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Takashi Fuke

Takashi Fuke

次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン企業「.HUMANS」創業。海外ピックアップ/コラム記事を担当。ARが専門領域。小売/ヘルスケア/不動産/フィンテック/音声などの2C向けサービスが好きです。Twitter : @takashifuke

執筆記事

第四のスマートスピーカ「Josh.ai」、狙うはハイエンド住宅特化のホームIoT市場

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載 GAFAが参入するスマート・ホームスピーカー領域、まだまだ先があるようです。 スマートホーム市場は2018年時点で766億ドル規模。2024年には1,514億ドルにまで、ほぼ倍増する成長市場です。年間平均成長率は12.02%。なかでもスマート・ホームスピーカーで言えば、2018年には52%がAmaz…

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載

GAFAが参入するスマート・ホームスピーカー領域、まだまだ先があるようです。

スマートホーム市場は2018年時点で766億ドル規模。2024年には1,514億ドルにまで、ほぼ倍増する成長市場です。年間平均成長率は12.02%。なかでもスマート・ホームスピーカーで言えば、2018年には52%がAmazon Alexa、Google Homeが32%、Apple HomePodが12%、その他が4%を占めます

9割以上がGAFAが市場シェアを占めるスマート・ホームスピーカー市場。一般的に、Google Homeに搭載されているGoogle Assistant、Amazon EchoのAlexa、HomePodのSiriを直接相手にするのは、スタートアップにとっては賢明ではない戦略のように思われます。ただ、今回紹介するJosh.aiは競争激しい市場へ参入を果たしています。

デンバーに拠点を置く、家庭向け音声ハードウェアおよびプライバシー重視のAIシステムを開発する「Josh.ai」は4月30日、1100万ドルをシリーズAラウンドで調達したと発表しました。累計調達額は2,200万ドル。出資元の情報は非公開。

Josh.aiは広い敷地を持つ家庭に特化して、独自の音声アシスタントを搭載してある、スマート・ホームスピーカーを含む、IoTシステムを提供しています。照明、音楽、エアコンや暖房、オーディオ/ビジュアル、セキュリティ、家電製品など、家の周りの操作を統合するサービスです。ホームオートメーションシステムは一般的に2.5万ドルから50万ドルのコストがかかりますが、Josh.aiに関しては1万ドルからの価格帯を提示しています。

同社が狙うのは、5,000平方フィート以上の家庭でスマートホームシステムを設置したいニーズです。最近ではホテルやコンドミニアムの建物に導入するなど、商業部門でも事業拡大を狙っているそうですが、卸先の約80~85%は一戸建て住宅。

ハイエンドのスマートホームスピーカー市場プレイヤーは、プロダクトが時代遅れなプロダクトラインナップが並びます。「Crestron」や「Savant」などの大規模なインストールを行う企業は、Nest、Google、Amazon、Appleの製品と競合しており、市場では押され気味。

そこでJosh.aiはシンプルなセットアップかつ広範囲に導入できるスマートホームを提供してます。GAFAにデータを抜かれたくない消費者ニーズも少しずつ高まり、プライバシー対策の高さも評価されているようです。

高所得者層向けに大規模なシステムを設置することで、大口顧客と長期的な関係を築けるようになります。システム運用管理費などの名目で、大きな予算を2Cから引っ張ってくることが可能になります。ニッチな領域でありながら、GAFAに勝つ独自の戦略を採用しています。

日本は中流階級が多く、敷地面積も広い家庭は欧米と比べて限られる印象です。他方、アジア市場全体を見渡すと、中国や東南アジアが所有する広大な住宅が点在しています。こうしたアジアの富裕層をターゲットに、「アジア版Josh.ai」が登場したら面白いかもしれません。不動産企業と組み、スマートホーム化を進められるのであれば、未だ小資本のスタートアップ参入する余地はあるのではないでしょうか。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

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小売店+ライブコマースーーwithコロナの生き残り戦略は“ほぼ24時間営業”の越境EC店舗

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載 小売業界が厳しい状況に追い込まれています。 Retail Driveによると、閉店した店舗舗の多くが再オープンしない動きを活発化させており、今年だけで1万5,000店もの米国小売店が閉店する可能性があるとの予測を公表しています。それ以外にもUSA TODAYは2025年までに米国で10万店もの店舗が…

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Photo by Chris Panas on Pexels.com

※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載

小売業界が厳しい状況に追い込まれています。

Retail Driveによると、閉店した店舗舗の多くが再オープンしない動きを活発化させており、今年だけで1万5,000店もの米国小売店が閉店する可能性があるとの予測を公表しています。それ以外にもUSA TODAYは2025年までに米国で10万店もの店舗が閉鎖される可能性を伝えてますし、Reutersが伝えるところではLord & Taylorは、在庫を清算するためだけに38店舗の百貨店を再開することを計画しているそうです。

厳しい経営状況の中、実店舗を持つ大手ブランドはどのように考えているのでしょうか。The Seattle Timesによれば、Amazonにブランドが取り込まれているという動きがあるようです。

同記事では、オンライン小売業者向けソフトウェア「Feedvisor」が実施した調査を紹介。新型コロナ大流行前は約45%のブランドがAmazonで商品を全く販売しておらず、3分の1以上のブランドは、顧客にリーチする上でAmazonを必要としていないと答えています。多くのブランドや卸売業者は、Amazonが自社のマージンを圧迫し、貴重な顧客データを収集し、最も人気のある商品をコピーするのではないかと懸念していたためAmazonの手の届かないところに身を置いていました。

ところが、パンデミックでこれらの状況は一変します。

Amazonの力は、以前まで売上の大半を実店舗に頼っていた大手ブランドにまで拡大し、数少ない実店舗に代わる販売店の一つとして浮上することになったのです。パンデミックの影響でAmazonは急速に成長するという、ユニークな立場に置かれています。

店舗からライブ配信する越境EC

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Photo by Artem Beliaikin on Pexels.com

渋々Amazonへの参入を果たしている小売ブランド。これを機に、実店舗および自社ECの運用改善を行い、オンライン売上強化を図る動きが出てくるかもしれません。ただし、自社ECを前面に押し出したところで、Amazonへの勝算はほとんどないのが現実です。

それではAmazonが未だに進出しきれていない業態はどこでしょうか。

GAFAにだって弱点はあります。答えの1つがライブコマースです。あと1〜2ヶ月生き残れるのかわからない小売店舗が多数登場してきており、新たな販売チャネルニーズが高まりつつある中、ライブ配信プラットフォームの活用は期待される一手と考えます。

具体的には閉店中の店舗からライブ配信を行い、商品紹介・販売をする事業モデルが挙げられます。自粛要請が解除されたとしても向こう1〜2年は客の入りが減るリスクヘッジを考えつつ、全く使われない不動産資産および在庫を活用する考え方です。

事例として米国拠点のライブストリーミング越境ECサービスの「ShopShops」を挙げます。同社はニューヨークの店舗から中国市場向けに洋服を売るライブ配信コマースサービスを展開していました。プラットフォームはTaobao(淘寶網)です。テレビショッピング感覚でナビゲーター/キュレーターが提携店舗から商品を紹介し、店舗内の商品をお客が自国から購入していく越境ECの仕組みになっています。

平均2万弱のユーザーがリアルタイムに動画を視聴し、キュレーターが100点ほどの洋服・アクセサリーをリアルタイムに販売。北京のShopShopsチームがTaobaoのECサイトで購入を促し、米国のフォワーダーから輸出されます。LA・NYC・SF・MIAMI各都市で、毎日1回は販売イベントを開催。1店舗のイベント売り上げ平均は6,000ドルであったそうです。

ShopShopsは今はクローズしてしまっていますが、原因はタイミングの問題だったと今では感じます。withコロナの現代ではその提供価値が再認識されるのではないでしょうか。

“ほぼ24時間営業”の店舗業態

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Photo by Artem Beliaikin on Pexels.com

また今後は、店舗の価値を最大限活用する機運が高まってくるはずです。そこでShopShopsのように越境ECを事業軸に、時差を利用して店舗からほぼ24時間運用の形でライブ配信を行い、日本にいながらにして世界中に商品を販売する「店舗の販路拡張」の考えに注目が集まると感じています。時間帯によって配信先国を変える「24時間の」オペレーションです。

いわば各国ライブ配信プラットフォームにコンテンツ展開する「越境EC + ライブ配信時代の分散型メディア」のモデルで、人件費をなるべく削った形で実質24時間営業できる、無人店舗化にも繋がる事業概念です。

Airbnbが住宅の、Uberが自動車に眠る遊休資産をフル活用して成長したように、コロナで顕在化した閉店店舗および在庫資産を急成長を遂げつつあるEC市場に流す、時代に沿った越境ECのモデルに商機を感じています。

事実、閉店を余儀なくされた小売事業者が中国では、ライブ配信サービスを通じて消費者に直接商品を販売するECチャンネル化を指す「リテール・ストリーミング」の分野が成長しているそうです。

iiMedia Researchのレポートによると、中国でのライブストリームECは2019年に年間610億ドル相当の取引を達成しています。 さらに最近では、コロナウイルスのロックダウン中に人々が自宅にいるため、チャネルはさらに劇的な後押しを受けています。同じレポートでは、2020年にはリテールストリーミングの取引額が合計で1290億ドルに達すると予測。2月だけで、中国最大の小売ストリーミングプラットフォームのTaobaoは、ベンダー数719%の増加を見ているとのことです。

実店舗に人が集まらないのであれば、人が集まる場所に積極的に展開する必要があります。さらに、コスト垂れ流しの状態になっている新たな店舗運用を考える時期に、既存事業者が手軽に導入できる事業モデルを考える必要が出てきました。今回紹介した越境EC向け店舗サービスは、日本の店舗を1日でグローバル展開ブランドに変えるアイデアになるかもしれません。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

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デジタルノマド向け賃貸マーケットプレイス「Anyplace」シリーズAで530万ドル調達ーーLife as a Serviceへ拡大目指す

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家具付きの部屋、ホテルの賃貸サービスを提供する「Anyplace」は5月12日、シリーズAで530万ドルの資金調達を発表した。GA Technologiesがこのラウンドをリードし、他の出資者としてはEast Ventures、サイバーエージェント(通称:藤田ファンド) 、三井住友海上キャピタル、デジタルベースキャピタル、Heart Driven Fundが参加した。また個人としてもJason C…

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Credit by Anyplace

家具付きの部屋、ホテルの賃貸サービスを提供する「Anyplace」は5月12日、シリーズAで530万ドルの資金調達を発表した。GA Technologiesがこのラウンドをリードし、他の出資者としてはEast Ventures、サイバーエージェント(通称:藤田ファンド) 、三井住友海上キャピタル、デジタルベースキャピタル、Heart Driven Fundが参加した。また個人としてもJason Calacanis氏、本田圭佑氏、富島寛氏が参加している。同社の創業は2015年、サービス立ち上げは2017年である。

Anyplaceはホテルの部屋や家具付き住宅を月ごとに契約して借りることができるオンラインマーケットを運営。最近ではホテル以外にCo-livingの物件も取り扱っている。住宅やホテルを所有せず、集客と手続きの処理を行い、手数料として10%を徴収するモデルだ。月額契約時におけるホテルの割引率は通常30〜50%だが、これによりホテルは月額収入という新しい収入方法を得られる仕組みになっている。

現在23カ国70都市で利用可能。予約可能部屋数は1万室以上がマーケットプレイスに掲載されている。月間流通総額の成長率は新型コロナウィルスによる影響がある前で20%を達成していたという。累計顧客数は1,000人超。

今回の調達資金を用いて、ライフスタイルを提供するプロダクトを開発予定。具体的には年内にCommunity・Perks・Loyalty Programなど、ノマド的なライフスタイルをより促進できる仕組みをローンチするとのこと。

Airbnbとは違う、「居住」という強み

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Credit by Anyplace

さて、withコロナ時代の資金調達だ。これからやってくるであろう経済低迷期を乗り越えるための調達をどこも急いでおり、その一環としても受け止められるかもしれない。だが、筆者個人としてはそんなコンサバティブな調達としては見ていない。理由は2つある。

1つは「居住」という提供価値。

短期滞在としてみれば、コロナの影響でホテルや民泊利用は沈んでいる。たとえばAirbnbだ。先日、Airbnb CEOのBrian Chesky氏は1,900名の従業員解雇を宣告した。また2020年は、2019年の収益約48億ドルの半分しか計上できない可能性をメディアで報じられている。明らかに不動産系スタートアップには苦難の時代と言えよう。

だが、ここでAnyplaceの提供価値が活きてくる。同社はデジタルノマド向けの中長期滞在ニーズに焦点を当てている。ホテルの利用価値を「滞在」から「居住」へと変えているのだ。

たしかにAirbnbを筆頭に、宿泊系サービスは大きな影響を受けている。しかし、これは短期滞在ニーズに集中しているゆえの打撃である。一方のAnyplaceは長期滞在ニーズに着目している。この違いはミドル・ロングスパンで見れば大きい。

with-コロナの現在、外出自粛が市場に横たわっているため、AirbnbもAnyplaceも大きなダメージを受けるはず。他方、市場が徐々に持ち直してくるpost-コロナ時代には、娯楽目的の旅行需要より先に、居住需要の方が先に持ち直す可能性がある。

完全オンラインで仕事をする習慣ができたことから、仕事のために各地を転々とする行動は今の自粛の反動のように加速すると考えられる。このニーズを先にすくい取れるのはAnyplaceの可能性が高く、短期滞在にサービス価値を振っているAirbnbやExpediaのような旅行市場の巨人ではない。安直に「ホテル版Airbnb」のように解釈するとAnyplaceの可能性を見失う。

Googleより強いデータ資産を持つ未来

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Credit by Anyplace

もう1つは「インホーム・コマース」の可能性だ。

生活拠点をホテルに移す人たちが増えている。そこにあらゆるライフサービスを提供することで新たな市場が開く算段を持っているのがAnyplaceだ。

居住に関連するライフサービスの強化は高い可能性を秘める。1社事例を挙げたい。マンション住人向けの家事手伝いサービスを提供する「Hello Alfred」だ。同社は入居者向けに生鮮食品配達や洗濯、食器洗いなど、あらゆる生活サービスを提供する。利用者には専属スタッフが付き毎回訪問するシステムのため、細かなライフスタイルまで知り尽くしている。オンラインサービスでは獲得できない「信頼」が同社の強みである。

Hello Alfredは不動産ディベロッパー(マンションオーナー企業)から収益を上げ、入居者からはお金を取らないB2B2Cモデルとして成長を続けている。生活者一人一人の購買活動に直接介入し、家の外に出ることなくあらゆる製品・サービスを提供することで「インホーム・コマース」という新経済圏を作り出した。生活者の情報を隅から隅まで知っているため、Googleより密な個人データ資産を持つのが特徴だ。

不動産オーナー企業との契約を地道に積み重ねているモデルであるため収益は確実に上がる。他方、エンドユーザーの満足度を高め、ネットワークを積み重ねることで新しい提供価値を世に生み出した。あまり知られていないスタートアップだが、個人的には大好きな企業の1つになっている。

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Anyplace 創業者 CEOの内藤聡氏

さておき、筆者はAnyplaceもHello Alfredと同様の生活体験価値とデータポイントを獲得できると踏んでいる。Hello Alfredの場合、すでにマンションに住んでいる人に生活サービスパッケージを提案することでここまで成長してきた。

Anyplaceの場合はと言えば、ホテルネットワークを自ら作り、その上にサービス展開する流れとなる。有形資産を持たないマーケットプレイスモデルとは言え、新市場を0から立ち上げるに等しいため、立ち上がるまで比較的時間がかかる。

ただ、利用者の生活全ての面倒を見るサービス領域にまで手をかければ、これは先述したようにGAFA勢を超えるデータ企業へと様変わりするのだ。時間コストをかけてでもやりきる意味が見えてくる。

Anyplace居住者との「信頼」を勝ち取ることができれば、次の転居先でもAnyplaceを継続利用してもらえる確率も上がる。個人の生活習慣データを引き継げば、担当が変わってもストレスのない生活体験を世界中どこでも再現できるからだ。実際にAnyplaceがどう動くかは別として、筆者はこのLife-as-a-Serivce(通称LaaS)のモデルにとてつもない可能性を感じている。

もっと言えば、Hello Alfredは2018年時点でシリーズBを突破、累計5,000万ドル超の調達に成功している。ライブサービス軸で語れば、Anyplaceが同程度の伸び代を持っていることが想像できるし、今回の530万ドル調達のもっと先、Anyplaceがさらに次のラウンドを重ねてバリュエーションを高められる可能性は十分にある。日本に拠点を置いていれば、おそらくスモール上場規模までは全く夢ではないはずだ。

海外市場でサービス展開をする日本人起業家で、この領域にまで足を踏み入れられて人は数える程しかいないだろう。内藤氏は確実にその中に数えられる存在となると感じられる。

繰り返しになるが、市場は新型コロナの影響で大きく低迷するだろうし、トラクションの大幅減少も容易に想像がつく。しかしAnyplaceの調達は、post-コロナに到来する新たな生活スタイルへの準備するための調達と捉えられる。生存するための調達という意味合いだけでは測れない市場の展望がある。

とりわけ、そう簡単には発生しない私たちの行動習慣が変わるタイミングが今まさに起きている。リモートワークが増えれば、コロナが去った後には自由に世界中を移動しながら仕事をするデジタルノマド層が増えることも想像される。そしてAnyplaceが狙うのはこうした時代の門出直後に誕生するマーケットだ。ホテルやCo-livingをレバレッジする、新たな長期滞在領域を寡占する可能性を大いに秘めていると考えている。

最後に、有難いことに筆者はAnyplaceを長く見させてもらっている。創業者の内藤氏がアイデアを浮かんだシェアハウスに一緒に1年近く住んでいた仲であり、同じ2015年にサンフランシスコで起業した仲でもある。ついにシリーズAまできて身も震える想いだ。そしてシリーズAのタイミングで「居住」と「生活」の両方を囲うサービスへと進化を遂げようとしている。厳しい時代だが、ここまで書いてきたように眠った巨大な可能性しか感じない。引き続き“日本人シリコンバレー起業家”の代名詞に目が離せない。

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いま高まる「リモートカルチャー」の重要性 ーーオンライン前提社会における新たな企業ニーズ

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載 ポストコロナの時代、いままでの生活が戻った時にふと、「ほんとうに出社する必要があるのか?」と感じる人が増えるかもしれません。 在宅ワークやオンライン出社の価値が認められ、従来より非出社比率が高まることも予想されます。するとリモートワーカー向けの企業文化「リモートカルチャー」を構築する必要性が登場して…

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載

ポストコロナの時代、いままでの生活が戻った時にふと、「ほんとうに出社する必要があるのか?」と感じる人が増えるかもしれません。

在宅ワークやオンライン出社の価値が認められ、従来より非出社比率が高まることも予想されます。するとリモートワーカー向けの企業文化「リモートカルチャー」を構築する必要性が登場してくるでしょう。本記事では2つのトピックを説明しつつ、関連スタートアップを紹介します。

「引っ越し(リローケション)」ニーズの高まり

ポストコロナ時代では、たとえば都市部に住むことを見直す人が出てくることも考えられます。東京は比較的安心ですが、たとえば米国の都市部は必ずホームレスが集まる場所があり、危険と隣り合わせ。なおかつ高い生活費を支払う必要があり、郊外へと引っ越すニーズが増えてくるかもしれません。

郊外へと人の移動が増えるとなると都市部地価の下落が始まります。地価高騰が止まり、住みやすい場所へと徐々に変わっていく。これまで世界人口は都市部一極集中になると予測されていましたが、しばらくの間は都市流入トレンドが止まるかもしれません。

いわゆる「人口均一化」「脱都市化」の流れです。Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグ氏はブログで都市部の変化についてまさしく同様の予測をしています。ザッカーバーグ氏はテクノロジーによって起きると予測していますが、図らずもコロナによってトレンドが加速されました。

こうした背景の元、従業員が必ずしも出社する必要性を感じなくなり、住み心地の良い地方へ引っ越しすることを考え始めるでしょう。すると企業が従業員の引っ越し手配をするニーズが高まると予想されます。一種の福利厚生として手配する具合です。そこでベンチマークとなるのが企業向け引っ越しサービスを提供する「Localyze」です。

Localyzeは、従業員の海外移転サポートサービスを提供しています。従業員の移転は企業にとって高額な費用がかかります。一方、TechCrunchによると、毎年200万人もの人々が仕事のためにアメリカやヨーロッパに移住しているのが実情なのだそうです。

そこで同社はこのプロセスを合理化するために、移民手続き、引越し、住居に関するタスクを50%高速する自動化ソフトウェアを開発しました。また、外国人従業員に銀行、保険、交通機関などのサービスを紹介します。2019年8月時点で27社のB2B顧客と提携しており、8月は1万6000ドルの収益を上げたそうです。

Localyzeは移民市場に目を向けていますが、コロナの影響で国外移動は当分控えられるでしょう。他方、国内移動の方が持ち直すのが早いと考えられます。そこで、たとえば東京拠点の企業が満足度向上やリテンション率向上を目的に、地方移住ニーズのある従業員に住居を手配するような動きが出てくるかもしれません。クラウドワークスやランサーズ、OffersのようなプラットフォームがLocalyzeのようなサービス提供をしたら面白いのではないでしょうか。

メンタル崩壊を防ぐ「リモートケア」

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リモート従業員の中には、孤独を感じることでメンタルに不安を持つ人が出てくることが予想されます。

例えば現在の状況では、直接会って上司の顔色を伺ってから案件を通すようなプロセスは難しくなっています。なぜなら、Zoomの入室ボタンをオンにしたら目の前に機嫌の悪そうな上司がいて、その場で説得するシビアな環境になっているからです。これは極端な例かもしれませんが、オンラインへと仕事がシフトすることによる、これまで見えなかったワークフローの危険性の一つです。

そこで参考になるのが「MentalHappy」です。同社はケアパッケージ「Cheerboxes」を提供し、社員が会社とのつながりを維持できるサービスを作りました。Cheerboxには、Amazonでは手に入らないようなスナックや本などが詰め合わせてあります。こうしたオリジナル性の高いグッズセットを定期的に送ることで、雇用主が従業員のメンタルヘルスを気にかけていることを示すのに役立ちます。

瞑想やフィットネスサービスの割引券をあげたとしても、必ずしも企業が従業員を「ケア」していることは感じられない課題を解決します。「企業ギフト」という新たな業態を開拓したのがMentalHappyです。

同じ文脈で人気を集めているのが有名人の動画メッセージを変えるマーケットプレイス「Cameo」です。VICEによれば、コロナの影響でハリウッドを中心とした有名人の広告予算は急に止まり、撮影も中止。家で時間を持て余している俳優やインフルエンサーが多発しているそうです。

そのためCameoを通じて自宅で撮影した動画を販売している人が増えています。Cameo自体は2C向けですが、従業員向け福利厚生サービスとしての提供価値を持たせれば、MentalHappyが狙う同じ層に刺さる可能性も十分考えられます。

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オンラインハラスメントという社会問題も深刻化しています。

こちらの記事によると、2017年の調査では「アメリカ人の5人に1人近く(18%)が、身体的な脅迫、持続的な嫌がらせ、セクハラ、ストーカー行為など、オンライン上で特に深刻な形態のハラスメントを受けたことがある 」とのことです。コロナ前のデータではありますが、直接誰かに触れる機会がなくなったことで、嫌がらせはインターネットへと場を移すことも考えられます。

Tall Poppy」はオンラインハラスメントに特化した従業員ケアサービスを提供している企業です。各ケースを審査した上で、正しい対処方法や法的処置の知識、セーフティスコアの計測など、あらゆるシチュエーションに対処してくれます。このようなオンライン化が進んだ社会における新たな犯罪から従業員を守るサービスにも注目が集まるでしょう。

ここまで「引っ越し」と「リモートケア」の2つを軸に、企業が考えるべきこれからのバーチャルカルチャーの姿の一端に触れてきました。ひとえにカルチャーと言っても、さまざまなアプローチやコンテンツがあるので解はいくつも挙げられます。今後は従来のようにマッサージ券や宿泊券、フィットネスサービスなどの福利厚生だけではなく、オンラインワーカーならではの需要に応える必要が出てきそうです。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

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50のプロダクトを開発、たどり着いたのは「常時接続のRemotehour」ーーシリコンバレーのアクセラレータで1位を獲るまでの軌跡

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withコロナ時代になり、「オフィスワーク」に代わる考えとして「常時接続」という言葉が頻繁に使われるようになった。在宅ワークであっても会社のオフィスにいるかのように社員同士が話ができるオンライン環境を作るのが常時接続サービスの特徴。オンラインマークが表示されているユーザーに、その場で動画や音声を通じて話しかけられるのが一般的な仕様となっている。 ここ数カ月で急速に注目されるようになった常時接続サー…

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Remotehour創業者の山田俊輔氏

withコロナ時代になり、「オフィスワーク」に代わる考えとして「常時接続」という言葉が頻繁に使われるようになった。在宅ワークであっても会社のオフィスにいるかのように社員同士が話ができるオンライン環境を作るのが常時接続サービスの特徴。オンラインマークが表示されているユーザーに、その場で動画や音声を通じて話しかけられるのが一般的な仕様となっている。

ここ数カ月で急速に注目されるようになった常時接続サービス領域で頭角を現しつつあるのが、サンフランシスコ拠点の「Remotehour」である。今回は創業者の山田俊輔氏に自社サービスについてと、米国オンライン・ワークツール事情についてオンライン取材を実施した。

Remotehourは日本人起業家の山田俊輔氏によって2020年3月に創業されたスタートアップ。ホストユーザーは自分のルームを持つことができ、訪問ユーザーは発行されたURLをクリックするだけで、そのユーザーにライブ動画を通じて話しかけることができるサービスとなっている。

ホストが離席中や他の電話を受けている間などは、部屋のステータスを自由に変更可能。主な用途はコワーキング(常時接続)。Zoomと異なり、事前に話し相手とのスケジューリングをする必要がなく、相手が話したい時に、すぐ話しかけられるのが特徴となっており、リモートチームのスピーディなコミュニケーションを可能にする。

アクティブユーザーのリテンション率は80%程度を維持。主にフリーランスや大学教授のような複数のクライアントを抱えているユーザーが好んで利用していて、「Remotehourがなくなると困るか」という質問に対しては約30%が「とても困る」と回答しているそうだ。

開発は1月から始まり、3月にはリモートスタートアップ特化のオンライン・アクセラレータ「Pioneer」に採択されている。同アクセラレータはYCombinatorの元パートナー、Daniel Gross氏によって設立され、マーク・アンドリーセン氏やStripeから支援を受け、シリコンバレー以外では触れる機会がなかった資金調達の流れや人材ネットワークへのアクセスを提供するプログラムとなっている。ちなみにGross氏は、GitHub、Figma、Uber、Gusto、Notion、Opendoor、Cruise Automation、Coinbaseなどのエンジェル投資のポートフォリオを持っている。

Pionnerは参加スタートアップに1%のエクイティ提供を求める。対価として、現金は支給されないが、創業者の法人設立、専門家ネットワークを介したメンタリング支援を行う。RemotehourもPionner負担で登記プロセスを完了している。

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さて、Remotehourが参入するオンラインワークツール領域は競争が熾烈だ。なかでもAndreessen Horowitzが出資する750万ドル調達済みの「Tandem」や、日本でも認知されつつあるバーチャルワークステーション「Remo」など、名前を上げればきりがない。どの点を競合差別要素として置いているのだろうか。

Tandemのようにチームで利用されてる方もいるのですが、ここは私たちの得意としている領域ではありません。主なユースケースは、大学教授がその学生たちに向けてオフィスアワーを展開、フリーランスがそのクライアントたちに向けて常駐環境を提供するような場です。一人に対して子要素が複数あるようなケースを想定しています。

動画系オンラインワークツールは大きく2つに分けられる。ZoomやSkypeのように事前に予定を組んで決まった時間に電話をする「スケジュール型」と、TandemやRemotehourのようにいつでも気軽にコミュニケーションを取れる「常時接続型」だ。

Remotehourはそのサービス価値からいえば一見Tandemとは競合するが、ユースケースはチームではなく個人だ。個人間でやり取りする常時接続型サービスとして価値訴求している。スケジュール型にはない常時性と、Tandemが取りこぼしているプライベート通話の領域での成長を目指す。

また、カレンダーサービスの「Calendly」や「Meetingbird」を使っていたユーザー習慣を、オープンドア・ポリシーによって代替しようとしているのがRemotehourだという。これは個人間でスケジュールを決め、ZoomやSkypeで話すユーザーフローにも同じことが言えるはずだ。こうした従来のUXを最発明し、ショートカットするのが強みとなっているのだろう。

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それでは米国における常時接続事情は実際はどのようなものであるのか。次のようなユースケースを答えてくれた。

全米でもリモートワークが余儀なくされている状況です。現在、私はシェアハウスに住んでいるのですが、メンバーのうち一人はGAPに毎日出社していたのがフルリモートとなり、もう一人はパン屋で働いてたのですが失業してしまい国へ帰っていきました。身近なところで、リモートできる職種とそうでない職種が大きく分かれ、それが死活問題となっています。

GAPに働く知人は、ほぼ日中テレビ通話が繋ぎっぱなしになっており、元々リモートではなかった会社の方が常時接続が導入されやすいのかなとも感じました。おそらく、社内でのリモートワークに関するルールが定まっていないのと、全員同じエリアに住んでいて時差も関係ないため、常時接続の方がかえって楽なのかなと思います。

サービスユースケースが創業者の近くにあるのは成長するスタートアップの鉄則だ。この点、世界的な在宅ワーク事情はRemotehourの追い風になっていることが体験談から伺える。

回答ではGAPの事例が挙げられているが、前述した通り、チームでの利用はRemotehourのコアユースケースではない。そこで注目しているのが教育市場だという。大学教授が自身のオフィスアワーで利用しており、かつ同じ大学の先生にサービスを紹介するリファーラルによる成長が発生しているとのことだ。こうして同じ大学のメールアドレスを持ったユーザーが増えており、教育機関を丸ごと囲い込むシチュエーションが起きている。

学生ユーザー層はSnapchatの影響もあり、動画でのコミュニケーションに慣れているらしい。チャットの代わりに5〜10秒程度録画して友人に送って若い世代同士でコミュニケーションを取るのが米国では一般的。最近では「Houseparty」の影響もあり、動画を付けっ放しにする習慣も根付き始めている。こうした世代にとってはRemotehourの使い方は自然に受け入れられる可能性が高い。

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写真は山田氏が渡米約1年後に運営していたYouTubeチャンネル

筆者が山田氏と会ったのは2015年のサンフランシスコだったと記憶している。同じシェアハウスに同居していて、彼が初渡米したタイミングであり、3か月間の旅行で訪れていた。当時は開発の技術も全くなかったが、会わない間の5年で50のプロダクトを開発していると聞いた。元々ソフトバンクの営業をしており、プログラミングの知識0から始め、現在のRemotehourにたどり着いた挑戦心はものすごいものだ。

Remotehourは欧米の市場トレンドに乗っているが、山田氏自身の働き方もトレンドを体現している。

法人を立てずに個人事業主として新しいアイデアを小さなプロダクトに落とし込んでいく動きは、「Maker Movement」として米国で認知されている。いくつものプロダクトを作り、企業に気に入ってもらったものは小さく売却して次のプロダクト開発へ動く、フリーランスエンジニアが台頭したならではの働き方だ。同氏はこうした中で開発力と失敗・ローンチを繰り返しながらも先に進む忍耐力を培っている。

プロダクトを出したり閉じたりしているうちに、プロダクトは上手くいかないのが前提であり、何度でもローンチすればよいと開き直れました。ローンチ量が多いと、どれくらいのクオリティまで作り上げれば人が評価してくれるのかも何となく分かるようになりました。

Remotehourにプロダクトを絞ってからは、これと同じことを機能リリースで行なっています。ユーザーと話していて思いついたアイデアは、次週にはリリースしてみる。ダメなら機能を閉じる。すでに、閉じた機能もたくさんあります。中には、あんまり更新が多いとユーザーが去ってしまうという意見もありますが、私はユーザーに対してあまり怯えません。

機能が出来たなら週に何度でも更新メールを送るし、ダメだと思ったら勝手に閉じます。それくらいで去ってしまうユーザーであれば、おそらく使い続けてもらうのは難しいと分かったからです。本当に付いてきてくれるユーザーは、ある程度の失敗は配慮してくれるし、逆にリクエストも沢山してくれます。

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山田氏の開発力はPionner採択にも活きている。

Pioneerは他のアクセラレーターと異なる審査基準を設けている。YCombinatorのような一般的なアクセラレーターが面接採用であるならば、Pioneerはインターン採用である。その時の受け答えではなく、週次での進捗や成長率によって評価される。そのため、山田氏は2月にPioneerに登録して、実際に選ばれたのは3月後半。1か月以上審査に時間を費やしている。

英語が不得意な日本人で、チームも一人であったため、そこまでパッ見の印象は良くなかったという。だが、毎週機能を幾つも追加したり、とにかく改善しようという気持ちと実際に行動へ移してきたことは他の応募者に負けていなかったとのことだ。こうして最終的にはPioneerが開催した起業家トーナメントに参加し、全参加者の中で首位を獲得している。

元YCombinatorパートナーであり、GitHub、Figma、Uber、Gusto、Notionへの投資実績を持つGross氏のお墨付きをもらった唯一のスタートアップとして認知された。渡米から5年、多くの難題を超えてきてようやく形になったRemotehour。最後に今後の戦略について聞いた。

Remotehourはプロダクト単体で勝負していくつもりです。今後、有料プランも用意していくつもりなのですが、マーケティングや営業には最低限のリソースしか割くつもりはなく、開発とUXの向上に全身全霊をかけていきます。通話アプリなので、一人のユーザーが使い出せば、それに応じて、何名かにも知ってもらうことにはなります。したがって、良いプロダクトさえ作り続けていれば、それだけ伸びると信じています。

年内には公開APIを発行し、多くの業態にアレンジして利用いただけるような準備を進めていければと思っています。ターゲットセグメントはチーム利用以外でのフリーランス、士業、教育、医療のような場面を想定しており、いわゆるリモートワークと聞いて、まだ疎い業態の方に利用していただけるような分かりやすさを盛り込んでいければと考えています。

シリコンバレーで活躍する日本人起業家に新たに加わったRemotehour/山田 俊輔氏にこれから注目だ。

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始まるチームのSaaS化、世界のフリーランス採用3業態から見えた「チーム拡張」の手法

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載 リモートワーク社会になって1〜2か月ほど経ちました。「直接会わないと仕事しづらい」といったオフラインワークを尊重する人も、昨今の影響からZoomやSkypeを通じたオンラインワークを主体に仕事をする必要が出てきました。 物理的な距離の制約を受けなくなったことから、リモートワーカーを雇う心理的な障…

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載

リモートワーク社会になって1〜2か月ほど経ちました。「直接会わないと仕事しづらい」といったオフラインワークを尊重する人も、昨今の影響からZoomやSkypeを通じたオンラインワークを主体に仕事をする必要が出てきました。

物理的な距離の制約を受けなくなったことから、リモートワーカーを雇う心理的な障壁が下がった印象もあります。これを機に開発を外部のエンジニアに外注してみようと試みている企業さんも少なくないでしょう。

フリーランス採用プラットフォームとして利用される企業に、日本の「ランサーズ」や「クラウドワークス」、米国の「Upwork」や「Fiverr」が代表的なものとして挙げられます。彼らはいずれも企業と個人を繋ぐサービスです。

ただ、従来のフリーランス採用市場は徐々に変わりつつあります。現在までに登場した業態は大きく3つあります。

リモートで現地法人立ち上げ

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Remote」は世界中の優秀な開発者を正社員や契約社員として採用できるグローバルプラットフォームを提供。同社は2019年にサンフランシスコで創業し、4月22日には1,100万ドルを調達しています。

従来、企業が海外人材を雇用するプロセスは面倒なものでした。給与計算、福利厚生の提供、現地の雇用法や規制への準拠は、ほとんどの新興企業や組織にとってリスクが高すぎたり、負担が大きすぎたりします。この問題をグローバルに解決し、どの国でも誰でも雇用できるようにしたのがRemoteです。同社は給与計算、福利厚生、コンプライアンス、税金などの業務を1つのパッケージソリューションとして提供しています。

他国で合法的に人を雇用するためには、現地法人を設立し、現地の労働法を学び、現地の給与計算を行い、現地の弁護士を探して、各国法に準拠した雇用契約書を作成しなければなりません。こうしたプロセスは、リソースのある大企業しか出来ませんでしたが、リモートワークが当たり前になった今、スタートアップも手軽に仮想的な意味で現地法人を立ち上げられるプラットフォーム開発を目指しています。

グローバル人材採用市場をベースに「チーム拡張」を行えるメリットは非常に大きい印象です。Remoteは海外法人立ち上げのSaaS化に取り組んでいるとも言えるでしょう。

代理店ネットワーク

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2018年にY Combinatorのアクセラレータプログラムを卒業した「YouTeam」は、オフショア人材のマーケットプレイスを提供。同社プラットフォームは、代理店に登録している個人の開発者(および開発者に余力のある大企業)と、アウトソーシングによって自社の開発チームを追加したい企業をマッチングさせます。

YouTeamマーケットプレイスでは、代理店の開発者のプロフィールを掲載。単に代理店を通して、誰が外注チームの一員になるかという点で勝負に出るのではなく、代理店の名前のある個人と契約し、一定の期間、またはより長期のプロジェクトを契約する流れです。

代理店に登録する開発者にとっては、わざわざ次の仕事を探しながら毎回価格設定をする手間をかけずに、信頼性の高い、より面白い仕事の流れを手に入れることができます。開発業務をアウトソースしようとしている企業にとっては、評判の良いエージェンシーが提供する審査や支払い、揉め事仲介処理サービスを受けられ、極力採用リスクを減らせるようになります。

競合他社は広く2に分類されます。Upworkのようなフリーランスプラットフォームは、主に短期のプロジェクトを対象。サプライヤー推薦のプラットフォームは、エージェンシーとのマッチングを支援してくれますが、適切なチームを見つける必要がある場合には効果がありません。この点、YouTeamは長期プロジェクトを志向する開発者を見つけ、リファレンスがしっかりあるオフショアチームを素早く組める点に提供価値を置いています。

サービス開発丸投げ

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2013年にサンフランシスコで創業し、累計3260万ドルの資金調達に成功している「Gigster」。同社は世界中からフリーランスのエンジニアを雇い、プロジェクトマネージャーを付けて開発チームを自社で複数所有。顧客企業はGigsterが組成した開発チームにアプリ・ウェブサイト開発を丸投げでき、進捗管理をPMから随時報告を受けるだけの外注開発サービスを提供。世界トップクラスのオフショア開発資源に、最小コミュニケーションおよび採用コストでリーチできるのがメリットとなっています。

顧客企業の期待値に添えるように品質管理を徹底。AIがプロジェクト進捗スピードおよびマイルストーン作成をサポートし、無理・無駄のない開発進行スケジュールを引きます。従来、プロジェクト開始時に決めていた工数見積もりを、顧客からの注文情報に応じて即座にFixできるのが強みです。

従来、企業の担当者は面接をする手間や、納品物を細かくチェックするプロセスする必要があり、問題があれば発注元の責任でした。あくまで監督責任者は発注元であったからです。一方、Gigsterのモデルはこうした課題を含めて全て外注することができます。利用企業はクリエイティブな意思決定に時間を投入することができるようになりました。

話をまとめます。

Remoteは採用プロセスの簡易化と法律準拠を徹底させた新たなプラットフォームとして誕生し、YouTeamは代理店を挟むことで信頼性と評判の高いチーム組成を促進させるマッチングプラットフォームを展開しています。代理店ネットワークを構築するモデルであるため、一社代理店が加入すれば多くの開発者を同時に釣り上げることができます。Gigsterは完全開発外注プラットフォームとして機能。一切の採用ストレスをかけることなく、グローバル対応したサービス開発が可能となりました。

いずれのケースにおいて、ソフトウェアを通じて限りなくグローバル採用プロセスのハードルを下げようとしているのがポイントです。タイトルにもある通り、SaaSを通じたチーム組成に注目が集まっている印象です。

これからの時代は個人ではなく、いかに手軽に世界中の開発人材を集め、“チーム”を作れるのかが提供価値になります。冒頭でご紹介した「ランサーズ」「クラウドワークス」「Upwork」「Fiverr」のような大手プラットフォームは個人と企業とのマッチングに特化しています。が、本記事で紹介したような「チームと企業のマッチング」にサービス形態を振ったスタートアップに、おそらく数年以内にディスラプトされる可能性が高いと感じています。

今回は開発エンジニアサービスに焦点を合わせてご紹介してきましたが、マーケティングやファイナンスチームにも同様のことが言えます。近い将来、会社の組織作り・チーム構成を丸ごと完全外注するサービスも登場するかもしれません。誰もがグローバル人材の集まったスタートアップやプロジェクト部門を持てる時代もやってくるはずです。未来の働き方は「仕事探し」というよりは「チーム探し」になるかもしれません。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

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AirPodsの「声」でいつでも繋がるTTYL、広がる音声グループチャットの可能性

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自粛生活を余儀なくされる中、オンライン・コミュニケーションサービスに注目が集まっています。なかでも注目しているのが音声コミュニケーションサービスです。 自宅で1日の大半を過ごしている中では洋服を繕ったり、化粧をする必要が出てきません。そのため、映像通話サービス「Zoom」「Skype」では顔出しをする必要が出てきてしまうこともあり、映像系は最適なサービスではないのでは、という声を聞くようになりまし…

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自粛生活を余儀なくされる中、オンライン・コミュニケーションサービスに注目が集まっています。なかでも注目しているのが音声コミュニケーションサービスです。

自宅で1日の大半を過ごしている中では洋服を繕ったり、化粧をする必要が出てきません。そのため、映像通話サービス「Zoom」「Skype」では顔出しをする必要が出てきてしまうこともあり、映像系は最適なサービスではないのでは、という声を聞くようになりました。

こうした背景を踏まえ、最近ではゲーマー向け通話・チャットアプリ「Discord」をハックする動きが日本で見られています。手軽にサーバーを作成できることから、社内のチームメンバーを招待して、ここで音声会議をするらしいです。会社のオフィスにいるような、その場で会議ができて、その場で誰かに相談できる場を求めているニーズが伺えます。

もともとDiscordは2Cサービスでしたが、うまくハックされて2Bに応用されています。同じような現象が起きて成長をするのではないかと思っているのが、今回ご紹介する「TTYL – Talk To You Later」です。

「TTYL」とは?

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TTYL」とは、AirPodsを通じて利用できる音声通話アプリです。2018年にロサンゼルスで創業し、累計調達額は200万ドル。累計7,000万ドルを調達してエグジットした多人数動画チャットアプリ「Houseparty」の音声版と呼べます。

ユーザーは自分の枠(ルーム)を作成し、友人を将来することでその場で会話を始めることができます。設定をオフにしない限りルームは常にオープンになっており、誰とでも会話できる環境が整っています。リアルタイムで音声配信されている枠にユーザーがジャンプインする体験です。

非常に興味深い点がAirPodsを装着して初めてアプリを利用できることです。ハンズフリー、かつ「ながら会話」の出来るユースケースに特化させようとしているんでしょうね。知り合い同士が集まって気軽に話す音声サービスを、利用機材を限定させることで実現させています。

4月下旬にはGoogle Budsの新型も投入されることから、高機能イヤホンの利用シーンは広がるでしょう。TTYLが目指すのはこうした音声IoTが普及した世界のチャットサービスであることが予想されます。

日本でも音声ライブ配信アプリ「SpoonRadio」「Stand.fm」「Dabel」が登場してきており、音声 + コミュニケーション領域が熱を帯び始めています。いずれのサービスも会話内容がコンテンツ化され、オープンになることを前提に作られていますが、TTYLとは同じ志向を持っていると考えられます。

デジタルネイティブ世代の接続ニーズ

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Photo by Julia M Cameron on Pexels.com

通信環境整備とAirPodsのような高機能音声デバイスの普及により、とにかく“耳”を通じてネット環境に繋がっていたい、誰かと繋がっていないと不安になってしまうと感じる人が増えてきた印象です。

常時接続の価値観は昨今、急速に理解されてきています。誰もが在宅を強いられている特殊な環境が発生しているため、「一過性の価値観だろう」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、私たちは昔から同じような習慣を身近なところで目にしてきたはずです。

リビングルームでTV番組を付けっ放しにしながら家族と話したり、食事をする「ながら視聴」はご存知の通りですし、私のように自室で音楽を付けっ放しにしていないと気が落ち着かない人も多くいると思います。

こうした視聴習慣が、AirPodsを通じてインターネットサービスを楽しむ習慣にスライドし始めていると感じています。時代に沿って変化する、「デバイス最適化の波」が発生している考えてもよいでしょう。TVやラジオの付けっ放しから、AirPodsを通じたネット環境への常時接続への移行とも言えます。

TTYLの提供価値は、Z世代が抱える根強い「繋がりたいニーズ」です。また、何かをし「ながら」誰かと繋がるUXを作り上げることで、手軽さというニーズにも応えています。

ユースケースの市場移動

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ここからはアイデアを昇華させます。冒頭でご紹介したように、ゲーマー向けに提供されていたDiscordの体験シーンが2Bへと応用されています。ユースケースの市場移動が発生している状況下で、同じ流れがTTYLのようなサービスに起こると考えています。

例えば在宅ワークを半ば強制的に導入せざるを得ない環境で、バーチャルオフィス需要も加速しています。a16zが出資する、750万ドルを調達した「Tandem」や、日本の「Teracy」などのオンラインオフィスサービスが勢いづいています。

B市場向けオンライン・コミュニケーションサービスは活気に満ちている印象です。ただ、音声特化サービスはないこともあり、TTYLが参入すれば一定数の需要を掴めるだろうと感じます。また収益化の確かさも2Cよりもあるはずです。

Discordの場合、すでにゲーマーユーザーが基盤として強くなっていますが、TTYLは2Cで爆発的な成長は未だ遂げていません。Sequioa Capitalが出資する1,050万ドルを調達した「Threads」が成長しているように、ビジネス雑談・戦略を気軽に議論できる場の価値はある程度証明されています。こうした業務に関するトピックを音声で話せるユースケースは受け入れられると考えています。

2C向けサービスとして、デジタル世代の習慣とニーズを的確に掴んでいるのがTTYLです。このまま成長すれば、いずれHousepartyのように跳ねる瞬間が訪れると感じますが、収益面とユーザーグロースを両立させるには2B市場での進出が最善なのではと感じています。

今後、日本でも音声サービスが多数登場してくると思いますが、TTYLを代表とした動きは、コミュニケーションサービスの未来を占う上で注目すべきでしょう。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

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究極のネイティブ広告「生活広告」は実現するか

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載 先頃発表された新型iPad Pro。 ARを強く押し出した機能満載で、すぐにでも店頭で触ってみたかったのですが、残念ながら現在は閉鎖中。そこで、オンラインストアの「ARで見る」ボタンを押し、自宅で手軽に製品の大まかな雰囲気を味わいました。同じ体験をした人も少なくないのではないでしょうか? まさに…

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Image Credit: Ryff

※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載

先頃発表された新型iPad Pro。

ARを強く押し出した機能満載で、すぐにでも店頭で触ってみたかったのですが、残念ながら現在は閉鎖中。そこで、オンラインストアの「ARで見る」ボタンを押し、自宅で手軽に製品の大まかな雰囲気を味わいました。同じ体験をした人も少なくないのではないでしょうか?

まさにSF映画のような話ですが、.HUMANSが信じるのはこうした近未来が実現され、そこに普及するサービスを作ること。そして最近、Spatial(空間的コンピューティング)時代を前提として見る中、現実解としてどのようなサービスが誕生しているのかを探っており、1つのサービスに出会いました。LA拠点の「Ryff」です。

CMをなくす新業態

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Image Credit: Ryff

Ryffは米国ロサンゼルス・ハリウッドに拠点を持つAI技術を持つスタートアップです。2019年12月、500万ドルの資金調達に成功しています。Ryffが参入する市場は「Product Placement」という、映画やテレビ番組のシーンに商品を配置して広告する業態です。

同社はAIを駆使して映像内の空間にまるで存在するかのような3Dオブジェクトを設置し、自然に見える形で商品を広告するサービスを展開しています。バーチャルオブジェクトであることから、複数の商材パターンを展開することが、いつでも可能となります。たとえば予定通りの放送時には商材A、再放送時には商材B、DVD用には商材Cのようにいくつかの商材を配置できます。

Statistaの市場データによると、米国市場規模は2019年で約100億ドル規模。2012年の47.5億ドル規模からほぼ倍増していることから、YoYは10%ほどと言ったところでしょう。別データによると、市場内訳として70%がTVコンテンツが占めており、そのほかデジタルコンテンツはたった3%。YouTubeやNetflixの市場のりしろを考えれば、まだまだ伸びる可能性を秘めます。

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Image Credit: Ryff

さて、Ryffが挑むのは「映像/動画内に配置された商材は一度撮影してしまうと変更できない」という業界の常識です。この常識を逆手に取って「撮影後であっても何度でも変更可能、時代や投稿場所を超えて様々な形で配信できる」形式へと変えました。

たとえばNetflixで放送される番組内に配置される商材を、個々の視聴者や居住地域、日付などの様々な変数に基づいて調整することができます。コストはかかりますが、映画も上映地域によって商材を変えることができますし、TV番組も放映地域に最適化させた展開ができるはずでしょう。

広告出稿者がしばしば求める「パーソナライズ」のニーズに応えたのがRyffなのです。

技術面に軽く触れておくと、Ryffは3Dオブジェクトを配置するために映像内に商材を認識させるためのマーカー(QRコードのように読み取れるもの)を置き、空間の役割をAIパターン認識で特定させています。仕組みはARKitやARCoreで作成するARアプリと似ていますが、空間に合わせた質感や角度、光の反射などを加えるテクスチャマッピングを、かなりの高精度で行なっている点が差別化になっているようです。

創業者兼CEOのRoy Taylor氏はNvidia出身、CTOのSusan Hewitt氏はARM出身であることから、レンダリングを最小電力・最効率で行うためのAIチップの利用方法を知っていると考えられます。IP(知的財産)を多く持っているRyffの肩書きはダテではありませんね。

Spatial時代のパーソナライズ空間

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ここから話をSpatial時代へと飛躍させます。Spatial時代ではARグラスが普及した世界を前提とします。

現在のRyffの技術では、大容量メモリーを搭載したパソコンを使ったレンダリングを必要としますが、5〜10年のスパンで見れば小型化したARグラスでも同様のタスクをこなせるようになるはず、と考えます。言い換えれば、現在Ryffが展開する本物そっくりの3Dオブジェクトをほぼリアルタイムに目の前に登場させる技術が確立するかもしれません。

たとえば街を歩いていたり、店舗に立ち寄った際、各ユーザーによって置かれている商品が違ったように見える世界が想像されます。家に帰れば、生活必需品以外のインテリアや高級な家具は、全て自分好みの3Dオブジェクトとして配置されています。

開発が噂されているFacebookやAppleのARグラスが爆発的に普及したり、実際に開発が進められているARコンタクトレンズのように、四六時中装着していられる端末が誕生すれば、デジタル世界と「常時接続」する生活が待っています。そこではRyffの技術が映像コンテンツ市場から私たちの日常生活へと進出するのではないかと考えています。

「生活広告」 : 究極のネイティブ広告

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Photo by Skitterphoto on Pexels.com

.HUMANSの考えるRyffをベースとしたSpatial時代では、ほぼリアルタイムに自分が欲しいと思っていた商品に囲まれる世界が展開されます。これを仮に「生活広告」と呼んでいます。

生活広告は、ロケーションベースで本物そっくりの3Dオブジェクト商材を配置するSpatial時代の新広告業態です。肝となるのは「生活充実度」と「広告収益」の両立です。

家具やインテリアのように置いておくだけで生活満足度を上げる3Dオブジェクトがユーザーの元へ届けられます。同時に、グラス端末上で計測されるImpressionに応じた広告収益を広告出稿者から徴収するモデルです。

つまり、ユーザーは3Dオブジェクトのある日常生活を送るだけで充実度を高められ、かつ企業も様々なアプローチから高い転換率を保ちつつ広告でき、プラットフォームは広告収益を上げられるWin-Win-Winな、究極のネイティブ広告業態が想像できるわけです。

最初にiPadの事例を出したように、私たちはすでに自室で3Dオブジェクトの商品を呼び出し、眺めることに抵抗がなくなり始めています。こうした慣れの延長線上でRyffの技術がぶつかれば、常時広告商材を楽しむ生活が待っていると思います。これが生活広告の概念です。

私たちの私生活と広告領域が自然な形で融合することで、何がフェイクなのかわからない倫理的な問題も議論されるかもしれません。ただ、都市開発に十分活かせるでしょうし、Pockemon Goのような周回型コンテンツを得意とする企業にとっては新たなAR広告収益源となるはずです。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

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17カ国で一気にトップ、“誰かとおしゃべりしたいニーズ”で急浮上した「Houseparty」その成長要因とは

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載 在宅生活を充実させるサービスの躍進が止まりません。なかでも目まぐるしい成長を遂げているサービスにグループ動画アプリ「Houseparty」が挙げられます。 Housepartyは、友達最大8名とライブ動画配信感覚でおしゃべりできるアプリ。ZoomやGoogle Hangouts Meetのような…

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Image Credit:Houseparty

※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載

在宅生活を充実させるサービスの躍進が止まりません。なかでも目まぐるしい成長を遂げているサービスにグループ動画アプリ「Houseparty」が挙げられます。

Housepartyは、友達最大8名とライブ動画配信感覚でおしゃべりできるアプリ。ZoomやGoogle Hangouts Meetのような急成長中のビデオ会議サービスに代わる、よりカジュアルな会話ツールの選択肢と考えられています。

今年2月の週間ダウンロード数は13万でしたが、3月15日週には200万ほどにまで数字を伸ばしているとのことです。イギリス、スペイン、イタリアを含む17カ国のApp Storeで1位にランクされています

「Digiday」によれば、現在の社会情勢になる前、2017年初頭にDAU250万人、その年の2月のMAU1030万人だったとのことです。2019年1月時点でこちらの数字が過去一番のピークだったとのことなので、長くブランクがあったことが予想されます。ただ、現在は一時的にそれ以上のDAU・MAUに到達していることでしょう。

さて、Housepartyは2015年にリリースされたライブ動画配信アプリ「Meerkat」の開発企業が立ち上げたサービスです。同アプリは競合「Periscope」と激しい競争を繰り広げましたが、Twitter連携を外されたことを発端に失速してしまいました。失敗をもとに2017年に立ち上がったのがHousepartyです。

2018年、Facebookによる買収が囁かれたこともありましたが、当時、Cambridge Analyticaのユーザーデータ流用懸念の問題にさらされ、この件は流れたと聞きます。最終的には2019年6月、大人気ゲーム「Fortnite」を開発するEpic Gamesによって買収されました。

紆余曲折を経たHousepartyですが、ここにきて成長を遂げている理由はなんでしょうか。たしかに、世界的に在宅生活を強いられたことで発生した、オンライン人口の増加に起因しているとも言えますが、それだけではないと考えます。4つほど理由を探ります。

会話重視の開発戦略

Conversation (8 People)
Image Credit:Houseparty

Housepartyの前身であるMeerkatはライブ動画配信アプリです。ツイキャスのように「配信主 vs 視聴者」のユーザー関係が作り上げられていました。言い換えれば「1 vs 多数」の構図です。競合のPeriscopeやFacebook Liveも同様の仕様。

そんな中、Meerkatのチームは、リアルタイムに知り合いユーザー同士が集まり、交流が始まることにチャンスがあることを発見。友人同士が対等に繋がれる「1 vs 1」「1 vs 少数」の配信プラットフォームのアイデアに行き着きます。

友人間の少人数配信プラットフォームの最大の弱点はコンテンツを外部発信できない点にあります。友人同士が会話をする場所であるため、配信コンテンツを外部活用することができない非パブリックな場です。そのため、友人同士が繋がれるFacebookですら、ビジネスモデル確立のために「配信主 vs 視聴者(なかでもゲーム視聴)」に基づく配信プラットフォームをサービス仕様の軸にしています。

コンテンツ拡散できないデメリットは存在するものの、Meerkatチームは受け身でコンテンツを楽しむのではなく、少人数会話を重視したプラットフォームに仕様を変えました。これは全く毛色の違うユーザーコミュニティ構築を意味します。提供価値も変わってきます。

現在の社会は何週間も友人と直接会うことができない、大きな不安に突如として直面しています。実際、彼らは誰かとおしゃべりしたいニーズを急速に高めました。そこでHousepartyは「ソーシャル・ディスタンス問題」を解決するサービスとして真っ先に選ばれたのです。

蜂の巣の作り方:選択と集中

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仕様を友人間の会話に統一させることで、他社サービスとは違った色を出すことに決定しました。それではどのようにしてプロダクトを成長させたのか。その答えは「Snapchat」の事例にあります。ここではSnapchatとTwitterの戦略を対比させて説明します。

Snapchatが重視したのが「ハイブ戦略(ミツバチの巣箱)」です。小さなグループが積み重なり、巨大コミュニティとなる考えを指します。ハイブの中は蜂の巣のように多層なコミュニティによって構築されています。小規模な友人間の繋がりを重視した考えです。

1つ1つのグループは完全に閉じており、Facebookのように友人と友人を繋げるような動線は確保されていない設計が前提となります。この点、ユーザーを大きく獲得するのではなく、確実に友人間ユーザーグループを囲い込み、リテンションを長くさせる「Must-to-have」のサービス価値を提供することが重要となります。

一方、インフルエンサー軸のTwitterはマスメディア戦略を採用。同社傘下であり、Housepartyの競合でもあるPeriscopeも同じ戦略です。この場合、インフルエンサーの発信する情報に飽きたら即座に離脱が発生してしまいます。日々発信される情報価値の高さが重要指標となります。

対して、ハイブ重視のSnapchatやHousepartyは友人・知り合いとのコミュニケーションが絶えるまで継続して利用されます。知り合いとのやり取りをするプラットフォームであるため、リテンションは比較的長く継続される傾向にあります。

「ながら世代2.0」の登場

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複数ユーザーから成る友人グループを一挙に獲得しないとコミュニケーションサービスは成り立ちません。ここに難しさがあります。Housepartyの場合、もともとMeerkatで一定数のユーザー基盤を獲得していたことが功を奏し、ハイブ戦略で最も難しい最初のユーザー層獲得を乗り越えました。

ただ、それだけでは現在のように、若者向け社会インフラとして認識されつつある声も挙がりません。成長理由はなんでしょうか。1つ考えられるのが「ながら世代2.0」と考えます。

モバイル端末登場時の2010年手前、私たちは隙間時間に手軽にインターネット環境へ接続できる機会を得ました。たとえば電車の長い移動中、エレベーターに乗って何もしていない1、2分の時間ですら、さっとポケットからスマホを取り出してネットに接続する体験が一般化しました。俗に言う、「隙間時間」の活用です。同時に、TVを観ながら、会議に出席しながら情報やメッセージのやり取りをする「ながら世代1.0」の登場です。

ただ、これからは隙間時間の概念はなくなり、ながら世代の考えも一歩進むと考えます。起きている間はインターネットに繋がり、常にオンライン接続されているユーザー環境を指す「常時接続」の考えが優位になってくると考えます。これを指して「ながら世代2.0」と呼びます。

常時接続であるため、あらゆるタスクを「ながら」でこなします。家事をしながら、買い物をしながら、勉強しながらなど、ほとんどのシチュエーションで常にネット接続して、何かあれば即座にオンラインサービスを利用する環境下にあるのが「ながら世代2.0」です。この世代は1996年〜2012年に生まれた24歳以下のジュネレーションZに多い印象です。事実、Housepartyユーザーの60%がZ世代であったというデータがあります

事例を挙げます。知り合いから聞いた話ですが、年頃のお子さんはとりあえず友達とLINE動画をつけっぱにしているそうです。話題は必要ありません、とりあえずつけっぱにしておくのです。無音の時間も気にしないそうです。かく言う私も(ミレニアム世代ですが)、AirPodsを耳に着けながら、最近は朝起きてから夕方寝るまで、声だけでやり取りできるライブ配信アプリ「Dabel」に常時接続しています。リスナーとして参加していますが、配信に参加するように招待が来たら即座にスピーカーになっておしゃべりします。

常時接続を加速させた背景に、スマホ画面から離れられる環境が整った点が挙げられます。AirPodsやSmart Home端末の台頭により、常にインターネットコンテンツへアクセスできる特権を「ながら世代2.0」は得ました。スマホ画面を観ることなく、音声だけでコミュニケーションを取れる環境が整ったことが大きく世代躍進させている理由の1つであると考えます。

これからの時代の「ながら」を成立させるには、画面を見ないことが条件となるでしょう。Housepartyユーザーの中に、カメラを天井に向けて声だけでやり取りする人が一定数いると聞き、まさに音声環境による世代促進を裏付けていると感じます。

これからは広告ではなく、「コラボ体験」

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海外ではFacebook Messenger、Whats App、Instagramのような友人間で動画コミュニケーションを取れる大手サービスは多数あります。「ながら世代2.0」が他のサービスを選んでも不思議ではありません。それでもなぜHousepartyが選ばれるのか。それは広告ではなく、「コラボ体験」を重視しているからです。

Housepartyは友人間コミュニケーションを好む層を獲得しています。このユーザー層にとって最も大切となるのが「ネタ」です。とりあえず誰かと繋がることが習慣になっており、無言の時間が怖くないとしても、友人と一緒に楽しめるネタがあるとより盛り上がります。

コラボ体験とは、会話に“参加すること”に焦点を当てたものではなく、会話を“創造・促進したりするもの”です。たとえば、特定のグループにのみ、これから公開される映画予告編を公開したり、レコーディングアーティストがプラットフォーム上で試聴会を開催したりする施策が挙げられます。

コンテンツ出稿主からすれば、他のサービスとは違い膨大な量のインプレッションを稼ぐことはできませんが、ターゲット属性グループに刺さるコンテンツをピンポイントで提供できるようになります。ユーザーからすれば、話題が自然な形で提供されるため、他のユーザーと一緒に楽しめる独特の体験を得られます。

Housepartyは外部サービスとの連携を高め、ユーザー同士が一緒に楽しめるゲームやミニアプリを提供するエクステンション機能拡大へと走れます。他方、先述したGAFA系列の競合サービスは、自社傘下サービスとの連携に閉じてしまい、広がりを見せられない可能性があります。ゆえに、多種多様なコラボ体験を提供できる常時接続世代向け動画コミュニケーションプラットフォームとしての市場を獲得できているのだと考えています。

ここまで4つの成長理由を説明してきました。

誰かと繋がっていたい人間本来の欲求は、「とりあえず動画を流しておきながら繋がっている」というように、若者ユーザー行動を変えつつあります。そして、収益モデルも広告から体験重視へと変更する必要が出てきました。

これからの新規サービス設計をされる方は、Housepartyの成長・開発戦略が大いに役立つと感じます。ユーザーコミュニケーションは大きな節目を迎えているかもしれません。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家 隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

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なぜZoomはSkypeに勝てたのか?ーームーブメントを作り出した3つの初期戦略

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載 4月2日「Zoom」の3月のデイリーユーザー数が発表されました。3か月前の12月に達成していた1,000万から2億ユーザーへと急成長を遂げていると報じられています。一方、Microsoftの「Skype」も先月比70%増の4,000万ユーザーまで成長を示しています。 いずれも膨大なユーザー数とは…

Video conference at the office
Image Credit:Zoom

※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載

4月2日「Zoom」の3月のデイリーユーザー数が発表されました。3か月前の12月に達成していた1,000万から2億ユーザーへと急成長を遂げていると報じられています。一方、Microsoftの「Skype」も先月比70%増の4,000万ユーザーまで成長を示しています

いずれも膨大なユーザー数とはいえ、ここにきてZoomが圧倒的な存在感を示し始めました。なぜZoomがSkypeより多くユーザー数を集められているのでしょうか。結果論として「高いスイッチコスト」が挙げられます。

Web会議サービスとしてのZoomは、得意先や社内で会議ツールとして一度導入され、利用がデフォルト化してしまうと抜け出すことが比較的難しいサービスです。なかでも社外の人との会議ツールとしてZoomの利用を勧められた場合、断ることは難しいでしょう。

ユーザー情報登録が必要なSkypeを利用するより、URLリンクだけで映像電話が繋がるZoomの方が使い勝手が良く、わざわざSkypeを提案しては、先方に無駄な時間やストレスを与えかねません。

B2Bツールは一度共通コミュニケーションツールとして導入されてしまうと抜け出すことが難しくなります。現在、Zoomはまさにこの状態を再現しています。

それでは、高いスイッチコストを築き上げるまで、Zoomはどのようなプロダクト戦略を初期に打ち出してきたのでしょうか。3つのポイントにまとめて紹介していこうと思います。

創業者の熱狂とリファーラル文化

Video Call Chatting Communication Concept
Image Credit:Zoom

秀逸なSaaSの代名詞として「プロダクトがプロダクトを売る」という台詞が用いられます。

Zoomの場合、初回利用ユーザーが知り合いからURLリンクを送られてプロダクトの良さを知り、自分でも使い始める自然流入の形を指します。また、ZoomではURLリンクが招待(リファーラル)コードの代わりとして働きます。

広告を打つことなく「招待されたので自然と使ってみる環境」を指数関数的なスピード感で広げられるのがSaaSの良さです。

SaaSが持つリファーラルの利点を最大化させるため、創業者のEric Yuan氏はほぼ全ての会議をZoomで行っているそうです。Forbesの記事には、IPOまでの5年間で8回しか出張をしていないというエピソードがあります(その中にはIPOをニューヨークへ行うための東海外出張も含まれます)。

トップティアVCから資金調達をした際、たった一度だけ投資家全員を集めた対面ミーティングを開き、Zoomをダウンロードしているかを確認したという逸話さえあります。社外からミーティングを提案された場合も「最初は必ずZoomで」と伝え、事業をしていく中で自然とプロダクトを広める仕組みを取り入れていたとのことです。

対面を徹底的に廃止し、Zoom会議だけで外部と仕事をしていたのがYuan氏でした。年平均1.6回しか本社近辺を離れないワークスタイルをCEOが実践することで、企業文化として遠隔ワークのDNAが育ち、従業員も社外関係者とはZoomを基本とする徹底した行動が根付いたことでしょう。こうして企業活動自体がリファーラルの始点となります。

雰囲気ブランディング — 屋外広告

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Photo by Han Gong124 on Pexels.com

Zoomのアーリーアダプター獲得戦略として屋外広告(ビルボード)の活用が挙げられます。

もともとZoomのマーケティング戦略は、地味なアプローチを採用していると言われています。たとえば、イベントでは販促物の提供などはせず、基本的にZoomのライブプロダクトだけを置いてピッチするスタイルを長く採っていたそうです。

初期のユーザー獲得で最も重視したものが屋外広告です。以前、スタートアップ向けクレカ「Brex」が屋外広告を積極的に打ち出していることをまとめたことがありますが、まさにその通りの戦略を実践したのです。

<参考記事>

Zoomを初めて利用してから継続利用させるまでの1つの手法として「これ見たことある」と事前に刷り込ませておくブランディングはやはり有効です。毎日通る道路沿いに広告を置いておくことで、潜在ユーザーの無意識化に「Zoom」の名前を刷り込ませて周りの人も使っている「雰囲気」を作り出す。

リファーラル戦略を主軸とするZoomにとって非常に重要なPR手法で、印象に残らないオンライン広告とは違い、何度も実物広告を見かける刷り込み戦略は功を奏しました。

モバイル体験シフト

Young man using cell phone
Image Credit:Zoom

反面教師として、SkypeとWebexの事例を紹介します。

SkypeはP2P技術をベースにしたサービスであったため、モバイル端末での通信効率が悪いデメリットが発生していました。

モバイル体験に最適化されていない問題はMicrosoftに買収された後にも続き、2013年にはP2Pネットワークからクラウド型サーバーへと移行されています。同年、Windows 8.1のデフォルトメッセージアプリと位置付けられたり、Outlook.comの一部としてSkypeが統合されました。

ただ、統合後も技術基盤の移行やUX改善に何年も時間を費やしています。The Vergeの記事に載せられている画面デザインを見ると一目瞭然で、2017年には急にSnapchatライクなデザインへと様変わりをしており、無駄に絵文字などを増やしています。

ユーザーの声を聞かずに必要のない機能を盛り込み続ける、プロダクト開発における悪手をMicrosoftは採ってしまったのです。結局、2018年には当初のSkypeらしいデザインへと再設計をしていますが時すでに遅しの状態。元々、買収後のエンジニアリング再設計の段階からバグが多かったことからSkypeは信頼のできないプロダクトとして認知されてしまいました。

一方のZoomはシステム課題とモバイル体験の両立を当初から目指しました。Yuan氏はCiscoに買収されたWeb会議システム「Webex」のエンジニアリング・グループリーダーを勤めていた経験から、プロダクト開発手法を熟知していました。

Yuan氏はSkypeが採用したモバイル環境では通信脆弱性の高いP2P型ではなくクラウド型ネットワークを推し進めます。また、Webexが抱えていた3つの問題解決にも取り組みます。

  1. ユーザーが会議に参加する度、どのバージョンの製品(iPhone、Android、PC、Mac)で実行されているのかを識別するのに多大な時間がかかる
  2. 回線に接続している人が多すぎると接続に負担がかかり、音声やビデオが途切れてしまうことがある
  3. 当時のWebexにはモバイル向け画面共有のような機能が欠けていた

Skypeにも共通していた問題(2と3)を解決するシステムを作り上げたのがZoomでした。URL発行の仕組みを提供し、ワンクリックでどの端末からでも会議参加できる導線を確立したことで、当時Skypeが抱えていたスパム問題の発生を根本からなくしました。

Meeting Business Corporate Business Connection Concept
Image Credit:Zoom

このようにしてデスクトップおよびモバイル体験を充実させ、通信環境も問題のないように作り上げたのがZoomです。便利に話せる場が整うことで、高い信頼性の求められるB2B市場への進出が可能となります。「最適な会議時間は45分である」というデータを基に、40分で会議が終了するフリーミアムモデルを採用。こうしてWeb会議における「ユニバーサルデザイン」の構築に成功しました。

「車輪の再発明」と言えばそれまでですが、創業初期からユーザー獲得とプロダクト開発の両方を満足させる条件を満たせていたと考えます。

当時、「SkypeやGoogle Hangoutがあるから今更Web会議サービスを立ち上げる意味はあるの?」と多くの投資家から言われたのがZoomであると聞いています。結果として、たとえ大手サービスがあったとしても、時代に沿った体験生が欠如しているのならば十分に参入する余地があることがわかります。

今回のZoomの事例から、B2Bの領域ではプロダクトデザインを大きく変えることを嫌う傾向にあるため、ディスラプトの可能性は大いにあるかもしれません。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家 隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

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