BRIDGE

タグ Infinity Ventures Summit 2020

IVS 2020 Onlineのピッチコンペティション「LaunchPad」は、検査・検品AIのアダコテックが優勝 #ivs2020

SHARE:

本稿は、Infinity Ventures Summit 2020 の取材の一部である。 31日午後、Infinity Ventures Summit(IVS)では恒例となっているスタートアップ・ピッチコンペティション「LaunchPad」が実施され、検査・検品のアダコテックが優勝した。 LaunchPad の審査員を務めたのは、 元榮太一郎氏 弁護士ドットコム 創業者兼代表取締役会長 佐藤光紀氏…

本稿は、Infinity Ventures Summit 2020 の取材の一部である。

31日午後、Infinity Ventures Summit(IVS)では恒例となっているスタートアップ・ピッチコンペティション「LaunchPad」が実施され、検査・検品のアダコテックが優勝した。

LaunchPad の審査員を務めたのは、

  • 元榮太一郎氏 弁護士ドットコム 創業者兼代表取締役会長
  • 佐藤光紀氏 セプテーニホールディングス 代表取締役社長
  • 前田裕二氏 SHOWROOM 代表取締役社長
  • 丸尾浩一氏 大和証券 専務取締役
  • 上野山勝也氏 PKSHA Technology 代表取締役
  • 金子剛士氏 East Ventures パートナー
  • 山田メユミ氏 アイスタイル 共同創業者 取締役
  • 国光宏尚氏 gumi 代表取締役
  • 仲暁子氏 Wantedly 代表取締役
  • 吉田浩一郎氏 クラウドワークス 代表取締役社長 兼 CEO
  • 高宮慎一氏 グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー
  • 三上智子氏 日本マイクロソフト 業務執行役員
  • 堀新一郎氏 YJ キャピタル CEO
  • Joseph Chan/詹德弘氏 AppWorks/之初創投 パートナー
  • Tina Cheng/成之璇氏 Cheruvic Ventures/心元資本 パートナー

なお、副賞としてファイナリスト全チームに Freee 利用権5万円相当(Freee 提供)と AMBI 利用権(エン・ジャパン)、優勝から3位入賞者に Daiwa Innovation Network 優先登壇権(大和証券)、また優勝チームに Freee 利用権10万円相当(Freee 提供)、5万円分のカタログギフトとプロの社外コンサルタントによるメンタリング受講権(NTT ・ドコモベンチャーズ)、楽天ギフトカード10万円分(大和証券)、本当にかなう Amazon Wishlist (Amazone Web Service 提供)、セミナー2名招待(プルータスコンサルティング)、スタートアップ支援する何か・詳細未定(ケップル)が贈られた。

登壇したのは以下の14社。

【優勝】検査・検品 AI by アダコテック

アダコテックは、いわゆる「産総研スピンオフ」のスタートアップで、産業技術総合研究所で開発された特徴抽出法を開発。一般的なディープラーニングでは、異常検知のために正常品と異常品の両方を教師データとするのが一般的であるのに対し、アダコテックのソフトウェアでは正常品のみを教師データとして、正常を逸脱したものを異常として網羅的に検出する。

レーダーを照射して得られた画像を元に非破壊検査する場合などでは、担当者が目を皿のようにして異常個所を探していたのは効率が悪い。アダコテックの AI を使って画像を一次スクリーニングすることで、人が集中して見る必要がある部分だけを明らかにし、生産性が飛躍的に向上するという。

アダコテックは2019年7月、東京大学エッジキャピタル(UTEC)と DNX Ventures から4億円を調達している

【2位】【ROXX 賞】Luup by LUUP

LUUP は、マイクロモビリティを都市に実装しようとする MaaS スタートアップ。街のあらゆる場所にモビリティ機器を借りたり返したりできるポートを配置し、高齢者も含め全ての人が安全かつ便利に利用できるモビリティのプラットフォーマーになることを目指している。これまで全国の地方自治体と連携して実証実験を重ねてきた。

昨年来、札幌の NoMaps での試乗会の開催、「Okinawa Startup Program」への採択、今年に入って NTT 東日本のアクセラレータ「LIGHTnIC(ライトニック)」デモデイで優秀賞、「東急アクセラレートプログラム(TAP)」のデモデイで二子玉川賞を獲得。今年5月からは、一般消費者向けシェアサイクル事業を渋谷区、目黒区、港区、世田谷区、品川区、新宿区の6エリアで展開している。

LUUP は昨日警察庁の特別許可を取得し、今年10月から大手町と新宿で公道実証を展開する予定。同社は昨日、ENEOS グループの CVC である ENEOS イノベーションパートナーズと大林組から約4億5,000万円の調達を発表したばかり。創業来3回にわたる投資ラウンドで、合計8億5,500万円を調達している。

【3位】【プルータス・コンサルティング賞】L by AGRIST

宮崎発の AGRIST は、農業の人手不足を解決する AI と収穫ロボット「L」を開発している。すでに6台が実稼働、ENEOS と協業している。完璧なパフォーマンスが実現できるものの高価なロボットではなく実用的なシステムを目指して、宮崎のピーマン農家と共同開発している。

ビニルハウスの中で平坦でない土壌の上でなく、空中に張ったワイヤを使って移動できる収穫ロボットを開発した。ロボットに備わったカメラからの画像認識により、ピーマンの収穫を完全自動化する。

【4位】PowerArena by PowerArena/百威雷(台湾)

PowerArena は、ディープラーニングを使って製造業の効率化を支援するスタートアップ。ビデオを使って集めた製造工程の映像を AI を使って解析、問題点を見つけ、どの工程のどの部分に改善すべき点があるかをラベルをつけてアドバイスする。

この AI をセットトップボックスのようなデバイスの中に完結しており、実装を非常に簡素化している。スマートシティでの充電ループやパイプ交換時期の予測などにも利用されている。

【5位】AquaMagic by AquaFusion

AquaFusion は、革新的な水中可視化装置「AquaMagic」を開発している。これまでの魚群探知機は超音波を利用しているため、水深750メートルの海中だと超音波を発してから障害物に当たって返ってくるまで1秒かかるので、それ以上早い頻度で信号を打つことができない。

イルカにヒントを得て同社では CDMA コードを単一周波数発信による検出技術を開発。従来の魚群探知機に比べ、垂直方向10倍、水平方向10倍、計100倍の分解能を持つため、魚群ではなく魚単体で検出することもできる。魚の体長や魚群の密度もわかるため、漁業の効率化につながる。

Sportip Meet by Sportip

Sportip は筑波大学はつのスタートアップで、整体師・トレーナー向け AI 解析アプリ「Sportip Pro」を開発している。また、Sportip Pro で培った解析技術を応用し、一般ユーザ向けに個人の身体や姿勢の状態をチェックし、AI が最適なトレーニングメニューを提案してくれるサービス「Sportip Meet」を開発している。

Sportip Meet のメニューとしては、トレーニング、ストレッチ、ヨガなどを予定しており、フィットネスジム大手、パーソナルトレーナー、整体師、理学療法士などを通じた提供を予定。ユーザは Sportip Pro を使う整体師やトレーナーからオフライン体験を、Sportip Meet を通じてオンライン体験を得られる。

Sportip は今年6月、マネックスベンチャーズ、DEEPCORE、Deportare Partners から数千万円を資金調達した

GameTector by RIM

RIM が開発・提供する「GameTector」は、e スポーツ大会の開催・運営・参加を効率化・省力化できるプラットフォーム。大会主催者は「エントリー選手の管理」「対戦表の作成」「独自の結果報告システム」を利用することでスムースに大会の運営を行うことができる。

GameTector が主催するイベント大会では、参加者数2000人以上、オフライン大会では60名以上の参加、2020年の GW に開催した大会ではツイッターでトレンド入りを果たすなどしてきた。今後は、各ゲーム会社と協力し合いながら、e スポーツ市場への進出を考えている企業や自治体への支援、e ポーツの大会文化作り、コミュニティ作りに尽力するとしている。

RIM は今年6月、シードラウンドで W ventures と個人投資家から3,500万円を資金調達した

YOUTRUST by YOUTRUST

YOUTRUST が運営する「YOUTRUST」は、副業と転職のキャリア SNS。「友人の友人」までのつながりがある人物の副業や転職意欲が可視化される。友人からの紹介(リファラル)の仕組みで、友人、もしくは友人の友人から転職や副業のオファーが届く。口コミ中心に利用が拡大し、ユーザ数は8,000人、導入企業は累計で180社を超える。

YOUTRUST は本日、機能およびサイトデザインの大規模リニューアルを実施。企業ごとに情報が集約された新機能「カンパニーページ」をリリースした。ユーザにとっては、気になる企業をボタン1つでフォローでき、友人の動向なども追えるタイムライン上で企業の最新情報を把握することもできるようになる。

YOUTRUST は2019年1月に シードラウンドで数千万円、今年1月にプレシリーズ A ラウンドで1億1,000万円を調達している。

TiNK by tsumug

tsumug は、企業向け自律分散オフィスサービス「TiNK Desk(時間貸しサービス)」や「Tink Office(空間専有サービス)」を提供。遊休空間に TiNK や他社製品を含むロックデバイスを設置することで、サービス利用者の入退室管理と制御を実施。アプリのインストールを必要とせず、LINE だけで利用開始の手続や施・解錠が行えるのが特徴だ。

フリーランサー、複業を持つ人、テレワーカーなどに、オフィスや自宅以外のワークスペースを提供する。ユースケースとしては、マンションにある空室を同棟の居住者が使えるワークスペースにし、マンションオーナーやデベロッパがマネタイズすることができる。TiNK は ABBALab から出資を受けている

<関連記事>

ROADCAST by 東急

ROADCAST は、2018年に立ち上がった東急の社内ベンチャー。外壁の落書きや広告看板の乱立を、ストリートアートや屋外広告のプラットフォームで解決する。ROADCAST を使って、屋外アート展の実施や回遊型のゲーム企画に利用された事例などがある。

アートや広告を掲出したいユーザは、ROADCAST を使いマップで掲出場所を確認、空きスケジュールや価格を確認し原稿を入稿する。エリアに応じて、街の景観を損なわないよう独自のl広告規定や入稿規定も設定。原稿を掲出場所のオーナーが確認後に掲出が実施される。出稿者には、流動人口データを元に効果測定された情報をダッシュボードでフィードバックされる。

2020年度中に、掲出場所を東京都内で250カ所、提携先を含め500カ所にまで拡大する予定。

KengakuCloud by ビズ・クリエイション

岡山を拠点とするビズ・クリエイションは、モデルハウスに代えて入居中の一戸建て住宅を訪問・見学できるようにする KengakuCloud を開発している。モデルハウスを訪問する住宅購入者からは「贅沢すぎて参考にならない」「リアリティがない」といった意見が寄せられ、モデルハウスを運営できる住宅会社は大手に限られ、維持には多額のコストが強いられる。

KengakiCloud は、住宅購入者(潜在顧客)、住宅会社の担当営業、その住宅会社で一戸建て住宅を建てたオーナーをマッチングするプラットフォームだ。公開に興味のあるオーナーは自分の住宅の写真や情報を登録し予約ページを生成、三者間でスケジュールを調整し訪問・見学のアポが成立する。住宅会社からオーナーには、見学1回につき1万円の謝礼を支払う。

2018年に広島ベンチャーキャピタル、いよぎんキャピタルから資金調達している

aiPass by クイッキン

宿泊施設ではオペレーションの効率化が課題だが、その足かせの一つとなっているのが利用されているシステムの多さだ。例えば、あるホテルではベンダー15社・14システムが利用されていたという。このシステムの多さが宿泊業界の非効率、コスト高、レガシーさを招いていると考えた CUICIN は、宿泊施設の一連のオペレーションを単一 SaaS「aiPass」で一気通貫に処理できる仕組みを目指す。

aiPass では、従来は18ステップあったチェックインやチェックアウトのプロセスを、6ステップにまで減らすことに成功。ユニークなのは、aiPass の基礎機能とは別に、ホテル毎に求められる追加機能(決済、スマートキー、館内リクエストなど)を他システムと連携する API としてカスタマイズ開発する点だ。同社では共同開発モデルを導入するホテルには基礎機能を無料提供し API 開発でマネタイズ、後に他ホテルには SaaS モデルで提供する。

Fukuoka Growth Next の「Beyond Coronavirus」、Open Network Lab 第20期に採択。2月には、DG ベンチャーズとインキュベイトファンドからシード資金を調達している

Leaner by リーナーテクノロジーズ

Leaner Technologies が開発する Leaner は、間接費の無駄を見える化し、コスト削減に貢献するクラウド型の支出管理プラットフォーム。既存の財務・購買データを送付することで、解析により自社・他社比較による使いすぎの間接費目を特定してくれる。

独自のKPI管理により費目別のコスト削減余地や、適切なコスト削減手法も提示してくれるほか、継続的な評価・アラートにも対応している。

同社では2019年5月、インキュベイトファンドから約5,000万円を調達している

B2M by B2M Asia(香港)

B2M Asia は、ウォールストリートで外国為替(FX)のリスクマネージメントのプロフェッショナルらが、そのテクノロジーを中小企業も使えるにしようとするスタートアップだ。国際取引においては取引相手と通貨が異なるため外為取引が必要になるが、この外為手数料は銀行や取扱業者によっては不透明で平均7%程度と高い。

ハイグレードなサーバを使うことで、通常の10〜100倍以上の精度で為替リスクを計算し、これを手数料の安さに反映している。また世界の60以上の決済手段、80以上の通貨に対応。結果として、為替手数料は0.5〜2%で外為取引が提供可能となる。

----------[AD]----------

IVS、今日から初のオンライン開催——名実ともに運営責任者となった島川氏に聞いた舞台裏と意気込み

SHARE:

本稿は、Infinity Ventures Summit 2020 の取材の一部である。 Infinity Ventures Summit(IVS)は7月30日と31日、新型コロナウイルス感染対策として、同イベントをオンラインで開催する。2004年に始まった ILS の前身とされる New Industry Leaders Summit(NILS、当時は CNET Japan などの主催)からカウ…

島川敏明氏
Image credit: Infinity Ventures Summit

本稿は、Infinity Ventures Summit 2020 の取材の一部である。

Infinity Ventures Summit(IVS)は7月30日と31日、新型コロナウイルス感染対策として、同イベントをオンラインで開催する。2004年に始まった ILS の前身とされる New Industry Leaders Summit(NILS、当時は CNET Japan などの主催)からカウントすると、同イベント16年に及ぶ歴史上、初のオンライン開催だ。

IVS はその名の通り、長きにわたりベンチャーキャピタルである Infinity Venture Partners(IVP)が主催する年2回のイベントとして運営されてきたが、昨年7月に神戸で開催された Infinity Ventures Summit 2019 Summer から運営が IVP の若手チームにバトンタッチされ、今年2月には新会社インフィニティベンチャーズサミットが設立され運営が引き継がれた。

今回開催される IVS は、運営チームにとって名実共に IVP から独立して初めての回となるが、図らずして新型コロナウイルスの影響からオンライン開催を余儀なくされ、準備を進める上で、以前のリアル開催の頃の体験、または、それ以上の体験を参加者にどのように届けるかは、新チームにとって大きな苦悩と挑戦の連続となった。

新会社の代表取締役であり、イベントの運営責任者を務める島川敏明氏に、今回の IVS の舞台裏と意気込みを聞いた。

テックカンファレンスの変遷と代替わり

2017年冬、金沢県立音楽堂で開催された IVS。冒頭のパイプオルガンの演奏が幻想的だった。
Image credit: Masaru Ikeda

世界中のテックカンファレンスに目をやると、その多くは TechCrunch Disrupt のようなメディアが運営するものや、WebSummit のような独立系のカンファレンス運営会社によるものが多い。IVS や B Dash Camp のように VC がカンファレンスを運営しているケースは稀だと、海外のスタートアップ関係者から言われたのを思い出す。

もっとも海外でも、VC が自社のプレゼンス向上や投資先スタートアップ(ポートフォリオ)の露出を意図してプロモーションイベントやデモデイを開くことはよくあるが、前出の IVS や B Dash Camp などは、それぞれ IVP や B Dash Ventures 以外の VC や投資先以外のスタートアップも登壇したり、ピッチへの参加を招聘されたりする点で、もはや VC イベントという領域を超えたと言える。

そういう点で IVS が新会社による運営に移行したことにも大きな意味がある。もはや VC 一社のイベントではなく、スタートアップエコシステムを構成する一要素として独立した存在となったからだ。それと同時に、イベント運営にも完全なる独立採算が求められる。新体制の IVS は、新型コロナという痛手を伴う船出を余儀なくされた。

昨年の夏の神戸の回では、Infinity Venture Partners のプリンシパルの立場で運営に参加した。登壇者も、若手の起業家に話してもらうことにフォーカスした。「新しい風が吹いて良かった」という反響を多くもらえたのはありがたい。

しかし、運営を任されたのが開催の直前だったこともあり、チームメンバーも足りておらず、正直なところ、やりきれなかったこともいろいろあった。それらを改善し、いろいろ整えて次へ繋げようと準備を進めている矢先だった。(島川氏)

今夏の IVS はもともと京都市内のホテルで開催される予定で、メイン会場やパーティー会場などの準備も着々と進められていた。しかし、今年3月くらいになって、新型コロナ感染拡大で大規模イベントの開催が難しくなり、IVS にも決断が迫られた。会場との延期交渉やキャンセルフィーの発生、イベントの演出スタッフへの補償など、新会社にとっては初回開始前から財務面だけでもマイナスを強いられたわけだ。

しかし、悪いことばかりではない。新しくなった IVS にはメリットも多く期待できると島川氏は言う。

まず、IVS を新会社運営にしたのは、(赤字にならずに)ケツを持って回していけるほど、いいコンテンツを作っていきますよ、という我々の決意の表れ。そして、独立して法人化した組織でやった方が自由度が高いこともわかった。これは会社を登記した時に意図していたことではないが、実際に新体制で動いてみて感じられるようになったことだ。(島川氏)

改めて見直される IVS の価値と意義

昨年7月に神戸で開催された Infinity Ventures Summit 2019 Summer の「LAUNCHPAD」
Image credit: Masaru Ikeda

IVS がオンライン開催となるのは今回だけでなく、新型コロナが収束しなければ、次回以降もリアルでの開催は難しいかもしれない。IVS が完全にオンライン化してしまう可能性も考えられる。島川氏はこの状況に際し、IVS が提供できる価値と意義とは何かを改めて見直す好機となったという。

IVS とは、質の担保された発見、質の担保された出会い、質の担保された学びを提供する場。こういった価値や意義は、オンラインでも届けられるのではないか。オンラインに振り切るとすれば、IVS はイベントというよりもオンラインサロンに近い存在になるだろう。そのコミュニティを作っていくことにも注力していきたい。

大きなカンファレンスでは、ある回が開催されて、次の回が開催されるまでは参加者同士が疎遠になってしまいがち。でも、オンラインサロンを中・小規模で開き続ければ、そこで常に皆が繋がりディスカッションが生まれる状態を作り出せる。そうして学んだ結果を持ち寄って、年に2回大きめのカンファレンスをオンライン開催する、という形も考えられる。(島川氏)

リアルカンファレンスのオンラインサロン化が吉と出るか凶と出るかは、世界の事例を見てもまだ参考になる答えが無い。カンファレンスのコンテンツの一形態であるパネルディスカッションやスピーチ、スタートアップイベント特有のピッチセッションなどはオンラインでの代替は比較的容易だが、他方、筆者も拙稿で頻繁に述べている「偶然の出会い」、いわゆるセレンディピティを創出するのがオンラインでは難しい。

島川氏によれば、IVS ではこの課題を解決するために3つの方法を準備しているという。

  1. 部屋ごとにファシリテータとテーマを設定。「○○の部屋」のような名前で、複数の Zoom 飲み会を複数(しかも数多く)用意する。
  2. ビデオ会議ツール「Remo」を使ったオープンネットワーキングを実施。Remo のファウンダーが IVS に協力してくれているそう。Remo では最大800人まで同時に入室できるが、その場合、参加者の混乱を防ぐために部屋のもう一つ上層に「フロア」という概念が必要になる。フロア毎に意味を持たせることを検討中。例えば、あるフロアは投資家や VC が集まる資金調達の話を聞くフロアとし、テーブル毎に VC に集まってもらい、資金調達中のスタートアップが訪れるイメージ。また、自身のセッションが終わった登壇者が Remo のテーブルに移動し、聴衆とフランクに話ができるような体験も提供する(30日には、Remo の CEO Ho Yin Cheung 氏が登壇するセッションもある)。
  3. Slack を導入し、IVS 専用のワークスペースを設定。Slack の全面サポートのもと、各セッション毎に語り会える部屋を設定する(30日には、Slack Japan 事業開発ディレクター水嶋ディノ氏が登壇するセッションもある)。

スタートアップがピッチ登壇する「LAUNCHPAD」も IVS の見所の一つだが、評価の高かったチームだけが登壇を許されるため狭き門でもある。今回はオンライン開催であるため、より多くのスタートアップを応援するスキームを用意するという観点から、IVS に協力する VC 各社から推薦を受けたスタートアップも多数 IVS に無料招待しているとのこと。例えば、AI スタートアップ5社に、AI のビジネスでイグジットを果たした先輩経営者からメンタリングを受けられるような機会を計画しているそうだ。

オンラインならではの同時多発セッション開催

参加者宅に届けられた「IVS ケアパッケージ」。オンラインでもリアルの体験ができるよう、ネットワーキングの際に使えるビールやおつまみなどもセットされている。快適な体験を届けるため、登壇者にはリングライトも進呈されるらしい。
Image credit: Masaru Ikeda

リアルのカンファレンスであれば、会場のキャパシティの制約から同時に開催できるセッションの数は限られる。IVS がこれまでに開催してきたセッション数は、昨年の神戸で開催された Infinity Ventures Summit 2019 Summer での28セッションが最大だったが、オンラインでは物理的な制約が無くなるため、これを60セッションまで拡大する。登壇者も総勢250人以上に達した。参加者は会場の移動に伴う煩わしさが無いので、気になるセッションをハシゴすることもできるし、端末環境次第で複数セッションに同時参加することも可能だろう。

現在、日本では新型コロナ感染抑止の観点から外国人の入国は制限されているが、オンラインであればそういった制約も受けないため、海外からの参加者も普段より多く集まることが期待できる。リアルの場合、遠方すぎて参加を断念していた人、他のイベントとスケジュールが重なり参加を断念していた人にもハードルが下がることになる。

事実上おそらく初めてに近い、日本での大型カンファレンスのオンライン開催。何かと不便を強いられる「ニューノーマル(新常態)」を味方につけようとする島川氏らの挑戦は、スタートアップコミュニティにとって吉と出るか凶と出るか。今日から始まるスタートアップカンファレンスの新たなスタンダード体験を楽しみにしている。

----------[AD]----------