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香港でフィンテック・スタートアップの年次イベント「FINNOVASIA」が開催、議論の多くがAIとICOに集中

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先週は、世界中が何かとスタートアップのイベントに忙しかったようだ。東京では ILS(Industry Leaders Summit)や AEA(Asian Entrepreneurs Award)、ラスベガスでは Money20/20、そして、ソウルではこれまでの台北(2014年)やアモイ(2016年)に続き ASIA BEAT 2017 が催されていた。筆者は、日本の Fintech 協会のお誘…

Image credit: Masaru Ikeda

先週は、世界中が何かとスタートアップのイベントに忙しかったようだ。東京では ILS(Industry Leaders Summit)AEA(Asian Entrepreneurs Award)、ラスベガスでは Money20/20、そして、ソウルではこれまでの台北(2014年)アモイ(2016年)に続き ASIA BEAT 2017 が催されていた。筆者は、日本の Fintech 協会のお誘いもあり、香港の年次フィンテック・イベント「FINNOVASIA 2017」にお邪魔させていただいた。

香港では、日本の JETRO(日本貿易振興機構)に相当する InvestHK(香港投資推広署)が、毎年この時期に Hong Kong FinTech Week なるイベント週を企画しており、さまざまな金融やフィンテック関連の催しものが連日開催される。昨年の FINNOVASIA 2016RISE 2016と時期を同じく6月に開催されたのだが、今年からは Hong Kong FinTech Week の一部として再構成されたようだ。

Image credit: Masaru Ikeda

FINNOVASIA にとっては、Hong Kong FinTech Week の一部を構成するイベントとなったことで、登壇者や聴衆を世界中から集めやすいというメリットがあるだろうし、おそらく、スポンサーの確保や香港政府からの支援も得やすかったのだろう。アジアで見て見ると、Hong Kong FinTech Week のような、この種の国を挙げたイニシアティブは、日本の金融庁・日経・Fintech 協会が共催する Fin/Sum や、シンガポール金融当局(MAS、Monetary Authority of Singapore)が主催する FinTech Festival などが存在する。かつて金融ハブと言われたこれらの都市は、21世紀を迎え、以前に増して資金や人が流動化するようになった今、文字通り新たな時代のリーダーシップを巡って競い合っているわけだ。

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アジア各国、とりわけ、そのサービスの規模から言って中国本土のフィンテック・スタートアップの存在は目立っていたが、彼らのほか、アジアの大手メガバンク、アーリーステージのスタートアップらが肩を並べて語り合った。フィンテック・スタートアップがどうすれば、メガバンクとオープンイノベーションという文脈で組めるか、保守的と言われるメガバンクはどうすれば、新しいフィンテックを取り入れるにはどうすればいいか、といった議論はこれまでにも多くのカンファレンスで耳にしてきた。そんな中、今回の FINNOVASIA を特徴づけたキーワードを並べると、それぞれ基礎技術からアプリケーションまでレイヤーは異なるが AI(人工知能)、ML(機械学習)、KYC、RegTech、そして、ICO だろう。特に、スピーカーセッションの9割程度には AI という言葉がついていて、AI を使っていないとフィンテック・スタートアップとは名乗ってはいけないのか、とさえ思うほどの印象を受けた。

Image credit: Masaru Ikeda

キーワードとして並べた中でも、KYC と RegTech については、フィンテック業界に直接携わっていない読者にとっては、あまり耳にしない言葉かもしれない。KYC とは Know Your Customer の略で、フィンテックのサービスにとっては必須となるユーザの認証をするためのプロセスのことだ。このプロセスにはいくつかのレベルがあるが、日本では典型的な金融サービスの場合、運転免許証やパスポートなどのコピーを提出させられるようにように、比較的高いレベルでの本人認証が求められる。運転免許証やパスポートのコピーを提出するということは、サービスとしては、当該ユーザが国籍を持つ政府の言っていることを信じましょう、という立場なわけだが、グローバル化が進みブロックチェーン技術の浸透で情報権威の非中央集権化が進めば、この部分をスタートアップのプラットフォームが代行するようになる日が来るわけだ。

一方、RegTech とは Regulation Technology の略で、その名の通りフィンテックには付き物の法規制などをうまく潜り抜けてサービスを提供するスタートアップの総称である。言うまでもなく、潜り抜けてというのは脱法や非合法なことをするわけではなく、関係当局と法的な解釈を調整したり、テクニックや手順を駆使したりすることで、サービスを合法的かつサステイナブルに提供することを目指す。例えば、今回の FINNOVASIA には、日本から不動産クラウドファンディングのクラウドリアルティが参加していたが、彼らもまた、金融庁・国土交通省といった関係官庁が所管する規制をうまく潜り抜けるテクノロジーやテクニックを編み出した、RegTech のスタートアップと言える。

BAASIS.ID
Image credit: Masaru Ikeda

FINNOVASIA のイベント終盤に開催された、スンンダード&チャータード銀行協賛の AI フィンテックスタートアップ・ピッチコンペティションには8チームがファイナリストとして登壇。 シンガポールの Baasis.ID が優勝し、オーストリアの Salus.Alpha が審査員賞に選ばれた。

Baasis.ID はシンガポールを拠点とし、フィンテックやブロックチェーン・スタートアップ、通信会社、E コマース事業者などにオールインワンのデジタル KYC サービスを提供。対象ユーザに対して、氏名・性別・生年月日・国籍のチェック、SMS による電話番号チェック、パスポードや ID スキャンによる本人認証、動画を使ったバイオメトリック顔認識による実在確認、デビットカードによる銀行口座保有確認、公共料金の請求書や郵便での確認コード送付による居住地確認、エストニアの eID でも採用されている国際標準に則った電子署名の登録、全世界で指名手配や制裁対象に指定されていないかの確認を行う。Slush Singapore のトップ45チームにノミネートされた。

Salus.Alpha
Image credit: Masaru Ikeda

Salus.Alpha は、オルナタティブ投資に特化した AI を取り入れたロボアドバイザーだ。オルタナティブ投資とは文字通り代替投資を意味し、株式や債券といった投資とは異なり、具体的にはヘッジファンド、プライベート・エクイティ、コモディティ(先物などの商品市場)、現物不動産などへの投資の総称。一般的にオルタナティブ投資は、従来型投資よりも高いリターンが得られる可能性は高いものの、リスクが高い、手数料が高い、法規制が厳しいなどの課題点がある。Salus.Alpha はこれらを AI を使ったロボアドバイザーで解決し、そのベンチマークとしては、ETF(上場投資信託)の代表格である SP500 Beta よりも高利回りの実績を確保しているという。

Japan Pavilion 前で記念写真に納まる、Fintech 協会の皆さん(一部)
Image credit: Fintech Association of Japan

FINNOVASIA の出展エリアには、日本のフィンテック・スタートアップ向けの共同ブース(主催者は、Japan Pavilion と呼んでいた)が開設され、イベント期間中、多数のスタートアップが訪れていた。また、1日目の夜には KPMG Japan がスポンサードする形で、香港・湾仔(ワンチャイ)の目抜き通りにあるレストランのルーフトップで Japan FinTech Night が開催され、日本から参加したフィンテック・スタートアップ数社を交えたパネルディスカッションが行われ200名以上が参加した。

Japan FinTech Night で、Fintech 協会の紹介をする財産ネット CEO の荻野調氏
Image credit: Masaru Ikeda

フィンテック・スタートアップにおいては、とかくサービスを提供する市場の規制を受けるため、グローバルなサービスを展開しづらいという印象がある。ただ、今回のイベントを通じて痛感したのは、確かにアプリケーションレイヤーにおいては地域特性や市場の規制を意識する必要があるのだが、それを解決するためのアーキテクチャーやテクノロジーについては、往々にして市場横断で応用が利くということだ。すなわち、フィンテック・スタートアップは生まれながらにしてグローバルなわけである。

THE BRIDGE では近日中に Money20/20 のレポートもお届けしたい。FINNOVASIA、Money20/20、FinTech Festival で議論された内容を受けて、2017年のフィンテック・トレンドを概ね総括できるだろう。

Japan FinTech Night には、香港内外から200名以上のゲストが集まった。
Image credit: Fintech Association of Japan
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香港でフィンテックに特化したスタートアップ・カンファンレンス「FINNOVASIA 2016」が開催

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5月30日、香港のスタートアップ・ハブの一つ Cyberport(数碼港)で、フィンテックに特化したスタートアップ・カンファレンス「FINNOVASIA 2016」が開催された。2015年から始まった FINNOVASIA は、アジア地域におけるフィンテックにフォーカスしたイベントとしてはおそらく初めての試みで、シリコンバレーの FINOVATE、ロンドンの Finance Magnates と並…

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5月30日、香港のスタートアップ・ハブの一つ Cyberport(数碼港)で、フィンテックに特化したスタートアップ・カンファレンス「FINNOVASIA 2016」が開催された。2015年から始まった FINNOVASIA は、アジア地域におけるフィンテックにフォーカスしたイベントとしてはおそらく初めての試みで、シリコンバレーの FINOVATE、ロンドンの Finance Magnates と並び、このバーティカルの大きなムーブメントになることが期待される。

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Metta で開催された FinTech Japan Night
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FinTech Japan Night で、日本のフィンテック事情について解説する真田紀子氏(フィンテック協会/インフキュリオン)

イベントの前日には、香港のスタートアップ・インキュベータ Nest が、香港随一の繁華街 Lan Kwai Fong(蘭桂坊)に先ごろ開設したメンバーシップクラブ「Metta」で、日本のフィンテック協会らの協賛による Japan FinTech Night が開かれ、フィンテック・ビジネスを営む起業家のほか、銀行関係者、弁護士らが日本のフィンテック状勢について説明するパネル・ディスカッションが持たれた。アジアなどから日本のフィンテック市場への参入に関心のあるスタートアップがいる一方で、日本から発信される情報が少ないとの不満も聞かれる。そんな中で、参加者にとっては非常に貴重な機会となったことだろう。

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Anthony Sar 氏(FINNOVASIA)

FINNOVASIA 2016 では、このイベントの共同設立者で CEO の Anthony Sar 氏の開会の辞に引き続き、EY (Ernst & Young) APAC でフィンテック部門の長を務める James Lloyd 氏は、どの国や都市が世界のフィンテック・ハブになるか、という議論が繰り返される中で、市場が閉ざされている北朝鮮や人の居ないアフリカの砂漠地帯を除けば、世界のあらゆる場所がフィンテック・ハブになる可能性があると強調。特に、2020年までに、中国南部の広州・深圳・香港を含む珠江デルタ地域は、世界最大の消費者人口を抱えるハブへと成長するだろうと述べた。

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James Lloyd 氏(Ernst & Young)

また、アメリカのソーシャルレンディング・サービス大手「Lending Club」の前 CTO だった Soul Htite 氏が、中国で開設した P2P 金融サービス「Dianrong(点融)」の CMO Jing Pan 氏が登壇し、ポータルやオンラインゲームに始まり、昨今の中国におけるフィンテック・サービスの隆盛について説明、今後は、中国から世界市場への展開していくフィンテック・スタートアップが現れるだろうと展望を語った。

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Jing Pan 氏(Dianrong)

日本からは、三菱東京UFJ銀行でオープンイノベーションをリードする藤井達人氏が、同行の成田空港支店などで活躍する接客ヒューマノイドロボット NAO と共に登壇。同行の MUFG FinTech Accelerator や、先ごろ日本の銀行法の改正案が可決され、銀行からスタートアップへの出資条件が緩和されたことなどを紹介した。

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藤井達人氏(三菱東京UFJ銀行)と NAO

夜には、Central(中環)にあるクラブに場所を移し、アフターパーティーをしながらスタートアップ9社がピッチ登壇。香港の電子マネーウォレット「TNG」が優勝し、電子サイン認証決済システム「SmartSIGN」を開発する韓国の KTB Solution が準優勝の座を勝ち取った。

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アフターパーティーで行われたピッチ
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優勝した Alex Kong 氏(TNG)
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準優勝のキム・テボン氏とミン・ヨンチャン氏(KTB Solution) 

昨年末の FINNOVASIA 2015 で300人以上、今年の FINNOVASIA 2016 で500人を超えており、スピーカーも45カ国以上から集まっていることから、業界に対する関心の高さが伺える。次回の予定については未発表だが、フィンテックの進化のスピードから言って、最新状況をキャッチアップするために年に複数回の開催も期待されるところだ。次回の開催についても楽しみにしたい。

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