アメリカで勝負する理由/世界に挑むスタートアップたち(5)小林清剛 × ACV 林智彦【ACVポッドキャスト】


本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容をテキストにまとめて掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ (ACV)がスタートアップと手を取り合い、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャスト・シリーズです。旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

スタートアップの言葉すらまだ一般的でなかった2010年代前半、起業家として事業を大手通信会社に売却し、その後渡米。個人投資家として、また連続起業家として活動しつつ、日本人起業家コミュニティを積み上げたのが小林清剛さんです。本稿では前回のパートに引き続き、アクセンチュアの林智彦が小林さんのこれまでの活動をお聞きします。ポッドキャストの内容を一部編集してテキストでもお送りします。なお、一部敬称については略させていただきました。

ポッドキャストで語られたこと

アメリカで勝負する理由

2010年代初期、日本でY Combinatorをお手本にした「アクセラレーションプログラム」タイプのスタートアップが流行した時期のことです。当時もやはり、日本から世界を目指そうと会社の登記を米国デラウェア州に置いた起業家たちがいました。

しかし、地の利が全くない状況では戦況は厳しく、その多くが撤退・帰国に追い込まれることになります。なぜ米国でスタートアップするのか。その問いに対する小林さんの答えはどこにあるのでしょうか。引き続き二人の会話に入っていきます。

林:日本で、集まって自分たちの志とか、何をやりたいのか、なぜやりたいのか?をすごく正直に話し合うということは、結構レアだと思うんですよね。ものすごく大事ですし、そこもやっぱりアメリカの良さが出てるのかなと。日本だと「照れ」という感情が非常にいろんなことを邪魔してしまうことがあり、そこを取り払うというのも大事なことなんだなと思いました。

(中略)私が初めてベイエリアに来て、UCバークレーに行ったときに、「え!こんな世界があったんだ!」って思いました。私はもうそのときたくさん日本でサービスを作ったり、起業した後だったんですけど、こんな風に生きている人たちがいること、知らなかった!という感情がおき、自分が大学時代にベイエリアに留学していなかったことに、人生で珍しく後悔しました(笑。

そこで結局、西海岸でチャレンジしたいなと思ったんですけど、確かになぜアメリカにいるのかってことは言語化してなかった。パッションはみんなあると思うんですけど、そのパッションの源ってすごく大事ですよね。

小林さんは渡米してから主要な起業家や投資家など多数の関係者にインタビューを実施し、ネットワークを構築しました。(写真は法律事務所「Wilson Sonsini Goodrich & Rosat」のパートナー、Taku Yoichiro(Yokum)氏にインタビューした際のもの/写真提供:BRIDGE

小林:なぜここでやる必要があるのか、というところが明確にないとなかなか勝負し続けられないと思うんですよね。日本は世界で一番スタートアップ・フレンドリーな国だと思っています。まず投資家がめちゃめちゃ優しいじゃないですか。投資家が優しくて資金調達もよくて、マザーズ(註:旧・現在は東証グロース・スタンダードに変更)っていうすごくいい市場もあって上場もしやすいですし、M&Aも比較的簡単に起きやすいし、あとはスタートアップの数も少ないじゃないですか。

日本人という同じ人たちも多くて中間層も多くて。インターネットでリーチするところのチャネルも少なくて、東京というところに集まっていて、ネットワークエフェクトに到達しやすいというところもあって、日本っていうのはスタートアップにとって恵まれている環境だと思います。

しかも経済規模も大きいじゃないですか。それに比べてアメリカのこの地域では競争環境が激しすぎて大変ですし、なんでここでやるのかっていうのはすごく大事なんですね。

林:なぜアメリカそして西海岸でやるのか?どんな理由が多いですか。

小林:いろんな理由があるんですけど、やっぱり世界中にプロダクトを届けたいとか、世界中の人に喜んでもらいたいとか、やはり「ココ発で世界」みたいなところが理由としてある人がすごく多いですね。

林:インパクト。届けられる大きさ、ということですよね。

小林:もし、そのゴールを持っているのであれば、なるべく若いときにこっちに引っ越して、こっちで勝負してトライアンドエラーを繰り返す方が結果的に早く到達できると思うんですよね。僕自身は日本で起業を何度もして、一応小さなイグジットもして、その後こっちに来ましたけど、そのときの経験ってほとんど役に立たなかったんで。

林:それはすごい話です。

小林:全然役に立たなかったです。多少資金もありましたよ、でも資金もこっちでほとんど無くなっちゃったんで。なので、やっぱりこっちで最初からトライアンドエラーを繰り返す方が圧倒的に早いですよね。

林:とにかくすぐ来た方がいいなら、来れる場所があるということは非常に重要ですね。こっちに行きたいって言っても来る場所がないと、どこに住めばいいんだ?と困ってしまう。そういう際に、先ほどのテックハウスですとか仲間たちがいて、ここがあると早く来ることができる、そういう繋がりになってるということですね。

小林:本当に最初に来る2、3カ月というのはすごく大事だと思います。

ーー小林さんはその後の話の中で、事業立ち上げのプロセスとして「事業を決めてから渡米」するよりも「まず住んでみてそこからトレンドを掴む」方法をおすすめしていました。日本にいて見える視座・視点よりも渡米してから見える景色が違う。そのためにまずはやってくること、コミュニティに参加することの重要性を語っていました。

次回は最終回です。大企業が渡米起業家を応援する「いい」方法とはなにか。お二人の会話をぜひ最後までお聞きください。

最終回:大企業が渡米起業家を応援する「いい」方法

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