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Takashi Fuke

Takashi Fuke

次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン企業「.HUMANS」創業。海外ピックアップ/コラム記事を担当。ARが専門領域。小売/ヘルスケア/不動産/フィンテック/音声などの2C向けサービスが好きです。Twitter : @takashifuke

執筆記事

バーチャルヒューマンたちはどのようにして生まれる

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載 ニュージーランド拠点の「Soul Machines」が今年公表したバーチャルヒューマンは、CESで披露されたサムスン傘下のスタートアップ「NEON」と並ぶ、近未来的なアシスタントとして話題になりました。 同社はAI、脳計算モデル、経験学習を組み合わせて自動アニメーションプラットフォームを開発。…

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Image Credit : The Soul Machines

※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載

ニュージーランド拠点の「Soul Machines」が今年公表したバーチャルヒューマンは、CESで披露されたサムスン傘下のスタートアップ「NEON」と並ぶ、近未来的なアシスタントとして話題になりました。

同社はAI、脳計算モデル、経験学習を組み合わせて自動アニメーションプラットフォームを開発。ユーザーと面と向かって話すことができるほどの個性と性格を持つ、まるで生きているかのように感情を表わすことのできる「デジタルヒーロー」、つまりバーチャルヒューマンを作り出します。

<参考記事>

表面的な「人間らしさ」はいざ知らず、肝心の中身はどのようにして成立するのでしょうか?そのひとつの鍵となるのがAIアシスタントの存在です。

英国オックスフォード大学の社会・コンピュータ科学部門であるオックスフォード・インターネット研究所(OII)は、Googleと提携して、AIに関するまとめサイト「The A-Z of AI」を公開しました。A-Zの26個の項目が並んでいます。

選ばれた26のトピックから本記事ではARグラスが普及した時代「Spatial Computing(空間コンピューティング)時代」に向けて応用できる項目を4つほど選び、バーチャルアシスタントの具体像に迫ってみたいと思います。

Fakes

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Photo by Carolina Castilla Arias on Pexels.com

ディープフェイクは現実世界の画像や音声を研究、詳細にマッピングおよび操作をして、不気味なほど忠実なフィクション作品を作成することで機能します。

ほんの数年前には不可能と考えられていたこれらの技術は、ハリウッド映画のCGIから音楽制作、ポルノに至るまで、幅広い分野で応用されています。多くは娯楽や想像力をかきたてることを目的としていますが、不適切な使い方をすれば、社会に有害な誤報を生み出す可能性もあります。

Fakes文脈で注目しておきたい事例は2つです:「Ryff」と「Pokemon Go」。

たとえばGoogleが提供する3D検索では、動物のリアルなオブジェクトをその場に表示できます。ただ、未だ一瞬で3Dであると見破れる完成度に留まっています。

DeepFake技術が進めば、カメラが現実世界の環境条件を認識し、リアルタイムでとても高精度の3Dオブジェクトがレンダリングされる世界が実現するでしょう。すでにLA拠点の「Ryff」は映像市場で超高精度のAI画像およびパターン認識を活用したユースケースを提供しています。

次世代フェイクの概念も知っておくべきでしょう。Pokemon Goは仮想世界に住むポケモンとのやり取りをスマホのカメラ越しに実現させました。そしてイベントがあれば街の至る所でユーザーたちが画面を見つめながら必死にモンスターボールを投げている光景を見かけます。

しかし、現実世界に住む私たちから見れば、何をしているのかわからない“小さいコミュニティ”にしか見えません。こうした仮想・虚構の存在に導かれて発生する「フェイクコミュニティ」を今後頻繁に見かけることになるでしょう。昨年、筆者も参加したAppleが主催のARを楽しむウォーキングイベント「[AR]T Walk」でも、複数の参加者が、街行くに人にはわからない3Dオブジェクトを眺めるという楽しい体験がありました。このように、同時多人数でARを楽しむコラボレーション体験が増えるほど「フェイクコミュニティ」の発生数も増してきます。

Image Recognition

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Photo by Torsten Dettlaff on Pexels.com

コンピュータビジョンとして知られている画像認識システムは、提供された参照画像を調べるだけで、個人から有名なランドマーク、ペットまで何でも認識できるようになります。このシステムは、スマートフォンの写真を整理するなどの日常的な作業を楽にします。例えば、旅行に行った後に休暇の写真の新しいアルバムを自動的に提案します。

それぞれの画像は指紋のようなものです。AIシステムは、色や形などの識別機能を見つけ出し、何千もの画像と相互参照して正確に認識し、ラベルを付けるように訓練されています。また、ランドマークやグループ旅行の写真を認識できるのと同じ技術は、外国語の警告標識を翻訳したり、オンライン上の露骨なコンテンツから子供たちを保護したりするのに役立ったりと、他の場所でもより深く活用されています。

Spatial Computing時代は、ARグラスが広く普及した世界を前提に話が進みます。この時代では一人称視点の高性能カメラを手軽な価格で手にすることができます。そこでは、かつてGoogle Glassが登場した際に人気を集めた視覚障害者向けの音声サービス「Envision」のようなスタートアップが再興するはずです。

画像認識技術が進んでいることや、昨今のGoogle Map ARナビゲーション機能実装のことを考えると、Envisionと比較して、かなりの付加価値を持った市場展開がなされると考えています。

さらに、Google Glassは2Bを中心に市場戦略が進んでいるため、Envisionが手をつけられていないユーザーは多くいると思います。そこで、今のうちから中国の安価ARグラス「Nreal」などを提供しながら、自社音声サポートサービスなどを展開すれば大きな成長が望めるのではないでしょうか。

Speech Recognition

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Photo by Tyler Lastovich on Pexels.com

音声認識システムは、ディクテーションソフトウェアから言語翻訳ツール、音声起動型スマートスピーカーまで、あらゆるもののバックボーンを形成しています。機械は音声を認識することはできても、人間と同じように理解できるわけではありません。人間は、文脈がなくても、文章がごちゃごちゃしていても、言葉を理解することができます。しかし、機械はそれが難しいのです。

“自然言語処理 “は、人間の複雑な話し方をよりよく理解するために、AIが文法的なルールを引き出し、生きた音声を分析することを可能にする、最近の音声認識の進歩である。これにより、AIシステムは、トーンやユーモアなどの何かが文章の意味をどのように変えてしまうのかを把握することができるようになります。

これらの技術は、私たちが何を言うかだけでなく、何を意味するかを理解するために着実に進化しています。AIの設計チームは、システムにより多くのニュアンスを組み込む方法を継続的に模索しているため、人々はこれまで以上にAIとシームレスで自然なやりとりをすることができるようになっています」とのこと。

筆者は直近まで音声サービスのアイデアを模索していたこともあり、今後タイピング入力から音声入力、ジェスチャー入力といったUIへと大きく転換する予感がしています。ARグラスを用いた体験では、スマホのスクリーン上で行うような高速タイピングは想定されていません。その上で、入力コストを圧倒的に下げて、ユーザーが検索したいことを即座に反映させる入力は音声が現実的でしょう。たしかに公共の場で声を発しづらいなどの解決すべき根本課題が存在しますが、何かしらの解決策が登場するのではないかと思います。

音声UIがARグラスと共に台頭することを考えれば、現在のFace IDやTouch IDに並び、「Voice ID」の重要性が高まると考えます。

すでにAmazon Echoは空間内で特定の人物を認識できますが、より音声認識技術が発展すれば、各ユーザー特有の発生をIDとして活用できるようになるかもしれません。冒頭で説明したFakesに絡み、フェイク音声技術はすでに確立しつつあり、いずれバッティングするかもしれませんが、こうしたセキュリティ上の市場課題を乗り越えれば、非常に大きなニーズを獲得するでしょう。この分野では大型スタートアップが登場しそうです。

Virtual Assistants

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Photo by ThisIsEngineering on Pexels.com

Virtual Assistantsは、基本的には人間のアシスタントをデジタル化したものです。最もよく知られている例は、スマートフォンやスマートスピーカーを介して話す音声アシスタントです。

これらのアシスタントは日常的に、オンラインで情報を検索したり、音楽を再生したり、基本的な質問に答えたりするのに役立っています。人々の生活や家庭がより接続されるようになるにつれ、バーチャル・アシスタントは、新しいタスクをより簡単に実行するのに役立つようになります。

話しかけられたコマンドに反応することで、これらのアシスタントを簡単かつ効率的に使用できるだけでなく、読み書きの問題や障害、その他の理由でキーボードに困難を感じる人にもメリットがあります。AI機会学習を利用して、バーチャルアシスタントが質問の文脈を理解し、人間の声を解釈するために使用する自然言語システムは、人とそのデバイスの間に、より自然な会話を生み出しています。

説明文にもあったように、現在のVirtual Assistantsの好例はSiriやGoogle Assistantに代表される音声アシスタントでしょう。ただ、今後はここまで紹介してきた「Fakes」「Image Recognition」「Speech Recognition」の集大成のような新たなアシスタントが登場します。

それが冒頭で紹介したようなバーチャルヒューマンたちです。

たとえば、GucciやLouis Vuittonのような高級ブランドの背景や世界観を汲み取った音声と容姿をした本物そっくりのバーチャルヒューマンが開発されれば、話す内容や口調はそれぞれのブランドに最適化されたものになるはずです。

ARグラスを通じ、こうした仮想世界のブランドキャラクターとやり取りすることもSpatial時代の特徴です。高いAI画像認識・音声認識を元に、高精度のフェイクヒューマンとコミュニケーションを取る時代がSpatial Computing時代とも言えます。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家 隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

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「GAFAにどう立ち向かうのか?」 7つの視点で考えるテンプ回答

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載 アイデアが独り立ちし、製品化されると必ずと言っていいほど突き当たるのが「GAFAが攻めてきたらどう戦うのか?」という質問でしょう。実績が積み重なってくればなおさらです。ただ、実際にGAFAが同じような製品を展開したとしても、すぐさまユーザーが離れるのかどうか、市場シェアをすぐに奪われてしまうの…

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Photo by Lukas on Pexels.com

※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載

アイデアが独り立ちし、製品化されると必ずと言っていいほど突き当たるのが「GAFAが攻めてきたらどう戦うのか?」という質問でしょう。実績が積み重なってくればなおさらです。ただ、実際にGAFAが同じような製品を展開したとしても、すぐさまユーザーが離れるのかどうか、市場シェアをすぐに奪われてしまうのかどうかはわかりません。

それでも、なぜこういった質問がしつこく聞かれるのか。答えは「起業家がどこまで考えきれているのかを探るため」ではないでしょうか。

では「GAFAにどう立ち向かうのか?」の質問への回答アプローチはどんなものがあるのでしょうか。ここで著名VC、GreylockのパートナーであるBrendan Baker氏のブログ投稿を元に、いくつかの視点を共有してみたいと思います。

なお、私の場合はAR市場展開を想定しているため同市場寄りの説明になっている箇所があります。そのため、特定パートは読者みなさんの市場に置き換えて説明を考えてみてください。

7つの視点

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Photo by Daniel Reche on Pexels.com

1. 得意収益軸:GAFAはなんでもできるわけではありません。必ず各々が得意とする稼ぎ方の「型」があります。年次報告書や四半期毎報告書を眺めつつ、まずは彼らがどこを得意に稼いでいるのか見定めてみます。

2. ハードウェア展開:ハードウェア開発および販売に強いのか、サービスで稼いでいるのか、もしくは両方なのかは重要な点です。IoTやロボット、AR企業にとってはなおさらです。たとえば忘れ物発見タグ「Tile」の模倣品をAppleが近々リリースされるともっぱら噂です。模倣品の生産だけでなく、iPhoneユーザーネットワークとの連携をされたらひとたまりもありません。このようにハード + ネットワーク効果のような連携サービスの形を取られるのがスタートアップにとっては最大の脅威となります(Tileの真の敵はiPhoneネットワークのフル活用)。

3. 失敗したサービス一覧:過去に撤退や不発で終わったサービスを確認してみましょう。どのような分野に強く、弱いのかが一目瞭然となります。

4. 自社領域の特性と時勢:噂レベルの話でも構いません、GAFAの開発リーク記事などを読みながら市場の動きを知ります。AR市場関連ではこうした噂話しか判断基準がないのですが、たとえばAppleの人材採用ページを見るとAR関連でどのような製品を作ろうとしているのかは薄っすらと見えてくるところもあります。

5. ハイパーフォーカス:たとえGAFAが何かしらの製品を展開してきたとしても、多くの製品ラインナップの内の1つです。圧倒的な選択と集中はスタートアップの強みであり、説明ロジックの軸となりえます。

6. プロテクション:大手企業になるほど既存製品の市場シェアを守ろうと走ります。既存製品への影響を無視してまで新規サービス展開へ積極的にリソースを割くことはない、という考え方です。

7. 企業文化:未来を信じるのか信じないのか。熱狂するのか、懐疑的なのか。特定分野の“熱狂者”しかいない環境が構築されるため、“熱質”が競合優位性になり得ます。ちなみにAR企業は知人らのスタートアップを見ていると、こうした「共感力」が圧倒的な差別化になると感じます。

Googleを紐解く

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Alphabetが発表した2019年の年次報告書より

ではこれらの視点をベースに、私が挑戦しているAR市場を軸に、大手各社を分析してみたいと思います。まずはGoogleから(5〜7は一般論なので割愛)。

1. 得意収益軸:年次報告書の「Revenue」パートを見ると、Google広告が収益の8割強を占めていることがわかります。YouTube広告もそこそこの収益シェアを占めています。ただ、広告が主軸であることから、YouTube Premiereのようなサブスク事業が大きく立ち上がっている見通しが未だありません。

改めてGoogleは広告企業であり、サブスク企業ではないと言えるでしょう。スタートアップが突くとしたら、Googleの事業領域でサブスク展開で急成長を狙える製品だと説明できるかもしれません。

2. ハードウェア展開と、3. 失敗したサービス一覧:次にGoogleが失敗してきた製品を適当な記事で確認してみましょう。(こちらの記事より抜粋)

Google Wave、Orkut、Google+、Google Hangouts on Air、Google Answers、Google Catalog Search、Dodgeball、Google Notebook、Google Page Creator、Google Video、Google Glass、Daydream etc…

4. 自社領域の特性と時勢:現在、Googleのハードウェア製品と言ったらPixelシリーズが有名でしょう。かつてはGoogle GlassやDaydreamのようなグラス端末やヘッドセットを開発してXR市場へ参入をしてきましたが上手く立ち上がっていません。そのため、同社は「モバイルAR戦略」へと大きく舵を切っています。

「広告企業」「Pixel」を組み合わせ、当分はモバイル市場を活用したAR広告戦略を打ってきそうな予感がしそうです。逆に言えば、モバイルAR広告以外の領域ではスタートアップも戦える領域があると言えるかもしれません。

Facebookを紐解く

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Facebookが発表した2019年第4四半期結果資料より

続いてはFacebook。

1. 得意収益軸:FacebookはSNSを活用した広告企業であることが一目瞭然です。ほぼ100%広告。Googleが苦手とするSNS領域に特化した「広告企業」とした不動の地位を得ています。ちなみにFacebookもGoogleのような巨大IT企業の脅威にさらされながらも、ハイパーフォーカスを武器に成長してきました。

2. ハードウェア展開:さて、ハードウェアではVR領域(Oculusシリーズ)で秀でています。2017年の開発者会議「F8」でARプラットフォームを構築していると発表したことや、Mark Zuckerberg氏のブログ投稿で2020年代に画期的なARグラスをリリースすると宣言したことから、Oculusシリーズと同様の展開を見せそうです。ハードウェア(ARグラス)と広告を組み合わせた戦略を仕掛けてくるかもしれません。

3. 失敗したサービス一覧:次にFacebookの失敗プロダクトをこちらの記事を参考に見ていきましょう。

Notify、Facebook Home、Facebook Deals、Facebook Gifts、Facebook Offers、Facebook Credits、Autofill with Facebook、Facebook Inbox、Facebook FBML etc…

総じて見ると、トレンドサービスを開発しようとコピーキャットを作ろとして数々の失敗をしています。結局Facebookの派生サービスとして埋もれてしまう印象です。ただ、Snapchatのストーリーズを全力で模倣するずる賢さも持ち、この機能だけ大成功を見せました。

一方、次のメディアやメッセージ系サービスに張るのは非常に上手いです。WhatsAppやInstagramを買収できている目利き力は非常に高いと言えます。Facebookとは別の独立アプリとして資本力を注がれると急成長を見せます。

4. 自社領域の特性と時勢:まとめるとSNS・メッセージ・画像/動画系の2Cサービスでは勝ち目がありませんが、フィンテックや小売系サービスのような派生サービスの立ち上がりは続けて失敗しており、スタートアップの参入余地となります。結局サービス成功までやり抜くことはなく、自社サービスのプロテクションに走るのは7つの視点で話した内容に合致します。

最大の弱点は「規制」。ユーザーデータの流出から市場反発が激しいです。若者ユーザー離れも深刻化しています。この2点もスタートアップの事業領域として適切だと考えます。たとえ同じSNS領域だとは言え、過去の失敗の事例をなどを上手く引っ張ってくればステークホルダーを説得できるはずです(編集部注:要約のため、AmazonとAppleの考察については原文をご一読ください)。

ただ正直、投資家らから必要以上にGAFAとの戦い方を詰められても、最終的に「未来のことはわからない、、、」と言わざる得ない場面に突き当たるでしょう。もし徹底的に叩かれてしまった場合は、自分の考えが浅はかだったと捉えて反省を持ち帰るか、やっかみだけ言ってくる人だと感じてばっさり切るのが一番だと感じます。

最後に、今回は紹介しませんでしたが、より戦略用語を用いてロジックを組み立てるには下記の記事を参考に、さらなる強固なディフェンス構築するのをおすすめします。

<参考記事>

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

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なぜSiriは使われないのか?

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最近、音声プロダクト開発に向けていろんな人に会わせていただきながら、ざっくりと音声アシスタント(Siri・Google Assisntant・Alexa)の利用状況を聞く機会が増えました。(※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載) 膨大なボリュームを調べていないため反論もあると思いますが、結論から言うとSiri(もしくはGoogle…

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Image Credit: Apple

最近、音声プロダクト開発に向けていろんな人に会わせていただきながら、ざっくりと音声アシスタント(Siri・Google Assisntant・Alexa)の利用状況を聞く機会が増えました。(※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載)

膨大なボリュームを調べていないため反論もあると思いますが、結論から言うとSiri(もしくはGoogle Assistant)を日常的に使う人はほとんど見当たりません、今のところ。

ここで言う「日常」とは、日々持ち歩くスマホやスマートイヤホン経由で音声アシスタントを少なくとも毎日、2〜3度以上は起動・利用するシチュエーションを指します。

肌感としては自宅でEchoシリーズを使っている方が5人に一人の割合、スマホの音声アシスタントを日常的に利用する人は数十人に一人くらい。ちなみにAlexaはスマホには進出していないため、自宅ユースケースが大半です。Google Assistantもスマートホーム文脈が比較的強いため、持ち歩き外出シーンではあまり使われていない印象でした。AppleのHome Podはほとんど普及していないため、Siriは完全にスマホ利用を想定しています。

日本と音声アシスタントの相性

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Photo by Tyler Lastovich on Pexels.com

なぜ日常的にSiriやGoogle Assistantを使うユーザーにヒットできないのか。私が人を選んで会っていないという理由を除き(選ぶと市場の俯瞰的な定性データが集まらない)、2つほど仮説を立てました。

1つはお国柄。

まず音声アシスタントの利用シーンとして考えられるのは移動時間。しかし、日本(特に公共交通機関が発達した首都圏)では欧米のように、音声やオーディオサービスの価値が発揮されるプライベートが担保された自動車空間にいることがあまりありません。電車内で声を出すこともエチケット違反であると感じるため、使いところはないでしょう(この点、唯一タクシーや自転車移動を頻繁にされる方には刺さるかもしれませんが)。

加えて、タイピング文化が日本に追い風なのも特徴です。

フリック入力文化もあり、高速でGoogle検索できます。メッセージアプリもテキスト入力が比較的多いと思います(要検証項目ですが)。一方、中国ではタイピングフォーマットと言語がマッチしない理由から、音声メモを送り合う文化が形成されていると聞きました。欧米では先述したように、自動車空間に縛り付けられる拘束時間があるため、両手を使うテキスト入力が音声に代替されることに合点がいきます。

まとめると、「日本ではそもそも音声を発する場がない」「タイピング文化がフィットし過ぎている」が1つ目の仮説です。

逆に言えば次の3つのターゲットは1つ目の仮説を反証してくれると考えています。ただ、非常にニッチなのは否めないかもしれません。

  • 音声を発することにためらいをあまり感じない、デジタルネイティブな10代を中心とした「若者世代」
  • 比較的勝手に声を発しても許されるタクシー移動空間や、忙しなく仕事をして多量のタスクを処理する必要性に駆られている「ビジネスプロフェッショナル層」
  • プライベート空間が保たれ、常にパソコンを見つめながら作業をしてスマホを随時チェックする作業に多少の煩わしさを感じる「リモートワーカー層」

ボイスファースト時代の「コミュニケーション・キャズム」

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Photo by Valdemaras D. on Pexels.com

では、どうすれば音声アシスタントは使われるようになるのでしょうか。

そこで考えたいのが「コミュニケーション・キャズム」です。これは音声アシスタントの利用を多くの人が躊躇してしまう根本的なUX上の問題を指します。

従来のモバイルでは「アプリを開く→特定サービスを受ける」という導線でした。しかし、⾳声コマンドでは「要望を伝える→サービスを受ける」の導線へと変わります。つまり、サービス名やブランドに価値がなくなる世界観があるのです。これまでスマホ画面をタップしてサービスを指定していた習慣を変える必要があるので、ここでキャズムの概念が適応されるのです。

市場には、イノベーター(革新者)・アーリーアダプター(初期採用者)・アーリーマジョリティ(前期追随者)・レイトマジョリティ(後期追随者)・ラガード(遅滞者)の5タイプのユーザーがおり、順にプロダクトを利用するとされています。アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にある“崖”を超えれば、製品利用が爆発的に増える概念です。

スマホの音声アシスタント利用に関しては、イノベーター層は一定数存在すると踏んでいます。なんとかしてSiriやGoogle Homeの活用方法をハックして、自宅でEchoシリーズを使うように工夫する人がいるはず。もしくは音声メモをMessengerやSlack、LINEに頻繁に使ったり、私のように記事執筆の書き起こしに使う人がいるでしょう。

彼らはボイスファースト時代のサービス導線を自ら作る、学習コストの高いサービスを独自に工夫したりして自分なりの利用方法を開拓するイノベーターおよびアーリーアダプタ層「ProConsumer」です。

鶏と卵問題

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Photo by Andrea Piacquadio on Pexels.com

ProConsumerたちは音声の良さを最大限享受し、恩恵を受けています。しかし、私たちが使うほとんどのサービスがモバイルアプリ体験から⾳声体験へシフトができていないことから、キャズムを超えられていません、爆発的に音声の良さが伝わっていません。

ユーザーにとって⼊⼒やサービスが呼び出しが楽にも関わらず、なぜ⾏われていないのか?

もともと音声は人間が本来持つコミュニケーションであり、ストレスなく情報を入力・取得できるものであるはず。にも関わらず、なぜ体験シフトへ動かないのか?

答えは2つ挙げられます。1つは「鶏と卵の問題」。サービス開発者は市場からの強いニーズがあれば音声体験への最適化へ必然的に動きますが、未だに少数しか音声を使いこなせていません。この堂々巡りが市場を硬直させていると感じます。

ただ、一石を投じたのがAirPodsです。耳元にSiriを持ってきた高性能イヤホン「ヒアラブル」端末の急先鋒として市民権を得ています。AirPodsは硬直状態の市場を少しずつ動かすはずです。

シークレットクエスチョン

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Photo by Burak K on Pexels.com

ここ数年で発生したハードウェアの進出・利用浸透でもなお、シフトが発生しないのはなぜか。それが2つ目の答え「シークレットクエスション」、つまり今は誰もが当たり前に受け入れている問題のことです。

PCからモバイルへと体験がシフトしただけで、インスタグラムやUberなど、潜在的な課題を解決する様々な巨大企業が誕生しました。シークレットクエスチョンにはそれほどのインパクトがあるのです。

何かしら大きな市場がキャズムの先にあるにも関わらず、私たちは未だに制限された音声体験を当たり前に受け止めています。長年使い続けた、生産性の低いタイピングでカバーしようと自然と考えてしまっています。これが私が考え、気付いたシークレットクエスションです。

将来的にFacebookやAppleが開発に注力するARグラス端末が増えれば、音声アシスタントを通じたコミュニケーション手法は主要UIとして採用される可能性が高いです。まさにSF映画のように、音声コマンドだけであらゆるサービスを利用できる環境が2020年代に整うかもしれません。

その下地をモバイルファースト時代に作っておくことで、戦略的に次世代ハードウェアが活躍する「Spatial Computing時代/ミラーワールドが実現された世界」へと打って出ていけると考えています。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

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拡張時代の到来で起こる「3つのこと」

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Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグ氏は2020年の年明け、自身のブログ投稿にて今後のロードマップを発表しました。内容は4つのトピックに分かれて紹介されています。 本記事では最初にFacebookのロードマップを簡単に解説し、その上でSpatial Computing(空間コンピューティング)が普及した世界における3つのシナリオ展開を考察していきます。 最後に、完全リモートかつマルチタス…

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Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグ氏は2020年の年明け、自身のブログ投稿にて今後のロードマップを発表しました。内容は4つのトピックに分かれて紹介されています。

本記事では最初にFacebookのロードマップを簡単に解説し、その上でSpatial Computing(空間コンピューティング)が普及した世界における3つのシナリオ展開を考察していきます。

最後に、完全リモートかつマルチタスクな世界のなか、.HUMANSがどのようなアプローチでSpatial Computingに取り組んでいくのかを紹介していきます。(※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載)

Facebookはどうなる

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Photo by Markus Spiske on Pexels.com
  • A New Private Social Platform: プライバシー重視のSNS
  • Decentralizing Opportunity: 機会の平等化
  • New Forms of Governance: デジタル世界の政治
  • The Next Computing Platform: 新たなコンピューティング

最初に掲げられたビジョンは「A New Private Social Platform」の構築。プライバシーファーストな世界です。

大規模コミュニティが作られると新たな課題が発生します。それは、誰もに情報をさらけ出すような環境ではなく、自分と親密な関係の人たちとのやり取りを重視しようとする動きです。社会インフラとして働くFacebookは、より小さなコミュニティに主眼を置いた開発が求められています。

2つ目は「Decentralizing Opportunity」。

小さなコミュニティを活性化させるにFacebookが注目しているのがお金です。お金が動けばFacebook経済圏が形成されます。経済圏の中でもあらゆるモノ・コトの受け取りが発生するでしょう。ユーザーが求めるものが徐々に増え、様々な物事が世界中のFacebookユーザーに提供されるようになります。こうした世界を機会平等化されたビジョンとして描いています。

3つ目に紹介するのは「New Forms of Governance」。

Facebookの機会平等の戦略は、小さなコミュニティが積み重なり、今以上に多くのサービス機能を与えられたユーザーが作り出す巨大コミュニティとなります。ちなみに小さな集まりがベースとなった巨大コミュニティを指して「ハイブ(ミツバチの巣箱)」と呼びます。

ハイブの中は蜂の巣のように多層なコミュニティによって構築されています。従来のFacebookはあらゆるユーザーが誰もに繋がる単層コミュニティを目指してしまったことから、昨年話題になったプライバシー問題が指摘されてしまいました。この点、小規模な友人間の繋がりを重視した「Snapchat」や今はなき「Path」の戦略が優っていたと感じます。

いずれのコミュニティ形成のやり方であっても、Facebookのような世界的なネットワーク網ができれば、既存の政治形態に変わる、デジタル世界の新たな民主主義が登場するとザッカーバーグ氏は睨んでいます。そこでプライバシー重視のハイブ戦略に基づいた政治を考えるのが今後のロードマップとなります。

新たなコンピューティング

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Photo by Bradley Hook on Pexels.com

ここからが本題である「The Next Computing Platform」の紹介です。

「The Next Computing Platform」を説明するためには、2017年のFacebookの開発者会議イベント「F8」で紹介された、上記で説明してきたロードマップとは別の3つのプランを説明する必要があります。

それがすなわち「Connectivity」「AI」「VR/AR」です。

超高速Wifiや5Gネットワーク、衛星を活用することでインターネット接続環境を世界中にばらまく「Connectivity」、画像認識やビックデータ解析に基づいた環境分析・解析環境を指す「AI」、ブレインコンピューティングやAR、Oculusシリーズが進んだ世界「VR/AR」。

3つの要素が次世代ネットワーク環境が整えば、あらゆるやり取りやタスクを即座に完了できる世界が実現されます。そこでザッカーバーグ氏はブログ記事にて、2020年代内に画期的なARグラス端末を投入するだろうと明言しています。

モバイルの次として期待されるARグラスは、空間全てがユーザーとインタラクティブにやり取りされます。これを実現する次世代コンピューティングを「Spatial Computing」と呼びます。また、次世代コンピューティングを実現させるには空間データがクラウド上にデータ保存される「ARクラウド」の概念が必須となります。現実世界がデジタル世界に生き写しとなるコンセプトから「ミラーワールド」や「デジタルツイン」とも称されます。

FacebookはSNS企業と大半の人が考えていることでしょう。しかし、今や同社は「Spatial Computing」時代への移行を睨み、ARグラス端末開発をAppleと並び率先的に進めている企業です。5〜10年後には結果が見えてくるでしょう。

拡張時代の到来で起こる「3つのこと」

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次世代グラス型端末は、人間の能力や機能を“拡張”するものであると.HUMANSでは考えます。

モバイルの登場とともに、スマホカメラはライブストリーミングをあらゆる場所で可能にし、ユーザーの存在を遠隔に飛ばすことを可能としました。Google MapのARナビゲーション機能は地図の読めない人であっても、矢印を辿れば目的に到着させ、視覚情報の拡張を行いました。VRヘッドセットでの体験は企業研修で用いられ、オペレーション作業の学習時間を格段に短くし、ユーザーの認知能力を強化させました。

ユーザーが持つ人間としての能力や機能がデバイスによって拡張される時代を、.HUMANSでは「拡張時代」と呼んでいます。

それではFacebookは拡張時代において、どのような世界が誕生すると考えているのでしょうか。改めてザッカーバーグ氏のブログに遡りながら、3つのユースケースを考察していこうと思います。

  • 存在の拡張
  • 脱都市化
  • フリーランス化がさらに加速

まずは「存在の拡張」から。

ユーザーの存在を世界各地へ飛ばす能力は、ZoomやSkypeに代表される映像電話ツールが普及した今以上に、リモート社会を促進させると考えられます。地方に住んでいても、ネットワーク環境があれば都市部へ通勤する必要もなくなってきます。

昨今、コロナウィルス流行を発端に中国では多くの行事がオンラインで開催されるようになりました。学校教育現場はオンライン動画プラットフォームへと移行、結婚式はライブストリーミングしながらお祝いする事例が発生しています。

まるでそこにいるかのように自宅から日常的にコミュニケーションを取るユースケースが発生すれば、「存在の拡張」は大きなキーとなってきます。

次は「脱都市化」に関して。

「存在の拡張」が発展すれば、住宅コストの高騰や地理的デメリットが消滅することが考えられます。では、次世代グラス端末が普及し、自分が選んだ好きな場所に住んで、他の場所の仕事に手軽に、かつ自由にアクセスできるとしたらどうでしょう。

脱都市化が進むと予想できます。

必ずしも都市部に住む必要がなくなり、人々の分散が始まります。すると、都市部の不動産価格は頭打ちとなり、住みやすい世界が実現するはずです。

小売の店舗戦略にも大きく関わってくるでしょう。1つSnapchatの事例を挙げさせてください。同社がLEGOと取り組むアパレル店舗があります。筆者は勝手に「ホワイトショップ」と呼んでいるのですが、店内に洋服は置かれていません。読み取りコードが複数置かれているだけ。

店舗導線に沿ってAR体験を楽しみ、購買に結びつけます。現実世界ではまっさらな店舗であっても、重なるように存在するAR世界では全く別世界が展開されます。なにより、在庫スペースや商品展示スペースがすっぽりと抜けることで、店舗規模を縮小しても十分に回る店舗体験を提供できるかもしれません。これは、大型出店では採算の取れない都市部への出店戦略を大きく改善する可能性を秘めています。

このように、地価にも影響を及ぼすのがSpatial Computingであり、ユーザー行動や都市開発など、一見関連のない市場にまでダイナミックに関与することが予想されます。

3つ目は「フリーランス化」について。

従来、フリーランスは動画編集やライティングのように、ある程度の汎用性のあるスキルに基づいた職業を掛け持ちする人によって構成されていました。しかし、技術の進歩により、たとえば病院診察のような高スキルな職も自宅から行えるようになると考えられます。

多種多様な情報がグラス端末に飛び込んでくることで、多くのタスクを短時間に完了させられるようになります。あらゆる種類の専門家がフリーランス化するようになり、ギグ経済はさらに加速することが予想されるでしょう。

すでにWalmartが従業員のVR教育を導入しているように、学習時間の圧倒的な短縮が図れるのもメリットです。学習インプットコストが圧倒的に短縮化され、人の「慣れ」が差別要素にならなくなる「No Learning Curve」な世界が登場すると思います。

別の展開も発生します。

「脱都市化」と「フリーランス化」は相乗効果的に相まって、本社機能を分散させます。自宅が会議室になり、オフィスの役割を兼ねるSpatial Computingの時代では、企業は「なぜHeadquarterを持つべきなのか?」と改めて考え始める可能性が出てくるでしょう。

本社機能を縮小し、各地方都市に機能移譲するかもしれません。そこでWeWorkのようなコワーキングスペースの活用にさらに拍車がかかるはず。次世代グラス端末の時代はコワーキングスペース市場にも大きな変化をもたらすと考えられるはずです。

本稿は拡張時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

 

 

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鍵は「屋外広告」一気に拡大したBrexの #スタートアップPR 戦略を紐解く

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ピックアップ: AdQuick raises $6M to conquer an advertising market Google and Facebook won’t ニュースサマリー: OOH(Out-Of-Home)広告のマーケットプレイス「AdQuick」は2月14日、Initialized Capitalがリードを務めたシリーズAラウンド600万ドルの資金調達を行なったと発表した。Wn…

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Image Credit: Brex

ピックアップ: AdQuick raises $6M to conquer an advertising market Google and Facebook won’t

ニュースサマリー: OOH(Out-Of-Home)広告のマーケットプレイス「AdQuick」は2月14日、Initialized Capitalがリードを務めたシリーズAラウンド600万ドルの資金調達を行なったと発表した。WndrCo、Shrug Capital、Work Life Ventures、The Todd&Rahul Angel Fundらも参加した。累計調達額は940万ドルを達成した。

AdQuickは、自社が所有する屋外広告スペースをレンタルするビジネスではない。広告スペースの所有者と購入者を結び付け、購入の手数料を受け取るマーケットプレイスモデルを採用。また、従来のオンライン広告同様に、広告効果を測定できるツールを導入。AdQuickが活用しているターゲットは、昨年米国内で未使用になったと推定される全OOH広告スペースの30〜35%に当たる箇所だ。

昨今では不動産スタートアップ「ZeroDown」や、クレジットカードスタートアップ「Brex」が屋外広告キャンペーンを大々的に展開。大半の企業がGoogleやFacebook広告を展開する中、広告チャネルの差別化が一切図れなくなった。そこで再注目されている屋外広告に着目したのがAdQuickである。

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話題のポイント: 屋外広告の価値の再評価が始まっています。

最たる例がAppleによる「Shot on an iPhone」キャンペーンでしょう。みなさんも駅構内の至る所で見かけたことがあるはずです。同社は多額のキャンペーン費用を支払っており、世界中の都市で展開。伝統的な屋外広告枠に独自のアプローチを採用しています。

2017年のAdWeekの調査によると、OOH広告市場における上位100利用企業の約25%はハイテク企業とのこと。Google、Facebook、Apple、Snapchat、Twitterが代表的です。自社プラットフォームでデジタル広告を展開できる企業らが、オフライン広告に多額の費用を支払っている点は皮肉なことかもしれませんね。

さて、OOH広告への投資は、スタートアップも積極的に行なっています。Venmo、Jet.com、Oscar、Casper、Percolateなどのハイテクスタートアップはすべて、ニューヨークを中心に広告展開をしています。

それではなぜ、テック企業らは屋外広告に注目するのでしょうか。

Peter Thielも投資したクレカスタートアップ「Brex」の事例

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Image Credit: Brex

スタートアップ事例ではBrexが昨今の代表ユースケース。同社は著名投資家Peter Thiel氏も投資するスタートアップ向けクレジットカードを提供する企業です。ここからはHow Brex Is Building the Startup Marketing Playbook (Beyond The Billboards)の記事を参考に、同社の広告戦略を紹介します。

Brexは当時22歳と23歳であったHenrique Dubugras氏とPedro Franceschi氏によって創業されます。Brexは非常にユニークかつ積極的なPR戦略でステークホルダー獲得に乗り出します。ローンチ前には潜在顧客獲得のために1,000人以上の外国人起業家にLinkedInにコンタクト、立ち上げ初期から投資家デックをプレスに提供、イベント登壇で情報発信、そして30万ドルの屋外広告展開をしかけています。

元々、Brexは初期顧客100名を獲得するまで1年間ステルスで活動。アイデア検証に時間コストをそれなりに費やしていたため、ローンチ直後に爆発的な獲得成長数を望んでいました。そのため、あらゆるインパクトあるマーケティング・プロモーション施策を打つ必要性があったのです。

Brexのマーケティング戦略は、リターゲティング軸で展開されます。

Brexはオンライン広告を認知拡大と顧客獲得の場と位置付けています。まず、YouTube広告などでブランド広告を展開します。何度かテストを繰り返したのちにデモグラフィックデータを収集。その後、自社サイトでコンテンツを展開し、潜在顧客の自然流入を待ちます。最終的には訪問ユーザーをトラッキングして、有料広告でリターゲティングを展開します。顧客がサインアップしたら口コミに持っていくことで、低コストな顧客獲得を目指します。

「顧客データのサーチ」「コンテンツ展開」「有料広告」「顧客獲得」「口コミ」の5ステップの順で展開されたのがBrexのマーケティング戦略です。これをループのようにぐるぐる回して顧客獲得を目指しました。広告費用のペイバックピリオドは6カ月分以内(粗利益で回収する)と定めていたようです。

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Photo by Lukas Hartmann on Pexels.com

興味深いのが「コンテンツ展開」のステップ。スタートアップに資金はありません。そこで投資家デック公開からイベント出演に至るまで、オンラインのみならず、オフラインコンテンツの積極発信に至るのです。こうした接点から「Brex」「スタートアップ」「クレジットカード」など、どれか1つでもオンラインキーワード検索をして、引っかかった顧客を半年以内に引き抜いたのです。

調達額が増えてきた段階で、サンフランシスコ地域を中心に30万ドル規模の屋外広告キャンペーンを打ちます。起業家があふれる街であるため、屋外広告に載せるキーワードも自ずと限られてきます。オンライン広告で収集したデモグラフィックデータと組み合わせて最適な広告板をデザイン。先ほどと同じく特定キーワード検索を1つでもした潜在顧客獲得に走ります。

もちろん、屋外広告はブランド認知の側面も高いのですが、Brexの場合はROI(費用対効果)は非常にポジティブなもののようです。一貫したリターゲティング戦略で上手くオフライン展開が働いている証左でしょう。

全方位からコンテンツ展開を行い、スタートアップが持ち得る全ての「コンテンツ資産」を棚卸し、オンラインでのサインアップに持っていく流れがBrexの戦略。その一貫として屋外広告が活用され、ブランド認知から顧客獲得まで効率的に展開しています。

スタートアップPRの本質、「雰囲気作り」を最大化

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Photo by Canva Studio on Pexels.com

Brexのプロダクト自体がスタートアップに特化しているもののため、シリコンバレーのような起業家の集まる地域にターゲットを絞れます。そのため、地域性と相性の良い屋外広告には打ってつけです。ただ、最も見習うべき重要な点は、BRIDGEのスタートアップPRでも述べてきた、「雰囲気作り」だと感じます。

<参考記事>

筆者は昨年1月にサンフランシスコを訪れていた際、現地の起業家さん何人かと会いましたが、特に若手起業家であれば(特に昔から使っているカードがなければ)Brex一択という雰囲気を強く感じました。「起業家のクレカ = Brex」の流れができていたのです。

まさにバイラルができていたのがBrex。ここに至るまでに初期投資を戦略的かつ、ある程度のコストは惜しまずに展開したのが同社の実績です。

巧みな雰囲気醸成を行えた理由は3つ挙げられると考えます。1つはオンライン広告最適化。自社プロダクトがどこに一番刺さるのかをデータドリブンに探り、マーケティングの基軸となる層に向けて徹底的にアプローチします。世界中でスタートアップ × クレジットカードの文脈に興味のある地域を絞り込みます。

2つ目はナラティブ(語りかけ)です。イベントや投資デックから徹底的に直接ストーリーを投げかけます。顧客に近い場所へ趣き、プロダクトの有用性を解くことで、Brexカードを好きになり・積極的にレビューを発信してくれるインフルエンサー・コミュニティを着実に積み上げていきます。

この点は以前ご紹介したSuperhumanの戦略と似ています。インフルエンサーは自らの体験の語り部となる、スタートアップPRにおいては重要な媒体となりえます。ちなみに1つ目のオンラインデータから、イベント都市先の選定もしていたのかも知れません。

<参考記事>

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ここまでで顧客獲得導線と口コミバイラルが完成しているように思えますが、最終的に主要都市に丸ごと「Brexを利用しよう!」という雰囲気作りに動きました。それが3つ目の屋外広告なのです。

無意識のうちに、いつでも目に飛び込んでくるプロダクトメッセージ。日常の中に溶け込むように、各都市の風土に最適化されたキーワードを訴求することで、オンライン広告や口コミの社会的信用性を向上させるのが屋外広告です。口コミ紹介をされた際、「これ見たことあるよね」のような話の流れに持っていくことができるのは屋外広告の最大の強みでしょう。

また、広告の内容もいわゆる宣伝っぽいものではなく、「配車サービスを使えばリワードが7倍」のような利用体験であったり、「3カ月でスタートアップへのキャッシュバック総額1億ドル」といったコミュニティ感を訴求しています。なるべくターゲット顧客の日常行動に変化をもたらしたり、同じ起業家層が使っているから見逃せないといった良い意味での焦りを生み出しています。

スタートアップPRでは単純なプロダクト内容を宣伝しても効果は薄い印象です。顧客に行動変化を起こしたり、自分が所属するコミュニティで使われている雰囲気作りが大切になります。Brexはこうした点で優れたPR思考を持ち合わせ、オンラインとオフラインの両軸を上手く回すオムニチャネル的な戦略展開に秀でていたと感じます。

今では配車サービスに屋外広告を出稿できるプラットフォーム「Firefly」なども登場。街中で屋外広告を多く見受けられる機会が増えました。事実、OOH市場は堅調に伸びており、Statistaのデータによると2020年の世界市場規模は約400億ドル。よりマクロ視点からターゲット顧客にサインアップを促す大きな力を持っており、プロダクト購買に迷っている人の背中を押す屋外広告の重要性は徐々に上がってきそうです。

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Appleが5Gアンテナ自社開発と報道

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ピックアップ: Exclusive: Apple is designing its own antenna for this year’s 5G iPhone ニュースサマリー: Fast Companyの報道によると、Appleは自社5Gアンテナの設計・開発に取り組んでいるという。AppleはQualcommから提供されたQTM 525ミリ波アンテナモジュールの採用を拒否。これは、Appleが新…

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Photo by Torsten Dettlaff on Pexels.com

ピックアップ: Exclusive: Apple is designing its own antenna for this year’s 5G iPhone

ニュースサマリー: Fast Companyの報道によると、Appleは自社5Gアンテナの設計・開発に取り組んでいるという。AppleはQualcommから提供されたQTM 525ミリ波アンテナモジュールの採用を拒否。これは、Appleが新型iPhoneに求めている洗練されたデザインに適合しないためである。

ただ、サムスンの新しいスマホ「Galaxy S20」でも使用されているSnapdragon X55の5Gモデムチップについては、秋に発表される可能性のある最新iPhoneへの提供は決まっているとのこと。

そのため、Qualcommモデムと自社アンテナの両方を使用する設計で開発を進めているという。とある情報筋によると、2020年後半に販売される次のiPhoneでは、デフォルトでこのオプションが設定される可能性があるという。

Appleにとっては難しい選択が迫られている。

同社はアンテナ設計があまり得意ではない。iPhone 4のアンテナ設計では、電話中に通信が落ちるケースが発生した。なかでも今回の5Gアンテナは非常に設計が困難。設計と製造にエラーの余地は残されていない。生産ラインから出るアンテナにわずかな欠陥があると、後で接続の問題が発生する可能性がある。

一方、戦略上ではAppleはQualcommへの依存度を下げたい思惑がある。Qualcommの部品および知的財産の使用に対するロイヤリティを支払う「二重支払い」のコストを削りたい意向があるからだ。2019年、両社の長年にわたる法廷紛争の基礎となる支払いフローを、訴訟問題にならない正しい形で脱したい考えである。

そこでAppleはIntelのモデム事業を買収していることもあり、今後リリースされるiPhoneでQualcommモデムを置き換えるため、独自の5Gモデム構築に多くのリソースを投入している。

計画は頻繁に変わるため、どこまで正確な情報になるかはわからない。ただ、少なくともAppleが最初の5Gデバイスのアンテナに対し、2つのオプションを持っていることは事実のようだ。なお、Appleは本件に関してコメントはしていない。

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Photo by Plush Design Studio on Pexels.com

話題のポイント:Appleは既存製品ラインナップ「Macbook」「iPad」「iPhone」「AirPods」の他、忘れ物防止タグ「Tilt」ライクなIoT製品の開発、次世代ARグラス端末の開発が進行中であると噂があります。

どこまで実現されるかはわかりませんが、5G時代に向けてハードウェアの開発ラインを増強することは予想できます。そこで自社モデムおよびアンテナに一本化させることで製造コストを抑える戦略に打って出ていることが伺えます。自社開発にシフトすることで、性能向上のためのアップデートをより柔軟に行えるようになるはずでしょう。

5G時代ではハードウェアの通信安定性と速度が担保される必要があります。そこでAppleは、従来ネックとなっていたQualcommへの支払いコスト削減により、iPhoneの収益率を上げることも含め、同社が求める最高の通信環境構築を狙っているのでしょう。

今のうちにモデムから自社ラインへとシフトできれば、数年以内に販売されるであろうARグラスの開発コストを浮かせることも可能になるかもしれません。今回の報道を単なる開発関連ニュースと捉えるのではなく、Apple全体の収益を底上げし、5G時代に向けた端末インフラを整備する重要な一手となる認識を持つ必要がありそうです。

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中国版TikTokが映画放映、次のYouTubeを狙う戦略を振り返る

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ピックアップ記事: TikTok, Douyin the world’s second most-downloaded app in 2019 ニュースサマリー: 中国テックメディアTechnodeによると、「TikTok」および中国版TikTok「Douyin(抖音)」の2019年におけるダウンロード数が、App StoreとGoogle Playで2位であったと報じた。1位を獲ったのはFace…

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Image Credit: Kon Karampelas on Unsplash

ピックアップ記事: TikTok, Douyin the world’s second most-downloaded app in 2019

ニュースサマリー: 中国テックメディアTechnodeによると、「TikTok」および中国版TikTok「Douyin(抖音)」の2019年におけるダウンロード数が、App StoreとGoogle Playで2位であったと報じた。1位を獲ったのはFacebookのWhatsApp。

App StoreとGoogle Playにおける、TikTokとDouyinの2019年合計ダウンロード数は合計で7億3,800万件超。Google Playが約6億件のインストールを記録しており、合計数の大半を占めるという。また、2019の第4四半期のダウンロード数は過去最高を記録し、インストール数は2億2000万件超を達成。前四半期比で24%、前年比で6%増加した。

2019年10月以来、TikTokが米国ユーザーにデータセキュリティとプライバシーのリスクをもたらす可能性があると判断されており、精査対象となっている。こうした動きに対処するため、昨年末にプラットフォームの透明性に関するレポートを初めて発表している。

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Photo by Tim Savage on Pexels.com

記事のポイント: TikTokの勢いが止まりません。同アプリの源流にあるのが短尺動画だと考えます。

2010年代から短尺動画フォーマットが流行始めました。1〜3分ほどの短さで完結する動画を楽しむ視聴スタイルです。筆者はこのトレンドがTikTokによるYouTubeの牙城崩しにも繋がるものだと考えています。そこで、本記事では4章に分けたサマリーに沿って説明しながら、TikTok誕生までの市場史と短尺動画メディアの行く末に関して考察していきたいと思います。

1) モバイルファースト + 縦長動画フォーマット最適化(2011年〜2014年)

まず、短尺動画時代の幕開けは2011年創業の「Snapchat」から。ユーザー同士が10秒動画を送りあってコミュニケーションをするP2Pプラットフォームとして爆発的な人気を博し、今や上場を果たしています。競合として、後にTwitterに買収される2012年創業の「Vine」も追随。当時はコンシューマアプリ全盛期でもあったため、Snapchatライクなアプリは数多登場しましたが、結局本家しか生き残れなかった感があります。

SnapchatはまさにYouTubeが当時なし得なかった、モバイルファースト + 縦長動画フォーマットにサービスを最適化させたサービスと言えます。

フックとなったのが注目をされていたミレニアル世代。日常おもしろコンテンツの発信欲は一定層存在します。ミレニアルズはまさにこの欲求を強く持っていました。そこで登場したSnapchatが刺さり、スマホを通じた動画コミュニケーションの最適解を示しました。

よりマクロ視点で語れば、スマートフォンに搭載された機能が市場を大きく変えた瞬間であったと感じます。

GPSはGoogle Mapのリアルタイムナビゲーション体験を市場に浸透させましたし、カメラ機能はInstagramやSnapchatを通じたビジュアルコミュニケーションの考えを広めました。この点、Snapchatは未だ発掘されていなかったスマホ機能のユースケースを市場に浸透させた事例とも言えるでしょう。単にうまくミレニアル世代に幸運にも刺さったサービスではないと思います。

「分散型動画メディア」が登場、短尺動画の認知が広まる(2015年〜2017年)

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Photo by Pixabay on Pexels.com

2015年に差し掛かると、各種SNSにコンテンツ投稿する「分散型メディア」というワードに注目が集まります。ユーザーが集まる場所に、最適化したコンテンツをメディア側が投稿する考えです。わざわざユーザー側からメディアの方へ出向くのではなく、メディア側からユーザーへ出向く業態が流行りました。2012年創業の「NowThis」は分散型動画メディアとして有名となりました。日本勢では「クラシル」が人気でしょう。

ただ、分散型メディアはFacebookやTwitter、YouTubeにユーザーデータを取られるリスクを背負う必要があると同時に、アルゴリズムの変更によりメディア戦略を随時変更する必要性もありました。なにより、課金ポイントがネイティブ動画広告以外一切なく、非常に苦しい状況に陥ります。

最終的にSNSは膨大なユーザーを短期間で一気に稼ぐ、メディア認知をさせる場所として捉えられます。1ユーザーの獲得コストが100円にも満たないことから、CAC(ユーザー獲得コスト)に革命が起きたのは事実でしょう。しかし、自社アプリプラットフォームにユーザーを誘導し、有料プランを提供する戦略を各メディアが採用する必要が出てきました。

アプリ開発をせず、SNSだけで課金ポイントを模索したメディアは総じてしぼんでいった印象です。唯一生き残った業態は2つ。1つは有料プランと相性の良いレシピ情報を提供できる料理動画系メディア。もう1つは企業とタイアップした広告事業。ユーザー獲得に数億程度のコストをかけ、一定視聴数をコンスタントに稼げるベースラインを構築した大型調達組のみが広告事業で生き残っていると感じます。

個人的にはユーザーデータを細かく分析しながらサブスクモデルでリテンションを長くする施策を適宜打てるクラシルのような料理動画メディアの戦略こそ、分散型動画メディアの唯一の解であったのではないでしょうか。

プロシューマー系アプリ「TikTok」が爆発的な普及(2015年〜2019年)

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Image Credit: Douyin

分散型動画メディアの登場と共に、TikTokのユーザー数は数億人規模に拡大。SNS志向の分散型メディアと、単独アプリ中心のTikTok。一見、相入れないように感じますが、TikTokはSNS動画の流れを大きく汲んでいます。

先述したような分散型動画メディアは世界中で乱立。収益モデル確立に苦しみ、すでに大半が買収・撤退・事業維持の3つで決着しています。一方、乱立したおかげで、短尺動画の視聴体験が市場に受け入れられました。また、SNSの登場により、CACの著しい低下によりアプリ広告コストが抑えられ、短期間に膨大な量のユーザーを囲い込み、資金力を武器に一大プラットフォームを作る逃げ切り型のモデルが認知されるのです。

この2点が次のTikTok登場に繋がります。Snapchat登場時にはなかった、CAC革命により急成長できたのがTikTokであると言えるでしょう。

さて、TikTokはSnapchatやVineなどの動画投稿プラットフォームとは一線を画します。ポイントは大きく下記5つほど挙げられるかと思います。

  • プロシューマー系動画アプリ
  • 音楽の解放
  • コンテンツ幅の拡大
  • トレース性の訴求
  • レコメンド

同じ動画をループさせるSnapchatのようなサービスとは違い、ある程度のスキルを持った動画クリエイターになれる「プロシューマーアプリ」がTikTokだと感じています。プロシューマーとは、コンシューマ向けのツールを使い倒し、ものすごい早いスピードで仕事をこなせる「プロの仕事人」を指します。この点、プロとは言わないまでも、動画撮影に多少長けたユーザー向けアプリがTikTokだったのです。

TikTokを支えるのが残り4つのポイントです。

まず、音楽を解放することで、誰もがアマチュア動画クリエイターになれる門戸を開きました。著作権で突っ込まれない点は、UGC(ユーザー・ジェネレイト・コンテンツ)プラットフォームでは地味に大きい点かと思います。コメントで非難されることがなくなるためです。

また、SnapchatやVineは超短尺のループ動画であったため、コンテンツ表現が制限されていました。そこで、少し長めの動画尺を採用することで、コンテンツの幅を広げました。

豊富なラインアップの中から好きな音楽を元に動画作成させる導線は、音楽毎に独特の作法を確立しました。たとえば、大塚愛さんのさくらんぼの音楽を選択すれば、アンゴラ村長のダンスを真似るといった具合です。このように、人気動画コンテンツの作法がいくつもユーザーによって発見され、真似る文化が醸成しました。他のユーザーが人気コンテンツ・フォーマットを投稿できるトレース性を限りなく高めたのがTikTokの大きな強みです。

コンテンツ発見の導線設計にも余念がありません。AI機械学習によるレコメンド機能は、各ユーザーにパーソナライズ化した動画コンテンツをタイムラインに並べます。こうしてZ世代、ミレニアル世代、X世代のように、各世代やデモグラフィック毎に最適なコミュニティ形成を可能としました。全く違う趣向のユーザーがバッティングしないプラットフォーム設計をAIを活用して実現させました。

映画配信へ参戦。YouTubeの牙城が壊され始める(2020年〜)

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動画投稿と視聴の両方を兼ね備えたハイブリッドメディアとしてのTikTokは、間違いなく2011年から変化を遂げてきた短尺動画トレンドの着地点の1つとなるでしょう。前章で説明した5つの要素を武器に、TV業界とYouTubeのディスラプトへ走り始めています。

友人間の動画コミュニケーションに特化した「P2P(Person-to-Person)プラットフォーム」がSnapchatであるならば、個人ユーザーが大衆に向けてバズコンテンツを大量に生み出せる「P2C(Person-to-Consumers)プラットフォーム」の立ち位置を確立したのがTikTokです。

個人が大衆に向けて動画コンテンツを大規模に発信できるプラットフォームの形は、個人がTV番組ほどの影響力を持てることを意味します。その上、15〜30秒ほどの動画を自然発生的に、かつ大量に投稿させるプラットフォームはTV広告に取って代わる可能性を持ちます。

TV画面で15秒間隔に移り変わるスポンサーコンテンツ。一方、TikTokは5億人とも言えるユーザーに向けて、同尺程度の動画を提供できる土台がすでに固まっています。TV広告の尺を、モバイルファーストに最適化させた形で、大量にコンテンツを拡散するプラットフォームを確立させたのです。TV業界をディスラプトするようなサービスの通称「コードカッター」の代名詞にまで上り詰めることができるはずです。

YouTubeもコードカッターの特色を持ちますが、スマホからの動画投稿は一般的ではありませんし、短尺動画のトレンドに乗っていません。もはや動画編集サービスを使わなければ良質な動画を投稿できないプロツールとしての動画サービスになっているため、動画投稿体験においてミレニアル世代やZ世代から人気を獲得できていません。

なにより、TikTokがYouTubeに大きく追いつく一手が打たれました。それが映画の放映です。

きっかけはコロナウィルス。中国メディアによると、旧正月に放映される予定であった映画がキャンセルに。そこでTikTok親会社「Bytedance」が6億3,000万元(9,080万ドル)を支払い放映権を購入。中国版TikTokであるDouyinを含め、Bytedance傘下のメディアで放映されたそうです。

限定的な作品放映ではありますが、なんの脈絡もなしに放映権獲得に動くはずもないでしょう。以前から長編動画の戦略を画策していたことが伺えます。映像作品まで楽しめるようになれば、ユーザーは他社ストリーミング企業を開く必要がなくなり、いよいよYouTubeやNetflixと直接競合するようになります。

2011年から始まった短尺動画のトレンド。TikTokは動画市場の変遷の中で、巧みなユーザー体験設計と成長戦略を描き、ここまでたどり着きました。10年目の2020年は長尺動画・映像放映にまで着手し、あらゆる世代向けに・あらゆる尺の動画コンテンツを提供するプラットフォームを完成させるかもしれません。

未だTikTokは課金へ大きく舵を取ってはいませんが、TV業界やYouTubeの座をひっくり返すビジネスモデル確立のため布石を打ち続ける方針は明らかです。ますますTikTokの動向に目が離せません。

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Googleがアプリ統一へ、SuperApp化する世界

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ピックアップ:Report: Google is about to take on Slack and Teams with a new ‘unified’ communication app ニュースサマリー: Googleが企業向けモバイルおよびブラウザアプリの統一に動いているとThe Informationが報じた。 「Gmail」「Drive」「Hangouts M…

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ピックアップ:Report: Google is about to take on Slack and Teams with a new ‘unified’ communication app

ニュースサマリー: Googleが企業向けモバイルおよびブラウザアプリの統一に動いているとThe Informationが報じた

「Gmail」「Drive」「Hangouts Meet」「Hangouts Chat」を1つのインタフェースで利用できるようにし、「Google Calendar」などの統合されない予定のサービスとの連携を強めるという。これまで多数のコミュニケーションアプリを立ち上げたGoogleだが、機能を統一させ、ユーザーにわかりやすく訴求させる狙いだ。

競合には大手企業に人気のある「Microsoft Teams」や、スタートアップに利用される「Slack」が挙げられる。Microsoftは再設計した「Outlook」に好意的なレビューが集まっている。Slackに関しては、Googleの各種サービスとの連携が手軽にできる一方、Hangoutsのようなチャットサービスは自社を使うように設計されている。

大手競合2社からユーザーを引き戻せるかに注目が集まる。一般的に企業は、利用ソフトウェアを一度決めたら変更をしたがらないため、どこまで切り込めるかが重要となる。

なお、今回の統合はG Suiteのみが対象になる模様。一般に公開されているものではなく、エンタープライズ向けサービスに適用される見込み。Microsoftは2,000万人の月間アクティブユーザーが持ち、Slackより多いとしている。同値が当分のベンチマークとなるだろう。

Superappの流れ

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話題のポイント:今回のGoogleの動きは、中国から世界へ波及している2C市場トレンド「Super App」の流れを汲んでいると考えられます。

Super Appとは言わば、あらゆるサービスを一社がパッケージとして提供する業態を指します。同用語を広めた米国VC「Andreessen Horowitz(a16z)」のブログ記事にもある通り、中国発祥のトレンドです。

中国ではBATの台頭と共に、急速にトップ数社による全サービス領域の網羅およびユーザーの囲い込みが加速しました。モバイル時代の流れに乗り、水平統合型のサービスが登場しています。統合サービスが登場するにつれ、ユーザーは利用頻度の高いアプリ以外は使わなくなり、新しいアプリをインストールする機会は減少。各スタートアップは大手企業と連携することで生き残ろうとしています。

中国のトレンドは欧米へ渡り、今では「Uber」が徐々にSuper App化していると言えます。日本で配車サービス「Uber」より使われているであろう「UberEats」の存在は好例でしょう。高頻度ながら利益率の低いサービスで顧客獲得を進めつつ、最終的には低頻度で利益率の高い事業へと送客する仕組みを確立するモデルがSuper Appです。

顧客理解と幅広いデモグラフィック分布を武器に攻勢を強めるのが特徴です。この点、Uberはフードデリバリーサービスを展開したり、クレジットカードを発行し始めているなど、Super Appならではの多角化の動きを見せています。

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さて、2Cトレンドの動きが2Bでも顕著に見られるようになりました。それが今回のGoogle Suite統合のニュースです。

元々、Super Appと相性の良い領域はコミュニケーションやECアプリなど、ユーザーが日常的に利用するサービス。なかでもライフラインとして必須であるコミュニケーション領域を抑えた企業が、Super Appとして先行できる印象があります。そこでGoogleは2B市場におけるSuper Appを目指そうとしていることが伺えます。

ただ、2B市場では競合であるMicrosoftがすでに先行済み。a16zが広めたSuper Appの用語が登場する前からTeamsを展開し、ユーザーがサービス選択で迷わないようにチームワーク向けハブ機能を企業に提供しています。一方のSlackは、自社で各種サービスを開発するというよりは外部サービスとの連携・共存をして成長を続けています。なお、定義上ではSlackの方がSuper Appとして的確な戦略を展開していると言えるでしょう。

GoogleがSuiteの統合アプリを進めればUXが改善されることは間違いありません。しかし、自社サービスに閉じた形になるため、周りを巻き込めない欠点を持ちます。従来Googleを使わないユーザーからしてみれば、仮に統合が進んだとしても使う理由があまり見当たりません。MicrosoftやSlackユーザーが、わざわざGoogleへ乗り換えることはしないでしょう。

そこで待望されるのが、新たなサービスの追加です。Amazon Primeのように定額サブスクで料金はほとんど変更されることなく、新規サービスを投入してユーザーの期待値を超えていく戦略が必須となるのではないでしょうか。たとえば、つい先日買収したノンコーディング・アプリ開発サービス「AppSheet」の機能をSuiteに追加することで、企業の開発ニーズに応えていくことが想定されます。

企業向けツールはチャット・ミーティング・電話など、利用シーンが限られているため、サービスの特色が似てしまう傾向があります。そのため、いかに「Super Appサブスク企業」として顧客満足度を高め、競合からユーザーを引き抜くための新規サービス充実度を増すかが直近の展望となりそうです。

また日本でもSuper Appのトレンドはやってくると思われます。2C市場では「LINE」がすぐに思いつきますし、2B市場では「Chatwork」が該当するでしょうか。いずれにせよ、中国BATと米国GAFA勢がSuper App戦略に基づいて日本市場攻略に本格的に乗り出した際、どのように生き残るかは考えておいた方がよさそうです。これは大企業だけでなく、スタートアップにとっても同じことが言えるでしょう。

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a16zが考える4つのコンシューマテック・トレンド

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ピックアップ記事: Four Trends in Consumer Tech 米国著名VC「Andreessen Horowitz(a16z)」は1月23日、コンシューマテック市場4つのトレンドに関するブログ記事を発表している。本稿ではその内容を紹介しつつ、筆者の考えを整理してみたい。 1. Super App マーケットデータサービス「eMarketer」の調べによると、2019年にモバイル利用…

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ピックアップ記事: Four Trends in Consumer Tech

米国著名VC「Andreessen Horowitz(a16z)」は1月23日、コンシューマテック市場4つのトレンドに関するブログ記事を発表している。本稿ではその内容を紹介しつつ、筆者の考えを整理してみたい。

1. Super App

マーケットデータサービス「eMarketer」の調べによると、2019年にモバイル利用時間がTV視聴時間を初めて上回った。具体的にはモバイルが3時間35分である一方、TVは3時間43分。

モバイルシフトは長い間言われ続けており、そこまで不思議なことではない。ただ、注目すべきはその中身。利用時間のうち3時間近くがアプリに消費されており、残りの26分しかモバイルブラウザーに使われていない。加えて、新規アプリのダウンロード数の少なさが目立つ。平均的なユーザーの毎月の新規アプリダウンロード数は0であることも珍しいことではない。

誰もが自分好みのアプリを集中的に使い、新規アプリをダウンロードすることがなくなったのが現状であり、新陳代謝が全く行われていないのがモバイル市場とも言える。そこで登場するのがSuper App。

記事では中国のライフスタイルサービス「Meituan(美団)」を紹介している。2013年から同社は収益源の多角化を考え始めたという。手始めにホテル予約サービスができるボタンをアプリ上部に設置。今では中国の宿泊予約50%ほどのシェアを占めているとのこと。ちなみにホテル市場の競合「Ctrip」はシェアを22%にまで縮小させている。

Meituanは他にもエンタメやモビリティ系サービスを次々と立ち上げ。高頻度ながら利益率の低いサービスで顧客獲得を進めつつ、最終的には低頻度で利益率の高い事業へと送客する仕組みを確立した。顧客理解と幅広いデモグラフィック分布を武器に攻勢を強めている。こうしたサービスの一極集中モデルをSuper Appと呼ぶ。

中国では「WeChat」や「Alipay」、東南アジアには「Gojek」がSuper Appとして市場を確立。米国では「Uber」が同様の動きを見せている。記事ではアジアから欧州へとSuper Appのトレンドが来ていると紹介されている。

仮にユーザーに高頻度で使われるアプリを運営しているのならば、常に新しい収益源となるサービス立ち上げを勧めている。もしユーザーに頻繁に使われるサービスでないのであれば、大手企業が持たない付加価値や顧客データを基に提携を模索すべきとアドバイスしている。一例として「Spotify」を挙げている。同社はユーザーの音楽趣向データを保有。このデータを用いて、アーティストのツアー都市と、各都市での公演曲選定サポートに役立つだろうと指摘している。

2. Commerce

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モバイルユーザーの大半は、ビデオアプリ・コミュニケーションアプリ・ソーシャルメディアアプリなどのアプリに多くの時間を費やしている。これらのアプリは広告配信ツールとしては最適であり、購買チャネルとして主流となる可能性を秘めているという。

記事では短尺ライブストリーミング動画アプリの事例を紹介。農家が美味しそうに実っているみかんをスライスする動画から、直接みかんを購入し、取り寄せることができるEC機能が紹介されている。また、同じくその場でオンライン注文可能なロブスターを、漁師が捕まえる動画を紹介。

ユーザーの背景を汲み取りながら動画コンテンツを配信し、購買意欲を掻き立てる新たな小売チャネルがトレンドになりつつあると述べた。

3. Go Physical

中国では200以上の空港で顔認識機能を備えたキオスクが配置されている。各人がどのゲートに行くべきか、どのようにそこに到達するかを正確にキオスクを通じて伝えてくれる。また、学校の教室では顔認識を使った出欠機能も実装済。

米国でも同様の動きが見られるとのこと。デルタ航空はチェックインと搭乗のため、複数の国際空港で顔認識をテスト。72%の人は、以前の方法よりも顔認識技術を使った手法を好むと回答しているという。ニューヨークの一部の私立学校では、顔認識を使用して銃や、キャンパスにいるべきではない危険人物を選別している。また、英国では、中国企業「Tencent(腾讯)」と提携して、動画や映画、TV番組に広告情報をオーバーレイする2年間の広告に関する独占契約を結んでいる。

従来私たちが目にしてきたデバイスや場所に対し、新たな技術が実装されることで現実世界での生活のありかたが大きく変わろうとしている。

4. Earshare

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10年前は「モバイルファースト製品とはどのようなものか?」を考える時期であった。カメラとGPSが活用され始めたため、InstagramやLyftのような素晴らしい会社が登場した。ここにきて、オーディオ消費が爆発的に増加している。そこで 「オーディオファーストのコンテンツはどのようなものか?」を考える必要性が増していると記事では指摘。

たとえば、Andreessen Horowitzの投資先であるポッドキャスト企業「Knowable」が一つの答えを示している。同社は『スタートアップを立ち上げる方法』、『ポッドキャストを始める方法』、『自信を持って話す方法』、『よりよく眠る方法』など、さまざまなトピックに関する厳選されたオーディオコースを提供するポッドキャストプラットフォーム。

Knowableが他社ポッドキャスト企業より一歩進んでいる点は、「オーディオファースト + Super App」の思考を組み合わせている点。一例として『スタートアップを立ち上げる方法』のポッドキャストコースを購入したユーザーの事例を挙げている。このユーザーは高確率で起業することを検討している。そこでAWSと連携し、コース購入者に1,000ドルのAWSクレジットを提供しているという。他のコースでも提携企業を見つけ、特典を提供する戦略を採用。

Super Appの要素の組み合わせた戦略は強力に働き、先述した「必ずしも高頻度で使われるアプリでないのであれば、提携を模索すべきである」という質問への解となっている。

各企業はより多くのユーザーへリーチするためのチャネルを探している。そこで多くの提携先を見つけ、新たな収益化を図ろうと躍起になっている。そのため、誰もがSuper Appになるため、協力し合う時代が到来していると指摘する。顧客は誰で、コアサービスを支えるために他にどんなサービスが必要なのか、データ資産を活用して新しい収益源を作り出す必要がある。

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話題のポイント: 以上が発表された内容の紹介でした。ここからは簡単に筆者の考察を2点ほど述べていきたいと思います。

Super Appがもたらす新体験

あらゆるサービスを一社がパッケージとして提供するSuper App。昔から長く米国で使われているサービス「Craiglist」がSuper Appの最初の事例として数えられるかと思います。

ただ、同社はモバイル時代に一切対応できていません。また、Craiglistの抱える複数サービスの中から、特定分野の体験のみを圧倒的に向上させるスタートアップは多数登場したものの、全てを束ねてプラットフォーム化させられたライブサービス企業はあまり登場しませんでした。GAFAでさえ、それぞれに弱いサービス領域があり、完全なコンシューマサービス企業としては数えられない印象です。

一方、中国ではBATの台頭と共に、急速にトップ数社による全サービス領域の網羅およびユーザーの囲い込みが加速。立ち上げられていない領域を探す方が困難になってきていますし、スタートアップは太刀打ちできないほど各分野への参入攻勢は強力です。

このように、中国ではモバイル時代の流れに乗って水平統合型のサービスが登場しています。ウェブ時代からのシフトチェンジを求められてきた米国勢とは違い、時代に沿った形でいち早く市場を席巻してきました。ピックアップ記事にある通り、Super Appのトレンドは欧米へと渡り、世界中で特定企業の寡占状態を引き起こすキーワードとなると考えます。

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ここで注目すべきはSuper Appがもたらす新たなUXです。それはユーザーのしたいことを願うだけで、最短ルートで叶えてくれる「魔法のランプ」のような体験です。

Super App上では特定のサービス名は意味を成しません。同一アプリから特定サービスを探し・引き出す体験がベースにあるため、「何をしたいのか」というユーザーのニーズを言語化してアプリ上検索する体験が上位に来ます。Googleのようなサイトからサービス名を頼りに検索することは想定されていません。

現在はアプリからタイピングを通じて検索する体験が一般的。ただ、インプット手法は音声へと変わっていくでしょう。Google HomeやAmazon Alexaを使うように、何をしたいのかを声に出せばサービスを検索・引き出せる体験が次の主流になると考えます。

「モバイルファースト」から「オーディオ(ここではボイス)ファースト」の思考に沿ったSuper AppのUXが次に来ると感じています。Knowableが「オーディオ + Super App」で成長しているように、Super Appは音声体験を最大限に高めることでスマホの次にやってくる音声時代で活躍できるでしょう。

耳の覇権争い

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オーディオファーストを探すべきだとブログ記事では指摘されていましたが、そこまで音声市場に魅力があるのはなぜでしょうか。具体的には3つほど挙げられます。

1つはスマートスピーカーの普及。Amazon Echoシリーズが市場シェア約70%を占めている中、次のようなデータが公表されています。こちらの記事によると、全世代平均で週17時間ほどオーディオコンテンツを消費するとのこと。Podcastやラジオ、ストリーミング音楽などが該当します。なかでもスマートスピーカー所有者は、非所有者と比較してプライムアワー(8-10PM)に47%以上多くの時間をオーディオコンテンツに割いているそうです。

スマートスピーカーがプライムアワーに使われるシチュエーションを自宅リビングであると仮定すると、私たちがより多くオーディオコンテンツに増える機会は増えるでしょう。2019年6月時点で7,000万台のスマートスピーカーが流通していますが、次の3〜4年で1億台を数えるはずです。こうしたスピーカーによってリビングで消費するオーディオコンテンツ時間は比例して増えると想像できます。

2つ目は「観る」から「聴く」行動へ私たちの習慣が変わりつつある点です。これは先述したハードウェアによって提供されるオーディオ体験とは違い、習慣という最も力強い市場成長を支える要素となります。

読者の方で、スクリーンオフにした状態でYouTubeを聴き流した経験のある方はいないでしょうか?筆者はYouTubeの有料ユーザーなのですが、ざっと見積もって利用時間の7〜8割は聴き流しており、そのためにお金を支払っています。こうしたユーザーの新たな行動様式が自然と構築され、習慣化されることほど強力な市場要因はありません。

<参考記事>

実際、マーク・アンドリーセン氏も同じような点を指摘しています。同氏曰く、YouTubeの視聴者は職場で仕事をしながら動画コンテンツを「聴く習慣」ができていると語ります。1日8時間ほど労働時間があるとすると、週平均40時間ほどオーディオコンテンツの視聴時間が発生する計算です。これは前述した世代平均のオーディオコンテンツ消費時間17時間の6倍にも匹敵します。

3つ目は運転時間。米国では月間1.1億回の自動車通勤が発生。合計走行時間は25億時間にも及ぶといいいます。これから自動運転技術がさらなる発展を遂げ、完全自動運転化が実現すれば車内の運転時間がそのまま余暇時間として新たな市場に成り代わります。

そこでオーディオコンテンツは市場シェアの大半を占めると考えられます。というのも、動画視聴をしては仮に事故を起こした際に運転手が過失を取られることが予想され、非常にリスクの高いコンテンツになるためです。オーディオであれば視界を逸らさずにコンテンツ消費できます。

<参考記事>

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ここまで3つの市場成長背景を紹介してきました。筆者の予想ではさらに3つの側面から音声市場は開拓されていくと考えます。

1つはスマホ備え付けの音声アシスタント経由のサービス利用です。iPhone備え付けの「Siri」とAndroidの「Google」。アシスタントに今したいことを指示するだけで、希望するサービスを最後まで体験できる流れ。ロック画面を開くことなく完結する「魔法のランプ」的なUXからユーザー獲得できるチャンスが生まれるはずです。この点、スマホOSを寡占するAppleとGoogleには、音声時代のSuper Appの座をいち早く狙える理があります。

2点目は先述したSuper Appが提供する音声検索。依然としてアプリを開くステップを挟みますが、1つ目と同様に、スマホ時代に最適な音声体験としてユーザーに支持されるはずです。

3点目は移動時間や自宅で聴くポッドキャストの視聴時間や、運転時間に聴くオーディオコンテンツが挙げられます。まさにKnowableはどこでも聴ける高品質なオーディオコンテンツを提供することで、奇をてらうことのない自然なオーディオ体験を構築。一見、競合差別化のできていない体験から、Super Appのような多角的なサービス展開を狙っています。

最後に、ピックアップ記事で「Super App + オーディオ」の重要性が叫ばれたように、筆者も音声を軸にした新たな体験を軸に急成長する企業が登場すると感じています。音声市場はこれからより活気付くでしょうし、あらゆる企業が音声体験に注目するはずです。

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自滅系起業家を指す新ワード「苦業家」とは?

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ピックアップ記事: “No More ‘Struggle Porn” by Nat Eliaso 起業家は苦しい日々を長く過ごします。結果が出るまで数年単位の辛抱が必要です。根をあげたくなる時期もあるでしょう。ところが、最近ではこうした苦悩する日々に美徳を感じ、結果以上に苦しいプロダクト開発に憧れてしまう「苦業家」が登場しているようです。 苦業家を語るには、彼らの本質である特有のポルノ感覚を知る必…

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ピックアップ記事: “No More ‘Struggle Porn” by Nat Eliaso

起業家は苦しい日々を長く過ごします。結果が出るまで数年単位の辛抱が必要です。根をあげたくなる時期もあるでしょう。ところが、最近ではこうした苦悩する日々に美徳を感じ、結果以上に苦しいプロダクト開発に憧れてしまう「苦業家」が登場しているようです。

苦業家を語るには、彼らの本質である特有のポルノ感覚を知る必要があります。

「Struggle Porn」という言葉を知っているでしょうか。直訳すると「苦悩ポルノ」。最近、起業家精神を美化するための1つのプロパガンダ用語として使われているようです。

苦悩ポルノを意訳すると、ストレスで苦しんでいる自分の姿を好み、一生懸命やっている姿を評価軸に生きているスタイルです。具体的には、先行きのない物事に対して自分自身を強く駆り立て、世間一般から自分の身を犠牲にするほど一生懸命働くように急かされる要求に対し、必死に応えようとする強迫観念を指します。

最大の問題点は「苦悩していると感じているなら、自分は正しいことをしている」と思い込んでしまう点です。何か新しい挑戦をし続け、苦悩するのが美徳となっています。

そして苦悩ポルノを実現するために必要なものは「ハッスル」。お金を稼ぐよりも、自分の価値観に合った働き方はハッスルと呼ばれます。ハッスルは、生計を立てることを優先する働き方「ジョブ」と対比される用語となっています。

決してハッスルは悪いことではありません。自分の熱意を注げることに時間を費やし、趣味として楽しんでいたものに本気で挑戦して仕事にしていくプロセスは当たり前になってきました。今後、こうした働き方は普通になってくるでしょう。一生懸命に熱意の持てる領域に挑戦することは評価されるべきです。

ただ、苦悩ポルノの考えが入ると副作用が発生します。

苦悩ポルノの問題点

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ポルノに取り憑かれている人にとっての正常な状態とは、進歩に苦悩しているプロセスそのもの。数値指標などはあまり関係なく、プロセスに満足してしまっているため、終わりなく徒労な物事に取り組みます。終わりがなくなるのです。

失敗しているように感じることこそが進歩。自分自身が一生懸命働いていることを感じられていれば良いので、たとえば収益指標などを見る必要がなくなります。

個人でやる分には一切問題がありません。自由に趣味や小さな仕事へ多く取り組み、満足するまで勤しめばよいでしょう。しかし、資金調達をしたりして、責任が伴う起業家になると話が変わってきます。

苦悩ポルノに陥っている起業家は、数字が出ずに苦悩し続ける自分の姿に酔いしれて時間を過ごします。いざ次の資金調達が必要な場合は、苦悩したプロセスから見出した将来の成長性だけを語り投資家を説得します。ただ、スタートアップにとってはトラクションが出ているかが重要。最終的には下請け業務に徹する中小企業になるか、倒産してしまいます。

苦業家の登場

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このように、苦労しているから何かを成し遂げていると感じ、目標をいつまで経っても達成しきれない起業家を「Strugglepreneurs(Struggle + Entrepreneur)」と呼びます。日本語では「苦業家」とでも訳せるでしょう。

苦業家は「忙殺ポルノ」にも陥っている特徴を持ちます。「トラクションを得るのが難しい。それでは何か他のことを試してみる必要があるかもしれない」と考える代わりに、「これはまだうまくいっていないが、もし苦労し続ければ最終的にはうまくだろう」と考えてしまうのです。とにかく自分を忙しくしていれば、いずれは報われるだろうと考え、時間を費やしてしまうのです。忙殺ポルノは、苦悩ポルノを満足させる条件となります。

ピックアップ記事では、SNS系で活躍するビジネス系インフルエンサーが苦業家を大量生産しようとしている現象に警鐘を鳴らしています。「一生懸命働け、嫌いな仕事はいますぐ辞めろ、お前ならできる」と伝え、成果ではなく、苦悩するプロセスを美化するメッセージを発し続けるのです。

ここで留意すべきは、一生懸命働くことは決して悪いことではない点です。あくまでも記事では、明確なロードマップとマイルストーンの持つことなしに時間を過ごす危険性を指摘しています。自分が苦悩しながら働いていないことに罪悪感を持つ苦悩ポルノの感覚は2次的に持つべきだと語られています。どれだけ一生懸命働いているかは、起業家が作り出している価値や進歩の良い指標とはならないと述べています。

最終ステージ、「構ってちゃん症」

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快適さは起業家にとっては「死」に値し、平凡な状態は「悪」であるのが苦悩ポルノの世界の常識。恥ずかしなら筆者は、3年前まで起業していた時に同じ感覚を持っていました。正確には苦悩ポルノをよりこじらせた「構ってちゃん症」になっていたと、今になって思います。

結果がなかなか出ないことであったり、何か周りからそっと手助けが欲しい時、頑張っている姿をさりげなくみせて評価されたい「構ってちゃん症」に陥っていたと、最近になってようやく客観視できるようになりました。

それではどうすべきだったのか。自己分析をして2つほどアイデアが浮かんだので書き記します。

  • 先輩起業家から聞かされる苦悩自慢には耳を塞ぐ。起業家 = 苦悩と自分を思い込ませるべきではなかった
  • ざっくりでも悩みを相談できる相手を多く見つけることが先決。日頃から人に会い、いざとなったらヘルプを求められる当てを多く持っておくべきだった

起業イベントやブログ記事、Twitterを覗けば、先輩起業家の苦悩話がたくさん落ちています。こうした話は笑い話となり、起業家の通過儀礼のように語られます。全く生産性ではないにも関わらず、深夜まで仕事をしたり、悩んでいる姿をオフィスで見せられても周りの雰囲気が悪くなるだけでした。

また、お金がないとは言え、毎日1食だけで過ごしたり、オフィスで貰った残飯だけで過ごすような生活を自分に強いるべきではありませんでした。当時はほんとにお金がなかったため、そして給与を減らして会社を生かすための仕方ない選択とはいえ、やはり悪手でした。

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評価されるべきはプロダクトの成長指標のみ。

最後に、苦業家は自己満足で終わることが常です。特に私のように構ってちゃん症に取り憑かれると、永遠とやってくることのない他人からのヘルプを求め、結局自己完結の世界で自滅します。そして、苦業家はスタートアップにとっての自殺に通じます。全くもってカッコイイものではありませんし、評価されるものではありません。いかに周りを巻き込みつつ、通る必要のない苦悩を避けながら最短でプロダクトの成長にたどり着けるかが肝となります。

私はシリコンバレーで大きなチャンスをもらいながら、結局失敗しています。当たり前なことですし、恥ずかしい内容ですが、これから起業される方が同じ道を通らないように記しました。少しでも参考になると嬉しいです。

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