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これ以上、声や顔を持たない人たちの潜む才能を見過ごさないーー公営住宅にネットアクセスを届ける「ConnectHome」の活動とGitHubの貢献

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GitHub Universeの2日目基調講演の続編をお届けします。前編では、GitHubのSocial Impact部門のヴァイスプレジデントを勤めるNicole Sanchezさん、また「Detroit Water Project」を共同創業したTiffani Ashley Bellさんの講演内容をお届けしました。 前代のシリコンバレーのテクノロジストは、人間が生きて繁栄するためのニーズを表し…

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GitHub Universeの2日目基調講演の続編をお届けします。前編では、GitHubのSocial Impact部門のヴァイスプレジデントを勤めるNicole Sanchezさん、また「Detroit Water Project」を共同創業したTiffani Ashley Bellさんの講演内容をお届けしました。

前代のシリコンバレーのテクノロジストは、人間が生きて繁栄するためのニーズを表したマズローの欲求段階説における上位階層にしか目を向けて来なかった。でも、世界には、水や身の安全など人間としての基礎的なニーズですら満たせないでいる人たちがいます。次世代のテクノロジー業界には、組織やチームとして、この社会的課題の解決に取り組むことが求められます。

※Nicoleさんのスピーチは、前編のTiffaniさんのスピーチへのコメントで始まっています。

見過ごされている才能に目を向ける

地球の次に私たちが住むことになる恒星系には、Tiffaniのような人がもっと沢山いてほしい。人類をより良くするために、Tiffaniのようなスキルや視野を持った人がもっと必要です。彼女の視点、バックグラウンド、そしてテクノロジストとしての経験が、現場レベルで重要な変化をもたらしています。彼女は、人々が長年乗り越えられないでいた既存システムを回り込んで、彼らに必要な基礎的なニーズを提供しました。マズロー欲求段階説のボトムにある水や食べ物、暖かさ、また身の安全などです。

私は、Tiffaniと彼女の共同ファウンダーの2人の女性が、「見過ごされる」姿を見てきました。彼女たちを見た人は、「まさか、君がハッカーなわけがないだろう」「あなたがデベロッパーのはずがない」と言います。でも、この国に、そして世界には、こうした才能が多く潜んでいます。それはあらゆる場所で完全に見過ごされ、この業界も例外ではありません。

全米でオープンソースのプロジェクトが起こる場所を地図に表したもの
全米でオープンソースのプロジェクトが起こる場所を地図に表したもの

これは、オープンソースのプロジェクトが最も起きている場所を地図にしたものです。驚くには至りませんが、カリフォルニアや、東海岸ではニューヨークやボストン辺りに集中しています。このドット以外の場所で、どれだけの才能が見過ごされ、無駄にされているか考えてみてください。社会には、彼女たちのように視野を持ち、基礎的ニーズを必要とする人々のために何かを作れるスキルを持つ人たちがもっと必要です。

私のお気に入りのアプリの一つに、「Refuge Restrooms」があります。ボランティアが集まって作ったもので、トランスジェンダーやインターセックスの人たちが安心して使えるトイレを地図にマッピングしたもの。このアプリがあれば、「違う」ことを理由にトイレから追い出されたり、時に襲われたりする恐怖から逃れて、安心してトイレを使うことができる。私もダウンロードして友だちなどが必要な時に使っています。テクノロジーを使うことで、基本的な人権をもたらしてくれています。

インターネットアクセスの有無が平均余命を左右する時代

基調講演を行うNicole Sanchezさん
基調講演を行うNicole Sanchezさん

Detroit Water Projectの他に、もう一つ皆さんに参加してほしいプロジェクトが「ConnectHome」です。GitHubとして、このプロジェクトに関わることができて誇りに思っています。ConnectHomeは、貧困またはギリギリのところで生活する一般家庭に対して、大きなスケールでインターネットのブロードバンドアクセスを提供する活動です。EveryoneOnというNPOと連邦政府、そしてGitHubを含む民間企業数社が共同で取り組んでいます。

なぜ、このプロジェクトが大切なのでしょうか。アメリカでは、4つに1つの家庭にインターネットアクセスがありません。ブロードバンドアクセスがない人の32%は、家でモバイルフォンを使ってインターネットを使っています。アメリカのティーンエイジャーの70%は、学校の宿題をやるためにインターネットを使う必要があります。どう考えても、この数字はつじつまが合いません。それは、この70%の中に、インターネットを使うために途方も無い努力をしている人がいることを意味します。

マズローの欲求段階説の下位階層について話す時、インターネットアクセスも重要なポイントです。なぜなら、人がその人生でいくら稼ぐことができるか、学校教育をどれだけ受けられるか、またどれだけ長く生きられるかに、インターネットアクセスの有無が関係しているからです。インターネットアクセスが、人の平均余命を左右する時代なのです。

テクノロジーの作り手になってほしい

ConnectHomeは、現在28のコミュニティで活動しています。特に、オープンソースのホットスポットがない地域が対象です。インターネットアクセスがない75万人が、家からインターネットを使えるようにする。このプロジェクトにおけるGitHubの役割は、家庭にデバイスがある状態にすること。そのデバイスとは、低価格で修理がしやすいChrome Bookのようなものです。

人々に、消費者としてインターネットにアクセスしてもらうこと以上に、テクノロジーの作り手としてインターネットを活用してほしいと思っています。インターネットは使えるようになっても、例えば、Detroit Water Projectのようなプロジェクトの作り方などの情報には触れられていない人が多い。もし、インターネットへのアクセスに加えて、GitHubのアクティブなコントリビューターになる方法を学ぶことができれば、そして人が必要とするソフトウェアを開発する術を身につけられれば、その人は企業にとって雇用対象になります。

CEOのクリス・ワントラスの基調講演の中で、世界には2,000万人のデベロッパーがいるとありました。でも、それは事実ではありません。もっともっといるはずなんです。自分で自分のことをデベロッパーとは思っていなくても、実際はそうである人が。自分にそんな才能があると思っていない人が、適切な教育やツールを手にすることで自分が持つ才能やクリエイティビティに目覚める。この部屋にいる私たちは、みんなそれを持っています。それは素晴らしいこと。でもそれを、もっと広めていく時が来たのです。

学校から家まで安全に帰れる経路がわかるアプリ

今年の10月、28の各コミュニティで人が集まります。誰が人にコーディングの仕方を教えるのか、GitHubにはどう登録してもらうのか、初めて挑戦する人にとってオープンソースが怖くないものになるように何ができるのかなどを議論します。

オープンソースのコミュニティで、嫌な思いをしたことがある人は手を挙げてください。大勢いますね。それをもっと減らしたい。それを実現するための方法の一つは、より多様な人たちをGitHubのようなプラットフォームに集めて、マズロー欲求段階説の下位階層に向けたものを作ることです。だからといって、上位階層のためのものが作れないわけではありません。起業家が自分が感じる課題の解決に関心があるとするなら、それがお水、シェルター、インターネットアクセス、食べ物、身の安全になるのです。

テクノロジー分野で私が目の当たりにしたことで印象的だったのは、Level Playing Field Instituteが主催した「Level the Coding Field Hackathons」で起きたことでした。参加者は、オークランドやレッドウッドシティ、東パロアルトなどの中学生と高校生で、デザイン方法論やオープンソース、またコーディングなどを学ぶために集まりました。コンピューターサイエンスの教育を受けたことがない生徒ばかり。何が面白かったかというと、生徒が作ろうとしたものでした。

私の一番のお気に入りは、「学校から家に帰るまでの安全な道のりを教えてくれるWaze」でした。生徒の中には、犯罪率が高い危険な地域を通学路にする子もいます。そんな子が、学校の課外プログラムに参加すると、授業が終わる頃にはもうバスは走っていません。一人で暗闇を歩かなきゃいけない。生徒には、どの道の蛍光灯が切れているだとか、最近犯罪が起きたばかりの角がどこなのかを知る由もありません。家に帰る度に危険を冒しているんです。

生徒達は、情報をクラウドソースして、学校から家まで安全に帰れる道を教えてくれるサービスを作りました。これを作ることは、この部屋にいる人たちにとってどれだけ簡単なことでしょう。このテクノロジーを使って裏側でちょっと操作すれば、学校に通う全生徒のために役に立つものになる。このプロジェクトを通して、たくさんの生徒がインスパイアされ、若きテクノロジストが多く生まれました。こうした子供たちが、次のMae Jemison(メイ・ジェミソン)(※記事前編に登場)になるのです。ぜひそうなってほしいです。

では、次に私の新しい友人、NPO団体「EveryoneOne」のChief Programs Officerで「ConnectHome」のプロジェクトを手掛けるChike Agueさんに登場してもらいます。

インターネットアクセスのBefore&After

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デジタルデバイドを埋めるために活動する「EveryoneOne」

EveryoneOnでChief Programs Officerを勤めるChike Agueです。社会のデジタルデバイドを埋めるための活動をしています。あなたが誰で、どこに住んでいてどんな容姿をしていようと、インターネットアクセスと、そこから生まれる機会を得る権利があると僕たちは信じています。この2年間半、デバイスメーカーやコンテンツ提供者などと組んで、アメリカの50万を超える低所得層に対してインターネットアクセスを提供してきました。今日はその中でも、2人についてお話します。

Mariaは、アリゾナ州フィーニックスに住んでいます。5歳、7歳、12歳になる3人の子どもがいます。彼女は、地元のコミュニティカレッジで準学士号の取得に向けて勉強しています。 僕たちが彼女に出会った時、彼女の家にはインターネットアクセスがありませんでした。毎日夕方5時までに家に帰ると、3人の子どもを連れて彼女は図書館に向かいます。子どもは、図書館で45分間だけコンピューターに向かいます。図書館では、コンピューターの使用時間が一人45分までと制限されているからです。子供たちは、その限られた時間の中でできる限りの宿題をやります。学校の成績は、CやDでした。一方のマリアは、その傍らでモバイルフォンを使って論文を書きます。

ConnectHomeによって家でインターネットにアクセスできるようになった今、彼女は無事に準学士号を取得することができました。また、失業していた彼女の夫も、オンライントレーニングを受けることで新しい仕事に就くことができました。

もう一人は、Dary Obrienというマイアミに住む高校生の男の子です。家にインターネットがない彼は、学校が終わるとバスに乗ります。このバスは、マイアミでも最も危険とされる地域を通るものです。そして、マクドナルドからマクドナルドを転々とするのです。学校の宿題を終わらせるために、遅い日には帰宅時間が朝の1時になることもあります。今、家でインターネットが使えるようになったDaryは、身の危険を感じることなく、家にいながら宿題をやることができます。

この国には、MariaやDaryのような人たちが何千、何万人といます。もし、6,000万人が電気を使うことが出来ずにいるとしたら、私たちは憤るでしょう。もし、屋内トイレがない生活をしている人が6,000万人いたら、驚いて言葉も出ないでしょう。インターネットも、それらと同じくらい重要なのです。現状に、同じように憤るべきなのです。

2年間で公営住宅25.7万世帯にインターネットを

私たちは、ConnectHomeに参加できることを光栄に思っています。28のコミュニティの公営住宅に住む27万5,000世帯に対して、今後2年間でインターネットアクセスを届けていきます。これら家族の世帯年収は、13万ドル(1ドル100円の単純計算で130万円)です。

なぜ、人々にインターネットアクセスがあることがそれほど重要なのか。その例の一人が、有名なGithubberでもあるDanilo Camposさんです。彼は、GitHub上のソーシャルインパクトのスーパースターで、それがモバイルアプリでもWebサービスでも、彼は何百万という人に自分のコードを見てもらい、オープンソースのプロジェクトを行ってきました。これが、彼のストーリーのエンディングです。

でも、その始まりはどうだったかというと、彼は移民として2歳の時にシングルマザーの母親と一緒にアメリカに渡りました。そして、ニューヨークの公共住宅で育ちました。彼の人生が変わったのは、家でインターネットが使えるようになった時です。彼は、独学でコーディングを学びました。この国には、何万人というDaniloがいるんです。才能は万人共通ですが、機会はそうではありません。そしてこの機会は、今、インターネットを通じて生まれているのです。

名前を見ればわかるかもしれませんが、私はナイジェリア出身です。ナイジェリアの人でさえ聞いたことも無い、一生足を運ぶことがないような小さな村です。祖父母は、誰一人として中等教育以上を受けたことがありません。私の両親は、平和部隊がいるクラスルームで授業を受けて育ちました。私の父親、そして家族の人生を変えた出来事は、父親がアメリカで勉強するための奨学金をを得たことでした。

海を渡って私の父親が受けることになった教育は、現代のインターネットアクセスの有無に置き換えられます。それが誰であろうと、全ての家族や生徒にインターネットアクセスを提供しないことは、道徳的に弁解の余地はありません。経済的に無責任です。デジタルデバイドが今日、明日、そして永遠に縮まるように、皆さんにもぜひ参加してほしいです。参加を希望する人は、connecthome[at]github.com(atは@)に連絡してください。

私たちの子ども、そのまた子どものために

GitHub Universe終了後のチーム (image via. Mayumi Morishita)
GitHub Universe終了後のチーム (image via. Mayumi Morishita)

プロジェクトに対するGitHubのコミットメントは、ConnectHomeに対してキャッシュで25万ドル、プロダクトで300万ドル、そしてGithubberの2,000時間の時間です。Githubberは、コミュニティに対して、コーディングについて、また人々が直面している課題について伝え、オープンソースやGitHubをアクセシブルにすることをしています。現場で、私たちは天才に遭遇することを期待しています。そして、次なるイノベーターやディスラプターに出会いたいと思っています。

私たちは、シリコンバレーのガレージでひっそり何かを作って、全てを一人でやり遂げるヒーロー的な起業家の観念を取っ払いたい。次世代のテクノロジーツールは、違う形で生まれるでしょう。それは、ジョージア州に住む子どもが、そう、今はまだPhythonが何か、そして自分にそんなことができると知らずにいる子どもが、1年後にはそれを作るようになる。シリコンバレーにも同じような例はありますが、まだまだ不十分です。私、そして皆さんには、これをもっと増やして行く義務があります。

私たちが才能を見過ごして来た世代の数だけ、癌への治療方法や水へのユニバーサルなアクセスといったものが諦められているからです。人類がこの地球上では叶わなかった繁栄を手にする、次の恒星系にたどり着くための方法をあきらめているのです。つかみ所がなく、全く別次元の話のように聞こえるかもしれません。でも、だからこそ、今日、TiffaniやChikeを紹介したかったのです。皆さんが触れ、参加することができることに挑戦している人たちに。

GitHubは、その事業目的と足並みを揃えたSocial Impact部門をとても誇りに思っています。これは、GitHubが慈善事業に捧げる片腕ではありません。GitHub自体が今後成長していく道なのです。皆さんも会社やチームに戻って、仲間にDetroit Water ProjectやConnectHomeの話をしてみてください。そして、会社として解決しようとしている課題と、社会が解決を必要とする課題がどう重なり合うか考えてみてください。そこに近づくために、今すぐ動ける適任な人材はいるか?会社のミッションと全くかけ離れているように感じるかもしれませんが、きっとそんなことはないはずです。

もっと話し合ってみたいという人がいれば、いつでも歓迎します。私は過去22年間、この業界で多様性を促進する活動をしてきて、やっと今、動きが見え始めました。この活動が本当に実る時、きっと私はもうこの世には存在せず、それを見届けることはできないでしょう。でも、これを今始めなければ、私の子ども、あなたの子ども、私たちの孫など誰一人として、見過ごしている才能の恩恵を受けることはできません。この招待を、皆さんが快く受け入れてくれることを心から願っています。

GitHubは、この分野を率いるリーダーであることを誇りに思っています。そして、これから先もずっと、この活動を続けていきます。

会社が解決に挑む困難と、社会が解決を必要とする困難は一致しているかーー技術やスキルは誰のため?[GitHub Universe]

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10月頭にサンフランシスコで開催された「GitHub Universe」の模様については、CEOのクリス・ワントラス氏へのインタビュー、セッションレポート、またフォトレポートなどでお送りして来ました。2日目の基調講演の内容をお届けします。個人的には、一番感銘を受けた内容でした。 ステージに登場したのは、GitHubのSocial Impact部門のヴァイスプレジデントを勤めるNicole Sanc…

GitHub-Universe
サンフランシスコのPier 70で開催された「GitHub Universe」

10月頭にサンフランシスコで開催された「GitHub Universe」の模様については、CEOのクリス・ワントラス氏へのインタビューセッションレポート、またフォトレポートなどでお送りして来ました。2日目の基調講演の内容をお届けします。個人的には、一番感銘を受けた内容でした。

ステージに登場したのは、GitHubのSocial Impact部門のヴァイスプレジデントを勤めるNicole Sanchezさん。彼女は、過去22年間のキャリアを、テクノロジー業界におけるダイバーシティ促進に捧げてきました。私たちは、オープンソースやテクノロジーツールを活用することで、多くのことを実現できるようになった。でも現状では、そのリソースやスキルの多くが、マズローの欲求段階説のトップの部分に充てられています。

でも、社会には、人間にとって最も根本的な食や身の安全すら確保できないでいる人たちが存在します。「これからは、会社や組織が解決に挑む困難と、社会が解決を必要とする困難とがどんどん一致するべき」だとNicoleさんは話します。そんな具体的なプロジェクトの例として、水道料金が支払えない人と寄付者をマッチングする「Detroit Water Project」が紹介されました。

教師からアーティストまで多様なチームで向かう次なる恒星系

アフリカ系アメリカ人の女性として初めて宇宙に行ったMae Jemisonさん
アフリカ系アメリカ人の女性として初めて宇宙に行ったMae JemisonのQuote

世界のためにより良いものを作れるように、このプレゼンテーションのメッセージを、会社やGitHubで一緒にコラボレーションをしている人たちにも伝えてほしいと思います。私たちは、思うままに使える革命的なツールを手にしています。でも、まだ、世界を変えるような形でそれを使うには至っていません。

2010年、NASAとDARPAが共同で新しいプロジェクトを始めました。50万ドルを民間のチームに与え、人類が居住し繁栄できる新しい恒星系を見つけることに取り組むもの。地球は残念ながら滅亡への道をたどっており、私たちの星である太陽もずっとは存続できないからです。

プロジェクトに選ばれたチームを率いるのは、ジョージア洲ディケーター出身のMae Jemison(メイ・ジェミソン)という一人の女性でした。彼女は、アフリカ系アメリカ人女性として初めて宇宙に行った人物で、私の個人的なヒーローでもあります。彼女は、教師と清掃員の両親のもとに生まれました。彼女がこんなことを言っています。

「私たちは、科学というものを、極一部の人しか学ぶことができない、すごくエリートなものとして見ます。でも、それは全く持って事実ではありません」

このことについて、少し考えてみてください。テクノロジー業界もエリート主義が大好きです。私もそうです。解決への道が困難な課題を好み、バグが修正できると喜び、とにかくテクニカルな課題とそのソリューションを愛する。でも、最も解決が難しい課題は決してテクニカルなものではありません。それは、ヒューマンなもの(人にまつわる)です。

Mae Jemisonが、プロジェクトのチーム選抜に勝つために何をしたかというと、さまざまなバックグラウンドを持つ多様な人たちを集めたことです。テクノロジーにフォーカスするのではなく、彼女は次の恒星系にたどり着くためにチームが使う方法論やプロセスに目を向けました。教師、アーティスト、テクノロジスト、天文物理学者、またピース・メーカーやソーシャル・ワーカーなどの姿もありました。次の恒星系に向けて平和に歩む道を見つけなければ、人類に新しい暮らしはないからです。

100 Year Starship」と名付けられ、チームはヒューストンを拠点に活動しています。このプロジェクトは、テクニカルな課題やそのソリューションを見つける際の模範モデルとして参考にされています。エリート主義によって見過ごされてしまいがちな人たちを含む多様性に長けたチームを作る。シリコンバレー、またテクノロジーツールを開発する場所はどこも同じアプローチをするべきです。

今、あなたが働いている企業や組織、また関わっているクールなオープンソースのプロジェクトについて考える時、そこにある最も難しい課題は何か?を考えてみてください。会社が解決しようと試みる最大の困難は何ですか?そして、社会が解決しようとしている最大の困難について考えてみてください。会社が解決しようとしていることと、社会が解決を必要とすることが一致することがどれだけあるでしょうか。テクノロジー分野が次の世代に進むにつれて、この2つがより頻繁に重なり合うことを願っています。

マズローのピラミッドの下位にこそ、解決すべき課題がある

人間の欲求を表したマズローの欲求段階説
人間の欲求を表したマズローの欲求段階説

これは、マズローの欲求段階説です。人間が生きて繁栄するためのニーズを表したもの。下位階層にあるのは、水・食べ物・暖かさなど人間の基礎的なニーズです。上位階層にいくと、そのニーズがより理論的になり、人間の本来の創造的ポテンシャルが発揮できる状態になります。

私を含む、この場にいる前代のシリコンバレーの人々の多くは、多大な時間をかけて、この上位階層の部分に力を注いできました。テクノロジーツールを使って、デートアプリだとかピザデリバリーのサービスを開発する。もちろん、人には共に歩むパートナーが必要ですし、また食べることも必要です。でも、このピラミッドの下位には十分な時間を注いで来ませんでした。

人間の基礎的ニーズにたどり着いた時こそ、興味深いことが起こり始めます。この部屋にいる私たちに与えられているテクノロジーやツールへのアクセスを、ピラミッドの下位にいる人たちにも同じように与えることができたら、人類として山をも動かすことができるはずです。GitHubのSocial Impact部門が重視しているのはそこです。世代を越えて、顔や声を持たない過小評価された人たちを繋げて、GitHubやオープンソースのコラボレーションに迎え入れたい。そうなった時に何が起きるのか。

前代のテクノロジストたちは、ピラミッドの上位に向けて心地よく生きてきました。課題が解決されているのは、その上位部分のみに留まります。私の元上司は、“Entrepreneurs scratch their own itch”(起業家は、自分がかゆいところを自分でかく)とよく言っていました。起業家は自分の生活にある課題を解決しようとする。でも、ピラミッドの下位にある課題と共に生きていなければ、それについて考えるインセンティブは圧倒的に少ないのです。

ここで、このピラミッドの下位の部分で活動をしている女性、Tiffani Ashley Bellさんをご紹介します。彼女は、「Detroit Water Project」の共同ファウンダーでエグゼクティブ・ディレクター。自分の技術とスキル、そしてクリエイティビティを本プロジェクトに注ぎ込んでいます。最も影響力のあるアフリカ系アメリカ人を表彰する「The Root 100」にも選ばれ、Y Combinatorの卒業生でもあります。今日は彼女に、「水」について話してもらおうと思います。

水道料金を払えない人と寄付できる人を結ぶ「Detroit Water Project」

Detroit Water Projectの共同ファウンダー Tiffani Ashley Bellさん
Detroit Water Projectの共同ファウンダー Tiffani Ashley Bellさん

今日は、Detroit Water Projectで、私たちがGitHubやテクノロジーを使って人々をどう支援しているのかについてお話します。超Nerdy(オタク)でも、世界を変えるための支援をすることができるんです。

皆さんに、ラティアさんを紹介します。デトロイトに住むシングルグランドマザーで、ケアテイカーとして14年間働いてきました。毎朝起きて、患者さんが薬を飲んでいるかを確認し、みんなが健康でいられるように面倒を見る。でも、昨年9月に、今度は彼女自身が看護を必要とする身になってしまいました。しばらく仕事を離れる必要があり、無給の医療休暇に入ることになりました。

ラティアは、シングルグランドマザーとして10歳未満の子ども5人を育てていました。自分の孫2人。数年前には、友人が3人の子どもを残して亡くなり、離ればなれになるのは可哀想だと養子に迎えたのです。看護が必要とする自分と、5人の子ども。仕事ができないため家賃が払えず、光熱費だって払えません。水道料金も払えませんでした。実は、アメリカにでは、3,500万世帯が同じ課題を抱えています。水や電気代といった光熱費を支払うことができない人たちです。

そもそも、私がこの事実を知ったのは、「Code for America」のフェローとして活動している時に読んだ「Atlantic」の記事がきっかけでした。そこには、デトロイトで水道料金を支払えない10万人の人たちが水がない生活を余儀なくされているとありました。市営の水道会社が、料金が未納だからと水道水を止めてしまう。この人たちは、本当にお金がなくて困っている人たちなんです。別に買い物をしていて水道料金を支払っていないわけではないのに、いきなり水を止めてしまうだなんてあまりにも酷いと思いました。

水を止められてしまった人たちは、庭に大きなバケツを置いておいて雨水を溜めていたり、近所の家でシャワーを浴びさせてもらっていたりしました。この記事を見つけた日は、一日中、仕事に行くこともせず、この状況について調べ続けました。

私は、ただグッドラックと願って終わらせる性格ではなく、怒りを覚えた時にいつもやることをしました。Twitterに行って、お水がなかったらどうするかをみんなに聞いてみたのです。そんな中で集まった一つの答えが、今の共同ファウンダーによるもの。誰かのために水道料金を支払ってあげることができたらどうだろう?と。でも、それを実現する方法は存在しませんでした。私はものを作ることが好きで、人のためになるものを作ることが好きです。そこで、その方法を立ち上げることにしました。

水道料金が支払えずに困る計900世帯を支援

米国では、光熱費が支払えない世帯が3,500万を超える
米国では、光熱費が支払えない世帯が3,500万を超える

GitHubでページを作成して、人を集めました。知り合いの人、また直接会ったことはないけれどTwitterで知っている人。中には、未だに顔を合わせたことがない人もいます。プロジェクト立ち上げ当初、私を含む6人のコントリビューターが集まりました。私たちは、「Bootstrap」や「Heroku」、Googleスプレッドシートなどを使って、4時間でサイトを立ち上げました。その目的は、水道料金の支払いで支援を必要とする人を見つけて、その人を寄付してくれる人を結びつけることです。

寄付者にアカウント番号を渡し、ユーティリティ会社のWebサイトで直接料金を支払ってもらいます。その後に、支払いが完了したことがわかる番号をもらう。何万という人が、寄付をするためにこの方法で登録してくれました。支援の金額は5ドルだったり100ドルだったり、時には5,000ドルだったり。多額の場合は、それを家族間で分けます。

Detroit Water Projectは、とても大きなインパクトを生んでいます。2014年の7月から集まった水道料金の寄付金は23万ドルに及びます。また、デトロイトとボルティモアで、計900の家族を支援することができました。さらには、40軒の家で、水道料金を支払えないことによる家の差し押さえを防ぐことができました。

こうした目に見えるソーシャルグッドの他にも、裏側ではかなりnerdyっぽいことをしていました。プロジェクトの長期的なゴールは、その場しのぎの解決だけでなくて、将来、同じようなことが起きないようにすること。金銭的な支援をずっと続けることは現実的ではなく、支援を受ける側がこのプログラムに依存するのは健全ではありません。

そこで、特に支援を必要とする家庭を特定し、その根本的な原因を探ることができるプログラムを設計しました。またデータを活用して、そうした人たちが地元のコミュニティや組織と繫がって職探しができるようにしたり、予算管理や低価格で実現できる家の修繕サービス、法律相談所などを紹介するようにもしました。

支援を必要とする人がサイトに登録すると、公共料金支払いのアカウント番号をまず教えてもらいます。私たちは公共企業と直接組んで動いているわけではないので、そうした会社のWebサイトから必要な情報を取得してきます。電気や水道の消費量、過去の支払いや請求額の履歴など。こうした情報をもとに、また面接を行うことで、本当に支援が必要かどうかを見極めます。支援を求める登録者が、ものの5分で援助を受けられるかどうかがわかるようにしました。

データを使ってコラボレーションし、時に政治政策も動かす

水道料金が支払えない人と、市議員を地図の上にマッピング
水道料金が支払えない人と、市議員を地図の上にマッピング

誰もが新しい写真アプリを必要としているわけではありません。基礎的なものこそ必要なんです。私は、Code for Americaのフェローでもあるとお話しましたが、個人的にシビックテクノロジーに関心があります。オープンデータやユーティリティデータを用いて、どんなシビックエンゲージメントを生むことができるのか。また、公共政策がどれだけ人々の生活に影響をもたらすのか。

その一環で、自分たちが持っているデータを地図上にマッピングしてみました。具体的には、今年の7月、デトロイト市議会が水道料金を7.5%上げるための決議を下しました。今の料金でさえ支払えない人が大勢いるのに、おかしいと思いました。そこでまず、水道料金を支払えないでいる人たちが住んでいる場所を地図上にマッピングしました。さらに、この決議に対して賛成した市議員がいる場所もマッピングしました。

すると、現状で水道料金を支払えないない人が大勢いる地域の市議員が、水道料金の値上げに賛同しているという矛盾が見えてきたのです。自分が代表する人たちと交流し、そこにある課題を理解しているのか?地域の人ともっと積極的に交流すべきだし、現状を把握すべきです。自分たちの政策が人々に与える影響についてきちんと考えてほしい。またこのような情報があることで、課題を抱えている人たちが自らの声になって主張をすることを可能にし、議論が始まるきっかけをもたらしてくれます。

どんなに頑張っても水道料金が支払えない人がいるのに、状況はお構いなしに水道水が止められてしまう。そんなことが起こらないための法令があるべきです。私は実際に水道局に出向いて水道料金を支払ったことがありますが、事務の人は、支払えない人がいることを重々承知でした。それでも現状を変えようとしない。これは、作り話ではなくて、実際に起きていることなんです。ここには、解決すべき課題があるのです。

最後に、リンドン・ジョンソン氏の言葉で締めくくりたいと思います。

「貧困という課題へのソリューションは、ワシントンで決議される膨大な計画だけでもなく、また地方自治体の懸命な努力に頼るだけでも難しい。私たちには、コラボレーションにおける新しいコンセプトを作り出すことが必要。また、国民資本と地域のコミュニティ・リーダーとの中間にある、創造的な連邦主義の誕生が求められている」(1964年 Great Society Speechにて)

会ったこともない私たちが集まり、助けを必要とする人たちのために何かすることをGitHubが可能にしてくれました。彼らには、ここにいる私たちが持つスキルが必要です。水のように本当に基礎的なものを得るために、支援が必要なのです。この活動には、水道料金を支払うことや運営ボランティアとして、またはオンラインに公開しているソースコードをハックすることで貢献できます。詳細は、Detroit Water Projectのサイトをご覧ください。

※GitHub Universe 2日目の基調講演の模様は動画でも見ることができます。