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SaaSの王者・Salesforceの6つの「ここが凄い」

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柴田尚樹氏はSearchManのCo-Founder。2006年に入社した楽天では最年少執行役員となり、その後東京大学助教授を経てスタンフォードへ。500Startupsの出資を受けシリコンバレーでSearchManをスタートアップさせた。本稿は彼のnote「決算が読めるようになるノート」からの転載記事。同氏からの許諾を得て掲載させてもらった。彼の全ての記事はここで読める 今日は、SaaSビジネス…

shibata柴田尚樹氏はSearchManのCo-Founder。2006年に入社した楽天では最年少執行役員となり、その後東京大学助教授を経てスタンフォードへ。500Startupsの出資を受けシリコンバレーでSearchManをスタートアップさせた。本稿は彼のnote「決算が読めるようになるノート」からの転載記事。同氏からの許諾を得て掲載させてもらった。彼の全ての記事はここで読める

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今日は、SaaSビジネスの話です。SaaSとは、Software As A Serviceの略で、クラウド上のソフトウェアをサービスとして提供する形です。一昔前はASP(Application Service Provider)とも言われていました。一般的に、月額課金や年額課金などの継続課金で提供される場合が多いです。

このSaaSビジネスというのは比較的最近始まったビジネスなのですが、その「王者」と呼ぶべき(と個人的には思う)Salesforceについて見てみたいと思います。

Saleceforceとは

クラウド上で、CRM(Customer Relationship Management、顧客管理)のためのソフトウェアを提供する会社で、上場ティッカーはCRMです。(すごいティッカー名ですね。)SaaSビジネスの開拓者でもあり、世界最大級のSaaSビジネスです。

直近の決算では、「セールスフォース、予想を上回る第4四半期決算を発表–見通しも上方修正」という報道がある通り、未だに大きく成長を続ける会社でもあります。

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四半期の売上が$1.81B(約2000億円)もあるにも関わらず、YoY+27%も成長しています。

今日は、このSalesforceの歴史を振り返りつつ、Salesforceの「ここが凄い」を6つに絞って紹介したいと思います。

ここが凄い#1: 創業後7年で$500m(約550億円)の衝撃

Tomasz TunguzさんというVCの方のブログがあります。この人はSaaS界では知らない人がいないくらい有名なVCで彼のブログ(ほぼ毎日更新!)は、SaaS界の人には欠かせない情報源となっています。はじめに、Salesforceというのは、最初から急成長を遂げた企業でした。

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横軸が創業からの年数、縦軸が売上です。

青がSalesforceの推移、黒がSaaSの上場企業(アメリカ)の中間値です。

なんと、創業(厳密には最初の資金調達)からたった7年で、売上が$500m(550億円)にもなっています!たった7年で500億円になるスタートアップ、驚異的すぎます…

ちなみに売上推移はこのようなグラフになっています。圧倒される規模感です。

ここが凄い#2: 中小企業にも大企業にも売れるプロダクト

Salesforce’s averaged an $11k account at IPO across 8000 customers, which is among the bottom third of SaaS companies. SMBs (less than 200 employees) contributed 40% of revenue, mid-market customers (200-500 employees) contributed 30%, and enterprise rounded out the last 30%.

との記述があります。日本語に直すと、以下のようになると思います。

Salesforceは、上場時に8,000社の顧客があり、1社あたり$11,000(120万円)/年の売上があった。売上構成は、(従業員200名以下の)中小企業が40%、(200-500名の)中規模企業が30%、(500名以上の)大企業が30%だった。

つまり、売上の70%もが500名以下の企業から来ていたということになります。これは非常に大事なポイントで、中小企業に売る場合、営業マン(人間)が売ると、コストが合わない場合が多いため、セルフサーブで売る必要があります。

Salesforceの凄さの一つは、セルフサーブで売れる優れたプロダクトにあった、ということが出来るでしょう。

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ちなみに、上のグラフが、SaaS上場企業のARPC(1顧客あたりの年間売上)なのですが、Salesforceは「1顧客あたりの年間売上」が非常に低い部類の会社です。「つまり、比較的低価格なものを多くの顧客に売る」モデルです。

1社あたりの売上が120万円/年(=10万円/月)なので、このサイズの売上を作るのに、全部営業マンベースでやると、少なくてもアメリカではコストが合いません。(日本の場合、非常に狭く交通網が発達した東京にほぼ全ての顧客がいるという状況もあり得て、また人件費もアメリカよりは安いので成立しうるかもしれませんが、アメリカは広い上に時差もあるため、多少事情が異なります。)

ここが凄い#3: 営業・マーケティングがとても上手

営業マンが使うサービス(ソフトウェア)を売っている会社なので、当たり前と言えば、とても営業・マーケティングが上手な会社です。

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SaaSビジネスで大事なKPIの一つが、Sales & Marketing費の対売上比です。要は、「売上の何%を営業・マーケティング」に使っているかという指標です。以下、「営業・マーケ費率」と書きます。

グラフの横軸が創業からの年数、縦軸が売上を100とした場合の営業・マーケティング費の割合です。

Salesforceの場合、「営業・マーケ費率」が約50%で、上場しているSaaS企業の平均的な数値です。

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横軸が創業からの年数、縦軸が売上を100とした場合のR&D費の割合です。

他方、R&D費(要は、エンジニアの人件費)は、20%以下で、上場しているSaaS企業の中間値から比べると、だいぶ低いまま推移してきました。

この2つから考えるに、Salesforce社は、(少なくても初期は)技術力ではなく、営業・マーケティングで勝っていた、と言えるでしょう。

ここが凄い#4: M&Aが上手

Salesforce社は、M&Aや投資にも積極的です。

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M&Aは、2010年から2015年の間に、$100m(110億円)以上の買収を5社行っています。他のSaaS系の会社に比べると多い方の部類です。

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他方、一件あたりの買収金額は、$390m(430億円)と競合他社に比べて非常に小さい部類です。

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また、$100m(110億円)以上のM&Aの合計額も、競合比では小さいです。

つまり、比較的小規模だがキレのある会社を買収して、自社サービスに統合し続けている会社、だと言えるでしょう。

最近は、特にAI(人工知能)系の買収が目立っています。

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CrunchBaseを見ると、Prediction IO、Tempo AIなどを買収しているのが見て取れます。

ここが凄い#5: 投資もSaaS企業中心

最後に、シリコンバレーの企業としては、珍しく、コーポレートベンチャーキャピタルを有し、投資も行っています。ファンドサイズも$200m(220億円)と大きく、2009年以来150社に投資をするという非常に積極的なCVCです。

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CrunchBaseを見ると、2016年に入ってからこれだけの投資がなされています。自らSaaSビジネスを展開しているのは上述しましたが、投資先もB2BのSaaSビジネスがほとんどです。自分たちがSaaSの「王者」だからこそ、投資先もSaaSを中心にすることで、勝率を上げられる、という戦略なのだと思います。

ここが凄い#6: SaaSビジネスの教科書も出版!

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M&Aや投資だけでなく、SaaSスタートアップの教育にも熱心です。今年のはじめに、「The SaaS Startup Founder’s Guide」という教科書的な電子書籍を公開しました。英語ですが、無料です。

私は全部読みましたが、執筆者が豪華なだけでなく、非常に内容の濃い本で、英語で読むのは大変かもしれませんが、SaaSビジネスをされている方には必須かと思います。

英語で全部読むのはなぁ、という方は、下記の最初の3章だけでも是非一読をオススメします。あるいは、SaaSスタートアップで集まって「輪読会」をするのも一つの手かもしれません。

Chapter 1: Subscription Economics: How Recurring Revenue Changes Everything
Chapter 2: Do the Time
Chapter 3: The Climb: How to Get to $10 Million

1章は、SaaSビジネスのKPIの話です。最低限、どのようなKPIを設定すべきなのか、という内容が書かれています。

2章は、「Hard Things」にも通ずるものがありますが、SaaSビジネスを始めるに当たっての心構えの話です。

3章は、年商10億円に到達するまでの一般的なマイルストーンが書かれています。

転載元:決算が読めるようになるノート:SaaSの王者・Salesforceの6つの「ここが凄い」

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メルカリは本当に「世界を取る(かも)」と思った件

柴田尚樹氏はSearchManのCo-Founder。2006年に入社した楽天では最年少執行役員となり、その後東京大学助教授を経てスタンフォードへ。500Startupsの出資を受けシリコンバレーでSearchManをスタートアップさせた。本稿は彼のnote「決算が読めるようになるノート」からの転載記事。同氏からの許諾を得て掲載させてもらった。彼の全ての記事はここで読める 最初にお断りしておきます…

shibata柴田尚樹氏はSearchManのCo-Founder。2006年に入社した楽天では最年少執行役員となり、その後東京大学助教授を経てスタンフォードへ。500Startupsの出資を受けシリコンバレーでSearchManをスタートアップさせた。本稿は彼のnote「決算が読めるようになるノート」からの転載記事。同氏からの許諾を得て掲載させてもらった。彼の全ての記事はここで読める

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最初にお断りしておきます。今回の内容は決算と関係ありません。いつものように数字もグラフもたくさん出てきません。「号外」のようなものだと思ってください。興味がない方は読み飛ばしていただいても構いません。

noteを始める時に、「やらないこと」を3つ決めました。一つ目はネガティブなこと(悪口)はなるべく書かない、二つ目は非上場企業に関しては書かない(非上場であるという意思を尊重します)、三つ目は僕の主観をなるべく入れない(入れるとしても客観データを主観を明確に分離)ということです。今回は、このうち2番目と3番目に違反しますが、何と言うか書かずにいられなかった、という気持ちなので書きます。

さて、前置きはこのくらいにして本題。

先日、メルカリが大型調達を発表しました。

僕は、あまり資金調達のニュースを気にしない方で、普段は「よくみんな自分の会社が現金をいくら持っているかを公衆の面前で喋りたがるよなぁ。はっきり言ってメリットないじゃん」くらいに冷ややかに見ているのですが、この資金調達リリースは何と言うか、とても感慨深いものがあったので、本稿を書くことにしました。

僕はメルカリ社とは利害関係もないし、実は知り合いもほとんどいないので、僕が思うことを正直に書きます。本稿はあくまで僕の主観であって、それは間違えているかもしれないし、全く違う意見の人もたくさんいると思います。本稿でイヤな思いをする人はあまりいないと思うけど、もしいたらコメント欄などでお知らせください。

時価総額10億ドル(1100億円)は割高か?

記事によると、既に月間100億円流通があるとのこと。手数料が10%なので、売上が10億円/月=120億円/年あるということになります。仮に時価総額が1200億円だとしても、現時点での年換算の売上の10倍なので、高すぎるということはないと思います。

参考までに、ビジネスモデルが同じで公開企業であるeBayは、2015年の年間売上$8.6Bに対して、時価総額$28.49B(2016年3月2日)なので、売上マルチプルは、3.3倍です。ただし、以前書いたようにeBayは成長率ほぼゼロの状態でこのマルチプルなので、急成長中のメルカリであれば、10倍になっていてもおかしくはないでしょう。

試験に出るかもしれない数字: 売上マルチプル(=時価総額÷売上)

eBay: 3.3x

メルカリ: 約10x(推定)

それよりも何よりも、これだけの短期間で、流通総額が月間100億円を超えていること、アメリカで700万ダウンロードまで達していること、今後もこれらの資金をアメリカ市場(や欧州)に投入する、ということに強い驚きを覚えました。

アメリカで勝つのは簡単じゃない

まぁ、これはまだ何も成し遂げていない僕が言うのはちょっと気が引けるんだけど、敢えて書きます。

日本のネット企業で、アメリカで成功している企業はゼロだと思います。上場企業でもスタートアップでも「成功」と言える企業はまだ無い。少なくても、トヨタや(一時期の)ソニーのようにアメリカで勝つネット企業は無い。

「成功したか!?」と思ったのは、一時期のグリーくらい、だと僕は思っています。(アメリカが黒字化した頃の話。今は再度大変そうですが。)楽天はあれだけ買収資金を投入しても、アメリカでは全く歯がたたない。それ以外にも、アメリカに支社を作って進出しようとした会社をたくさん見てきましたが、見事なまでに完敗。1勝9敗どころじゃなくて、0勝10敗。

日本人がシリコンバレーで創業したスタートアップは、一見上手くいっているようでも

1) ユーザー・売上が日本に大きく依存

2) 資金調達が日本に大きく依存

3) 1)でも2)でもないが成功と呼ぶには至っていない

のいずれかに全てが当てはまるように思います。個人的な見解としては、別に、売上や資本が日本依存でも、お金に国籍はないので問題なし、と思う反面、中国人やインド人のように活躍する日本人がいない、というのも現実だと思ってます。

実際にやってみれば分かるけど、シリコンバレーでの競争は日本での競争の比じゃない。アメリカではあまり売れずに、売上が日本依存になるスタートアップが出てくるのはこれが原因だと思います。スピードは早いし、何よりも、とにかくちょっとでも「イケてる」サービスが出てくると、凄い勢いでパクられる。このパクリ方が「あの会社よくパクるよね」と日本で言うレベルではなく、本当に丸パクリしてくる。それもインド・中国・中東の安い(がハイレベルな)エンジニアを大量投入してパクってくる。

こんな背景もあり、日本で基盤を固めた後にアメリカ進出しようとしているスタートアップから相談を受けると、僕がまず最初に言うのは「やめとけ」の一言なんです。

そんなに簡単じゃないと心から思うし、日本で上手く行っているなら、日本でもっと成長して上場すればいい、と思うし、今でも心からそう思っています。幸い、日本市場はまだまだ大きいし、普通に頭がいい人がリスク・リターンを考えたら、アメリカ進出にストップをかけるのが合理的な判断だと思います。

こんな風に考えると、日本で上手くいっていればいっているほど、アメリカ進出のリスクが大きくなります。だから、普通に合理的な判断をすればするほど、アメリカ進出なんてしない方がいい(リスクがリターンに見合わない)という話になります。

メルカリの豪華な経営陣が、こんな僕でも考えつくことを考えなかった、ということは無いと思います。熟慮した上で、わざわざ少なくないパーセントの株を希薄化してまで、そして上場を遅らせてまで、アメリカ市場に突入してきた、そして(まだ道半ばかもしれないけど)成果が出始めている、ということに関して、僕は心からその勇気を讃えたいと思います。(こう書くと上から目線すぎて恐縮ですが。)

なぜメルカリは世界で勝つかも、と思うのか

「世界を取るぞ!」といって勇気を持ってアメリカ市場に進出するのは、気合があれば割とできることかもしれないけど、メルカリはその先に行っていると思う、という話を少しします。

僕がなぜ「世界を取るかも」と思うかと言うと、僕の周りのアメリカ人でメルカリを使っている人がいないからです。皆無ですw。700万ダウンロードもされているアプリであれば、通常、僕の周りのアメリカ人の友人たちに評判を聞けば何かしら返ってきますが、メルカリに関しては、誰も使ったことさえありませんでした。

日本在住の友人でも使ったことがあると言うのは数人しかいませんでした。メルカリの日本での普及率を考えたら、信じられないくらい少ない人数しか、僕の周りで使っている人がいない。

というわけで、僕には、メルカリ内で、なぜそんなに売れてるのか、未だに全く理解出来てません。笑

これは実は重要で「業界人(=ネット業界の人)が想像できる範囲の外で成長している」というのは、実はものすごく参入障壁が高いんです。

僕が凄さを理解できなかった3つのサービス

もちろん、この話は僕の見えている世界の話なので「いやいやそんなことないよ」という人もいるかもしれません。これでも日々、世界中の新しいサービスを触っている方の人間だとは思うんですが、僕が過去に全く理解できなかったけど、凄く成功した日本のサービスの例を3つ挙げておきます。(繰り返しますが、僕が理解できない=通常は成功しない、と言いたい訳じゃないので誤解なきよう。)

一つ目はクックパッド。最初に見たのは、クックパッドが上場した直後くらいだったと思います。知り合いの女の子が「私、有料会員だよ」と言うのを聞いて、心から驚いた記憶があります。(当時)料理をしなかった僕は、クックパッドの何が凄いのかわからなかったし、佐野さん本当に暇なのかなと思ってました。料理をする人の気持ちが全く分からないので、ソート機能に課金すると知った時も、

マジか、そんなの絶対上手くいかねーよ。ソートなんかにカネ払う人いねーだろw

と思ってました。(多くのエンジニアが同じ気持ちだったと思います。)

二つ目はZOZOTOWN。リリース直後のZOZOをはじめて見た時も、

ファッション単体のECなんて、アマゾンとか楽天に勝てるわけ無いじゃんw 数年後に在庫処分で楽天に出店するようになるな、これ。

くらいに思ってました。(ご存知の方は多いかと思いますが、僕はほぼ1年中サンダルを履くくらい、ファッションに無頓着です。)

三つ目はPinterest。Pinterestに至っては、もう完全に見るのも辛いと思ってました。どれだけ必死に使っても、どれだけ考えても全く全く全く何が楽しいのか理解できませんでした。

この3つのサービスは今となっては、知らない人がいないくらい大成功しています。メルカリには、何となくこの3つに似た雰囲気を凄く感じます。

キャズムの超え方が異常(だと思う)

もう少し詳しく説明します。

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マーケティングで有名なキャズム理論というのがあって、新しいサービスは、通常、イノベーター、アーリーアダプターと呼ばれる人たちから徐々にマジョリティへ広まっていく、というのが通説です。

ネット系のサービスの場合、通常は、創業者が自分が困っていることを解決するサービスを作るのが一番の成功パターンで、自分が困っていること=自分と似た属性の人が困っていること、である場合が多いから、業界人(=ネット業界)の人がイノベーター、アーリーアダプター(初期の熱狂的なユーザー層)になることが多いわけです。ほとんどのサービスはこうやって広まってきていると思います。

ところが、メルカリの場合、(少なくても僕の周りでは)日本でもアメリカでも、「業界人」をいきなり飛び越えて、マジョリティが使いはじめるサービスになってしまっている気がします。

つまり、「業界人」が全く理解できない世界のサービスにいつの間にかなっている、ということなんだと思います。(しかもあのスケールで。)

仮にどこかが大量に資本投下してパクってくるとしても、あの世界観を理解できるエンジニアを探すのがほぼ不可能だと思うので、競合をあまり心配しなくても良いスケールまで来ていると思うのです。

UIや見た目などの表面的なところはパクれると思うのですが、このキャズムの超え方や背景にある思想をパクるのは相当困難です。(楽天レシピがクックパッドそっくりに作っても、同じようなサービスにならないのと同じです。)

何でも売り買いできるプラットフォームであるが故に、成功すればするほど社会問題になりかねない要素もありますが、逆に言うと、それだけ「社会のインフラ」に近づいているのだと思います。

いずれにしても、こんな短期間でこんなキャズムの超え方をするサービスが生まれるということはあまり無いことは間違いないので、微力ながら応援します!

(本文は以上で了。以下はおまけ。今日も読んでくださってありがとうございました。)

C2Cフリマ・ECの参考KPI(おまけ)

非公開企業なので、報道で出ている以上の数字は分かりませんが、関連しそうな数字を少し整理しておきます。

MAUあたりの取引額

少し古いデータですが、スマホ利用者調査によると、ヤフオクは、利用者数がPC1250万人、モバイル1585万人で、計2800万人くらい(重複はもちろんあるでしょうが、ここでは単純合算)。流通総額が大体月に600–700億円くらい。(2015/Q2)。従って、1ユーザーあたり、2,142円/月の流通。

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当時、メルカリは、ダウンロードが2000万と発表があり、上記調査に基づくMAUは181万ユーザー。アクティブ率(=MAU/トータルダウンロード)が約10%弱という計算です。この時点で仮に、流通総額が50億円/月とすると、1ユーザーあたり、2,758円/月の流通。

試験に出るかもしれない数字: MAUあたりの取引額

ヤフオク: 2,142円/月

メルカリ: 2,758円/月

くらいと思われます。ヤフオクの数字が低く出ているのは、PCとスマホのユーザー重複を除外出来ていないからだと思われます。

メルカリの「アクティブ率」10%弱というのは、実際はもっと高そうな気もします。他のデータでは、メルカリのアクティブ率は非常に高い、というデータも出ています。

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例えばこれですが、ここでのアクティブ率とは、↑の「MAU/トータルダウンロード」ではなく、「MAU/インストール済デバイス数」なので、こんなに数字がブレます。

年間の購買回数

最近、面白い記事を見つけました。世界の主要ECプラットフォーム上での年間平均購買回数です。

試験に出るかもしれない数字: 年間平均購買回数

Taobao (Alibaba): 50回/年

Amazon: 15回/年

JD(中国版Amazon): [不明だがAmazon以下と推測]

Wish: 5回/年

メルカリの購買回数がどの程度かは推測しようがないのですが、Amazonよりは上でしょうが、Alibaba(Taobao)より上なのか下なのかは、現時点で入手可能なデータからは推測さえ困難です。

転載元:決算が読めるようになるノート

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新生ヤフーショッピングはどのくらい儲かるのか?

柴田尚樹氏はSearchManのCo-Founder。2006年に入社した楽天では最年少執行役員となり、その後東京大学助教授を経てスタンフォードへ。500Startupsの出資を受けシリコンバレーでSearchManをスタートアップさせた。本稿は彼のnote「決算が読めるようになるノート」からの転載記事。同氏からの許諾を得て掲載させてもらった。彼の全ての記事はここで読める ヤフーの2015年10-…

shibata柴田尚樹氏はSearchManのCo-Founder。2006年に入社した楽天では最年少執行役員となり、その後東京大学助教授を経てスタンフォードへ。500Startupsの出資を受けシリコンバレーでSearchManをスタートアップさせた。本稿は彼のnote「決算が読めるようになるノート」からの転載記事。同氏からの許諾を得て掲載させてもらった。彼の全ての記事はここで読める


ヤフーの2015年10-12月決算に関しては、既に書きましたが、その中で「ショッピング事業はどうやって稼ぐのか?本当に儲かるのか?というものかと思いますが、これに関しては、答えが見え始めています。」と書きました。

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そもそも、ヤフーショッピングが、「Eコマース革命」と称して、出店料、売上手数料を無料化した時以来、ずっとこの「戦略」スライドを使っています。要は、こういうことです。

  • 出店料、売上手数料を無料化
  • => ストア数↑・商品数↑
  • => 競争激化 = 売り場が魅力的になる
  • => 購入者数↑・流通総額↑
  • => 広告出稿↑

つまり、最終的には、EC店舗が出稿する広告で稼ぐ、ということですね。これは非常に分かりやすいストーリだと思いますが、一体どのくらい稼げるのか、という視点で少し詳しく見てみたいと思います。

ECモールの3つの収益源

少し話がそれますが、ECモール(B2B2C型・C2C型=フリマ型のマーケットプレイス)の収益源は一般的に3つあります。

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ちょいと古い資料しか見つかりませんでしたが、2010年10-12月の四半期楽天市場の売上構成です。ご覧いただけば分かる通り、大きく分けて、

  1. 出店料(例: 1店舗あたりX万円/月)
  2. マージン(例: 店舗売上のY%)
  3. 広告

の3つです。楽天市場の場合、この3つがバランス良く構成されていますが、後発のヤフーショッピングは、1. 出店料(例: 1店舗あたりX万円/月)と2. マージン(例: 店舗売上のY%)を無料にして、3. 広告だけで勝負する、ということです。

ECモールの流通総額と売上

ECモールの決算を見ていると、必ず出てくる指標が「流通総額・取扱高・GMV」というものです。これは、モールに出店している全店舗(出品者)の売上の合計です。

一方、直販でないECモール型のビジネスの場合、流通総額とECモールは異なります(当たり前ですが)。ECモールの売上は、前述の3つの売上(出店料、取引手数料、広告)の3つの合計です。

では、例えば、流通総額が100あった場合に、ECモールはどのくらいの売上になるのでしょうか?

ECモールのMonetization Rate

ヒントはアリババの決算資料にあります。

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アリババの決算では、「Monetization Rate」というスライドが必ずあります。

Monetization Rate = 売上 / 流通総額

で、流通総額が100あった場合の売上を表します。アリババは、ヤフーショッピングと同じく、出店料、取引手数料を(ほぼ)取らずに、広告で稼ぐビジネスモデルであるため、流通総額(GMV)を開示するだけでは、投資家が「流通総額(GMV)はいいけど、実際いくら稼いでるんだ?」と気になる訳です。

このMonetization Rateは、国によって割と違います。上述のように、アリババ(中国でほぼ独占的なECモール)の場合、3%弱です。つまり、100の流通があった場合に、3がアリババの売上(取引額の3%分くらい広告出稿される)になる、ということです。

アメリカのECモールのMonetization Rate

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アメリカでモール型のEC最大手は、eBayです。eBayの場合、$78Bの流通総額(GMV)に対して、$7.2Bの売上なので、Monetization Rateは9.2%です。eBayに個人として出店すると取引額の10%が課金されますので、この9.2%というのはほぼ、取引手数料から来ているのではないかと思われます。

(実際には、eBayは、アメリカ外のビジネスも大きいのですが、基本的にはアメリカ外でもアメリカ内とほぼ同じモデルなので、ここではアメリカの数字として扱います。)

ちなみに、Amazonも(特にアメリカでは)モール型で、出店者が出品した商品も売っています。Amazonに出品した場合の取引手数料はeBayよりもずっと高く、(一部のマージンが出にくいカテゴリーを除いて)15%〜となっています。さすが、ジャイアンキャラですね。

従って、アメリカのECモールのMonetization Rateは、約10%弱くらい、と覚えておけばいいと思います。

日本のECモールのMonetization Rate

日本のECモールは、楽天市場の例を見るのが一番分かりやすいでしょう。

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楽天市場の場合、2015年4-6月期で、5341億円の流通総額(GMV)に対して、380億円の売上なので、Monetization Rateは7.1%です。

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ちなみに、C2C型のヤフオクは、8.64%の取引手数料がかかります。

以上まとめると、日本ののECモールのMonetization Rateは、B2B2Cの場合7%くらい、C2Cの場合8.5%くらいと覚えておけばいいと思います。

各国のECモールのMonetization Rate

大事な数字なので、一応まとめておきます。各国のECモールのMonetization Rateは、

  • アメリカ: 10%弱
  • 日本: 7% 〜 8.5%程度
  • 中国: 3%程度

と覚えておきましょう。試験に出ます(嘘)。大事な数字です。

余談ですが、中国(アリババ)は、まだまだMonetization Rateを上げる余地がありそうに見えます。現時点でもYoY +30%以上成長していて圧倒的な市場シェアを持つアリババですが、流通総額(GMV)の成長スピードが緩やかになるタイミングで、市場シェアを減らさない形で緩やかに、Monetization Rateを上げてくる施策を出してくるはずです。単純に、Monetization Rateが日本並になるだけで、売上が2倍以上になりますので。

これも余談ですが、日本のMonetization Rateがアメリカよりも低いのは、歴史的な経緯があるのかと思います。ECモールの最大のプレーヤーである、楽天市場は、当初、出店料5万円/月のみでビジネスを展開していました。つまり、取引手数料や広告費を一切とっていなかった、ということです。楽天が上場後、2002年頃から、取引手数料を徴収し始めた、という背景があります。つまり、初期の楽天市場のMonetization Rateは、限りなく0に近かった、ということになります。

ヤフーショッピングの現時点での売上ポテンシャル

さて、ようやく本題。

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ヤフーショッピングの流通総額(GMV)は、2015年10-12月期で、1453億円です。仮に、楽天市場と同じだけのMonetization Rateになるとすると、

1453億円 x 7.1% = 103億円

103億円くらいの売上(=ヤフーショッピングの場合は広告収入)があってもおかしくない、という計算になります。実際に、現時点でどのくらいの広告売上があるかというと、

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同四半期で30億円の広告収入があったとのことです。つまり、

現時点では(四半期あたり)30億円の売上だけど、103億円くらいのポテンシャルがある(差し引き73億円くらいは売上増える余地あり)

あるいは

ヤフーショッピングのMonetization Rateが、楽天市場と同程度(7.1%)になれば、年400億円くらいの売上貢献をするポテンシャルが既にある

ということが言えるんじゃないかと思います。

本当にそんなに儲かるポテンシャルがあるのか?

そうは言っても、楽天市場とヤフーショッピングだとモデルが全然違うし、Monetization Rateが本当に同じくらいになるのか?

という質問をしたくなります。僕はおそらく、「Monetization Rateは楽天市場並になる」と思います。

というのは、出店している店舗(のうち特に売上が大きい店舗)は大部分が重複しているかと思います。店舗から見れば、大きいモールが2つあって、片方だけに出店する理由はあまりないかと思います。特に、2つとも売上が上がるのであれば尚更です。

そして、店舗から見ると、楽天市場に出品して売上のX%の取扱手数料を払うのと、ヤフーショッピングに出品して売上のX%分を広告出稿するのは、ほとんど同じ意味だからです。

現在のヤフーショッピングの勢いを見ていると、まずは、広告売上をどんどん増やし、その売上をポイント還元等でプロモーションに使う、ということをしかねません。あくまで想像の域を出ませんが、ヤフーショッピングのMonetization Rateが7%になっても、7のうち5くらいをポイント還元しそうな勢いですね。

これは極端な例ですが、市場シェアが1位のプレーヤー(=楽天市場)に追いつくまでは、こうやって大胆に投資をし続けるというのは十分にあり得る戦略だとは思います。

「広告で稼ぐ」作戦がヤフーショッピングでしかできない理由

最後に一番大事なことを書きます。ヤフーショッピングが「広告で稼ぐ」方向であること、ポテンシャルが大きそうだということは、上で書きました。他方、この戦略は、楽天市場やアマゾンは真似できないのでしょうか?(もし簡単に真似できてしまう戦略だとすると、後発のヤフーショッピングとしては辛いですよね。)

この戦略は、ヤフーならではのもので、楽天市場やアマゾンには簡単に真似できない戦略だと僕は見ています。

それは、ヤフーが(ショッピング以外)「ウェブ検索」という事業を持っているからです。逆にヤフーが、この「ウェブ検索」を持っていなければ、恐らく今回のEコマース革命は絵に描いた餅になる可能性が高かったとも思っています。以下で詳細を説明します。

EC x 広告 = 商品リスト広告 (Product Listing Ads, PLA)

ヤフーショッピングが広告売上を増やす上での鍵が、「商品リスト広告 (Product Listing Ads, 略してPLA)」です。「商品リスト広告」とは、EC等に特化した検索連動広告だと思ってください。しかも、従来の「テキスト検索連動広告」とは異なり、商品画像をも表示させることが出来ます。

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一般に、検索連動広告は、特定のキーワードで検索したユーザーに広告を表示するので、広告ROIが高い反面、広告の運用が非常に面倒です。例えば、あなたがEC店舗を運営しているとして、あなたの店舗の上位100商品に対して、検索連動広告を購入したいとします。その場合、各商品ごとにキーワードを20個ずつ選定すると、100商品 x 20キーワード = 2000組に対して、広告コピーを考えたり、広告パフォーマンスを管理・運用する必要があります。

既にお腹が痛くなってきましたね。これをほぼ自動化するのが「商品リスト広告」です。どういう仕組かというと

  1. EC店舗が広告プラットフォームに、商品データをフィード
  2. 広告プラットフォームは、商品データからキーワード候補を自動抽出
  3. 各キーワード候補ごとに検索連動広告を配信し、パフォーマンスが良いものが多くのトラフィックを得られるように自動調整

とこんな具合です。ポイントは、店舗がすべきことは、「商品データをフィードする」ことだけです。後は、広告プラットフォームがほぼ自動的にやってくれます。

が、ヤフーの場合は、この「商品データをフィード」さえも必要なくなります。というのは、ヤフーショッピングは全店舗の商品データを全部持っており、同じヤフーという会社に、検索連動広告事業があるからです。つまり、論理的には、ヤフーショッピングの店舗が

商品A, B, Cに対して、CPC X円(あるいはCPA Y円)で「商品リスト広告」を買う

というボタンを押すだけで、ヤフーショッピングから、ヤフー検索連動広告に商品データがフィードされ、広告が勝手に回り始める、ということが可能です。(あくまで論理的には。)

ここまで出来れば、店舗への(労働力的な)負担ほぼ無しで、広告売上が増えて、雪だるま式に大きくなるでしょう。

ちなみに、この「商品リスト広告」の凄さはGoogle Adwordsが既に証明済みです。Googleは2012年に「商品リスト広告」をリリース済みです。

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まず、アメリカの小売EC店舗の検索連動広告の出稿種別ですが、Adwordsで見ると、テキストの検索連動広告が66%に対して、「商品リスト広告」が20%なので、「従来のテキスト検索連動広告」の3分の1くらいが既に「商品リスト広告」になっています。

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次に、2014年Q4のデータですが、小売EC店舗の「商品リスト広告」の出稿額は、YoYで+45.4%も伸びています。(他方、「従来のテキスト検索連動広告」はYoY +10.4%の伸びです。)

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最後に、小売EC店舗が検索連動広告から得るクリックが100あるとすると、

  • 全体平均では、25%のクリックが「商品リスト広告」経由
  • 独立系(Nonbrand)店舗では、50%のクリックが「商品リスト広告」経由

という具合に、「商品リスト広告」は、ナショナルブランドよりも、中小の独立系店舗に相性が良い、ということが分かっています。つまり、ヤフーショッピングに出店している多くの中小店舗にとって、とても相性が良い広告商品だと言えます

ヤフーはまだ「商品リスト広告」を提供していませんが、もし提供しはじめれば、Eコマース革命が最終局面を迎え、いよいよ収穫期に入ってくるのだと思います。

転載元:決算が読めるようになるノート

Image Credit: Shopping / aigle_dore on Flickr

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ヤフーの「減益」は心配すべきことなのか?

柴田尚樹氏はSearchManのCo-Founder。2006年に入社した楽天では最年少執行役員となり、その後東京大学助教授を経てスタンフォードへ。500Startupsの出資を受けシリコンバレーでSearchManをスタートアップさせた。本稿は彼のnote「決算が読めるようになるノート」からの転載記事。同氏からの許諾を得て掲載させてもらった。彼の全ての記事はここで読める ヤフーの2015年10-…

shibata柴田尚樹氏はSearchManのCo-Founder。2006年に入社した楽天では最年少執行役員となり、その後東京大学助教授を経てスタンフォードへ。500Startupsの出資を受けシリコンバレーでSearchManをスタートアップさせた。本稿は彼のnote「決算が読めるようになるノート」からの転載記事。同氏からの許諾を得て掲載させてもらった。彼の全ての記事はここで読める


ヤフーの2015年10-12月決算が発表されました。

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売上はYoYで+82.6%だったものの、営業利益はYoY -13.7%と「減益」になっています。これまでも「増収増益」を続けてきたヤフーですが、これは心配すべきことなのか、というのを少し考えたいと思います。

先にこの決算をどう読むか、という点を。

  1. 少なくても今の段階で心配することはない。
  2. 来期くらいまでは多分心配なし。
  3. (でもその後は分からない。)

という感じだと、僕は見ています。(あくまで私見)

減益の理由 = 一時的な投資

売上がYoYで+82.6%も増えた理由は、アスクルを買収したからです。アスクルのB2Bビジネスは、Amazonと同じ、所謂「直販」ビジネスなので、売上は大きく跳ねます。(他方、利益率はヤフーの広告、オークションビジネスのように高くはありません。)

このアスクル連結だけだと、利益増への貢献は大きくなさそうです。ところが、アスクルを連結する際、元々持っていた株式価値を再評価したら、もの凄い額(596億円)の含み益があることが判明し、それを前四半期に計上しています。

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このスライド(前回の決算資料)の下に小さく書いてあります。

注2: アスクル(株)の連結子会社化に伴い、当社が既に保有していたアスクル(株)に対する資本持分を公正価値で再測定し、当該四半期に596億円を計上しています。

要はこういうことだと思います。(心の声)

596億円も利益出ちゃったから、父ちゃんに取られる前に、自分たちで使ってしまおうぜ

余談ですが、ヤフーというのは、ソフトバンクの連結子会社でして、歴史的に見ると、毎年、増収増益を続けて、必死に貯めた現金を父ちゃんに使われる、ということを繰り返しています。子供が必死に貯めたお小遣い、父ちゃんに取られる前に自分で使いたい!という気持ち、凄くよく分かります。

話がそれましたが、この596億円の利益があるから、今年はたくさん投資しても大丈夫だぜ!ということです。

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実際、このスライドにあるように、今四半期に90億円の例外的な販促費を使った、とあります。「たられば」はあまり良くないのですが、もし仮にこの90億円を使わずに、同じだけの売上が出ていたとすると、

売上 1,964 億円 (YoY +82.6%)

(この販促費を除外した場合の)営業利益 522億円 (YoY +4.31%)

という具合に、営業利益がYoY +4.31%は増えていたという計算になります。売上増に比べると、見劣りしますが、コマースがまだマネタイズする段階になっていないということも含めて考えると、ちゃんとYoYでプラスになっているので、あまり心配しなくていいのかなぁと思います。

これだけじゃなくて、僕が「まぁ今のところ心配なし」と思う理由をいくつか書きます。

【メディア・広告】スマホ対応は完了したのか?

未だに稼ぎ頭の広告ビジネスですが、メディアビジネスにとってここ数年で一番大事なことは、スマホ対応することです。ユーザーのネット接続時間の多くがPCからスマホに移っているので、スマホでユーザーに支持されないとトラフィックが減ります。

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DUBを見ると、60%がスマホからアクセスするほどにスマホ対応が進んでいるとのこと。スマホ対応に失敗して失速する会社もいる中、これは悪くないと思います。ただし、

*2 アプリ、ブラウザーからの閲覧を含んでいます。アプリ、ブラウザーの両方から閲覧した場合は、重複カウントしています。

とあるので、実際のユニークユーザー数でいくと、スマホ割合は60%よりも小さいと思われますので注意が必要ですね。是非、スマホ部分に関しては、ウェブとアプリの比率を開示してほしいなぁと思います。(推測ですが、アプリ対応が進んでいれば、アプリ比率を開示しそうな気がするので、アプリ対応はもう少し時間がかかるのかもしれませんね。)

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広告売上は、41.4%がスマホ経由になっているとのこと。スマホ対応が最も進んでいると言われるFacebookの場合は、広告売上の80%がスマホ経由なので、それに比べると見劣りしますが、ヤフーの場合は、PCでの広告ビジネスが巨大だったので、悪くない数字だと思います。

スマホ広告売上がYoYで +30.4%というのは、スマホ広告の業界平均の成長率並だと思われます。よって、可もなく不可もなくという具合ですね。

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内訳を見ていると、ディスプレイ広告は絶好調である反面、検索連動広告がYoY -10.4%も落ちています。はっきり申し上げるとこれは落ちすぎだと思います。

ディスプレイと検索連動広告の合計にすると、YoY +6.3%しか伸びていないことになってしまっているので、検索連動広告の減収を止めない限り、今後、フラットに近い成長か、最悪の場合、減収という可能性もあり得るかもしれません。

メディア・広告を「スマホ対応は完了したか?」という観点でまとめると、こんなまとめになると思います。

1. DUBベースで60%がスマホ経由

ただし、ブラウザとアプリ比率が開示されていないため

「スマホ対応」は順調だが「アプリ対応」までできているか不明

2. 広告売上のうち40%以上がスマホ経由

スマホ広告売上の成長率は、YoY +30%で業界平均並

ディスプレイ広告は、YoY +31.4%で絶好調

検索連動広告がYoY -10.4%と激しく減収しているのが課題

検索連動広告の減収を止めないと、二桁成長は厳しいかも

【ショッピング】今後も継続投資できるのか?

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四半期ベースでの流通総額は、1000億円を超えて、YoY +48%と大幅増です。50億円の投資をしているとは言え、この規模でYoY +48%というのは凄いの一言です。

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この急成長の要因の一つが、プレミアム会員による購買。全流通総額のうち、プレミアム会員が占める割合が55%にもなっている、というのは驚きです。

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これまでの決算では、詳細のKPIがあまり開示されていませんでしが、今回からいくつか開示されるようになりました。平均購入回数がYoY +21%、翌月再購入率も10ヶ月で16 ptアップしている。

ここまで一言でまとめると

50億円/四半期 投資しているとは言え、この短期間でこの成長は凄い

ということになるかと思います。ただ、

来年以降も同じペースで投資し続けられるの?

という疑問も出てきます。今年ほど多額じゃないと思いますが、投資し続けられると思います。

先日、一休の買収を発表しました。一休は年に約30億円の経常利益が出るビジネスです。つまり一休が連結になると、30億円利益が増える訳です。見方によっては、この一休が稼ぐ30億円を丸ごとショッピング事業に投資しても、ショッピング事業としての利益は減らない、とも言えます。

ヤフーはIFRS適用企業なので、のれん代の償却もないので、一休の例のように、大量(5200億円)にある保有現金を使って、利益が出ている企業を買収し、その利益を取り込んで、再投資する、というのを繰り返していく、というのが正しい戦略だとも言えます。(一時のライブドアに近いような派手なM&Aが今後増えるかとも推測されます。)

もう一つの疑問は

ショッピング事業はどうやって稼ぐのか?本当に儲かるのか?

というものかと思いますが、これに関しては、答えが見え始めています。(が、長くなるので、ニーズがあれば、別記事にします。)

【クレジットカード事業】楽天化が進む

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もう一つの投資事業である、クレジットカード事業です。一言で言うと、楽天カードをそのままパクっているなぁという印象です。

こちらは積み上げ型のビジネスで、右肩上がりに会員数が増えています。年末時点で180万人。楽天カードが1200万人なので、楽天カードの約15%程度の会員数という具合です。

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取扱高も右肩上がりです。詳細数値がグラフからしか読めませんが、直近四半期で750億円くらいでしょうか。楽天カードは月4000億円とのことなので、取扱高ベースだと、楽天カードの6-10%程度、という具合と推測されます。(つまりECとの融合が進むとすると、まだまだ伸びしろあり、とも言えます。)

(一見堅実に見えるカード事業ですが、実は、大きな「地雷」が潜んでいるのですが…これも長くなるのでニーズがあれば別記事にします。)

まとめ: 今回の減益はさほど心配なし

  1. メディア・広告は、スマホ対応が(少なくても業界平均レベルのスピードで)進行中。唯一の心配は検索連動広告。
  2. ショッピングは大きな投資で大きな成長。M&Aを絡めて、投資資金を捻出し続けながら突き進むと思われる。
  3. カード事業は当面は右肩上がりで成長するはず。

ということで、一時的に減益にはなっていますが、今の時点であまり心配しなくていいレベルだとは思います。むしろ、これから、「父ちゃんにお金とられる前に自分たちで使おうぜ」作戦がどのくらい行われるのか、目が離せないとも言えるでしょう。

転載元:決算が読めるようになるノート

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