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なぜスタートアップの従業員は辞めるのか?「職務内容」と「ロール定義」の重要性

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ピックアップ: Tech startups tend to lose many of their employees for the same reason, and it’s completely avoidable ニュースサマリー:Business InsiderがHRスタートアップ「Namely」による従業員の退職理由のリサーチ結果を発表している。調査はNamelyを利用する1…

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ピックアップ: Tech startups tend to lose many of their employees for the same reason, and it’s completely avoidable

ニュースサマリー:Business InsiderがHRスタートアップ「Namely」による従業員の退職理由のリサーチ結果を発表している。調査はNamelyを利用する1200社へのヒアリングによる結果がもとに出されている。20〜200人規模をスモール、200〜500人規模をミドル、500人以上の企業をラージサイズ企業と定義。

ミドルサイズ企業を辞めた従業員の46%が退職理由に「与えられた職務要件と自分の認識違いがあったから」と回答。面接の際に言われた職務内容と違ったり、時間が経つに連れて徐々に職務内容が変わっていることが原因であると分析。同原因はスモールサイズでは37%、ラージサイズの企業では26%という数値であった。この結果からミドルサイズの企業における職務要件の認識違いが顕著に見えるとも指摘。

スタートアップから成長を遂げるに連れ、各従業員のロール定義されていなかったり、どんなアウトプットを日々期待されているのかわからなくなっていることが原因で、ミドルサイズ企業で先述した退職理由の比率が大きくなっているとも指摘する。

Image Credit: 1Day Review

話題のポイント:Namelyのリサーチはスタートアップの全社員(フリーランス・契約社員を含め)が知っておくべき働き方についての示唆に溢れていると言えるでしょう。今回は筆者が米国で働いた上での知見をもとに考察をしてみようと思います。具体的に紹介する点は「職務内容」と「ロール定義」の2つ。

まずは「職務内容」に関して。この記事では「職務内容」の定義をKPIを達成するための日々のアクティビティとします。

さて、米国ではJob Descriptionと呼ばれる職務内容が細かく記された一覧が必ず求人に含まれます。求職者が応募前にしっかりと自分のスキルや経験にあっているのか、求めるキャリアパスに沿っているのかを確認するためです。採用担当者も事前に職務内容を指示・共有しておくことで従業員のパフォーマンスが期待値に沿っているかどうかを明確に判断できます。

米国では採用したとしても2週間前に通告すれば自主退職、もしくは解雇する権利があります。そのためアウトプットや期待値に違いが発生したとしても、明確にJob Descriptionを事前定義しておけばどちらに非があって職を離れるのかという根拠になります。

スタートアップの大きな課題に職務内容が広範すぎてJob Descriptionの事前定義が難しい点が挙げられるでしょう。サービスアイデアが実際に上手くいくはどうかもわからないため当たり前の話とも言えるかもしれません。そこで意識しなければいけないのは細かな職務内容の定義付けです

あらゆるスタートアップは何かしらのアイデアの種があります。このサービスアイデアの検証をするためにアクションプランの策定をする必要が出てきます。このアクションプランの予測結果と実際の結果を比較した上で、なぜ失敗したのか(成功することは稀)を分析。その上で毎回プランの変更を指示する必要があります。明らかに期待とは違った結果が出た場合、事前に設定した目標も大きく変更する必要があるでしょう。

このようにスタートアップは事前に職務内容を定義するのではなく、随時共有することが必須となります。創業者は必ず従業員と毎回細かくキャッチアップをしながら指示出しをする必要があります。

なぜ職務内容が変わるのかを毎回共有しながら従業員と仕事をしない限りストレスが溜まってしまいます。退職にまで至らずともストレスが溜まるため、チームの方向性も見えずに生産性が圧倒的に下がる結果に繋がるでしょう。この点、従業員も職務内容が随時アップデートされることを前提にスタートアップに入る必要があるかもしれません。

仮にこうした細かな指示だしが苦手であったり、自分の仕事で手一杯の場合は「ロール定義」が重要になります。この記事でいう「ロール」とはスタートアップの目的意識(サービススキーム達成など)及び期待値の共有を指します。たとえば「私たちがまず目指すポイントはビジネスモデルの確立であり、そのために3か月〜1年で達成したいゴールはこういったもの。なかでもこのゴール達成のために働いて欲しい」と伝えるイメージです。

ゴール達成のためのKPI設計や各自の動きに関しては基本的に従業員に任せます。しかしここで忘れてはならないのは、任せたからとはいえ何をしてもいいとは限りません。必ず週次報告をして創業者間で認識合わせを随時する必要があるでしょう。この点を告げずに丸投げをすると結局ストレスがたまり意識齟齬が発生。目的を達成できずに終わるはずです。

Image Credit: DARSHAN SIMHA

ここからは筆者の例を挙げて説明しようと思います。米国でチームを率いていた筆者の場合、規模が小さかったこともあり随時職務内容の定義付けとロール定義の両面を細かく行っていました。話の内容を事前に3点にまとめると下記になります。

  1. 2週間〜4週間のスピード感で職務内容は変更を余儀なくされる
  2. ロール定義は中長期の目標意識共有及びパフォーマンスのズレをなくすために必須(創業者が目指すものを常に明確に共有する)
  3. ロール定義をした後の細かな職務内容は従業員に一任するのも手。しかし進捗共有は怠らせず、問題がありそうであれば創業者がしっかりと指示出しすること
  4. ロールに基づいて自分が何をすべきかを考え・プランニングできる「自考人材」を探すのが良い

私の場合は採用前に「サービス顧客の発見・定義」「オペレーション運用と設計」「ビジネスモデル検証に必要なマテリアル収集」の3つのロールを伝えました(資金調達やチーム全体エクスキューション、ビジネスモデル企画などは筆者のロール)。その上で顧客候補のヒアリング数、テストサービスを実施する対象人数とテスト顧客から得られる期待満足度数、ビジネスモデル検証のために必要なステークホルダー対象の定義を仮設定して期間内のKPIを明確にしました。

ほぼ7〜10日間隔でまとまった進捗が上がってくるため、随時KPIを達成できているのかをお互いに確認。とはいえ、2、3週間もすればすぐに自分のアイデアと検証結果に違いがあることが分かってくるため職務内容を変更。

仮に採用前の想定労働時間を大幅にオーバーする場合はその都度相談にのり、どのようにサポートし合い乗り越えられるのかを考えます。一方、相手に寄り添いすぎるとチームの緊張感が薄れるため、私の方で定義したアウトプットに見合わない場合はその不安感や懸念点を率直に伝えます。「こういうゴール設定をしていて、自分たちは現状こういうフェーズにいることは伝えたはずだ。だから君のアウトプットにこの内容が盛り込まれていないのは間違いだと思うから僕は不満足だ」と率直に伝える具合です。

言い換えれば、従業員に期待していることやロールを採用前にしっかりと共有しておくと、エクスキューションを行う側もものすごく楽にになります。相手に言い訳を作る隙を与えません。仮にゴール感が共有できないのであれば、基本に戻ってどの点が抜けていたのか、共有できていなかったを把握できます。

筆者の経験から、特にサービス提供価値検証フェーズにいるアーリーステージ企業の従業員の職務内容はほぼ2週間〜4週間で変わるでしょう。ロールはサービス規模が大きくなったり、ターゲット顧客やビジネスモデルが変われば大きく変わらずを得ないでしょう。四半期に一度は見直しが求められるはずです。

また、筆者の意見として「あなたはマーケティング担当、そしてあなたはエンジニア担当」とタイトルを与えるだけの曖昧すぎるスタートアップの働き方は亀裂を生みやすいと考えます。なかでも海外の人と働く際は顕著にアウトプットに違いが表れます。少なくとも四半期に一度は期待値を更新する必要があるでしょう。

危険な点は「この程度のアウトプットは期待できるだろう」と勝手に思い込んでしまうことです。単に響きの良いタイトルを与えてそのままにしておけば必ず認識の違いが生まれてしまいます。大きく期待値と違うパフォーマンスが上がってきても、仮にエグゼクティブがしっかりとロール及びゴールを共有できていなかったのであれば、それは従業員の責任ではないと思われます。

大切な点は創業者が土台となるサービスの方向性をしっかりと定義して共有することです。その上で数値に落とし込みましょう。一方、良い人材は往々にして数値設定や、方向性に関して意見を自ら進言してくれます。仮に言われたままに仕事をする従業員であればその際は契約を更新するかを再考したほうが良いかもしれません

各人が目的意識を揃えた上で、どのような活動をすれば自社に対して(上司を喜ばすのではなく法人格としての企業に対して)最大の価値を提供できるのかを「自考」できる人材が最適でしょう。この点、筆者は「自分には持っていないタレント性」「自考できる」の2点に絞って採用及びステークホルダー探しを行っていました

スタートアップは日々失敗の繰り返しですし、想定外のことしか起きません。毎回想定外の結果が出ることを踏まえて職内容の再定義が随時行われます。その点におけるコミュニケーションをいかにスムーズに行い、各人のパフォーマンスを最大化させるかが創業者の腕の見せ所と言えるかもしれません。

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