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ドイツから日本市場を臨む新進気鋭スタートアップ8社を紹介〜German AcceleratorとJETROのピッチイベントから

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German Accelerator はその名の通り、ドイツのスタートアップアクセラレータ。2012年に設立され、ドイツの連邦経済エネルギー省を支援を受け運営され、これまでに250社以上のスタートアップを輩出している。ドイツのスタートアップをアジアに進出支援したり紹介したりするプログラム「Next Step」を運営、インド、韓国、シンガポールなどでピッチイベントを開催している。 日本では JETR…

CC BY-SA 3.0 by Pedelecs via Wikimedia

German Accelerator はその名の通り、ドイツのスタートアップアクセラレータ。2012年に設立され、ドイツの連邦経済エネルギー省を支援を受け運営され、これまでに250社以上のスタートアップを輩出している。ドイツのスタートアップをアジアに進出支援したり紹介したりするプログラム「Next Step」を運営、インド、韓国、シンガポールなどでピッチイベントを開催している。

日本では JETRO(日本貿易振興機構)の協力により、通算で2回目となるピッチイベント「German Startups Meet Japan」が7月30日に開催された。ドイツから日本市場にターゲットを定める素晴らしいスタートアップ8社が披露された。彼らのピッチを元に、ビジネスプランや日本市場への進出計画をまとめてみた。

aspUraclip

aspUraclip は、気分をよくするための香りの吸引器を開発するスタートアップだ。仕事上、移動を頻繁にする必要がある人、労働時間が不規則で深夜や早朝の起床を余儀なくされる人はストレスを溜めやすい。そんな人々に自然植物由来のエッセンシャルオイルを吸い込んでもらうことで、毎日を快適に過ごしてもらうというのが商品のコンセプトだ。

香りは、鼻腔につけるタイプの小さなクリップから発出される。21日間の利用が可能で、使わない時は密閉できるアロマボックスに収納し携帯できる。ドイツ版「マネーの虎」とされるテレビ番組「Die Höhle der Löwen(ライオンの巣)」で100万ユーロを調達。ドイツやポーランドの薬局で販売され、年間1,300万ユーロを売り上げる。日本の OTC 医薬品市場への進出・協業を模索。

HRForecast

時代の変化と共に、従業員に求められるスキルも変化する。例えば、ドイツの世界的自動車部品メーカー Continental は、100年前には、メカエンジニアリングのスキルがあれば自動車部品を製造できたが、次第に電子エンジニアリングのスキルが求められるようになり、現在ではソフトウェアエンジニアリングのスキルが必要不可欠なものとなった。

HRForecast は、履歴書、訓練データなどから従業員のスキルデータを集め見える化。将来必要となるスキルと現在の状況とのギャップ、どの業務にどの社員をアサインすべきか、現社員にはどのようなスキルをトレーニングすべきか、今後どのようなスキル持った社員を雇用すべきかを分析する。幅広い分野の企業を顧客に抱え、年間140万ユーロを売り上げている。

iVE.ONE

国や地域によって法律や規制が異なり、これが越境での資産取引を難しくしている。Agora Innovation が開発する iVE.ONE は、特定地域の法的枠組みの中で、トークン化されたアセットのグローバル取引を可能にする投資プラットフォームだ。ブロックチェーン技術により、デベロッパはトークンにコンプライアンスのメカニズムを連携できる。

保険、投資、法律遵守という3つの主要なアセットをプラットフォーム上で接続、従来ビジネスのデジタル化支援を目指す。例えば、運送会社においては、売上に対する参加権をブロックチェーンを用いてデジタル資産化したり、国際間取引における手続を簡略化したりするなどだ。今年初め、プレシリーズ A ラウンドで数百万ユーロを資金調達。香港に法人を開設し、アジア進出を模索している。

LexaTexer

LexaTexer は、スマート工場やスマートオペレーション向けの予測分析 AI を開発。非構造化データ、構造化データ、代替データを機械学習で分析することで、企業の意思決定をサポートする予測分析の自動化サービスを提供する。スマート製造、金融、小売における AI ソリューションの構築、展開、統合の複雑さを軽減し、数日で AI ソリューションの構築・連携・運用開始を実現する。

スマート工場では機器の故障を予測し、メンテナンスの事前スケジューリングを容易にし、予期せぬ機器のダウンタイムを防ぐ。ドイツ、オーストリア、スイス、イギリスに進出しており、今後、シンガポールを起点に、日本を含むアジア各国へ進出を図りたい考え。Plug and Play、Startup Autobahn、High Tech XL、WeXelerate といったアクセラレータからマイナー出資を受けている。

RYTLE

RTYLE は、e コマースなどで需要が高まる都市内のラストメートルソリューションを提供する物流インフラサービス。電動3輪バイク「MoVR」、移動型のモバイルデポ(HUB)、運送ボックス(BOX)、ソフトウェアの4つのコンポーネントで構成されている。HUB には最大9つの BOX を収納でき、郊外の倉庫からそのまま運搬が可能。MoVR が HUB から BOX を受け取り、BOX 内の荷物を各戸に届ける。

MoVR、BOX、HUB の全てにはセンサーとテレマティクスが搭載されており、荷主と受取主には透明性の高いリアルタイムの配送状況が共有されるのも特徴。ドイツでは、ブレーメンにあるスマートシティ地区でテストされており、2021年まで貨物運送会社らと連携しブレーメン市内の配送を RTYLE の仕組みを使って運用されることとなっている。

TinkerBots

TinkerBots は、子供たちに遊びを通してエレクトロニクスを学んでもらうことを目的としたモジュール式のロボットキットを開発している。各TinkerBot ロボットを動かすには電源ブロックが必要で、これにはバッテリ、Bluetooth 4.0、Arduino 互の換マイクロコントローラー、加速度センサーなどが入っている。。

他の部分には、さまざまなタイプの動き(ねじれ、回転、ローリングなど)をサポートするさまざまな運動モジュール、ワイヤレスまたはパッシブコネクターブロックで構成される。ブロックはレゴのようにカチッと音がするだけで、配線やプログラミングは必要ないが、Arduino 互換のマイクロコントローラを採用しているため、C言語でのプログラミングも可能だ。

Wingcopter

Wingcopter は、独自の特許取得済チルトローター機構で、垂直離着陸できる VOL 型自律型ドローンを開発。商業用ドローン、ヘリコプター、一般的な飛行機に見られる固定翼機では実現できない、効率の良い飛行を可能にする。医薬品、ワクチン、血液、実験用サンプルなどを長距離輸送するプロジェクトで使用されており、先日開催された、発展途上国の新型コロナウイルス感染防止を主眼としたハッカソン「SmartDevelopmentHack」に入賞し、マラウイで試験キットやワクチンなど医療品の運搬に使われる予定。

2017年設立の Wingcopter は、もともとは離島への救命薬配送の高速化に焦点を当てたスタートアップだ。ドイツ・ダルムシュタットに本拠を置き、現在の社員数は70名ほど。Wingcopter のドローンは、京都に拠点を置く WorldLink & Company(サービスブランド SkyLink Japan)が昨年から輸入販売を開始。また、全日空とは、ドローンを使った荷物の回収・配送サービスを共同開発している。NTT データが今年開催した第10回目のグローバルオープンイノベーションコンテストでは SDGs 賞を受賞した

XVA-Blockchain

XVA (X-Value Adjustment)とは、店頭デリバティブ(取引所を通さない相対取引)の価値を評価する際に行わなければならない多くの「評価調整」の総称である。XVA-Blockchain は、銀行、資産運用会社、カストディアンに対し、効率的な店頭デリバティブ管理のためのデータ強化、規制当局への報告代行、リスク分析機能を提供。スマートデリバティブコントラクト(SDC)を使えば、店頭デリバティブにおける資本要件と価値調整パラメータを最適化などにより、店頭デリバティブの非効率性の多くを取り除ける。

SVA-Blokchain は、このサービスのコンセプトを2017年に発表し、2018年にドイツ・ラインラント=プファルツ州立投資銀行からシードラウンドで500万ユーロを調達。2021年前半の日本の銀行への API 提供、2021年後半の日本市場での事業開始を目指す。日本においては、日本証券クリアリング機構の Web サイトにある清算参加者情報一覧に掲載された金融機関などが潜在顧客になるという。

銀行機能をモジュール化、BaaS企業「solarisBank」が大型調達ーーグローバル・ブレインらも支援

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ピックアップ:Banking platform solarisBank raises $67.5 million at $360 million valuation ニュースサマリー:ドイツ・ベルリン発のBanking as a Service(BaaS)企業「solarisBank」がシリーズCで6,750万ドルを調達した。投資家はHV Holtzbrinck Venturesをリードに、Sto…

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Image Credit : solarisBank

ピックアップBanking platform solarisBank raises $67.5 million at $360 million valuation

ニュースサマリー:ドイツ・ベルリン発のBanking as a Service(BaaS)企業「solarisBank」がシリーズCで6,750万ドルを調達した。投資家はHV Holtzbrinck Venturesをリードに、Storm Ventures、Samsung Catalyst Fund、Yabeo Capital、Vulcan Capitalの5つが参加している。既存投資家にはグローバル・ブレインやSBI Groupなどの日本企業も名を連ねている。

solarisBankがエンタープライズ向けに提供するBaaSとは、銀行サービスをオンデマンドで機能別に提供するビジネスモデル。同社は主に欧州圏のフィンテック企業に対し、決済や送金、KYC、カード、レンディングなどの銀行機能をモジュール化し提供している。

当初、solarisBankは4,000万ドル程度の資金調達を予定していたそうだが、投資家サイドからの需要が予想を上回り、結果6,750万ドルという大型の資金を手にする形となった。本資金は、さらなる機能拡張に使われていくという。

Screenshot 2020-06-30 at 10.15.37 AM
Image Credit : solarisBank

話題のポイント:BaaSは現在のフィンテック業界では比較的大きなムーブメントとして認識されています。米国のVCであるa16zも、BaaSの充実によって「全ての企業はフィンテック企業になる」とアピールしています。

世の中には様々なタイプのBaaS企業が存在していますが、solarisBankはその代名詞と言っても過言ではありません。以下は同社が提供するモジュールリストですが、全ての銀行サービスを網羅していることが分かります。

Screenshot 2020-06-30 at 9.46.10 AM
Image Credit : solarisBank

さて、具体的にsolarisBankが提供している商品は何なのでしょうか。それは「ライセンス」と「APIモジュール」の2つです。

まず同社自体が銀行免許を保有しているため、solarisBankをインフラにするクライアント企業は銀行ライセンスを取得する必要がありません。加えて、上図にリストされている銀行機能(モジュール)に簡易的にアクセスできるAPIのおかげで、クライアント企業は開発コストを格段に下げることができます。

solarisBankは現在70以上のクライアント企業を抱えており、そのほとんどは欧州ないしドイツのフィンテック企業です。例えば、チャレンジャーバンクの「Tomorrow」や「Insha」、ビジネスバンキングを提供する「Penta」や「Kontist」、株式トレードアプリ「Trade Republic」、暗号資産アプリ「Bison」や「Bitwala」などが挙げられます。

欧州地域は日本同様に、現在でも未だ人々の外出をする要請及び規制が敷かれています。現在、筆者が在住しているドイツでも銀行支店やショッピングモールのオープン時間は制限されており、人々がオンラインの銀行アプリ及びEコマース(オンライン決済)にアクセスする機会は増加しています。

<参考記事>

以上の背景を踏まえると、solarisBankのクライアント企業のほとんどが急成長中であり、増益を記録していると考えることができます。したがって、それらのクライアント企業のサービスの機能拡張に伴う同社のAPIへの需要増加や、クライアント企業数の増加は容易に想像/期待できるでしょう。

solarisBankの収益は、モジュールへのアクセスや決済/送金から徴収される手数料から成り立っています。つまり、同社のビジネス自体も現在大きな成長を見せているはずで、投資家が目を光らせるのも当然です。

最近、同社はAmerican Expressと連携しSplitpayという分割払いサービスの提供を始めました。このモジュールを組み込むことで、ドイツのEコマースプラットフォームは、American Expressで買い物を行うユーザーに簡単に分割払いオプションを提供できるようになりました。

ドイツ国内及び欧州のいくつかの地域では、solarisBankの存在感は既に非常に大きいものです。ですが今後数年で、BaaS企業として実績を積んでいくことで、欧州全土及び世界全体へ拡大していくシナリオも考えられるのではないでしょうか。

ベルリン発の都市農業ソリューション「Infarm」、シリーズCラウンドで2億米ドルを調達へ

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<ピックアップ> Infarm looks to raise $200m for vertical farm expansion ベルリン発の都市農業(アーバンファーミング)ソリューションを開発するスタートアップ Infarm は、シリーズ C ラウンドで2億米ドルを調達しようとしている。関係者によれば、同社は既に1億4,000万米ドルの調達を完了している。バリュエーションは1年前のシリーズ B …

Image credit: Infarm

<ピックアップ> Infarm looks to raise $200m for vertical farm expansion

ベルリン発の都市農業(アーバンファーミング)ソリューションを開発するスタートアップ Infarm は、シリーズ C ラウンドで2億米ドルを調達しようとしている。関係者によれば、同社は既に1億4,000万米ドルの調達を完了している。バリュエーションは1年前のシリーズ B ラウンド(1億米ドルを調達)の際の2倍以上、数億米ドルに達するとみられる。

シリーズ C ラウンドにはこれまでに、Atomico、Balderton、TriplePoint、Cherry Ventures、LocalGlobe に加え、リヒテンシュタイン公国の皇太子 Alois von Liechtenstein 殿下のインパクト投資ビークル LGT Lightstone が参加しているとみられる。LGT Lightstone は、ミュンヘン発〝空飛ぶタクシー〟製造スタートアップ Lilium への出資でも知られる。

Infarm は今年2月、 JR 東日本(東証:9020)から調達額非開示の出資を受けたことを明らかにした。今夏には、JR 東日本傘下の高級スーパー「紀ノ国屋」で Infarm の仕組みを使った屋内(店内)栽培の農作物の販売を開始することを明らかにしている

新型コロナウイルス感染拡大が食品サプライチェーンを圧迫したことで、Infarm のような新業態には事業機会が増えた一方、同社の顧客の一部を占める飲食業の需要にも打撃を与えている。

この分野では、Bowery は Alphabet の GV などから1億4,000万米ドル以上を調達。また、SoftBank の支援を受け、Jeff Bezos 氏(Amazon 創業者)や Eric Schmidt 氏(Google 元会長)らも出資するアメリカのユニコーン Plenty は4億米ドルを調達している。3月下旬には、Bloomberg が Plenty が1億米ドル以上の新規調達を目指していると報じた

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via Financial Times

AI乳がん検査「Vara」が逼迫する医療現場を救う

ピックアップ:Vara raises $7 million for AI tool that spots early signs of breast cancer ニュースサマリー:乳がんのスクリーニングを行うAIシステムを開発する「Vara」は6月2日、OMERS Venturesが主導するシリーズAラウンドで700万米ドルを調達した。この資金は欧州でのさらなる事業拡大と、同社のデータストアの新…

画像出典:Vara

ピックアップ:Vara raises $7 million for AI tool that spots early signs of breast cancer

ニュースサマリー:乳がんのスクリーニングを行うAIシステムを開発する「Vara」は6月2日、OMERS Venturesが主導するシリーズAラウンドで700万米ドルを調達した。この資金は欧州でのさらなる事業拡大と、同社のデータストアの新たな開発に充てられ、臨床的な成果の向上を目指す。本ラウンドには、ドイツのデジタルヘルスのパイオニアであるMerantix、Think.Health、Soleria Capital、シリコンバレーを拠点とするPlug and Playが参加している。

詳細:同社は2018年、AIのベンチャースタジオであるMerantix社の支援を受け、CEOのJonas Muff氏とCTOのStefan Bunk氏が共同でベルリンにて創業。同社プレスリリースによると、これまでに1,057万米ドルを調達している。

  • Varaは撮影したマンモグラフィの画像をフィルタリングすることで、放射線科医が緊急で複雑な症例に集中できるようにする。撮影する画像は膨大な数に上るため、マンモグラフィの解析には時間がかかるが、97%は異常がないものであるという。
  • Varaは、こうした乳がん検査のプロセスにおける医師の作業負荷を大幅に軽減し、検査数を増やしてより多くの乳がん早期発見を目指していく。
画像出典:Vara
  • 同社プレスリリースによると、Varaには250万枚の画像からなる世界最大級の乳がんデータの機械学習が搭載されているという。また、Varaの技術はEUの医療機器の基準を満たすことを示す「CEマーク」を取得しており、ヨーロッパに拠点を置く15のスクリーニングセンターで年間25,000~50,000件のマンモグラフィを実施しているという。
  • Jonas氏はVentureBeatの取材に対し「現在Varaはヨーロッパで利用可能であり、ロックダウン中に検診がキャンセルされた女性にも、タイムリーな検診を提供できる」と語っている。
  • 日本では、痛みの少ない乳がん検査装置を開発する「Lily MedTech」が、5月12日にシリーズCラウンドの増資を公表している。

背景:WHOによると、乳がんは女性のがんの中で最も一般的で、毎年210万人の女性が診断されている。2018年は62万7,000人の女性が乳がんで死亡したと推定され、全てのがんの死亡者のうち15%を占める。

執筆:理沙子(Risako Taira)/編集:平野武士・岩切絹代

ミュンヘン発〝空飛ぶタクシー〟製造のLilium、シリーズCラウンドを約2億7,500万米ドル調達でクローズしユニコーン入り

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2025年までに空飛ぶタクシーを空に出現させることを目指すドイツの航空系スタートアップ Lilium は、シリーズ C ラウンドの調達額を3月の当初発表に3,500万米ドル追加し、最終的に約2億7,500万米ドルの調達でクローズした。本件に詳しい人物によると、今回の追加出資により、同社の評価額は10億米ドル以上となり、話題の「ユニコーンの領域」にまで達したという。 今回の資金注入は、これまでに T…

Lilium のジェット機と共に、創業メンバーの Daniel Wiegand 氏、Matthias Meiner 氏、Sebastian Born 氏、Patrick Nathen 氏。
Image Credit: Lilium

2025年までに空飛ぶタクシーを空に出現させることを目指すドイツの航空系スタートアップ Lilium は、シリーズ C ラウンドの調達額を3月の当初発表に3,500万米ドル追加し、最終的に約2億7,500万米ドルの調達でクローズした。本件に詳しい人物によると、今回の追加出資により、同社の評価額は10億米ドル以上となり、話題の「ユニコーンの領域」にまで達したという。

今回の資金注入は、これまでに Tesla、SpaceX、Amazon、Airbnb などを支援してきたスコットランドの投資会社 Baillie Gifford(ベイリーギフォード)が全面的に行ったもの。輸送業界にとっては激動のタイミングで実施された。新型コロナウイルス蔓延による危機は配車サービスに打撃を与え、Uber は事業を適応させ、その広大な輸送ネットワークを他の用途に転用しなければならなくなった。一方で、都市では自動車用道路を減らして歩行者やよりクリーンな個人移動手段のためのスペースを確保されようになり、これがスクーターや自転車移動手段への投資を急増させている。Lilium のような企業にとって、こういった変化は同社の計画と一致する可能性があるが、Lilium の競合は電車やバスのような都市間輸送である可能性が高い。

Lilium のスポークスパーソンは、VentureBeat の取材に対し次のように語った。

どちらかと言えば、より持続可能な交通手段への移行は、我々の移動方法を変えたいという一般人の欲求を浮き彫りにしている。

とはいえ、我々が重視しているのは、一つの都市内での移動ではなく、むしろ都市、町、村を互いにつなぐことだ。300kmの範囲で地域全体をつなぐことができるので、高価なインフラを必要とせず、高速な接続手段が無い場所にもそれをもたらすことができる。

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2015年にミュンヘンから設立された Lilium は、ドライバー1人と乗客4人が乗れるスペースを持ち、垂直に離着陸するコンパクトな全電動ジェット機を製造している。これにより、高価でスペースを必要とする滑走路の必要性を回避し、着陸パッドは屋上や岸壁など、あらゆる都市環境に設置することができる。顧客は、Uber 風のモバイルアプリで呼び出すことができる。

Liliium の着陸パッド(モックアップ)
Image credit: Lilium

さらに、Lilium が地域移動に特化していることを考えると、国境を越えた移動がスムーズには行かない世界で有利だと言える。これは、航空業界の多くの企業が崩壊の危機に瀕している今、特に注目すべきことだ

Lilium は新型コロンウイルス感染拡大の間、会社の大部分の人々がリモートで仕事をしており、主な長期的タイムスケールの大部分は変更されていないという。

我々の開発では最終的なシリアル機の開発に焦点を当てているため、仕事の多くが自宅でできる段階にあることを幸運に思っている。新型コロナウイルスは年内のタイムスケールに多少の影響を与えるだろうが、2025年の商業運航開始に向けて軌道に乗っている。また、現在の航空宇宙市場が直面している課題を考えると、多額の資金を調達できたことは幸運であると認識している。(スポークスパーソン)

同様の未来に向けて取り組んでいる企業には、他にドイツのスタートアップ Volocopter がある。同社は最近、4,000万米ドルの新規調達をクローズした。累積調達総額は1億3,200万米ドルに達し、IPO を目指すと宣言した。

Lilium は追加で得た3,500万米ドルを含め、創業以来で累積合計3億7,500万米ドル以上を調達している。同社は Lilium Jet の開発を継続し、昨年発表したドイツの新しい製造拠点での「連続生産」の準備をするための十分な資金を得ている。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

Banking-from-homeが追い風、チャレンジャーバンクN26が倍増の500万ユーザー獲得

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ピックアップ:N26 raises more than $100 million in extension of its Series D funding ニュースサマリー:ベルリンを拠点とするチャレンジャーバンク「N26」は5日、シリーズDのエクステンションラウンドにて1億ドルの資金調達を実施したと発表した。昨年から続く同ラウンドで同社は5億7000万ドルの調達を目指しており、評価額は変わらず3…

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ピックアップ:N26 raises more than $100 million in extension of its Series D funding

ニュースサマリー:ベルリンを拠点とするチャレンジャーバンク「N26」は5日、シリーズDのエクステンションラウンドにて1億ドルの資金調達を実施したと発表した。昨年から続く同ラウンドで同社は5億7000万ドルの調達を目指しており、評価額は変わらず35億ドルとなる。

話題のポイント:たった8分で新規口座開設を売りにした「N26」は、欧州を中心にモバイルファーストなFintechスタートアップとして躍進を遂げていました。今回のリリース時点で、ユーザー数は500万人を突破したとしています。これは、なんと昨年4月時点のユーザー数250万人から2倍の成長を記録していることになります。

Blog Timeline infographic (ALL)

また、米国におけるユーザー数も着々と増加しており、今年2月の時点で約25万人のユーザーを獲得したそうです。ユーザー数の面においては順調な成長を遂げているN26ですが、同社の最終的な目標となる世界を股にかけたデジタルバンクという面では、UKのBrexitにより撤退を余儀なくされるなど、真のチャレンジャーバンクを目指すからこその課題が浮き彫りとなりつつある状況でした。

そうしたマイナス面や、COVID-19ショックと調達タイミングが重なったこともありキャッシュフローに不安要素があるのではといった指摘もあったようです。しかし、同社ブログで「Banking-from-home」と表現されているように、コロナによりより一層デジタルバンクの需要と存在意義が向上したことは間違いないでしょう。

Capture

CNBCによれば、COVID-19以降においてN26の主要都市のATM利用率は半減しているが、65歳以上のユーザーによるN26を通したEコマース利用が劇的に増加していると報じています。また、以前筆者のドイツ滞在記でお伝えしたように、N26の本社があるドイツ・ベルリンはチップ文化が伝統的に根付いているため、日本のキャッシュレス決済率(18.4%)より低い数字(14/9%)を記録していました。

しかし、COVID-19感染防止の観点からキャッシュによる支払いが「好ましくない」といった世界的トレンドに移行しつつあります。これは、今までその国の文化からキャッシュレスへと抜け出せなくなっていたものを、半強制的にキャッシュレスへと導く可能性が高いことを示唆しています。

N26の目指す世界的なデジタルバンクの世界観はいずれくるだろうと言われていましたが、COVID-19が生じたことによりその世界観が訪れるまでのスピードは格段に早まったように感じます。

第1四半期のモバイルアプリ利用は激増、特にビジネスが顕著に【Adjust調べ】

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パンデミックは現実に経済的大混乱をもたらしている。しかし、モバイルアプリエコノミーは別だ。第1四半期、モバイルアプリのセッション数とインストール数は前年比で劇的に増加した。 ベルリンのモバイル測定企業Adjustのレポートによると、COVID-19に直面してもアプリエコノミーにはしなやかさがあることが数値で示されている。2020年に多くの分野のアプリがセッション数とインストール数の増加をみているの…

パンデミックの中、モバイルアプリの夜間使用が急増
Image Credit: Adjust

パンデミックは現実に経済的大混乱をもたらしている。しかし、モバイルアプリエコノミーは別だ。第1四半期、モバイルアプリのセッション数とインストール数は前年比で劇的に増加した。

ベルリンのモバイル測定企業Adjustレポートによると、COVID-19に直面してもアプリエコノミーにはしなやかさがあることが数値で示されている。2020年に多くの分野のアプリがセッション数とインストール数の増加をみているのだ。この傾向は特にビジネス、飲食、ゲームアプリの分野で顕著だ。

パンデミックによって多くの従業員がリモートワークを余儀なくされているので、ビジネスアプリでセッション数が大幅に増加し(2019年第1四半期から105%増加)、インストール数が70%増加したことは当然だ。ユーザが在宅への移行を容易にするためにプレミアムバージョンを選択することにより、収益イベントも75%増加している。

アプリエコノミーはCOVID-19の中でも強靭だ
Image Credit: Adjust

多くのレストランがテイクアウトのみに切り替えざるを得なくなったため、飲食関係のアプリもセッション数が昨年の同時期に比べて73%と大幅に増加し、インストール数も21%増加した。

また、他の記事でも報告したように、ゲームのインストール数も大幅に増加。外出自粛中のエンターテインメントが求められている。 3月の最終週には、ゲーム業界ではインストール数が前年比で132%増加した。第1四半期全体でみると2020年のゲームアプリのセッション数は2019年の同期と比較して47%増加し、インストール数は75%増加した。

Adjustの共同設立者兼CTOであるPaulMüller氏は声明で、インストール後のユーザの行動変容についてはインストール数とセッション数の増加以上に目立ったものは見られなかったと報告している。同氏はまた、ユーザは平均して1日2回強のセッションをもつといったように同じ行動をとりつづけ、カスタマージャーニーで予測されるポイントをぐるぐる回っていると述べている。

このレポートは、有料インストールとオーガニックインストールの違いにも光を当てている。市場の競争が激化するにつれて、ゲームアプリが急速に有料化していることに注目している。総インストール数に占める有料インストール数の割合は、2018年は24%だったのに対し、2019年は30%と増加した。

加えて同レポートでは、ユーザが1日の中でどの時間帯にどの分野のアプリを利用するかを調査し、そのピーク時間と活性化キャンペーンに適した時間についてインサイトを提供している。

eコマースアプリのピークの一つはランチタイムであり、正午から午後2時までで、もう一つは夜間であり、午後7時から午後10時にセッションが多く、この両者で1日の総セッション数の4分の1を占めている。飲食店のアプリは午後5時から午後8時の間に利用が急増し、1日の総セッションの31%を占めている。

一方、多くのゲームアプリでは、1日を通して使用量に大きな変化は見られない。カジュアルゲームのアクティビティは午後12時から午後4時の間にほんの15%ほど増加する程度だ。対してミッドコアゲームは早朝(午前5時)から増加し午後1時にピークを迎える。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

空飛ぶタクシー「Volocopter」に三井住友海上らが出資、将来のIPOを宣言

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空飛ぶタクシーの商用化に向けて電動垂直離着陸機(eVTOL)の開発を進めているドイツのVolocopterは、シリーズCの追加ラウンドで3,700万ユーロ(4,000万ドル)を新たに調達した。昨年9月に5,000万ユーロ(5,400万ドル)を獲得していたため、調達金額は合わせて8,700万ユーロ(9,400万ドル)となった。設立してからの調達総額は1億2,200万ユーロ(1億3,200万ドル)であ…

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Image Credit: Volocopter GmbH

空飛ぶタクシーの商用化に向けて電動垂直離着陸機(eVTOL)の開発を進めているドイツのVolocopterは、シリーズCの追加ラウンドで3,700万ユーロ(4,000万ドル)を新たに調達した。昨年9月に5,000万ユーロ(5,400万ドル)を獲得していたため、調達金額は合わせて8,700万ユーロ(9,400万ドル)となった。設立してからの調達総額は1億2,200万ユーロ(1億3,200万ドル)である。

追加ラウンドには、ドイツの物流大手DB Schenkerのほか三井住友海上火災保険、TransLink Capital、Lukasz Gadowski氏、Btovも参加した。

2011年に設立されたVolocopterは、都市部において新型電動商用輸送機の飛行でマネタイズしたいと考えている都市型航空スタートアップの1社だ。機体はヘリコプターのように垂直離着陸できるため、滑走路や広大なスペースを使うインフラを必要としない。その代わり、シンガポールですでに第1号を公にしている都市部向け小型着陸パッド「Voloports」の利用を想定している。

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Above: Volocopter “Voloport” in Singapore

主な同業他社には、2025年までに空飛ぶタクシーの商用飛行実現を目指して1億ドル超を調達したドイツのスタートアップLiliumなどがある。そのほかBoeingも「空飛ぶクルマ」のプロトタイプをローンチしたほか、Airbusは空飛ぶタクシーサービスの実験を行っている

新たに4,000万ドルを手にしたVolocopterは声明の中で、Volocity機の早期認可取得、VoloDroneとして知られる第2世代型貨物輸送ドローンのローンチ、「業界専門家」の採用増に向けた準備が整いつつあるとコメントした。DB Schenkerが新たな投資家に加わった意味は大きく、Volocopter技術の実用化に際して、主要な業界プレイヤーとの戦略的な提携が重要な役割を果たすことになるだろう。

Volocopterの技術を導入することで、顧客にとっての物流サービスが異次元に向かう可能性があると信じています。

DB SchenkerのCEOでVolocopterの顧問にも就任したJochen Thewes氏は次のように述べている。

DB Schenkerはこれまで、複数の革新的なプロジェクトや実際の業務で自動電気自動車の走行実験を行ってきました。当社が展開する未来のサプライチェーンとVoloDroneを統合することで、迅速な配送、遠隔地への配送、環境に配慮した配送に対する顧客ニーズに対応できるようになるでしょう。

具体的なスケジュールこそ明らかにしなかったものの、Volocopterは新規株式公開(IPO)実施の可能性についても示唆した。この取り組みの一環として、前DaimlerのCEOのDieter Zetsche氏とCASソフトウェアを設立したMartin Hubschneider氏を新たな社外顧問とした。

とりわけDieter Zetsche氏とMartin Hubschneider氏を新たな顧問として迎え入れるのは喜ばしいことです。

またVolocopter会長のStefan Klocke氏はこのようにも話している。

顧問は、都市上空のモビリティで当社が世界的な大手企業になるための戦略的な関係構築や将来実施する可能性があるIPOに向けた準備で経営陣をサポートする役割を担うことになります。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

ベルリン発の都市農業ソリューション「Infarm」、JR東日本から資金調達し日本市場進出——スーパー「紀ノ国屋」で、屋内栽培の農作物を販売へ

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 ※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから。 デジタルエージェンシーのインフォバーンは26日、ベルリンのスタートアップカンファレンス Tech Open Air(TOA)のワールドツアーイベント東京版「TOA WORLD TOUR Tokyo」を都内で開催している。この席上、基調講演に登壇したベルリン発の都市農業(アーバンファーミング)ソリューション「Infa…

左から:Erez Galonska 氏(Infarm CEO)、堤口貴子氏(紀ノ国屋 代表取締役社長)、山下俊一郎氏(ムロオ代表取締役社長)、表輝幸氏(JR 東日本 執行役員 事業創造本部副本部長)、平石郁生氏(Infarm Japan マネージングディレクター)
Image credit: Masaru Ikeda

 ※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから。

デジタルエージェンシーのインフォバーンは26日、ベルリンのスタートアップカンファレンス Tech Open Air(TOA)のワールドツアーイベント東京版「TOA WORLD TOUR Tokyo」を都内で開催している。この席上、基調講演に登壇したベルリン発の都市農業(アーバンファーミング)ソリューション「Infarm」の 創業者で CEO の Erez Galonska 氏は、同社が JR 東日本(東証:9020)から出資を受け、JR 東日本傘下の高級スーパー「紀ノ国屋」で Infarm の仕組みを使った屋内(店内)栽培の農作物の販売を今夏開始することを明らかにした。

Infarm の運営会社 Indoor Urban Farming(ドイツ法人)は昨年、ロンドン拠点 VC の Atmico をリードインベスターとして、合計1億米ドルのシリーズ B ラウンドを完了したことで話題を呼んだ。同社の創業以来の累積調達金額は1億3,450万米ドル。今回、JR 東日本が参加した調達ラウンドは、JR 東日本および紀ノ国屋との協業と日本市場進出に向けて設定されたもので、ラウンドステージは定義されていない。BRIDGE の取材に対し、Infarm は今回調達額の開示をしなかった。

Infarm は2013年、イスラエル生まれの Galonska 兄弟(Guy Galonska 氏、Erez Galonska 氏)、 Osnat Michaeli 氏の3人により創業された。冬の寒さで農作物の育たないドイツにおいて、通年、環境に左右されず新鮮な野菜を手軽に食べられるようにするアイデアを実現した。BRIDGE で初めて取り上げたのは、サンブリッジ グローバルベンチャーズが開催していた世界のスタートアップショーケースイベント「Innovation Weekend Grand Finale 2015」で優勝した際のことだ。

Osnat Michaeli 氏(CMO)、Erez Galonska 氏(CEO)、Guy Galonska 氏(CTO)
Image credit: Robert Rieger, FvF Productions UG

Infarm のソリューションでは、室内の温度や湿度、光、pH などが常時クラウドを通じて最適制御され、気候を問わず、ハーブやレタスなどの葉野菜を安定的に栽培できる。電気、水、WiFi さえあれば稼働可能で、モジュール式であるため配置場所についても非常に柔軟だ。現在は種付けなどを Infarm の施設で行い、出荷できるようになった株が半自動的に搬出される。当該株は店内の Infarm 設備に運搬・ストックされるので、消費者は野菜が育っている最中にある新鮮な状態のまま店頭で購入できる。

現在までに、Infarm は本拠地であるドイツはもとより、フランス、スイス、ルクセンブルグ、イギリス、デンマーク、カナダ、アメリカに進出しており、Irma(デンマーク)、Kroger/QFC(アメリカ)、Marks and Spencer(イギリス)、Metro(ヨーロッパ各国)、Edeka(ドイツ)といった現地スーパーと提携し、屋内(店内)栽培の農作物を販売している。世界で600以上の Farming Units を店舗や流通センターで展開し、毎月の植物収穫量は25万株以上。紀ノ国屋での販売は日本においてはもとより、アジアでも初の試みとなる。日本国内では、紀ノ国屋のいずれかの店舗で今夏にも Infarm による農作物販売が開始される見込みだ。

Infarm は日本市場の進出にあたり、日本法人 Infarm Japan を設立する。Infarm Japan のマネージングディレクターには、前出の Innovation Weekend Grand Finale 2015 の主催者で、現在はファンド運用やスタートアップの市場進出などを支援するドリームビジョン代表取締役社長の平石郁生氏が就任する。なお、ドリームビジョンはサンブリッジ グローバルベンチャーズのファンド運用を引き継いでおり、Infarm のシードラウンドにおける投資家である。

Infarm のアーバンファーミングソリューション「Inhub」
Image credit: Infarm

また、国内最大のチルド物流ネットワークを持つコールドサプライチェーン企業ムロオが物流面で協力する。ムロオの代表取締役社長である山下俊一郎氏は、平石氏が法政大学経営大学院(MBA)で客員教授を務めていた際の教え子であり、ムロオのコールドサプライチェーンが Infarm が日本国内で拠点展開する上で施設配置をしやすいとの判断からだ。

Erez Galonska 氏は BRIDGE のインタビューに対し、次のように語ってくれた。

日本市場に進出できることをうれしく思っている。食糧ロスの多さ、台風などの自然災害に見舞われサステイナブルな農業が難しいこと、農家の高齢化などの問題を抱える日本においては、半自動的に新鮮な野菜を届けられる Infarm の進出は意義深い。(中略)

JR 東日本や紀ノ国屋がイノベーションを探していたことからも、今回、Infarm は彼らと組むことでシナジーが見出せると考えた。日本進出にあたり、商品の品揃えもローカライズする。水菜、パクチーなどアジアの野菜を扱うことも考えられるだろう。

実は日本よりキャッシュレス後進国、滞在でみえた「お金体験アップデートのチャンス」とは

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2019年は欧州発のフィンテック企業、特にチャレンジャーバンクが数多く登場しました。たとえば、約8分で新規口座開設が出来る「N26」のように、モバイルファーストを売りとするスタートアップが躍進した一年となりました。 ただ、N26の拠点でもあるドイツは日本と同じレベルでキャッシュ愛好家が多い国として知られています。 今年4月に経済産業省が2018年に公開した「キャッシュレスビジョン2019」によれば…

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Photo by Ingo Joseph on Pexels.com

2019年は欧州発のフィンテック企業、特にチャレンジャーバンクが数多く登場しました。たとえば、約8分で新規口座開設が出来る「N26」のように、モバイルファーストを売りとするスタートアップが躍進した一年となりました。

ただ、N26の拠点でもあるドイツは日本と同じレベルでキャッシュ愛好家が多い国として知られています。

今年4月に経済産業省が2018年に公開した「キャッシュレスビジョン2019」によれば、日本のキャッシュレス決済比率は2015年時点で18.4%となっています。キャッシュレスの首位を独走する韓国が89.1%、その次を行く中国が60%と、日本社会のキャッシュレス比率が同じアジア圏でも大きく差が出ていることが分かります。

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キャッシュレスビジョン2019

ではドイツはというと、日本の更に下、キャッシュレス決済比率14.9%を記録し、現金至上主義な社会であることが示されています。

理由として、財務省のレポートにもあるように、同国の歴史的背景に由来する、キャッシュが持つ「匿名性」の影響が挙げられます。レポートでは、第二次世界大戦時に中央政府による市民の監視が影響しているのではと述べられています。

「ベルリンの壁が崩壊したのは1989年であり、30年余が経過したものの、東西分断の痕跡は現在のベルリンにも少なからず見て取れる。当然、都市を分断した「中央監視」に関連して刻まれた記憶と感情は消えておらず、匿名性の価値が、インターネットの時代に改めて想起されたとしても不思議ではないであろう」ー財務省発表、スウェーデンのキャッシュレス化・ドイツのキャッシュレス化(下)ドイツ編より引用

以上より、中央管理を避ける風潮が国民文化としてのキャッシュを好むカルチャーを作っている一つの大きな要因だと考えられます。例えばドイツ銀行が公開したデータのように、ドイツにおけるデビットカードの保有率が大変高い状態にあるのもその裏付けのひとつと言えます。

Captureさて、話をベルリン拠点のチャレンジャーバンク「N26」に戻しましょう。同社のユーザー数は2019年4月時点で約250万人(※)とBusiness Insider Intelligenceに報じられています。N26はドイツ拠点というだけで、EU圏の対応国に住所を持っていれば誰でも口座開設可能です。

※補足修正:記事初出時に25万人と誤記しておりました。正しくは250万人が引用元記事の情報です。ご指摘いただきありがとうございます。

ドイツの人口は2018年時点で約820万人。同社からユーザーの居住国は公開されていませんが、ドイツ人ユーザー数はそこまで多くないのではと感じています。というのも前述の通り、キャッシュを好む傾向から、キャッシュレス決済といったチャレンジャーバンクならではの価値提供が見込めないからです。

実際、筆者は昨年末にドイツ・フランクフルトに滞在していたのですが、到着するまではいくら現金を好むといえ、フランクフルトのような大都市であれば生活に困らない程度でクレジットカード決済可能だろう、そう思っていました。

しかし、たとえばローカルのコーヒーショップやレストランなどは基本入り口に大々的に「CASH ONLY」と貼られており、大通りを歩いていてもカード決済可能な店舗を探すのに一苦労といったレベルです。カード支払いがほとんどできない有様でした。

改めてドイツ銀行が公開したデータを見ると、2017年におけるドイツ人のキャッシュ利用率は全体の74.3%。次いでデビットカードが18.9%を占めており、クレジットカードはたったの1.6%しかありません。ここで着目すべきなのは2008年からの変動率の少なさでしょう。

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Payment behavior in Germany 2017

2008年においてキャッシュ利用率は全体の82.5%で、実際に年々下降してるとはいえ約10年間で8%ほどのみがキャッシュレスへ動くのみとなっており、これは非常に小さな割合だと言えます。つまり、ドイツにおいて「銀行」に求められているのは昔ながらといえる「お金の安全な保管」だけなのです。

極端な比較となりますが、UBSのデータによれば、中国では2010年時点での現金決済比率が全体の約65%を占めていたのが、2020年には約半分となる30%程度に収束するだろうといったレポートを算出しています。

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UBS

中国ではAlipayやWeChat PayなどのQR決済がこのトレンドの要因となっているのは明確です。ドイツでも多くのフィンテック・スタートアップが本拠地を置いてあることを考慮すれば、本来はキャッシュレスのムーブメントが起きていてもおかしくありません。しかし、現実はその逆でした。

キャッシュレスの壁「チップ文化」

ドイツが「匿名性」を理由にキャッシュを好んでいるのは事実でしょう。ただ、ドイツが国として世界のキャッシュレストレンドに感化されない要因は他にもありそうです。

ローカルカフェで働いている20代の男女バリスタに話を聞いてみたところ、揃って「金銭的に自立した職種として認められるためにキャッシュ(チップ)が必要なんだ」といった答えが返ってきました。ドイツ滞在で実際にカードで支払いをして気が付いたことは、クレジットカードのマシーンにそもそもチップを上乗せして会計するステップが用意されていません。

これはアメリカのようにクレジットカードを通したチップ付与であると店舗全体で総分配になる反面、キャッシュであればそのまま個人の収入へと繋がることを意味しています。

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こうした社会的問題とキャッシュレスを考えたとき、ふと思いついたのはコーヒースタートアップ「Bellwether Coffee」です。

<参考記事>

同スタートアップは、コーヒー購入者が直接コーヒー栽培農家に「投げ銭(チップと表現してもいいでしょう)」を送金できる焙煎機を開発し、途上国の違法児童労働問題の解消を目指しています。

ある意味では、キャッシュレスだからこそスムーズにエコシステムが形成されていると言えます。直接的に従業員へ現金をチップしたいという気持ちがあるならば、それをそのままデジタライズさせることも可能と考えます。

ということでドイツ滞在からみえた「キャッシュレス途上国」の課題を考えてみました。

現金で成り立っているチップ文化をわざわざ壊してまでデジタライズさせるためには、さらにクリティカルな価値提供が求められることは間違いありません。そういった意味でN26のようなフィンテック企業が、チップのような細かい体験を各国の文化に合わせてアップデートしていけば面白いことになるのではないでしょうか。

こういったキャッシュ至上主義国家におけるチャンレンジャーバンクには、お金にまつわる体験をアップデートする役割も期待されます。

今後もN26を始めとして欧州発のチャレンジャーバンクが勢力を増し、グローバルになっていくと思います。こうした流れを理解したうえで、フィンテック・ソリューションを開発できれば、日本でもお金に対する文化を根本的にアップデートしていけるのではないかなと思います。