米国におけるEdTechシーンの現状と課題点 — 各種データを踏まえて

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Image by Stephen Luke

<ピックアップ記事>2014 Ed Tech Review – The Largest Financings and Most Active VCs in Ed Tech

多くの有名スタートアップ発祥の地となっているシリコンバレー・サンフランシスコエリア。そんな中、EdTechは今一番波に乗っている分野の1つと言っても過言ではないでしょう。

今回のピックアップ記事では、そんなEdTech分野において、2014年度の資金調達額順に上位15のスタートアップが載っていますが、この記事では上位3つのスタートアップを紹介しようと思います。また、合わせてアメリカにおけるEdTech分野に関するデータ、そしてシリコンバレー・サンフランシスコエリアの教育現場の事情を紹介させていただきます。

1位. Pluralsight ($135M)

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Pluralsightはディベロッパー向けにオンラインコースを提供しているスタートアップです。2014年度では合計で1億3500万ドルの資金調達に成功。これまでの合計資金調達額は1億6500万ドルにも上ります。今年度の資金出資先として、Insight Venture PartnersやSorenson Capitalが挙げられます。アメリカのユタ州で2004年に創業され、これまでに5つの企業を買収済み。

2位. TutorGruop ($100M)

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TutorGroupは英語学習を中心にオンラインクラスを設けているスタートアップ。本拠地は台湾にありますが、サンフランシスコにも拠点を持っている模様。元々は台湾・中国人向けにオンライン英語教育を提供しているプラットフォームで、2004年に創業されています。今年の資金調達額は1億ドル。Alibaba Capital PartnersやQiming Venture Partnersが出資しています。北米ユーザー向けに中国語を学ぶサービスもすでにローンチしており、世界展開を見据えているスタートアップと言えるでしょう。

同率2位. Dude Solutions ($100M)

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Dude Solutionsは主に教育機関向けのソフトウェア管理サービスを提供しています。1999年にノース・カロライナ州で創業。1999年当時は、SaaSのモデルを取り入れた最初のソフトウェアプロバイダーであったとのこと。2014年度の資金調達額は1億ドルに上り、その全てをWarburg Pincusから調達しています。

ピックアップ記事では上記の3つ以外に上位15つのスタートアップを資金調達額順に載っているので合わせてチェックしてみると2014年度のトレンドがわかるでしょう。

データからみる米国EduTechシーン

さて、こちらのデータでは、2010年度からEdTech分野における年間投資額と投資案件数は常に上向きであることが記されています。年間投資額を見ると、2013年度は2009年比で212%の成長率を記録したとあるので、EdTech分野に注目が置かれているのも納得がいくでしょう。ちなみに2009年度の年間投資額は3億8500万ドルで、2013年度は12億ドルでした。

そして今年度のEdTech分野への投資は昨年以上に賑わっているとのこと。2014年上半期までの合計投資額は6億4900万ドル。このペースは最盛期であった2013年度のペースと同じか超えるほどの勢いとのことです。確かに同データを見ると、2014年第1期における合計投資額は4億3200万ドルで、2009年第1期からの投資額を四半期別に見ていくと、最大規模だったことがわかります。

次に、国別で見ても、アメリカのEdTech市場の大きさが計り知れます。同データは、アメリカではこれまでにEdTechスタートアップ向けに35億ドルの投資と833の投資案件がなされたと述べています。投資案件数で見ると、アメリカは第2位のインドにおける63案件の約13倍、第3位の中国の41案件の18倍の規模です。

さらに言うと、アメリカ、カリフォルニア州が特にEdTechが盛んであるとのことです。カリフォルニア州では14億ドルの投資と283の案件が行われたと同データに書かれています。これはEdTechが全米で2番目に盛んなニューヨーク州の倍以上の規模らしいです。

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ここまでデータを見てましたが、これほどEdTechが盛んな理由として、教員がEdTech分野に対して非常に前向きであることが挙げられるかもしれません。前述の通り、カリフォルニア、特にサンフランシスコではEdTechが盛んで、多くのイベントが開かれています。

例えばStartup Weekend。Startup Weekendとは週末(金曜から日曜)まで、起業家、プログラマー、やデザイナーが集まって3日間でプロトタイプを開発し、最終日にはピッチするというものですが、EdTech向けのStartup Weekendに参加してみると起業家やディベロッパー以外に、多くの教員に出会えます。

筆者がサンフランシスコで行われたEdTech Startup Weekendに参加した時は、50人程度の参加者中、半数程度は現職の教師、もしくはこれまでに教育機関関係者でした。

その中の教師の1人が言っていたのですが、週末はこのStartup Weekendに時間を費やし、プロダクトの下地が出来たのなら、早速来週から教室に持ち帰り実際に使う、もしくは試験的に使えるように学校側に提案するとのこと。つまりアイデアを教育の現場に持ち帰るような仕組みがすでに出来ているのです。このような教師のマインドセットがEdTech熱を加速させているのだと感じさせられます。

一方でStartup Weekendでは教育現場の課題も垣間見えました。

そのStartup Weekendでは、学生も募集されており、実際中学生が5人ほど参加していました。彼らの夢を聞く機会があったのですが、彼らの夢は、中学・高校は成績をオールA取得、スタンフォード大学に入ってコンピュータサイエンスを専攻、Googleに入ってシリコンバレーに住む、というものでした。

有名Tech企業に入れば羨望の眼差しで見られるだろうという大人の認識が、そのまま子供の夢になっているという事態は考えさせられるものでした。

この記事では、EdTech分野の盛り上がりをデータを挙げつつ紹介してきました。数値上からも、アメリカではEdTechが成長分野と言えるでしょう。そして、教師が持っている考え、言わば起業家精神とも言えるものがEdTech市場の助けになっていると言えるかもしれません。しかしながら、何の考えもなしに子どもたちが有名Tech企業に入ろうとするシリコンバレー特有の教育事情は社会問題となり得えると考えられます。

Via CB Insight

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