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Takashi Fuke

Takashi Fuke

海外ピックアップ/コラム記事を担当。AR/小売/ヘルスケア/不動産/フィンテック系を中心に2C向けサービスが好きです。Twitter : @takashifuke

執筆記事

a16zが考える4つのコンシューマテック・トレンド

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ピックアップ記事: Four Trends in Consumer Tech 米国著名VC「Andreessen Horowitz(a16z)」は1月23日、コンシューマテック市場4つのトレンドに関するブログ記事を発表している。本稿ではその内容を紹介しつつ、筆者の考えを整理してみたい。 1. Super App マーケットデータサービス「eMarketer」の調べによると、2019年にモバイル利用…

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ピックアップ記事: Four Trends in Consumer Tech

米国著名VC「Andreessen Horowitz(a16z)」は1月23日、コンシューマテック市場4つのトレンドに関するブログ記事を発表している。本稿ではその内容を紹介しつつ、筆者の考えを整理してみたい。

1. Super App

マーケットデータサービス「eMarketer」の調べによると、2019年にモバイル利用時間がTV視聴時間を初めて上回った。具体的にはモバイルが3時間35分である一方、TVは3時間43分。

モバイルシフトは長い間言われ続けており、そこまで不思議なことではない。ただ、注目すべきはその中身。利用時間のうち3時間近くがアプリに消費されており、残りの26分しかモバイルブラウザーに使われていない。加えて、新規アプリのダウンロード数の少なさが目立つ。平均的なユーザーの毎月の新規アプリダウンロード数は0であることも珍しいことではない。

誰もが自分好みのアプリを集中的に使い、新規アプリをダウンロードすることがなくなったのが現状であり、新陳代謝が全く行われていないのがモバイル市場とも言える。そこで登場するのがSuper App。

記事では中国のライフスタイルサービス「Meituan(美団)」を紹介している。2013年から同社は収益源の多角化を考え始めたという。手始めにホテル予約サービスができるボタンをアプリ上部に設置。今では中国の宿泊予約50%ほどのシェアを占めているとのこと。ちなみにホテル市場の競合「Ctrip」はシェアを22%にまで縮小させている。

Meituanは他にもエンタメやモビリティ系サービスを次々と立ち上げ。高頻度ながら利益率の低いサービスで顧客獲得を進めつつ、最終的には低頻度で利益率の高い事業へと送客する仕組みを確立した。顧客理解と幅広いデモグラフィック分布を武器に攻勢を強めている。こうしたサービスの一極集中モデルをSuper Appと呼ぶ。

中国では「WeChat」や「Alipay」、東南アジアには「Gojek」がSuper Appとして市場を確立。米国では「Uber」が同様の動きを見せている。記事ではアジアから欧州へとSuper Appのトレンドが来ていると紹介されている。

仮にユーザーに高頻度で使われるアプリを運営しているのならば、常に新しい収益源となるサービス立ち上げを勧めている。もしユーザーに頻繁に使われるサービスでないのであれば、大手企業が持たない付加価値や顧客データを基に提携を模索すべきとアドバイスしている。一例として「Spotify」を挙げている。同社はユーザーの音楽趣向データを保有。このデータを用いて、アーティストのツアー都市と、各都市での公演曲選定サポートに役立つだろうと指摘している。

2. Commerce

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モバイルユーザーの大半は、ビデオアプリ・コミュニケーションアプリ・ソーシャルメディアアプリなどのアプリに多くの時間を費やしている。これらのアプリは広告配信ツールとしては最適であり、購買チャネルとして主流となる可能性を秘めているという。

記事では短尺ライブストリーミング動画アプリの事例を紹介。農家が美味しそうに実っているみかんをスライスする動画から、直接みかんを購入し、取り寄せることができるEC機能が紹介されている。また、同じくその場でオンライン注文可能なロブスターを、漁師が捕まえる動画を紹介。

ユーザーの背景を汲み取りながら動画コンテンツを配信し、購買意欲を掻き立てる新たな小売チャネルがトレンドになりつつあると述べた。

3. Go Physical

中国では200以上の空港で顔認識機能を備えたキオスクが配置されている。各人がどのゲートに行くべきか、どのようにそこに到達するかを正確にキオスクを通じて伝えてくれる。また、学校の教室では顔認識を使った出欠機能も実装済。

米国でも同様の動きが見られるとのこと。デルタ航空はチェックインと搭乗のため、複数の国際空港で顔認識をテスト。72%の人は、以前の方法よりも顔認識技術を使った手法を好むと回答しているという。ニューヨークの一部の私立学校では、顔認識を使用して銃や、キャンパスにいるべきではない危険人物を選別している。また、英国では、中国企業「Tencent(腾讯)」と提携して、動画や映画、TV番組に広告情報をオーバーレイする2年間の広告に関する独占契約を結んでいる。

従来私たちが目にしてきたデバイスや場所に対し、新たな技術が実装されることで現実世界での生活のありかたが大きく変わろうとしている。

4. Earshare

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10年前は「モバイルファースト製品とはどのようなものか?」を考える時期であった。カメラとGPSが活用され始めたため、InstagramやLyftのような素晴らしい会社が登場した。ここにきて、オーディオ消費が爆発的に増加している。そこで 「オーディオファーストのコンテンツはどのようなものか?」を考える必要性が増していると記事では指摘。

たとえば、Andreessen Horowitzの投資先であるポッドキャスト企業「Knowable」が一つの答えを示している。同社は『スタートアップを立ち上げる方法』、『ポッドキャストを始める方法』、『自信を持って話す方法』、『よりよく眠る方法』など、さまざまなトピックに関する厳選されたオーディオコースを提供するポッドキャストプラットフォーム。

Knowableが他社ポッドキャスト企業より一歩進んでいる点は、「オーディオファースト + Super App」の思考を組み合わせている点。一例として『スタートアップを立ち上げる方法』のポッドキャストコースを購入したユーザーの事例を挙げている。このユーザーは高確率で起業することを検討している。そこでAWSと連携し、コース購入者に1,000ドルのAWSクレジットを提供しているという。他のコースでも提携企業を見つけ、特典を提供する戦略を採用。

Super Appの要素の組み合わせた戦略は強力に働き、先述した「必ずしも高頻度で使われるアプリでないのであれば、提携を模索すべきである」という質問への解となっている。

各企業はより多くのユーザーへリーチするためのチャネルを探している。そこで多くの提携先を見つけ、新たな収益化を図ろうと躍起になっている。そのため、誰もがSuper Appになるため、協力し合う時代が到来していると指摘する。顧客は誰で、コアサービスを支えるために他にどんなサービスが必要なのか、データ資産を活用して新しい収益源を作り出す必要がある。

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話題のポイント: 以上が発表された内容の紹介でした。ここからは簡単に筆者の考察を2点ほど述べていきたいと思います。

Super Appがもたらす新体験

あらゆるサービスを一社がパッケージとして提供するSuper App。昔から長く米国で使われているサービス「Craiglist」がSuper Appの最初の事例として数えられるかと思います。

ただ、同社はモバイル時代に一切対応できていません。また、Craiglistの抱える複数サービスの中から、特定分野の体験のみを圧倒的に向上させるスタートアップは多数登場したものの、全てを束ねてプラットフォーム化させられたライブサービス企業はあまり登場しませんでした。GAFAでさえ、それぞれに弱いサービス領域があり、完全なコンシューマサービス企業としては数えられない印象です。

一方、中国ではBATの台頭と共に、急速にトップ数社による全サービス領域の網羅およびユーザーの囲い込みが加速。立ち上げられていない領域を探す方が困難になってきていますし、スタートアップは太刀打ちできないほど各分野への参入攻勢は強力です。

このように、中国ではモバイル時代の流れに乗って垂直統合型のサービスが登場しています。ウェブ時代からのシフトチェンジを求められてきた米国勢とは違い、時代に沿った形でいち早く市場を席巻してきました。ピックアップ記事にある通り、Super Appのトレンドは欧米へと渡り、世界中で特定企業の寡占状態を引き起こすキーワードとなると考えます。

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ここで注目すべきはSuper Appがもたらす新たなUXです。それはユーザーのしたいことを願うだけで、最短ルートで叶えてくれる「魔法のランプ」のような体験です。

Super App上では特定のサービス名は意味を成しません。同一アプリから特定サービスを探し・引き出す体験がベースにあるため、「何をしたいのか」というユーザーのニーズを言語化してアプリ上検索する体験が上位に来ます。Googleのようなサイトからサービス名を頼りに検索することは想定されていません。

現在はアプリからタイピングを通じて検索する体験が一般的。ただ、インプット手法は音声へと変わっていくでしょう。Google HomeやAmazon Alexaを使うように、何をしたいのかを声に出せばサービスを検索・引き出せる体験が次の主流になると考えます。

「モバイルファースト」から「オーディオ(ここではボイス)ファースト」の思考に沿ったSuper AppのUXが次に来ると感じています。Knowableが「オーディオ + Super App」で成長しているように、Super Appは音声体験を最大限に高めることでスマホの次にやってくる音声時代で活躍できるでしょう。

耳の覇権争い

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オーディオファーストを探すべきだとブログ記事では指摘されていましたが、そこまで音声市場に魅力があるのはなぜでしょうか。具体的には3つほど挙げられます。

1つはスマートスピーカーの普及。Amazon Echoシリーズが市場シェア約70%を占めている中、次のようなデータが公表されています。こちらの記事によると、全世代平均で週17時間ほどオーディオコンテンツを消費するとのこと。Podcastやラジオ、ストリーミング音楽などが該当します。なかでもスマートスピーカー所有者は、非所有者と比較してプライムアワー(8-10PM)に47%以上多くの時間をオーディオコンテンツに割いているそうです。

スマートスピーカーがプライムアワーに使われるシチュエーションを自宅リビングであると仮定すると、私たちがより多くオーディオコンテンツに増える機会は増えるでしょう。2019年6月時点で7,000万台のスマートスピーカーが流通していますが、次の3〜4年で1億台を数えるはずです。こうしたスピーカーによってリビングで消費するオーディオコンテンツ時間は比例して増えると想像できます。

2つ目は「観る」から「聴く」行動へ私たちの習慣が変わりつつある点です。これは先述したハードウェアによって提供されるオーディオ体験とは違い、習慣という最も力強い市場成長を支える要素となります。

読者の方で、スクリーンオフにした状態でYouTubeを聴き流した経験のある方はいないでしょうか?筆者はYouTubeの有料ユーザーなのですが、ざっと見積もって利用時間の7〜8割は聴き流しており、そのためにお金を支払っています。こうしたユーザーの新たな行動様式が自然と構築され、習慣化されることほど強力な市場要因はありません。

<参考記事>

実際、マーク・アンドリーセン氏も同じような点を指摘しています。同氏曰く、YouTubeの視聴者は職場で仕事をしながら動画コンテンツを「聴く習慣」ができていると語ります。1日8時間ほど労働時間があるとすると、週平均40時間ほどオーディオコンテンツの視聴時間が発生する計算です。これは前述した世代平均のオーディオコンテンツ消費時間17時間の6倍にも匹敵します。

3つ目は運転時間。米国では月間1.1億回の自動車通勤が発生。合計走行時間は25億時間にも及ぶといいいます。これから自動運転技術がさらなる発展を遂げ、完全自動運転化が実現すれば車内の運転時間がそのまま余暇時間として新たな市場に成り代わります。

そこでオーディオコンテンツは市場シェアの大半を占めると考えられます。というのも、動画視聴をしては仮に事故を起こした際に運転手が過失を取られることが予想され、非常にリスクの高いコンテンツになるためです。オーディオであれば視界を逸らさずにコンテンツ消費できます。

<参考記事>

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ここまで3つの市場成長背景を紹介してきました。筆者の予想ではさらに3つの側面から音声市場は開拓されていくと考えます。

1つはスマホ備え付けの音声アシスタント経由のサービス利用です。iPhone備え付けの「Siri」とAndroidの「Google」。アシスタントに今したいことを指示するだけで、希望するサービスを最後まで体験できる流れ。ロック画面を開くことなく完結する「魔法のランプ」的なUXからユーザー獲得できるチャンスが生まれるはずです。この点、スマホOSを寡占するAppleとGoogleには、音声時代のSuper Appの座をいち早く狙える理があります。

2点目は先述したSuper Appが提供する音声検索。依然としてアプリを開くステップを挟みますが、1つ目と同様に、スマホ時代に最適な音声体験としてユーザーに支持されるはずです。

3点目は移動時間や自宅で聴くポッドキャストの視聴時間や、運転時間に聴くオーディオコンテンツが挙げられます。まさにKnowableはどこでも聴ける高品質なオーディオコンテンツを提供することで、奇をてらうことのない自然なオーディオ体験を構築。一見、競合差別化のできていない体験から、Super Appのような多角的なサービス展開を狙っています。

最後に、ピックアップ記事で「Super App + オーディオ」の重要性が叫ばれたように、筆者も音声を軸にした新たな体験を軸に急成長する企業が登場すると感じています。音声市場はこれからより活気付くでしょうし、あらゆる企業が音声体験に注目するはずです。

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自滅系起業家を指す新ワード「苦業家」とは?

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ピックアップ記事: “No More ‘Struggle Porn” by Nat Eliaso 起業家は苦しい日々を長く過ごします。結果が出るまで数年単位の辛抱が必要です。根をあげたくなる時期もあるでしょう。ところが、最近ではこうした苦悩する日々に美徳を感じ、結果以上に苦しいプロダクト開発に憧れてしまう「苦業家」が登場しているようです。 苦業家を語るには、彼らの本質である特有のポルノ感覚を知る必…

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ピックアップ記事: “No More ‘Struggle Porn” by Nat Eliaso

起業家は苦しい日々を長く過ごします。結果が出るまで数年単位の辛抱が必要です。根をあげたくなる時期もあるでしょう。ところが、最近ではこうした苦悩する日々に美徳を感じ、結果以上に苦しいプロダクト開発に憧れてしまう「苦業家」が登場しているようです。

苦業家を語るには、彼らの本質である特有のポルノ感覚を知る必要があります。

「Struggle Porn」という言葉を知っているでしょうか。直訳すると「苦悩ポルノ」。最近、起業家精神を美化するための1つのプロパガンダ用語として使われているようです。

苦悩ポルノを意訳すると、ストレスで苦しんでいる自分の姿を好み、一生懸命やっている姿を評価軸に生きているスタイルです。具体的には、先行きのない物事に対して自分自身を強く駆り立て、世間一般から自分の身を犠牲にするほど一生懸命働くように急かされる要求に対し、必死に応えようとする強迫観念を指します。

最大の問題点は「苦悩していると感じているなら、自分は正しいことをしている」と思い込んでしまう点です。何か新しい挑戦をし続け、苦悩するのが美徳となっています。

そして苦悩ポルノを実現するために必要なものは「ハッスル」。お金を稼ぐよりも、自分の価値観に合った働き方はハッスルと呼ばれます。ハッスルは、生計を立てることを優先する働き方「ジョブ」と対比される用語となっています。

決してハッスルは悪いことではありません。自分の熱意を注げることに時間を費やし、趣味として楽しんでいたものに本気で挑戦して仕事にしていくプロセスは当たり前になってきました。今後、こうした働き方は普通になってくるでしょう。一生懸命に熱意の持てる領域に挑戦することは評価されるべきです。

ただ、苦悩ポルノの考えが入ると副作用が発生します。

苦悩ポルノの問題点

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ポルノに取り憑かれている人にとっての正常な状態とは、進歩に苦悩しているプロセスそのもの。数値指標などはあまり関係なく、プロセスに満足してしまっているため、終わりなく徒労な物事に取り組みます。終わりがなくなるのです。

失敗しているように感じることこそが進歩。自分自身が一生懸命働いていることを感じられていれば良いので、たとえば収益指標などを見る必要がなくなります。

個人でやる分には一切問題がありません。自由に趣味や小さな仕事へ多く取り組み、満足するまで勤しめばよいでしょう。しかし、資金調達をしたりして、責任が伴う起業家になると話が変わってきます。

苦悩ポルノに陥っている起業家は、数字が出ずに苦悩し続ける自分の姿に酔いしれて時間を過ごします。いざ次の資金調達が必要な場合は、苦悩したプロセスから見出した将来の成長性だけを語り投資家を説得します。ただ、スタートアップにとってはトラクションが出ているかが重要。最終的には下請け業務に徹する中小企業になるか、倒産してしまいます。

苦業家の登場

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このように、苦労しているから何かを成し遂げていると感じ、目標をいつまで経っても達成しきれない起業家を「Strugglepreneurs(Struggle + Entrepreneur)」と呼びます。日本語では「苦業家」とでも訳せるでしょう。

苦業家は「忙殺ポルノ」にも陥っている特徴を持ちます。「トラクションを得るのが難しい。それでは何か他のことを試してみる必要があるかもしれない」と考える代わりに、「これはまだうまくいっていないが、もし苦労し続ければ最終的にはうまくだろう」と考えてしまうのです。とにかく自分を忙しくしていれば、いずれは報われるだろうと考え、時間を費やしてしまうのです。忙殺ポルノは、苦悩ポルノを満足させる条件となります。

ピックアップ記事では、SNS系で活躍するビジネス系インフルエンサーが苦業家を大量生産しようとしている現象に警鐘を鳴らしています。「一生懸命働け、嫌いな仕事はいますぐ辞めろ、お前ならできる」と伝え、成果ではなく、苦悩するプロセスを美化するメッセージを発し続けるのです。

ここで留意すべきは、一生懸命働くことは決して悪いことではない点です。あくまでも記事では、明確なロードマップとマイルストーンの持つことなしに時間を過ごす危険性を指摘しています。自分が苦悩しながら働いていないことに罪悪感を持つ苦悩ポルノの感覚は2次的に持つべきだと語られています。どれだけ一生懸命働いているかは、起業家が作り出している価値や進歩の良い指標とはならないと述べています。

最終ステージ、「構ってちゃん症」

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快適さは起業家にとっては「死」に値し、平凡な状態は「悪」であるのが苦悩ポルノの世界の常識。恥ずかしなら筆者は、3年前まで起業していた時に同じ感覚を持っていました。正確には苦悩ポルノをよりこじらせた「構ってちゃん症」になっていたと、今になって思います。

結果がなかなか出ないことであったり、何か周りからそっと手助けが欲しい時、頑張っている姿をさりげなくみせて評価されたい「構ってちゃん症」に陥っていたと、最近になってようやく客観視できるようになりました。

それではどうすべきだったのか。自己分析をして2つほどアイデアが浮かんだので書き記します。

  • 先輩起業家から聞かされる苦悩自慢には耳を塞ぐ。起業家 = 苦悩と自分を思い込ませるべきではなかった
  • ざっくりでも悩みを相談できる相手を多く見つけることが先決。日頃から人に会い、いざとなったらヘルプを求められる当てを多く持っておくべきだった

起業イベントやブログ記事、Twitterを覗けば、先輩起業家の苦悩話がたくさん落ちています。こうした話は笑い話となり、起業家の通過儀礼のように語られます。全く生産性ではないにも関わらず、深夜まで仕事をしたり、悩んでいる姿をオフィスで見せられても周りの雰囲気が悪くなるだけでした。

また、お金がないとは言え、毎日1食だけで過ごしたり、オフィスで貰った残飯だけで過ごすような生活を自分に強いるべきではありませんでした。当時はほんとにお金がなかったため、そして給与を減らして会社を生かすための仕方ない選択とはいえ、やはり悪手でした。

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評価されるべきはプロダクトの成長指標のみ。

最後に、苦業家は自己満足で終わることが常です。特に私のように構ってちゃん症に取り憑かれると、永遠とやってくることのない他人からのヘルプを求め、結局自己完結の世界で自滅します。そして、苦業家はスタートアップにとっての自殺に通じます。全くもってカッコイイものではありませんし、評価されるものではありません。いかに周りを巻き込みつつ、通る必要のない苦悩を避けながら最短でプロダクトの成長にたどり着けるかが肝となります。

私はシリコンバレーで大きなチャンスをもらいながら、結局失敗しています。当たり前なことですし、恥ずかしい内容ですが、これから起業される方が同じ道を通らないように記しました。少しでも参考になると嬉しいです。

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次の起業トレンド「Superhuman for X」を知っているか?ーー領域特化の“フェラーリ”を作れ

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ピックアップ記事: The “Superhuman of X” “メール版フェラーリ”とも界隈で称される「Superhuman」をご存知でしょうか。2014年にサンフランシスコで創業し、累計調達額は3,300万ドルに上ります。現在シリーズBラウンド。 Superhumanのコンセプトは「あらゆるアクションを0.1秒以内に達成させる」。圧倒的なスピード感とサクサク感を持たせる…

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Image Credit: Superhuman

ピックアップ記事: The “Superhuman of X”

“メール版フェラーリ”とも界隈で称される「Superhuman」をご存知でしょうか。2014年にサンフランシスコで創業し、累計調達額は3,300万ドルに上ります。現在シリーズBラウンド。

Superhumanのコンセプトは「あらゆるアクションを0.1秒以内に達成させる」。圧倒的なスピード感とサクサク感を持たせることから“メール版フェラーリ”の愛称が付いています。

誰もが使うGmailの体験を超えることは至難といえます。しかしSuperhumanは強気の価格設定・ターゲティング・圧倒的に優れたサービス設計で、新たなメール体験を実現させています。同社は月額30ドルで次世代メールプラットフォームを提供。ターゲットユーザーは3時間/日以上メールを利用しているヘビーユーザーのみ。サービス利用は招待制。

豊富なショートカットが用意されており、ユーザーはほぼ全てを駆使するように教育されます。具体的には3つのサービス学習手法が用意されます。1つはオンボーディングプロセス(詳細は後述)。2つ目は「Super human Command」と呼ばれるポップアップ画面を呼び出せば、すぐさま該当ショートカットを検索できる導線を用意。

最後は、各アクションをクリックベースで起こす際、毎回ショートカットコマンドを表示して教える。たとえば、メールを捨てるためにゴミ箱ボタンをクリックしようとすると、「Cmd + Shift + ,」ショートカットがポップアップ表示されます。

“プロシューマー”を狙え

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Image Credit: Superhuman

著名VCであるAndreessen Horowitzが参加している点や、10万人以上がウェイトリスト入りしている市場需要から、確実にGmailの体験を超える突破ポイントを掴んでいるといえるでしょう。サービス体験は価格を裏切らないものと呼べそうです。

ただ、ショートカットを全て覚えるにはユーザー側に多大な学習コストを必要とします。しかしコストを受け入れて積極的に使うユーザー層が確実に存在しています。そこでキーワードになるのが“Prosumerization of the enterprise”です。

Prosumerizationを意訳すると「プロ消費者化」。Gmailに代表されるコンシューマ向けのツールを使い倒し、仕事をものすごい早いスピードでこなせるプロの仕事人になることを指します。また、“Producer”と“Consumer”を組み合わせた用語でもあります。「生産消費者」と訳され、生産と消費を同時にこなす新たな消費者を意味します。今回の場合、先方から送られてくるメールコンテンツを消費(読み)しながら、生産的に対応(返信)する人を指します。

Superhumanでは一見ユーザーコストが高いように思えますが、そもそもプロ消費者を当初からターゲットにしているため、学習コストに嫌気を感じる一般ユーザーは対象外。そのため、30ドルの高価格設定と招待制度は、プロ消費者だけに利用してもらいたいユーザー獲得戦略に紐づいています。具体的には下記4つを戦略的に実現させています。

  • 本当に価値を感じてくれるビジネスインフルエンサーに特化することでサービスの高級感を演出
  • 強気の価格設定で収益性を当初から実現
  • ターゲットユーザーであるプロ消費者だけを囲うことでサービス体験を高品質に常に保つ
  • プロ消費者は利用頻度が著しく高いため、フィードバックループを完成させてサービス改善フローを構築

プロ消費者向けのサービスを作り上げるだけで、一石二鳥では終わらず、上記のように一石四鳥の戦略を打ち出せます。

今後、Gmail以外にも“Prosumerization of the enterprise”のトレンドは到来するはずです。ExcelやWordで発生するタスクを、圧倒的なスピードとサクサク感でこなせるサービスはまさにそれらのターゲットとなりえます。

実際、すでにファイナンシャル業界で「OpenFin」と呼ばれる金融市場特化の新たなOSが誕生しているように、単体サービスではなく、ハードウェアの体験を丸ごと変えてしまうサービスも登場するかもしれません。

このように、プロ消費者意識がエンタープライズ領域で起きているトレンドが発生しているのです。従来、2C向けに広く展開されていたサービスを、企業向けに再発明するトレンドとも言えます。Superhumanは圧倒的なスピード感をメールサービスに持たせることで、“Prosumerization of the enterprise”を実現しました。

ちなみに“Prosumerization of the enterprise”は、本メディアでも最近頻繁に触れてきたパッションエコノミー文脈で登場した用語「マイクロ起業家」を英語で表す“Enterprization of cousumers”と並列して語られることも多いフレーズです。次の数年は、この2つのフレーズに注目が集まることは必至でしょう。

2つのフレーズを詳細な説明で比較したいと思われる方は、筆者も好んで聴いているスタートアップ情報を発信するポッドキャスト「Off Topic」のエピソード21を聴くと理解が非常に深まります。

Superhumanの作り方

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Image Credit: Superhuman

ここからは「So you’re building a “Superhuman of X”?」の記事一部の抄訳を織り交ぜながら、Superhumanのプロダクト開発戦略を時系列に紹介していきたいと思います。大きく6つの段階に分かれます。

第一フェーズ: Superhumanの始まりはユーザー候補300名へのヒアリング。解決策を聞くのではなく、どんなことに問題意識を持っているのかを傾聴して理解する「ママテスト」と呼ばれる手法でヒアリングを進めていったそうです。

第二フェーズ: 次にユーザー課題を小さなタスクへと分解をして取り組みます。複数タスクの解決に向けて一斉に取り掛かり、大きなプロダクトを作ろうとすると、往往にしてスタートアップは負けてしまうため、小さくスタート。また、取り組む課題を選定するためには、製品の優先順位付けが大切になります。Superhumanの場合、改めてユーザーヒアリングを実施することで解決したようです。ここで大切にしたのが下記の3点。

  • 本質を付いた正しい質問をすること
  • 得られた「ファクト」をセグメント分けして「インサイト」へと昇華
  • インサイトを基に、ユーザーがすでにヘビー利用しているサービスの理解と、同サービスに対して課題に感じている点の解決に自分の時間を50:50で使う

Superhumanは300名のユーザー候補が日常的に使うGmailに目をつけ、3時間以上使っているヘビーユーザーの課題を選出。毎回のメール処理における時間コスト解決に注力することを決めたことがわかります。

第三フェーズ: 次の段階では、具体的に数値に落とし込めるサービスゴールを設定します。大好きなゲームでラスボス設定をするのと同じ感覚です。Superhumanでは次のようにゲーム設定をしています。

  • ラスボス討伐: 受信ボックスの未読メール数を0にする
  • プレイヤー: ユーザー
  • ゲームルール: 必ずオンボーディングを受ける
  • コントローラー: キーボードとショートカット

興味深いのはどんなゲームでも操作方法をチュートリアルで教わるように、オンボーディングセッションを設定している点です。

ユーザーはサービスの利用価値を見出せなければ、すぐに解約してしまいます。30ドルも支払っていればなおさらです。そこで、登録ユーザーは1on1でのオンボーディングプロセスが課せられます。

一見、スケールのしない手法に見えます。ただ、通常のカスタマーサクセス部隊を編成し、長期的にサポートするより短時間にユーザーにサービス理解を促せるため、最終的に低コストで収まり、顧客満足度を最大化できるのだそうです。Superhumanの高い継続率と低い解約率の裏側には、オンボーディングで初見ユーザーをプロコンシュマーへと変えてしまう魔法のステップが用意されているわけです。

おそらく、オンボーディングの有無で大きく解約率が変化する「マジックナンバー」をSuperhuman側は掴んでいるはず。ゆえに時間を惜しんでまで、ユーザーに仕事を早く終わらせる方法を最初の時点で押していると思われます。

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Image Credit: Superhuman

第四フェーズ: さて、ラスボスを討伐させるまでのベースはできました。次に行うのは理想的な利用フローです。受信ボックスを0にするための諸条件や選択肢を洗い出していきます。

たとえば、未読ボタンを押さない(返信を後回しにしない)、リマインダーを使いこなす、スケジュール送信を積極的に使うなどが挙げられます。Gmailで本来行われるべきベストプラクティスを日常的に実行できるツールであろうとし続けたのがSuperhumanです。この点は、上述した「ユーザーがすでにヘビー利用しているサービスの理解」に由来するでしょう。

第五フェーズ: 最低限機能する製品「MVP」は第四フェーズまででなんとか完成。次に考えるべきはバイラル性です。Superhumanは非常に巧みなバイラル戦略を敷いています。具体的には3つ。

  • 「受信ボックス 未読メール数0」を押すとTwitterシェアする感想共有導線を確保
  • メール署名欄にSuperhumanへ飛ぶリンクを用意して招待を拡散
  • ウェイティングリストに友人が載っていた場合、ユーザーが直接優先的にサービス利用を促せるアプリ内リファラル戦略採用

ユーザーの最終目的である未読0に、感想をシェアする導線を置いたは巧みな考えであると言えます。ユーザーのモチベーションが最高潮に達する際、シェアが増えるのには納得がいきます。事実、SuperhumanのTwitterアカウントには2万人以上のフォロワーがついています。比較的地味なサービス領域である点を考慮すれば、非常にアクティブな場を形成しています。他の点に関しても、過去の大手メールサービスのバイラル戦略や、日本のMixiが採用していた招待戦略に見られる考えを忠実に踏襲しているように思えます。

第六フェーズ: 製品開発の最後は収益化です。Superhumanではヒアリング直後の、ざっくりとした製品像が浮かび上がってきた時点からユーザー候補にサービスへの支払い意思があるのかを勇気を持って何度も聞いていたそうです。

加えて、従来のサブスクリプションサービスが提供するような段階的な価格設定はしていません。フリーサイズ的に誰もに使われる有料サービスではなく、あくまでも特定ユーザーのニーズを満たせるのか否かだけに集中するための収益戦略を採用しています。

記事では「最強の商品開発」をSuperhumanの創業者は必ずや読んでいるに違いないとしており、詳しい内容を理解するために一読することをお勧めします。また、FirstRoundCapitalの「It’s Price Before Product」の動画もお勧めしていました。

Superhuman for Xとは?

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最後に本題の「Superhuman for X」について紹介します。Superhumanのサービス形態を様々な領域で応用・再現する考えを指します。ピックアップ記事ではSuperhuma系サービスの要素を次のようにまとめています。

  • スピード重視の設計
  • 特定ユースケース・ユーザーの課題解決に注力したサービス
  • ユーザー意見を十分に反映させたエクスペリエンス製品
  • 美しく、考え抜かれたデザイン
  • 従来の大手サービスを現代風に再発明
  • 高品質な有料サービス vs 一般の無料サービスの構図を作る
  • 秀逸なオンボーディングやバイラル戦略で差をつける

続けて、もしSuperhuman for Xの起業アイデアを探している場合に検討すべき評価項目を一覧化しています。

  • 現在広く利用されているサービス・ワークフローにおいて、効率的でない部分や、特定ユースケースに偏りすぎている点はどこか?
  • このワークフローにとってスピードはどれほど重要か?
  • このワークフローはどのくらいの頻度で実行されるのか?
  • このワークフローに対して、ユーザーは1日あたり何時間費やすのか?
  • 新製品を通じてどのような新しいワークフローを作成できるのか?
  • ユーザーが無料の類似サービスに慣れていた場合、支払意思額はどの程度か?そもそも意思は存在するのか?
  • あなたのアイデアが跳ねるきっかけをニッチ市場のなかでどのように作るのか?

Superhumanはスピード改善を最重視したプロダクトです。ただ、1on1オンボーディングを設定しているため、ユーザーの学習コストが多く関わる製品でもあります。直感的にサービス利用方法を理解できる方が良いとする2C向けサービスとは対峙するサービス導入手法でしょう。

それでも利用しようとする人が多く列をなしているのはなぜでしょうか。答えは「ツール時間 > タスク時間」の式で表せます。サービスの使い方を理解する時間を取るほど、タスク完了時間は圧倒的に短くなるのです。

Superhumanの場合、最初に独特のショートカットの使い方や機能を全て頭に叩き込むことで、生産性が圧倒的に上がります。後々に獲得できるメリットが圧倒的に大きいのです。こうした体験を数字で表現した頂点が「未読メール0」なのです。

一方、たとえば2C向けアプリでいくら直感的にアプリの使い方がわかったとしても、生産性が上がることはありません。この点、「直感的にサービス利用方法を理解できる方が良い」といった批判が2Cサービスから出てきたとしても、比較対象違いであることが指摘できます。

もちろん、サービス理解の時間は短ければ良いのかもしれません。ただ、最終的に生産性向上に繋がらなければサービスとしての提供価値軸が変わってくるため、そもそもエンタメやSNSアプリなどに代表される2Cサービスと、サービス導入時間に関する比較はお門違いとなります。生産性を追求するビジネスでのユースケースを狙う“Prosumerization of the enterprise”の所以はここから来ていると言えます。

このように、Superhuman for Xを開発するには生産性をハックする独特のマインドが必要となります。エンタメ系2Cサービスとは全く違った哲学が必要です。

2020年、普段利用する生産性ツールは、本来備わっている機能をほぼ100%駆使し、体験性を最大化できているのでしょうか。もしできていないのであれば、そこには大きなビジネスチャンスが眠っているはずです。今後数年、あらゆるビジネスシーンでこうしたチャンスに着目できたスタートアップに急成長の機会が巡ってくるでしょう。

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ローカル掲示板「ジモティー」が東証マザーズ上場へ

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地元情報が集まる掲示板サービス「ジモティー」は12月26日、東京証券取引所への新規上場申請を実施し承認されたことを発表した。市場区分はマザーズで証券コードは7080。5万株を公募し、122万700株を売り出す。なお、オーバーアロットメントは19万600株。主幹事は大和証券が務め、上場予定日は2020年2月7日。公募分を含めた総株数は564万1365株。想定公募価格の960円から算出した評価額は約5…

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Image Credit: ジモティー

地元情報が集まる掲示板サービス「ジモティー」は12月26日、東京証券取引所への新規上場申請を実施し承認されたことを発表した。市場区分はマザーズで証券コードは7080。5万株を公募し、122万700株を売り出す。なお、オーバーアロットメントは19万600株。主幹事は大和証券が務め、上場予定日は2020年2月7日。公募分を含めた総株数は564万1365株。想定公募価格の960円から算出した評価額は約54億円。

価格の仮条件は2020年1月22日に決定し、ブックビルディング期間は1月23日から1月29日を通して実施される。最終的な公開価格決定日は1月30日。同社公開の有価証券届出書によれば、2018年12月決算の第8期の売上高は9億8364万円で経常利益は706万円。第9期第3四半期累計期間の売上は9億3589万円、経常利益は1億5225万円であった。

ジモティーは、地元で情報を探す人と情報を発信したい人をマッチングさせるプラットフォームを運営する。同サービスは、地域や目的によって分類された募集広告を一覧形式で掲載する広告媒体「クラシファイドサイト」の業態を採用。第9期第3四半期のクラシファイド運営事業の販売高は9億3589万円であった。

主要な株主はオプトホールディングが30.68%、NTTドコモが16.22%、Infinity Venturesが関連ファンド合わせて14.23%、プロトコーポレーションが10.71%、環境エネルギー投資が関連ファンド合わせて9.51%、代表取締役の加藤貴博氏が8.71%、LIFULL  が4.29%、ジャパンベストレスキューシステムが2.14%、西武しんきんキャピタルがそれに続く。

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Facebookがライブコマースへ本腰、しかし中国市場には未だ巨大市場が眠る

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ピックアップ: Facebook Acquired a Startup to Build a Live Shopping Feature ニュースサマリー: Facebookは2019年12月20日、同社フリマサービス「Marketplace」内でライブ動画ショッピング機能を実装するため、2017年にシリコンバレーで創業した「Packagd」を買収していたらしい。関係者筋の話としてBloomber…

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ピックアップ: Facebook Acquired a Startup to Build a Live Shopping Feature

ニュースサマリー: Facebookは2019年12月20日、同社フリマサービス「Marketplace」内でライブ動画ショッピング機能を実装するため、2017年にシリコンバレーで創業した「Packagd」を買収していたらしい。関係者筋の話としてBloombergが報じたもので、買収時期は2019年初頭。

PackagdはYouTube動画向けのショッピング機能を開発していた。次世代の24時間テレビショッピングネットワークの構築を目指していた。同社チームの大半は、9月にはFacebookチームに参画していたという。今後どのようなサービス設計になるかは明らかにされていないが、ユーザーがライブ動画を見ながら買い物を楽しめるものになるとのこと。

Facebookは2018年、タイでライブコマース機能を試験投入していることから、本買収を通じて米国市場で類似機能を再現するとされている。

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話題のポイント: ライブコマースは中国市場で爆発的に普及しています。独身の日セールでは、Alibaba(阿里巴巴)やTencent(騰訊)傘下のEコマースサービスで28億ドル規模のライブコマース経由の購買が行われています。一方、米国市場では中国ほどの売上を上げている印象はありません。たとえば、今では米国世帯の半数がPrime会員に加入しているとはいえ、Amazon Prime Dayにライブコマースが売上を伸ばしているといった話は聞きません。

そこで登場するのがFacebook。従来、Marketplaceはローカル特化のフリマとして成立していましたが、もしライブコマース機能が実装されれば、国が離れていたとしても個人間売買を促進できる、越境ライブコマースサービスとして市場参入できます。

SNSの特徴を最大限に活かし、欧州と欧米ユーザーを繋ぐプラットフォームとして機能させることでAmazonとは違った価値提供ができます。今回の買収を通じて、これまでローカルだった場所が、急にグローバルなネットワークへと成長するとっかかりを得られる可能性も見いだせるでしょう。

ただ、Facebookは大きな商機を逃しています。というのも、最もライブコマースがホットな中国市場に参入しようとしても、市場から締め出しを食らっているため出来ないのです。このGAFAの参入障壁を狙っているのが欧米のスタートアップたち。たとえば米中をライブコマースで繋ぐ「ShopShops」や、インフルエンサーが店舗からライブ動画配信する「roctona」が挙げられます。彼らは中国市場向けに越境ビジネスを仕掛け、ライブ配信者ネットワークを構築しています。

GAFA勢の穴を埋めるように、スタートアップは成長を遂げています。日本でも「Live Shop!」などが人気ですが、仮に中国市場向けにアパレル・医薬品商品を販売するライブコマースアプリへと方向性を変えれば成長が狙えるかもしれません。ここで覚えておくべきことは、GAFAが取りこぼした大きな商機が、中国顧客を前提とした越境市場に潜んでいる点です。この点を見逃さず、配信者ネットワークを世界規模で展開できた企業は、ライブコマース市場で勝ち抜けられるはずと感じます。

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ミレニアル世代の住体験にコンサルコマース、注目あつまる「世界の250社」まとめ(4/4)

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1編ではエンタープライズ、フード領域、2編ではフィンテック、教育、ギグ経済領域を見てきました。3編ではヘルスケア、メディア、トラベル市場で起きている変化を紹介しました。最終編となる本記事では、不動産、小売、モビリティに触れて、連載を締めくくりたいと思います。 エンタープライズ(1編) フード(1編) フィンテック(2編) 教育(2編) ギグ経済(2編) ヘルスケア(3編) メディア(3編) トラベ…

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1編ではエンタープライズ、フード領域、2編ではフィンテック、教育、ギグ経済領域を見てきました。3編ではヘルスケア、メディア、トラベル市場で起きている変化を紹介しました。最終編となる本記事では、不動産、小売、モビリティに触れて、連載を締めくくりたいと思います。

  • エンタープライズ(1編)
  • フード(1編)
  • フィンテック(2編)
  • 教育(2編)
  • ギグ経済(2編)
  • ヘルスケア(3編)
  • メディア(3編)
  • トラベル(3編)
  • 不動産(本編)
  • 小売(本編)
  • モビリティ(本編)

ローリスク住宅購入

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Image Credit: ZeroDown
  • Divvy」は頭金2%から自宅を購入できるサービスを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、9月に4,300万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Singaporean sovereign wealth fund GICとLennarがラウンドに参加。
  • FlatFair」は敷金なしの会員制入居サービスを提供。2016年にロンドンで創業し、8月に1,100万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Index Venturesがリード投資を務めた。
  • Haus」は住宅の共同所有プラットフォームを運営。2015年にサンフランシスコで創業し、7月に410万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Montage Ventures、RIT Capital Partners、Tim Ferrissがラウンドに参加。
  • Landed」は教職員向け頭金レンディングサービスを提供。2015年にサンフランシスコで創業し、4月に750万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Initialized Capitalがラウンドに参加。
  • ZeroDown」は頭金なし・数年住み込み体験をして高級住宅購入できるサービスを提供。2018年にサンフランシスコで創業し、8月に1億ドルの資金調達をデッドファイナンスで実施。Goodwater Capitalがリード投資を務めた。

一軒家を購入するには多額の頭金が必要となります。そこで登場したのがイギリス発の共同オーナーシップ不動産購入サービス低所得者向け住宅ローンサービス「Divvy」。同社はクレジットスコアが著しく低い550以下の顧客を対象に、物件購入をサポート。約5万ドルから20万ドルの価格帯の物件を取り扱います。

顧客が購入希望物件の2%以上の支払いを済ませ、残りの最大98%をDivvy Homes側が負担。同社負担額は顧客が毎月返済し、最大3年をかけて物件所有権の10%に当たるまで支払いが続きます。支払い終了時には、顧客のクレジットスコアが580にまで上昇している目算で、それを超えると金融機関などからローンを組むことができます。ローン借り入れが決まれば、借り入れ額がそのままDivvyへ支払われる仕組みです。住宅購入から住宅ローン借り入れまでの橋渡しをしているのがDivvyというわけです。

似たようなコンセプトとして、イギリス発の共同オーナーシップ不動産購入サービス「Unmortgage」が挙げられます。顧客は購入金額の最低5%を支払うだけでUnmortgageと共同して住宅を購入することができます。居住者は毎月一定の賃貸料を支払い続けることで住み続けられます。賃貸に加え、Unmortgage側が負担した最大95%の住宅購入額を毎年一定額ずつ買い戻していきます。顧客の所有オーナーシップ率が100%になり次第、物件が自分のものなります。

仮に何年か住み続けた後に転居を決めた場合、所有オーナーシップ率を買い戻してもらえるのでキャッシュバックが発生します。月額賃料を支払いながら住み続けられ、気に入ったらオーナーシップを買っていく、「所有」と「共有」を橋渡しするビジネスモデルです。Unmortgageの場合はDivvyとは違い、住宅体験をサブスク化させ、かつ一軒家購入までの検討期間を顧客に持たせています。類似事例として全米トップクラスに住宅価格が高騰するサンフランシスコでの住宅購入に特化した「ZeroDown」がいます。

Divvy、Unmortgage、ZeroDownは高級商材を購入するためのブリッジとなるサービスで急成長しています。ここで注目すべき点は、なんでもレンタル/共有する時代になっていると思われがちですが、未だに「所有ニーズ」が多いに存在する点です。おそらく今後も一定の所有ニーズ層が存在し続けるはずです。こうした顧客に対し、所有のハードルを下げるような価値提供のできる、本項で紹介したようなスタートアップが活躍できるでしょう。

ミレニアル世代が求める住体験

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Image Credit: Lyric
  • Bungalow」はコリビングサービスを提供。2016年にサンフランシスコで創業し、11月に3,200万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Founders FundとCoatueが共同でリードを務め、Khosla Ventures、A-Rod Corp、Atomic VC、CAA Ventures、Cherubic Ventures、Maverick Capital、Nine Four Ventures、Wing Venturesがラウンドに参加。
  • Domio」はグループ旅行者向けにアパートホテルを提供。2016年にニューヨークで創業し、12月に1億ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。GGV Capitalがリード投資を務めた。
  • Life House」はローカルかつソーシャル志向のブランドホテルを運営。2017年にニューヨークで創業し、7月に1億ドルの資金調達をプライベートエクイティラウンドで実施。Blue Flag Partnersがラウンドに参加。
  • Lyric」はアパートのワンルームを貸し出す高級民泊サービスを提供。2014年にサンフランシスコで創業し、4月に1.6億ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Airbnbがリードを務め、Tishman Speyer、RXR Realty、Obvious Ventures、SineWave、Dick Costolo、Adam Bain、Barry Sternlicht、NEA、SignalFire、Fifth Wall Ventures、Tusk Venturesがラウンドに参加。
  • Mint House」はビジネス旅行者向けのアパート民泊サービスを提供。2017年にニューヨークで創業し、5月に1,500万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Revolution Venturesがリード投資を実施。
  • Quarters」は欧州でコリビングサービスを提供。2016年にベルリンで創業し、1月に3億ドルの資金調達を実施。Medici LivingとW5 Groupがラウンドに参加。
  • Selina」はラテンアメリカ地域を中心に若い旅行者向けの滞在拠点およびコワーキングスペースを提供。2012年にロンドンで創業し、4月に1億ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Access Industriesがリードを務め、Grupo WieseとColony Latam Partnersがラウンドに参加。
  • Sonder」は自社所有の民泊サービスを提供。2012年にサンフランシスコで創業し、7月に2.25億ドルの資金調達をシリーズDラウンドで実施。WestCap、Valor Equity Partners、Tao Capital Partnersがラウンドに参加。
  • Tripalink」は学生や若手ビジネスマン向けコリビング住居を提供。2016年にロサンゼルスで創業し、8月に1,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Calin SJG Fund、K2VC、Tekton Ventures、Oriza Venturesがラウンドに参加。
  • WhyHotel」は新築マンションを民泊として貸し出すサービスを提供。2017年にワシントンD.C.で創業し、12月に2,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Harbert Growth Partnersがリードを務め、Camber Creek、Highland Capital Partners、Working Lab Capital、Geolo Capital、Revolution’s Rise of the Rest Seed Fundがラウンドに参加。
  • Zeus」は社宅やビジネス旅行向けの民泊サービスを提供。2015年にサンフランシスコで創業し、12月に5,500万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Airbnb、Spike Ventures、Picus Captail、NFX、Initialized Capital、CEAS Investments、Alumni Ventures Groupがラウンドに参加。
  • 2nd Address」はビジネス旅行向け民泊サービスを提供。2014年にサンフランシスコで創業し、2月に1,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。GVがリードを務め、Foundation Capital とAmicus Capitalがラウンドに参加。

民泊市場では「高級ブランド志向」と「ソーシャルライフ」がキーワードになっていると感じた1年でした。まずは高級ブランド志向からお話しします。

Airbnbを筆頭に大手サービスに市場はほぼ取られてしまい、各社が次に攻めたのがアパート部屋の賃貸や自社運営の民泊拠点の貸し出しです。たとえば、Airbnbが巨額投資をしている「Lyric」が挙げられます。同社はアメニティが完備され、アプリを通じた24時間カスタマー対応付きのアパート民泊を運営。また、「WhyHotel」は空き部屋の多い新築マンションを高級アパート民泊サービスとして貸し出しています。「Sonder」は自社で物件を所有し、ネットワーク全ての部屋を自社ブランドに統一して貸し出しています。

それぞれAirbnbより比較的割高な価格帯でサービスを提供。その裏には、「高いキュレーション」が求められる市場需要が伺い知れます。部屋の管理からインテリアデザインまで、各社とも高い質を提供しています。キュレーションが求められる理由として、ネットワークビジネスでしばしば発生する、質の悪いサービス提供者に嫌気が差している一定層が存在している点が挙げられます。

この点、AirbnbはLyricに投資することで、民泊市場の低価格層から高級層まで、ほぼ全ての顧客の需要に応えようとする戦略を持っていると想像できます。ちなみに、ホテルと同等の質を求めるビジネスマンからの需要は高く、「Zeus」や「2nd Address」がビジネス層をターゲットにしています。

中長期の住居を提供するコリビングサービスでは、同世代の若者が集まる「ソーシャル要素」が鍵となっています。ブランディングの一環として、旅行者や居住者との交流は欠かせない要素となっています。しかし、コリビングスタートアップの多くがSonder同様に自社ブランドとして場所を提供しているため、Airbnbのようなネットワークモデルではなく、住宅やホテルを又貸しするWeWorkに似たビジネスモデルを採用。ただ、このモデルでは巨額のコストがのしかかるでしょう。たとえば、「Life House」のようなホテル事業者が事業者が挙げられます。

今回リスティングした企業の大半が、WeWorkの上場撤回事件が発生するまでに資金調達を完了しています。WeWorkのようにユニットエコノミクスが成立していなくとも、ミレニアル世代が求めるソーシャルやコラボレーション価値を前面に押し出すことで成長を続けられてきた、言わば“バブル勢”と捉えられます。

今後は“WeWork後”の正念場を試される立場になることは必至でしょう。又貸しモデルで調達を続けてきた民泊およびコリビング勢は、2020年以降、投資家からの厳しいファイナンスチェックが入ることは容易に想像がつきます。

リセール市場は堅調

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Image Credit: Bump
  • Bump」はストリートウェア特化のP2Pソーシャルマーケットプレイスを運営。2017年にロンドンで創業し、4月に750万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。e.venturesがリードを務め、Kleiner Perkins、Y Combinatorらがラウンドに参加。
  • Depop」は中古ファッション商品マーケットプレイスを運営。2011年にロンドンで創業し、6月に6,200万ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。General Atlanticがリードを務め、HV Holtzbrinck Ventures、Balderton Capital、Creandum、Octopus Ventures、TempoCap、KlarnaのCEO Sebastian Siemiatkowski氏がラウンドに参加。
  • Medinas」は医療機器製品の中古マーケットプレイスを運営。2017年にバークレーで創業し、10月に500万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。NFXがリードを務め、Precursor Ventures、Sound Ventures、FJ Labs、Bryan Fristがラウンドに参加。
  • thredUp」は中古服マーケットプレイスを運営。2009年にサンフランシスコで創業し、8月に1.75億ドルの資金調達をシリーズFラウンドで実施。Park West Asset Management、Irving Investors、Goldman Sachs Investment Partners、Upfront Ventures、Highland Capital Partners、Redpoint Venturesがラウンドに参加。
  • Vinted」は手数料無料の中古ファッション商品マーケットプレイスを運営。2008年にリトアニアで創業し、11月に1.28億ユーロの資金調達をシリーズEラウンドで実施。Lightspeed Venture Partnersがリードを務め、Sprints Capitalらがラウンドに参加。

thredUp」の2019年レポートによると、米国中古アパレル市場は2023年に510億ドルにまで成長すると予測されています。これは2018年の240億ドルの2倍強の規模です。また、アパレル市場と比べて中古市場は21倍も早い速度で成長しているとのこと。なかでも女性層の成長は強く、2018年に5,600万人が中古アパレル商品を購入した経験があると分析。前年度比4,400万人から大きく前進しています。市場の16%を占めるZ世代購買者は、3人に1人が今後中古品を購入したいと希望していることから、各社とも次のターゲット市場として狙いを定めています。

今回リスト入りしている中でも、「Bump」や「Depop」などのストリートファッション商品を展開するサービスはZ世代を取り込んでいる模様です。「thredUp」「TheRealReal」「Poshmark」はミレニアル世代には人気である一方、Z世代の取り込みはまだ不十分な印象です。この点、Z世代から爆発的な人気を誇る、次のアパレルリセール市場で急成長を遂げられる可能性がスタートアップに残っています。既存サービスの体験を次世代向けにアップデートするスタートアップに商機が訪れるでしょう。

レポートの中で興味深い動向として指摘されているのが、コンマリメソッドの普及。部屋を掃除して、本当に大切なものだけを残し大切に使う“Konmari”の考えがリセール市場にも広がりつつあります。コンマリした人は不用品を2次流通を利用するため市場を活性化させます。実際、Netflixでコンマリ番組が配信された直後は、要らない洋服を詰めてそのままthredUpに出品できる「Clean Out Kit」の提供数が80%上昇したとのこと。Konmariに代表される新しいコンセプトが市場を底上げしている動きは覚えておくべきかもしれません。デジタルコンテンツとリセール市場に強い導線が出来ていることがClean Out Kitの実績からわかるため、メディアの視点からもリセール市場参入を検討できそうです。

リセール市場向けプライベードブランド化の動きもあります。「Rent The Runway」は自社貸し出しサービス専用のブランドを作っており、thredUpもリセール向けの洋服ラインを構築。新しいものではなく、長くいろんな人の手に渡ることを想定して作られたファッションブランドが市場で出来つつある点が見逃せません。多くのブランドが生まれていますが、プラットフォームと連携して洋服を卸す、リセール特化ブランドが誕生してもおかしくないでしょう。

越境 × ライブコマース

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Image Credit: NTWRK
  • ShopShops」は米国の小売店舗から中国へ配信するライブコマースアプリを開発。2016年にニューヨークで創業し、7月に1,400万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Axios、Union Square Ventures、Forerunner Ventures、TCG Capitalがラウンドに参加。
  • THE NTWRK」はライブコマースアプリを開発。2018年にロサンゼルスで創業し、9月に1,000万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Foot Lockerがラウンドに参加。

単独アプリやWebサービスが欧米ライブコマース市場を制するのは厳しい印象です。大きな理由としてGAFAが本格的に動き始めたことが挙げられます。Facebookは、12月20日、ローカルコミュニティ内で中古品を売買できるフリマ機能「Marketplace」にライブコマースを実装するため、動画ショッピング機能を開発するスタートアップ「Packagd」を買収したと報じられました。Facebookは2018年、タイでライブコマース機能を試験投入していることから、米国市場で同機能を再現するとされています。

ライブコマースは中国市場で爆発的に普及しています。独身の日セールでは、AlibabaやTencent傘下のEコマースサービスで28億ドル規模のライブコマース経由の購買が行われています。一方、米国市場では中国ほどの売上を上げている印象はありません。たとえば、今では米国世帯の半数がPrime会員に加入しているとはいえ、Amazon Prime Dayにライブコマースが売上を伸ばしているといった話は聞きません。

そこで登場するのがFacebook。従来、Marketplaceはローカル特化のフリマとして成立していましたが、もしライブコマース機能が実装されれば、国が離れていたとしても個人間売買を促進できます。つまり、これまでローカルだった場所が、急にグローバルなネットワークへと成長するとっかかりを得るのです。ちなみにInstagram Liveが自社プロダクト内で競合になってしまうかと思われますが、Facebook MarketplaceとInstagramは利用シーンが大きく違うため、ユーザーの共食いをすることはないでしょう。

しかしFacebookは大きな商機を逃しています。というのも、最もライブコマースがホットな中国市場に参入しようとしても出来ないのです。このGAFAの参入障壁を狙っているのが欧米のスタートアップたち。たとえば米中をライブコマースで繋ぐ「ShopShops」や、インフルエンサーが店舗からライブ動画配信する「roctona」が挙げられます。彼らは中国市場向けに越境ビジネスを仕掛け、ライブ配信者ネットワークを構築しています。

GAFA勢の穴を埋めるように、スタートアップは成長を遂げています。日本でも「Live Shop!」などが人気ですが、仮に中国市場向けにアパレル・医薬品商品を販売するライブコマースアプリへと方向性を変えれば成長が狙えるかもしれません。ここで覚えておくべきことは、GAFAが取りこぼした大きな商機が中国顧客を前提とした越境市場に潜んでいる点です。この点を見逃さず、配信者ネットワークを世界規模で展開できた企業は、ライブコマース市場で勝ち抜けられるはずと感じます。

コンサル・コマースに注目

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Image Credit: Curated
  • Curated」はオンラインショッピングする際にアドバイスをくれる専門家とのマッチングプラットフォームを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、10月に2,200万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Forerunnerがリード投資を務めた。
  • DesireList」はプロの意見をもとに買い物をするEコマースを運営。2015年にアトランタで創業し、3月に300万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。前McDonalds CEOのDon Thompson氏がラウンドに参加。

専門家の意見を聞きながら、最適な商品を購入するパーソナライズ体験は見逃せない動きでしょう。購買活動において、コンサルタントを雇う体験が人気です。このコンセプトは2編で紹介したパッションエコノミーと強く結び付いています。「Curated」は専門知識のある人が、お客さんと一緒に商品を選ぶ体験を提供。これは個々の強みを活かしてサービス化させるトレンドを掴んで生まれたサービスと言えます。小売市場swhパーソナライズ体験の重要性が叫ばれて久しいですが、コンサル・コマースはその解の1つを指し示しています。

シェアリング店舗の行方

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Image Credit: Neighborhood Goods
  • Bulletin」はEC事業者向けに実店舗の販売スペースをブース貸しするサービスを提供。2015年にニューヨークで創業し、7月に700万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Foundation Capital、Kleiner Perkinsらがラウンドに参加。
  • Neighborhood Goods」はブース貸しモデルのデパートを運営。2017年にダラスで創業し、9月に1,100万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Global Founders Capitalがリードを務め、Forerunner Ventures、Serena Ventures、NextGen Venture Partners、Allen Exploration、Capital Factoryらがラウンドに参加。
  • Showfields」はブース貸しモデルの体験型デパートを運営。2017年にニューヨークで創業し、2月に900万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Hanaco Venturesがリード投資を務めた。

米国スタートアップ界隈では店舗業態を販売から不動産へシフトさせる動きが始まっています。代表的な企業に「Bulletin」が挙げられます。月額2,000〜3,000ドルで店舗一画を各ブランドの販売商品の展示スペースとして割り当てる不動産事業を展開。EC事業者が手軽に一等地店舗に商品を並べる機会提供を行っています。店舗側は場所を貸し出すだけのモデルであるため、あとは簡単な商品在庫スペースだけあれば十分です。

売り場だけ確保できれば良いため、従来型の店舗と比べて1坪当たりの売上上昇に注力できます。さらに月額サブスクリプションモデルのため店舗側は一定売上が担保されます。販売売上に左右されずに一定の売上予測が可能になるのです。出店ブランド側も多額の出店費用リスクを負う必要がなくなるWin-Winの関係構築をしました。

最近では「Neighborhood Goods」や「Showfields」のように、デパート規模の大きなハコでBulletinのようなシェアリング店舗事業を展開する事例が目立ちます。また、お客さん同士の交流や、イベントにも注力した新しい娯楽施設としての側面を持たせる動きもあります。こうした動向から、ポスト2019年の店舗はシェアリング不動産事業をベースに、顧客体験を最大化させるエンタメ化が加速するように思えます。先述したデパートスタートアップが提供する体験コンテンツが、どの程度客単価を引き上げるかは未だ実験段階であるため、今後何かしらのソリューションが登場してくることが望まれます。

物流アクセス向上

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Image Credit: Darkstore
  • Darkstore」は当日配達物流サービスを小売企業に提供。2017年にサンフランシスコで創業し、9月に2,100万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。EQT Venturesがリード投資を務めた。
  • FLEXE」はオンデマンド物流サービスを提供。2013年にシアトルで創業し、5月に4,300万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Activate CapitalとTiger Global Managementが共同でリードを務め、Madrona Venture Group、Redpoint Ventures、Prologis Venturesがラウンドに参加。
  • Flowspace」はオンデマンド物流サービスを提供。2017年にロサンゼルスで創業し、4月に1,200万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Canvas Venturesがリードを務め、Moment Ventures、1984 Ventures、Y Combinatorがラウンドに参加。
  • Happy Returns」はオフライン返品ネットワークを小売業者に提供。2015年にサンタモニカで創業し、4月に1,100万ドルの資金調達を実施。PayPalがリードを務め、USVPとUpfront Venturesがラウンドに参加。
  • Saltbox」は物流倉庫付きコワーキングスペースを提供。2019年にアトランタで創業し、9月に320万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Village Globalがリード投資を務めた。
  • what3words」は郵便配達の困難な地域向けに特定3用語で配達先を定義するサービスを提供。2013年にロンドンで創業し、4月に非公開ラウンドを実施。

物流市場では対Amazonをサポートするサービスが登場しています。Amazon Primeの登場以来、即日配達サービスが当たり前になってしまいました。しかし、既存小売店がすぐに即日対応できる物流網を準備できるはずがありません。そこで登場したのが「Darkstore」。都市部に特化したフルフィルメントサービスを展開しています。利用企業は当日配達サービスを手軽に展開できるようになります。物流面でAmazonに対抗する武器を、高速で販売店が実装できるサービスとして実績を伸ばしています。

また、Amazonでは返品できるのが当たり前。欧米では日本と比べて返品率が高いため、どの小売店も返品サービスを付けておかなければAmazonに客が取られてしまいます。ただ、当日配達同様に、サービス実装には多大のコストが必要。この課題を解決するのが「Happy Returns」です。提携ECブランド商品であれば、顧客は最寄りのショッピングモールに開設してあるHappy Returnsのブースで返品作業を行えるサービスを提供します。顧客は箱詰めして送り返す手間暇を省け、返品対象品を手渡しするだけで即金でお金を得られるメリットがあります。

同社は各ブランドへの返品数が一定数以上集まってから返送・配達を行います。返品物流を小分けではなくまとめ配達の物流手法へと変えたのです。1品ずつ返品するのでは、EC事業側の管理コストがかかり過ぎますし、物流業者の仕事が増えてしまいます。この課題を解決したのがHappy Returnsなわけです。このようにAmazonが得意とするサービス領域を自社で作り出し、パートナー企業へ提供するアドオン事業が物流市場で成長しているのが印象的です。日本では運送業者の過剰労働が社会問題になったことから、本項で紹介したスタートアップを模倣した事業に支持が集まるかもしれません。

業界再編が進む小売ブランド

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Image Credit: Le Tote

洋服サブスクスタートアップ「Le Tote」が老舗デパート「Lord & Taylor」を買収したニュースは衝撃でした。この買収劇から予想できるのは個客管理の可能性です。たとえばデパート入り口で、Le Toteのユーザーアカウント認証を行うタブレット導線を用意した場合、オンラインアカウント情報と店舗内で購入した商品データとの連携に成功します。データ連携の最大のメリットは、Le Toteのオンライン店舗とLord & Taylor内の購買データを統合させることで、オンラインとオフラインのどちらのチャネルから顧客が流入しても、最適な商品提案が可能となる「オムニチャネル戦略」を採用できる点にあります。

Amazonが成功している点もまさにここ。無人店舗「Amazon Go」の来客は入り口でアカウント認証が必要です。これは店舗内購買データをAmazon Marketplaceでも活かして、最適な商品レコメンドをするための導線を確保するためのものです。つまり実店舗顧客はオンライン・マーケットプレイスに来てもAmazonにターゲティングされ、高い精度のパーソナライズ商品提案される対象になるのです。

Le ToteはもともとEコマース企業。デパート体験をオムニチャネル戦略を採れるように最適化させることは想像に難くありません。改めてリストを見てみると、2019年は大型倒産や買収が相次ぎましたが、オムニチャネル戦略を匂わせるディールはAmazonの生鮮食品ブランド店舗のニュースのみ。たとえば、Old Navyが単に店舗を増やしたとしても、提供価値や戦略上の甘さで、Le Toteのようなスタートアップに買収される対象になってしまうかもしれません。また、Forever 21に代表される大手アパレル企業がドミノ倒しに破産申請していく可能性も否めません。顧客体験を最大化させる新業態や戦略採用が急務となりそうです。こうした流れは、ゆくゆく日本の小売市場でも顕著になってくるはずでしょう。

高速移動社会の立ち上がり

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Image Credit: Boom Supersonic
  • BlackBird」はプライベートジェット手配サービスを提供。2016年にサンフランシスコで創業し、6月に1,000万ドルの資金調達をシリーズAで実施。New Enterprise Associatesがリード投資を務めた。
  • Boom Supersonic」は超音速航空機を開発する企業。2014年にコロラド州で創業。Emerson Capitalがリードを務め、Y Combinator Continuity、Caffeinated Capital、SV Angel、Sam Altman、Paul Graham、Ron Conway、Michael Marks、Greg McAdooが参加。
  • Karem Aircraft」は空飛ぶタクシーを開発する企業。2004年にカリフォルニア州で創業し、7月に2,500万ドルの資金調達をシリーズAで実施。Korea’s Hanwha Systemsがリード投資を務めた。
  • Hermeus」は超音速航空機を開発する企業。2018年にアトランタで創業。Khosla Venturesがリード投資を務めた非公開ラウンドを実施。
  • Isar Aerospace」は小型ロケットを開発する企業。2018年にドイツで創業し、12月に1,500万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。 Earlybird Venture CapitalとAirbus Venturesが共同でリードを務め、UVC PartnersとVito Venturesがラウンドに参加。
  • Jet Edge International」はプライベートジェット手配サービスを提供。2007年にカリフォルニア州で創業し、3月に6,000万ドルの資金調達をプライベートエクイティラウンドで実施。Solace Capital Partnersがリード投資を務めた。
  • JetPack Aviation」は空飛ぶモーターバイクを開発する企業。サンフランシスコで創業し、Draper Associates、YC、Cathexis Venturesらから200万ドルの資金調達を実施。
  • Loft Orbital」は小型衛星に利用企業のセンサーを複数載せて打ち上げるライドシェアサービスを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、11月に1,300万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Foundation Capitalがリードを務め、Ubiquity VC、Uncork Capital、Cendana Capital、Swell VC、GFA Venturesがラウンドに参加。
  • Relativity Space」は3Dプリント技術を使ったロケット製造企業。2016年にカリフォルニア州で創業し、10月に1.4億ドルの資金調達をシリーズCで実施。BondとTribe Capitalが共同でリード投資を務めた。
  • Skyports」は空飛ぶタクシー向けの着陸パッド(ミニ空港)を建設する企業。2017年にロンドンで創業し、12月に5,35万ユーロの資金調達をシリーズAで実施。Deutsche Bahn Digital VenturesとGroupe ADPがリードを務め、Levitate Capitalが参加した。
  • Virgin Hyperloop One」は真空チューブを利用した輸送システムを開発する企業。2014年にロサンゼルスで創業し、5月に1.72億ドルの資金調達を実施。
  • Volocopter」は都市内移動向け電動ヘリコプターを製造。2011年にドイツで創業し、9月に5,000万ユーロの資金調達をシリーズCで実施。Zhejiang Geelyがリード投資を務めた。
  • Wheels Up」は会員制のプライベートジェットサービスを提供。2013年にニューヨークで創業し、8月に1.28億ドルの資金調達をシリーズDで実施。Franklin TempletonとT. Rowe Priceらがラウンドに参加。

空飛ぶタクシーはいよいよ実用化に向けて本格始動。欧州ドイツや米国カリフォルニア州を中心にスタートアップが活躍している印象です。上記のリストには入っていませんが、ドイツ拠点の電動空飛ぶタクシー企業「Lilium」も数億ドル単位で資金調達を模索しています。市場の動きを見ていると、3-5年以内に高価格ながら商用化されそうです。

注目なのは空飛ぶタクシー時代の“プロバイダー”の市場ポジションを狙う企業が出てきている点です。具体的にはタクシーが離着陸するための「ミニ空港」を作り上げる企業たちが挙げられます。「Skyports」のようにビルの屋上に滑走路を作ったり、都市部の空きスペースに専用小型空港を建てて、次世代の“管制塔”を目指しています。

機体開発と空港整備の両方が進み、いずれ空飛ぶタクシーの輸送は地域間の新たな移動手段として確立されるはずです。ここで真剣に考える必要があるのがディスラプト。空飛ぶタクシーが飛び始めると、中距離移動手段がディスラプトされる可能性を考える必要があります。たとえば高速バス移動手段の優位性が揺らぐかもしれません。また、郵便物輸送などの簡易な物流に変化が訪れるかもしれません。都市部とベッドタウン、もしくは地方間における輸送や物流は大きく前進することが予想されます。

さらに、ロケットの高速生産が始まる動きも見逃せません。機体数が増えれば、打ち上げ需要も自ずと増えてきます。こうした需要に対して、打ち上げ拠点の供給は間に合っていないでしょう。そこで、基地ビジネスやライドシェアに注目が集まるはずです。たとえば北海道などで広大な土地所有権を持つ人が、簡単な打ち上げ基地を作りあげられるサービスや、時間別にスムーズに打ち上げができるオンデマンド型の打ち上げ事業が生まれてくるはずです。実際、Sequioa Capitalが投資をした「Vector」が打ち上げ基地ビジネスに着手していました。また、「Loft Orbital」が小型衛星のライドシェア事業に取り組んでいます。こうした次世代の宇宙ビジネスに注目が集まるでしょう。

skyline skyscrapers panorama panoramic
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さて、250社のまとめ紹介はここまでです。1編から最後まで読んでくださった方は、最新欧米スタートアップ事情にかなり精通できるまで事例がインプットされていると思います。その上で、新しい事業構想を考える上で参考になる企業が1社でも見つかれば幸いです。

ただ、1点伝えなければいけないのは、4編を通じて紹介した30のキーワードは全て市場で十分に裏付けをされたもの。日本で起業や新規事業立ち上げをする上では通じるかもしれませんが、世界で戦うアイデアを探す上では、そのまま真似しても勝てません。3-5年は遅れをとってしまっていると言って過言ではないでしょう。

トレンド情報はメディアで消費されやすいものですが、事業の急成長性には欠けてしまいます。そのため、単にキワード情報をインプットするのではなく、全く市場からキーワードを引っ張ってきて掛け合わさせる思考法をおすすめします。新しいアイデアは必ず異業界のコンセプトを移植させ、化学反応を起こすことで誕生することがしばしばあります。この点は『模倣の経営学』に詳しく書かれているため、時間を取って読まれることをおすすめます。

また、第1編の冒頭でもお伝えしましたが、「Accessibility」が鍵になっています。各企業が既存概念をどのように民主化させ、私たちの共感を得られる体験にまで最適化させているかを考えれば、いろいろと発見があるはずです。

改めて、最後まで読んでいただいてありがとうございました。本連載がみなさんにとって実りある“ポスト2019年”を迎える一助になれたらありがたい限りです。

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薬局のディスラプトに対TikTokから始まる次の動画メディア、注目あつまる「世界の250社」まとめ(3/4)

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1編ではエンタープライズ、フード領域、2編ではフィンテック、教育、ギグ経済領域を見てきました。本編ではヘルスケア、メディア、トラベル市場で起きている変化を紹介していきます。 エンタープライズ(1編) フード(1編) フィンテック(2編) 教育(2編) ギグ経済(2編) ヘルスケア(本編) メディア(本編) トラベル(本編) 不動産(4編) 小売(4編) モビリティ(4編) 分野特化で登場する病院 …

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1編ではエンタープライズ、フード領域、2編ではフィンテック、教育、ギグ経済領域を見てきました。本編ではヘルスケア、メディア、トラベル市場で起きている変化を紹介していきます。

  • エンタープライズ(1編)
  • フード(1編)
  • フィンテック(2編)
  • 教育(2編)
  • ギグ経済(2編)
  • ヘルスケア(本編)
  • メディア(本編)
  • トラベル(本編)
  • 不動産(4編)
  • 小売(4編)
  • モビリティ(4編)

分野特化で登場する病院

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Image Credit: Modern Animal
  • Brave Care」は小児科特化の救急病院を運営。2019年にポートランドで創業し、9月に500万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Sesame Street、Greycroftらがラウンドに参加。
  • FirstVet」はオンライン診療ベースの動物病院を運営。2016年にストックホルムで創業し、11月に1,850万ユーロの資金調達をシリーズBラウンドで実施。OMERS Venturesがリードを務め、Creandumがラウンドに参加。
  • Modern Animal」はオンライン診療ベースの動物病院を運営。2019年にロサンゼルスで創業し、10月に1,350万ユーロの資金調達をシードラウンドで実施。Founders Fundがリードを務め、Wonder Ventures、Upfront Ventures、Susa Ventures、DCM Ventures、Box Group、BAM Venturesがラウンドに参加。
  • Parsley Health」は会員制の病院を運営。2016年にニューヨークで創業し、10月に2,600万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。White Star Capitalがリードを務め、FirstMark Capital、Amplo、Alpha Edison Partners、Arkitekt Ventures、Galaxy Digital、One Medical創業者のTom Lee氏、Flatiron Health共同創業者のNat Turner氏がラウンドに参加。
  • Two Chairs」はメンタルヘルス特化の精神病院を運営。2017年にサンフランシスコで創業し、8月に2,100万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Amploがリードを務め、GoldcrestとMaveronがラウンドに参加。
  • Tyto Care」は自宅で使える専用診療IoTを通じたオンライン診療サービスを提供。2012年にニューヨークで創業し、1月に900万ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Sanford Health、Itochu 、Shenzhen Capital Groupがラウンドに参加。

テクノロジーを使って病院体験を最適化する流れが10年前から来ています。たとえば、筆者も利用していた会員制の病院「One Medical」。同社のターゲット顧客は都市圏の忙しいビジネスパーソン。専用アプリかウェブサイトで手軽に診療予約手続きを完了できます。

医師とフォローアップのチャット機能も実装。基本的に直前の予約であってもすぐに受け入れ対応できるように、1都市に5〜6つほどの拠点を構えます。医師の性格や診療の質が高く、必ず専属の医師が付いてくれるため、毎回体調のキャッチアップをしてくれる点が高評価です。One MedicalはIPOの準備をしており、業界にとっては良い指標になっています。

オフライン事業を立ち上げるのは非常にコストがかかりますが、サービス領域を特化させて差別化を図り、次のOne Medicalを目指す動きが目立ちます。なかでも注目したいのは「Modern Animal」。動物病院版One Medicalといっても良いでしょう。米国では獣医サービスの市場規模は約500億ドルもあり、十分な成長余地があります。競合には「FirstVet」が挙げられますが、同社は欧州展開であるため直近で直接競合になることはありません。

日本でもスマホからすぐにオンライン予約できる便利な機能を備えた病院を見受けられますが、未だに医療機関はモバイル時代に合わせた体験を提供できていません。One MedicalやModern Animalのように、大きなイノベーションを起こすというよりは、私たちが当たり前に持つ現代の価値観や利用シーンに最適化させた病院の登場が待望されます。

歯科体験の前進

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Image Credit: Tend
  • Candid」は自宅矯正歯科ブランドを開発。2017年にニューヨークで創業し、4月に6,340万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Greycroft、Bessemer、e.ventures、RiverPark Funds、blisce/、Redesign Health’s limited partners、Mousse Partnersがラウンドに参加。
  • Henry The Dentist」は移動車型の歯科病院を運営。2017年にトリニダード・トバゴで創業し、3月に1,000万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Forerunner Venturesがリードを務め、Brand FoundryとTrail Mix Venturesがラウンドに参加。
  • Uniform Teeth」は矯正歯科病院を運営。2015年にサンフランシスコで創業し、12月に1,000万ドルの資金調達をシリーズAラウンドに実施。Canaanがリードを務め、Lerer Hippeau、Refactor、Slow Venturesがラウンドに参加。
  • Tend」は歯科医療ブランドを運営。2018年にニューヨークで創業し、10月に3,600万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Redpoint Venturesがリードを務め、One MedicalからTom Lee氏、Neil Blumenthal氏、Warby ParkerからDave Gilboa氏、Flatiron HealthからZach Weinberg氏、 Tusk VenturesからBradley Tusk氏がラウンドに参加。

歯科医療分野にはブランドサービスが多数登場。自宅矯正歯科サービス「SmileDirectClub」がIPOをしたことから市場に勢いがあります。“自宅矯正”という言葉に注目が集まっていますが、顧客を来院させてケアをする、オフライン接点を持つ必要は各社とも感じているようです。専属スタッフが来院時にケアすることで、顧客満足度と継続率を上げる施策に取り組んでいます。

たとえば「Uniform Teeth」も来院を必須としています。また、「SmileDirectClub」も実店舗「SmileShop」を用意してチェックアップする機会を提供。さながら歯科医療版ジーニアスバーのサービスを提供しています。自宅のみで完結する矯正歯科医療が求められていますが、やはり顧客に任せているだけでは、ベストな矯正ソリューションを提供できないのかと思われます。この点、オンラインとオフラインのどちらのチャネルに顧客が訪問したとしても、最適なサービスを提供する小売市場で使われるオムニチャネル戦略が重要となりそうです。

動画が鍵を握る自宅ヘルスケア市場

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Image Credit: Mirror
  • Future」は無料配布されるApple Watchを通じたオンラインパーソナル・コーチングサービスを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、5月に850万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Kleiner Perkinsがリードを務め、Mike Krieger、Khosla Ventures、Founders Fund、Caffeinated Capitalがラウンドに参加。
  • Hydrow」はボード式フィットネスIoTを開発。2017年にマサチューセッツ州で創業し、5月に700万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Rx3 Ventures、Wheelhouse、The Raptor Group 、The Yard Venturesがラウンドに参加。
  • Journey Meditation」はグループ瞑想動画サービスを提供。2015年にニューヨークで創業し、5月に240万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Canaanがリード投資を務めた。
  • Livekick」は週32ドルからパーソナルトレーナーのコーチングを受けられる動画サービスを提供。2018年にニューヨークで創業し、5月に300万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Firstime VCがリード投資を実施。
  • Meditation.live」はライブ瞑想コーチングサービスを提供。2018年にマイアミで創業し、9月に300万ドルの資金調達を実施。SoftBank Capital NYがラウンドに参加。
  • Mirror」は鏡を使った室内向けフィットネスマシーンを開発。2016年にニューヨークで創業し、10月に3,400万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Point72がリードを務め、Lululemonらがラウンドに参加。

フィットネス市場では室内エアロバイク「Peloton」がIPOを果たしました。バイク本体料金は2,000ドルもする高級価格帯であり、購入後はフィットネス動画コンテンツを視聴するために、月額39ドルの利用料金を支払う必要があります。筆者は何度か試乗したことがありますが、「自宅フィットネス体験」と「高い動画コンテンツ体験」の2つを軸に、高い提供価値を持ち合わせていると感じました。

Pelotonの登場により、体験クオリティが著しく高い製品であれば、高価格であっても自宅に置かれるという認識が市場に広まりました。そこで登場して大きく注目を集めているのが、ミラー型の動画フィットネスIoT「Mirror」や、ボート版Pelotonの「Hydrow」です。いずれも2,000ドル前後の価格帯商品。動画を視聴しながら毎日自宅でフィットネスをして、他のユーザーと競いながら、さながらグループレッスンを受けている体験を得られます。

こうした自宅でライブ感を得ながら楽しくフィットネスをする利用シーンが増えてきました。「Journey Meditation」や「Meditation.live」はモバイルアプリを通じたライブ動画サービスですが、Peloton、Mirror、Hudrowとサービス提供価値が共通しています。日本では自宅フィットネスや、動画を通じたソーシャルフィットネス志向がどこまで刺さるかわかりませんが、ユーザー体験のトレンドとして知っておいて損はないはずです。

薬局のディスラプト

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Image Credit: Truepill
  • Apostrophe」はオンライン皮膚科診療および処方箋配達サービスを提供。2014年にオークランドで創業し、12月に600万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。SignalFireがリードを務め、FJ Labsがラウンドに参加。
  • Medly」は処方箋の当日配達サービスを提供。2017年にニューヨーク・ブルックリンで創業し、シリーズAラウンドを実施。Greycroftがリード投資を実施。
  • Nurx」はオンデマンド避妊薬配達サービスを提供。2014年にサンフランシスコで創業し、8月に5,200万ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Kleiner Perkins Digital Growth Fund、Union Square Venturesが共同でリードを務め、Reproductive Health Investors Alliance、Dreamers VC、Lowercase Capital、Y Combinator、Triple Point Capitalがラウンドに参加。
  • Truepill」はオンライン薬局サービス向けの配達フルフィルメントを提供。2016年にサンマテオで創業し、3月に1,000万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Initialized Capitalがリードを務め、Y Combinator、Sound Ventures、Tuesday Capitalらがラウンドに参加。
  • The Pill Club」はオンデマンド避妊薬配達サービスを提供。2014年にレッドウッドシティで創業し、1月に5,100万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。VMGがリードを務め、GV、ACME Capital、Base10、Shasta Venturesがラウンドに参加。

今や処方箋を自宅に届けてもらう体験は、日常の一部になりつつあります。実際、筆者がサンフランシスコに住んでいた際には「Alto Pharmacy」を利用して自宅配達を頼んでいました。今では避妊薬などの処方箋分野にも配達サービスが広がりを見せています。「Nurx」や「The Pill Club」の大型調達に、市場多角化の勢いが見て取れます。

欧米ではオンライン診療と配達サービスが合わさり、自宅で全ての病院体験が完結する時代になりました。これは前項で紹介したフィットネス市場の自宅体験にも共通する価値観です。医療機関は専門医に症状を相談するコンサルティングサービスの場へとなり、簡単な診察と処方箋注文・受け取りはオンラインを通じて自宅で終わらせるといった区分けが完成しています。リストで紹介している薬局スタートアップの大変が、この自宅診療体験を再現しています。

各医療機関は自宅体験のトレンドを掴み、配達サービスを実装しつつあります。そこで登場するのがAPIやSaaSの考えです。「Truepill」はオンライン診療や配達サービスなど、患者のジャーニーマップ上で必要となる各種サービスを、事業者が手軽に実装できる処方箋配達版AWSを提供します。必要な機能を実装して、フルフィルメントを簡単に構築できるサービスとなっています。これは1編で紹介した“API化が続く世界”や“ソフトウェアが飲み込む多領域”にも通じるコンセプトです。医療市場における顧客体験に対して、API市場の盛り上がりを掛け合わせることで大きな商機を得られる証拠です。薬局のディスラプトからは、自宅体験と他市場トレンドであるAPIやSaaSコンセプトを繋ぎ合わせて、新たな提供価値を確立できることがわかります。

対TikTokから始まる次の動画メディア

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Image Credit: Yubo
  • Brut」は短尺動画メディアを運営。2016年にパリで創業し、10月に4,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Red River Westがリードを務め、blisceがラウンドに参加。
  • Imgur」はミームコンテンツプラットフォームを運営。2009年にサンフランシスコで創業し、6月に2,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Coilがラウンドに参加。
  • OneDay」は高齢者の人生ストーリーを動画撮影し、トピックごとに地元の人が閲覧できる記録メディアを運営。2012年にダラスで創業し、12月に520万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Silverton Partnersがリードを務め、Spieker PartnersとGreen Park & Golf Venturesがラウンドに参加。
  • Triller」は誰もがプロ風動画を作れるソーシャル音楽動画プラットフォームを運営。2015年にニューヨークで創業し、10月に2,800万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Proxima Mediaがリード投資を実施。
  • Yubo」はライブストリーム特化の若者向けSNSを運営。2015年にフランスで創業し、12月に1,230万ドルの資金調達を実施。 Iris CapitalとIdinvest Partnersがリードを務め、 Alven、Sweet Capital 、Village Globalがラウンドに参加。

10月、Googleが30秒ほどの短尺動画をシェアできる「Firework」の買収を検討していたことが報道されました。同社は対TikTokアプリとしてユーザー数を伸ばして注目を集めています。

Googleにとって今回の買収検討は、長尺動画をYouTubeに投稿し、その他の動画をFireworkに投稿させる導線を確保することで、米国の動画コンテンツ市場で覇権を握ろうとした戦略の一環だったと考えられます。ユーザー投稿型サービスの動画プラットフォームを抑え、動画広告市場で幅広く広告出稿者の意向に応えたかったと想像できます。

Fireworkは音楽を使った動画コンテンツプラットフォームではありませんが、「Triller」は音楽PV風の動画を投稿できるサービスとして成長。TikTokとはまさに直接対峙する市場ポジションにいます。いずれのスタートアップもGAFA勢に買収される可能性の高い企業として注目でしょう。一方、最近ではMEMEコンテンツの人気に火が付き、「Imgur」のような新しいコンテンツプラットフォームが大型調達を果たしています。ただ、この分野では未だ広告ソリューションが確立しているわけではないため、大手に買収されるほど市場が成長するにはもう少し時間がかかる印象です。

さて、動画市場での注目動向の1つとして「共同体験/コラボレーション」が挙げられます。たとえば、リストにある「Yubo」はまさにZ世代向けのSNSとして好例。また、「Kast」は最大100名の友人と一緒に動画を楽しめるソーシャルプラットフォームを運営。同じ映像コンテンツを視聴しながらコメントをし合い、体験を共有できます。こうしたコラボを切り口にしたメディア体験は他分野でも起きており、音声SNS「TTYL」にも見られます。現在はTikTokが話題を独り占めするメディア市場ですが、おそらく今後はコラボ体験を制するメディアに大きな注目が集まると予想しています。

特化型新興メディア

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Image Credit: IRL
  • Academia.edu」は学術論文に特化したソーシャルシェアサービスを運営。2007年にサンフランシスコで創業し、3月に1,600万ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Tencentがリードを務め、 Social Discovery Venturesがラウンドに参加。
  • Cailu」はブロックチェーン特化の中国メディア。2018年に上海で創業し、7月に1,000万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。GBCI Venturesがリード投資を務めた。
  • Everdays」は故人情報特化のSNSを運営。2017年にミシガン州で創業し、1月に1,200万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Gordy Companiesがリード投資を務めた。
  • Holloway」は専門家監修のオンラインビジネス誌を刊行。2016年にサンフランシスコで創業し、8月に460万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。NEA、The New York Times、South Park Commonsがラウンドに参加。
  • IRL」はオフラインイベント特化のSNSを運営。2017年にサンフランシスコで創業し、6月に800万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Goodwater Capital、Founders Fund、Kleiner Perkinsがラウンドに参加。
  • Overtime」は中高生スポーツに特化したメディアを運営。2008年にニューヨークで創業し、2月に2,300万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Spark Capitalがリード投資を務めた。

FacebookやTwitterの手の届かない、特化型メディアの成長が印象的な1年でした。注目のスタートアップは「IRL」。“in real life”の省略語であるIRLは、カレンダーSNSを提供。友人や気になるイベントをフォローして、地元で飲み会やミートアップが開催されると通知が来る“ソーシャル・カレンダー”という新たな分野を開拓しました。

従来、カレンダーは単なるリマインドツールでしかありませんでしたが、SNSの切り口で提供価値を再定義したのがIRLです。近くにいる人気のイベント開催者をフォローする体験は、普段Google Calendarを通じて感じる価値と違いはないため、ユーザーにとってはしっくりと来る導線なはずです。コミュニティを活性化させる新たなカレンダーメディアといえます。

また、「Holloway」も面白い事例です。同社は専門家がキュレートしたPDF雑誌を刊行するニッチメディアを運営します。たとえば、資金調達のノウハウが詰まったPDF資料を100ドルで販売しています。内容は随時更新されることから、常に最新の情報をキャッチアップすることができます。Hollowayがディスラプトするのは業界雑誌といえます。専門性の高いニッチ情報を発信することで、通の人に親しまれるメディアを目指していることが伺えます。

投資家にはNew York Timesも名を連ねていることから、新しいメディア収益源として注目されていることがわかります。New York Timesは専門家がキュレートした製品レビューメディア「Wirecutter」を買収していることから、バーティカル特化メディアの買収に積極的だと予想がつきます。あと2-3年ほどしてHollowayが実績を積み重ねれば、New York Times傘下になることも夢ではないでしょう。日本の大手メディアもこうしたニッチメディア買収トレンドに迎合する可能性があるかもしれません。

“専門化”するコミュニティ

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Image Credit: Winnie
  • Brainly」はP2Pラーニング型の質問サイトを運営。2009年にポーランドで創業し、7月に3,000万ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Naspersがリードを務め、Runa Capital、Manta Rayがラウンドに参加。
  • Chief」は女性特化のコミュニティを運営。2018年にニューヨークで創業し、6月に2,200万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。General CatalystとInspired Capitalが共同でリード投資を務めた。
  • Cocoon」は親族や近しい友達に特化したSNSを運営。2018年にサンフランシスコで創業し、6月に300万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Lerer Hippeauがリードを務め、Y Combinator、Susa Ventures、Norwest Venture Partners、Advancit Capital、Foundation Capital、iNovia、Shrug Capital、SV Angelがラウンドに参加。
  • DEV」はソフトウェアエンジニア特化のSNSを運営。11月に1,150万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Mayfieldがリードを務め、OSS CapitalとCharge VCがラウンドに参加。
  • Freeda」は女性特化メディアを運営。2016年にミラノで創業し、9月に1,300万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Alvenがリードを務め、Endeavor Catalystらがラウンドに参加。
  • Glitch」はピアコーディング・プラットフォームを運営。2000年にニューヨークで創業し、7月に3,000万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Tiger Global Managementがラウンドに参加。
  • Homie」は外国生まれおよび海外駐在者向けオンラインコミュニティを運営。2014年にソルトレイクシティーで創業し、1月に2,254万ドルの資金調達を実施。Canaan PartnersとSpark Capitalが共同でリード投資を務めた。
  • Mawdoo3」はアラブ語特化のWikipediaを運営。2010年にジョーダンで創業し、5月に1,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Kingsway Capital、Endure Capital、Endeavor Catalyst、Equitrust、AdamTech Venturesがラウンドに参加。
  • NewtonX」は世界中の専門家に繋がるQ&Aマーケットプレイスを運営。2016年にニューヨークで創業し、6月に1,200万ドルの資金調達を実施。Two Sigma Venturesがリードを務め、Third Prime Capital and Xfundがラウンドに参加。
  • Part&Parcel」はプラスサイズ女性服特化のコミュニティコマースを運営。2016年にサンフランシスコで創業し、5月に400万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Lightspeed Venture Partnersがリードを務め、Peterson Ventures、Village Global、Poshmarkの創業者Manish Chandra氏がラウンドに参加。
  • Peanut」は母親向けSNSを運営。2016年にロンドンで創業し、11月に500万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Index Venturesがリード投資を務めた。
  • SurvivorNet」はガン研究者と患者を繋ぐメディアプラットフォームを運営。ニューヨークで創業し、350万ドルの資金調達を実施。Gatemore Venturesらがラウンドに参加。
  • Tempest」はアルコール依存症改善オンラインプログラムおよびコミュニティを運営。2014年にニューヨークで創業し、10月に1,000万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Slow Ventures、Female Founders Fund、AlleyCorp、Refactor、Green D Venturesがラウンドに参加。
  • Valence」は黒人特化のコミュニティを運営。2019年にロサンゼルスで創業し、11月に250万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Upfront Venturesがリードを務め、Sinai Ventures、Human Ventures、High Alphaがラウンドに参加。
  • Winnie」は母親向けYelpを運営。2016年にサンフランシスコで創業し、10月に900万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Rethink Impactがリード投資を務めた。

コンテンツにエッジを持たせて、特化型のコミュニティを作るメディア戦略が市場の主流になってきています。様々な角度でメディア運営が行われていますが、特徴的なのが2つ。1つはデモグラフィック特化型メディアの台頭。「Chief」や「Freeda」などの女性特化メディアが急成長を遂げています。女性の権利尊重やダイバーシティの機運を追い風に、様々な人たちが力強いコミュニティを作り上げている印象です。黒人特化のコミュニティ「Valence」のように、女性向けから他分野へと、ダイバーシティ・メディアの考えが広まりつつあります。

もう1つは母親向けメディア。「Winnie」は好例です。同社は母親版食べログのようなサービスを展開。母親ユーザーが投稿した詳細なコメントを参考にして近場の子連れに優しい遊び場やレストランを検索できます。熱量の高いコメントが多く、特化型市場を押さえることでコアファンの獲得に成功しています。元々は子供連れに優しい場所情報を提供する地図アプリとして始まり、領域特化型Google Mapとして立ち上がりました。今では口コミ情報サイトにまでサービスの多角化を果たしていますが、地図メディアとしても面白い事業展開が今後見込めるかもしれません。

制作集団・ツール

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Image Credit: Superplastic
  • Brud」はバーチャルインフルエンサーLil Miquelaを制作。2,000万ドルの資金調達を実施。Spark Capital、Sequoia Capitalらがラウンドに参加。
  • Frame.io」は動画編集ツールを提供。2014年にニューヨークで創業し、11月に5,000万ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Insight Partnersがリードを務め、Accel、FirstMark、SignalFire、Shasta Venturesがラウンドに参加。
  • Kapwing」はミームコンテンツ作成ツールを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、9月に1,100万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。CRVがリード投資を務めた。
  • Superplastic」はSNS向けのCGマスコットキャラを制作。2017年にバーリントンで創業し、7月に1,000万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Craft Venturesがリードを務め、Global Village、Betaworks、Canaan Partners、Shrug Capital、Cyan Bannister氏、Scott Belsky氏、Scooter Braun氏がラウンドに参加。

筆者がサンフランシスコで動画メディア企業にいた際から使っていたのが「Frame.io」。当時は創業から1年ほどしか経っていませんでしたが、すでに美大生の間でも使われていました。Adobeが手を出せていない機能を備えた領域特化の制作ツールには、成長可能性が大いにあると感じさせられました。今では5,000万ドルもの資金調達をして、動画コラボ編集ツールとして不動の地位を得ています。

同じ流れがMEME市場でも起きています。「Kapwing」はその代表格になりつつあると言えるかもしれません。また、WebAR作成プラットフォーム「8th Wall」など、時代によって多様化するメディア編集の分野で活躍するスタートアップが多数登場しています。

また、バーチャルインフルエンサーが台頭した年でもありました。代表的なものが「Brud」と「Superplastic」。どちらもInstagramで大人気ですが、クリエティブ要素が非常に高く、同じようなサービスを立ち上げるには非常に難易度の高くて再現性の低い印象です。参入障壁の高い領域だからこそ、Sequioa Capitalなども投資する大型スタートアップにまで成長しています。

旅行体験に新たな価値を

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Image Credit: Remote Year

 

  • AmazingCo」はマニアック体験旅行サービスを提供。2016年にオーストラリアで創業し、9月に510万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Rampersand VCがリードを務め、Artesian and Macdoch Venturesがラウンドに参加。
  • Atlas Obscura」は体験型メディアおよび旅行サービスを運営。2009年にニューヨークで創業し、9月に2,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Airbnbがリードを務め、A+E Networks とNew Atlantic Venturesがラウンドに参加。
  • GetYourGuide」はローカル旅行ガイドのニッチな旅行サービスマーケットプレイスを運営。2009年にベルリンで創業し、5月に4,840万ドルをシリーズEラウンドで実施。SoftBank Vision Fundがリードを務め、Temasek、Lakestar、Korelya Capital、Heartcore Capital、Swisscanto Investがラウンドに参加。
  • Leavy.co」は旅行中に空き部屋を貸し出せば定額収入を得られる民泊サービス。2017年にパリで創業し、11月に1,400万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Prime Venturesがリードを務め、Dominique Vidal、Index Venturesがラウンドに参加。
  • Nowaday」はシティツアーサービスを提供。ニューヨークで創業し、11月に350万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Greycroft、Pritzker Group VC、Raine Groupがラウンドに参加。
  • Remote Year」は月2,000ドルから始めるリモートワーカー同士のグループ旅行サービスを提供。2014年にイリノイ州で創業し、10月に500万ドルの資金調達をシリーズBラウンドを実施。Lightbankがリード投資を務めた。
  • Stride」は専門家が選ぶツアー旅行体験マーケットプレイスを運営。2014年にサンフランシスコで創業し、6月に250万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。JetBlue VenturesとNFXがラウンドに参加。

旅行市場の業態が変わろうとしています。簡単に2つほど事例を紹介します。1つは「Leavy.co」。同社はミレニアル世代のホスト向け民泊プラットフォームを提供。ホストは旅行期間中に部屋を貸し出すだけで収益を上げられます。地元でローカルマネージャーとして働くユーザーが物件を管理してくれるため、最低限の収益が担保された形で旅行に手軽に出掛けられるプラットフォームとなっています。

Leavy.co側は又貸しモデルでマージンから収益を得るため、民泊市場版WeWorkビジネスモデルと言えるでしょう。ホストにとっては旅行コストをある程度カバーできる収入源を得られるため、旅行ハードルを下げられるようになりました。これは2編で話した“金回りの改善”にも繋がる考えです。売上が必ず発生するのかわからない、自宅にいないと民泊を運営できない面倒くささがあるといった課題点を解決し、自由に旅行できるサービスを確立したのがLeavy.coです。

もう1つのは「Remote Year」。リモートワークで働く人の中には、世界中を旅しながら仕事をしたいといった需要を持っている人が多数いるはずです。そこでRemote Yearは4か月の期間から、リモートワーカー同士で旅をしながら仕事ができる旅行パッケージを提供。日本で10年ほど前に登場した旅行マッチングサービス「トリッピース」にも通じる体験性を提供しているのがRemote Yearと感じます。見知らぬ人と世界を旅する提供価値には、世界共通でニーズがあるように思えます。

上記のリストには登場していませんが、いずれパッションエコノミー文脈から、ローカル案内人が自分の旅行プランを売り出せるプラットフォームも登場するかと思います。旅行代理店免許を取得する必要性がありそうですが、この点をハックするスタートアップが訪れる予感がしています。たとえば「Evaneos」などは最も近しい事例として当てはまります。

3編はここまでです。最終4編では不動産や小売を中心に見ていきます。

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サブスク銀行からパッション・エコノミー、注目あつまる「世界の250社」まとめ(2/4)

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1編ではエンタープライズ、フード領域を見てきました。2編では銀行業界を中心に起きている欧米市場の動きや、教育市場で起きている金銭ハードルをなくす動向を見ていきます。 エンタープライズ(1編) フード(1編) フィンテック(本編) 教育(本編) ギグ経済(本編) ヘルスケア(3編) メディア(3編) トラベル(3編) 不動産(4編) 小売(4編) モビリティ(4編) 新興“バンク”の立ち上がり 「A…

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1編ではエンタープライズ、フード領域を見てきました。2編では銀行業界を中心に起きている欧米市場の動きや、教育市場で起きている金銭ハードルをなくす動向を見ていきます。

  • エンタープライズ(1編)
  • フード(1編)
  • フィンテック(本編)
  • 教育(本編)
  • ギグ経済(本編)
  • ヘルスケア(3編)
  • メディア(3編)
  • トラベル(3編)
  • 不動産(4編)
  • 小売(4編)
  • モビリティ(4編)

新興“バンク”の立ち上がり

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Image Credit: MoneyLion
  • Atom Bank」はモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2014年にイギリスで創業し、7月に5,000万ユーロの資金調達を非公開ラウンドで実施。Woodford Patient Capital Trust、BBVA、Toscafund、Perscitus LLPらがラウンドに参加。
  • Current」は若者向けモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2015年にニューヨークで創業し、10月に2,000万ユーロの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Wellington Management、Galaxy Digital EOSらがラウンドに参加。
  • Chime」はモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2013年にサンフランシスコで創業し、12月に5億ドルの資金調達をシリーズEラウンドで実施。DST Globalがリード投資を務めた。
  • Koho」はモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2014年にトロントで創業し、11月に2,500万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Portag3 Venturesがリードを務め、Greyhound Capitalらが参加。
  • Mercury」はスタートアップ向けのモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。サンフランシスコで創業し、9月に2,000万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Andreessen Horowitz、Naval Ravikantらがラウンドに参加。
  • MoneyLion」は会員制モバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2013年にニューヨークで創業し、7月に1億ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Edison PartnersとGreenspring Associatesが共同でリード投資を務めた。
  • Monzo」はモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2015年にロンドンで創業し、6月に1.13億ユーロの資金調達をシリーズFラウンドで実施。YC’s Continuity fundがリード投資を務めた。
  • Nubank」はラテンアメリカ地域にてモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2013年にブラジルで創業し、7月に4億ドルの資金調達を実施。TCVがリード投資を務めた。
  • N26」はモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2013年にベルリンで創業し、7月に1.7億ドルの資金調達をシリーズDラウンドで実施。 Insight Venture Partnersがリードを務め、GICがラウンドに参加。
  • Point」はモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2018年にサンフランシスコで創業し、1月に120万ドルの資金調達をプレシードラウンドで実施。
  • Rho Business」はスタートアップ向けのモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2018年にニューヨークで創業し、10月に490万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Inspired Capitalがリード投資を務めた。
  • Starling Bank」はモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2014年にロンドンで創業し、10月に3,000万ユーロの資金調達を実施。Merian Chrysalisがリードを務め、 JTCらがラウンドに参加。
  • Step」は若者向けモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2018年にパロアルトで創業し、7月に2,250万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Stripeがリード投資を務めた。
  • Uala」はラテンアメリカ地域にてモバイル・バンキングサービス(チャレンジャーバンク)を提供。2017年にアルゼンチンで創業し、11月に1.5億ドルの資金調達を実施。TencentとSoftBank’s Innovation Fundが共同でリード投資を務めた。
  • Joust Labs」は個人事業主向けのオンライン・バンキングサービス(ネオバンク)を提供。2017年にオースティンで創業し、8月に260万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。PTB Venturesがリードを務め、Accion Venture Lab、Financial Venture Studio、Techstarsがラウンドに参加。
  • Open」はインドにてモバイル・バンキングサービス(ネオバンク)を提供。2017年にバンガロールで創業し、6月に3,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Tiger Global Managementがリードを務め、Tanglin Venture Partners Advisors、3one4 Capital、Speedinvest、BetterCapital AngelList Syndicateがラウンドに参加。
  • Oxygen」は個人事業主向けのオンライン・バンキングサービス(ネオバンク)を提供。2018年にサンフランシスコで創業し、1月に550万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Y Combinator、Base Ventures、The House Fundらがラウンドに参加。
  • Starship」はモバイル・バンキングサービス(ネオバンク)を提供。2016年にニューヨークで創業し、12月に700万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Valar Venturesがリード投資を務めた。

新興バンクの調達案件が多数登場してきました。2015年前後に登場した銀行スタートアップたちは、ほぼ同じコンセプトで事業展開を始め、市場はすでにレッドオーシャン化。欧米は規制も比較的緩く、銀行ライセンスを取得し、自社で当座・普通預金口座やローン事業を展開する「チャレンジャーバンク」が急速に増えています。

一方、銀行ライセンスを持たずに、既存銀行のサービスを統合して新たなサービスとして昇華させる「ネオバンク」はやや下火な印象です。なお、ネオバンクは1編で紹介したAPIを通じて銀行サービスを引き出しています。

レッドオーシャン市場では、攻め方が2つ挙げられます。1つは地域特化。米国では先行者利益を積みつつある「Chime」が市場をリードしています。同社のような先行者利益を得るために、南米やアフリカ地域での市場シェアをいち早く獲得する動きが目立ちます。

もう1つはデモグラフィック特化。主に銀行サービスへのアクセス権を持たなかった中高生に向けた銀行サービスが成長を遂げています。こうした銀行に共通することは、1編の冒頭で触れたアクセシビリティに焦点を当てている点です。

Z世代の若者はクレジットヒストリーを持たないことから、クレジットカードを発行できなかったり、適切な年齢になるまで気軽に銀行サービスにアクセスできない課題意識を持っていました。Z世代ユーザーのユニークな課題意識は、大学を卒業したミレニアル世代以上のペインを持ちます。

この課題を解決するために動いているのが、若者向け新興バンク「Current」に代表される企業です。また、スタートアップや個人事業主向けに特化することで、利用シチュエーションを限定させて人気を得ている、「Mercury」や「Oxygen」などの銀行も登場しています。こうしたデモグラフィック特化の事業アイデアでニッチ領域を独占する銀行サービスに商機が生まれています。

リストの中で興味深い事例が、「MoneyLion」の推し進める“Netflix for banking”に関する事業コンセプト。同社は「Core」「Plus」「Instacash」の3つのプランを元に会員制度を敷き、月額9.99 – 19.99の範囲でユーザーから収益化します。

銀行サービスは一般的にレンディングビジネスで収益化をしていると考えられますが、サブスクリプションモデルを導入することで、安定した収益構造を作り上げていると想像できます。銀行サービスはスイッチコストが多くかかるため、競合へ逃げることはあまりないはずです。

そのため、事業ベースをサブスクリプションにすることで、高いLTVを収益に直結させられる算段です。ユーザーにとっては必要なサービスだけ引き出せるため、多量なサービスをどう選べば良いのかわからなくなる複雑性や、サービスの過剰供給を防げるメリットを選べます。日本でも“サブスク銀行”の業態は登場しても不思議ではなさそうです。

カードの普及

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Image Credit: Deserve
  • Deserve」は若者向けにクレジットカードを提供。2013年にメンローパークで創業し、11月に5,000万ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Goldman Sachsがリード投資を務めた。
  • Mitto」はZ世代向けにプリペイド・デビットカードを提供。バルセロナで創業し、9月に200万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。InnoCells、Athos Capitalらがラウンドに参加。
  • Petal」はクレジットヒストリーの無い人向けにクレジットカードを提供。。2016年にニューヨークで創業し、1月に3,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Valar Venturesがリード投資を務めた。
  • Ramp Financial」は法人向けカードを提供。ニューヨークで創業し、8月に700万ドルの資金調達を実施。Founders Fund、BoxGroup、Coatue Managementがラウンドに参加。
  • Tribal」は法人向けカードを提供。2016年にサンノゼで創業し、12月に550万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。BECO CapitalとGlobal Venturesが共同でリードを務め、Endure Capital、500 Startups、Valve VC、AR Ventures、Off The Grid Ventures、Rising Tide Fund、RiseUp、Tribe Capitalがラウンドに参加。

先述した銀行サービスにはカードが必ず付いてきますが、この項ではカード発行だけに特化したスタートアップを紹介します。なかでも「Deserve」の動きは注目です。同社はZ世代向けに決済カードを発行する特化型ビジネスから始まりました。若者向けという金融市場の“ラストマイル”へ参入したことから事業を急拡大させてきたのです。

なお、ユーザーの親御さんが手軽に取引を管理できるようにモバイル体験を最適化させています。カードと口座ダッシュボードをモバイル時代に適応させたのがDeserveでした。

現在は全世代向けにカードを発行し、“Credit Card as a Service”をコンセプトに掲げ、あらゆるブランドが手軽にカードとダッシュボードを利用できるオープンプラットフォームになろうとしているのです。しかし、この事業方針は1編で紹介した決済カード発行APIを提供する「Galileo」と競合になります。ユーザー基盤を着実に増やしてブランド力を上げてきたDeserveと、API事業に特化したGalileoのどちらが市場覇権を握るのかに注目が集まります。

Deserveと同じ事業コンセプトを法人向けに展開するのが「Ramp Financial」や「Tribal」です。費用立て替えなどの厄介なプロセスを省くため、各従業員にカードを発行して、マネージャーが利用状況を管理できるUXを提供します。

これは親子向けのカード利用シーンとほぼ同じ関係と言えるでしょう。Deserveに通じる業態は、課題解決ポイントを上手く突いていることから、Ramp FinancialやTribalのように他領域でも活用できますし、日本でも十分に通用するユースケースだと感じます。

金回りの改善

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Image Credit: Otis
  • Capital」は500万ドルからのデットファイナンスサービスを提供。ニューヨークで創業し、10月に500万ドルの資金調達を実施。Greycroft, Future Ventures、Wavemaker Ventures、 Disruptiveがラウンドに参加。
  • CoinList」は投資家と仮想通貨プロジェクトを繋ぐマッチングサービスを展開。2017年にサンフランシスコで創業し、10月に1,000万ドルの資金調達を非公開ラウンドで実施。Polychain Capitalがリードを務め、Jack Dorsey氏がラウンドに参加。
  • Happy Money」はクレジット債務返済サポートサービスを提供。2009年にカリフォルニア州で創業し、9月に7000万ドルの資金調達をシリーズDラウンドで実施。CMFG Venturesがリード投資を務めた。
  • Otis」は若者向けにアート作品の所有権投資プラットフォームを提供。2018年にニューヨークで創業し、12月に1,100万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Maveronがリード投資を務めた。
  • PayJoy」は途上国のモバイルユーザー向けにクレジットヒストリー構築サービスを提供。2015年にサンフランシスコで創業し、5月に2,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Greylock Partnersがリードを務め、Union Square Ventures、EchoVC、Core Innovation Capitalがラウンドに参加。
  • PTO Exchange」 は従業員の未消化有給休暇分を換金するサービスを提供。2013年にワシントン州で創業し、8月に300万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。WestRiver Groupがラウンドに参加。
  • Salaryo」はコワーキングスペースの利用者向けにオフィス敷金のレンディングサービスを提供。2017年にニューヨークで創業し、8月に550万ドルの資金調達を実施。Ruby Ventures とMichael Ullmann’s investment groupがラウンドに参加。
  • SeedLegals」はスタートアップの資金調達および資本管理向けリーガルプラットフォームを提供。2016年にロンドンで創業し、3月に400万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Index Venturesがリードを務め、Kima Ventures、The Family、Seedcampがランドに参加。
  • Uncapped」はスタートアップ向けに収益ベースの資金提供サービスを提供。2019年にロンドンで創業し、12月に1,000万ユーロをシードラウンドで実施。Global Founders Capital、White Star Capitalらがラウンドに参加。
  • Uplift」は後払い/分轄払い旅行サービスを提供。2014年にメンローパークで創業し、12月に2.5億ドルの資金調達をデッドファイナンスで実施。Madrone Capital Partnersがリードを務め、Draper Nexus、Ridge Ventures、Highgate Ventures、Barton Asset Management、PAR Capitalがラウンドに参加。
  • Zestful」はカスタマイズ可能な従業員福利厚生プログラムを提供。2016年にデンバーで創業し、9月に500万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Thrive Capitalがリードを務め、Box Group、Y Combinator、Matchstick Ventures、Third Kind Capital、Shrug Capitalがラウンドに参加。

本項ではお金との新しい接点を作り、流動性を向上させているスタートアップをまとめています。特に興味深いスタートアップは3つほど。1つはZ世代向けアート作品の投資プラットフォーム「Otis」。SNS時代に評価されるストリームグッズや、現代アート作品への投資を可能としています。若者に人気が出るであろうアート作品を、高い流動性を持つ少額投資商材として提供。

Z世代が持つ価値観に合わせて、投資商材を最適化させているのがOtisです。モバイル投資プラットフォーム「Robinhood」や「Stash」にも通じるUXを持っている点は、日本でも通用するかもしれません。

2つ目は使わなかった有給休暇期間を換金できるサービス「PTO Exchange」。日本と同様に未消化分の有給休暇が溜まれば、転職が決まったのちに消化をして、出勤しない期間が長く発生します。これは企業にとって、新規採用サイクルが滞ってしまうデメリットを背負います。そこでPTO Exchangeが登場しました。

同社は消化しきれない有給休暇を換金して、企業採用の新陳代謝を促進させるソリューションを提供。日本では無理やりにでも有給を使わされる文化が根付いていると思います。ただ、効率的に有給消化をして休みを取るマインドセットも大切ですが、現実はそうはいかないはず。“生産性革命”が叫ばれている今、PTOと同じ仕組みを日本のベンチャーが取り組んでみると面白いかもしれません。

最後は「Zestful」。企業が各従業員に支給する福利厚生額の用途を、従業員側で自由に利用できるサービスです。従来、福利厚生サービスは限定パッケージ内のコンテンツでのみ利用可能でした。しかし、マッサージや旅行割引などの型にはまったコンテンツからしか選べず、必ずしも欲しいと思える福利厚生は落ちていません。そこでZestfulは、NetflixやSpotify、Airbnbに代表されるミレニアル世代に人気のコンテンツの中から自由に選べるように、福利厚生の利用用途に柔軟性を与えました。

福利厚生を普段使うサービスに当てられることで、従業員の満足度も向上。企業側も訴求力の強い福利厚生パッケージを提示できるようになりました。

日本の福利厚生サービスは限定的、かつコンテンツが一新されていない印象であるため、日本版Zestfulには大きな商機があるかもしれません。各従業員に渡すデビットカードを発行することで、取引管理サービスとしての価値提供もできるでしょう。

多様な保険サービス

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Image Credit: Avinew
  • Avinew」は自動運転車ドライバー向けに利用量ベースの保険サービスを提供。2016年にカリフォルニア州で創業し、6月に500万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Crosscut Venturesがリードを務め、American Family Ventures、Draper Frontier、RPM Venturesがラウンドに参加。
  • Route」は配達物トラッキングおよび購入物1%の保険サービスを提供。2018年にユタ州で創業し、11月に1,200万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Album VCとPeak Venture Capitalがラウンドに参加。
  • SafetyWing」はリモートワーカー向けの医療保険サービスを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、8月に350万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Foundersがリードを務め、Credit Ease Fintech FundとDG Incubationがラウンドに参加。
  • Thimble」は個人事業主向けに短期ビジネス保険サービスを提供。2015年にニューヨークで創業し、10月に2,200万ドルをシリーズAラウンドで実施。IACがリードを務め、Slow Ventures、AXA Venture Partners、Open Oceanがラウンドに参加。
  • Vouch Insurance」はスタートアップ向けのビジネス保険サービスを提供。サンフランシスコで創業し、11月に4,500万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Y Combinator Continuityがリード投資を務めた。
  • WorldCover」は途上国の農家向けに天候による収穫高を見込んだ安価な農業保険サービスを提供。2015年にニューヨークで創業し、5月に600万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。MS&AD Venturesがリードを務め、EchoVC、Y Combinator、Western Technology Investmentがラウンドに参加。

保険市場ではAI機械学習を使い、保険額を事前予測するケースが増えている印象です。たとえば「Avinew」は、自動運転向けの新たな保険サービスを提供。ドライバーの運転速度やルート、運転地域の天候・犯罪率などのいくつかの指標データを基に保険料を自動算出します。LiDARや車載カメラを通じて得られる運転データを溜まれば、より精度高く保険料を計算できるようになるでしょう。

このように車外環境データを膨大に収集できる時代に最適化した保険サービスが登場していますので、日本の大手保険会社もいずれは同じモデルで事業を仕掛けるのではないでしょうか。また、途上国の農家向け保険サービスの「WorldCover」も、同様にAIを用いてリスクを算出しています。

「出世払い制度」の広がり

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Image Credit: Lambda School
  • Blair Finances」はISA(収入分配契約)に基づいた学費レンディングサービスを提供。2019年にサンフランシスコで創業し、8月に15万ドルの資金調達を実施。YCombinatorがラウンドに参加。
  • Goodly」は学生ローン返済を従業員福利厚生として提供。2018年にサンフランシスコで創業し、3月に1,300万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Norwest Venture Partnersがリード投資を務めた。
  • FlexClub」はギグワーカー向けに自動車貸し出しプラットフォームを提供。2018年にアムステルダムで創業し、3月に120万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。CRE Venture Capitalがリード投資を務めた。
  • Kenzie Academy」はソフトウェアエンジニア養成プログラムを提供。2017年にインディアナポリスで創業し、11月に1億ドルの資金調達をデッドファイナンスで実施。Community Investment Managementがラウンドに参加。
  • Lambda School」はソフトウェアエンジニア養成プログラムを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、1月に3,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Bedrock Capitalがリードを務め、Vy Capital、GGV Capital、Google Ventures、Y Combinator、Sound Venturesがラウンドに参加。

年々膨らみ続ける学生ローン問題を解決するのが“出世払い制度”を持った教育機関です。「Lambda School」に代表される教育機関では、学生はローン返済などに苦しむ必要がなくなり、ソフトウェアエンジニアになって高給な仕事を得るという明確な目的意識を持って授業を受けます。

一方、学校側は学生を就職させ、事前に契約した授業料を回収するまで学生との関係性は途切れることはありません。卒業後も続くカスタマーサクセスが大事になってくる長期サービスが同校のモデルです。

Lambda Schoolが採用する出世払い制度は、既存の大学機関では収益構造を抜本的に変える必要があるため取り入れられません。しかし、学生はLambdaのようなブートキャンプではなく、大学に通いたいとニーズを持っているのも確かそこで出世払いサービスのみに特化した金融機関も登場しています。「Blair Finances」は学費を肩代わりする代わり、卒業後に返済させるレンディングサービスを展開しました。

どの教育期間でも出世払いで通えるサービスですが、1学生当たりに貸し出す金額と、回収期間が非常に長い難しいモデルです。機関投資家から長期投資商材として資金を集めれば回せるモデルになるのではないでしょうか。

出世払いを採用したレンディングモデルは、ギグ経済にも波及しています。「FlexClub」はUberドライバー向けに自動車を貸し出す投資プラットフォームを展開。投資家は自動車を購入し、FlexClubを通じてドライバーに貸し出します。

週もしくは月単位で収益分配されるため、自動車を長期投資対象として運用できるモデルです。ドライバーも頭金0で自動車を所有できるため、双方にとってWin-Winの関係を構築できます。このように出世払いの考えは教育市場から始まり、他市場へと拡大を見せているのが2019年の大きな流れです。

専門学校の躍進

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Image Credit: Landit
  • Cloud Guru」はクラウドコンピューティングを学ぶためのオンライン学習コースを提供。2015年にロンドンで創業し、4月に3,300万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Summit Partnersがリードを務め、AirTree VenturesとElephantがラウンドに参加。
  • Empowered Education」はウェルネスコーチ育成のためのオンラインコースを提供。2015年にニューヨークで創業し、3月に800万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Rethink Educationがラウンドに参加。
  • Flockjay」はセールスマン養成向けオンラインアカデミーを運営。2018年にサンフランシスコで創業し、10月に298万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Lightspeed Venture Partners、Coatue、Y Combinator、F7、SV Angel、Index Ventures、Serena Williams氏、Will Smith氏がラウンドに参加。
  • Giblib」は医療手術に関するオンライン学習コースを提供。2015年にロサンゼルスで創業し、4月に250万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Mayo Clinic、Venture Reality Fund、Wavemaker 360、USC Marshall Venture Fund、Michelson 20MMがラウンドに参加。
  • Immersive Labs」はサイバーセキュリティに関するオンライン学習コースを提供。2017年にイギリスで創業し、11月に4,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Summit Partnersがリード投資を務めた。
  • Landit」は女性のキャリア育成のためのオンラインコースを提供。2014年にニューヨークで創業し、2月に1,300万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。WeWorkがリードを務め、New Enterprise Associates、Valo Ventures、Workday Ventures、Gingerbread Capitalがラウンドに参加。
  • Ornikar」は自動車免許取得のためのオンライン教員マッチングサービスを提供。2014年にパリで創業し、6月に4,000万ユーロの資金調達をシリーズBラウンドで実施。IdinvestとBpifranceがラウンドに参加。
  • SV Academy」はビジネスディベロッパー養成プログラムを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、6月に950万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Owl Venturesがリード投資を務めた。

インターネットを用いた大規模公開オンライン講座プラットフォーム「MOOC (Massive open online course)」が広がり、市場は寡占状態。「Coursera」「Lynda.com」「Udacity」の3社を利用すれば、必要なオンライン教育コンテンツへほぼリーチできる状態だと言えます。この市場状態で次の勝ち筋を探すには、1つの分野に特化させてユーザー満足度を圧倒的に上げる以外ありません。リストにある通り、2019年は各分野で特化型オンライン教育プロバイダーが登場しました。

いずれのスタートアップもオンライン動画サービスではなく、ブートキャンプ式を採用しています。また、Serena Williams氏やWill Smith氏も出資する「Flockjay」は出世払い制度を採用しています。

各分野のプロフェッショナルの養成機関として、入学コスト0でサービスを提供するモデルが流行っている印象です。出世払いから始まったトレンドは、ソフトウェアエンジニア養成から始まりましたが、今後は専門学校分野へと幅広く広まっていくでしょう。

パッション・エコノミー文脈

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Image Credit: Outschool
  • Mighty Networks」はオンライン学習コース向けウェブサイトビュルダーを提供。2010年にパロアルトで創業し、4月に1,100万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Intel CapitalとSierra Wasatchが共同でリード投資を務めた。
  • Outschool」は小学生教育コンテンツ向けライブ動画マーケットプレイスを提供。2015年にサンフランシスコで創業し、5月に850万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Union Square VenturesとReach Capitalが共同でリード投資を務めた。
  • Patreon」はクリエイター向け有料作品を発表するためのサブスクリプションプラットフォームを運営。2013年にサンフランシスコで創業し、7月に6,000万ドルの資金調達をシリーズDラウンドで実施。Glade Brook Capitalがリード投資を務めた。
  • Substack」は有料ニュースレターを発行できるプラットフォームを運営。2017年にサンフランシスコで創業し、7月に1,530万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Andreessen Horowitzがリード投資を務めた。
  • Tinkergarten」は幼少児向け屋外学習マーケットプレイスを提供。2014年にマサチューセッツ州で創業し、3月に2,100万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Omidyar Network、Owl Ventures、Reach Capitalがラウンドに参加。
  • Zyper」はSNSインフルエンサーがコアファンとブランドと繋がれるマーケティングプラットフォームを運営。2017年にサンフランシスコで創業し、6月に650万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Talis Capitalがリード投資を務め、 Forerunner VenturesとY Combinatorがラウンドに参加。

パッションエコノミー文脈のサービスは2019年で見逃せない動きでしょう。パッションエコノミーの大雑把な定義として、ギグワーカーが自分の個性を活かしてサービス展開できるSaaSを指します。たとえば「Outschool」はライブ動画を通じて自分の教室を持てるプラットフォームを展開。教員免許を持たない人が、手軽に高品質な動画教育サービスを提供できるSaaSです。

創造性に富んだデジタルコンテンツを世界中に発信して稼げる分野特化型SaaSが多々登場してきています。分野を問わず、自分のコンテンツを発信するためのウェブサイトを作成できる「Mighty Networks」のような業態も登場。無料のビュルダーは「Strikingly」や「Wix.com」などが有名ですが、パッションエコノミー特化のウェブサイト作成サービスに注目が集まっています。

デジタルコンテンツ提供者は大規模なオーディエンスを構築し、ニッチな趣味や特技などの情熱を効率的に収益に変えて生計を立てられます。誰もが「マイクロ起業家」になれるツールであり、私たちが現在考える「仕事」の概念を大きな変える意味合いを持ちます。このトレンドはしばらくは続くでしょう。

2編はここまでです。3編ではヘルスケアやメディアを中心に見ていきます。

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スーパーフードにクラウドキッチン、注目あつまる「世界の250社」まとめ(1/4)

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節目である「2020年」以降の動きを考える時がやってきました。日本では東京オリンピックがあるため、なおさら経済や文化活動が大きく動く年でもあり、誰もが注目しているトピックでしょう。 そこで本記事では、2019年に筆者が日々ウォッチしてきた約5,000社の調達スタートアップの中から、30のキーワードにまとめた250社を見ていくことにします。みなさんの2020年にとって、1社でも参考になる企業を紹介で…

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Photo by Daniel Gorostieta on Pexels.com

節目である「2020年」以降の動きを考える時がやってきました。日本では東京オリンピックがあるため、なおさら経済や文化活動が大きく動く年でもあり、誰もが注目しているトピックでしょう。

そこで本記事では、2019年に筆者が日々ウォッチしてきた約5,000社の調達スタートアップの中から、30のキーワードにまとめた250社を見ていくことにします。みなさんの2020年にとって、1社でも参考になる企業を紹介できればと思います。

なお、今回取り上げているスタートアップの大半が欧米拠点の企業であり、資金調達の大きさは選出基準になっていません。あくまでも筆者の定性的な判断により選んでいます。また、創業年やラウンドなどの細かなデータはCrunchbaseの情報を引用しています。

さて、総評を先に述べると、全てのスタートアップに共通するコンセプトは「Accessibility(アクセシビリティ)」です。

「技術ブレークスルー」、「お金持ちしか得られなかった特権サービスの民主化」、「扱いづらかった旧来型の仕組みやサービスUX改善」に取り組んだスタートアップにユーザーが集まっている印象です。こうしたスピード感を持ったアクセシビリティが日本市場でも起きています。

昔のようにタイムマシン経営を楽にできるほど日本市場は未成熟のままではなくなりました。今では欧米、もしくは中国市場で見かけたスタートアップ事例をすぐに日本で再現する企業が現れています。欧米スタートアップのコンセプトは、矢継ぎ早に日本にやってくるでしょう。アクセシビリティの波が来て、あらゆる業界・業種でエンドユーザーの私たちが新しい体験を得る機会が増えるはずです。

それではここから、下記30のキーワード別にスタートアップの説明をしていきます。各スタートアップがどんなモノに対してアクセシビリティを与えているのかを考えると、何か良いアイデアが閃くかもしれません。まずはエンタープライズから紹介を始め、4編に渡り説明をしていきます。

  • エンタープライズ(本編)
  • フード(本編)
  • フィンテック(2編)
  • 教育(2編)
  • ギグ経済(2編)
  • ヘルスケア(3編)
  • メディア(3編)
  • トラベル(3編)
  • 不動産(4編)
  • 小売(4編)
  • モビリティ(4編)

まだ先がある、ワークツール新星登場

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Image Credit: Tandem
  • Gtmhub」はOKR管理に特化したワークツールを提供。2015年にサンフランシスコで創業し、2019年12月に900万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。CRVがリード投資を務めた。
  • Mattermost」はSlackに代わるチームメッセージプラットフォームを提供。2011年にパロアルトで創業し、7月に5,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Y Combinator’s Continuity Fundがリードを務め、Battery Ventures、Redpoint Ventures、S28 Capitalらがラウンドに参加。
  • Monday.com」はチームワークフロー管理ツールを提供。2012年にイスラエルで創業し、7月に1.5億ドルの資金調達をシリーズDラウンドで実施。Sapphire Venturesがリードを務め、Hamilton Lane、HarbourVest Partnersらがラウンドに参加。
  • Notion」はEvernoteに代わるチームワークステーションを提供。2016年にサンフランシスコで創業し、7月に1,000万ドルの資金調達をエンジェルラウンドで実施。
  • OpenFin」はファイナンス業界関係者向けのOSを提供。2010年にニューヨークで創業し、12月に2,200万ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。HSBCがリードを務め、 Bain Capital Ventures、Barclays、CME Ventures、DRW Venture Capital、J.P. Morgan、NYCA Partners、Pivot Investment Partners、Wells Fargoがラウンドに参加。
  • Parabol」はチーム運営手法の1つであるレトロスペクティブに特化したワークツールを提供。2015年にロサンゼルスで創業し、11月に400万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。CRVがリードを務め、HaystackやSlack Fundらがラウンドに参加。
  • Quill」はエンタープライズ向けメッセージサービスを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、10月に1,250万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Index Venturesがリード投資を務めた。
  • Swit」は多機能ワークコラボレーションツールを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、11月に600万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Korea Investment Partnersがリードを務め、Hyundai Venture Investment Corporation、Mirae Asset Venture Investmentがラウンドに参加した。
  • Tandem」は遠隔地に住む従業員同士を繋ぐ仮想オフィス環境を提供。2019年にサンフランシスコで創業し、8月に750万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Andreessen Horowitzがリード投資を務めた。
  • Taskade」はスタートアップチーム向けコラボレーションツールを提供。2017年にニューヨークで創業し、10月に500万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Grishin RoboticsとY Combinatorらがラウンドに参加。
  • Threads」は期限なし・緊急タスクリクエストなしをモットーに、ゆっくりと特定トピックを議論できるワークプレイスを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、2月に1,050万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Sequoia Capitalがリード投資を務めた。
  • Workona」はクラウドワークアプリの管理プラットフォームを提供。2017年にサンマテオで創業し、12月に600万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。K9 VenturesとAugust Capitalらがラウンドに参加。
  • Glue Collaboration」はVR向けコラボレーションプラットフォームを提供。2018年にフィンランドで創業し、11月に350万ユーロ(380万ドル)の資金調達をシードラウンドで実施。Maki.vcがリードを務め、Reaktor Innovations、Bragiel Brothers、Foobar Technologiesらがラウンドに参加。
  • Emerge」はMR向けコラボレーションツールを開発。2015年にロサンゼルスで創業し11月に1,200万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。M13がリードを務め、Vulcan CapitalやLionTree Partnersらがラウンドに参加。

2019年はプロジェクト管理やメッセージツール領域が大きく動いた年でした。

大きな流れとしては2つ挙げられます。1つはリプレイス。主要ワークツール「Slack」「Evernote」を代替するサービスが急成長を見せています。「Mattermost」や「Notion」の事例を見ていると、こうした動きが顕著であることが見て取れるでしょう。

代替対象となるサービス規模が大きければ大きいほど、それほどユーザー獲得数も急速に獲得できる機会を得ています。5年・10年以上経っているようなサービス体験を変えることで、短期間にグロースできるポテンシャルを示しています。

2つ目は特化型/アドオン。「Taskade」は利用シーンをスタートアップに特化させています。また、「Gtmhub」はアジャイル開発で用いるOKR手法に、「Parabol」はレトロスペクティブの手法に特化。なかでもParbolに関しては非常にニッチな領域を抑えているといいながらも、すでに買収先を考えながら着実にユーザー数を伸ばしている印象です。

500超の企業が利用していることなので、爆発的な成長を見せてはいないものの、Slack Fundが投資していることから、いずれはSlackによる買収などが想定できるでしょう。特化型ツールは、ある程度までユーザー数を伸ばせばExitを狙えるため投資が集まっていると考えられます。

加えて、「Workona」に代表される各ワークステーションを束ねる、拡張型ツールの高い利便性に人気が集っています。同じようなツールにYコンビネータ卒業の「Station」が挙げられます。このような利便性の高いアドオン型ツールも見逃せません。

Gmailの次

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Image Credit: Superhuman
  • Consider」はスタートアップ向けのメールサービスを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、8月に500万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Kleiner PerkinsやBedrock Capitalがラウンドに参加。
  • Superhuman」は既存メールサービスのヘビーユーザー向けに使い勝手の良い有料メールサービスを提供。2014年にサンフランシスコで創業し、5月に3,300万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Andreessen Horowitzがリード投資を務めた。
  • Loom」は企業向け動画メッセージツールを提供。2016年にサンフランシスコで創業し、11月に3,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Sequoia Capitalがリードを務め、Kleiner Perkins、Figma、Kevin Systrom、Mike Krieger、Mathilde Collinらが参加。

誰もが使うGmailを超えることは至難といえます。しかし「Superhuman」は強気の価格設定とターゲティング、圧倒的な体験提供でこれを実現させています。同社は月額30ドルで次世代メールプラットフォームを提供。ターゲットユーザーは3時間/日以上メールを利用しているヘビーユーザーのみ。豊富なショートカットが用意されており、慣れると使い勝手が良いそうですが、サービス利用時に1on1動画セッションがあるほど心構えが求められます。

ただ、著名VCであるAndreessen Horowitzが参加している点や、10万人以上がウェイトリスト入りしている市場需要から、確実にGmailの体験を超える突破ポイントを掴んでいるといえるでしょう。サービス体験は価格を裏切らないものと呼べそうです。強気な価格設定で私たちが日常的に使うサービスを一新するモデルは他業種に見られます。たとえば「Andrena」は月額25ドルから高速インターネット回線を提供しています。

注目の動きは「Loom」にも見られます。コンシューマー市場で起きている流れがエンタープライズ市場に派生しています。今やInstagram、Snapchat、Facebookに代表されるSNSでは画像や動画などのビジュアルコンテンツが主流に。SHOWROOMのようなライブ動画配信ツールも人気です。

一方、仕事で使うツールは全てテキストがメイン。普段使うコミュニケーション媒体が変わっているにも関わらず、企業でのコミュニケーションスタイルはそのまま。このギャップに切り込んだのが、動画コミュニケーションツールを開発するLoomです。ユーザー体験としても非常に自然と受け入れられるでしょうし、おそらく今後、競合が多く出てくるでしょう。

ソフトウェアが飲み込む多領域

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Image Credit: InCountry
  • Clumio」はデータバックアップ版AWSを提供。2017年にサンノゼで創業し、1.35億ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Sutter Hill VenturesとAltimeter Capitalが共同でラウンドに参加。
  • Fictiv」はハードウェア製品の製造工場ネットワークを提供。2013年にサンフランシスコで創業し、3,300万ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。G2VPがリード投資を務めた。
  • InCountry」は国際データコンプライアンスに対応するためのデータ保管プラットフォームを提供。2019年にサンフランシスコで創業し、7月に1,500万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Arbor Ventures、Global Founders Capital、Mubadala、Caffeinated Capital、Felicis Ventures、CRV、Team Builder Venturesらがラウンドに参加。
  • Submittable」は各種書類申請およびレビュープラットフォームを提供。2010年にモンタナ州で創業し、7月に1,000万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Next Coast Venturesがリードを務め、True Ventures、Next Frontier Capital、Flywheel Venturesらがラウンドに参加。
  • Tulip」はメーカー向けにノーコード・開発/製造プラットフォームを提供。2014年にマサチューセッツ州で創業し、9月に2,110万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。DMG MORIがリード投資を務めた。
  • ZenBusiness」は創業関連資料の申請プラットフォームを提供。2015年にオースティンで創業し、9月に1,500万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Greycroft、Lerer Hippeau、Revolution Rise of the Rest Fund、Rosecliff Venture Partners、Interlock Partners、Recruit Strategic Partnersらがラウンドに参加。

“Software is eating the world”のコンセプトが広がってから10年以上経ちました。SaaS系サービスは数多登場してきましたが、未だサービス展開先が残っています。たとえば「Clumio」のような特化型AWS業態をアジア圏で再現すれば大きく成長できるかもしれません。また、「Fictiv」のように工場への発注ラインをネットワーク化してしまう、業界特化型Airbnbのアイデアも日本市場で十分に躍進の機会が得られるはずと考えます。

時代によってSaaS進出範囲が増える点も見逃せません。「InCountry」は現在話題になっているデータ保護規則に対応するための“Data-Residency as a Service”を提供します。クラウド上にアップされているデータを規制に則った形で、物理的に世界中の任意の安全な場所に保存できるサービス。GAFAを筆頭とする大手IT企業のプライバシーデータ問題を解決できるSaaSとなっています。

データ管理の問題は10年前にはそこまで大きくはありませんでしたが、時代が進むにつれて課題意識が膨れ上がってきました。時代の境目を見定めてサービス化することで急成長が狙えることを、InCountryの事例から伺い知れます。同社の事業視点は市場の種類に関わらず、あらゆる起業家・事業家に対して良い示唆をもたらせてくれると感じます。

API化が続く世界

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Image Credit: Bud
  • Kong」はオープンソース・APIゲートウェイを開発。2010年にサンフランシスコで創業し、3月に4,300万ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Index Venturesがリードを務め、Andreessen Horowitz、Charles Rivers Ventures、GGV Capital、World Innovation Labらがラウンドに参加。
  • Middesk」は企業間取引のバックグラウンドチェックに関するAPIを提供。2018年にサンフランシスコで創業し、9月に400万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Accelがリードを務め、Sequoia CapitalとY Combinatorがラウンドに参加。
  • RapidAPI」はAPIマーケットプレイスを運営。2014年にサンフランシスコで創業し、7月に2,500万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。M12がリードを務め、DNS Capitalや初期投資家Andreessen Horowitz、Green Bay Capitalがラウンドに参加。
  • Scale AI」はAPI経由で送られてきたコンテンツに対して、自動ソートおよびラベリング付けを行うサービスを提供。2016年にサンフランシスコで創業し、8月に1億ドルをシリーズCラウンドで調達。Index Venturesをリードを務め、AccelとFounders Fundがラウンドに参加。
  • SendBird」はチャット・メッセージングAPIサービスを提供。2012年にサンマテオで創業し、5月に1.02億ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Tiger Global Managementがリードを務め、ICONIQ Capitalらがラウンドに参加。
  • StrongSalt」はAPIを用いた暗号プラットフォームを提供。2015年にサニーベールで創業し、9月に300万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Valley Capital Partnersがラウンドに参加。
  • Bud」はオープンバンキングAPIを提供。2015年にロンドンで創業し、2月に2,000万ユーロの資金調達をシリーズAラウンドで実施。HSBC、Goldman Sachs、ANZ、InvestecのINVC Fund、InnoCellsらがラウンドに参加。
  • Even Financial」は金融機関向けに各種パートナーサービスと連携できるAPIを提供。2015年にニューヨークで創業し、9月に2,500万ドルの資金調達を実施。Citi VenturesとMassMutual Venturesがラウンドに参加。
  • Galileo」は決済カード発行APIを提供。2000年にソルトレークシティで創業し、10月に7,700万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Accelがリードを務め、Qualtricsの共同創業者兼CEOのRyan Smithらがラウンドに参加。
  • Rapyd」はオンライン決済APIプラットフォームを提供。2016年にロンドンで創業し、10月に1億ドル、12月に2,000万ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Oak HC / FTがリードを務め、Tiger Global Management、Coatue、General Catalyst、Target Global、Stripe、EntréeCapitalがラウンドに参加。
  • Synapse」は各種銀行サービスAPIを提供。2014年にサンフランシスコで創業し、6月に3,300万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Andreessen Horowitzがリードを務め、Trinity VenturesやCore Innovation Capitalらがラウンドに参加。
  • Tink」はオープンバンキングAPIを提供。2012年にストックホルムで創業し、2月に5,600万ドルの資金調達をシリーズDラウンドで実施。Insight Venture Partnersがリードを務め、Sunstoneらがラウンドに参加。
  • Yapily」は企業向けに各金融機関サービスを利用できるAPIを提供。2017年にロンドンで創業し、540万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。HV Holtzbrinck VenturesとLocalGlobeが共同でラウンドに参加。

APIのユースケースとして覚えておきたい動きは2つ。1つはフィンテックAPI領域。スタートアップがオンライン銀行を0から作り上げる際、ユーザー体験にのみに注力し、必要な金融サービスや口座情報はAPIを通じて取得する流れが出来上がっているのが印象的です。

イギリスでは銀行にAPIを開示させるオープンバンキングが義務化され、「Bud」や「Tink」に代表されるサービスが台頭。単一サービスのみをAPIを介して引き出すのではなく、多数の金融サービスを引っ張り出し、自社サービスを作り出すAPIならではのコンセプトは、他市場でも応用できるでしょう。日本では法律の問題からオープンバンキングは実現することは難しいでしょうが、概念はさまざまな市場で使えるため注目です。

次はバックグラウンドチェックAPI。欧米ではUberやAirbnbの登場によりギグワーカーの身辺調査が必ず必要となってきたため、バックグラウンドチェック市場が大きく成長してきました。「Checkr」はこの分野で躍進しています。

日本でも「back check」が登場。そして近年ではバックグラウンドチェックがB2Bへ進出しつつあります。たとえば「Middesk」は法人単位のバックグラウンドチェックサービスを提供。従来のチェック対象は個人でしたが、同社は信頼に足り得る取引先となるかを分析します。B2B向けバックグラウンドチェックは日本市場でも大きく需要を得るはずでしょうし、信頼情報を流通させて社会インフラを作り上げるビジョンは共感性が高いと感じます。

音声ユースケースの模索

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Image Credit: Gong.io
  • Airbud」は自社アプリやWebサービスに音声インターフェースを追加できるサービスを提供。2018年にニューヨークで創業し、7月に4,00万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Hanaco Venturesがリード投資を実施。
  • Descript」はPodcastコンテンツ作成のための音声データ書き起こしおよび編集ツールを提供。2017年にサンフランシスコで創業し、9月に1,500万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Andreessen HorowitzとRedpointがリード投資を務めた。
  • Gong.io」は営業部門向けに音声会話データ特化CRMを提供。2015年にサンフランシスコで創業し、2月に4,000万ドルの資金調達をシリーズBで、12月に6,500万ドルの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Sequoia Capitalがリードを務め、Battery Ventures、Norwest Venture Partners、Shlomo Kramer、Wing Venture Capital、NextWorld Capital、Cisco Investmentsがラウンドに参加。
  • Hugging Face」は自然言語処理アプリ用のオープンソースライブラリを提供。2016年にニューヨークで創業し、12月に1,500万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Lux Capitalがリードを務め、A.Capital、Betaworks、Richard Socher、Greg Brockman、Kevin Durant氏がラウンドに参加。
  • Replica Studios」は自分の声を音声AI向けに実装できるサービスを提供。2018年にオーストラリアで創業し、12月に250万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。The Venture Reality Fundがリード投資を務め、Carthona Capital、Techstars、Mawson Venturesがラウンドに参加。
  • Robin Healthcare」は医療機関向け音声AIを提供。2017年にバークレーで創業し、9月に1,150万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Norwest Venture Partnersがリード投資を務めた。
  • Soundcheck」はスマートスピーカー向けにWebコンテンツを最適化できるパブリッシングツールを提供。2018年にミルバレーで創業し、11月に150万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。True Ventures、Resolute Ventures、Automattic、Biz Stone、Caterina Fakeらがラウンドに参加。
  • Speechly」は音声UIアプリを実装するためのAPIサービスを提供。2015年にフィンランドで創業し、12月に200万ユーロの資金調達をシードラウンドで実施。Cherry Venturesがリードを務め、 Seedcampらがラウンドに参加。

音声市場は大きく6つの領域に分かれます:「営業向け音声解析サービス」「Webコンテンツとスマートスピーカーの連携」「分野特化型音声AI」「Podcast」「音声チャット」「自然言語処理ライブラリ」。この中で最低限知っておくべきなのが、1つ目に挙げた営業サービス領域の1社「Gong.io」です。同社は次のユニコーン級スタートアップになることが確実視されている企業と言われています。

長年、SalesforceがCRMサービスの王者として君臨していましたが、時代は音声へ。昔から営業マンはテレアポなどを行い契約を取ってきますが、なぜアポが失敗したのかなどのデータ解析が不十分でした。契約成立の有無やステージをSalesforceに入力して終わり。これでは営業チームの力が底上げされません。

そこでGong.ioは音声時代のSalesforceを開発。音声データから営業トークの解析を行い、単なるCRMではなく、改善プラットフォームして機能するソフトウェアを開発しました。時代が経つにつれて音声が重視されるようになります。こうした時代の変遷とともに従来の大手サービス体験を一新させたのがGong.ioです。アジア版Gong.ioの登場も期待されるでしょう。

著名投資家であるMark Cuba氏や、マーケータのGary Vaynerchuk氏も注目する音声市場。これから徐々に頭角を見せてくるAR/VR市場との相性も非常に良く、ゆくゆくは私たちが日常的に行なっているタイピング習慣をリプレイスするかもしれません。

現在はユースケースが非常に限定的ではありますが、どこかでティッピングポイントを迎え、爆発的に普及されることが予想される音声サービス。その兆しが今年リリースされたAirPods Pro。本記事執筆時点で1か月待ちの需要は、単なるイヤホンとしてではなく、音声時代へ本格的に足を踏み入れるとっかかりと捉えてもよいかもしれません。2C向けツールの普及に押されて、様々な市場で音声スタートアップが登場するはずです。

スーパーフード革命

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Image Credit: Meatable
  • Fermented Sciences」はオーガニック昆布茶ブランドを展開。2016年にカリフォルニア州で創業し、11月に2,500万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Ecosystem Integrity FundとPowerPlant Venturesが共同でリードを務め、Blueberry VenturesやMonogram Capital Partnersらがラウンドに参加。
  • Future Meat Technologies」は遺伝子組み換えなしの動物細胞を生産する企業。2018年にイスラエルで創業し、10月に1,400万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。S2G VenturesとEmerald Technology Venturesが共同でリード投資を務めた。
  • Impossible Foods」は植物由来の人工肉を生産する企業。2011年にレッドウッドシティで創業し、5月に3億ドルの資金調達をシリーズEラウンドで実施。TemasekとHorizons Venturesが共同でリード投資を務めた。
  • Meatable」はラボ開発された人工豚肉を生産する企業。2018年にオランダで創業し、12月に1,000万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Union SquareのAlbert Wenger氏やTransferWiseの共同創業者であるTaavet Hinrikusらがラウンドに参加。
  • New Culture」は非動物由来の人工チーズを生産する企業。2018年にサンフランシスコで創業し、9月に350万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Evolv Venturesがリード投資を務めた。
  • New Wave Foods」は植物由来のエビを生産する企業。2015年にサンフランシスコで創業。Tyson Venturesから非公開調達を実施。
  • NotCo」はマヨネーズを始めとする植物由来の代替食品を生産する企業。2015年にチリで創業し、3月に3,000万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。The Craftoryがリードを務め、Kaszek VenturesとIndieBioがラウンドに参加。
  • Redefine Meat」は工業用3Dプリンターを使用した人工肉を生産する企業。2018年にイスラエルで創業し、9月に600万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。CPT Capitalがリードを務め、Hanaco VenturesやThe PHW Groupらがラウンドに参加。
  • Wild Earth」は非動物由来のペットフードを生産する企業。2017年にバークレーで創業し、5月に1,100万ドルの資金調達をシリーズAを実施。VegInvestがリードを務め、Radical Investments、Felicis Ventures、Founders Fund、Mars Petcareがラウンドに参加。

2019年は人工肉スタートアップが数多く誕生した年でした。上記一覧以外にも大型調達した企業が多数いることから、今後3〜5年の期間でファーストフード店が登場するほど供給量が増えて、人工肉しか取り扱わないレストランチェーンも登場することも想像できます。

スーパーフード領域で見逃せないのが日本食品の台頭です。たとえば英国では元バンドマンが立ち上げ、鹿児島や静岡から取り付けた抹茶をエナジードリンクとして販売する「MatchaBar」がミレニアル世代から人気を博しています。また、「Fermented Sciences」のように昆布茶をブランド商品として展開する事例も登場。

いずれも仕掛け人が日本人でないことが悔やまれます。海外では一切認知のない日本食を、若者向けにブランディングすることで一定層から人気を集められる市場性を、彼らが教えてくれています。

日本のスタートアップは地の利もありますし、いつでもこの分野で攻勢をかけられるはずです。フード領域で起業を考えられている方は、ジャパニーズフード + 越境領域は狙い所かもしれません。ちなみにスーパーフードではありませんが、日本の和牛農家から直接肉を仕入れられるサブスクサービス「Crowd Cow」は1,500万ドルもの調達をして順調に成長しています。

クラウドキッチンの台頭

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Image Credit: Virtual Kitchen Co
  • CloudKitchens」は元Uber創業者Travis Kalanickが立ち上げたクラウドキッチン事業。2016年にロサンゼルスで創業し、11月に4億ドルの資金調達を実施。Saudi Arabia’s Public Investment Fundがラウンドに参加。
  • Keatz」はドイツ拠点のクラウドキッチンを運営。2015年にベルリンで創業し、3月に1,200万ユーロの資金調達をシリーズBラウンドで実施。Project A Ventures、Atlantic Labs、UStart、K Fund、JME Venturesがラウンドに参加。
  • Muy」はラテンアメリカで展開するチポトレ特化のクラウドキッチンを運営。2018年にコロンビアで創業し、10月に1,500万ドルの資金調達をシリーズBラウンドで実施。ALLVPがリード投資を務めた。
  • Nosh」は香港拠点のクラウドキッチンを運営。2015年に香港で創業し、7月に170万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。
  • Panda Selected」は中国拠点のクラウドキッチンを運営。2016年に北京で創業し、2月に5,000万ユーロの資金調達をシリーズCラウンドで実施。Tiger Globalがリードを務め、DCMとGlenridge Capitalがラウンドに参加。
  • Rebel Foods」はインド拠点のクラウドキッチンを運営。2010年にインドで創業し、7月に1.25億ドルの資金調達をシリーズDラウンドで実施。Go Venturesがラウンドに参加。
  • Virtual Kitchen Co」はレストランブランド向けに最適なキッチンおよび配達拠点を提供。2018年にサンフランシスコで創業し、6月に1,500万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Andreessen HorowitzとBase10 Partnersが共同でリード投資を務めた。
  • Yummy Corp」はインドネシア拠点のクラウドキッチンを運営。10月に775万ドルの資金調達をシリーズAラウンドで実施。Intudo Venturesがリード投資を務めた。
  • 2ndKitchen」は飲食施設と近隣レストラン事業者を繋げるマッチングプラットフォームを提供。2017年にシカゴで創業し、11月に300万ドルの資金調達をシードラウンドで実施。Hyde Park Venturesがリードを務め、MATH Venture Partners、Great North Labs、Bragiel Brothers、M25がラウンドに参加。

UberEatsに代表されるフードデリバーサービスの登場以来、実店舗を持たず、アプリ上だけで店舗展開をする“バーチャルレストラン”(ゴーストレストランとも呼ばれる)の業態に注目が集まっています。

バーチャルレストラン事業を実現するには、客席の無い、調理場と配達拠点を兼ねる“クラウドキッチン”(ゴーストキッチンとも呼ばれる)が必要となります。こうしたキッチン拠点をネットワーク化して提供するサービスが世界各地で台頭してきました。

主にキッチンを外部飲食事業者に提供する、ネットワークサービスが多数登場してきていますが、なかには「Muy」のように自社運営をするスタートアップも登場しています。同社はUberEatsなどの外部プラットフォームにデータを取られない自社事業の強みを活かし、ビックデータを駆使してAIを使った事前注文予測サービスを実装し、需要と供給のマッチングを狙います。

店舗運営コストをクラウドキッチン化を通じて削り、データを見ながら料理を作り過ぎないようにして収益分岐点を狙う事業モデルです。ちなみに過去、「SpoonRocket」がデータを駆使した弁当配達事業を興して注目を集めながら倒産をしており、難易度は比較的高いと思われます。

世界的に見てもクラウドキッチンサービスは競合が多いため、次の事業モデルが模索されています。その答えの1つが、Andreessen Horowitzが投資をした「Virtual Kitchen Co」です。同社はキッチンを提供するだけでなく、地域でどの料理が人気を集めそうか、どの場所にキッチンを置くべきか、人員はどの程度配置すれば良いのかなど、AI事前予測を使った総合ソリューションを提供。

先述したMuyが持つAIノウハウを外部へオープンにしているような事業モデルです。おそらく今後、Virtual Kitchen CoのようなAIを絡めたネットワークビジネスが注目を集めそうです。

面白いスタートアップとして「2ndKitchen」も挙げられます。自社店舗では作りきれない料理を近隣のクラウドキッチン業者に作ってもらい、店舗にまで届けてもらうサービスです。まさに“メニューの拡張”を実現しているスタートアップと言えるでしょう。従来、ユーザーの自宅に届けることを前提にバーチャルレストラン事業は考えられてきましたが、店舗に届けるコンセプトを2nd Kitchenは提案しています。他店舗から届けられた食事を好んで食べられるのかどうか、UX上の懸念点はありますが、B2Bマッチングプラットフォームとしての視点は興味深いでしょう。

1編はここまでです。2編ではフィンテック領域を中心に事例を見ていきます。

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“ペガサス”企業の見つけ方 ーー 1億ドル事業分析17の黄金律【後半】

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前半からの続き。後半では具体的な事例で検証してみます。 Microverseは著名アクセラレータ「Y Combinator」の2019年夏のプログラムを卒業したブートキャンプ式の教育機関です。ソフトフェアエンジニアを育成するプログラムを運営しています。1プログラムは約6カ月で終了します。授業料は出世払い制で、毎月1,000ドル以上のフリーランス業務を得てから、月収の15%を、合計1.5万ドルに至る…

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Image Credit: Microverse

前半からの続き。後半では具体的な事例で検証してみます。

Microverseは著名アクセラレータ「Y Combinator」の2019年夏のプログラムを卒業したブートキャンプ式の教育機関です。ソフトフェアエンジニアを育成するプログラムを運営しています。1プログラムは約6カ月で終了します。授業料は出世払い制で、毎月1,000ドル以上のフリーランス業務を得てから、月収の15%を、合計1.5万ドルに至るまで毎月支払い続ける収益モデルを採用。

<参考記事>

まずは同校のプロダクト・マーケットフィットを説明するためにターゲット顧客の定義から始めましょう。定義は「背景」「課題」「解決策」「市場リアクション」「継続率」の5つで簡潔に分析してみます。

  1. 背景:顧客はどのようなモチベーションや出生の人か
  2. 課題:具体的にどのような問題を抱えている人か
  3. 解決策:どのようなサービスを提供するのか
  4. 市場リアクション:顧客からはどのような反響が生まれているのか
  5. 継続率:どの程度の人が継続してサービスを利用するのか

ターゲット顧客の背景を定義するとソフトフェアエンジニアになりたいフリーランス人材です。学生のバックグラウンドは次の3種類にわかれます。「間違った学位を取得したと感じている人」「学位取得を諦めた人」「大学進学を最初から考えられなかった人」

こうした見込み顧客に共通する課題は、現在低い給与の職を手にしており、場合によっては借金を背負っていると想定してさらにターゲティングします。手持ち金がないため、キャリアチェンジのための復学を出来ずにいます。このことから出世払いのモデルは十分にワークする解決モデルであると考えられます。

Microverseは2019年1月に開講したばかりなので未だ2学期ほどしかプログラムを回していないと考えられます。それでもすでに29個のレビューがすでに集まっており、5つ星中5つの最大評価を得ています。また、サービス立ち上げ前のProducthuntのレビューも最大評価で31ほど獲得しています。サービス提供前・後の両方で十分な評価を得ています。この時点で市場リアクションは十分な質を担保されていると受け取れます。

さらに、全く同じコンセプトの競合校「Lambda School」の卒業率が80%ほど。これは入学プロセスを厳格にしているため離脱率を防げているためでしょう。これと同数値の継続率をMicroverseは弾き出せていると想定できます。

どちらの学校もオンライン学習であるため、諦めの早い人であればすぐに退学できます。違約金なども発生しません。そのため、これほどの卒業率を保てているということは、出世払い学校のサービスは十分に顧客に届けられていると考えられます。

ここまででプロダクト・マーケットフィットは満たせていると導き出せます。出世払い学校の領域はすでに市場として出来上がっているため、この回答は当然かもしれませんが、同じ要領で読者のみなさんの事業を分析してみると条件を満たせていない点が見えてくるかもしれません。

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Photo by Serpstat on Pexels.com

さて、次はプロダクト・チャネルフィットしているかを判断します。ここからは「アウトバウンド・セールス」「コンテンツ・マーケティング」「広告」の3つで簡潔に分析します。

  1. アウトバウンド・セールス: 企業側から顧客獲得をどの程度のコストで出来るのか
  2. コンテンツ・マーケティング: サービスは強いコンテンツ力を持ち、十分な訴求力が持ちながら顧客獲得できるものか
  3. 広告: コンテンツ力を安い広告コストで拡散できるのか

Microverseの場合、毎学期100名ほどの学生を募集していると思いますが、毎回1人1人の学生に当たって入学を支援するのは獲得コストがかかりすぎます。この点、アウトバウンド・セールスには不向きといえます。

次にコンテンツ・マーケティングに関してですが、“出世払い学校”という謳い文句は非常に強いコンテンツ力を持ちます。未だ市場にこのコンセプトが登場してから3年ほど。大半の人がこのコンセプトを知らないことから、見込み顧客を惹きつける十分な力を持っていると思います。年々競合は増えていますが、Google検索をすればMicroverseの名前はすぐにでも引っかかるでしょう。ブログ記事による拡散やSEOでも良いポジションを獲得できます。

それでは強いコンテンツ力を拡散するための広告チャネルをMicroverseは獲得できるのでしょうか。最初にターゲティングした低所得へリーチするための効率的な広告はGoogleやFacebook、Twitterなどが挙げられます。また、Microverseの場合、世界中にいるフリーランス人材を対象にしています。競合のLambda Schoolは米国限定ですが、Microverseの場合はターゲットを広告コストの低い途上国に指定できます。そのため、競合と比べて安いコストで大量に顧客獲得できるチャネルを得られます。プロダクト・チャネルフィットは満たせているといえます。

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チャネル・モデルフィットの段階に進みます。「1顧客当たりの平均年間収益(AARPC)」「顧客獲得コスト(CAC)」の2つで簡潔に分析します。

  1. 1顧客当たりの平均年間収益:Average Annual Revenue Per Customer
  2. 顧客獲得コスト:Customer Acquisition Cost

Microverseの卒業生の初任給は5,000ドル/月程度であると想定しましょう。そこで15%の収益分配が12か月(1年間)続くとすると次のような式ができます。

AARPC = 5,000 * 15% * 12 = 9,000ドル

1万5,000ドルまで収益分配が続くため、就職から18カ月ほどMicroverseは収益を立てることができます。一方、学生を輩出させるまでのコストは非常に高くつくと考えられます。先に述べた広告コストだけでなく、見込み顧客を入学させるまでいくつものステップを要します。

具体的にCACは次のものを含むものになります。「魅力的なコンテンツでトラフィックを呼び込む」「広告コストをかけて見込み顧客獲得」「提供価値に共感して、適合性のある学生を選出」「プログラムを運営して離脱を抑えながら優秀な学生を育成する」「卒業前にキャリア相談に乗りながら面接指導も行い就職率を上げる」

ここでCACを下げるのに一役買うのが最初に述べた「市場リアクション」です。口コミは上々であることから、卒業生が新規学生を獲得してくれる強いチャネルになることが予想されます。サービスの満足度が高いことから、卒業生が増えるほどCACを下げられると考えます。

実際、Microverseの利益率は90%と創業者が述べていることから、非常においしい事業であると予想できます。このことから、チャネル・モデルフィットは卒業生が増える数年後に十分にワークするといえます。

blue and yellow graph on stock market monitor
Photo by energepic.com on Pexels.com

最後はモデル・マーケットフィット。具体的には「必要顧客数」「市場規模」「第三者視点」で分析をおこないます。

  1. 必要顧客数:1億ドルの売上を年間あるために年間顧客数はどの程度必要か
  2. 市場規模:どの程度の潜在市場規模があると計算できるのか
  3. 冷静な第三者視点:数値上で解が出たとしても、それは現実解であるのか

まずは必要顧客数を簡単に算出しましょう。

100,000,000ドル/AARPC = 100,000,000/9,000 = 11,111人

年間1.1万人の顧客を獲得する必要があると分かりました。

次に市場規模。全米では約2万ほどのプログラミング学校の卒業生が年間で発生します。平均授業料は1.19万ドル。米国人の平均貯金額は4,800ドルというデータもあることから、1.19万ドルは非常に高く、わざわざ学校に通うために大都市へ移動して入学するような人はあまり多くないと考えられます。

それゆえ、従来のブートキャンプが獲得している市場シェアは10%程度あると想定されます。Microverseが狙うのは未だ掘り起こされていない残り90%に当たる18万顧客の市場であると逆算できるでしょう。ゆえに1億ドル事業にするためには1.1万人に当たる6%の市場シェアを獲得する必要があります。

6%の市場シェア獲得は実現可能な数値だと言えるでしょう。しかし、1.1万人の学生を年間で輩出できる事業モデルなのでしょうか?オンラインで授業を受けられるとはいえ、1日8時間、メンターが付きっ切りで指導するスタイルを1万人超に提供できるのでしょうか?

おそらくこのモデルが適応されるのは最大1,000名の学生でしょう。1万名の学生を輩出するには現在のモデルを脱して、ムーンショットを狙う思考でサービス形態を変える必要がありそうです。

やはりオフライン事業の側面を持っていることから、ペガサス企業になるには事業の性質から足りないものがあります。もちろん10億ドル以上を目指すのが全てではなく、教育系スタートアップはソーシャルインパクトを与えるのが使命である部分もあるため、悪いビジネスであるとは言っていません。実際、収益率90%であることから、事業開始から1〜2年ほどで追加調達の必要がなくなるドル箱事業になる可能性は大いにあります。

このように、ロジック上では達成可能であると考えられても、直感的に1億ドルの収益実現が難しそうな点がペガサス企業を見つける難しさといえます。ただ、読者のみなさんのビジネスを本記事の冒頭から説明してきた条件に当てはめながら分析することで、1億ドルビジネスにまで成長するにはどの点を改善していかなければならないのかの考察ができるでしょう。ぜひ活用してみてください。

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