが出資

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ニュースサマリ:整体師・トレーナー向けAI解析アプリ「Sportip Pro」を提供する「Sportip」は6月25日、マネックスベンチャーズ、DEEPCORE、Deportare Partnersを引受先とする第三者割当増資を実施したことを発表した。調達金額は数千万円としている。 Sportipは、整体・接骨院やフィットネスクラブ、理学療法士などを対象としたスポーツアシスタントAI事業として「S…

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左:Sportip 高久侑也氏、中央左:Deportare Partners 為末大氏、中央右:マネックスベンチャーズ 和田誠一郎氏、右:DEEPCORE 渡邊拓氏
Image Credit:Sportip

ニュースサマリ:整体師・トレーナー向けAI解析アプリ「Sportip Pro」を提供する「Sportip」は6月25日、マネックスベンチャーズ、DEEPCORE、Deportare Partnersを引受先とする第三者割当増資を実施したことを発表した。調達金額は数千万円としている。

Sportipは、整体・接骨院やフィットネスクラブ、理学療法士などを対象としたスポーツアシスタントAI事業として「Sportip Pro」を6月より展開している。今回の資金調達をもとに、個人に合わせた適切な指導を届けるサービスとしてSportip Proの開発強化を実施する。

話題のポイント:様々なスポーツで、年々アマチュアのレベルが上がっていると感じます。2000年代、高校生で150km/hを超える速球を投げられる投手が話題にならなかったことはありませんでした。しかし現在は、日本で話題になるのは160km/hを超える投手で、メジャーリーグのトップは平均球速が160km/hを超える時代です。

プロになってから10km/h以上の球速アップは稀であるため、小・中・高・大学の期間に食事のバランス、筋力トレーニング、身体を使い方といった情報が容易に入手できるようになった結果、ボトムアップが図られて突出する選手のレベルが上がったのが要因ではないでしょうか。

しかし、そういった情報はあくまで平均値です。全スポーツ選手の身体組成が均一であるならば問題はありませんが、定量的に見れる情報(身長、体重、筋肉量など)から、定量的には把握しづらい骨格や癖に至るまで、個人でベストエフォートは変わります。自分に合わない情報に踊らされ、身体を壊してしまうケースも生んでしまう怖さもあるのです。

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Image Credit:Sportip

これは「お金持ちが持つもの」が時を経て中間層、そして貧困層へと普及することを指すバリアン・ルールが当てはまる状況に似ています。スポーツにおいては刻一刻と変わる自分の身体を自分以上に知りコントロールしてくれるパーソナルトレーナーの存在です。

最近パーソナルトレーナーを付けている人も増えてきましたが、まだまだ少数で高価です。本来最も必要になるであろう学生や、ケガのリスクが増す40代以上のスポーツマンに向けて低価格・高品質なものとして普及を望む層は多いでしょう。しかし残念ながらすでに民主化へ目論見を持ち動き出しているケースはありますが、実現していません。

では、今足りていない要素は何か。それは誰でも簡単にそして正確に、身体の定量化しづらい情報を取得する技術です。正しく身体の動きを把握できなければ良質なフィードバックに意味はありません。今回取り上げた「Sportip」はここに強みを持っています。

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Image Credit:Sportip

同社はスポーツ科学で有名な筑波大学発の企業です。スポーツ特化のデータセットを持つ研究室と共同開発体制を取り、スマホのカメラでの高精度な姿勢推定を実現しています。あなたの身体がどのように動いているのか、またその動きは理想的な形でどのように乖離しているのか。容易かつ正確に身体の姿勢を把握できれるコア技術は、データセット作成コストを考えると他社が簡単に模倣できるものではありません。

今月の19日まで開催されていたCVPR2020でも話題になったのが、Facebookも力を入れる単一カメラでの姿勢推定です。筑波大学の蓄積してきた高価なモーションキャプチャで撮影されたデータセットと、スマホカメラとのクオリティギャップを埋めるSportipのアルゴリズムのかけ合わせで、スポーツの動作において圧倒的な差別化を図れたのは深いレイヤーでの産学連携の賜物でしょう。

また同社は筑波大学のフィードバックを専門とする研究室とも提携しています。スポーツ医学、運動生理学等をバッググラウンドに抱え、最先端の知見をサービスに組み込めるのは大きな強みです。

現在はtoB向けのサービスを展開している同社ですが、いずれtoCのサービスとして無人パーソナルジムの構想も明らかにしています。「一人にひとつのコーチを」同社のビジョンが実現するとき、ソフトウェアが物理空間を飲み込み、最良の体験へと導いた代表的な事例となっているかもしれません。

 

マンガの自動翻訳が救う「経済損失」、海外市場に挑戦するMantraの可能性

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最近の自動翻訳への不満は一昔前と比べると格段に減ったように思います。私は海外記事の引用をすることが多いため自動翻訳を頻繁に使いますが、意味の理解にストレスを感じることはありません。テキストデータであればGoogle翻訳、DeepL。音声であればYoutubeの音声自動翻訳とネットを通した言語の壁はなくなりつつあります。 ただし、画像データは例外です。一般的な記事には多くありませんが、企業のリサーチ…

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『Mantra Engine』による高速なマンガ翻訳 ©︎朽鷹みつき

最近の自動翻訳への不満は一昔前と比べると格段に減ったように思います。私は海外記事の引用をすることが多いため自動翻訳を頻繁に使いますが、意味の理解にストレスを感じることはありません。テキストデータであればGoogle翻訳、DeepL。音声であればYoutubeの音声自動翻訳とネットを通した言語の壁はなくなりつつあります。

ただし、画像データは例外です。一般的な記事には多くありませんが、企業のリサーチをしていると構造化された図と文字がセットのJPEGがHPに張られているケースが少なくありません。英語であれば多少教養があるので読めますし、最悪Google翻訳に手で入力できるので問題はありませんが、中国語やスペイン語、フランス語で書かれていてはお手上げです。

紙であれば光学的文字認識(OCR)が広く活用されていますが、わざわざ印刷して読み取るのは手間であるのに加えて、リーズナブルに精度の良いOCRを利用することは難しいのが現状です。私が抱えるこの小さな課題は「画像データの自動翻訳」という視点で見えると、まさに大きな課題となっている業界が存在します。

それがマンガです。

日本文化の一つとして世界中に知られるようになったマンガ。私がホームステイした時も、所属していた研究室の留学生とも、最初のコミュニケーションはマンガ・アニメについてでした。文化的な橋渡しの役割を担うマンガが海外に出るときには当然のことながら翻訳されます。

紙に描く場合はもちろんですが、PCで描く場合でもエンコードせずにセリフ・効果音のレイヤーだけを別にして扱うのは不便であるため、自動翻訳するには画像データからテキストだけを読み取って翻訳することが求められます。しかし、これが難しい。

名刺や資料のようにある程度フォーマットが決まっていれば文字認識のルール作りは大変ではあるものの困難ではありません。フォント、場所、誰のセリフなのか、吹き出しの中の読む順番、マンガを正しく翻訳するために必要な情報は複雑です。

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右上:山中武氏、左上:CTO日並遼太氏、右下:関野遼平氏、左下:CEO石渡祥之佑氏
Image Credit:Mantra

そこで今回は、マンガ特化の自動翻訳を実現する「Mantra」創業者の石渡祥之佑氏に海外のマンガ市場と、マンガ特化の自動翻訳とは一体どんな技術なのかについてオンライン取材を実施しました(太字の質問はすべて筆者、回答は石渡氏)。

同社は6月8日にディープコア(DEEPCORE)、合同会社DMM.com(DMM VENTURES)、レジェンド・パートナーズ、およびエンジェル投資家らを引受先とする第三者割当増資により、合計約8,000万円の資金調達を実施しています。

マンガの海外市場について教えてください

アメリカの場合でいうと、漫画にお金を払っている人は日本の1/3程度です。人口が日本の約3倍いるので結構少ないですが、マンガファンが少ないわけではありません。海賊版で読んでいる人が多い状況です。

海外における日本マンガの売り上げは1380億円だと伺いました。かなり小さい印象です。

そうなんです。ただし海外の売り上げは伸び続けています。国内はシュリンクしてて、電子も合わせるとトントンといった感じなので、出ていかないといけない、という思いはあるにはある状況です。

海外ではマンガは紙と電子、どちらが売れているんですか

熱狂的なファンが紙で出ているものを買うケースが多いです。日本だと電子が増えきて半々くらいですが、海外での日本漫画の電子版の売り上げは少ないです。

日本の出版社が製本までのフローを開拓しているんですか、それともライセンスを運用する形ですか

今までは後者が多かったらしいです。日本の出版社の中に海外ランセンス部門があって、海外の出版社からの問い合わせに対して、契約を取り付ける。翻訳、印刷、出版は向こうの出版社がメインでやる形です。紙の場合、海外の出版社が版の開拓、在庫のコストなどリスクを負っている分、日本の出版社の取り分は8%だと言われています。

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Image Credit:Mantra

 

さらに取り分の8%から出版社と作家さんに分けるとなると、単価が安いマンガでは作家さんの海外に出るメリットが薄い状況と言えそうです

本当にそうだと思います。海外で出版された作家さん達にヒアリングしましたが、別に儲かったりしないと聞くことが多かったです。

この状況が変わりつつあると

全体的な流れとしては、電子版をきっかけに日本の出版社が主体となって出版するようになってきています。「MANGA+」が集英社が主体となって英語版を出しているのは良い例です。電子版だけしか出さないのならば販路の問題もなくなる。当然、ピンハネされていた部分がなくなるので、もし売れるんだったら作家さんも出版社も嬉しいですよね。最近その流れが始まりつつあると思っています。

それにMantraはどのように関わってくるのでしょうか

国内のプレイヤーが自分たちで出していきたいとなった時、今までやらなかった工数をやる必要が出てきます。例えば翻訳です。外注してクオリティーチェックするのは大変なので、それをサポートするのがMantraの技術です。

週刊連載を英語版を出そうと思うと、かなりの速度で作業をすることが求められます。翻訳会社とのデータのやり取り、スケジュール調整、修正箇所の訂正。Mantraは一週間以内にできるのを目指すワークツールも含んだプロダクトで、オペレーションが大変になるところをお手伝いしたいと考えています。

ここで気になることがあります。なぜ、Mantraは「一週間以内にできる」ことを明言するほど速度にこだわるのでしょうか?

これには海賊版サイトという大きな問題が絡んでいます。

2018年「漫画村」「Anitube」「Miomio」の3つの海賊版サイトが閉鎖されました。国の知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議「インターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策」で悪質サイトとして実名を挙げられ、サイトブロッキング政策の対象となった結果です。昨年「漫画村」の運営者が逮捕されたのも記憶に新しいと思います。

特に「漫画村」は大きなサイトで、2018年3月時点の月間ユニークユーザ662.1万人、出版物流通額ベースの被害額は約3,000億円と推計されていました。ほとんどが日本国内からのアクセスであったため、国主導のサイトブロッキングで被害の大部分を防げたのは喜ばしいことです。しかし言い変われば、日本国外の被害は全く防げていないということでもあります。

当然、日本のコンテンツを扱うオンライン海賊版は世界中に存在します。経産省の報告によると、特に被害の大きいアメリカでは1.3兆円、その内マネタイズ可能と期待できるのは40%の5,369億円になるとのこと。次いで中国、フランス、韓国と日本文化への関心に比例して被害額が大きくなるのは皮肉なものです。

ここで厄介のは、海外サーバと回線を伝って消費される海賊版サイトは日本の意向だけで動かせるものではないという点です。上記3サイトの閉鎖は、権利者からの申し立て、捜査当局の調査、国会および官僚関係者間での議論の末に法制化に向けて動き出し、NTTグループがこれに応じてアクセス遮断を実施したことで実現されました。

日本でサイト摘発を行う場合でもこれだけ大掛かりであることを踏まえると、各国で実施することの難しさは想像に容易いでしょう。日本の経済的機会損失を一意に解決できないところに海賊版問題の難しさがあります。

 

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Image Credit:Mantra

他方、海賊版サイト利用者の声には面白いヒントがあると石渡氏は言います。

海外のユーザに海賊版を使う理由をヒアリングしたところ、「自分が読みたいものが出版されない」「正規版の更新が遅い」が1、2番で、その次に「無料で読みたい 」という理由でした。他にも「進撃の巨人の最新話が自分の言語で読めるなら金は払うよ」と言われたことがあります。海賊版が強いのは事実ですが、海賊版がユーザの核心をついているのかと言われればそうではない。

特に重要なのが速度なんです。僕たちだって熱狂的に好きな作品なら100円で一日早く読めるなら出しますもんね。

Photonic System Solutionsが実施した調査によると、今の海賊版サイトは日本で出版される前よりも早く違法アップロードが確認されるとのことです。店舗に並ぶまでのどこかで流出している可能性が高いわけですが、更に電子版が普及すればそのリスクも減ります。正規版が最初に登場するのが保証されていて、かつ多言語ならば、正規版への誘導が叶って市場の正常化が達成される可能性は十分にあるでしょう。

ただし「漫画村」の事例を踏まえると、正規版の世界同時配給が海賊版を完全に撲滅することは難しいと言えます。オフェンスとディフェンスのように配給体制とサイトブロッキング体制の両輪が海賊版サイトによる被害を最小にするために必要になると石渡氏は語ってくれました。

さて、ここからは話少し変えて、マンガ特化の自動翻訳とは一体どんな技術なのかについて聞いていこうと思います。

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Image Credit:Mantra

マンガ特有の自動翻訳の難しさとは一体どこでしょうか

マンガは線で書かれた絵の上に、線で描かれた文字がランダムにあちこちに配置されています。読む順番もルール化できません。(同じ吹き出し内にも順番を把握して読まないといけないセリフがある)さらに、多種多様なフォントがあり、手書きで書かれているケースも多いです。マンガ専用の文字認識が必要なのはこれが理由です。

具体的にはどのようなものを作ったんですか

「文字認識」「機械翻訳」「自動写植」の3つです。読んで、翻訳して、書く。

読むことに関しては、マンガ特有のフォント変形に対応。翻訳に関しては、マンガの文脈を考慮しながら翻訳。自動写植に関しては、吹き出しにきれいに収まるようにフォントのサイズ、テキストに位置を認識しながら写植する技術です。

マンガの文字を正しく読む「文字認識」ではどこを作り込んだのでしょうか

文字認識エンジンが背景の上にある文字をたくさんみて学習すれば対応できるようになります。ただし、そのような学習データは存在しません。学習データには絵とテキストのペアが必要になるので、このペアを人工的に作りました。学習データを人工的に自動的に作る技術が肝になっています。

※上記内容は論文査読中。

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Image Credit:Mantra

「機械翻訳」では文脈を理解するのに自然言語処理を活用するんですか

画像処理と自然言語処理の両方を使用します。例えば自然言語処理でわかる文脈はテキストだけです。マンガの場合は、絵とテキストが両方混ざっています。このセリフを言っているのは誰なのか、吹き出しの順番はどうなっているのか、画像的な情報も考慮しながらじゃないと上手に翻訳できません。両方を組み合わせて初めて文脈を捉えることができます。

マンガでのセリフは言い回しが独特だったりします。そのようなものにも対応できるでしょうか

マンガの訓練データがないとマンガの翻訳が精度良くできません。マンガの英語版と日本語版を買ってきて、読み込ませると吹き出しを認識して自動で対訳テキストの集合を取り出してくる技術を作りました。これがマンガドメインの翻訳エンジンを作るためのベースとなっています。

※上記内容は国際特許出願中

日本語版と英語版を対応させること自体は複雑そうではなさそうですが、学習データ自体は参入障壁になりそうです

意外とだるいんですよね。2枚の画像を重ね合わせて取ってくるだけだと簡単なんですけど、変形されていたり、英語版だとページごと抜かれていることがあります。それをいい感じに抜き出してくる技術が翻訳エンジンを作る上では必要不可欠でした。

「自動写植」にも機械学習を活用しているのは意外でした

一般的な翻訳はテキストからテキストに変換する作業なので、普段フォントサイズは意識しません。しかしマンガでは絵から絵に変換することを求められます。フォントサイズ、どこに配置するのか、テキストボックスの縦横幅を考慮した写植する技術が必要です。そのため翻訳したテキストを組版するというのは機械学習を活用できるタスクの一つになります

AIの種を作るための技術作りから始まって、End-to-Endの翻訳エンジンを完成させたMantra。さらには人間によるクオリティーチェック体制を簡単に構築するためのウェブのインターフェイスも自社で持つため、「マンガの翻訳」というタスクが一箇所に収納される形を取れています。

もちろん、法人向けには一度導入したらなくてはならないツールになるでしょう。しかしこれからのマンガ市場を左右するのは今だ「素人」の人たちの爆発力なのではないかと感じます。SNSで話題となり単行本化、アニメ化。小説投稿サイトからデビューといった話は今では珍しくありません。

“ 世間 ”に自分の作品の良し悪しを問いかけることが自由になったのならば、” 世界 “に問いかけるのだって自由になった方が良い。Mantraの技術を見ていて一番に感じたのはSNSが登場したときに感じた感情に少し似ていました。

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Image Credit:Mantra

最後に、このことについて聞いてみると「新しいクリエーター支援という形で、いつかサポートしたい」と力強く語ってくれました。

本当にやりたいのは、マンガの流通から言語の壁を取り払うことです。我々が読めないだけで、韓国の面白い作品だってたくさんあるでしょう。

法人を通して出てくる作品だけではなく、Webマンガでも面白い作品はたくさんあります。いつか個人向け作品のサポートをやりたい気持ちは強いです。

石渡さん、お話聞かせていただきありがとうございました。

Docugamiが指摘する社会課題「企業ドキュメントの機能不全」とは

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ピックアップ:Grammarly makes first investment, taking stake in Seattle document engineering startup Docugami ニュースサマリ:コミュニケーション方法の改善を支援する「Grammarly」が5月13日、企業がドキュメントから情報を作成および抽出する方法を再発明する「Docugami」の1,000万ドルを集…

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Image Credit:Grammarly

ピックアップ:Grammarly makes first investment, taking stake in Seattle document engineering startup Docugami

ニュースサマリ:コミュニケーション方法の改善を支援する「Grammarly」が5月13日、企業がドキュメントから情報を作成および抽出する方法を再発明する「Docugami」の1,000万ドルを集めたシリーズラウンドに参加したことを公表した。Grammarlyにとって最初の投資となる。

Grammarlyは、昨年秋に9000万ドルの資金調達を行い、評価額は10億ドルを超えている。キャッシュフローが好調で収益性が高く、Docugamiの資金調達ラウンドに参加する柔軟性を持っていた。現時点で両社によるテクノロジーや製品で提携する計画はないとしたが、将来の可能性は否定していない。

話題のポイント:Docugamiが解決したい社会課題は「ドキュメントの機能不全」です。これまでコミュニケーションや契約、カルテなどがデジタル化されて「どこに何があるのか」という情報管理は劇的に便利になりました。関わりが薄いプロジェクトだとしても、常識の範囲で入れ子構造化で運用されていれば目的の情報に容易にアクセスできます。

しかし情報管理の目的は整理をすることではなく利用しやすくすることです。経営判断を左右する重要な情報がどのプロジェクトにあるのかを把握できていないと辿り着けないのならば、アクセスが容易であっても意味がありません。

「どこに何があり、それぞれどんな価値を持つのか」を俯瞰できるようになって初めて情報管理ができたと言えるのでしょう。

今、このように価値が把握できていないビジネス情報(非構造化データ)は全体の85%だと言われています。slackで円滑にしているやり取りをストック型の資産として管理できている、過去一年間の会議を新卒で入ってきた社員にも分かりやすい形にまとまっている、そんな企業はほとんどないと思います。

ただし、やろうと思ってできないわけではありません。ルールを作ったり、毎回ちょっとしたやり取りまで可視化するのは無駄が多く、労力に見合いません。これはまさにAIと相性が良い状態と言えます。

Docugamiはこのような状態を「ドキュメントの機能不全」と呼び解決しようとしています。ターゲットは「スモールデータ」、戦略は「AIクロス戦略」「プラグイン」「企業戦略を理解する」の3つです。

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昨今の機械学習はビッグデータがあることが前提になっています。経験が浅い人の判断が経験豊富な人の判断に劣るのは人間でも機械学習でも同じです。データのセンシングと設計をした後に、十分な量のサンプリングを取得できるかがこの技術を有効活用できるのかを左右します。

上で挙げた全体の85%の非構造化データの多くがビッグデータには不向きなものです。契約書、定例会の報告資料のような情報は定性的であるのに加えて、XMLのように規則作りも難しく、それぞれの企業が抱えるデータが異なるため、小さなユニットが無数に存在してまとめて扱うのが難しいからです。

Ducugamiが狙うのはこの企業ごと、または企業内の部門ごとに特有のドキュメントの「スモールデータ」です。小さなユニットごとに解決策を提供し、数を増やすことで非構造化データ全体の情報管理を実現しようとしています。

解決アプローチは明らかにしていないものの、自然言語処理に機械学習を適用するだけでなく、画像認識、XML的なアプローチ、宣言型マークアップのような他の分野や自然科学から発想を得ているとしています。

以前取材をさせていただいたChillStackもそうでしたが、AIの欠点を補う技術の開発が、他企業を引き離す要因となる事例を多く見かけるようになりました。単なるAIが解決できる課題は少なくなり、AI利用のフェーズが進んだことを相対的に感じます。筆者はこれをAIクロス戦略と呼んでいます。

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Image Credit:Docugami

DocugamiのCEOのJean Paoli氏はこれまでMicrosotで幹部を務め、業界全体のXML 1.0標準、Microsoft InfoPath、最新のMicrosoft Officeファイル形式の共同作成者として非構造化データと共にキャリアを過ごしてきたベテランです。他の共同創業者もMicrosotでOfficeを率いてきた経験豊富なメンバーが揃っているため、” Windows ”を最大限活用できます。

Mac OSも同様ですが、OSはブラックボックスな部分が多いです。OSを気にし過ぎず開発できると言い換えることもできますが、理解している方が利用する時に有利であることは間違いありません。Windows Officeはドキュメントデータの宝庫です。

Docugamiは有利なポジションを利用して、企業がドキュメントを分析するのを支援するだけでなく、既存のソフトウェアと生産性ツールにプラグインする形を採用しています。これにより企業への導入コストの最小化し、IT部門の介入や支援なしで機能するほど簡単に動作します。

さらにDocugamiが特徴的なのが、企業のビジネスドキュメントの背後にあるビジネス構造と企業戦略を情報管理に組み込んでいる点です。COOはパフォーマンスを加速して、説明責任を監視し、法規制への配慮を強化することが可能になります。「どこに何があり、それぞれどんな価値を持つのか」を実現する初めてのツールになる可能性は十分にあるでしょう。

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Image Credit:Grammarly

シードファイナンスでの1,000万ドルは大きな調達です.。VCによる発信が盛んになるにつれて、シード投資の決め手はアイディアよりも「チーム」である、というのは広く知れ渡りました。やり切れるのか、信頼しても良いのか、株式を持ち会社のオーナーになろうとする人達はここに注目しています。

今回取り上げたDocugamiが資金を集められた理由も同じで、人に対する期待値が数値に現われたものとなりました。その証拠に、多くの投資家がドキュメントテクノロジーの幅広い経験を持っています。Grammarly、元Google Appsの責任者であったGreg Badros氏、CodaのCEOであるShishir Mehrotra氏、CTRL-Labsの共同創設者であるThomas Reardon氏、元Microsoftの戦略およびパートナーシップ担当上級副社長のHank Vigil氏などが名を連ねます。

これまでとこれからの業界を牽引するパートナーを手にして名乗りを上げたDocugami。これまで解決することができなかった非構造化データ問題を企業に還元するエコシステムとして完結させて期待値を超えることができるのか、これからも大注目のスタートアップとなりそうです。

「ウォーレスとグルミット」がAR作品として復活する理由

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ピックアップ:Wallace And Gromit To Get Story-Driven AR Experience ニュースサマリ:Aardmann Animations、W&G Ltd、Fictioneers Ltdは5月26日、ウォーレスとグルミットの最新作「The Big Fix Up」を2020年秋にAR体験として発表することを明かした。ストーリードリブンな初めてのAR作品とな…

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Image Credit:The Big Fix Up

ピックアップ:Wallace And Gromit To Get Story-Driven AR Experience

ニュースサマリ:Aardmann Animations、W&G Ltd、Fictioneers Ltdは5月26日、ウォーレスとグルミットの最新作「The Big Fix Up」を2020年秋にAR体験として発表することを明かした。ストーリードリブンな初めてのAR作品となるとしている。

ARは6月1日公開のUnity新たな拡張機能「MARS」で開発され、サウスウェールズ大学からの研究サポート、UK Research&Innovationからの資金提供を受ける共同プロジェクトだ。

話題のポイント:ビッグタイトルがAR作品となって登場します。日本でも萩本欽一氏がウォーレスの吹き替えを担当していることもあって馴染みが深いウォーレスとグルミット。しかし2008年12月の「ウォレスとグルミット ベーカリー街の悪夢」以降、10年以上新作は出ていません。

それをあえて今、なぜAR作品として登場させるのでしょうか。

AR作品とした理由はインタラクティブなストーリー作品を生み出せる点が大きいでしょう。

観たことがある方なら分かると思うのですが、元々ウォレスだけが喋り、他のキャラクターは声を出さないのが特徴の同作品です。ウォレスとのコミュニケーションは行動で行われます。つまり、一登場人物として視聴者が参加をしてもウォレスがアクションを認識することができればストーリーとして違和感なく進行することが可能なのです。

上記の理由だけだとVR作品でも良さそうですが、テクスチャとの相性を考慮するとARの方がレバレッジがあるでしょう。油粘土で作られた人形をストップモーションで撮影している同作品は、人形の物語である印象が強い作品です。

人形が実生活に馴染みのある分、視聴者が作品の世界に没入するよりも、テレビで見ていたキャラクターが現実世界にやってきてくれる方が程よい不自然を味わえて新感覚です。要は作品設定のファンタジー性質の差なのですが、「千と千尋の神隠し」と「バグズ・ライフ」の世界には行ってみたいけど、「借りぐらしのアリエッティ」と「トイ・ストーリー」は現実世界で見た方が面白そうという感覚わかっていただけるでしょうか?

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Image Credit:Unity

そして新作を” 今 “登場させる理由は開発環境が安価になったことが大きな点として挙げられます。今回発表された新作は、Unityから拡張機能として6月1日から提供が開始されるAR専用クリエーションスタジオ「MARS」で撮影されることが明らかになっています。

これまでのARアプリは、ポケモンGOも含めて単純に現実世界にコンテンツをオーバーレイさせるものがほとんどでした。もちろんハードウェアの制限もありますが、拡張現実に端末の数だけある現実の物理原則を守らせることで、損益バランスが取れなかったことが主な理由です。実際、ゲーム開発においてもパーティクルや行動制限、距離関係などの空間パラメータをプログラムする工程は相当な時間を要するポイントです。

MARSではコーディングを必要とせず、様々な空間で機能する拡張現実をマルチプレーンに作成できるようになります。Unityは元々SDKを導入してカスタマイズして使うのが一般的です。これまで同様、仮想空間を作るように現実世界にリンクしたデジタル空間を作り上げ、キャラクターを動かすことで自然な動きを演出するMARSは、Unityがすでに所有するアセットストアと組み合わさることで更にコストを抑えながら自由度の高い開発が可能となるでしょう。

作品制作ノウハウを低コストで最新の表現方法に変換できるMARSは、10年ぶりの新作で採算の解像度が低い状態で挑戦するには最良の選択肢となり、制作決定を後押ししたと考えても不思議ではありません。

ウォーレスとグルミット同様に、知名度のあるIPを眠らせているケースは少なくありません。もし今作が成功すれば他IPの活路を見出し、今一度日の目を浴びる例を先導することとなるでしょう。AR好きとしても、幼少期を共に過ごした一ファンとしても今作の成功を心から願って止みません。

8億人の老眼を救う、モジュール式眼内レンズ「Atia Vision」の可能性

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Video Credit:Atia Vision ピックアップ:Atia Vision Closes Second Tranche of $20M in Series D Financing ニュースサマリ:老眼矯正用の眼内レンズを開発する「Atia Vision」は5月19日、シリーズD2,000万ドルの第2トランシェを終了した。本シリーズはCorporant Asset Managementが…

RPReplay_Final1590531176 2Video Credit:Atia Vision

ピックアップ:Atia Vision Closes Second Tranche of $20M in Series D Financing

ニュースサマリ:老眼矯正用の眼内レンズを開発する「Atia Vision」は5月19日、シリーズD2,000万ドルの第2トランシェを終了した。本シリーズはCorporant Asset Managementが主導し、Capital Partnership(TCP)、AMED Ventures、Shangbay Capitalが参加した。

同社は2012年にカリフォルニア州キャンベルで創業。眼科市場の最大セグメントである白内障および老眼の視野回復を目的とした眼内レンズを開発する。

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Image Credit:Atia Vision

話題のポイント:人間であれば避けて通れない道、それが老眼と白内障です。老化と共に水晶体に支障が生じることで視界が霞んだり、近くが見えなくなるこの2つの病気は、世界中で白内障が6,520万人、老眼が8億2,600万人の未治療患者がいると言われています(WHO調べ)。

一度発症すると自己治癒、薬の投与での回復は叶わず、手術による治療以外に治す方法はありません。ただし、白内障の手術は日本で年間140万件、世界中で2,000万回件行われる比較的ポピュラーなものであり、麻酔も目だけの局所麻酔、日帰りの手術が可能であることからも手術件数が多い病気です。

白内障手術では濁った水晶体を取り除いて代わりの眼内レンズ(IOL)を挿入します。眼内レンズは主に単焦点レンズ、多焦点レンズ、非点収差補正レンズの3種類。それぞれ一長一短があって絶対的に良いものがないため生活様式に合わせてレンズを選択する必要があります。言い換えると、術後は多少のデメリットを抱えて元の状態に戻ることはないということです。

40歳の6人に1人、70歳を超えると2人に1人の割合で水晶体に障害を持つ現状を踏まえると、自分が罹らないと考える方が不自然です。人生100年と言われる時代、手術をしても元の状態に戻れずに副作用(ハロー、グレアなど)を抱えて数十年生きていくのは不便すぎますが、これが現在の妥協点です。

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Image Credit:YourSightMatters

今回取り上げたAtia Visionは眼内レンズに新しい選択肢を生み出すスタートアップです。遠くから近くまで、完全な視野の回復を目的としたモジュラー老眼矯正眼内レンズを開発しています。

そもそも水晶体と眼内レンズの決定的な違いは屈折率を柔軟に調整できる点です。物体との距離に応じて厚みを変えることができる水晶体は、近ければ厚くして屈折率を上げ、遠ければ薄くすることで屈折率を下げて焦点を合わせています。

つまり、目が物を見る時に水晶体を操作する筋肉の動きを利用して屈折率を変えられる、そんな便利な眼内レンズがあれば水晶体を代替できるわけです。Atia Visionはこんな机上の空論のようなコンセプトを実現しようとしています。

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Image Credit:Atia Vision

モジュラー老眼矯正眼内レンズはBase LensとFront Opticの2つで構成されています。Base Lensが目の自然な動的調節メカニズムを模倣しているため屈折率調整の役割を持ち、Front Opticは患者ニーズに沿う機能を持たせることが可能な設計です。実際、公表されている実験値からは焦点をシームレスに合わせられる様子が観測されています。

とりわけ、Base Lensの完成はAtia Visionを未解決者が9億人もいる市場で不動のポジションを確立するのに最も重要な成功となるでしょう。いわばBase Lensは「眼のプラットフォーム」です。

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Image Credit:Atia Vision

Base Lensは基本的には一度臨床試験をパスすれば開発する必要はなくなり、患者の数だけ作り続ければよくなります。変数を持つFront Opticの技術開発に集中しつつ、Base LensとFront Opticの標準規格を設けることでサードパーティの参加を促し、トータル販売価格が低い製品を生み出すことが可能です。

実は視力障害の有病率は所得地域で格差があり、低中所得地域の有病率は高所得地域の4倍と推定されています。特にアフリカの近見障害率は80%を超えます。機能面の充実だけでなくAndroidと同様にサードパーティを巻き込むことで廉価版を安く販売する戦略を取れれば、多くの人の課題を解決しつつ、薄利多売を避けて収益構造が強固としていけます。

もちろん、医療品であり保険適用の有無も絡むため従来のデバイスと全く同じやり方が適用できるわけではありませんが、Base Lensはビジネス戦略を強気に攻めれる大きな武器となるでしょう。

現在はヒト初回投与試験(FIH)の生体適合性および前臨床試験に臨んでいる段階だそうです。製品として市場に登場するのはまだ先になる見込みで、今回の資金調達はこの初期試験に使用される予定です。

日本では2007年に多焦点眼内レンズは承認され、2020年4月から眼鏡装用率軽減を目的とした多焦点眼内レンズの使用は厚生労働省が定める選定療養となりました。レンズ代が自己負担で変わりはないのですが、大きな進歩だと言えます。

超高齢化社会を迎え、経済発展が乏しくなった日本はこれ以上の医療費増加は避けなければいけないものの、国民の生産性にも関わる眼の問題をどこまでフォローできるのか。眼内レンズマーケットが2022年までに55億ドルに到達すると言われる中、Atia Visionが両方を一気に解決してくれることを期待して今後も注目していきたいと思います。

まるでポケモンがそこにいるみたい、NianticがポケモンGOの新機能公開

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ピックアップ:Niantic’s latest AR features add realism to Pokémon Go ニュースサマリ:ポケモンGOを運営するNianticは5月26日、「ARブレンディング」「ポケストップスキャン」の2つのAR機能を追加することを発表した。Samsung Galaxy S9、Samsung Galaxy S10、Google Pixel 3、Pixel 4で利…

Video Credit:Niantic

ピックアップ:Niantic’s latest AR features add realism to Pokémon Go

ニュースサマリ:ポケモンGOを運営するNianticは5月26日、「ARブレンディング」「ポケストップスキャン」の2つのAR機能を追加することを発表した。Samsung Galaxy S9、Samsung Galaxy S10、Google Pixel 3、Pixel 4で利用を開始し、今後利用可能デバイスを増やしていく。

「ARブレンディング」はポケモンの手前にオブジェクトが来た時に姿を消す機能で、ポケモンの存在をよりリアルに見えるように演出される機能。

「ポケストップスキャン」は3Dマップ作成用にポケストップやジム周辺を10秒程度のパノラマのような写真を撮影してNianticに投稿できる機能。6月上旬からレベルが40以上のプレイヤーが利用可能となり、徐々に全てのプレイヤーに公開される。

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Image Credit:PokémonGo

話題のポイント:「ポケモンが見える」で始まったポケモンGOは、GOスナップショットで「ポケモンといる」という体験に変わりました。そして実装がすでに発表されている「Buddy Advebture」、今回の「ARブレンディング」「ポケストップスキャン」でポケモンがパーソナルを象徴するものとして認識され、ポケモンがいる拡張現実と現実の境界線が曖昧で意識させない未来に近づいています。

ARのユースケースとして商業的にリードしてきたポケモンGOですが、ARを主機能とすることを意図的に避けてきました。歩きスマホやプライバシーの観点から指摘もありますが、むしろゲームにとってARがベストプラクティスとなるシチュエーションを見極め続けている印象です。

Niantic CEOのJohn Hanke氏によると、ポケモンGOユーザーのARプレイ時間はおよそ2〜 3分。この時間にプレイヤーは何しているのか調べてみると、ゲットしたポケモンと一緒に写真を撮ることに使われていることが発覚しました。ユーザーが自発的に行っていた行動をゲーム内機能として正式にフォローしたのがGOスナップショットです。

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BuddyChallenge の大賞2作品・Image Credit:PokémonGo

GOスナップショットでは好きな場所にモンスターボールを投げてポケモンを出し、近づいたり、一歩引いたり、回りこんだりしながら数タップでAR写真を撮ることできます。ポケモンが彩る日常の魅力は実際見てもらった方が良いと思うので、是非Twitter、Instagramで #GOsnapshot または #BuddyChallenge と検索して投稿された写真を見てみてください。

写真という形でARのユーザー体験をこじ開けたNianticは、次なる一手として協調的な拡張を狙って「Buddy Adventure」を実装中です。これは一匹のポケモンをバディとして扱える機能をマルチプレイヤー化したもので、最大3人でバディを交えた写真を撮影することが可能になります。機能はとてもシンプルですが、人と場所をこれまで繋いできたポケモンGOが人と人とを繋ぐ大きな役割を持ちます。

TwitterとMastodonの中間のようなオープンとクローズを柔軟に変化させられるソーシャルネットーワークの側面が増すつつあるのが今のゲームです。自分の内面を可視化するようなバディ機能が共有できるとなると、対人関係の中で納得する見られ方をすることに物凄い労力を払う現代人にとって強烈な引力となるでしょう。

現実世界の満足がデジタル空間と現実の間で起こる、このようなUXを組めるところがNianticの最大の強みです。

そして今回、新たに「ARブレンディング」「ポケストップスキャン」の2つの機能が追加されることが発表されました。コンセプト自体は2018年、技術基盤のオクルージョンの理解と奥行き概念の追加は昨年末から今年の5月までに立て続けに報告されていたものがポケモンIP適用された形です。(6月14日〜19日で開催されるCVPR2020で研究論文発表予定)

 

Video Credit:Niantic

どちらも技術的には機械学習を駆使して如何に2D画像から空間そのものを把握できるのかを追求しているわけですが、AR用途となるとリアルタイム性、座標精度で求められるレベルは非常に高くなります。Facebookもこの分野を盛んに研究していますが、SNS投稿写真やeコマース用途であるため動画適用は示唆する程度に留まっています。

PCで計算されて作り出された2018年のコンセプト動画から早2年。Nianticが運営するテクノロジープラットオーム「Real World Platform」から出てきたこの2つの技術は、スマホでどの程度の精度を実現できているのかは今から楽しみです。

ゲームから軍用訓練までOK、回転可能なVRモーションプラットフォーム「NOVA」がスゴすぎる

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ピックアップ:Are Human-Sized Hamster Balls The Future Of VR? ニュースサマリ:ニュージーランドを拠点とする「Eight360」が、NOVAと呼ばれる巨大なVRモーションプラットフォームを開発した。NOVAは3点のオムニホイールによって駆動し、単純なコントローラーハプティックスを超える物理的な没入感を提供する。完全なテクニカルサポート、アップグレード、…

ピックアップ:Are Human-Sized Hamster Balls The Future Of VR?

ニュースサマリ:ニュージーランドを拠点とする「Eight360」が、NOVAと呼ばれる巨大なVRモーションプラットフォームを開発した。NOVAは3点のオムニホイールによって駆動し、単純なコントローラーハプティックスを超える物理的な没入感を提供する。完全なテクニカルサポート、アップグレード、メンテナンスが含まれて年間15万ドルでリースする予定だ。

※こちらの記事の内容はPodcastで聞くことも可能です。
※Podcastの最後に『教えてリスナーさん!』のコーナーを作りました!
私からの質問に、こうなんじゃない??教えてやるよ!という方は、是非「#BRIDGEさんに教えてあげる」でTwitterに呟いていただけると嬉しいです!まとめて何らかの形で発信させていただきます!よろしくお願いします!

話題のポイント:VRにとって「没入感」は唯一無二の強みです。むしろ強みにしなければならない、というのが正確かもしれません。ユースケースが分かりやすいため、VRの映像・音声に関係するニュースはよく話題になります。もちろん「没入感」と呼ぶにはこれだけでは不十分です。

想像してみてほしいのですが、VRで勇者としてゲームしているときに、伝説の剣が軽かったり、降った時に重みを感じなかったら一瞬で覚めてしまうと思いませんか?脳が正しかろうと認識させるためには五感+前庭感覚以外にも、皮膚感覚、温度感覚、痛覚といった体性感覚、内臓感覚も欠かせない要素となってきます。

今回取り上げたEight360の作るNOVAは物理的没入感、特に乗物から得られる身体への力を再現するのに特化しているモーションプラットフォームです。

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Video Credit:Eight360

NOVAの大きさは約2m、重量は500kg。球体は3つのオムニホイールの上に置かれ、滑らかにボールを1つの方向に動かすことができます。使用されているモータによるロールは1秒あたり180度が可能で、戦闘機F-4ファントムよりも早い挙動を実現しています。

さらに、球体の傾斜角をシミュレートするだけではなく、加速、減速、力の回転、衝突をシミュレートして反映させていることで再現性が向上し、toB領域へのビジネス展開を可能にした点が特筆すべき点として挙げられます。

NOVAの想定されるユースケースは3つです。

まずはエンターテイメント。ゲームとの相性が良いのは言うまでもありません。大型可動筐体はSEGAが先行して1980年代からゲームセンターに設置しており『ハングオン』を懐かしく思う人もいるでしょう。現在はポッド型で没入感が強いゲーム体験が味わえる筐体まで登場していることを考慮すると、NOVAが生み出す体験はゲーム好きを虜にするはず。

特にEight360の創業者兼CEOのTerry Miller氏は発展途上といえるe-Racingに興味を示しており、十分な参入余地があると語っています。たしかに、トリプルディスプレイにステアリング操作することが多いe-Racingでは、ドライバーへのリアルな環境を提供することに価値があると言えます。

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Image Credit:iRacing

次にアウトリーチツールです。同じ経験をしたからこそプロの凄さがわかり応援できるということはスポーツではよくあることです。簡単に体験できる、ということは市場を盛り上げるのには欠かせません。これまで体験が難しかったレーシングカーや競馬でファンを作るという大きな役割を担っていくことができます。

最後にtoB向け訓練です。ここがEight360が狙うインパクトが大きい領域で、航空学校から防衛関係までカバーすることを想定しています。

以下の国土交通省が出しているパイロット養成に関する資料によると、一人当たりのパイロット訓練にかかる費用は4,000万~5,000万円。航空会社の場合、自社で全額を負担する必要があり、年間およそ6億円もの費用となっています。また、航空学校の費用を国が大きく負担していることもあり、国はパイロット養成に年間20億円を超える経費を負担している状況です。

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Image Credit:国土交通省

現在、訓練用に数億円のフルフライトシミュレータを導入してる航空会社がありますが、訓練としての役割が限定的です。それに比べるとVR×NOVAでカバーできる範囲は、一機で旅客機から戦闘機、戦車にまでおよび広範囲を補うことが可能です。

Eight360はすでにニュージーランド国防軍を顧客としており、年間15万ドルで利用できるNOVAが正式に訓練に導入されることがあれば大きなインパクトとなることは間違いありません。細かい点ではありますが、モデルごとの運動特性に細かく対応することは大変めんどくさいポイントです。今後、高再現度多用途を戦略として事業を進める場合、モデルの運動特性に人的コストをかけずに対応できればハードウェア販売のスケール拡大を推し進められると考えられます。

公表されていることではありませんが、NOVAはすでにiRacing、Project Cars、X-Planeなどの既製のゲームで動作することを発表しており、3Dモデルから運動特性をある程度自動で算出して適応する技術を持っている可能性はあります。

見た目にも特徴あるNOVAがエンターテイメントしても軍用としても認められた時、VRの可能性がまた一つ形になります。「没入感」という強みが、あらゆる産業の取る必要がなくなったリスクをたくさん生み出していく過程は今しか味わえない感動なのかもしれません。

※こちらは記事のまとめです。Podcastを聞きながら見ていただけると嬉しいです。1