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SasakiShun

SasakiShun

起業準備中。元ソフトバンクのエンジニア。学生時代に鳥人間コンテスト入賞経験あり。ディープテックや社会実装をテーマ>にしたスタートアップが好き。執筆分野は医療/不動産/VR/AR/AI。Twitterアカウント@sanyama1

執筆記事

AIで治療薬開発を大幅短縮、新型コロナウイルスに立ち向かうHealx

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ニュースサマリ:AIを活用した希少疾患向けの治療薬開発を行う「Healx」は4月6日、既存の治療薬から別の疾患に有効な薬効を見つけ出す手法であるドラッグリパーパシング(DR)による新型コロナウイルス向けの治療薬開発に着手したことを発表した。 HealxのAIプラットフォームであるHealnetはビッグデータを活用した治療薬予測を行い、候補化合物の特定から治験までのプロセスを24カ月に短縮するのに成…

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Image Credit:Healx

ニュースサマリ:AIを活用した希少疾患向けの治療薬開発を行う「Healx」は4月6日、既存の治療薬から別の疾患に有効な薬効を見つけ出す手法であるドラッグリパーパシング(DR)による新型コロナウイルス向けの治療薬開発に着手したことを発表した。

HealxのAIプラットフォームであるHealnetはビッグデータを活用した治療薬予測を行い、候補化合物の特定から治験までのプロセスを24カ月に短縮するのに成功している。さらに最先端のDRのノウハウを活用し、ウィルスに効果のある、もしくは、症状に対する免疫力向上に寄与するCombination Therapy(併用療法)の開発に取り組む。

特に免疫力の弱い希少疾患を持つ患者向けの新型コロナウイルスを対象とした治療薬トリートメントの開発を行い、5月までにパートナー企業と共同での外部試験の実施を目指す。

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Healxは治療薬開発までの期間を大幅に短縮する:筆者作

話題のポイント:振り返ってみると、世界保健機関(WHO)に中国が症例を報告したのが2019年12月31日。これが「新型コロナウィルス」とWHOが発表したのが2020年1月9日、次の日の1月10日には中国が新型ウイルスの遺伝子コードを世界中に公表しました。

新型コロナウィルス同様、2002年に中国広東省を起点として流行した「SARS」の教訓が活かされる形になったのは中国の迅速な対応のおかげで、公表されてから数時間後にはワクチン開発が始まり、現在開発中のワクチンの数は60種類以上に昇ります(内、臨床試験に進んでいるのは3社)。

それでもWHOはワクチン完成までは1年~1年半を要すると発表している以上、「封じ込め戦略」と「治療薬の再発見」で撃退することを考えていかなければなりません。

治療薬の再発見とは何か?

日本内科学会の報告によると、現時点で安全性と有効性の確認された治療薬はありません。現場では対症療法が施され、日本ではHIV薬とタミフルを併用、中国では抗インフルエンザ薬,抗菌薬,コルチコステロイドが多くの症例に用いられました。

新規で治療薬を開発する場合、およそ1,000億円、10年の費用と時間が必要となり、成功確率は1/30,000程度と言われています。遺伝子コードが公表されているとはいえ、新型コロナウイルスも例外ではありません。創薬では感染症に太刀打ちするのは難しいというわけです。

そこで今注力されているのが、元々は別の疾患を治療する目的で開発された治療薬を再利用して新型コロナウイルスに対抗する方法です。インフルエンザ治療薬ファビピラビル(富士フイルム富山化学)、気管支喘息治療薬シクレソニド(帝人ファーマ)、エボラ出血熱治療薬レムデシビル(Gilead Sciences)など、連日のように話題に挙がるのはまさに治療薬を再利用することを目指して検討されているものです。

これらを使用する場合でも投与量、投与期間などを変える必要があれば、再度臨床試験で効果検証が行わなければいけませんが、費用と時間の点で圧倒的にメリットがあります。パンデミックの中でできる打ち手は既存治療薬の可能性を再発見することなのです。

実は治療薬を再利用するのは珍しいことではありません。ドラッグリパーパシング(DR)と呼ばれ、有名な例を挙げると、狭心症治療薬からバイアグラの開発、鎮痛薬に発毛効果を発見したものがあります。

驚くべきことですが、作用・副作用の発症メカニズムがよくわかっていない既存薬がかなり存在します。当時はなかった解析・分析手法を用いることで網羅的に分子レベルで解析し、より主作用の強い薬、副作用の少ない薬を開発すること、または新たな薬理作用を発見して既存薬を別の疾患治療薬として適応拡大することが徐々にできるようになってきました。低リスクな開発手法として、多くのアカデミックと製薬会社が注目しているのです。

その一役を買っているのが創薬上最大の「ゲームチェンジャー」と期待されるAIです。例え最新の分析方法が確立されてきたとはいえ、薬8,000個、標的となるたんぱく質30,000個、疾患2,000個の組み合わせから有効な組を人間が選び出すのは至難の業です。横に繋げることが難しかった医学文献や治療薬データベースなどの公開データや製薬会社が開発・製造をする治療薬に関する専有データを有効活用できるようになってこそ力を発揮するというものです。

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Image Credit:Healx

今回取り上げたHealxもAIを用いたDRによる希少疾患向けの治療薬を開発するスタートアップです。本来は患者数が少ないことを理由に開発に着手するのが困難な希少な疾患を持つ患者に、安くて、早くて、安全な薬を届けるための開発を手掛けています。

上記した現在検討されている新型コロナウイルスの治療薬の多くが、新型コロナウイルスの特性に対する対抗馬として人間が選定しています。この中から効果が確認されれば言うことはありませんが、提案に人間が関与しない「仮説のない」アプローチをプランBとして仕込んでおいて過剰ということはないでしょう。

創薬×AIのもたらす経済効果は1品目当たり600億円とも言われています。しかし、総力戦となりつつある情勢に対して、AIが戦力として参戦できれば試算を優に超える価値を提供することが期待されます。

via PR TIMES

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新型コロナ“重篤化”をAIで発見せよ、中国・温州中央病院、ニューヨーク州立大学が共同で開発

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ピックアップ:Experimental AI tool predicts which COVID-19 patients develop respiratory disease ニュースサマリ:温州中央病院、ニューヨーク州立大学らは3月30日、新型コロナウィルスに感染した患者の中から、誰が重度の肺疾患を発症するのかを予測できるAIツールを開発したと報告している。 今回のAIが特定できるのは「急性呼…

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写真はイメージ:Photo by Markus Spiske on Pexels.com

ピックアップ:Experimental AI tool predicts which COVID-19 patients develop respiratory disease

ニュースサマリ:温州中央病院、ニューヨーク州立大学らは3月30日、新型コロナウィルスに感染した患者の中から、誰が重度の肺疾患を発症するのかを予測できるAIツールを開発したと報告している

今回のAIが特定できるのは「急性呼吸促迫症候群(ARDS)」。中国の温州にある2つの病院にいた53人の新型コロナ患者のデータを元にして、最大80%の精度でARDSを予測することに成功した。

使用された機械学習モデルは決定木、ランダムフォレスト、およびサポートベクターマシン。性別、年齢、肺炎患者転帰(PORT)スコアなどのこれまで有用とされた指標では予測は機能せず、最も予測に機能したのはアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)とヘモグロビンの増加、および筋肉痛であった。これらの相関関係は今後医師が考慮すべき臨床上の観点であることを示した。

研究に関わったニューヨーク州立大学のバーリ教授は、医師も新型コロナを現場で学習しながら対応している今の状況において、発表したAIツールは医師をサポートするだけでなく、病院が切迫した場合にどの患者に集中すべきかを意思決定するのに役立つと主張する。

研究チームは現在、ニューヨークの患者データを使用してさらに改良することを検討しており、4月中に展開することを目標としてる。

話題のポイント:まず、国境を超えてデータ共有の契約を取り付けた人物を賞賛したいです。研究のためとはいえ、米中間で患者データの共有が早急に行われ、4月から結果を医療現場へ反映することを目標としているそのスピード感に驚かされました。

連日のように食品医薬品局(FDA)が規則を柔軟に変更して、新型コロナの治療を可能な限り迅速に市場に投入することを表明している点も考慮すると、不可能なスケジュールとは言えません。

ただし、今回使用されたデータには新型コロナ感染者53人のうちARDSを発症したのは5人しか含まれていません。精度以前の課題として、医療現場に導入するにはデータ数を増やすのは絶対条件となりますが、この論文で協力者を集いやすくなったことは間違いありません。未開拓地を高速で駆け抜ける正攻法を見た気がします。

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写真はイメージ:Photo by Pixabay from Pexels

さて、ここからは新型コロナを発端としたARDSの早期発見のメリットを見てみます。

医療現場視点から見たメリットは、上記の通りトリアージです。誰にどんな治療が必要になるのかを把握できなければリソースの最適化は叶いません。医師は最大人数の救助に尽力するのをサポートします。さらに患者視点から見たメリットもあります。それは治療施設に自らARDS発症前に移動できることです。

ARDSの治療には気管チューブやマスクを使った人工呼吸器による管理、さらに重篤な低酸素状態に陥った場合は人工肺によるECMO治療を必要とします。新型コロナを受けて急遽実施された(一社)日本呼吸療法医学会・(公社)日本臨床工学技士会による人工呼吸器および ECMO装置の稼働台数調査によると、日本全国には人工呼吸器が約3万台、ECMO装置が1,412台しかないことが分かっています。

機材が揃っていても、運用には装置に熟練した医師による数週間の管理が必要となるため全てを稼働できるわけではありません。そのためARDS発症後に病院を移動しなければいけないケースも生まれるでしょう。

しかし、通常の人工呼吸で酸素化が維持できない患者を他院へ搬送するのは至難の業です。新型コロナによる肺炎の重症化は、突発的には起きず、感染から5~8日後に発展することが分かっているため、この一週間を利用して適切な医療施設に移動できることを可能にする点は今回のAIツールのメリットと言えるでしょう。

<参考文献>

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AI自身をサイバー攻撃から守れーーAIセキュリティ「ChillStack」にDEEPCOREが出資

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ニュースサマリ:AIでセキュリティを進化させる「ChillStack」は3月31日、第三者割当増資の実施を公表した。引受先となったのはAI特化インキュベータのDEEPCORE。シードラウンドで、調達した資金は3,000万円。本調達資金を使ってシステムの開発・改良、ビジネスサイドやバックオフィスを担える人材の採用を進める。 ChillStackの創業は2018年11月。現在はAIを用いた不正ユーザー…

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写真左から:取締役の茶山祐亮氏、代表取締役の伊東道明氏、取締役の新井颯人氏、谷洋樹氏

ニュースサマリ:AIでセキュリティを進化させる「ChillStack」は3月31日、第三者割当増資の実施を公表した。引受先となったのはAI特化インキュベータのDEEPCORE。シードラウンドで、調達した資金は3,000万円。本調達資金を使ってシステムの開発・改良、ビジネスサイドやバックオフィスを担える人材の採用を進める。

ChillStackの創業は2018年11月。現在はAIを用いた不正ユーザー検知システム「Stena」の開発・提供をしている。

また、これにあわせて「AIを守る」ための事業を開始することを発表。近年、AIは多くの製品やサービスに急速に普及しているが、AI自身もサイバー攻撃の標的となる危険性が指摘されている。この課題を解決するAI×セキュリティを理解できる人材の育成をハンズオン・トレーニング事業となる予定だ。3月19日プレスリリースした三井物産セキュアディレクションとの共同研究の成果が活かされる形だ。

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話題のポイント:AIの技術は幸か不幸か隠されたものではありません。「薬人を殺さず薬師人を殺す」の通り、AIも使い手次第で薬にも毒にもなり得ます。

昨今、未知のサイバー攻撃は世界規模で激増しています。高度化や標的型化が進む中で、全く前例のない手法も出てきており、ここに今後AIが絡んでくることは想像に容易い状況です。既存攻撃の対策が基本であるセキュリティが変化しなければ、後手に回り甚大な被害を受けるケースが多発するでしょう。

そんな問題に取り組むのがChillStackです。同社の共同創業者4人は今年の3月に大学院を卒業、代表取締役の伊東道明氏が研究してきた内容を元に「AI×セキュリティ」の事業を展開しています。本誌では伊東氏に今回のプレスにあたりインタビューを実施しました。(太字の質問はすべて筆者、回答は伊東道明氏)

研究からの発展で創業されていますが、元々はどのような研究をされていたんですか

Webアプリの通信をAIを使って監視して、攻撃されているかどうか、何が攻撃されているかを自動で見つける研究をしていました。この内容でIEEE CSPA 2018のBest paper Awardを頂いています。

それは凄い!

論文を見た複数の会社から作ってくれないかという提案があって、そのことに驚きました。これを製品化して世の中に還元した方が良いのではないかと考えたのが起業のきっかけです。

いつ頃からセキュリティに興味を持ったのですか

セキュリティを始めたきっかけは、大学2年生の時に先輩から「セキュリティ・キャンプ」に誘われて4泊5日の合宿に参加したことです。そこでどっぷりハマりました。
※セキュリティ・キャンプ:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の事業の一つ

研究室に所属する前からセキュリティに取り組んでいたんですね。ただ、研究室はAIを中心とした研究をしているところですよね

実は思惑がありました。セキュリティをやっていると、通信やマルウェアの大量のデータを見る機会があります。そもそも大量にあるデータから悪いものを見つけるのがセキュリティなんです。

その作業を繰り返すうちに統計とか機械学習の技術って使えそうだなとぼんやり頭に浮かべていました。しかし当時はAIが氷河期を乗り越えるぐらいの時期で、書籍などの情報が多くはありませんでした。そこで、AIの研究室の先生に相談してみたところ「行けるかもね」と良いディスカッションできたのが決め手となりました。

共同創業者は同じ研究室で別な研究をされていた方々ですよね

論文を発表した後にハッカソンに参加したんですけど、その時のメンバーです。ハッカソンでは顔認証決済の自動販売機を作って最優秀賞をいただけたことに加えて、お互いの長所を出し合って開発サイクルをガンガン回せたのでこのメンバーでやりたいと考えたんです。

ハッカソンに一緒に参加したのは大きな経験ですよね。信頼できるという意味で。

研究室では一緒に何かをやるということがあまりありません。お互いのスキルやモチベーションって意外と分からないものです。ハッカソンで初めて相手の出来ることを把握しました。

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話を少し変えます。研究を製品にする上で壁があったと思いますが、どうでしたか

研究と製品は目的が違うんですよね。研究は精度とか先行研究の改善に焦点をあてて突き進みます。一方、製品は顧客の課題解決が一番です。

例えば、研究用のデータセットに対して異常検知をして検知率99%できました!となれば研究では評価されますが、10,000件データがあれば100件見落とすわけです。顧客目線から見ると実運用で攻撃を100件も見落とすってダメじゃない?となるわけです。

100件を見落とした理由や如何にフォローするか、研究では言及されないニーズを満たすための開発と手法の見直しに苦労しました。

AIの可読性など現状解決が困難なものも含まれているようですが

最初は無理じゃない?と思いました。AIってそういうものだし。

ただ、古典的な統計の手法は人間の目で見て分かるものに近いと分かり、そういう直感的にわかる手法を最新の技術と顧客ニーズの間に埋めることで解決しています。

「AIで守る」という文脈で不正ユーザー検知システム「Stena」を提供していますが、最初にゲームをターゲットにしたのはなぜですか

守るという作業に人材をかけづらいところだったからです。エンターテイメントは金融などと比べると必需品ではありません。本腰を入れている会社は非常に少ないです。

たしかにゲームの質を維持するのには欠かせない要素ですが、着手できないのは予算の問題も大きそうです

予算が理由で契約に結びつかないケースもかなり発生しています。被害出てるけど、売れてるんだからセキュリティにコスト割かなくてもいいよねという考え方ですね。値段設定のバランスは非常に難しいですね。

ただニーズがあることは間違いありません。中小規模の会社さんは守りたいけど、予算を割けなかったりするのでそこには寄り添っていきたいなと思っています。

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「stena」ユーザの行動解析専門の高精度AIがゲームやアプリのチートやBOTなど利用ログから自動検知する

さらに先日、三井物産セキュアディレクションと共同で「AIを守る」という2つ目の事業を発表しました

AIを作れない人が、AIを守れるわけがないというのがあります。最終的には「AIを守るAIを作れば良いじゃない」というのがあります。つまり「AIで守る」「AIを守る」この2つの事業の向かうところは一緒だと捉えています。

今後どのような会社にしていきたいですか

AIを安心して提供できる社会の基盤を作るのが仕事だと思っています。そこに向けてやれることは全部やっていきます。年商や従業員の指標は特にはないですね。研究や実務でも、セキュリティで崩れかけている社会を目の当たりにしているので、立て直したいと想いが一番強いです。

では最後に、伊東さん個人として、今後の目指す方向性や、どうありたいかについてお話を聞かせてください

起業も研究も、面白いことがしたいというのが原動力です。私は他の人のためになるものが面白いと感じます。誰かが何かをやるときに、私が支え、躓かないようにしてあげたい。すごい選手になるより、100人すごい選手を育てられるように今後もチャレンジしていきたいです。

ありがとうございました。

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新型コロナを5分で診断、ポータブル検査機器にFDAが緊急利用許可を発行

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ピックアップ:ABBOTT LAUNCHES MOLECULAR POINT-OF-CARE TEST TO DETECT NOVEL CORONAVIRUS IN AS LITTLE AS FIVE MINUTES ニュースサマリ:イリノイ州で医薬品およびヘルスケア製品の製造を手掛ける「Abbott」は3月27日、米国食品医薬品局(FDA)から緊急利用許可(EUA)を発行し、新型コロナウイルス(…

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Image Credit:Abbott

ピックアップ:ABBOTT LAUNCHES MOLECULAR POINT-OF-CARE TEST TO DETECT NOVEL CORONAVIRUS IN AS LITTLE AS FIVE MINUTES

ニュースサマリ:イリノイ州で医薬品およびヘルスケア製品の製造を手掛ける「Abbott」は3月27日、米国食品医薬品局(FDA)から緊急利用許可(EUA)を発行し、新型コロナウイルス(COVID-19)の検出のための「ID NOW™COVID-19」を今週から提供を開始する。

ID NOW™COVID-19は陽性は5分、陰性なら13分で結果をその場で提供できるポータブル機器であるため、医師のオフィス、緊急治療クリニック、病院の救急部門など、幅広いヘルスケア環境で提供可能。同社は先週別にEUAを取得していたm 2000 ™ RealTi m e SARS-CoV-2 とID NOW™COVID-19の2つのプラットフォームを用いて、4月から1カ月あたり約500万の検査を行うことを目標としている。

話題のポイント:検査に対する捉え方は医療崩壊と隣合わせのため、国や地域によって様々です。WHOは「感染拡大を防ぐためにできる限り多くのPCR検査を実施しなければならない」とするのに対して、日本では感染拡大のルートを防ぐことを国民に要請しつつ、オーバーシュートした場合でも医療提供体制を維持し、ロックダウン(都市封鎖)を引き起こさないように感染症の症状に合わせて対処する、という姿勢を示しています。

どちらがベターかは事が収まった時にしか分かりませんが、いずれにせよ、医師が必要と判断する場合に検査がより正確で迅速にできることに越したことはありません。今回の発表は、4月から1カ月あたり約500万の検査を行える能力を手にし、リソース不足改善の朗報と言えるでしょう。

ID NOW™COVID-19は唾液と粘液をサンプルに、ウイルスのRNAを読み取る分子検査です。サンプルは韓国や欧米ではドライブスルー方式の検査と同様ではあるものの、結果まで数時間かかっていた時間が5分程度になる衝撃は大きいです。有事においては透明性やデータがなによりも大事です。消費者から信頼を得る上でも、事を終息させる上でもそれは変わりません。

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5Gでゲーム体験はどう変わる

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ピックアップ:Mainframe Industries raises $8.3 million for cloud-native games ニュースサマリ:2020年3月19日、クラウドネイティブなゲームを開発する「Mainframe Industries」がシリーズAで810万ドルを資金調達した。このラウンドはAndreessen Horowitz(a16z)が主導し、Riot Games、M…

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Image Credit:Mainframe Industries

ピックアップ:Mainframe Industries raises $8.3 million for cloud-native games

ニュースサマリ:2020年3月19日、クラウドネイティブなゲームを開発する「Mainframe Industries」がシリーズAで810万ドルを資金調達した。このラウンドはAndreessen Horowitz(a16z)が主導し、Riot Games、Maki.vc、Play Ventures、Sisu Game Ventures、Crowberry Capitalが参加した。

同社は2019年4月に設立され、クラウドゲーム用のオープンワールドソーシャルサンドボックスMMOの開発に取り組んでいる。ゲームの詳細は未公表。

クラウドゲームとは、インターネットに接続されたサーバーで全ての演算、処理をし、ストリーミング配信するゲームを指す。これにより、ユーザーが持つ端末の種類やスペックによらずハイエンドゲームを楽しむことが可能となる。

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Image Credit:docomoOfficial

話題のポイント:最近、docomoのCMで佐藤健さんが遊んでいることもあってか、ゲーム好きでなくても5G ✕ ゲームの関係性を把握している人が増えているのを感じています。しかし、5Gによって大容量・高速・低遅延通信が実現したとして、既存のゲーム環境でメリットを直感的に理解できる人は少ないでしょう。

そこで今回は、5Gによってゲームはどう変わるのか、享受するのは誰なのかを紹介したいと思います。

これからのゲームで外せないのが「クラウドゲーム」という形式です。従来のゲームは、インターネット通信で遊ぶ場合でも筐体内で映像に関する処理(レンダリングなど)を行う必要がありました。そのため筐体のスペック次第で処理が重くてカクカクしたり、そもそも動かなかったりと、特にPCゲームではハードウェアの選定からゲームがスタートします。

クラウドゲームは演算、映像に関する処理すら全てをサーバーで行い、ストリーミング配信でゲームをプレイします。つまり、筐体の役割は単なるディスプレイとなるため、どんなゲームでもスマホで遊べるようになります(何をストリーミングするかで例外あり)。ソフトウェアがハードウェアに依存する形を打破するのがクラウドゲームの凄さです。

ハードウェアから解放されたことで、「クラウドでしか実現できないゲーム」が誕生しようとしています。もう少し正確にいうと、これまで数十万円するPCを持っている人しかターゲットにならなかったため開発できなかったゲームを積極的に作れるように変わってきています。

実際、ティア1であるパブリッシャー(主に企画・販売を行う会社)のEA、Ubisoft、Capcom、Take-Twoなどがすでにクラウド用ゲームの制作に意欲を示しています。今回資金調達したMainframeはまさにクラウド専用のMMOを開発するベンチャーです。

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Image Credit:docomoOfficial

ただし、ゲームのラストワンマイルである5Gがなければゲーム会社は動かなかったでしょう。

実は、クラウドゲームの仕組み自体は新しいものではなく、日本にも失敗の歴史があります。その原因は、ゲームは動画のストリーミングと異なりバッファが許されず、当時は入力と出力のストレスを解消する通信手段がなかったことです。スマホで遊べる体験を向上させることでしか普及は見込めず、ゲーム会社が参入する理由とはなりませんでした。

プレイヤーから見たら一番大事なのは魅力的なタイトルが存在することです。裏でどのように動いているかはどうでも良い問題です。要するに、多くのゲーム会社が参入するかが正負のスパイラルを決定付けます。

正のスパイラルへ投入するゲーム業界は今後、主軸をクラウドゲームとして、5Gはターゲットプレイヤー人口増加を補助するラストワンマイルとして進化していきます。ゲームの主戦場に通信会社が深く絡んでくる点も見逃せないポイントでしょう。(docomoは3月18日からスマートフォン向けのクラウドゲームサービス「dゲーム プレイチケット」を開始SoftbankKDDIはクラウドゲームサービス「GeForce NOW」を6月〜夏に開始予定)

以上を踏まえると、ハイスペックマシンを所有する人にはクラウドゲームのメリットはほとんどないことがわかります。クラウドで処理されようが、自前のPCで処理しようが関係ありません。つまり、クラウドゲーム ✕ 5Gはすでにゲームにお金を出している人ではなく、ライトゲーマーに精巧緻密なゲームに触れる機会を享受するためのものになります。

とはいえ、ハイスペックマシンに慣れ親しむ人はゲーマーの中でも多くありません。PlayGigaによると、ゲームプラットフォーム「Steam」ユーザーの53%はトップパブリッシャーの最新AAAゲームをプレイするための推奨のハードウェア要件を満たしていないそうです。コアなゲームファンが集うコミュニティにいる人でさえ、半分以下の人しか十分なマシンを持っていないとすると、ライトゲーマーの括りは大きく捉えるべきでしょう。

以上を踏まえると、今回のクラウドゲーム ✕ 5Gへのパラダイムシフトは相当の範囲にインパクトを与えそうです。白黒テレビがカラーテレビに、アナログ放送が地デジに変わった時のような衝撃を体験するのはすぐそこの未来です。

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3Dモデルテクスチャ作成をAIで驚異的に効率化したArtomatix、Unity傘下に

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ピックアップ:Unity Technologies Buys Artomatix ニュースサマリ:3月10日、AIで3Dモデルのテクスチャ作成補助をする 「Artomatix」が、3D開発プラットフォームを運営する「Unity Technologies(以下、Unity)」に買収された。買収額は公開されていない。Artomatixは2014年にアイルランドで創業。写実的なコンテンツの作成をAIで補…

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Image Credit:Artomatix HP

ピックアップ:Unity Technologies Buys Artomatix

ニュースサマリ:3月10日、AIで3Dモデルのテクスチャ作成補助をする 「Artomatix」が、3D開発プラットフォームを運営する「Unity Technologies(以下、Unity)」に買収された。買収額は公開されていない。Artomatixは2014年にアイルランドで創業。写実的なコンテンツの作成をAIで補助するArtEngineを提供する。

Unityは、リアルタイムの3D開発のためのプラットフォームを提供し、初心者からグローバルブランドまでアクセス可能なツールを提供する。同社には、Google、Facebook、Oculus、Autodesk、Microsoftなどのパートナーと共に働く1,000人のチームが存在する。

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Image Credit:Artomatix HP

話題のポイント:今や3Dモデルはゲーム、自動車、インテリア、ファッションデザイン、製品デザインと生産に欠かせないものとなっています。その中でもテクスチャ作成は世界観を作り出し、没入させるのに重要な要素です。写実的になればなるほど少しのズレが違和感を生んでしまいます。

そして年々、PC側の処理性能が上がる中で表現の幅が広がり、要求レベルは上がっています。しかし、クリエーターのリソースには限界があるため高品質コンテンツを如何に効率よく作れるかという課題がありました。これがArtomatixがAIで解決する問題です。

課題をミクロに見ると、テクスチャの高品質化によってプロセスの複雑性が増しているというよりはチューニングが困難になっている状況です。人間が反復する煩雑な作業を自動化するのに最適であるAIとは相性が抜群であるということです。

Artomatixが効率化した時間は驚異的です。従来、一つのシーンのテクスチャアセットを準備するのに数時間や数日必要だったのが、ArtEngineを用いると数分で済むようになります。クリエーターにとってのインパクトの大きさが垣間見えます。

ArtEngineの最大の特徴は、スキャン/写真を物理ベースのレンダリングマテリアル(PBR)に変換するのが優れている点です。 

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Image Credit:Unity Youtubeチャンネル(ArtEngineを使用して作成された3Dモデル)

例えばシーンを写真のようにリアルにしたい場合、多くのアーティストがスキャン/写真測量3Dワークフローを使用します。しかしこれらのテクスチャを高品質に保ち、インテリジェンスに振る舞いながらシーンに直接適用できるのは同様ツールであるAdobeのSubstanceと比べても優位性があると言えます。

ただこれ、今すぐに使い始めたい方もいると思いますが、残念ながらすぐに使えるになるわけではありません。

これまで主に大手スタジオと大企業の顧客を対象とした製品であったため、ハイエンドのGPUハードウェア上で実行され、個別のライセンスではなくスタジオ製品として価格設定されていました。

ArtEngineはスタンドアロンツールでエンジンに依存しないとはいえ、Unityの一部としてArtEngineの主要な機能と利点をできるだけ多くのクリエイターに提供する方法をビジネスモデルと共に考案しなければならないため多少時間が必要となります。

一方、UnityとArtomatixの共通理念はコンテンツ作成を民主化することです。プロだけでなく初心者も多く利用するUnityにおいて、イメージしたものを作成できる体験を多くの人に届けられる形にしてくれるはずです。続報が楽しみで仕方ありません。

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3Dプリントで作るシーフードが店頭に並ぶ日

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ピックアップ:BlueNalu Raises $20M in Series A Financing ニュースサマリ:2020年2月26日、魚の細胞から魚介類を作り出す「BlueNalu」が2000万ドルのシリーズAラウンドの資金調達を完了した。Stray Dog Capital、CPT Capital、New Crop Capital、Clear Current Capitalが共同でリードを担当…

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ピックアップ:BlueNalu Raises $20M in Series A Financing

ニュースサマリ:2020年2月26日、魚の細胞から魚介類を作り出す「BlueNalu」が2000万ドルのシリーズAラウンドの資金調達を完了した。Stray Dog Capital、CPT Capital、New Crop Capital、Clear Current Capitalが共同でリードを担当し、Nutreco、Griffith Foods、Pulmuone、Sumitomo Corporation of Americas、Rich Products Ventures、KBW Venturesが参加した。

同社は2018年にカリフォルニア州サンディエゴで創業。魚から採取した細胞を増殖させ、3Dプリンター(バイオプリント)を利用して魚介類を成形する技術を持つ。現在はブリの切り身の成形に成功しており、様々な調理に対応できる(競合他社は身が分解するため限られた調理方法しか対応していないとしている)。

今回の資金はサンディエゴ適正製造基準(GMP)のパイロット生産施設開発、チームの拡大、グローバルな運用と流通のための戦略的提携に使われ、市場投入に向けた準備に使われる。

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Image Credit:BlueNalu(2019年12月に実際に振舞われた料理デモンストレーション)

 

話題のポイント:「人工肉」が「天然」「養殖」に続く第3の選択肢として名乗りを上げたのは最近のことです。日本においては導入例が少ないため、知名度がある「Beyond Meat」「Impossible Foods」の植物由来の加工肉だけが人工肉だと認識している人も多いと思います。

人工肉は製造方法で2種類に分けることができます。一つは、Beyond MeatsとImpossible Foodsが作る植物性たんぱく質を元に味・食感を模倣した疑似肉。もう一つは、動物の細胞から食用部位だけを作り上げるラボ肉です。

作るもの(牛・豚・鳥・魚・甲殻類・軟体動物)、作り方(植物由来・細胞由来)の組み合わせでそれぞれスタートアップが新しい市場を作るために挑戦をしている状況です。

では、なぜ植物由来の牛・豚・鳥の人工肉だけが成長してみえるのでしょうか。

消費者の味覚に合わない、価格が高いなどのレベルの高い理由ではありません。単純に供給体制が整っていない、もしくはまだ技術的な課題が残っているため、成長しているかどうかを議論する段階ではないのです。逆にいうと供給が開始されれば十分成長見込みがあります。

Plant-Based Meat Market Growth 2017 to 2019
Image Credit:
The Good food

今回取り上げたBlueNaluは、現段階で明確に供給を意識した戦略を取る数少ないスタートアップです。とりわけサプライチェーンに最適化するための商品企画力、販売力を手に入れるのにシリーズAという機会を上手く利用しました。

原材料に関する専門的なノウハウを持つNutreco、食品業界の世界的製品開発力を持つGriffith Foods、そのほかにも運営、販売、流通に関する専門知識を持つ企業を投資家として迎え入れています。そしてすでにNutrecoとは戦略的パートナーシップを発表しました。資金調達した2000万ドルも大規模生産施設の建設に使われます。

投資家に補完関係にある企業を選び、エクイティによる金銭的な関係を築きつつ戦略的パートナーシップを提携することで、供給に向けて事業計画を一気に進めたいのが読み取れます。

とても順調に見えるBlueNaluですが、驚くべきことに会社設立時に必要な技術を持ち合わせていませんでした。それにも関わらず、創業2年という短い期間で大きな成長を果たしています。その背景には他社とは違う技術選択がありました。

競合他社の全てが採用するラボ肉は作り方は、動物から幹細胞を採取して部位に成長させます。中にはへその緒を元にiPS細胞にしてから作りたい部位を自由に作る方法を開発しているスタートアップもありますが、広義には同じです。

<参考記事>

それに対して、BlueNaluの作り方は部位に成長させる方法を取りません。幹細胞を採取して細胞の役割毎に分離した後に増殖させて、それをインクとして3Dプリンターで部位を成形します。バイオプリントと呼ばれるものです。

再生医療をきっかけに急成長したこの分野の技術には、魚介類の製品を作るのには十分な基幹技術があります。製品の95%が筋肉であるため、臓器ほどの複雑な構造を作らなくてもいいところも相性が良かったのです。

さらに、3Dプリンターの成型方法の中でも1980年代に提案された実績ある手法を採用している点も技術開発の速度を上げ、コストを下げる要因となると考えられます。最近はAmazonでも数万円で3Dプリンターが手に入りますが、BlueNaluが採用している方法は基本的にこれと同じ手法なのです。

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Image Credit:UT San Diego「Lab-grown fish just got real. San Diego startup shows off first slaughter-free yellowtail

 

大規模生産施設の構想設計が始まったのが1年前であることを踏まえると、会社設立から1年で基幹技術の目途が立っていたと思われます。技術がなかったからこそ、柔軟に他分野で実績がある技術を流用し、お金をかけて開発しなければいけない要点を絞り切れたのでしょう。

この技術選定が競合他社とBlueNaluを分け、シリーズAにして供給力の強化にエクイティとキャッシュを振り切れた理由と言えます。

BlueNaluは大規模生産施設の開発フェーズ1に入ったばかりですが、5年後には完成します。そしてこの施設を一人当たりの魚介類消費量が多い北米、アジア、ヨーロッパで数十の場所に複製して供給基盤を盤石なものとする計画です。

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Image Credit:BlueNalu

 

2050年までに100億人に達すると予想される世界人口において、魚介類を含むタンパク質の需要の増加は当たり前にくる未来です。この需要を持続可能な形で満たすための手段として細胞由来の人工肉は妙手と言えるでしょう。

ここまでは順調なBlueNaluは本当に「天然」と「養殖」に続く3番目の選択肢を代表する企業になれるのか、今後も注目していきたいです。

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自動運転時代、クルマのオーディオ設計はどう変わる

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<ピックアップ> DSP Concepts raises $14.5M for its Audio Weaver platform ニュースサマリ:オーディオ設計ツールを開発する DSP Concepts は2月21日、シリーズBで1,450万米ドルの資金調達を発表。Taiwania Capitalがリードを務め、 BMW iベンチャーズ、Sony Innovation Growth Fund、M…

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<ピックアップ> DSP Concepts raises $14.5M for its Audio Weaver platform

ニュースサマリ:オーディオ設計ツールを開発する DSP Concepts は2月21日、シリーズBで1,450万米ドルの資金調達を発表。Taiwania Capitalがリードを務め、 BMW iベンチャーズ、Sony Innovation Growth Fund、MediaTek Ventures、Porsche Ventures、ARM IoT Fundが参加した。

DSP Conceptsはコーディングによる設計作業の簡素化を目的に、GUIのオーディオ処理ソフトウェア「Audio Weaver」、ノイズ除去のオーディオフロントエンド「TalkTo」、2つのサービスを展開している。

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Image Credit: DSP Concepts

話題のポイント:DSPが開発する機能は「ある処理を行えるモジュールが沢山用意されていて、GUIでそれらを繋げるだけでインタラクティブにオーディオ信号処理できる」というものです。

コーディングコストを抑えて設計作業を簡素化するという発想は、決して真新しいものではありません。実際アプリケーション開発では、商業用でも容易で高速にできるアプリケーションフレームワークの「Qt」が用いられています。

では、今までなぜオーディオ設計で登場していなかったのか。それはひとえに必要性が高くなかったからと言えます。

オーディオ設計は年々複雑性を増しています。Bluetooth、USB、有線などのオーディオ入力が増えています。一方、車内では音声操作のためにノイズから声を聞き取る機能の追加、快適性を維持するためのエンジン音の作製など、車種に合わせて音声機能を設計するのは容易ではありません。

とはいえ、matlabでゼロから処理を設計して、C言語で書き換え、使用される集積回路に最適に組み込むプロセスは大きく変化していないため、労働集権的に対応できていました。

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Porsche 911 (992)–HOW IT’S DESIGNED – German Car Factory
Image Credit:YouCar

しかし、これから労働集権では費用対効果が悪くなることが予想される環境変化が起こります。それが「自動運転車」の普及です。

オーディオ設計は乗員すべての人が快適に過ごせるようにスピーカー音だけでなく、シートを引く音、窓を開ける音、乗車時の会話の聞こえ方等、考慮すべき項目が多く存在します。これらが車種が変わっても同様のプロセスで対応できていたのは、乗員の位置と向きが固定されていたからです。

車内での過ごし方が劇的に変わる自動運転車において、位置と向きは車種固有のパラメータとなります。これまでのオーディオ設計の前提は通用しません。

さらに、自動運転車内の自由空間では、それぞれの行動にも変化があります。ある人はNetflixをスクリーンに投影して楽しみ、その傍らで会話を楽しむ人もいるでしょう。それほど運転という集中力が必要な行為から解放されると暇なわけです。

自動運転者が普及した未来でオーディオ設計に求められるのは、車内のどこにどんな態勢でいるかわからない人に、会話とエンターテイメントが互いに干渉しない環境を作ることになります。現状の設計環境には複雑すぎる要件と言えるでしょう。

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Image Credit:DSP Concepts

新しい需要に対応するためのツールとして価値を発揮するのがAudio Weaverです。オーディオエンジニアはタスクが大幅に簡素化されます。人数と予算を割り当てなくても要件を満たすことができます。

Audio Weaverのモジュール式のGUIオーディオ処理環境によりコーディングは不要で、複雑な処理チェーンを簡単に組み立てて実験が可能です。すでに400を超えるモジュールが用意されていますが、オーディオおよび通信のあらゆるニーズに対応してカスタムモジュールも作製できます。さらにアルゴリズムが主要プロセッサ向けに向けに最適化されているため、デバッグを行う必要はありません。 

また、音声入力アルゴリズムも組み込まれているため、マイクアレイとスピーカープラットフォームおよびリファレンスデザインでの広範な設計に対応します。つまり入力と出力のどちらにも強みがあり、一貫して設計環境が構築できる点が強みということです。

現在、日産、ポルシェ、テスラ、フォルクスワーゲン、フォードと大手が導入企業として名を連ね、今年発売予定のポルシェ911タイプ992ではAudio Weaverでオーディオ設計が行われています。

現状はまだ小さな課題ではあるものの、自動運転の登場で変わる車内環境に適用する戦略を取るDSP Concepts。選ばれる理由も、大きな流れを待つための準備も十分な同社は今後ますます注目すべきスタートアップとなるでしょう。

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「AI検索」はPRの情報戦線をどう変える

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ピックアップ:Signal AI Raises $25 Million Series C as they Transform Decision Making in the Enterprise with Augmented Intelligence ニュースサマリ:2019年10月22日、AIを用いたメディアモニタリングとマーケティング・インテリジェンスをのツールを提供する「Signal AI」は…

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Image Credit:Signal AI Whitepaper

ピックアップ:Signal AI Raises $25 Million Series C as they Transform Decision Making in the Enterprise with Augmented Intelligence

ニュースサマリ:2019年10月22日、AIを用いたメディアモニタリングとマーケティング・インテリジェンスをのツールを提供する「Signal AI」は、シリーズCで2,500万ドルを調達し、総調達額が4,950万ドルに到達した。本ラウンドは、Redline Capitalがリードを担当し、MMC Ventures、GMG Ventures、Hearst Venturesなど既存の投資家が参加した。

Signal AIは50言語200カ国、500万件/日の記事、ニュース、出版物と規制データをモニタリングして、ビジネスマンや経営層が目を通すべき情報とインサイトを提供する。

今回の資金はインサイトを用いた新規事業と、米国での成長とアジア太平洋地域市場での立ち上げに使用される。

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Image Credit:Signal AI Whitepaper

話題のポイント:“AI is the future of PR”と主張するSignal AI。彼らはAIを用いてPRをどのように変革しようとしてるのでしょうか。

メディアモニタリング、マーケットインテリジェンスを展開するSignal AIですが、コア技術は「検索」です。つまり実態は、ビジネスマンの中でも特にPRパーソンに特化した検索サービスと言えます。

社会動向を効率的に調査するための検索ノウハウを持つ人は多くありません。良質な意思決定を支える情報をリアルタイムに取得するのは現状困難です。

この点において、「キーワード検索」でいたずらに増えたコンテンツをさばききれていない問題が挙げられます。

従来、アドセンスのビジネスモデルは様々な質のコンテンツを量産してきました。なかでも間口の広い、検索上位に食い込むような、バズコンテンツを幅広く配信するサイトが乱立。ニッチなコンテンツを配信するサイトは希薄に見えます。

もちろん、初心者向けのサイトを必要としている人がいるでしょう。ただ、人によって要求するコンテキストレベルは大きく異なるにも関わらず、ニッチコンテンツに行きつきたいというユーザー需要に「キーワード検索」は対応することができていません。

そこで、少しでも望む情報を探り当てるためによく用いられるのが「ブーリアン検索」です。様々なキーワードをあらかじめ設定しておいて、条件に合う情報だけを取得してくる検索方法です。

下図は、ブーリアン検索の一例です。“Amadeus”という企業が以下の単語が含まれていたら情報を取得しないための条件文となります。

留意しなければならないのが、これは企業名に関する条件文のみであり、関係するキーワード(プロダクト別、競合他社など)ごとに条件文を構築する必要があるということです。見ていただければ分かる通り、とても煩雑で精度を上げるのも一筋縄ではいかず、構築・維持に大きなコストがかかります。

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Image Credit:Signal AI Whitepaper

Signal AIはこうした問題を解決するため、膨大に増えたコンテンツの中から内容と人をマッチングする検索「エンティティ」を提供しています。

ソフトウェア設計上で用いられる“エンティティ” = “実体”とは、たとえば「コーヒー」であれば、「品種」「産地」の属性と、「焙煎」「ブレンド」「ドリップ」という操作から成り立ち、これらをある程度手動で記入していきます。

対してSignal AIでは、組織・イベントなどをエンティティとして認識し、世界でどのように記述または話されているかを自動で学習して「Apple iPhoneは食べられず、リンゴはタッチスクリーンではない」という認識を作り出します。そのため、Appleでメディアの報道を検索したい時に、果物のリンゴに関する記事は表示されません。

エンティティを用いるメリットを以下にまとめます。

  • 感情を計算することで肯定的または否定的なメディア報道を受けているか
  • 異なるエンティティ間の関係を検出することでより詳細なインサイトを引き出す
  • 新しい記事を読むたびに精度が上がる

つまり、Signal AIが目指すAIがPRを変革する方法とは、「情報収集能力の飛躍的向上で、打ち手に集中できる環境を作る」というものです。さらに、インサイトを用いて、コンテンツ配信立案の補助ツールの提供も始めています。今後はこの点を更に強化していく方針です。

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Image Credit:Signal AI

情報は勝負を決定づけるものではありませんが、優位性を作るためには欠かせないものです。

PRやマーケティング・インテリジェンスを生業とする人の施策前提には、ターゲットの人物像の解像度が高い必要があります。同じ特性を持つ人物に対しても、時代が異なればアプローチが違うのは当然です。

そこで効率よくターゲットユーサーに関するあらゆるトレンドを取得できるようなサービスを提供するのがSignalAI。AIを活用した新たな検索手法で、本当に必要な情報へアクセスする場を作り出しました。

SignalAIの登場は、情報戦が国を跨いで年々激化する中、情報を取りこぼさないツールが普及することを意味します。これは情報格差が付加価値とならない新しい時代の突入と言えるかもしれません。

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生まれ変わったApple「Maps」の勝算は“プライバシーにあり”

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ピックアップ:Apple Maps Got a Major Makeover ニュースサマリ:1月30日、Appleが自社地図アプリ「Maps」を大幅アップデートした。 アップデート内容は、アプリ基盤である地図データをライセンス契約からApple製のデータに切り替えたというもの。一見わかりにくいアップデートではあるが、地図データをリアルタイムに更新し続け、Appleが求める正確性を維持するのに大き…

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Photo by Armand Valendez from Pexels

ピックアップ:Apple Maps Got a Major Makeover

ニュースサマリ:1月30日、Appleが自社地図アプリ「Maps」を大幅アップデートした。

アップデート内容は、アプリ基盤である地図データをライセンス契約からApple製のデータに切り替えたというもの。一見わかりにくいアップデートではあるが、地図データをリアルタイムに更新し続け、Appleが求める正確性を維持するのに大きく貢献する。

さらに、昨年9月にiOS13でリリースされたお気に入りリストが作成できるコレクション機能、より進化したリアルタイム交通情報およびナビゲーション機能、地域限定だったGoogleストリートビューのような「Look Around」機能が追加された。現在、Apple製地図データは米国版のみ完成しており、ヨーロッパ版の完成は2020年の後半になる予定だ。

話題のポイント:今回のリリースは「Maps」のアップデートではありますが、地図を一から作り直しているため「生まれ変わり」と言えるでしょう。

2012年以降のMapsといえば、使いやすさ以前に、あまりにも地図情報が不正確だと有名でした。都市を間違えたり、町全体を自然公園と表示したり、酷いものでは農場を空港と表示していたりと、地図アプリとしてこれほど重大な欠陥はありません。

そのため、iPhoneのデフォルト地図アプリであるにも関わらず、Google Mapsの競合と認識している人は多くなかったと思います。

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Image Credit:The Amazing iOS 6 Maps (左図 Google Mapsで見たオレゴン州ポートランド、右図 Mapsで見た見たオレゴン州ポートランド)

もちろん年々改善が行われ、米国では目立った欠陥はなくなりました。欠陥を生み出した原因に立ち返ると、TomTom、OpenStreetMap、Weather Channelらとのライセンス契約に依存しすぎていた点があります。Appleのビジョンに基づいた機能とUXを実現するには不都合なことが多く、プロダクトの質を下げてしまっていた可能性があったのです

そこで自社製地図データをベースにして、足りないところを補う目的でライセンス契約とユーザー提供のデータを組み合わせることで、地図アプリの拡張をコントローラブルに変更しました。ちなみにGoogleも同様の方法で地図データを構築しています。

今回のニュースでは、2018年秋の北カリフォルニアを皮切りに、徐々に地図を切り替えていき米国全体を網羅したバージョンを発表しました。Mapsの初リリースから8年、ようやくスタート地点に立ったと言えます。

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Video Credit:Apple

今後、昨年のApple主催「WWDC 2019」で発表されていた「Look Around」などの新機能を使用できる地域が拡大していきます。機能面でGoogle Mapsと比較しても大きく違うのはAR機能、テーマ毎にオリジナルな地図を作れるマイプレイス機能ぐらいであり、コアな機能に差はなくなります。ただし、アルゴリズムで優位性を持つGoogle Mapsを凌駕したとは言えません。「限りなく近付いた」というのが妥当でしょう。

しかし、AppleのMapsにもGoogle Mapsに勝る強みがあります。それがプライバシー管理です。

地図アプリを展開するには「位置情報」が付き物ですが、GPSの精度が上がるにつれてより厳格な取り扱いが企業に求められてきます。Googleアカウントには、仮に本名や住所、クレジットカード情報などの機密性が高い情報を登録していなくても、趣味・嗜好データが詰まっています。いってみれば、Googleアカウントはデジタルの人格です。このデジタル人格と位置情報が紐付けされ、一企業が独占的に持っている状況を嫌う人は多いはずです。

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Image Credit:Apple「WWDC 2019」

ユーザーにとってGoogleアカウントと地図アプリが紐付いているメリットは大きくありません。あるとしたら、指定位置から自分にあった飲食店を優先して表示してくれたり、Google Maps上でタイムラインを見れる程度です。この点、Appleはプライバシー管理の仕組みで信用を勝ち取る意向を示しています。

具体的には、ユーザIDと位置情報を紐付けることはなく、Appleが位置情報のデータを所持することはしません。つまり、Apple端末に登録されている情報と位置情報が一致することはありません。

もちろん、プライバシー管理を厳格にする代わりに利便性が落ちては本末転倒です。そのため、今まで通りサードパーティーへ位置情報を共有できます。ただし一度許可したら継続して権限が渡させる仕組みではなく、位置情報が渡したいタイミング毎にユーザーが許可する仕様に変更されます。

Appleと同じ姿勢をGoogleが示す可能性は低いと予想できます。それはお互いのビジネスモデルの違いに起因しており、Googleは広告を売りたいのでユーザーがどんな人がどこにいるかが知りたいのに対して、Appleはデバイスを売りたいのでユーザーがどんな人でどこにいるかは気になりません

従来、地図アプリは便利であるもののGoogle Maps以外の選択肢がないため、自分自身のプライバシーを犠牲にしてでも使用する人が多かったと思います。同程度の価値があるMapsの存在は、プライバシーに敏感な人へ深く刺さる可能性が高いでしょう。

WWDC 2019でも語尾を強めて主張したプライバシーポリシー。それがまさにAppleの勝算になるのではないでしょうか。

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