5月30日、香港のスタートアップ・ハブの一つ Cyberport(数碼港)で、フィンテックに特化したスタートアップ・カンファレンス「FINNOVASIA 2016」が開催された。2015年から始まった FINNOVASIA は、アジア地域におけるフィンテックにフォーカスしたイベントとしてはおそらく初めての試みで、シリコンバレーの FINOVATE、ロンドンの Finance Magnates と並び、このバーティカルの大きなムーブメントになることが期待される。


イベントの前日には、香港のスタートアップ・インキュベータ Nest が、香港随一の繁華街 Lan Kwai Fong(蘭桂坊)に先ごろ開設したメンバーシップクラブ「Metta」で、日本のフィンテック協会らの協賛による Japan FinTech Night が開かれ、フィンテック・ビジネスを営む起業家のほか、銀行関係者、弁護士らが日本のフィンテック状勢について説明するパネル・ディスカッションが持たれた。アジアなどから日本のフィンテック市場への参入に関心のあるスタートアップがいる一方で、日本から発信される情報が少ないとの不満も聞かれる。そんな中で、参加者にとっては非常に貴重な機会となったことだろう。

FINNOVASIA 2016 では、このイベントの共同設立者で CEO の Anthony Sar 氏の開会の辞に引き続き、EY (Ernst & Young) APAC でフィンテック部門の長を務める James Lloyd 氏は、どの国や都市が世界のフィンテック・ハブになるか、という議論が繰り返される中で、市場が閉ざされている北朝鮮や人の居ないアフリカの砂漠地帯を除けば、世界のあらゆる場所がフィンテック・ハブになる可能性があると強調。特に、2020年までに、中国南部の広州・深圳・香港を含む珠江デルタ地域は、世界最大の消費者人口を抱えるハブへと成長するだろうと述べた。

また、アメリカのソーシャルレンディング・サービス大手「Lending Club」の前 CTO だった Soul Htite 氏が、中国で開設した P2P 金融サービス「Dianrong(点融)」の CMO Jing Pan 氏が登壇し、ポータルやオンラインゲームに始まり、昨今の中国におけるフィンテック・サービスの隆盛について説明、今後は、中国から世界市場への展開していくフィンテック・スタートアップが現れるだろうと展望を語った。

日本からは、三菱東京UFJ銀行でオープンイノベーションをリードする藤井達人氏が、同行の成田空港支店などで活躍する接客ヒューマノイドロボット NAO と共に登壇。同行の MUFG FinTech Accelerator や、先ごろ日本の銀行法の改正案が可決され、銀行からスタートアップへの出資条件が緩和されたことなどを紹介した。

夜には、Central(中環)にあるクラブに場所を移し、アフターパーティーをしながらスタートアップ9社がピッチ登壇。香港の電子マネーウォレット「TNG」が優勝し、電子サイン認証決済システム「SmartSIGN」を開発する韓国の KTB Solution が準優勝の座を勝ち取った。



昨年末の FINNOVASIA 2015 で300人以上、今年の FINNOVASIA 2016 で500人を超えており、スピーカーも45カ国以上から集まっていることから、業界に対する関心の高さが伺える。次回の予定については未発表だが、フィンテックの進化のスピードから言って、最新状況をキャッチアップするために年に複数回の開催も期待されるところだ。次回の開催についても楽しみにしたい。
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