自分のデータも販売可能に?Web3技術が生んだ「個人情報」の新たな潮流/GB Tech Trend

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Image credit: CARV

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

Web3領域では「SSI」(= 自己主権型アイデンティティ)をテーマにしたスタートアップが成長を続けています。今回紹介する「CARV」は、シリーズAラウンドにて1,000万ドルの資金調達を行ったことを発表しました。同社は、ユーザ自身が自分のオンライン個人情報等のデータを取り扱えるようにするSSIに関するプロダクトを開発しています。

CARVのプロダクトを用いると、AIモデルトレーニングやサービス市場調査などを行いたいブランドや企業は、ブロックチェーン技術を活用してユーザデータを購入できます。また、そこで発生した報酬はユーザに分配されます。扱われるデータはユーザが所有するWeb3ウォレットと接続して運用され、企業との取引内容はすべてオンチェーン上に記録されるので正確な収益分配が可能です。

ユーザデータの所在や活用方法については、頻繁に議論されてきました。私たちはよく、何か新しいサービスへ登録する際、Facebook、X、AppleやGoogleといった大手プラットフォームサービスと連携して必要情報をプラットフォーム経由で共有し、その登録プロセスを省略します。

しかし、SNSの個人情報流出がしばしば発生したことで、プラットフォーム側へデータ管理を一任するリスクが顕在化しました。また、プラットフォーム側がビックデータ解析や広告を含む自社サービスへ個人情報を使い、その利益を独占している実態も明らかになるにつれて、改めて個人情報のあり方を考えさせられる機会も増えています。SSIの概念は、こうしたプラットフォームとユーザである私たちの乖離を埋めるようにして市場に登場したのです。

こうした背景からCARVのようなサービスが注目されるようになりました。CARVを使うと、ユーザは統一された相互運用可能なIDを集約、所有、管理できるようになります。それだけでなく、自分のIDを選択的に共有できるようになり、プライバシー性やデータ安全性を確保できるわけです。この辺りは第三者からもデータを可視化できるブロックチェーン技術ならではの恩恵だと言えます。

CARVの競合には、Snickerdoodle LabsやOamo、Jomoの3社が挙げられます。いずれも、ユーザが金銭的な割引や報酬と引き換えに、自身のデータ共有を選択できるようにするSSIに基づいたサービスです。こうしたサービスが台頭することで、従来のプラットフォームが独占してきた巨大データ市場が開かれるかもしれません。

4月30日〜5月12日の主要ニュース

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