〝NY版akippa〟のXtraspotsが始動、将来はEV向け充電スタンドのシェアリングも視野に

Image credit: Xtraspots

サンフランシスコで夕食のために車を停めていたら、近隣の家の持ち主が私道をふさいでいると勘違いし、車をレッカー移動され、結局500米ドルかかって、むしろ、食事に使ったお金の方がチップになりました。

Xtraspots の創業者で CEO の Antony Chang(張映旋)氏は、この500米ドルの「初期投資」が Xtraspots のアイデアを生んだと笑顔で語った。

2021年にニューヨークで設立された Xtraspots は、Airbnb のコンセプトをーベースにした「シェアパーキング」を提供している。自宅の所有者が自宅前の駐車スペースを解放し、他の人が駐車できるようにすることで、駐車スペースがなかなか見つからないという苦悩を軽減し、同時に自宅の所有者が収入を得られるようにする。

Airbnb モデルで、民間の未使用駐車場を開放する「Xtraspots」
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駐車場は都市部では常に悩みの種だが、Chang 氏は単なる「駐車スペースのシェアリング」以上のことをしたいと考えている。それは全て、彼が以前勤めていた SolarCity が Elon Musk(イーロン・マスク)氏の Tesla に吸収合併されたことから始まった。

起業ならサンフランシスコ、駐車スペースシェアならニューヨーク

SolarCity が Tesla に吸収合併されたのは、Musk 氏がサイクル充電の基礎に太陽光を使ういうアイデアを出したからだ。Chang 氏は電気自動車が未来だと信じているし、Tesla が株価が500米ドルを超えたことや、家庭用の太陽光発電をシェアリング型の充電スタンドに繋ぐのは良いアイデアだと考えているが、充電スタンドのハードウェアのコストが高いこと、電気自動車がまだ遠い未来であることから時期尚早だと感じた。

充電スタンドは駐車スペースに置かれることが基本であるため、Chang 氏はまず、都市部での駐車に関する自身の経験から始めようと考えた。

その後すぐに Chang 氏はニューヨークに移り住んだ。サンフランシスコは起業家精神が旺盛な場所かもしれないが、ニューヨークの交通事情はサンフランシスコよりもさらに悪い。カリフォルニアでは1マイルに1分かかるが、ニューヨークでは5分だ。アメリカ東海岸は西海岸よりも早く開発されたため、道路脇の駐車場の設計をはじめ、多くの施設が古く、車の所有者の不満の種となっている。

そんなとき、Chang 氏は、同じく起業のビジョンを持っていた Charles Sepulveda 氏(のちに、Extraspots 共同創業者)と出会い、2人はすぐに意気投合した。しかし、最初の2人のスタートアップは駐車スペースのシェアリングではなく、Sepulveda 氏のアイデアだった、引越マッチングプラットフォームと屋内施設予約プラットフォームだった。

Xtraspots チームメンバー。左から:ビジネス開発担当 Vincent Casale 氏、プロダクトディレクター Shiuan-De Chen(陳軒徳)氏、共同設立者兼 CEO Antony Chang(張映旋)氏、共同創業者 Charles Sepulveda 氏、ディレクター John Shahin 氏
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Chang 氏は笑いながら話した。

新型コロナで引越の需要が皆無だったため、屋内施設予約に切り替えたんです。当時はコロナ禍で屋内に一度に入れる人数に上限があったし、コロナ禍が終わるとは思っていませんでした。

彼がこの2つの起業経験から学んだことは、起業のタイミングを選ぶことでも、運が必要なことでもなく、自分自身のスキルを極めることだと笑顔で語った。

Chang 氏は、自分には事業開発の経験はあるが、Sepulveda 氏は技術的なバックグラウンドがなかったため、2つの事業では「労働者の知恵」に頼って一つ一つのタスクを処理していったが、そのために規模拡大が難しく、成長スピードにも限界があったため、長続きしなかったという。

技術力の問題を解決するため、Chang 氏は以前協力関係にあった Shiuan-De Chen(陳軒徳)氏をプロダクトディレクターとして見つけ、台湾に子会社を設立し、技術研究開発チームを結成した。これが Xtraspots 事業の始まりだ。

収益の創出、利便性の向上、駐車スペース使用権の解放

駐車場の使用権を解放するため、Xtraspots(Extra Spots)と呼ぶことにしました。(Chang 氏)

Chang 氏は、Xtraspots は当時駐車場を手掛けていた競合他社と比べ、教会やオフィスビル、個人駐車場など民間の駐車スペースの解放に注力している。

Xtraspots の仕組みは Airbnb と同じで、駐車場オーナーが住所、写真、予約可能な時間帯をプラットフォーム上に提供し、駐車したい自動車オーナーはアプリで駐車場オーナーを見つけてスペースを予約する。駐車スペースは路上駐車から駐車場まで多岐にわたり、自動車オーナーの駐車場探しのコストを削減するだけでなく、駐車場オーナーにも副収入をもたらす。

私たちの試算では、駐車場オーナーには毎月300米ドルの収入があり、自動車オーナーは30分間を節約できます。(Chang 氏)

Airbnb で部屋を探すように、Xtraspots では近隣の駐車場、料金、空き状況を検索することができる。
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Xtraspots のサービスは、Airbnb のコンセプトを宿泊から駐車場に転換したかのように見えるが少しと違う。Airbnb は日数んのカウントが基本だが、都市部の駐車場のほとんどは一時利用なので、借りる単位が1時間単位と短いこと、ダイナミックプライシングでスペースの回転率を上げること、などが、Xtraspots が直面する技術的課題で、月極を主とする競合との違いでもある。

私たちは、動的なロックインする時間帯を設計することで、この問題を解決しました。(Chen 氏)

Xtraspots のプロダクトディレクター Chen 氏によれば、これは簡単に言えば、駐車場オーナーが、自分の所有する駐車場に予約できない時間を設定するということだ。例えば、誰かが13:00から14:00の間に駐車を予約した場合、駐車場オーナーは、その前後の時間を予約することはできない。実際にロックインされる時間は、そのタイミングの需要とピークのタイミングから離れているかどうかに依存する。

リアルタイムコンピューティングの技術に加えて、Chang 氏は、自動車オーナーにとって駐車場は突然必要になるものなので、いかなる状況や問題でもすぐに解決する必要があり、そのため顧客サービスが重要だと考えている。

現段階では、我々のチーム全体の半分は、顧客サービスのスタッフです。それは、起こった問題をすぐに解決するためのものです。もちろん、将来的には AI はこの部分のタスクを優先自動化してくれるでしょう。(Chang 氏)

Xtraspots は2月5日から開始され、約20人のホームオーナーと200人の会員が登録している。同社のビジネスモデルは利益分配システムに基づいており、当面はニューヨークを主なサービスエリアとし、将来的には他の都市圏にも順次拡大していく予定だ。

Xtraspots は、認知度を高め利用者を増やすために広告を出し続けている。
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多様な視点を持つ台湾人もリーダーになれる

台湾人がアメリカで起業することは珍しくないが、多様な背景を持つ人々のチームを率いることは、それほど一般的ではないかもしれない。

Chang 氏は、アメリカはアフリカ系、ラテン系、イタリア人、アジア人など文化のるつぼであり、ここでビジネスを行うには、より多くの機会、リソース、資金を見つけるために、多様性と尊重を学ぶ必要があると話した。例えば、Xtraspots の共同設立者  Sepulveda 氏はラテン系であり、ラテン系起業家を支援するベンチャーキャピタルから資金を得られる可能性がある。

多様性に富んだチームでは、意見が分かれ、仲違いが増えることにつながるのだろうか?

最も重要なのは、いかにして外国人に一緒にビジネスを始めたいと思わせるか、ということです。(Chang 氏)

Chang 氏は、アメリカに留学して以来、文化も言語も異なる人々と遊び、彼らの好みを理解し、彼らを知り、固定観念を払拭しようと努めてきたという。これは、多様で国際的なチームを率いるリーダーの心構えだ。チームメンバーの間に意見の相違があれば、リーダーが率先して非を認め、責任を受け入れることで、怒りを鎮め、チームが本当に重要な話し合いに集中できるようになる。

台湾でビジネスを展開するチャンスはあるのか? 台湾にはすでにこのペインポイントを解決しているスタートアップがあり(編注:台湾の USpace は2022年10月に日本市場進出を発表し、すでに福岡を中心に事業展開している)、Xtraspots はまずアメリカに注力すると Chang 氏は、笑顔で語ったが、電気自動車の駐車場と充電スタンドをシェアするという当初のアイデアは決して忘れていないという。

起業に関する簡単な Q&A

Q: 顧客や投資家から最もよく聞かれる質問は何か? どのように答えているか?

手がける駐車スペースを早く拡大するにはどうしたらいいか?

私たちには2つのパートがあります。1つは住宅を探したり、加盟店と協力したりする事業、もう1つはオーガニックなダウンロードを生み出すためのオンラインマーケティングです。

Q: 次のステップに到達するために、現在チームに不足しているリソースは何ですか?

資本と、この業界の可能性を信じてくれる投資家です。

Q: 起業してからのベスト3を教えてほしい。

  1. 異人種の従業員を受け入れること。
  2. 従来からある駐車場という存在を楽しいものにすること
  3. メディアの注目を集め続けること。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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