【増えゆく用途特化型生成AI】AI草分け李開復氏も支援、AI創薬のInsilicoが特発性肺線維症の新薬を発表

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Image credit: Insilico Medicine

香港とニューヨークを拠点とし、次世代 AI システムを使って生物学、化学、臨床試験分析を結びつけるために4億米ドル以上の資金を調達したバイオテクノロジースタートアップ Insilico Medicine は8日、AI が生成し AI が発見した初の医薬品(現在、第 II 相臨床試験に到達)と主張する医薬品の道のりを紹介する新しい論文を発表した。

Nature Biotechnology」に掲載されたこの論文は、Insilico の AI プラットフォームを使って発見された特発性肺線維症(比較的まれだが、侵攻性の肺疾患)の治療薬候補である INS018_055の全過程を紹介している。この論文では、生成 AI によって発見・設計されたファースト・イン・クラス(画期的新薬)の可能性を持つ TNIK 阻害剤の生の実験データと前臨床および臨床評価が開示されている。

薬の進歩は、創薬における生成 AI の先例となる

Insilico 創業者兼 CEO の Alex Zhavoronkov 氏によると、この新薬は、生物学 AI を使って標的を発見し優先順位を付け、生成化学 AI を使って分子を生成した初めての例だという。同社は「Pharma.AI」というプラットフォームを使用した。Pharma.AI には、さまざまなタスクのために何百万ものデータサンプルで訓練された複数の AI モデルが含まれている。そのツールのひとつである PandaOmics は、病気の効果に重要な役割を果たす標的を迅速に特定し、優先順位をつける。もう一つの Chemistry42エンジンは、ディープラーニングを使用し、PandaOmics を使用して特定されたタンパク質を標的とする新しい潜在的な薬剤化合物を迅速に設計することができる。

Zhavoronkov 氏はプレスリリースで次のように述べている。

新規分子生成のための生成 AI における最初の論文が2016年に発表され、その後多くの後続論文が発表されたとき、創薬コミュニティは非常に懐疑的でした。私の観点からすると、INS018_055の進展は、我々のエンド・ツー・エンドの AI ドリブンの創薬プラットフォーム Pharma.AI の PoC(概念実証)としての役割を果たすだけでなく、創薬を加速させる生成 AI の可能性を示す先例となりました。

Insilico は3分の1の時間で臨床試験の第一段階に到達

Insilico は VentureBeat のビデオインタビューで、医薬品開発は一般的に「非常に長い道のりだが、同時に非常にリスキーな道のり」であり、前臨床の細胞、組織、動物モデル、ヒト臨床試験に数十年、数十億米ドル、そして90%以上の失敗率を要すると語った。従来の創薬手法では、4億米ドル以上を費やし、最長で6年かかるとInsilico は見積もっている。しかし、生成 AI を用いることで、同社はわずか2年半で臨床試験の第一段階に到達し、そのコストはほんのわずかであった。

Insilico の投資家の一つ Sinovation Ventures の会長兼 CEO Kai-Fu Lee(李開復)氏はプレスリリースで、Insilico のプログラムは「化学と生物学における生成 AI によって大量のデータを処理することで、ゼロから効率的に医薬品を発見するブレークスルー」を提示すると述べた。

Zhavoronkov 氏は、彼は通常祝辞を述べないが、この AI 創薬における画期的な成果(2014年の Insilico 設立以来、10年にわたる研究の集大成)は例外であると述べた。

大きなポップコーンを持って「Dune(邦題「デューン 砂の惑星 PART2」、日本では3月15日封切予定)」を観に行くつもりです。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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