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【ゲスト寄稿】僕が資金調達をして知った事とスタートアップのこれから[後半]

この記事をゲスト寄稿してくれたのは、資金調達を発表したばかりの「ソーシャルランチ」を運営するシンクランチの上村康太さん。食をソーシャルにするというテーマに取り組んだ日本の先駆け的存在。上村さんは京都大学経済学部を卒業後、Google日本法人に新卒入社。2011年8月にGoogleの同期のエンジニアと2名でシンクランチ株式会社を創業し、新しい昼の文化を創る「ソーシャルランチ」を運営している。大好評の…

kota_uemuraこの記事をゲスト寄稿してくれたのは、資金調達を発表したばかりの「ソーシャルランチ」を運営するシンクランチの上村康太さん。食をソーシャルにするというテーマに取り組んだ日本の先駆け的存在。上村さんは京都大学経済学部を卒業後、Google日本法人に新卒入社。2011年8月にGoogleの同期のエンジニアと2名でシンクランチ株式会社を創業し、新しい昼の文化を創る「ソーシャルランチ」を運営している。大好評の前半に続いて、後半をお届けします。


4.事業計画書(財務計画)は5年先まで。

続いて、財務計画に関してですが、必要な項目は保有している資産や予定するビジネスモデルや資本政策によって異なりますが、僕は下記のように構成しました。

  1. PL(損益計算書)
  2. BS(貸借対照表)
  3. CF(キャッシュフロー計算書)
  4. 月次試算表
  5. 前提条件
  6. 売上計画(1年分は月次)
  7. 営業費用明細(1年分は月次)
  8. 人員計画
  9. 売上債権計算
  10. その他BS項目
  11. 資本政策
  12. 固定資産明細
  13. 当初コスト
  14. 資金繰り表(月次)

このような構成で、【将来5年間】の計画を作成しました。

僕らはこれをまだサービスがスタートする前に作成した為、雲を掴むような作業でしたが、大事なことは “納得感” のある数字に落としこみ、”思考の深さを示す” ことだと知りました。

 テクニックとして財務計画を作成する上で、大事な事は「前提条件」の項目を設けて会員数などの変動しうるパラメータを全て一箇所にまとめることです。もし、会員数の推移が計画通りにならなかった場合は連動して売上予測などはどう変化するのか、などいつでもテスト出来るようにしていないといけません。ある方は前提条件がない事業計画書は、はなから見ないとおっしゃっていました。

5.バリエーションの判断材料は過去事例。

よく資金調達といえば「バリュエーション、バリュエーション」という話が出ますが、創業間もないスタートアップの企業価値を算定することは非常に困難です。今回知って驚いたことは、シード段階での企業価値の算定は主に「過去事例」によって決まるということでした。過去に行われた同じような投資案件で定められたバリュエーションがある場合、「前例がある」ということで話が進みやすくなります。

また、例えば、目立った収益を上げていない企業でも一定の期間企業活動が行われているということ自体で企業価値が高くなるということも驚いたことでした。逆に言うと、今回の我々のような創業3ヶ月程度で収益を上げておらず新しいビジネスモデルの創出を目指すスタートアップが自分たちの希望するバリュエーションをつけることは相当な努力がいるということです。そして、収益を上げる構造が分かりやすいほど企業のバリュエーションが上がり易いということも事実です。

6.投資契約書は佶屈聱牙。

プレゼンが済み、「前向きに進めましょう」となると、NDA(機密保持契約)を締結し、必要資料の提出が完了すれば、投資契約書の交渉が待ち構えています。

投資契約書で、投資実行後の「経営者が保有する権利」「投資家が得る権利」が決まります。

投資契約書は、素人が見ると佶屈聱牙な呪文のようなものです。所謂一般的な「契約書」とはレベルを違うものです。あまりの難解さに、パッと見ではこんなもんなのかな、となりますが、ここで結ぶ内容はそう簡単に変更が出来ないものであり、このタイミングで投資家とは交渉を行わなければなりません。

幾度と無く「マークアップ」と呼ばれるwordの「変更履歴」を用いたやり取りを繰り返し、双方合意にたどり着きます。

まず、そもそも投資契約書に記載されている内容がどういう意味なのか、その条件だと将来的にどういうメリット、デメリットがあるのか、などは弁護士の方に説明を頂かないと到底分かり得ないものだと感じました

また、そこに記載されている内容が一般的で妥当なものなのか、少し条件として厳しめのものなのかも経験豊富な弁護士やファイナンスのプロの方にしか分かり得ないのではないかと思いました。

複数社が同時に投資を行う場合、基本的に投資契約書はリードと呼ばれる最も多い金額を出す企業と締結されるものをベースとして行われます。期限を区切り、その中で最善の内容になるよう努力をしなければなりません。そのため、契約書のレビューと交渉方法の指南を頂く弁護士の方の力量によって大きく結果は変わってくるのではないかと思います。

7.プロのサポートは不可欠。

今回の資金調達を行うにあたり、社長にサービス開発に集中して貰うために全ての作業は僕が担当しました。参考になる情報として周りの方に薦めて頂いた磯崎さんの「起業のファイナンス」は非常に為になりました。ただ、実際書いてあることを納得して「確かに」と読むことが出来たのはこのラウンドを終えて改めて読み返した時でした。

僕らが資金調達を行うにあたり、多くのプロフェッショナルの方のサポートを得ることが出来ました。

本ラウンドにおけるプロジェクトチームは、

・ど素人の僕

・資金調達を企業・VC両方の立場で関わってきた方

・公認会計士

・弁護士

というチーム編成でした。

このようなチームを組めたことは幸運でしたが、納得の行く資金調達のためには経験豊富な方のアドバイス、そして士業の方のサポートは必要不可欠であると強く感じました。

さいごに

海外での調達は限りなく難しい現状では、海外の事例より国内の生のアドバイスほど価値のあるものはないというのが得られた結論です。またその上で、資金調達の経験がない経営者が増資を行う場合、そのプロセスをサポートしてくれるプロの存在が絶対に必要です。「資金調達のためにすべきこと」のセミナーに足しげく通う時間を、そういったサポートを頂ける信頼できる専門家の方を探す時間に充てて頂くことをおすすめします。

当たり前のことですが、資金調達はゴールではなくスタートです。今の時点で未来の我々を評価し、投資を行なって下さった3社、日本ベンチャーキャピタル株式会社(京大ベンチャーファンド)、KDDI株式会社、株式会社経営共創基盤に感謝し、その期待に応え、営利企業として互いが利益を得られるようにしなければなりません。

多くのスタートアップにとって今年が勝負の年となると思います。成功する企業はいつの時代も一握りです。それを分かっていながら勝負に出るのがスタートアップです。世間は僕らを無謀、世間知らずと否定します。それだって分かっていながら勝負に出るのがスタートアップです。

今のスタートアップを取り巻く恵まれた環境は、先人である過去の無謀な起業家が築き上げたものです。そして、今は多くが不安定で無価値に見えますが、次なる世代は確実に出来かかっています。共に闘いましょう。