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次世代インターネットの姿、Webブラウザだけでメタバースを実現する「WebVR」

原文筆者の Amir-Esmaeil Bozorgzadeh 氏は Virtuleap の共同設立者。Virtuleap ではクリエイティブ開発者が実験的な VR コンセプトを発表し合える。同氏はゲーム販売及びデジタル事業を行っているドバイの Edoramedia のヨーロッパ地区パートナーでもある。 先月、WebVR について書いた私の記事について、メタバースのコンセプトを詳しく知りたいというリ…

原文筆者の Amir-Esmaeil Bozorgzadeh 氏は Virtuleap の共同設立者。Virtuleap ではクリエイティブ開発者が実験的な VR コンセプトを発表し合える。同氏はゲーム販売及びデジタル事業を行っているドバイの Edoramedia のヨーロッパ地区パートナーでもある。


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Image Credit: JanusVR

先月、WebVR について書いた私の記事について、メタバースのコンセプトを詳しく知りたいというリクエストが読者から寄せられた。WebVR が現在のインターネットに欠けている要素であり、次のビッグウェーブになること間違いないと書いたが、その理由も併せてここで示していきたい。

WebVR は Mozilla が開発したフリーの JavaScript の API で、ブラウザ上で VR 空間を楽しめるものだ。Google、Oculus、Samsung、Microsoft など各社が「没入型ウェブ」にますます焦点を当てていることから、VR に対応する製品やサービスはウェブ業界で増えてきている。

WebVR はダウンロードやインストールなしに没入感のあるネット体験をもたらしてくれる。オープンでアクセスしやすく、私たちがこれまでインターネットに期待してきたこれらの特徴とも親和性が高いため、競合技術を引き離して圧倒的な優位に立っている。しかし最も大きな特徴として、WebVR とそれを取り巻くコミュニティが素晴らしいのは、没入感溢れる次世代型のインターネットである「メタバース(Metaverse)」を創出しつつある点に他ならない。

1992年、ニール・スティーヴンスン氏は SF 小説『スノウ・クラッシュ』を出版した。それからというもの、メタバースは現実世界の物理法則や社会的ステータスに縛られない夢のようなバーチャル空間として、垢抜けないオタクたちの理想郷であった。無限の可能性を秘め、イマジネーションとクリエイティビティの続く限り不可能のない場所であった。

時が経つにつれメタバースという言葉は使い古され、インパクトは薄れてしまったかもしれない。90年代に流行った陳腐なキャッチフレーズ「サイバースペース」(私を含め多くの人間がこのフレーズに惹かれて業界に入ってきたものだが)と同じような印象を与えるだろう。事実、この言葉が流行らなくなってからというもの、まだ新しいこの技術が持つ意義や役割は薄れ、つまらないものになってしまった。

Mozilla の新興技術部門シニア VP である Sean White 氏は、メタバースをこう表現する。

私たちはコンピュータや他のユーザ、そして現実世界と関わりを持っていますが、メタバースはこうした関係が拡大・進化していく上で誕生した自然な形です。過去数年で関係性のあり方はめざましい多様化を見せ、実験的な段階を脱しつつあります。メタバースはこのような技術を集結したものであり、現在ではユーザを中心に据えたはっきりとしたコンテンツが求められています。学習、創造性、クリティカルシンキング、世界中の人々とのつながりを飛躍的に向上させる可能性を持っています。

VentureBeat の Dean Takahashi 氏は昨年12月、サンフランシスコで開催された VRX 仮想現実カンファレンスでの講演を終えた Tim Sweeney 氏にインタビューを行った。記事の中で Takahashi 氏はこう記している。

これまで多くの人々がメタバースの構築に挑戦し、失敗してきた。

Sweeney 氏はメタバースのコンセプトについて深いインサイトがあり、ゲームエンジンこそがその実現にふさわしいと考えている(私は異論があるが)。彼に賛同する者も多く、メタバースのモデルとしては、Second Life や、同ゲームの VR 版後継タイトルとも言うべき Linden LabとHigh Fidelity を思い浮かべるとわかりやすい。しかし私の意見としては、メタバースの可能性はゲームエンジンが実現できる範囲をはるかに超えている。

Mozilla AFrame プロジェクトで WebVR の開発に寄与した Fabien Benetou 氏はこう語っている。

メタバースは単一のプラットフォームで実現できるようなものではありません。複数のベンダーによる複数のプラットフォームが必要で、それを結ぶプロトコルなのです。

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(上)メタバース初のナイトクラブへようこそ:A-Saturday-Night by Mozilla VR.

以前から私は、メタバースは相互に連携した VR 空間やそのツール、そして商品などの総称となると述べてきた。そこは無限に広がる VR のかたちを持つ、唯一無二の空間だ。メタバースの名の由来には反するが、現実の世界を再現するものにはならないだろう。私たちがクリエイターとして自主的に判断し、便利だったり面白いと感じたりしたことを創造する場所になる。

それと比べれば、ゲームエンジンが単独で表現できる幅は非常に限られている。また、あるプラットフォームが全く想定していない機能を求められた場合、対応できる見込みは薄い。例えば競合するデバイスやプラットフォーム間での相互運用性が求められる場合などだ。

WebVR を使ったスタートアップ LucidWeb を共同設立した Thomas Balouet 氏は次のように述べる。

こういったアプリケーションが、将来的にメタバースとなるであろうワイドなシステムに対応するならば、市場で生き残ることができるでしょう。そうでなければその他多数のアプリの山に埋もれてしまいます。ウォールドガーデンアプリは魅力的でないですし、ウェブインターフェースに勝るものはありません。

単独でメタバースのコアになろうとしているようなプラットフォームは、どれもメタバースの意味をはき違えている。

ここでキーとなるのは WebVR だ。メタバースの形成過程やあり方、ルールなどをあらかじめ作ってしまうということはなく、シンプルにメタバースを実現しようとしている。ルール作りを企む者がいたとしても、その努力は報われないだろう。ルールとはメタバースの成長過程で自然と生み出されるものであり、それを待たずして作為的に規定することはできないからだ。

WebVR はメタバースの構成要素の有力な候補だ。オープンなプロトコルを採用しており、クローズドプラットフォームでなく、それゆえ多種多様な媒体をつないでまとめ上げる力がある。

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(上) Mozilla VR の A-Painter を使用したリアルタイム・バーチャル・アートの共同制作

メタバースは唯一無二のコンセプトです。ウェブベースかネイティブかどうかに関わらず、あらゆる VR 環境をつなぐことができるはずです。もちろん前提として、VR 環境が相互につながれることが好ましいと考えています。そのためには世界で唯一の存在であるインターネット、すなわちネットワークのネットワークこそが最適なソリューションとなるでしょう(Benetou 氏)

クリエイターの卵たちが没入感溢れるウェブの世界を一歩一歩作り上げていくに当たって、まずは屋台骨となるインフラの整備が必要となる。この状況はインターネットの形成過程に非常によく似ている。それがメタバースの本質だ。既存のインターネットに平行するもう一つのインターネットであり、より高次元で表現できる点が異なっている。

コンテンツについて言えば、個別のプラットフォームが善し悪しを判断することはできない。インターネットは分散的で民主的な試みであり、多数の人々が貢献し、大部分は有機的に成長してきた。メタバースも同様になるだろう。

コンテンツはユーザを引き込みます。WebVR で新作映画を見たユーザは、引き続き映画のレビュー、3D アバター同士が映画の感想を語り合うフォーラム、3D 空間で他のユーザが口にした直接は関係のない話題など、関連するコンテンツに次々と参加したりできるでしょう。(Balouet 氏)

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メタバースとはどのようなものかを紹介する JanusVR 制作のショーケース。

これらを近い将来現実のものとするため、WebVR の開発者コミュニティではメタバースのコアとなる機能の構築が進んでいる。喫緊の課題は「ディープ」リンクの実現だ。これによりユーザはヘッドセットを外すことなく別の空間へシームレスに行き来できるようになる。

他にもメタバースをサポートする中核的な機能として「バックパック」が挙げられる。これはいわばポータブルな記憶装置で、ユーザのデータを保存し、コンテンツを超えて持ち運ぶことができる。仮想通貨を入れておく財布の役割を果たしたり、また、あるコンテンツでの360度体験ビデオを他でシェアして使ったりすることができる。

他にも、セキュリティ、ユーザ同士のやり取りの定義や実装、全く別の空間に移動した際に同じアバターと個人認証を引き継ぐべきかどうか、といった重要な課題についての検討・開発も行われている。

WebVR は、隔離、ブロックチェーンに代表されるカプセル化技術、AI、ボット、触覚デバイス、IoT などの機能にすべて対応しているが、メタバースはこれらを超えて急速に成長し拡大するものと見られる。メタバースによって没入感という言葉は再定義され、例えばウェブベースの AR という意味を含むようになるだろう。現在初期段階にある WebAR フレームワークではすでにウェブベースの AR が実現されている。

Samsung Internet の開発者アドボケート Diego Gonzalez 氏は次のように問いかける。

現実とバーチャルの架け橋となったり融合させたりするような面白いアイデアがたくさんあります。(JavaScriptの)AR.js のようなライブラリを例に見てみましょう。没入感を生むのは何でしょうか?ウェブベースや位置情報、Physical Web 規格のビーコン対応、さらには画面を超えた実世界の体験をメタバースの世界に持ち込まない手はありませんよね?

昨今の VR 業界では、市場でその価値を認めてもらおうと、消費者に売り込んだり、中古車のセールスマンのように付加価値を説いたりといった動きが盛んだ。これらの売り込み方は本質を欠いており、急伸するこの分野の全体像や背景、コンテクストなどを示せていない。なぜ VR が急伸しており、社会にとって重要なのかという説明がなされていないのだ。WebVR によって、ただのブラウザが没入型ウェブの世界を楽しむマシンに早変わりし、将来はメタバースにもなる。この点をアピールすべきだろう。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

上海の文化遺産をバーチャル・リアリティで救うことはできるか?

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Lewei Huang 氏が育った石庫門(Shikumen)界隈には、彼が半年前に作ったデジタルレプリカの面影がほとんど見られない。れんが壁や西洋と中国の建築が融合した上海特有の20世紀の石庫門建造物はブルドーザーに押し潰され、一帯の各地区は瓦礫と化した。 「中国の歴史が深く刻まれた場所の多くは、きちんと記録に残されていません」と上海ニューヨーク大学(NYU Shanghai)3年生の Huang…

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Lewei Huang 氏が育った石庫門(Shikumen)界隈には、彼が半年前に作ったデジタルレプリカの面影がほとんど見られない。れんが壁や西洋と中国の建築が融合した上海特有の20世紀の石庫門建造物はブルドーザーに押し潰され、一帯の各地区は瓦礫と化した。

「中国の歴史が深く刻まれた場所の多くは、きちんと記録に残されていません」と上海ニューヨーク大学(NYU Shanghai)3年生の Huang 氏は語る。「それどころか、再開発されたり取り壊されたりしているのです」。

このプロジェクトは一種の保護活動です。古い記憶を保護するのです。(Huang氏)

Huang 氏による「Cardboard Shikumen」プロジェクトは、昨年取り壊しが決まった彼にとって親しみ深い地域のデジタルコピーである。同プロジェクトは、開発者がウェブブラウザでバーチャル・リアリティ・アプリケーションを作成するのに利用できる試行版 API、WebVRを用いて構築された。これはつまり、VR ヘッドセットや特別な機器を用いることなく、「Cardboard Shikumen」を Chrome で直接起動し閲覧できるということだ。

「[このプロジェクトは]技術的な専門知識や運用予算をほとんど必要としない、バーチャル・リアリティ・プレゼンテーションソフトのテクニカル・プロトタイプです」と Huang 氏は説明する。同氏は、バーチャル・リアリティ・コンテンツを作成し利用するためのコストを下げることで、より多くの人がバーチャル・リアリティ・プラットフォームに関わることができるようになると言う。

A screenshot of “Cardboard Shikumen.”
Cardboard Shikumen のスクリーンショット

「Cardboard Shikumen」の使用感は Google Street View と似ているが、より没入型だという点が異なる。動き回るには、視聴者は一帯に設置された矢印をクリックしなくてはならない。各フレームの視界は360度で、スマートフォンを動かしたり、マウスをクリックしたりドラッグしたりすることで回転できる。同プロジェクトは、木製の腰掛けでひと休みしている老婦人、雑談する住民たち、日に干されている洗濯物など、彼が慣れ親しんだ石庫門界隈の日常的な光景をとらえている。

VR、とりわけ WebVR は、現在開発中です。一から始めなくてはならないことがたくさんあります。従うべき確立したプロセスや一連の手順といったものがないのです。(Huang氏)

「Cardboard Shikumen」内のシーンを作成するため、Huang 氏は6つの Xiaomi Yi カメラ(小蟻運動相機)と3D プリントしたケースを使い、360度の視野をもつカメラを自ら装備した。彼は一帯を歩き回り、考案したカスタムメイドの機器を使って様々な場所を撮影した。その後、Autopano を使って写真をつないでパノラマにしたものが「Cardboard Shikumen」のコンテンツとして使用されている。

Huang 氏は、2015年5月から7月にかけて断続的にプロジェクトに取り組み、約2か月かけて「Cardboard Shikumen」のベータ版を作成した。一帯が完全に取り壊された後、彼は同じ道筋をもう一度記録するつもりである。そうすることで、「Cardboard Shikumen」の視聴者は石庫門取り壊しの前と後を体験できる。

One of the panoramas Mr. Huang stitched together for “Cardboard Shikumen.”
Huang 氏が Cardboard Shikumen 用につなぎあわせて作ったパノラマの一つ

上海市の City Archives(市の保存記録)によると、1949年から1990年代後半にかけ、徐匯区の石庫門一帯だけでも、268万平方メートルから25万平方メートルへと縮小した。北京でも、伝統的な胡同地帯が何千も破壊され、新規不動産が建設された。昨年3月、ISIS(イスラム国)によって破壊された古代遺物を保護する目的でローンチされた Project Mosul などの中国国外のイニシアチブと同様、バーチャル・リアリティと3Dモデリング技術がこうした文化遺物を救う手段となるかもしれない。

それでもなお、バーチャル・リアリティは文化遺産を保護する上で完璧な解決策とは言えない。「写真をいくら撮ろうと、モデルが視覚的にどんなに忠実であろうと、現物とは違います」と Huang 氏は語る。

このプロジェクトは、消えつつあるこうした建築物の「埋め合わせをする」方法でしかないと感じています。本当に保護するには、こういったプロジェクトを行うだけでなく、現物を保護する必要があります。(Huang氏)

Huang 氏が慣れ親しんだ石庫門一帯が分岐する主要道路では、まだ取り壊しの兆しは見えない。露天商が歩道に真っ青な防水シートを広げて新鮮な魚の山を売りさばき、別の商人はカゴに生きたハトを入れて売り歩いている。店頭に老婦人が集まり、早口の上海語でにぎやかにおしゃべりをしている。

これが上海の通りの一般的な生活、Huang 氏がバーチャル・リアリティで守ろうとしている「日々の暮らし」である。

Lewei Huang’s custom panoramic camera
Lewei Huang 氏がカスタマイズして作ったパノラマカメラ

【via Technode】 @technodechina

【原文】