OpenAI、Rain AIに5,100万米ドルを拠出——YC卒業チームが生み出す脳型AIチップへの期待感

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Image credit: Rain AI

2012年に画像処理においてディープラーニングの有用性が確認されてから現在に至るまで、ハードウェアが先行するソフトウェア開発の実装のボトルネックとなってきました。最近は、生成AIの登場もあって並外れた計算能力とメモリーを必要とするため、レガシー・コンピュータ・アーキテクチャによって制限されることも多くなっていますが、依然としてハードウェア発展への期待は高いままです。

サンフランシスコに拠点を置く Rain AI は、「ニューロモルフィック処理ユニット(NPU)」というコストとエネルギー効率の高いAI用ハードウェアとそれに最適なソフトウェアを構築しているスタートアップです。Rain AIが開発するデジタル・インメモリ・コンピューティング(D-IMC)は、従来のインメモリ・コンピューティング設計とは異なり、スケーラビリティを持ち、トレーニングと推論をサポートする設計となっているため、独自の量子化アルゴリズムと組み合わせることで、高精度でAIに特化した数値計算のメリットを実現しています。これがRain AIの最大の特徴です。

OpenAI の CEO Sam Altman(サム・アルトマン)氏が、Rain AI に対して5,100万ドルの拠出に合意したニュースは、AIと半導体業界における重要なマイルストーンとなりました。アルトマン氏は、個人的にも Rain に100万ドル以上を投資していました(Rain は Y Combinator 2018年夏バッチの卒業生)。

今回の出資は、2019年に拘束力のない基本合意として署名され、チップが入手可能になった際に5,100万ドルを支払うことになっています。しかし、OpenAI の広報担当者によると、この合意に基づく具体的なアクションはまだ進んでいないとのことです。

この関係は、アルトマン氏の OpenAI CEO としての職務と、彼の個人的な投資がどう絡み合っているかを示唆しています。アルトマン氏は、スタートアップインキュベータ Y Combinator のリーダーとして、シリコンバレーで最も著名なディールメーカーの一人でした。しかし、彼の活動が多岐にわたったことは、最近の彼の解任の一因となりました。

Rain が開発している NPU は、人間の脳の特徴を模倣したものです。今回の出資は、先駆的なプロジェクトに必要なチップを確保するために、OpenAI が多額の資金を投じる意欲を見せつけました。また、アルトマン氏は、AI の進歩が新しいチップデザインとサプライチェーンに依存する可能性について、かねてから言及していました。

Rain は、その革新的なチップ技術を市場に投入するための課題に直面しています。特に、アメリカ政府の機関が国家安全保障上のリスクに対する投資への監視を強めたことから、サウジアラビア系ファンドの Prosperity7 Ventures がRain の株式を売却するよう命じられました

OpenAI による Rain への投資は、AI 業界の方向性を明確に示しています。それは、AI 技術の進化において重要な役割を果たす革新的なハードウェアソリューションへの継続的な推進です。今回締結された提携関係や技術的進歩は、AI の未来を形作る上で不可欠な要素となり、新しい可能性の扉を開くでしょう。

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