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欧州のブロックチェーン研究・開発ハブとして機能するベルリン【ゲスト寄稿】

本稿は、仮想通貨に特化したシンクタンク Baroque Street による寄稿です。 本稿を担当した Masamichi Matsushima 氏は、日本の都市銀行を退職後、Baroque Street に入社。アナリストとして世界の仮想通貨事情を調査しています。 現在は、エストニアに拠点を置き、ヨーロッパ中心に活動中です。 7月26日、ドイツのベルリンにあるブロックチェーン特化型コワーキングス…

本稿は、仮想通貨に特化したシンクタンク Baroque Street による寄稿です。

本稿を担当した Masamichi Matsushima 氏は、日本の都市銀行を退職後、Baroque Street に入社。アナリストとして世界の仮想通貨事情を調査しています。

現在は、エストニアに拠点を置き、ヨーロッパ中心に活動中です。


Full Node
Image credit: Baroque Street

7月26日、ドイツのベルリンにあるブロックチェーン特化型コワーキングスペース「Full Node」で開かれたミートアップに参加した。そこではブロックチェーンのガバナンス——誰が公的なブロックチェーンに変更を加える権利を有するのか、それはどのようなプロセスで行われるべきなのか、ブロックチェーン上で管理されるべきなのか等々——について、業界屈指のガバナンス関連プロジェクトである Tezos、Colony、Cosmos、POANetwork、Polkadot の5プロジェクトが登壇し様々な議論が展開された。

過去に訪れたミートアップのように投資家や業界に関心ある人たちが主な参加者かと思いきや、どうやらその顔ぶれがこれまでとは違う。Consensys、Parity、0x、Dfinity と いった業界でも名の知れたプロジェクトをはじめ、各々ブロックチェーン開発に携わる人たちがリスナーとして参加していたのである。議論の詳細は本稿の主旨ではない為ここでは割愛するが、議論は現在の各国選挙制度の問題にまで発展し非常に有意義な内容であった。各国で開かれている陳腐な開発者向けミートアップとは似て非なるものである。ベルリン滞在2日目にして、これまで訪れたヨーロッパ各国とは一味違った業界の空気を感じることとなった。

Full Node で開催された、ガバナンスに関するミートアップの様子
Image credit: Baroque Street

ドイツのベルリンは、スイスのツーク、イギリスのロンドンに並ぶ、ヨーロッパの仮想通貨・ブロックチェーンの中心地として注目されており、多くのブロックチェーン企業が拠点を構えている。中でも、アメリカに比べた時の開発コストの低さを理由に開発チームを置く企業も多い。ヨーロッパの中心に位置し生活インフラが整っているだけではなく、政府のイノベーションに対する理解も深い為、企業にとっては絶好の開発環境と言えるだろう。何もこれはブロックチェーン企業に限ったことではない。モバイルバンク企業として世界的にも有名な N26 をはじめ、ベルリンには数多くのスタートアップ企業が存在するのである。

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開発ハブとしての Full Node

Full Nodeは 、分散型予測市場の構築を目指す Gnosis とブロックチェーンネットワークの構築を目指す Cosmos とが今年4月に共同で立ち上げた、ブロックチェーン特化型コワーキングスペースである。両社ともに、ベルリンにあるイーサリアム開発コワーキングスペース「EthDev」にて活動をしていたが、そこから独立した形となる。

Full Node という名前はブロックチェーンネットワーク上で取引の検証等を行う〝ノード〟に由来しており、そのコンセプトは開発ハブとしてブロックチェーン技術の成熟を目指すことにある。現在の利用社数は両社を含めて22社。その中には上述した Parity や Dfinity、そして先月にマルタ証券取引所と中国大手取引所 Binance(幣安)との提携を発表した Neufund なども名前を連ねている。

Full Node では、冒頭に述べたようなイベントが毎週のように開かれている。施設内の人がスピーカーになることもあれば、外部からゲストを招くこともあると言う。現状は従来のインキュベーション施設のような法務、税務、マーケティングその他専門分野におけるサポート体制はなく、まさに共同開発スペースと呼ぶのがふさわしいかもしれない。

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Full Node 施設内にあるコンテンツの録音スペース
Image credit: Baroque Street

GnosisのBrand & Content Strategy 担当を務めるNadja Benes 氏は Full Nodeの役割について次のように述べた。

ブロックチェーン技術が成熟する為には、開発が共通の場所で行われることが重要である。互いが競争するのではなく刺激し合うことで相乗効果が生まれ、技術の発展に繋がっていく。

Benes 氏によれば、将来的には海外施設とも提携を結び、ブロックチェーンの R&D、インキュベーション施設としての体制を充実させる予定であるとのことである。

R&D に力を入れる欧州経営大学院(ESMT)

アメリカのスタンフォード大学や、先日ニュースに取り上げられたトルコのバフチェシェヒル大学のように、今年に入り多くの大学がブロックチェーン研究に乗り出している。ベルリンにある欧州経営大学院(ESMT)もその一つだ。彼らは技術研究と事例研究を重ねることで、ブロックチェーンを既存のビジネスモデルにどう応用できるかを日々模索している。また、定期的に業界の知見がある人を講師として招き、ブロックチェーン講義をオープンレクチャーとして行なっている。興味深いのは、この学校の授業料はビットコインで支払うことができるということである。

欧州経営大学院(ESMT)の外観
Image credit: Baroque Street

ESMT の CFO を務める Georg Garlichs 氏はビットコイン決済の導入について次のように述べた。

私たちの学校は国際学生が大半を占める為、多くの学生が学費の仕送り等で外国送金を利用している。ビットコインは外国送金に比べ手数料も安く、PC や携帯で簡単に送金ができるので便利。また、私たちはテクノロジーの分野に力を入れた学校である為、技術研究の一環としてもビットコイン決済を導入した。PRの観点からも導入メリットはある。

ESMT は決済プロバイダと連携してビットコイン決済の普及にも努めており、ベルリン市内のコーヒーショップやレストラン等に直接話をしに行くこともあると言う。Georg 氏によれば、未だに多くがビットコイン決済に懐疑的であり、普及の為にはビットコインの決済手数料も一つネックになってくるのではないかとのことである。

ベルリン市内にあるビットコイン決済を受け入れるバー
Image credit: Baroque Street

このように、ベルリンは確かにヨーロッパにおけるブロックチェーンの研究開発ハブとして機能している。しかし、最後に一つ付け加えたいのは、今回の滞在を通じて出会った人たち全員が「ドイツ国内におけるビットコインの認知度はそれほど高くない」と揃えて口にしたことである。国として広いというのは当然あるだろうが、その実態は各国から集まった優秀な開発者らが局所的に盛り上がりを見せているだけなのかも知れない。

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リトアニアで密かに発展する仮想通貨・ブロックチェーン業界——Blockchain Centre Vilniusを訪ねて【ゲスト寄稿】

本稿は、仮想通貨に特化したシンクタンク Baroque Street による寄稿です。 本稿を担当した Masamichi Matsushima 氏は、日本の都市銀行を退職後、Baroque Street に入社。アナリストとして世界の仮想通貨事情を調査しています。 現在は、エストニアに拠点を置き、ヨーロッパ中心に活動中です。 7月2日、バルト三国の一つリトアニアの首都ヴィリニュスにある仮想通貨・…

本稿は、仮想通貨に特化したシンクタンク Baroque Street による寄稿です。

本稿を担当した Masamichi Matsushima 氏は、日本の都市銀行を退職後、Baroque Street に入社。アナリストとして世界の仮想通貨事情を調査しています。

現在は、エストニアに拠点を置き、ヨーロッパ中心に活動中です。


Image credit: Baroque Street

7月2日、バルト三国の一つリトアニアの首都ヴィリニュスにある仮想通貨・ブロックチェーンに特化した技術センター Blockchain Centre Vilnius(以下、BC Vilnius)を訪れた。本施設は技術センターと謳っているが実態はコワーキングスペースであり、先月寄稿したスイスの Crypto Valley Labs と同様、リトアニアの仮想通貨・ブロックチェーン業界におけるエコシステムの中心的役割を果たそうとしている。

以下では、BC Vilnius との面談内容を中心に、一部他社の発言も交えてリトアニアの仮想通貨・ブロックチェーン事情について考察する。

Blockchain Centre Vilnius が掲げる3つのビジョン

BC Vilnius は2018年1月に設立された、仮想通貨・ブロックチェーンに特化したインキュベーション施設である。施設会員に対し提携先あるいはメンターと呼ばれる専門家が法務・税務・マーケティング等各方面でのサポート行う。また、欧州だけでなく中国、オーストラリアにも提携先があり、投資家の紹介や進出支援等を行うことで施設会員の事業促進を図っている。経営陣には起業家や投資家だけではなく、欧州議会やエストニア政府での経歴を持つ人もおり、官民ともに知識が豊富と言える。

上述した通り、基本的な役割は他のインキュベーション施設と何ら変わりないが、BC Vilnius は経営理念として以下3つのビジョンを掲げている。

勉強会などのイベントが行われているスペース
Image credit: Baroque Street

1. 仮想通貨・ブロックチェーン教育

第一に、彼らが力を入れているのはユーザーの教育である。この業界では時として、ユーザーリテラシーの低さと格差が問題視される。リテラシー分布として、ビットコインの基本的な仕組みすら理解していない人が依然大半を占める中で、業界に詳しく影響力を持ったアーリー層(早い段階からこの業界に携わってきた人たち)が一定数存在し、中間層が最も少ない状態が続いている。

BC Vilnius は マスの底上げを図ろうと毎週水曜日に無料で勉強会を開催している。また、月に1〜2回ゲストスピーカーを招致して少し上級者向けの有料イベントを開催、年に数回業界人を集めたクローズドのネットワーキングイベントを開催している。

BC Vilnius の Communications Manager を務める Ian Kane 氏は、本施設でのイベント開催について次のように述べた。

参加者によってリテラシーのレベルが違うため、内容を分けて考えなければならない。ユーザーリテラシーの底上げは仮想通貨・ブロックチェーン普及の為にも必要であり、我々もそれに貢献したい。

2. スタートアップ育成

第二に、彼らが力を入れているのは業界内におけるスタートアップの育成である。そのサポート体制として特筆すべき点はメンター制度でだ。メンターとは、名前の通り施設会員の指導的役割を担う立場を指し、審査は必要なものの誰でも web サイト上から応募することができる。

この制度の狙いは海外から様々な専門性を持った人材を本施設に招き入れることにあるが、今いるメンターもリトアニア国内に限らずドイツ、香港、オーストラリア等海外で活躍する人が含まれ、そのバックグラウンドも起業家、技術者、法律家等さまざまである。今後メンターが増えていけば施設会員へのサポート体制も充実し、集合知として BC Vilnius が業界内で果たす役割も大きくなるだろう。

壁には、ビットコインの論文が1ページずつ掲げられていた。
Image credit: Baroque Street

3. コミュニティ形成

最後に、彼らが力を入れているのはコミュニティ形成である。施設会員そして BC Vilnius の提携先を増やすことでネットワークを拡大し、欧州における仮想通貨・ブロックチェーンの中心地になることを目指している。現在の施設会員数は8社と少ないが、今ある席は既に満席。その内訳は国内外・業種とさまざまで、中には日本で知名度の高い NEM も含まれている。

施設拡大の予定はあるが時期は決まっておらず、現在は南米コロンビアでの新たな施設設立を検討している。リトアニアは Monetha や Bankera 等これまでも多くの ICO プロジェクトを輩出してきた。BC Vilnius を中心に政府や金融機関とも連携し、これらの一体感をどのように生み出すかが今後の業界発展のために重要となるだろう。

仮想通貨・ブロックチェーンを通じ、第二のエストニアへ

施設内には複数のチームが入居し、サービスの開発を進めている。
Image credit: Baroque Street

日本ではエストニアばかりに注目が集まっているが、リトアニアは密かに仮想通貨・ブロックチェーン業界を育んでいる。彼らは仮想通貨・ブロックチェーンを国としてのチャンスと捉えている。エストニアがかつて Skype や TransferWise といった世界的企業を輩出し名を上げたように、リトアニアもこの業界を通じて世界的企業を輩出したいと考えている。

リトアニアはエストニアと同様小国であるため政府と事業者との距離も近く、先月政府が ICO ガイドラインを発表したように国としての後押しも見られる。今回のガイドライン策定により事業者の従うべきルールが明確化されたため、リトアニアに移動する起業家・企業が増えるとの見方も強い。現に私がスイスで出会った起業家もリトアニアでの登記を準備しており、今後業界としてさらなる発展が期待される。

Monetha の CEO を務める Justas Pikelis 氏は、リトアニアの現状について次のように述べた。

リトアニアは ICO 調達額を見ても世界的に上位にある。その一因として、優秀な人材(なかでも技術者)を他国に比べて安価に雇うことができ、運営コストが低いという点が挙げられるだろう。エストニアのようなスタートアップのエコシステムは根付いていないが、この業界で世界に通用する企業を生み出したいと多くの人が思っている。

Blockchain Centre Vilnius 全景
Image credit: Blockchain Centre Vilnius
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〈仮想通貨プロジェクトの評価ポイント10選〉海外VCは何を見て投資判断しているのか?〜ダブリン「MoneyConf 2018」から【ゲスト寄稿】

本稿は、仮想通貨に特化したシンクタンク Baroque Street による寄稿です。 本稿を担当した福島健太氏は、日本の都市銀行を退職後、大手IT企業、国立大学研究員を経て Baroque Street を設立。各地を巡りながら、世界の仮想通貨事情を調査しています。 現在は、エストニアに拠点を置き、ヨーロッパ中心に活動中です。 6月11日〜13日の3日間、アイルランド・ダブリンで開催された「Mo…

本稿は、仮想通貨に特化したシンクタンク Baroque Street による寄稿です。

本稿を担当した福島健太氏は、日本の都市銀行を退職後、大手IT企業、国立大学研究員を経て Baroque Street を設立。各地を巡りながら、世界の仮想通貨事情を調査しています。

現在は、エストニアに拠点を置き、ヨーロッパ中心に活動中です。


開会を宣言するWeb Summit CEOの Paddy Cosgrave 氏
Image credit: Baroque Street

6月11日〜13日の3日間、アイルランド・ダブリンで開催された「MoneyConf 2018」に参加してきた。本カンファレンスは世界最大規模のテック系イベント Web Summit の関連イベントであり、60カ国を超える地域から5,000人以上が参加、フィンテックや仮想通貨を中心とした領域でさまざまな議論が繰り広げられた。

メインステージ以外にも、CryptoConf や eXchange などのテーマ別ステージや、Q&Aブース、展示ブースなどがあり、一人では到底回りきれない規模だった。夜にはネットワーキングのための Night Summit が連日行われ、参加者同士が交流を深めた。

カンファレンスは起業家と投資家の貴重な面談機会

Night Summit で交流を深める参加者の様子
Image credit: Baroque Street

先日の寄稿でも触れたように、仮想通貨業界の参加者のカンファレンス参加の主な目的はプロモーションとネットワーキングである。プロジェクト側は多くの関係者に自身のプロジェクトを知ってもらうために、ブースを出展したり、ピッチに参加したりして、必死にアピールを行っている。

弊社の元にも多くのコンタクト依頼が寄せられ、会場を歩いているだけで直接声をかけてくる関係者もいた。また、VC や個人投資家も多数参加しており、プロジェクトのメンバーに直接ヒアリングしている様子が伺えた。では一体、彼らは仮想通貨プロジェクトの何を見て投資判断を行なっているのだろうか。

仮想通貨プロジェクトの評価ポイント10

Q&A セッションで参加者の質問に答える Edith Yeung 氏
Image credit: Baroque Street

そのヒントはシリコンバレーのベンチャーキャピタル、500 startups のパートナー Edith Yeung 氏のプレゼンテーションの中にあった。500 Startups は今年に入り、大手取引所である Huobi(火幣)が仮想通貨・ブロックチェーン関連事業へのインキュベーションを目的として設立した Huobi Labs とパートナーシップを結んでおり、本領域への投資を加速させている。

本稿では、彼女がプレゼンテーションの中で語った、仮想通貨プロジェクトを評価する際の10のポイントを紹介する。

  1. プロジェクトの目的とトークン活用の意義

2017年、数多くの ICO が行われたが、その中には目的が曖昧でトークンの使い道がなくなってしまっているものも多い。そういった状態に陥らないためには、そのプロジェクトの存在意義を事前に徹底的に詰めておく必要がある。

  1. 競合の有無

仮想通貨という概念の性質上、プロジェクトの目指す最終ゴールは基本的には世界レベルのものとなる。同じアイデアを思いつき進めているプロジェクトが他にないか、常にチェックしておかなくてはならない。

  1. メンバーのバックグラウンド

チームメンバーの実力はそのプロジェクトのポテンシャルを判断する際に重要な指標となる。500 Startups では、LinkedIn や Facebook はもちろん、他の SNS や動画サイトなども含めて、徹底的にそのメンバーをチェックしている。

  1. ブロックチェーンの活用方法

真にそのプロジェクトがブロックチェーンを必要としているのかどうか。また、そこで用いるブロックチェーンは最適か。ビジネスモデルだけでなく、こういったプロトコルレベルの評価も行なっている。

  1. コミュニティのサポート

そのトークンの価値が将来上がっていくためには、それを使うユーザー数が増えていくことが大前提である。そのためには、アクティブかつ強力なコミュニティが必要である。

  1. トークンの配分状況

調達した資金が適切に使われなければ意味がないので、「トークンの配分が過度にプロジェクトメンバーに偏っていないか」「開発やPRに回す予算は妥当か」などについてもチェックしている。

  1. プロジェクトのロードマップ

プロジェクト側が公表しているタイムラインについて、特にプロダクトの進捗状況は徹底的に調査している。

  1. 資金計画

目標調達額や調達を行う地域の確認。また、ICO 以外にエクイティで調達しているプロジェクトも多いため、株主の有無などに関してもチェックしている。

  1. 投資家やアドバイザーの顔ぶれ

自分たちの他に、どういった投資家やアドバイザーが入っているか。あまりに著名なアドバイザーが多いプロジェクトはスキャムの疑いがある。

  1. リーガル面の対応

KYC(本人確認)や AML(アンチ―マネーロンダリング)はもちろんのこと、各国ごとの規制にしっかりと対応できる体制ができているかどうか。ルールが非常に流動的な業界なので、規制リスクは非常に大きい。

メンバーと直接話すことでそのプロジェクトの本質が見えてくる

こうして条件並べてみると非常に単純で当たり前のようにも思えるが、同様の調査業務を行なっている身からすると、これらがいかに困難で骨の折れる作業であるかが分かる。

プレゼンテーションの中で具体的な言及はなかったが、社内に強力な調査チームが存在し、日々綿密なデューデリジェンスを行なっているのであろう。Web 上で収集できる情報には限界がある上、一方的に良い部分だけを誇張するスキャムまがいのプロジェクトも多いため、実際に会って話すことの重要性は大きい。

ある程度、業界に精通してくれば、いくつか質問をするだけで、そのプロジェクトの質やレベル感を判断することができるようになるだろう。そういった意味でも、このようなカンファレンスの存在意義は大きく、しばらくはどの会場も大いに盛り上がりを見せそうである。

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ロンドン開催「Blockchain International Show」参加を通じて見えた、仮想通貨・ブロックチェーン業界4つの世界トレンド【ゲスト寄稿】

本稿は、仮想通貨に特化したシンクタンク Baroque Street による寄稿です。 本稿を担当した Masamichi Matsushima 氏は、日本の都市銀行を退職後、Baroque Street に入社。アナリストとして世界の仮想通貨事情を調査しています。 現在は、エストニアに拠点を置き、ヨーロッパ中心に活動中です。 6月6日〜7日の2日間にわたり、ロンドンで開催された「Blockcha…

本稿は、仮想通貨に特化したシンクタンク Baroque Street による寄稿です。

本稿を担当した Masamichi Matsushima 氏は、日本の都市銀行を退職後、Baroque Street に入社。アナリストとして世界の仮想通貨事情を調査しています。

現在は、エストニアに拠点を置き、ヨーロッパ中心に活動中です。


Image credit: BIS London Show

6月6日〜7日の2日間にわたり、ロンドンで開催された「Blockchain International Show(BIS)」に参加してきた。本カンファレンスは国際イベント運営会社 Smile-Expo が主催し、ヨーロッパを中心に世界各国で開催されている。今回は30名の登壇者がそれぞれテーマを持ち寄り、仮想通貨やブロックチェーンを取り巻く現状、未来について議論がされた。メイン会場の外には、ヨーロッパを中心に活動する28のプロジェクトによる展示ブースが会場を賑わせていた。

このカンファレンスへの参加を通じて感じた、世界における「4つのトレンド」について、講演内容を一部抜粋しながら紹介したい。

カンファレンスの流行

インターネット上で「Cryptocurrency Blockchain Conference」などと検索すると、仮想通貨やブロックチェーン分野において数多くのカンファレンスが世界各国で開かれていることがわかる。直近で言えば、アメリカで開催された「Consensus 2018」が記憶に新しい。なぜこれほどまでにカンファレンスが開かれているのか。また、チケットが1枚10万円を超えるものも多い中、なぜ多くの来場者が会場に足を運ぶのか。

確かに、IoT や AI などフィンテック領域では今尚多くのカンファレンスが世界各地で開かれており、仮想通貨やブロックチェーンもまたその類に当たるのかもしれない。しかし、この分野において、カンファレンスが流行している理由は別にあるように思う。「プロモーションの連鎖」とでも言えば良いだろうか、主催者、登壇者、来場者の利害関係が完全に一致しているのである。

  • 主催者……登壇者、来場者を増やし利益を得たい。
  • 登壇者……自身のプロジェクトを PR して(間接的に)利益を得たい。
  • 来場者……報告記事あるいは報告会によって(間接的に)利益を得たい、または新たな投資先を見つけ(将来的に)利益を得たい。

どの業界のカンファレンスについてもこのような利害関係は言えることであるが、仮想通貨やブロックチェーンでは相性が良すぎる。他のフィンテック領域とは異なり、投資的側面を含むこともその要因だろう。そのため、今ある仮想通貨やブロックチェーン分野のカンファレンスは、講演内容が議論というより PR 寄りであるものも多い。

証券型トークンの流行

Image credit: Baroque Street

今回 BIS の講演内容で多く取り上げられたテーマの一つに証券型トークン(Security Token)が挙げられる。何かしらの資産の裏付けがあり、保有高に応じて配当等が割り当てられる通常の証券をイメージしていただければ分かりやすい。世界的なトレンドとして「今ある証券市場に似た証券型トークン市場が近い将来できるだろう」と主張する人は多い。

今回のカンファレンスでも、Arnab Naskar 氏(ICO コンサル会社 SICOS の CEO)や Eddy Travia 氏(投資会社 Coinsilium の CEO)といった複数の登壇者から証券型 トークンに関する議論がなされた。日本においても、AnyPay の木村新司氏をはじめ、業界界隈で同様の主張をする人はいる。これらの主張の正否はさておき、興味深いのは事業投資の目線を持った人たちが同じ未来を見ているということである。

仮想通貨の証券性については今年に入って米国証券取引委員会(SEC)を中心に多くの議論がされてきた。規制を回避しようとトークンを Utility Token(証券性の無いサービス内通貨)設計にするプロジェクトも増える中、証券型トークン市場の形成には課題も多いが、アメリカの動向次第によっては一気に証券市場としての仮想通貨市場の形成が進むかもしれない。

プライベートセールの流行

イニシャル・コイン・オファリング(ICO:トークン発行による資金調達)には、プライベートセールとクラウドセールがある。一般に言う、私募と公募と位置付けに大きな違いはない。今ある ICO プロジェクトのほとんどはクラウドセール(あるいはプライベートセールと両方)によって資金調達を行なっている。

しかし、「将来的にはプライベートセールが主流になるだろう」との主張もまた世界的な議論のトレンドと言える。登壇した Juergen Hoebarth 氏 (クリエイティブコンサル会社 Hexagon Concepts の CEO)や James Roy Poulter 氏(投資コンサル会社 Blockchain Reserve の CEO)の話は、ベンチャーキャピタル(VC)の ICO 参加が次第に増えていると語った。

今やスタートアップ企業の資金調達手段として一般的な VC であるが、ICO が登場してまもなくは、そのほとんどが不透明感から ICO を敬遠していた。しかし、今では多くの VC が投資先として有望な ICO プロジェクトを探している。実際に筆者が面談した ICO プロジェクトの中には、VC へのプライベートセールによって資金調達したという関係者も多い。ICO 投資企業といった新たなプレイヤーの登場もまた、VC の ICO 参加を促していると思われるが、今後規制や管理コストの観点からもプライベートセールによる調達割合が増える可能性は十分に考えられる。

金融領域外でのブロックチェーン技術の流行

オランダ政府ブロックチェーンチームの責任者 Marloes Pomp 氏
Image credit: Baroque Street

昨年以降 ICO の数が激増したことを受けて、特に金融分野においては国際資金決済、店舗決済、レンディング等似通った事業内容のプロジェクトが乱立している。限られたコミュニティ内での運用を目指すならばまだしも、その多くは世界規模での運用を構想に掲げており、取引所についても言えることだが、今後競争による自然淘汰が進んで行くだろう。

今年に入って金融領域外でのブロックチェーン技術の応用を目指す ICO が増えている。今回のカンファレンスにおいても人材マッチングへの応用を目指す HiDone や芸術作品の保有権利への応用を目指す ArtNoy、ゲーム領域への応用を目指す Game Protocol 等多くの特徴的なICOプロジェクトが多く見られた。

また、オランダ政府ブロックチェーンチームの責任者 Marloes Pomp 氏の講演では、廃棄物運搬処理や妊婦の健康管理、寄付金といった様々な分野へのブロックチェーン技術の応用を政府とICOプロジェクトが一体となって検討しているとの話もあり、今後世界各国でブロックチェーン技術をどの業界・分野で応用できるかといった実用化を目指した議論が進んでいくと思われる。Pomp 氏が最後に語っていたが、真に実用化できるかどうかは次の段階の議論であり、まずは国・政府としてどういった技術的な応用が可能かを学ぶ段階にある。日本はこの業界における官民連携がヨーロッパ各国に比べ足りないように思う。

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Crypto Valley Labsに聞いた、スイスの仮想通貨・ブロックチェーン業界の発展【ゲスト寄稿】

本稿は、仮想通貨に特化したシンクタンク Baroque Street による寄稿です。 本稿を担当した Masamichi Matsushima 氏は、日本の都市銀行を退職後、Baroque Street に入社。アナリストとして世界の仮想通貨事情を調査しています。 現在は、エストニアに拠点を置き、ヨーロッパ中心に活動中です。 5月22日、スイスのツーク州にある仮想通貨・ブロックチェーンに特化した…

本稿は、仮想通貨に特化したシンクタンク Baroque Street による寄稿です。

本稿を担当した Masamichi Matsushima 氏は、日本の都市銀行を退職後、Baroque Street に入社。アナリストとして世界の仮想通貨事情を調査しています。

現在は、エストニアに拠点を置き、ヨーロッパ中心に活動中です。


Crypto Valley Labs の外観
Image credit: Baroque Street

5月22日、スイスのツーク州にある仮想通貨・ブロックチェーンに特化したコワーキングスペース「Crypto Valley Labs」を訪れた。本来の目的はそこで開かれるミートアップへの参加であったが定刻まで時間があったため、従業員にコワーキングスペースが実際にどのように機能しているのかについて話を伺った。

スイスは仮想通貨・ブロックチェーン事業に積極的な国として世界的に注目を集めている。近年話題を集めるイニシャル・コイン・オファリング(ICO:トークン発行による資金調達)を行なった多くのプロジェクトを輩出している他、IBMや PwC といったグローバル企業もスイスでこの分野に絡んだ事業を展開している。仮想通貨・ブロックチェーン事業者の多くがスイスに拠点を置き、今なお現在進行形で海外から多くの起業家、投資家がスイスに訪れているのである。

なぜこれ程までに注目を集めるのだろうか。一つには政府や金融機関の協力体制が挙げられるが、今回の訪問によりコワーキングスペースが業界の発展に寄与する部分が大きいことがわかった。一般に言う「コワーキングスペース」とはその名の通り「一緒に働く場所」、すなわち自社だけでなく複数のヒト・企業が同じ場所で働く場所を表す。私が考えるに誰かと一緒に働く上で重要となるのは「ヒト」「相互扶助」「目的共有」である。スイスの Crypto Valley Labs はこれらの要素全てにおいて世界水準を満たしていた。

「ヒト」について

前述したようにこの施設には欧州をはじめ世界各国から多くの人が入居者として訪れている。既に別事業で成功を収めていて新しく暗号通貨・ブロックチェーン分野で事業を行おうとする者、元々この分野で事業を行なっていたが自国の規制が厳しくなり拠点を移してきた者、大企業の派遣チームとして拠点を置く者等、バックグラウンドは様々であるが世界レベルの経験豊富なビジネスマンがここに集結しているのである。スイスにおける物価の高さがある種フィルターとなって、現地人を除く経験の浅い海外起業家を排除している部分は大きいと思われる。

ミートアップは室内のスペースが埋まるほどの大盛況だった
Image credit: Baroque Street

「相互扶助」について

この施設は法律、会計、税務、マーケティング等経営で鍵となる各分野の専門パートナーを有しており、入居者はこれらからサポートサービスを受けることができる。事業計画についても国内の著名な起業家によるアドバイスを受けることができ、入居者への全面的なサポート体制が整えられている。また、この施設は国内で同様に仮想通貨・ブロックチェーン分野に特化したコワーキングスペース「Trust Square」、フィンテック分野に特化したインキュベーター&アクセラレーターの「F10」と提携を結んだことで、相互間の施設利用が可能となっており国内同業者間においても業界発展のための協力体制が整えられている。

パートナー企業一覧
Image credit: Baroque Street

Crypto Valley Labs のコミュニティマネージャーを務める Tatiana Schmid 氏は、Trust Square と F10 との提携について次のように述べた。

Trust Square や F10 との提携の主な目的は、エコシステム内のつながりを促進しステークホルダーを増やすことにある。Crypto Valley Labs の利用者がこれら提携先においても作業できるようにすることによって、より意味ある関係性を築くことができる。

「目的共有」について

この施設はこれまで記述してきた通り、世界的にもまだ数の少ない仮想通貨・ブロックチェーンに特化したコワーキングスペースである。入居者のほとんどはトークンビジネスあるいはブロックチェーン開発を行う。つまり、事業内容は多少違っても「分散型プラットフォームの構築」という点で入居者間の目的共有がなされているのである。目的が同じであれば悩みも同じであることが多く、この施設で開催されるミートアップ等で会話をした際には問題意識の共有も行うことができるだろう。それが協業という形に結びつくことも十分に考えられる。

室内には Bitcoin ATM が設置されていた
Image credit: Baroque Street

Schmid 氏はこの施設の魅力について次のように述べた。

Crypto Valley Labs は仮想通貨、ブロックチェーンに特化したコワーキングスペースとして人気を集めている。この施設を利用すれば、世界から集まった多くの企業と交流、情報交換できることは大きな利点だろう。また、利用者へのサポート体制も充実している。我々は法律、会計、税務、マーケティングといった各分野の専門企業と提携を結んでいる。

このように、スイスではコワーキングスペースが仮想通貨・ブロックチェーン業界の世界的なハブとしての役割を担っている。これが業界のエコシステムとして上手く機能しているのは政府や金融機関によるサポートがあってこそだが、多くの国が仮想通貨や ICO への規制を強める中、国として仮想通貨・ブロックチェーンの産業化を目指す雰囲気が感じ取れた。アメリカに並び、今後スイスはますますこの業界においてプレゼンスを高めていくだろう。GMO が先日マイニング子会社をスイスのツーク州に設立するとの発表があったが、それだけこのコミュニティに価値を感じているということであろう。今後もスイスの動向に注目していきたい。

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