「勝てる」トレンドをどう見極める/世界に挑むスタートアップたち(3)小林清剛 × ACV 林智彦【ACVポッドキャスト】

本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容をテキストにまとめて掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ (ACV)がスタートアップと手を取り合い、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャスト・シリーズです。旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

スタートアップの言葉すらまだ一般的でなかった2010年代前半、起業家として事業を大手通信会社に売却し、その後渡米。個人投資家として、また連続起業家として活動しつつ、日本人起業家コミュニティを積み上げたのが小林清剛さんです。本稿では前回のパートに引き続き、アクセンチュアの林智彦が小林さんのこれまでの活動をお聞きします。ポッドキャストの内容を一部編集してテキストでもお送りします。なお、一部敬称については略させていただきました。

ポッドキャストで語られたこと

トレンドをどう見極める

Open AIをめぐる2023年の衝撃的な物語は、シリコンバレーのテックシーンを象徴する出来事でした。Image Credit: OpenAI/YouTube

スタートアップの鉄則は「いかにして早く情報とリソースを集めるか」という点にあります。日本であれば、メディア、投資家、事業会社、人材、資金・・・あらゆる情報とリソースが集まっている場所が東京であり、世界を相手にする場合はやはり、アメリカ・サンフランシスコがその中心地となるでしょう。

その地でまさに挑戦を続けるのが連続起業家、小林清剛さんです。

日本で成功を手にした小林さんは家族と共に渡米し、ゼロからチャレンジを再開します。これまでのお話で小林さんは、最初にぶつかるビザや言葉の壁、そして日米で異なるプロダクト開発の考え方の違いについて語ってくれました。

彼がプロダクト開発で重要と語る「トレンド」とは何か。二人の会話は更に先に進みます。

林:トレンドと課題という話に深入りすると、キヨさんが取り組まれている匿名でのHRというような分野があるかなと思います。これは技術的なトレンド、例えばWeb3だったり、AIだったりっていうような話と、前回話した、その手前にある解決したい課題があると思うんですけども。キヨさんが今のプロダクトに取り組まれている課題意識は、どのようなものですか?

小林:僕たちはKnotというチームで2年ぐらい前から偽名経済というテーマに取り組んでいます。偽名経済というのは(中略)デジタルアイデンティティで自分の国籍とか性別とか肌の色とか年齢とか、そういうものを自分でコントロールして(中略)差別とか偏見なく実力のみで働けるようにするというところをミッションに掲げています。

ブロックチェーンは(中略)出したい個人情報をコントロールするという意味で非常に適している技術です。Web3のブロックチェーンテクノロジーを活用してその課題に取り組んできているというところです。

林:課題としては差別なく実力で働けるということがあると思うんですけども、そのニーズは、生活者というか、働く側にとっては、かなり普遍的でグローバルな課題だと思うんですね。ただ、採用をする方。企業の方に受け入れられるようにすることが、すごくチャレンジングというか、大事なところかなと思うんですけども、そのあたりはどのように考えられていますか?

小林:Good Questionですね。僕らも事業を続けていて、その課題を痛感しています。特にリセッションがすごい多い中で、偽名の人を雇いたいというニーズはなかなか大きくならない。いろんな人にインタビューをして、それこそVTuberもゲームの業界もDAOで働いてる人も、一般企業も、投資家も、もう何十もインタビューをしたんですけど、それで分かったのは、結局その実力を評価するのはすごい難しいなと。

林:そうですね、実力はすごく判定が難しいですよね。

小林:実力が証明されて初めて、その人の性別が必要なくなったりとか年齢が必要なくなったりとかはあると思うんですよ。(中略)実力をどう図るか、それに対してどう報いるかみたいなところを本当にWeb3だけじゃなくてAIのテクノロジーもいろいろキャッチアップしてその課題を解決できないかなと取り組んでるところです。

Techhouseの住人でもある内藤聡さんが創業したAnyplace。2023年にはシリーズBラウンドで1,000万ドルの資金調達にも成功。

林:キヨさんの実際の事業の話に入ってきたので、前回話に出た、テクノロジートレンドに関して。解決したい課題としては、人が実力で、ちゃんと働ける社会を作っていく、という大きな考え方があったときに、技術のトレンドとしては、どんなアプローチをされてますでしょうか?

小林:僕たちが注目してる技術としてはWeb3・ブロックチェーン技術と、あとAIの技術に非常に注目をしています。

僕たちはやっぱりブロックチェーンっていうものがインフラとして(中略)固まってくるというふうに確信をしていて、ヨーロッパでデジタルパスポートみたいな実験とかもあったとして、Decentralized IDという取り組みも実験的にスタートしていますけど、今後は政府が発行するIDとか、いろんなものがデジタルになって(中略)

例えば銀行に申し込むときに毎回個人情報を入力していますが、それはもうデジタルで毎回入力しなくても済んだりとか、免許証を持ち歩かなくても良くなったりとか、いろんなことが変わっていくと思うんですよね。

その中でやっぱその仕事に関するアイデンティティっていうのも、どういう情報を出してどういう情報を出したくないんだよっていうのは変わっていくと思っていて。話を戻すとブロックチェーン・Web3というのは、そのアイデンティティという分野でも必ず将来のインフラとして普及すると確信しています。

林:Web3、NFT等もありましたけれども、どちらかというとtoCのコレクティブNFTなど集められるものというよりは強固で透明のインフラとしてですね、そっちの方として定着をしていっているという読みをされてるということですね。

小林:そうですね。僕がトレンドを見るときにすごく気を付けていることは、Web3もAIもブロックチェーンでもそうなんすけど、何か記事を見て、最近こういう変化があるというものが仮にあったとき、その変化はどういう人にとってどういういいことがあってどういうことが起こり得るかをなるべくイメージをしてます

特に大事なのは、誰かにとって悪いことがあるならば、特に企業であれば、それに対して何か対策をするはずなんですよね。どういう対策をするんだろう。どういう風に課題に取り組むのだろう。代替品はどういうものがあるんだろうってことをイメージで示すようにしていて、そこら辺をよく頭で考えると、将来仮説がちょっとできてくるのかなと(中略)。

多くの場合はそれはTwitterとか情報とかニュースを見たときに「あ、問題があるな」で終わっちゃうと思うんですけど、問題のその次の次ぐらいまで見ると、将来仮説が出てくると思うんですね。この将来仮説が多分特にアメリカでスタートアップをするとか、もしくは投資をするっていう意味でも、すごい大事だと思ってます。

次回:共に挑む仲間へつづく

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する